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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173633
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】締結装置および締結装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B23P19/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086028
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】江頭 健人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 啓
(72)【発明者】
【氏名】中村 太
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅野 伸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 篤
(57)【要約】
【課題】被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入してボルトにナットを締結する動作を自動化する。
【解決手段】ナット保持機構10と、ナット保持機構10に取り付けられる移動機構20と、移動機構20に取り付けられる把持機構30と、ナット保持機構10を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構と、ナット保持機構10がナット3を保持した状態でワッシャ4を把持するよう移動機構20および把持機構30を制御し、ワッシャ4にボルト2aを挿入するよう位置決め機構を制御し、把持機構30がワッシャ4を把持した状態でナット3をボルト2aに接触させるよう移動機構20を制御し、ナット3がボルト2aに接触した状態で保持部11を軸線Z1回りに回転させてナット3をボルト2aに締結するよう回転部12を制御する制御装置と、を備える締結装置を提供する。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入して前記ボルトにナットを締結する締結装置であって、
軸線に沿って延びる円筒状に形成されるとともに先端部で前記ナットを保持する保持部と、前記保持部を前記軸線回りに回転させる回転部と、を有するナット保持機構と、
前記ナット保持機構に取り付けられるとともに前記軸線に沿って前記ナット保持機構に対して移動可能な移動機構と、
前記移動機構に取り付けられるとともに前記軸線に直交する方向に沿って一対の把持部を近接または離間させる把持機構と、
前記ナット保持機構を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構と、
前記ナット保持機構が前記ナットを保持した状態で前記軸線に沿った前記先端部の前方において一対の前記把持部を近接させて前記ワッシャを把持するよう前記移動機構および前記把持機構を制御し、前記ワッシャに前記ボルトを挿入するよう前記位置決め機構を制御し、前記把持機構が前記ワッシャを把持した状態で前記ナットを前記ボルトに接触させるよう前記移動機構を制御し、前記ナットが前記ボルトに接触した状態で前記保持部を前記軸線回りに回転させて前記ナットを前記ボルトに締結するよう前記回転部を制御する制御部と、を備える締結装置。
【請求項2】
前記ワッシャは平面視が略楕円形状に形成されており、
前記把持機構は、前記ワッシャの長軸方向の端部を一対の前記把持部により把持し、
前記把持部は、前記軸線に沿った方向に平面視した場合に前記回転部の回転方向の下流側に前記ワッシャの前記長軸方向の端部が前記回転方向に回転することを防止する突起部を有する請求項1に記載の締結装置。
【請求項3】
前記把持部は、一対の前記把持部の一方を固定した状態で一対の前記把持部の他方を前記軸線に直交する方向に移動させることにより前記ワッシャを把持する請求項1または請求項2に記載の締結装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記先端部に配置される前記ナットを吸引することにより前記ナットを保持する請求項1または請求項2に記載の締結装置。
【請求項5】
被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入して前記ボルトにナットを締結する締結装置の制御方法であって、
前記締結装置は、
