(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173616
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】解像度変換装置及び解像度変換方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/01 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H04N7/01 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085985
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真樹
【テーマコード(参考)】
5C063
【Fターム(参考)】
5C063BA03
5C063BA08
5C063CA05
(57)【要約】
【課題】画像移動部に含まれるラインメモリの他にラインメモリを追加することなく、水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させることができる解像度変換装置を提供する。
【解決手段】最近傍補間部1は、第1の解像度を有する第1の画像信号(低解像度画像信号S1)の各フレームの各ラインにおける各画素を水平方向に2画素ずつ出力し、各ラインを垂直方向に2ラインずつ出力することにより、各フレームの画素数を4倍に拡大した拡大画像信号S11を生成する。画像移動部3はラインメモリ31及びバイリニア補間回路32を含む。画像移動部3は、拡大画像信号S11の各フレームにおける各画素を、見かけ上、水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように拡大画像信号S11を補間して、第1の解像度の4倍の第2の解像度を有する第2の画像信号(変換高解像度画像信号S12)を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1の解像度を有する第1の画像信号の各フレームの各ラインにおける各画素を水平方向に2画素ずつ出力し、前記各ラインを垂直方向に2ラインずつ出力することにより、前記各フレームの画素数を4倍に拡大した拡大画像信号を生成する最近傍補間部と、
ラインメモリ及びバイリニア補間回路を含み、前記拡大画像信号の各フレームにおける各画素を、見かけ上、水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように前記拡大画像信号を補間して、前記第1の解像度の4倍の第2の解像度を有する第2の画像信号を生成する画像移動部と、
を備える解像度変換装置。
【請求項2】
前記拡大画像信号と、前記第2の解像度を有する第3の画像信号とを選択的に前記画像移動部に供給するスイッチをさらに備える請求項1に記載の解像度変換装置。
【請求項3】
フレームメモリに書き込まれた第1の解像度を有する第1の画像信号の各フレームの各ラインにおける各画素を水平方向に2画素ずつ出力し、前記各ラインを垂直方向に2ラインずつ出力することにより、前記各フレームの画素数を4倍に拡大した拡大画像信号を生成し、
前記拡大画像信号の各ラインをラインメモリによって1ライン分遅延させ、
前記拡大画像信号の各フレームにおける各画素を、見かけ上、水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように、前記ラインメモリに入力される各ラインの画素と前記ラインメモリによって1ライン分遅延された各ラインの画素とを用いて前記拡大画像信号をバイリニア補間して、前記第1の解像度の4倍の第2の解像度を有する第2の画像信号を生成する
解像度変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解像度変換装置及び解像度変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置は、入力された画像信号の解像度を、その画像表示装置が画像を表示する表示解像度に合わせるように変換する解像度変換部を搭載することがある。典型的には、画像表示装置に搭載されている解像度変換部は、水平1920画素、垂直1080画素のフルHDの画像信号を、水平3840画素、垂直2160画素の4Kの画像信号に変換したり、4Kの画像信号を、水平7680画素、垂直4320画素の8Kの画像信号に変換したりする。一般的な解像度変換部はラインメモリを含んで構成される。
【0003】
このように、解像度変換部は、水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させるよう解像度を変換することが多い。このとき、解像度変換部は、解像度変換後の画像に含まれる斜め線に発生するジャギが少ない滑らかな補間が可能であり、回路規模が比較的小さい、バイリニア法を用いて補間画素を生成するバイリニア補間回路を用いることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種の画像表示装置のうち特に投射型の画像表示装置は、スクリーンに投射される画像の位置を水平方向と垂直方向との少なくとも一方の方向に移動させる画像移動部を搭載するのが一般的である。画像移動部は、見かけ上、画像の位置を水平方向及び垂直方向に整数画素単位以下で移動した画像と等価の画像を生成するために、バイリニア補間回路等の補間回路を含むことがある。画像移動部はラインメモリを含んで構成される。
