IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173638
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20231130BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231130BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K3/34 504B
H01L21/60 311T
H05K3/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086034
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小泉 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 敏暢
(72)【発明者】
【氏名】進藤 修
(72)【発明者】
【氏名】須永 誠寿郎
(72)【発明者】
【氏名】牧田 光悦
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康生
(72)【発明者】
【氏名】進藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡史
【テーマコード(参考)】
5E319
5F044
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB05
5E319AC02
5E319AC04
5E319BB11
5E319CC03
5E319CC12
5E319CC61
5E319CD04
5E319GG01
5F044KK02
5F044KK03
5F044LL09
5F044LL11
5F044PP15
5F044RR01
(57)【要約】
【課題】加圧対象物に加わる荷重を均一にすることを可能とする基板処理装置を提供する。
【解決手段】上治具プレート44で加圧対象物である基板2を加圧する基板処理装置10であって、上治具プレート44の下に配置される下治具プレート46と、下治具プレート46の上に設けられ、基板2が配置される設置ベース47と、を有し、設置ベース47は、設置ベース47の変形を許容可能に、下治具プレート46に仮固定されている。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上治具プレートで加圧対象物を加圧する基板処理装置であって、
前記上治具プレートの下に配置される下治具プレートと、
前記下治具プレートの上に設けられ、加圧対象物が配置される設置ベースと、を有し、
前記設置ベースは、前記設置ベースの変形を許容可能に、前記下治具プレートに仮固定されている基板処理装置。
【請求項2】
上治具プレートで加圧対象物を加圧する基板処理装置であって、
前記上治具プレートの下に配置される下治具プレートと、
前記下治具プレートの上に設けられ、加圧対象物が配置される設置ベースと、を有し、
前記設置ベースは、セラミックスまたはガラスで構成されている基板処理装置。
【請求項3】
前記下治具プレートの上には、前記設置ベースの縁部の一部に当接する仮固定枠が設けられている請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記仮固定枠は、複数からなり、
複数の前記仮固定枠は、それぞれ前記設置ベースのいずれかの辺に対応して設けられている請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記設置ベースの縁部にはベース傾斜部が設けられており、
前記設置ベースの縁部が当接する前記仮固定枠の内側には、前記ベース傾斜部に係合する内側傾斜部が形成されている請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記下治具プレートの上には、可動部材を移動可能に保持する仮固定治具が設けられおり、
前記可動部材は、前記仮固定治具から受ける弾性力によって、前記仮固定治具から前記設置ベースに向けて押し出されるとともに、前記設置ベースから受ける応力によって、前記設置ベースから前記仮固定治具に向けて押し戻される請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記設置ベースは略矩形状を有し、
前記仮固定枠は、前記設置ベースの第1側面に対応する位置に設けられており、
前記仮固定治具は、前記第1側面に対向する前記設置ベースの第2側面に対応する位置に設けられている請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記設置ベースは略矩形状を有し、
前記仮固定枠は、前記設置ベースの第1角部に対応する位置に設けられており、
前記仮固定治具は、前記第1角部に対して略対角線上に位置する前記設置ベースの第2角部に対応する位置に設けられている請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記設置ベースは略円形状を有し、
前記仮固定枠および前記仮固定治具は、それぞれ前記設置ベースの径方向に関して対向する位置に設けられている請求項6に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の素子が配置された基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の素子からなる素子アレイを基板上に形成する技術では、複数の素子と基板との機械的な接合の強度や接合の安定性の向上を図るために、基板処理装置を用いて、複数の素子が配置された基板に対し複数の素子を平板で押し付ける処理が行われる(例えば特許文献1)。
【0003】
この種の処理を実行する基板処理装置として、例えば、加圧対象物(複数の素子が配置された基板)が配置される下治具プレートと、下治具プレートに配置された加圧対象物を加圧する上治具プレートと、を有する基板処理装置が用いられる。下治具プレート上で、複数の素子が配置された基板を上治具プレートで加圧することにより、当該基板に荷重が与えられ、これに伴い、複数の素子を当該基板に対して押し付けることが可能となっている。
【0004】
近年では、基板に配置される素子のサイズ(高さ)は数μm程度まで微細化しており、下治具プレートあるいは上治具プレートの表面の平行度や平坦度等が数十μm程度でばらつくと、上治具プレートによって、基板上の複数の素子に対して均一な荷重を与えることが困難となり、複数の素子と基板との間で接合不良が発生するおそれがある。
【0005】