軸線に沿って延びる円筒状に形成されるとともに先端部で前記ナットを保持する保持部と、前記保持部を前記軸線回りに回転させる回転部と、を有するナット保持機構と、
前記ナット保持機構に取り付けられるとともに前記軸線に沿って前記ナット保持機構に対して移動可能な移動機構と、
前記移動機構に取り付けられるとともに前記軸線に直交する方向に沿って一対の把持部を近接または離間させる把持機構と、
前記ナット保持機構を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構と、を備え、
前記ナット保持機構が前記ナットを保持した状態で前記軸線に沿った前記先端部の前方において一対の前記把持部を近接させて前記ワッシャを把持するよう前記把持機構を制御する把持工程と、
前記ワッシャに前記ボルトを挿入するよう前記位置決め機構を制御する挿入工程と、
前記把持機構が前記ワッシャを把持した状態で前記ナットを前記ボルトに接触させるよう前記移動機構を制御し、前記ナットが前記ボルトに接触した状態で前記保持部を前記軸線回りに回転させて前記ナットを前記ボルトに締結するよう前記回転部を制御する締結工程と、を備える締結装置の制御方法。
【請求項6】
前記把持工程は、一対の前記把持部の一方を固定した状態で一対の前記把持部の他方を前記軸線に直交する方向に移動させることにより前記ワッシャを把持するよう前記把持機構を制御する請求項5に記載の締結装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、締結装置および締結装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、締結部材ランナによりナットを保持して回転させることにより、ねじ溝が形成されたボルトにナットを締結する締結システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の締結システムは、締結部材と被締結部材との間に板部材を挟むことで、耐熱補強や耐圧補強がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-146801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボルトにナットを締結する組立動作を自動化する要望があるが、自動化するためにはボルトにワッシャ等の板部材を挿入して位置を固定した状態で、ボルトに対してナットを位置決めし、ボルトにナットを締結する動作を行う必要がある。しかしながら、特許文献1では、被締結部材に固定される複数のボルトに予め板部材を挿入する必要があり、組立動作を自動化することができない。また、被締結部材に対して板部材の位置を固定した状態でボルトに対してナットを締結するためには、板部材の位置を固定するための別途の工具が必要となる。さらに、別途の工具を用いて、被締結部材に対して板部材の位置を固定する作業を行う必要がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入してボルトにナットを締結する動作を自動化することが可能な締結装置および締結装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る締結装置および締結装置の制御方法は、以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る締結装置は、被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入して前記ボルトにナットを締結する締結装置であって、軸線に沿って延びる円筒状に形成されるとともに先端部で前記ナットを保持する保持部と、前記保持部を前記軸線回りに回転させる回転部と、を有するナット保持機構と、前記ナット保持機構に取り付けられるとともに前記軸線に沿って前記ナット保持機構に対して移動可能な移動機構と、前記移動機構に取り付けられるとともに前記軸線に直交する方向に沿って一対の把持部を近接または離間させる把持機構と、前記ナット保持機構を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構と、前記ナット保持機構が前記ナットを保持した状態で前記軸線に沿った前記先端部の前方において一対の前記把持部を近接させて前記ワッシャを把持するよう前記移動機構および前記把持機構を制御し、前記ワッシャに前記ボルトを挿入するよう前記位置決め機構を制御し、前記把持機構が前記ワッシャを把持した状態で前記ナットを前記ボルトに接触させるよう前記移動機構を制御し、前記ナットが前記ボルトに接触した状態で前記保持部を前記軸線回りに回転させて前記ナットを前記ボルトに締結するよう前記回転部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