【0006】
補間回路を含む画像移動部を備える画像表示装置が、さらに水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させる解像度変換部を搭載すると、画像移動部に含まれるラインメモリの他に解像度変換部用のラインメモリを追加する必要がある。即ち、画像移動部及び解像度変換部を備える画像表示装置は、回路規模の増大によるコストアップを招く。ラインメモリを追加することなく、既存の画像移動部を利用することにより、水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させる解像度変換を実現することが望まれる。
【0007】
本発明は、画像移動部に含まれるラインメモリの他にラインメモリを追加することなく、斜め線に発生するジャギが比較的少なく、水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させることができる解像度変換装置及び解像度変換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、入力された第1の解像度を有する第1の画像信号の各フレームの各ラインにおける各画素を水平方向に2画素ずつ出力し、前記各ラインを垂直方向に2ラインずつ出力することにより、前記各フレームの画素数を4倍に拡大した拡大画像信号を生成する最近傍補間部と、ラインメモリ及びバイリニア補間回路を含み、前記拡大画像信号の各フレームにおける各画素を、見かけ上、水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように前記拡大画像信号を補間して、前記第1の解像度の4倍の第2の解像度を有する第2の画像信号を生成する画像移動部とを備える解像度変換装置を提供する。
【0009】
本発明は、フレームメモリに書き込まれた第1の解像度を有する第1の画像信号の各フレームの各ラインにおける各画素を水平方向に2画素ずつ出力し、前記各ラインを垂直方向に2ラインずつ出力することにより前記各フレームの画素数を4倍に拡大した拡大画像信号を生成し、前記拡大画像信号の各ラインをラインメモリによって1ライン分遅延させ、前記拡大画像信号の各フレームにおける各画素を、見かけ上、水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように、前記ラインメモリに入力される各ラインの画素と前記ラインメモリによって1ライン分遅延された各ラインの画素とを用いて前記拡大画像信号をバイリニア補間して、前記第1の解像度の4倍の第2の解像度を有する第2の画像信号を生成する解像度変換方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の解像度変換装置及び解像度変換方法によれば、画像移動部に含まれるラインメモリの他にラインメモリを追加することなく、斜め線に発生するジャギが比較的少なく、水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る解像度変換装置を示すブロック図である。
【
図2】低解像度画像信号のフレームの一例を部分的に示す図である。
【
図3】一実施形態に係る解像度変換装置が備える最近傍補間部がフレームより画素及びラインを読み出す際の画素読み出しアドレス及びライン読み出しアドレスを示す図である。
【
図4】一実施形態に係る解像度変換装置が備える最近傍補間部が
図2に示す低解像度画像信号を最近傍補間した結果得られるフレームを部分的に示す図である。
【
図5A】画像表示装置の表示可能領域と高解像度画像信号のフレームとの位置関係を示す図である。
【
図5B】一実施形態に係る解像度変換装置が備える画像移動部が
図5Aに示す高解像度画像信号のフレームを水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素、移動させた状態を示す図である。
【
図6A】
図5Aにおける高解像度画像信号のフレームの左上角部を拡大した状態を示す拡大図である。
【
図6B】一実施形態に係る解像度変換装置が備える画像移動部が
図6Aに示す高解像度画像信号のフレームを水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素、移動させる状態を概念的に示す概念図である。
【
図6C】一実施形態に係る解像度変換装置が備える画像移動部が
図6Bに示す画像と等価の画像を生成するために実行する補間動作を示す図である。
【
図7】
図2に示す低解像度画像信号のフレームにおける一部の画素を画素値で示す図である。
【
図8A】
図7に示す低解像度画像信号のフレームを一実施形態に係る解像度変換装置が備える最近傍補間部によって最近傍補間した拡大画像信号のフレームを部分的に示す図である。
【
図8B】一実施形態に係る解像度変換装置が備える画像移動部が
図8Aに示す拡大画像信号のフレームを水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素、移動させる状態を概念的に示す概念図である。
【
図8C】一実施形態に係る解像度変換装置が備える画像移動部が
