(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173630
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/15 20060101AFI20231130BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F24F13/15 A
B60H1/34 611B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086018
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慎也
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081FA01
3L081HA08
3L081HB02
3L211BA60
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】操作部による影響を抑制して配風性能に優れた風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置は、内部に通気路を区画するケース体と、ケース体にて通気路に回動可能に配置され、回動に応じて風向を調整するフィン16と、を備える。ケース体は、通気路の下流端に、下流側に向かい風軸側に傾斜する傾斜部を有する。フィン16は、第一フィン20と、第一フィン20に対し通気路の上流側に近接して位置し、第一フィン20の回動に連動して第一フィン20の傾斜方向に対して傾斜する第二フィン21と、第一フィン20に所定範囲Aで移動可能に配置された操作部47と、を有する。第二フィン21は、操作部47に対し通気方向に一部がオーバーラップし、所定範囲Aに開口部35を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通気路を区画するケース体と、
このケース体にて前記通気路に回動可能に配置され、回動に応じて風向を調整するフィンと、を備え、
前記ケース体は、前記通気路の下流端に、下流側に向かい風軸側に傾斜する傾斜部を有し、
前記フィンは、
第一フィンと、
この第一フィンに対し前記通気路の上流側に近接して位置し、この第一フィンの回動に連動してこの第一フィンの傾斜方向に対して傾斜する第二フィンと、
前記第一フィンに所定範囲で移動可能に配置された操作部と、を有し、
前記第二フィンは、前記操作部に対し通気方向に一部がオーバーラップし、前記所定範囲に開口部を備えた
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
第二フィンは、第一フィンの回動に連動してこの第一フィンと反対方向に回動することで前記第一フィンの傾斜方向に対して傾斜する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
第二フィンは、開口部の位置で断続されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【請求項4】
第二フィンは、開口部の両側を連結する連結部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動に応じて風向を調整するフィンを備えた風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置においては、近年、吹出口の幅を狭くした薄型のものが増えてきている。この構成の場合、通気路の下流端に吹出口に連なって傾斜部が形成されているとともに、吹出口に1枚のフィンが配置され、このフィンに回動操作用の操作ノブが配置されて、フィンの回動と傾斜部の傾斜とによって風向を調整可能としている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-6054号公報 (第5-11頁、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成の場合、1枚のフィンと傾斜部との傾斜のみに依存して風向を調整するため、フィンに配置された操作ノブの位置を流れる空調風とそれ以外の位置でフィンに沿って流れる空調風とで配風に差が生じやすい。そのため、それらの配風の差に起因する風向の微妙な調整への影響を抑制することが求められる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、操作部による影響を抑制して配風性能に優れた風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、内部に通気路を区画するケース体と、このケース体にて前記通気路に回動可能に配置され、回動に応じて風向を調整するフィンと、を備え、前記ケース体は、前記通気路の下流端に、下流側に向かい風軸側に傾斜する傾斜部を有し、前記フィンは、第一フィンと、この第一フィンに対し前記通気路の上流側に近接して位置し、この第一フィンの回動に連動してこの第一フィンの傾斜方向に対して傾斜する第二フィンと、前記第一フィンに所定範囲で移動可能に配置された操作部と、を有し、前記第二フィンは、前記操作部に対し通気方向に一部がオーバーラップし、前記所定範囲に開口部を備えたものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、第二フィンは、第一フィンの回動に連動してこの第一フィンと反対方向に回動することで前記第一フィンの傾斜方向に対して傾斜するものである。