また、本開示の一態様に係る締結装置の制御方法は、被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入して前記ボルトにナットを締結する締結装置の制御方法であって、前記締結装置は、軸線に沿って延びる円筒状に形成されるとともに先端部で前記ナットを保持する保持部と、前記保持部を前記軸線回りに回転させる回転部と、を有するナット保持機構と、前記ナット保持機構に取り付けられるとともに前記軸線に沿って前記ナット保持機構に対して移動可能な移動機構と、前記移動機構に取り付けられるとともに前記軸線に直交する方向に沿って一対の把持部を近接または離間させる把持機構と、前記ナット保持機構を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構と、を備え、前記ナット保持機構が前記ナットを保持した状態で前記軸線に沿った前記先端部の前方において一対の前記把持部を近接させて前記ワッシャを把持するよう前記把持機構を制御する把持工程と、前記ワッシャに前記ボルトを挿入するよう前記位置決め機構を制御する挿入工程と、前記把持機構が前記ワッシャを把持した状態で前記ナットを前記ボルトに接触させるよう前記移動機構を制御し、前記ナットが前記ボルトに接触した状態で前記保持部を前記軸線回りに回転させて前記ナットを前記ボルトに締結するよう前記回転部を制御する締結工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入してボルトにナットを締結する動作を自動化することが可能な締結装置および締結装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】板状部材と板状部材に取り付けられるパネルとを示す部分断面図である。
図2図1に示すパネルのボルトにナットを締結した状態を示す部分断面図である。
図3】本開示の一実施形態の締結装置を示す斜視図である。
図4】本開示の一実施形態の締結装置を示す斜視図であり、移動機構により把持機構を前方に移動させた状態を示す。
図5】把持機構がワッシャを把持した状態を示す斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係る締結装置の概略構成を示すブロック図である。
図7】本開示の一実施形態に係る締結装置の制御方法を示すフローチャートである。
図8】ナット保持機構がナットを保持する前の状態を示す締結装置の正面図である。
図9】ナット保持機構がナットを保持した状態を示す締結装置の正面図である。
図10】ナットを保持したナット保持機構を設置面から離間させた状態を示す締結装置の正面図である。
図11】把持機構を設置面に接触させた状態を示す締結装置の正面図である。
図12】把持機構によりワッシャを把持した状態を示す締結装置の正面図である。
図13図11に示す把持機構のA-A矢視断面図である。
図14】把持機構により円形状のワッシャを把持する例を示す図である。
図15】ボルトにワッシャを挿入する前の状態を示す締結装置の正面図である。
図16】ボルトにワッシャを挿入した状態を示す締結装置の正面図である。
図17】ボルトにナットを接触させた状態を示す締結装置の正面図である。
図18】ボルトにナットを締結した状態を示す締結装置の正面図である。
図19】把持機構によるワッシャの把持状態を解除した状態を示す締結装置の正面図である。
図20】ナット保持機構をナットから離間させた状態を示す締結装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態に係る締結装置および締結装置の制御方法について、図面を参照して説明する。図1は、板状部材(被締結部材)1と板状部材1に取り付けられるパネル(被締結部材)2とを示す部分断面図である。図2は、図1に示すパネル2のボルト2aにナット3を締結した状態を示す部分断面図である。本実施形態の締結装置100は、板状部材1に形成される貫通孔1aから突出するボルト(ねじ部)2aにワッシャ4を挿入してボルト2aにナット3を締結する装置である。
【0011】
図1および図2に示すように、板状部材1には、複数の貫通孔1aが形成されている。板状部材は、円筒形状とされた金属製の部品であり、例えば、板金により形成されている。パネル2は、板状部材1の外周面の形状に対応した円弧形状の部品であり、例えば鋳造された板材の表面に耐熱処理(例えばセラミックコーティング)が施されることで構成されている。
【0012】