図8Bに示す画像と等価の画像を生成するために実行する補間動作を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る解像度変換装置が備える画像移動部が
図4に示すフレームを水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素、移動させた結果得られるフレームを部分的に示す図である。
【
図10】
図8Aに示すフレームの各画素の画素値と、
図9に示すフレームの各画素の画素値との関係を示す図である。
【
図11】
図2に示す低解像度画像信号のフレームを、一般的なバイリニア補間回路を用いて水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させるよう補間したフレームを部分的に示す図である。
【
図12】
図11に示す低解像度画像信号のフレームの各画素の画素値と、水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させるよう補間したフレームの各画素の画素値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係る解像度変換装置及び解像度変換方法について、添付図面を参照して説明する。
図1において、入力された低解像度画像信号S1の各フレームを構成する画素は、最近傍補間部1のフレームメモリ11に書き込みクロックCL1によって書き込まれる。低解像度画像信号S1は例えばフルHDの画像信号であり、第1の解像度を有する第1の画像信号の一例である。フレームメモリ11はバンク1及び2よりなる2つのバンクを有する。
【0013】
書き込みクロックCL1によるバンク1への1フレームの書き込みが完了すると、書き込みクロックCL1の4倍の周波数の読み出しクロックCL2によって、書き込まれた1フレームがバンク1より読み出される。バンク1への1フレームの書き込みが完了すると、書き込みクロックCL1によるバンク2への1フレームの書き込みが開始され、バンク2への1フレームの書き込みが完了すると、読み出しクロックCL2によって、書き込まれた1フレームがバンク2より読み出される。このように、最近傍補間部1は、低解像度画像信号S1のフレームのバンク1及びバンク2に対する書き込みと読み出しとを互いに交番させる。
【0014】
低解像度画像信号S1のフレームFs1が
図2に示すような斜め線を含む画像である場合を例とする。最近傍補間部1は、フレームメモリ11の
図2に示すフレームFs1が書き込まれたバンク1またはバンク2より、
図3に示す画素読み出しアドレス及びライン読み出しアドレスに従ってフレームFs1の各画素を読み出す。各ラインの画素読み出しアドレスは、001122334455…のように、各画素を連続して2回読み出すように設定されている。ライン読み出しアドレスは、ライン0、ライン0、ライン1、ライン1…のように、各ラインを連続して2回読み出すように設定されている。
【0015】
従って、最近傍補間部1は、低解像度画像信号S1のフレームFs1の各ラインにおける各画素を水平方向に2画素ずつ出力し、各ラインを垂直方向に2ラインずつ出力する。その結果、
図4に示すように、最近傍補間部1は、フレームFs1の画素数を4倍に拡大したフレームFs11を出力する。このように、最近傍補間部1は、低解像度画像信号S1の各フレームの各ラインにおける各画素を水平方向に2画素ずつ出力し、各ラインを垂直方向に2ラインずつ出力することにより、各フレームの画素数を4倍に拡大した拡大画像信号S11(第2の画像信号)を生成して出力する。
【0016】
最近傍補間部1による最近傍補間の動作を式で表すと式(1)のとおりである。低解像度画像信号S1の水平画素数をM、垂直ライン数をN、画素位置座標(x,y)の画素値をf(x,y)、拡大画像信号S11の画素位置座標(i,j)の画素値をg(i,j)とする。
g(i,j) = f(x,y) …(1)
0≦i<2M、0≦j<2Nである。但し、x=i/2、y=j/2であり、x及びyは小数点切り捨ての整数である。
【0017】
図1において、スイッチ2の端子Taには高解像度画像信号S2が入力され、端子Tbには拡大画像信号S11が入力される。高解像度画像信号S2は例えば4Kの画像信号であり、第1の解像度の4倍の第2の解像度を有する第3の画像信号の一例である。スイッチ2は、入力される切換制御信号に従って、高解像度画像信号S2と拡大画像信号S11とを選択的に画像移動部3に供給する。スイッチ2が端子Taに接続されているとき、高解像度画像信号S2は画像移動部3に供給される。スイッチ2が端子Tbに接続されているとき、拡大画像信号S11は画像移動部3に供給される。
【0018】
画像移動部3は、ラインメモリ31とバイリニア補間回路32を含む。図示を省略しているが、画像移動部3は、各ラインの画素を遅延させる画素遅延器も含む。ラインメモリ31は、入力される画像信号を1ライン分遅延させる。後述するように、バイリニア補間回路32は、ラインメモリ31に入力される画像信号及びラインメモリ31より出力される画像信号を用いてバイリニア補間した補間画像を生成する。
【0019】
画像移動部3に高解像度画像信号S2が入力されるときの、画像移動部3の基本的な動作を説明する。
図5Aにおいて、画像移動部3は、画像表示装置の表示可能領域R0内における高解像度画像信号S2のフレームFs2の位置を調整可能に構成されている。