【0009】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、第二フィンは、開口部の位置で断続されているものである。
【0010】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、第二フィンは、開口部の両側を連結する連結部を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、通気路の下流端の傾斜部と、近接配置された第一フィン及び第二フィンと、によって、操作部による風向の影響を抑制して上下方向の配風性能を向上できる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、フィンを簡素に構成できる。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、開口部に一部が位置する操作部付近での配風角度は第二フィンを備えない従来構造と差がなく、操作部を除く大部分の位置での配風性能が第二フィンによって向上するので、操作部による配風の角度と操作部以外の位置での第一フィンによる配風の角度との角度差を抑制できる。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、第二フィンが両端部で支持されるので、より安定して回動可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の風向調整装置を示す中立位置の一部の斜視図、(b)は同上風向調整装置を示す上振り位置の一部の斜視図である。
【
図2】(a)は同上風向調整装置を示す中立位置の一部の操作部を除く位置での断面図、(b)は同上風向調整装置を示す上振り位置の一部の操作部を除く位置での断面図である。
【
図3】(a)は同上風向調整装置を示す中立位置の一部の操作部の位置での断面図、(b)は同上風向調整装置を示す上振り位置の一部の操作の位置での断面図である。
【
図4】同上風向調整装置の第一フィンの一部を示す斜視図である。
【
図5】同上風向調整装置の第二フィンの一部を示す斜視図である。
【
図8】(a)は
図7のI-I相当位置での上振り位置の空気の流れの一例を示す説明図、(b)は
図7のII-II相当位置での上振り位置の空気の流れの一例を示す説明図、(c)は
図7のIII-III当位置での上振り位置の空気の流れの一例を示す説明図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置を示す上振り位置の一部の斜視図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置を示す上振り位置の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図6及び
図7において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0018】
風向調整装置1は、ケース体3を備える。ケース体3は、側壁4を有する筒状に形成されている。本実施の形態において、側壁4は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、側壁4は、角筒状に形成されている。側壁4により、内部に通気路5が囲まれている。側壁4の中心軸に平行な方向が通気路5の通気方向である。本実施の形態において、通気路5の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路5において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0019】
側壁4は、通気路5の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、側壁4は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置1は、横型の薄型に形成されている。側壁4は、通気路5の中央部、すなわち側壁4またはケース体3の中心軸を挟んで互いに対向する一対の側壁部6と、これら一対の側壁部6間を連結する一対の端壁部7と、を一体的に有する。一対の側壁部6は、左右方向に互いに対向し、一対の端壁部7は、上下方向に互いに対向する。一対の側壁部6,6と一対の端壁部7,7との一端部である後端部により、通気路5に空気を受け入れる受入口8が囲まれ、一対の側壁部6,6と一対の端壁部7,7との他端部である前端部により、通気路5から空気を吹き出す吹出口9が囲まれる。つまり、ケース体3の一端部である後端部は、通気路5に空気を受け入れる受入口8であり、ケース体3の他端部である前端部は、通気路5から空気を吹き出す吹出口9となっている。受入口8と吹出口9との間にこれらを連通する通気路5が形成されている。吹出口9は、上下に狭く、左右に広い、横長の形状となっている。吹出口9は、その上下の開口縁が下流側に向かって拡開状に傾斜されていてもよい。