パネル2の外周面には、外側に向かって突出した複数のボルト2aが設けられている。ボルト2aの外周面にはナット3を締結するための雄ねじが形成されている。パネル2は、板状部材1に形成された貫通孔1aにボルト2aが挿通されるとともに貫通孔1aから突出したボルト2aにワッシャ4およびナット3が取り付けられる。ナット3の内周面には、ボルト2aの雄ねじに締結される雌ねじが形成されている。パネル2は、ナット3をボルト2aに締結することにより板状部材1に固定される。
【0013】
図3は、本実施形態の締結装置100を示す斜視図である。図4は、本実施形態の締結装置100を示す斜視図であり、移動機構20により把持機構30を前方に移動させた状態を示す。図5は、把持機構30がワッシャ4を把持した状態を示す斜視図である。図6は、本実施形態に係る締結装置100の概略構成を示すブロック図である。図3から図6に示すように、締結装置100は、ナット保持機構10と、移動機構20と、把持機構30と、位置決め機構40と、画像認識部50と、制御装置(制御部)60と、を備える。
【0014】
ナット保持機構10は、ナット3を保持するとともにナット3を回転させてボルト2aに締結する機構である。ナット保持機構10は、保持部11と、回転部12と、を有する。保持部11は、軸線Z1に沿って延びる円筒状に形成されるとともに先端部11aでナット3を保持する部材である。回転部12は、保持部11を軸線Z1回りに回転させる機構であり、例えば、電動モータにより構成されている。
【0015】
移動機構20は、ナット保持機構10に取り付けられるとともに軸線Z1に沿ってナット保持機構10に対して移動可能な機構である。移動機構20は、駆動機構(例えば、電動モータ)によりナット保持機構10に対して相対的に移動する。図3および図4に示すように、移動機構20により、移動機構20に取り付けられた把持機構30が軸線Z1に沿って移動する。
【0016】
把持機構30は、移動機構20に取り付けられるとともに軸線Z1に直交する幅方向WDに沿って一対の把持部31,32を近接または離間させる機構である。把持機構30は、移動機構20がナット保持機構10に対して相対的に移動するのに伴って、移動機構20とともにナット保持機構10に対して相対的に移動する。
【0017】
位置決め機構40は、ナット保持機構10を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする機構である。位置決め機構40は、例えば、ナット保持機構10と移動機構20と把持機構30とが端部に取付けられた6軸多関節型ロボットである。
【0018】
画像認識部50は、ナット保持機構10の保持部11の前方の軸線Z1(図6参照)の延長線上の領域を撮像装置(図示略)により撮像し、ナット3およびワッシャ4の三次元空間上の位置及び姿勢を認識する装置である。また、画像認識部50は、ボルト2aの三次元空間上の位置及び姿勢を認識する。画像認識部50は、撮像装置により撮像した画像を解析部(図示略)により解析することにより、ナット3、ワッシャ4およびボルト2aの三次元空間上の位置及び姿勢を認識する。
【0019】
制御装置60は、締結装置100の各部を制御する装置である。制御装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)等を備えている。更に、制御装置60は、他の装置と情報の送受信を行うための通信部を備えていてもよい。
【0020】
主記憶装置は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPUの実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。二次記憶装置は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。
【0021】
各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUが主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0022】
次に、本実施形態の締結装置100によりボルト2aにナット3を締結する動作について説明する。図7は、本開示の一実施形態に係る締結装置100の制御方法を示すフローチャートである。図7に示す各処理は、制御装置60が制御プログラムを実行することにより行われる。
【0023】
ステップS101で、制御装置60は、基準位置のナット3を保持するよう画像認識部50および位置決め機構40を制御する。基準位置は、図8に示す設置面Sにおいて位置決めピン5が配置される位置である。制御装置60は、位置決め機構40によりナット保持機構10を設置面Sの位置決めピン5に予め挿入されたナット3の近傍に移動させる。