図5Bに示すように、画像移動部3は、二点鎖線で示す位置のフレームFs2を、例えば水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素、移動させることができる。
【0020】
水平方向の右側への移動をプラス、左側への移動をマイナス、垂直方向の下側への移動をプラス、上側への移動をマイナスとする。水平方向の左側に0.5画素、垂直方向の上側に0.5画素の移動は、水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素の移動である。
【0021】
図6Aに示すように、フレームFs2の左上角部には、実線の白丸で示す画素P11~P13、P21~P23、P31~P33が存在する。画素P11~P13、P21~P23、P31~P33の画素値をA~Iとする。フレームFs2の外側の領域は表示可能領域R0の一部であり、破線の白丸はフレームFs2の画素を位置させることができる画素位置を示している。
【0022】
図5Bに示すようにフレームFs2を水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素、移動させるということは、
図6Bに示すように、画素P11~P13、P21~P23、P31~P33を、ハッチングを付した画素位置に移動させることを意味する。
【0023】
ところが、画素P11~P13、P21~P23、P31~P33を移動させた画素位置は実際には画素が存在しない画素位置であり、二点鎖線で示すフレームFs2を実線で示すフレームFs2の位置へと移動させることはできない。そこで、画像移動部3は、見かけ上、水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように高解像度画像信号S2を補間する。
【0024】
具体的には、
図6Cに示すように、バイリニア補間回路32は、移動前の画素P11の画素位置における補間画素P11’の画素値A’を(A+B+D+E)/4なる計算式で生成する。バイリニア補間回路32は、移動前の画素P12の画素位置における補間画素P12’の画素値B’を(B+C+E+F)/4なる計算式で生成する。バイリニア補間回路32は、移動前の画素P21の画素位置における補間画素P21’の画素値D’を(D+E+G+H)/4なる計算式で生成する。バイリニア補間回路32は、移動前の画素P22の画素位置における補間画素P22’の画素値E’を(E+F+H+I)/4なる計算式で生成する。
【0025】
バイリニア補間回路32は、補間画素P13’、P23’、P31’、P32’、P33’及び図示していない他の補間画素の画素値も同様に生成する。バイリニア補間回路32は、移動前のフレームFs2の各画素と同じ画素位置における補間画素を、ラインメモリ31に入力される高解像度画像信号S2及びラインメモリ31より出力される高解像度画像信号S2を用いてバイリニア補間する。
【0026】
図1において、画像移動部3に高解像度画像信号S2が入力されると、画像移動部3は以上の動作によって画像移動高解像度画像信号S21を生成して出力する。
【0027】
画像移動部3は、水平方向に+1画素、+2画素、…のように自然数の画素単位で高解像度画像信号S2を移動させることができる。画像移動部3は、垂直方向に+1画素、+2画素、…のように自然数の画素単位で高解像度画像信号S2を移動させることができる。この場合、画像移動部3は、ラインメモリ31の他のラインメモリを含む複数のラインメモリを備えればよい。
【0028】
スイッチ2が高解像度画像信号S2を画像移動部3に供給しているとき、画像移動部3は、入力される水平方向の移動画素数及び垂直方向の移動画素数を含む画像移動制御信号に従って高解像度画像信号S2の各フレームを移動させる。画像移動部3は、高解像度画像信号S2の各フレームを0.5画素単位で移動させるときには上記のようにバイリニア補間することによって生成した画像移動高解像度画像信号S21を出力する。画像移動部3は、高解像度画像信号S2の各フレームを自然数の画素単位で移動させるときには、画素遅延器またはラインメモリ31等で遅延させた画像移動高解像度画像信号S21を出力する。
【0029】
次に、画像移動部3に拡大画像信号S11が入力されるときの、画像移動部3の動作を説明する。
図7に示すように、
図2に示す低解像度画像信号S1のフレームFs1の左上角部の4つの画素の画素値をA~Dとする。
図7においては、黒の斜め線を省略して図示している。
【0030】
図8Aに示すように、低解像度画像信号S1を最近傍補間部1によって最近傍補間したフレームFs11の左上角部には、実線の白丸で示す画素P11~P13、P21~P23、P31~P33が存在する。画素P11、P12、P21、P22の画素値はA、画素P13及びP23の画素値はB、画素P31及びP32の画素値はC、画素P33の画素値はDである。
図6Aと同様に、フレームFs11の外側の領域は表示可能領域R0の一部であり、破線の白丸はフレームFs11の画素を位置させることができる画素位置を示している。
【0031】
フレームFs11を
図5Bと同様に、水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素、移動させるとする。