【0020】
端壁部7,7は、吹出口9に連なる前端部、つまり通気路5の下流端の位置に、傾斜部11を有する。傾斜部11は、下流側に向かい風軸側、つまりケース体3の中心軸側に徐々に傾斜している。
【0021】
ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。本実施の形態では、ケース体3は、ケース体本体部13と、ケース体本体部13の前端部に取り付けられる意匠部であるフィニッシャ14と、を備え、受入口8がケース体本体部13に形成され、吹出口9がフィニッシャ14に形成されている。
【0022】
ケース体3には、フィン16が配置されている。フィン16は、ルーバとも呼ばれる。フィン16は、通気路5を通過して吹出口9から吹き出される空調風の風向を回動により調整する。
【0023】
フィン16は、第一フィン20と、第二フィン21と、を備える。好ましくは、フィン16は、第三フィン22をさらに備える。
図1(a)及び
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)、及び、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第一フィン20の回動に連動して、第二フィン21が第一フィン20の傾斜方向と交差する方向に傾斜するように構成されている。図示される例では、第一フィン20と第二フィン21とが、それぞれ上下方向に回動可能で、かつ、互いに連動して反対方向に回動するように連結されている。つまり、第一フィン20が上方に回動すると第二フィン21が下方に回動し、第一フィン20が下方に回動すると第二フィンが上方に回動するように連結されている。また、第三フィン22は、第一フィン20及び第二フィン21の回動方向と交差または直交する方向、本実施の形態では左右方向に回動可能となっている。
【0024】
図4及び
図6に示す第一フィン20は、フィン16のうち、最下流すなわち最前部に位置するものである。第一フィン20は、吹出口9に臨んで1枚配置されている。すなわち、第一フィン20は、通気路5の下流端に位置する。第一フィン20は、全体がケース体3の内部にて通気路5に位置していてもよいし、一部が吹出口9からケース体3の外部に突出していてもよい。
【0025】
第一フィン20は、板状に形成されている。第一フィン20は、平面状の両主面20aが風を案内する案内面となっている。第一フィン20は、長手状に形成されている。第一フィン20は、長手方向を左右方向に沿わせて配置され、上下に主面20aが位置する横フィンである。第一フィン20は、前端部側がケース体3の傾斜部11,11の仮想延長線(仮想延長面)と交差する位置にある。第一フィン20は、長手方向の両端部に回動部24を有する。回動部24が、ケース体3側の回動受け部25にそれぞれ回動可能に支持されている。回動部24と回動受け部25とは、いずれか一方が軸部で、他方が軸受け部である。本実施の形態では、回動部24が第一フィン20に突設された軸部であり、丸穴部である回動受け部25に回動可能に挿入保持されている。
【0026】
回動部24は、好ましくはその軸心が第一フィン20の重心を通る位置にある。本実施の形態において、回動部24は、第一フィン20の短手方向の中央部付近にある。
【0027】
回動受け部25は、ケース体3の側壁部6にそれぞれ形成されていてもよいが、本実施の形態では、軸受け部材27に形成されている。軸受け部材27は、スペーサなどとも呼ばれる。軸受け部材27は、ケース体3の内部すなわち通気路5内において、側壁部6に近接する位置で側壁部6にそれぞれ対向して位置し、回動部24を側壁部6に対して離れた位置で保持するようになっている。
【0028】
また、第一フィン20は、長手方向の両端部に、第二フィン21と連結されるフィン連結部30を有する。フィン連結部30は、回動部24に対し、通気路5の上流側に離れて位置する。図示される例では、フィン連結部30は、第一フィン20の後縁部に対してさらに後方に延出された延出部31に形成されている。延出部31が第二フィン21に形成された連結受け部32に回動可能に接続される。
【0029】
図5及び
図6に示す第二フィン21は、第一フィン20よりも上流側に位置する。第二フィン21は、吹出口9よりも上流側にて、第一フィン20に近接して1枚配置されている。第二フィン21は、第一フィン20の後縁部に対して前縁部が接触または配風に影響がない程度の僅かな隙間を有する位置にある。第二フィン21は、全体がケース体3の内部にて通気路5に位置する。
【0030】
第二フィン21は、板状に形成されている。第二フィン21は、平面状の両主面21aが風を案内する案内面となっている。第二フィン21は、長手状に形成されている。第二フィン21は、第一フィン20に対して平行または略平行に位置する。すなわち、第二フィン21は、長手方向を左右方向に沿わせて配置され、上下に主面21aが位置する横フィンである。第二フィン21は、上下に最大に回動した位置で、主面21aの仮想延長線(仮想延長面)上にケース体3の上下の傾斜部11,11が位置するように配置される。本実施の形態では、第二フィン21は、複数のフィン片34に分割されている。フィン片34は、例えば2つ設定されている。フィン片34は、左右に互いに離れて位置する。フィン片34は、左右方向の長さが略等しく設定されている。フィン片34,34間が開口部35となっている。