【0024】
画像認識部50は、ナット3の三次元空間上の位置および姿勢を認識する。制御装置60は、画像認識部50の認識結果に基づいて、ナット3から距離L1離れた位置で、ナット3の中心軸である軸線Z2と保持部11の軸線Z1とが同軸となるように、位置決め機構40を制御し、図8に示す状態とする。図8は、ナット保持機構10がナット3を保持する前の状態を示す締結装置100の正面図である。
【0025】
制御装置60は、図8に示す状態からナット保持機構10を軸線Z1に沿って設置面Sに向けて移動させるよう位置決め機構40を制御し、図9に示すように保持部11の先端部11aの内部にナット3が保持される状態とする。図9は、ナット保持機構10がナット3を保持した状態を示す締結装置100の正面図である。
【0026】
保持部11は、先端部11aに配置されるナット3を、空気を吸い込む吸引部11bにより吸引することによりナット3を先端部11aに保持する。制御装置60は、保持部11がナット3を保持した状態で、軸線Z1に沿ってナット保持機構10を設置面Sから離間させるように位置決め機構40を制御し、図10に示す状態とする。図10は、ナット3を保持したナット保持機構10を設置面Sから離間させた状態を示す締結装置100の正面図である。
【0027】
ステップS102で、制御装置60は、基準位置のワッシャ4を把持するよう移動機構20および把持機構30を制御する。ワッシャ4の基準位置はワッシャ4が予め配置される位置であり、ナット3の基準位置とは異なる位置である。制御装置60は、ナット保持機構10がナット3を保持した状態で軸線Z1に沿った先端部11aの前方において一対の把持部31,32を近接させてワッシャ4を把持するよう移動機構20および把持機構30を制御する。
【0028】
制御装置60は、軸線Z1と、ワッシャ4が配置される位置決めピン5の軸線Z2とが一致する状態で、把持機構30が軸線Z1に沿って設置面Sに近づくように移動機構20を制御し、図11に示すように把持機構30が設置面Sに接触する状態とする。図11は、把持機構30を設置面Sに接触させた状態を示す締結装置100の正面図である。なお、制御装置60は、把持機構30が設置面Sに接触せずに設置面Sとの間に微小な間隔を空けて近接した状態とするように移動機構20を制御してもよい。
【0029】
制御装置60は、図11に示す状態で、一対の把持部31,32を幅方向WDに沿って近接させてワッシャ4を把持するよう把持機構30を制御し、図12に示す状態とする。図12は、把持機構30によりワッシャ4を把持した状態を示す締結装置100の正面図である。
【0030】
ここで、図13を参照して、一対の把持部31,32を幅方向WDに沿って近接させてワッシャ4を把持する動作について説明する。図13は、図11に示す把持機構30のA-A矢視断面図である。図13に示すように本実施形態のワッシャ4は、平面視が楕円形状に形成されており、幅方向WDに長軸方向の端部4a,4bが配置される。ワッシャ4の端部4a側には、ボルト2aを挿入するための貫通孔4cが形成されている。
【0031】
把持機構30は、ワッシャ4の長軸方向の端部4a,4bを一対の把持部31,32の把持面31a,32aにより把持する。把持部31は、軸線Z1,Z2に沿った方向に平面視した場合に回転部12の回転方向(時計回り方向)の下流側にワッシャ4の長軸方向の端部4aが回転方向に回転することを防止する突起部31bを有する。
【0032】
把持部32は、軸線Z1,Z2に沿った方向に平面視した場合に回転部12の回転方向(時計回り方向)の下流側にワッシャ4の長軸方向の端部4bが回転方向に回転することを防止する突起部32bを有する。突起部31b,32bは、ボルト2aにナット3を締結する際の回転力によりワッシャ4が回転して所望の位相からずれることを防止する。所望の位相とは、例えば、板状部材1に形成される通気孔(図示略)をワッシャ4の長軸方向の端部4a,4bにより閉塞しない位相である。
【0033】
把持機構30は、把持部31の幅方向WDの位置を固定した状態で把持部32を軸線Z1に直交する幅方向WDに移動させることにより、ワッシャ4の長軸方向の端部4a,4bを一対の把持部31,32の把持面31a,32aにより把持する。図13に示すように、把持部31の幅方向WDの位置を固定した状態で、把持部32を幅方向WDに沿って移動させると、把持部32が実線で示す位置から点線で示す位置に移動する。
【0034】