図8Bに示すように、画素P11~P13、P21~P23、P31~P33を移動させたハッチングを付した画素位置は実際には画素が存在しない画素位置であり、二点鎖線で示すフレームFs11を実線で示すフレームFs11の位置へと移動させることはできない。そこで、画像移動部3は、見かけ上、水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように拡大画像信号S11を補間する。
【0032】
具体的には、
図8Cに示すように、バイリニア補間回路32は、移動前の画素P11の画素位置における補間画素P11’の画素値A’を(A+A+A+A)/4なる計算式で生成する。補間画素P11’画素値A’は画素値Aである。バイリニア補間回路32は、移動前の画素P12の画素位置における補間画素P12’の画素値A”を(A+B+A+B)/4なる計算式で生成する。補間画素P12’の画素値A”は(A+B)/2である。
【0033】
バイリニア補間回路32は、移動前の画素P21の画素位置における補間画素P21’の画素値A’を(A+A+C+C)/4なる計算式で生成する。間画素P21’の画素値A’は(A+C)/2である。バイリニア補間回路32は、移動前の画素P22の画素位置における補間画素P22’の画素値A”を(A+B+C+D)/4なる計算式で生成する。
【0034】
バイリニア補間回路32は、補間画素P13’、P23’、P31’、P32’、P33’及び図示していない他の補間画素も同様に生成する。バイリニア補間回路32は、移動前のフレームFs11の各画素と同じ画素位置における補間画素を、ラインメモリ31に入力される拡大画像信号S11及びラインメモリ31より出力される拡大画像信号S11を用いてバイリニア補間する。
【0035】
図1において、画像移動部3に拡大画像信号S11が入力されると、画像移動部3は以上の動作によって変換高解像度画像信号S12を生成して出力する。
図9は、画像移動部3に拡大画像信号S11が入力されて、画像移動部3が
図4に示すフレームFs11を水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素、移動させることによって得られるフレームFs12を示している。
図9より分かるように、フレームFs12は高解像度の画像信号であるものの、水平方向の左側及び垂直方向の上側に移動していない。
【0036】
図10は、フレームFs11の各画素の画素値と、フレームFs12の各画素の画素値との関係を示す。画素値B’、C’、D’は具体的な画素値ではなく、画素値B、C、Dとは異なる画素値であることを示す。
【0037】
以上の画像移動部3による動作を式で表すと以下のようになる。入力される画像信号の画素位置座標(x,y)の画素値をp(x,y)とすると、水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素、移動させた画素値p(x,y)は、式(2)で表すことができる。
q(x,y)={p(x,y)+p(x+1,y)+p(x,y+1)+p(x+1,y+1)}/4 …(2)
【0038】
画像移動部3に入力画像信号を拡大画像信号S11とすると、画像移動部3による拡大画像信号S11を水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素、移動させた画像は、式(2)におけるp(x,y)を式(1)のg(i,j)で置き換えることによって表すことができる。
q(i,j)={g(i,j)+g(i+1,j)+g(i,j+1)+g(i+1,j+1)}/4 …(3)
【0039】
ここで、g(i,j)を式(1)のf(x,y)で置き換えると、式(4)となる。
q(i,j)={f(i/2,j/2)+f((i+1)/2),j/2)+f(i/2,((j+1)/2))+f((i+1)/2),((j+1)/2))}/4 …(4)
【0040】
式(1)で右辺の画素位置を示す計算は、x=i/2,y=j/2の小数点以下を切り捨てた整数画素位置で定義しているので、i=2x、j=2yとして式(4)を変形すると次の式(5)~(8)となる。
【0041】
q(i,j)={f(2x/2,2y/2)+f((2x+1)/2),2y/2)
+f(2x/2,((2y+1)/2))+f((2x+1)/2),((2y+1)/2))}/4
={f(x,y)+f(x+0.5,y)+f(x,y+0.5)+f(x+0.5,y+0.5)}/4
={f(x,y)+f(x,y)+f(x,y)+f(x,y)}/4
=f(x,y) …(5)
【0042】
q(i+1,j)={f((2x+1)/2,2y/2)+f((2x+1+1)/2),2y/2)+f((2x+1)/2,((2y+1)/2))+f((2x+1+1)/2),((2y+1)/2))}/4
={f(x+0.5,y)+f(x+1,y)+f(x+0.5,y+0.5)+f(x+1,y+0.5)}/4
={f(x,y)+ f(x+1,y)+f(x,y)+f(x+1,y)}/4
={f(x,y)+f(x+1,y)}/2 …(6)
【0043】
q(i,j+1)={f(2x/2,(2y+1)/2)+f((2x+1)/2),(2y+1)/2)+f(2x/2,((2y+1+1)/2))+f((2x+1)/2),((2y+1+1)/2))}/4
={f(x,y+0.5)+f(x+0.5,y+0.5)+f(x,y+1)+f(x+0.5,y+1)}/4