【0031】
フィン片34のそれぞれの開口部35とは互いに反対側の端部に、連結受け部32が形成されている。図示される例では、右側のフィン片34の右端部と、左側のフィン片34の左端部と、にそれぞれ連結受け部32が形成されている。連結受け部32とフィン連結部30とは、いずれか一方が軸部、他方が軸受け部である。本実施の形態では、フィン連結部30が回動部24の軸心と平行または略平行な軸心を有する丸穴部、連結受け部32がフィン連結部30に回動可能に挿入保持される軸部である。連結受け部32は、第二フィン21(フィン片34)の前側寄りの位置、好ましくは前縁部寄りの位置にあり、フィン片34の長手方向の端部に突設されている。
【0032】
また、第二フィン21は、長手方向の端部に回動部37を有する。回動部37が、ケース体3側の受け部38に回動可能かつ移動可能(摺動可能)に支持されている。回動部37と受け部38とは、いずれか一方が軸部で、他方が軸受け部である。本実施の形態では、回動部37が第二フィン21(フィン片34)に突設された摺動軸部であり、長穴部である受け部38に回動可能かつ移動可能に挿入保持された摺動軸穴である。
【0033】
回動部37は、好ましくはその軸心が第二フィン21(フィン片34)の重心を通る位置にある。本実施の形態において、回動部37は、第二フィン21(フィン片34)の短手方向の中央部付近にある。回動部37は、連結受け部32に対して上流側である後側に離れて位置する。図示される例では、フィン片34のそれぞれの一端部にのみ回動部37を有する。つまり、本実施の形態において、フィン片34は、片持ち支持されている。
【0034】
受け部38は、前後方向に沿って長穴状に形成されている。受け部38は、ケース体3の側壁部6にそれぞれ形成されていてもよいが、本実施の形態では、軸受け部材27に形成されている。
【0035】
図6に示す第三フィン22は、第二フィン21よりも上流側に位置する。第三フィン22は、第二フィン21(フィン片34)の後縁部に対して後方に僅かに離れて位置する。第三フィン22は、複数設定され、互いに連動して同方向に回動可能となっている。第三フィン22は、板状に形成されている。第三フィン22は、平面状の両主面22aが風を案内する案内面となっている。第三フィン22は、左右に主面22aが位置する縦フィンである。第三フィン22は、端部に回動部40を有する。第三フィン22は、上下両端部に回動部40を有する。回動部40が、ケース体3側の回動受け部41にそれぞれ回動可能に支持されている。回動部40と回動受け部41とは、いずれか一方が軸部で、他方が軸受け部である。本実施の形態では、回動部40が第三フィン22に突設された軸部であり、丸穴部である回動受け部41に回動可能に挿入保持されている。
【0036】
回動受け部41は、本実施の形態ではケース体3の端壁部7にそれぞれ形成されていてるが、その他の部材に形成されていてもよい。
【0037】
また、第三フィン22は、回動部40に対して離れた位置に、リンク部43を有する。リンク部43は、回動部40に対し、通気路5の上流側に離れて位置する。各第三フィン22のリンク部43が、リンク44に形成されたリンク受け部45により連結されることで、複数の第三フィン22の回動が同方向に連動するように構成されている。
【0038】
リンク部43とリンク受け部45とは、いずれか一方が軸部で、他方が軸受け部である。本実施の形態では、リンク部43が第三フィン22に突設された軸部であり、穴部であるリンク受け部45に回動可能に挿入保持されている。リンク部43は、回動部40と平行または略平行な軸状に形成されている。
【0039】
そして、フィン16の動作は、操作部47によって操作される。操作部47は、操作ノブとも呼ばれる摘み部である。操作部47は、第一フィン20に取り付けられて吹出口9(
図7)から露出している。操作部47を第一フィン20と一体的に吹出口9(
図7)の上下幅の範囲で上下に移動させることで、第一フィン20と、第一フィン20に連結されている第二フィン21と、が連動して上下方向に回動される。
【0040】
操作部47は、板状に形成されている。操作部47は、平面状の両主面47aが風を案内する案内面となっている。操作部47には第一フィン20が左右方向に挿通されている。そのため、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、操作部47の両主面47aは、第一フィン20の両主面20aに対して第一フィン20の厚み方向に突出した位置にある。また、操作部47の両主面47aは、前後方向つまり第一フィン20の長手方向と交差または直交する方向に延びている。操作部47の両主面47aの後端部は、第一フィン20の後端部よりも後方に延出されている。そのため、操作部47の両主面47aの一部である後端部付近は、第二フィン21の両主面21aの前端部に対して、通気方向すなわち前後方向にオーバーラップしている。
【0041】
また、操作部47は、第一フィン20に沿って移動可能に配置され、第一フィン20に沿って移動させることで第三フィン22を操作可能となっている。操作部47には、第三フィン22と連結される回動連結部50が接続されている。回動連結部50は、操作部47の後部に位置する。回動連結部50が第三フィン22側の回動受け部51と連結されることで、第一フィン20に対する操作部47の移動が第三フィン22に伝達される。