把持機構30は、図13に示す楕円形状のワッシャ4を把持することができるが、図14に示す円形状のワッシャ4を把持することもできる。図14は、把持機構30により円形状のワッシャ4Aを把持する例を示す図である。図14に示すように、変形例のワッシャ4Aは、平面視が円形状に形成されており、幅方向WDに端部4Aa,4Abが配置される。ワッシャ4Aの中央には、ボルト2aを挿入するための貫通孔4Acが形成されている。
【0035】
図13に示すように幅方向WDに沿った把持部32の移動量はST1である。一方、図14に示すように幅方向WDに沿った把持部32の移動量はST1よりも大きいST2である。ST1とST2の差分は、ワッシャ4の幅方向WDの長さと、ワッシャ4Aの幅方向WDの長さの差に等しい。本実施形態の把持機構30は、把持部31の幅方向WDの位置をワッシャの一方の端部に固定した状態で、幅方向WDに沿った把持部32の移動量を調整することにより、任意のサイズのワッシャを把持することができる。
【0036】
ステップS103で、制御装置60は、ボルト2aの軸線Z3上にワッシャ4を位置決めするよう位置決め機構40を制御する。画像認識部50は、ボルト2aの三次元空間上の位置および姿勢を認識する。制御装置60は、画像認識部50の認識結果に基づいて、ボルト2aから把持部31,32が距離L2離れた位置で、ボルト2aの中心軸である軸線Z3と保持部11の軸線Z1とが同軸となるように、位置決め機構40を制御し、図15に示す状態とする。図15は、ボルト2aにワッシャ4を挿入する前の状態を示す締結装置100の正面図である。
【0037】
ステップS104で、制御装置60は、ワッシャ4にボルト2aを挿入するよう位置決め機構40を制御する。制御装置60は、図15に示す状態で、把持機構30が軸線Z1に沿ってボルト2aに近づくように位置決め機構40を制御し、図16に示すように把持機構30が板状部材1に接触する状態とする。図16は、ボルト2aにワッシャ4を挿入した状態を示す締結装置100の正面図である。なお、制御装置60は、把持機構30が板状部材1に接触せずに板状部材1との間に微小な間隔を空けて近接した状態とするように位置決め機構40を制御してもよい。
【0038】
ステップS105で、制御装置60は、把持機構30がワッシャ4を把持した状態でナット3をボルト2aに接触させるよう移動機構20を制御する。制御装置60は、図16に示す状態から移動機構20を動作させて保持部11の先端部11aをボルト2aに近づけて図17に示す状態とする。図17は、ボルト2aにナット3を接触させた状態を示す締結装置の正面図である。
【0039】
ステップS106で、制御装置60は、ナット3がボルト2aに接触した状態で、保持部11を軸線Z1回りに回転させてナット3をボルト2aに締結するよう、回転部12を制御する。制御装置60は、図17に示す状態から回転部12により保持部11をナット3がボルト2aに締結される方向に回転させることで、保持部11の先端部11aがワッシャ4に漸次近づく。制御装置60は、ナット3がワッシャ4に接触し、所定の締結力が付与されるまでナット3を回転させ、図18に示す締結状態とする。図18は、ボルト2aにナット3を締結した状態を示す締結装置100の正面図である。
【0040】
ステップS107で、制御装置60は、把持機構30がワッシャ4を把持する把持状態を解除するよう把持機構30を制御する。制御装置60は、図18に示す状態で、一対の把持部31,32を幅方向WDに沿って離間させてワッシャ4を把持する把持状態を解除するよう把持機構30を制御し、図19に示す状態とする。図19は、把持機構30によるワッシャ4の把持状態を解除した状態を示す締結装置100の正面図である。
【0041】
ステップS108で、制御装置60は、ナット保持機構10を初期位置へ移動させるよう位置決め機構40を制御する。制御装置60は、軸線Z1に沿ってナット保持機構10を板状部材1から離間させるように位置決め機構40を制御し、図20に示す状態とする。図20は、ナット保持機構10をナット3から離間させた状態を示す締結装置100の正面図である。
【0042】
制御装置60は、図20に示す状態からナット保持機構10が初期位置へ移動するように位置決め機構40を制御し、本フローチャートの処理を終了させる。以上のステップS101からステップS108の動作は、1つのボルト2aに対して1つのワッシャ4およびナット3を取り付ける動作を示す。図1および図2に示す複数のボルト2aのそれぞれにワッシャ4およびナット3を取り付けるため、制御装置60は、ステップS101からステップS108の動作を複数回繰り返す。
【0043】
複数のボルト2aのそれぞれにワッシャ4およびナット3を取り付ける動作において、複数のワッシャ4および複数のナット3は、設置面S上のそれぞれ異なる基準位置に予め設置されているものとする。締結装置100は、設置面S上のそれぞれ異なる基準位置に予め設置されたワッシャ4およびナット3をそれぞれ保持し、複数のボルト2aのそれぞれに取り付ける。