={f(x,y)+f(x,y)+f(x,y+1)+f(x,y+1)}/4
={f(x,y)+f(x,y+1)}/2 …(7)
【0044】
q(i+1,j+1)={f((2x+1)/2,(2y+1)/2)+f((2x+1+1)/2),(2y+1)/2)+f((2x+1)/2,((2y+1+1)/2))+f((2x+1+1)/2),((2y+1+1)/2))}/4
={f(x+0.5,y+0.5)+f(x+1,y+0.5)+f(x+0.5,y+1)+f(x+1,y+1)}/4
={f(x,y)+f(x+1,y)+f(x,y+1)+f(x+1,y+1)}/4 …(8)
【0045】
図11に示すように、
図2と同じ斜め線を含むフレームFs1を一般的なバイリニア補間回路を用いて水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させるよう補間すると、フレームFs10となる。
図12は、フレームFs1の各画素の画素値と、フレームFs10の各画素の画素値との関係を示す。
図10と同様に、画素値B’、C’、D’は画素値B、C、Dとは異なる画素値であることを示す。
【0046】
一般的なバイリニア補間回路による水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させるよう補間は、式(9)~(12)で表すことができる。0≦x<M、0≦y<Nである。但し、i=2x、j=2yである。
g(i,j)=f(x,y) …(9)
g(i+1,j)={f(x,y)+f(x+1,y)}/2 …(10)
g(i,j+1)={f(x,y)+f(x,y+1)}/2 …(11)
g(i+1,j+1)={f(x,y)+f(x+1,y)+f(x,y+1)+f(x+1,y+1)}/4 …(12)
【0047】
式(9)~(12)と式(5)~(8)とを比較すると、画像移動部3による拡大画像信号S11を水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素、移動させた画像と、低解像度画像信号S1を一般的なバイリニア補間回路を用いて水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させるよう補間した画像とは同一であることが分かる。即ち、互いに同じ位置の画素どうしを比較して、
図10に示すフレームFs12の各画素の画素値と
図12に示すフレームFs10の各画素の画素値とは同じである。
【0048】
図1に示す解像度変換装置によれば、次の動作によって、画像移動部3が有するバイリニア補間回路32とは別のバイリニア補間回路を設けることなく、低解像度画像信号S1の解像度を4倍に変換した変換高解像度画像信号S12を生成することが可能である。最近傍補間部1は、低解像度画像信号S1の水平及び垂直の画素数をそれぞれ2倍に増大させた拡大画像信号S11を生成する。画像移動部3は、見かけ上、水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するように拡大画像信号S11を補間して、変換高解像度画像信号S12を生成する。
【0049】
スイッチ2に端子Tbへの接続を指示する切換制御信号を供給するとき、その切換制御信号を画像移動部3にも供給するのがよい。画像移動部3は、端子Tbへの接続を指示する切換制御信号が入力されれば、入力された拡大画像信号S11を、固定的に、水平方向に-0.5画素、垂直方向に-0.5画素だけ移動させた画像と等価の画像を生成するようにバイリニア補間すればよい。画像移動部3に端子Taへの接続を指示する切換制御信号が供給される場合には、画像移動部3は、画像移動制御信号に従って高解像度画像信号S2の各フレームを移動させればよい。
【0050】
画像移動部3は、バイキュービック補間回路を備える構成であってもよい。バイキュービック補間回路の一部の回路を利用してバイリニア補間と同等の補間を実行するも可能である。この場合も、画像移動部3がバイリニア補間回路を備えることに相当する。
【0051】
なお、フレームメモリ11は画像表示装置が当然に備えているものであるので、本実施形態に係る解像度変換装置を構成する上で新たに追加されるものではない。従って、解像度変換装置がフレームメモリ11を備えても、回路規模の増大によるコストアップを招くということはない。また、最近傍補間部1は、フレームメモリ11に書き込まれた低解像度画像信号S1を
図3に示す読み出しアドレスによって読み出すよう制御することによって、ラインメモリを追加することなく、水平方向及び垂直方向それぞれに2倍の拡大画像を生成することができる。
【0052】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。本実施形態においては、フルHDの画像信号を低解像度画像信号S1、4Kの画像信号を高解像度画像信号S2としたが、4Kの画像信号を低解像度画像信号S1、8Kの画像信号を高解像度画像信号S2としてもよい。低解像度画像信号S1及び高解像度画像信号S2は輝度信号であってもよいし、色信号であってもよい。RGBの3原色信号を解像度変換する場合には、
図1に示す解像度変換装置を3系統設ければよい。
【符号の説明】
【0053】
1 最近傍補間部
2 スイッチ
3 画像移動部
11 フレームメモリ
31 ラインメモリ
32 バイリニア補間回路