【0042】
回動連結部50と回動受け部51とは、操作部47の移動を第三フィン22の回動に連動させるように構成されていれば、任意に形成されていてよいが、本実施の形態では、回動連結部50がフォーク状の突出部であり、回動受け部51が、回動連結部50によって左右から挟まれた軸部である。回動連結部50は、操作部47に対して上下方向に回動可能に接続されている。
【0043】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、操作部47は、第一フィン20に対し左右方向の所定範囲A内で移動可能となっている。操作部47は、第二フィン21の開口部35、すなわち本実施の形態ではフィン片34,34の間の範囲で左右方向に移動可能となっている。いわば、開口部35が、第二フィン21と操作部47との干渉を避けるとともに操作部47の移動可能な所定範囲Aを設定する設定部となっている。本実施の形態において、所定範囲Aは第一フィン20の左右方向の中央部を含む。
【0044】
そして、風向調整装置1は、受入口8を空調装置と連結して配置する。空調装置からの空調風は、受入口8から通気路5を通過し、フィン16によって配風されて吹出口9から吹き出される。
【0045】
本実施の形態の風向調整装置1は、フィン16の第一フィン20及び第二フィン21による上下方向の配風と、第三フィン22による左右方向の配風と、の組み合わせにより、任意方向への空調風の吹き出しが可能となる。
【0046】
まず、左右方向の配風については、乗員などの使用者が操作部47を摘み、操作部47を第一フィン20に沿って左右方向に移動させると、操作部47と回動連結部50及び回動受け部51により連結された第三フィン22の前端部側が回動部40を中心として操作部47の移動方向へと回動し、その第三フィン22にリンク44を介して連結された他の第三フィン22が連動して回動部40を中心として同方向に回動することで、複数の第三フィン22が互いに略平行を保ちつつ左右方向に連動回動し、空調風は第三フィン22の主面22aに沿って左右方向に整流され、吹出口9から左右方向に吹き出す。
【0047】
また、上下方向の配風については、乗員などの使用者が操作部47を摘み、操作部47を第一フィン20と一体的に上下に回動させることで、第一フィン20及び第二フィン21が上下に回動し、空調風は第一フィン20の主面20a及び第二フィン21の主面21aに沿って上下方向に整流され、吹出口9から上下方向に吹き出す。
【0048】
具体的に、
図1(a)、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、操作部47を中立位置(ニュートラル位置)とした状態では、第一フィン20の主面20a及び第二フィン21の上下の主面21aがそれぞれ風軸に沿って、つまり前後方向に沿って略同一面上に位置し、操作部47の上下の主面47aがそれら第一フィン20の主面20a及び第二フィン21の主面21aに平行または略平行に位置する。そのため、通気路5内の上下方向の中央部付近の風Wは、
図2(a)に示すように操作部47が位置しない部分では第二フィン21の主面21a及び第一フィン20の上下の主面20aに沿って吹出口9へと直進し、
図3(a)に示すように操作部47が位置する部分では第二フィン21の上下の主面21a及び操作部47の上下の主面47aに沿って吹出口9へと直進して、ケース体3の軸方向つまり通気路5の通気方向に沿って吹出口9から正面方向に吹き出す。また、通気路5内の上部及び下部、つまり端壁部7,7付近を通過する風Wは、それぞれ傾斜部11により傾斜された後、第一フィン20の上下の主面20aに当たり、これらの主面20aに沿って吹出口9から正面方向に吹き出す。
【0049】
また、
図1(b)、
図2(b)及び
図3(b)に、操作部47を上方に回動させた場合を例に挙げて示す。操作部47を下方に回動させた場合には、それぞれ上下逆動作となるのみであるから、説明を省略する。操作部47を中立位置から上方に回動させると、操作部47とともに第一フィン20の前端部側が回動部24を中心として上方に回動する。すると、第一フィン20において回動部24よりも後方に位置するフィン連結部30が下方に移動することで、フィン連結部30に対し連結受け部32を介して連結された第二フィン21(フィン片34)が、受け部38に沿って前方に移動する回動部37を中心として前端部側が下方に移動するように回動する。したがって、第一フィン20と第二フィン21(フィン片34)とが、互いに上下方向に逆に回動し、主面20aと主面21aとが左右方向から見てV字状を構成する。また、操作部47は、上側の主面47aが吹出口9の上縁部に近接する。
【0050】
このとき、第二フィン21の開口部35の位置、すなわち操作部47が配置されている位置では、通気路5の上下方向の中央部付近を直進してきた風W1の一部が開口部35を通過してそのまま第一フィン20の主面20aに当たり、第一フィン20の主面20aに沿って第一フィン20の傾斜方向つまり操作部47の操作方向である上方向へと向かい、下側の傾斜部11の傾斜に沿って上方へと吹出口9から吹き出す。
【0051】