【0044】
本実施形態の締結装置100および締結装置100の制御方法によれば、以下の作用および効果を奏する。
本実施形態の締結装置100によれば、ナット保持機構10がナット3を保持した状態で軸線Z1に沿った先端部11aの前方において一対の把持部31,32によりワッシャ4が把持され、ワッシャ4にボルト2aが挿入される。把持機構30がワッシャ4を把持した状態でナット3がボルト2aに接触し、ナット3を保持する保持部11を軸線Z1回りに回転させることによりナット3がボルト2aに締結される。一対の把持部31,32によりワッシャ4が把持された状態でナット3がボルト2aに締結されるため、板状部材1から突出するボルト2aにワッシャ4を挿入してボルト2aにナット3を締結する動作を自動化することができる。
【0045】
本実施形態の締結装置100によれば、平面視が楕円形状のワッシャ4が、ナット3をボルト2aに締結する際に回転方向に回転しても、ワッシャ4の長軸方向の端部4a,4bが突起部31b,32bに衝突する。これにより、ワッシャ4が回転してワッシャ4を所望の位相からずれることを適切に防止することができる。
【0046】
本実施形態の締結装置100によれば、一対の把持部31,32の一方を固定した状態で一対の把持部31,32の他方の軸線Z1に直交する方向への移動量を変えることで、任意の形状(例えば、楕円形状および円形状)のワッシャを一対の把持部31,32により把持することができる。
【0047】
本実施形態の締結装置100によれば、保持部11が先端部11aに配置されるナット3を吸引して保持するため、位置決め機構40によりナット保持機構10が任意の姿勢となったとしても、ナット3を保持する状態を確実に維持することができる。
【0048】
以上の通り説明した本実施形態に係る締結装置および締結装置の制御方法は、例えば、以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る締結装置は、被締結部材(1,2)から突出するボルト(2a)にワッシャ(4)を挿入して前記ボルトにナットを締結する締結装置(100)であって、軸線(X)に沿って延びる円筒状に形成されるとともに先端部で前記ナット(3)を保持する保持部(11)と、前記保持部を前記軸線回りに回転させる回転部(12)と、を有するナット保持機構(10)と、前記ナット保持機構に取り付けられるとともに前記軸線に沿って前記ナット保持機構に対して移動可能な移動機構(20)と、前記移動機構に取り付けられるとともに前記軸線に直交する方向に沿って一対の把持部(31,32)を近接または離間させる把持機構(30)と、前記ナット保持機構を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構(40)と、前記ナット保持機構が前記ナットを保持した状態で前記軸線に沿った前記先端部の前方において一対の前記把持部を近接させて前記ワッシャを把持するよう前記移動機構および前記把持機構を制御し、前記ワッシャに前記ボルトを挿入するよう前記位置決め機構を制御し、前記把持機構が前記ワッシャを把持した状態で前記ナットを前記ボルトに接触させるよう前記移動機構を制御し、前記ナットが前記ボルトに接触した状態で前記保持部を前記軸線回りに回転させて前記ナットを前記ボルトに締結するよう前記回転部を制御する制御部(60)と、を備える。
【0049】
本開示の第1態様に係る締結装置によれば、ナット保持機構がナットを保持した状態で軸線に沿った先端部の前方において一対の把持部によりワッシャが把持され、ワッシャにボルトが挿入される。把持機構がワッシャを把持した状態でナットがボルトに接触し、ナットを保持する保持部を軸線回りに回転させることによりナットがボルトに締結される。一対の把持部によりワッシャが把持された状態でナットがボルトに締結されるため、被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入してボルトにナットを締結する動作を自動化することができる。
【0050】
本開示の第2態様に係る締結装置は、第1態様において、前記ワッシャは平面視が略楕円形状に形成されており、前記把持機構は、前記ワッシャの長軸方向の端部を一対の前記把持部により把持し、前記把持部は、前記軸線に沿った方向に平面視した場合に前記回転部の回転方向の下流側に前記ワッシャの前記長軸方向の端部が前記回転方向に回転することを防止する突起部を有する。
【0051】
本開示の第2態様に係る締結装置によれば、平面視が楕円形状のワッシャが、ナットをボルトに締結する際に回転方向に回転しても、ワッシャの長軸方向の端部が突起部に衝突する。これにより、ワッシャが回転してワッシャを所望の位相からずれることを適切に防止することができる。
【0052】
本開示の第3態様に係る締結装置は、第1態様または第2態様において、前記把持部は、一対の前記把持部の一方を固定した状態で一対の前記把持部の他方を前記軸線に直交する方向に移動させることにより前記ワッシャを把持する。
本開示の第3態様に係る締結装置によれば、一対の把持部の一方を固定した状態で一対の把持部の他方の軸線に直交する方向への移動量を変えることで、任意の形状(例えば、楕円形状および円形状)のワッシャを一対の把持部により把持することができる。
【0053】
本開示の第4態様に係る締結装置は、第1態様または第2態様において、前記保持部は、前記先端部に配置される前記ナットを吸引することにより前記ナットを保持する。
本開示の第4態様に係る締結装置によれば、保持部が先端部に配置されるナットを吸引して保持するため、位置決め機構によりナット保持機構が任意の姿勢となったとしても、ナットを保持する状態を確実に維持することができる。
【0054】
本開示の第5態様に係る締結装置の制御方法は、被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入して前記ボルトにナットを締結する締結装置の制御方法であって、前記締結装置は、軸線に沿って延びる円筒状に形成されるとともに先端部で前記ナットを保持する保持部と、前記保持部を前記軸線回りに回転させる回転部と、を有するナット保持機構と、前記ナット保持機構に取り付けられるとともに前記軸線に沿って前記ナット保持機構に対して移動可能な移動機構と、前記移動機構に取り付けられるとともに前記軸線に直交する方向に沿って一対の把持部を近接または離間させる把持機構と、前記ナット保持機構を三次元空間上の所定位置で所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構と、を備え、前記ナット保持機構が前記ナットを保持した状態で前記軸線に沿った前記先端部の前方において一対の前記把持部を近接させて前記ワッシャを把持するよう前記把持機構を制御する把持工程(S102)と、前記ワッシャに前記ボルトを挿入するよう前記位置決め機構を制御する挿入工程(S104)と、前記把持機構が前記ワッシャを把持した状態で前記ナットを前記ボルトに接触させるよう前記移動機構を制御し、前記ナットが前記ボルトに接触した状態で前記保持部を前記軸線回りに回転させて前記ナットを前記ボルトに締結するよう前記回転部を制御する締結工程(S106)と、を備える。
【0055】
本開示の第5態様に係る締結装置の制御方法によれば、ナット保持機構がナットを保持した状態で軸線に沿った先端部の前方において一対の把持部によりワッシャが把持され、ワッシャがボルトに挿入される。把持機構がワッシャを把持した状態でナットがボルトに接触し、ナットを保持する保持部を軸線回りに回転させることによりナットがボルトに締結される。一対の把持部によりワッシャが把持された状態でナットがボルトに締結されるため、被締結部材から突出するボルトにワッシャを挿入してボルトにナットを締結する動作を自動化することができる。
【0056】
本開示の第6態様に係る締結装置の制御方法は、前記把持工程は、一対の前記把持部の一方を固定した状態で一対の前記把持部の他方を前記軸線に直交する方向に移動させることにより前記ワッシャを把持するよう前記把持機構を制御する。
本開示の第6態様に係る締結装置の制御方法によれば、一対の把持部の一方を固定した状態で一対の把持部の他方の軸線に直交する方向への移動量を変えることで、任意の形状(例えば、楕円形状および円形状)のワッシャを一対の把持部により保持することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 板状部材(被締結部材)
1a 貫通孔
2 パネル(被締結部材)
2a ボルト
3 ナット
4,4A ワッシャ
4a,4b,4Aa,4Ab 端部
4c,4Ac 貫通孔
5 位置決めピン
10 ナット保持機構
11 保持部
11a 先端部
11b 吸引部
12 回転部
20 移動機構
30 把持機構
31 把持部
31a 把持面
31b 突起部
32 把持部
32a 把持面
32b 突起部
40 位置決め機構
50 画像認識部
60 制御装置(制御部)
100 締結装置
L1,L2 距離
S 設置面
WD 幅方向
Z1,Z2,Z3 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20