また、通気路5の上下方向の中央部付近を直進してきた風のうち、開口部35から第一フィン20に当たることなく直進する風W2はそもそも風量が少ない。加えて、開口部35を除く位置で第二フィン21の下側の主面21aに当たった後、第一フィン20の下側の主面20a及び下側の傾斜部11に当たって上方へと吹出口9から吹き出していく風W3の風量が圧倒的に多く(
図8(a)及び
図8(c)、図中白色ほど風量(圧力)が大きい)、かつ、僅かに直進する風W2があっても、風量が多い風W3の一部が開口部35側に流れ込むため、風向調整への影響も極めて少ない。
【0052】
なお、操作部47が位置する箇所では、通気路5内の第一フィン20の振り方向側、ここでは上部において操作部47の上側の主面47aと吹出口9の上縁部との隙間が狭くなって通風がほぼ無く(
図3(b))、風量が多い操作部47の下方でも、操作部47の下側の主面47aが下側の傾斜部11に対向し吹出口9近傍まで延在するので、風向に差が生じる風の流れが発生しにくい(
図8(b)、図中白色ほど風量(圧力)が大きい)。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、通気路5の下流端に、下流側に向かい風軸側に傾斜する傾斜部11を有するケース体3に、第一フィン20と、第一フィン20に対し通気路5の上流側に近接してして第一フィン20の回動に連動して第一フィン20の傾斜方向と交差する方向に傾斜する第二フィン21と、を配置し、かつ、第一フィン20に所定範囲Aで操作部47を移動可能に配置して、第二フィン21の一部を、操作部47に対し通気方向にオーバーラップさせるとともに、第二フィン21の所定範囲Aに開口部35を形成することで、通気路5の下流端の傾斜部11と、近接配置された第一フィン20及び第二フィン21と、によって、操作部47による風向の影響を抑制して上下方向の配風性能を向上できる。
【0054】
したがって、上下幅が小さい吹出口9に1枚のみの第一フィン20が配置されている、薄型の風向調整装置1であっても、風向の微妙な調整が可能となる。
【0055】
また、第一フィン20の回動に連動して第二フィン21が第一フィン20と反対方向に回動することで第一フィン20の傾斜方向と交差する方向に傾斜するように構成されているため、例えば第一フィン20と第二フィン21とを回動可能に連結するとともに第二フィン21の回動に伴って第二フィン21の回動部37を前後方向にスライド可能とするだけで容易に構成でき、フィン16を簡素に構成できる。
【0056】
さらに、第二フィン21が開口部35の位置で複数のフィン片34に断続されているため、開口部35に一部が位置する操作部47付近での配風角度は第二フィン21を備えない従来構造と差がなく、操作部47を除く大部分の位置での配風性能が第二フィン21のフィン片34によって向上するので、操作部47による配風の角度と操作部47以外の位置での第一フィン20による配風の角度との角度差を抑制できる。
【0057】
そして、開口部35を左右方向の中央部に設定することで、開口部35に対して、開口部35の左右両側の位置で第二フィン21により配風される風を均等に流入させることができ、配風の偏りを抑制できる。
【0058】
また、操作部47と第三フィン22との連結構造について、従来の回動連結部50及び回動受け部51の構造をそのまま利用できるので、簡単な構成で風向性能を向上させることが可能となる。
【0059】
さらに、第一フィン20と第二フィン21とは、互いに連動して回動するものであり、通気路5内で通気方向に大きく移動するものではないので、第一フィン20と第二フィン21とが移動するための大きなスペースが不要で、ケース体3が大型化することもない。
【0060】
なお、第二フィン21の開口部35については、
図9に示す第2の実施の形態のように、第二フィン21の一部を刳り貫いて形成されていてもよい。この場合には、第二フィン21が、開口部35の両側間を連結する連結部55を有して1枚で形成され、複数のフィン片34に分断されない。連結部55は、第二フィン21の後端部に位置する。このように開口部35を形成する場合であっても、操作部47による影響を抑制して配風性能に優れた風向調整装置1を提供できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、第二フィン21が長手方向の両端部の回動部37でケース体3側に対し支持(両持ち支持)されることとなり、より安定して回動可能となる。
【0061】
また、開口部35は、第二フィン21をフィン片34,34に分断するものに限らず、
図10に示す第3の実施の形態のように、第二フィン21の長手方向の一端部に偏って位置していてもよい。この場合、第二フィン21は、複数のフィン片34を備えず、1枚で形成される。
【0062】
さらに、上記の各実施の形態において、風向調整装置1は、横型のものとしたが、フィン16の長手方向を上下方向とした、縦型のものであっても、同様に構成できる。
【0063】
また、風向調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 風向調整装置
3 ケース体
5 通気路
11 傾斜部
16 フィン
20 第一フィン
21 第二フィン
35 開口部
47 操作部
55 連結部
A 所定範囲