また、上治具プレートで基板を加圧するときには、上治具プレートあるいは下治具プレートの加熱に伴い下治具プレート等に熱変形が生じ、基板に対して均一な荷重を与えることが困難となる。そのため、無負荷状態において、上治具プレートや下治具プレートの表面の平行度や平坦度等をある程度確保することができたとしても、基板加圧時における下治具プレートの熱変形に起因して、複数の素子と基板との間で接合不良が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-232234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、加圧対象物に加わる荷重を均一にすることを可能とする基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る基板処理装置は、
上治具プレートで加圧対象物を加圧する基板処理装置であって、
前記上治具プレートの下に配置される下治具プレートと、
前記下治具プレートの上に設けられ、加圧対象物が配置される設置ベースと、を有し、
前記設置ベースは、前記設置ベースの変形を許容可能に、前記下治具プレートに仮固定されている。
【0009】
本発明の第1の観点に係る基板処理装置は、下治具プレートの上に設けられ、加圧対象物が配置される設置ベースを有する。そのため、加圧対象物と下治具プレートとの間には、設置ベースが介在することになる。このような状態で、上治具プレートで加圧対象物を加圧する場合、下治具プレートの加熱に伴い下治具プレートに変形(熱膨張)が生じたとしても、その影響が加圧対象物に直接的に及びにくく、設置ベースに配置された加圧対象物に対して、上治具プレートによって均一な荷重を加えることができる。
【0010】
特に、本発明の第1の観点に係る基板処理装置では、設置ベースは、設置ベースの変形を許容可能に、下治具プレートに仮固定されている。そのため、下治具プレートの加熱に伴い、下治具プレートの熱が設置ベースに伝熱し、設置ベースに変形(熱膨張)が生じるような事態が生じたとしても、その変形を妨げることなく、設置ベースを下治具プレートの上で面方向に自在に変形させることにより、設置ベースの変形に伴い発生する応力を逃がすことが可能となる。したがって、設置ベースの上面の表面精度(例えば平坦性や平滑性等)を十分に確保し、設置ベースに配置された加圧対象物に設置ベースの変形による影響が及ぶことを防止することが可能となり、この点においても、加圧対象物に加わる荷重を均一にすることができる。
【0011】
なお、設置ベースが下治具プレートに本固定されている場合には、設置ベースに変形(熱膨張)が生じたときに、その固定位置を起点として、設置ベースが膨出し、設置ベースの表面精度(例えば平坦性や平滑性等)が悪化するおそれがあるが、本発明に係る基板処理装置では、上記の通り、設置ベースが下治具プレートに仮固定されているため、このような不具合を有効に防止することができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る基板処理装置は、
上治具プレートで加圧対象物を加圧する基板処理装置であって、
前記上治具プレートの下に配置される下治具プレートと、
前記下治具プレートの上に設けられ、加圧対象物が配置される設置ベースと、を有し、
前記設置ベースは、セラミックスまたはガラスで構成されている。
【0013】
本発明の第2の観点に係る基板処理装置は、本発明の第1の観点に係る基板処理装置と同様に、下治具プレートの上に設けられ、加圧対象物が配置される設置ベースを有するため、上述したように、上治具プレートによる加圧対象物の加圧時において、下治具プレートの加熱に伴い下治具プレートに変形が生じたとしても、その影響が設置ベースに直接的に及びにくく、設置ベースに配置された加圧対象物に対して、上治具プレートによって均一な荷重を加えることができる。
【0014】
特に、本発明の第2の観点に係る基板処理装置では、設置ベースは、セラミックスまたはガラスで構成されている。設置ベースを構成する材質として、下治具プレートを構成する金属等に比べて熱膨張率の小さいセラミックスまたはガラスを用いることにより、下治具プレートの加熱に伴い、下治具プレートの熱が設置ベースに伝熱したとしても、設置ベースに変形(熱膨張)が生じることを防止することが可能となる。したがって、設置ベースに配置された加圧対象物に設置ベースの変形による影響が及ぶことを防止することが可能となり、加圧対象物に加わる荷重を均一にすることができる。
【0015】
また、加工精度の観点から、セラミックスまたはガラスは金属等に比べて、その表面精度(例えば平坦性や平滑性等)を確保しやすい。そのため、設置ベースをセラミックスまたはガラスで構成することにより、設置ベースの表面精度を十分に確保することができる。
【0016】
好ましくは、前記下治具プレートの上には、前記設置ベースの縁部の一部に当接する仮固定枠が設けられている。仮固定枠に設置ベースの縁部の一部を当接させることにより、設置ベースを下治具プレートに仮固定することができる。また、設置ベースの縁部の残りの部分を仮固定枠に当接させることなくフリーの状態とすることにより、下治具プレートの加熱に伴い、設置ベースに変形が生じるような事態が生じたとしても、その変形を妨げることなく、設置ベースを下治具プレートの上で面方向に自在に変形させ、設置ベースの変形に伴い発生する応力を効果的に逃がすことができる。また、仮固定枠を用いて設置ベースを下治具プレートに仮固定することにより、設置ベースの位置決めが容易になる。
【0017】
好ましくは、前記仮固定枠は、複数からなり、複数の前記仮固定枠は、それぞれ前記設置ベースのいずれかの辺に対応して設けられている。このような構成とすることにより、設置ベースを下治具プレートに仮固定するときに、設置ベースの位置決めを高精度で行うことができる。また、設置ベースのいずれかの辺を仮固定枠で仮固定することにより、設置ベースの位置ずれを有効に防止することができる。
【0018】
好ましくは、前記設置ベースの縁部にはベース傾斜部が設けられており、前記設置ベースの縁部が当接する前記仮固定枠の内側には、前記ベース傾斜部に係合する内側傾斜部が形成されている。設置ベースのベース傾斜部と仮固定枠の内側傾斜部とを係合させることにより、設置ベースの位置ずれや、設置ベースが下治具プレートから外れることを有効に防止することができる。
【0019】
好ましくは、前記下治具プレートの上には、可動部材を移動可能に保持する仮固定治具が設けられおり、前記可動部材は、前記仮固定治具から受ける弾性力によって、前記仮固定治具から前記設置ベースに向けて押し出されるとともに、前記設置ベースから受ける応力によって、前記設置ベースから前記仮固定治具に向けて押し戻される。仮固定治具から受ける弾性力によって、可動部材が、仮固定治具から設置ベースに向けて押し出され、設置ベースの縁部を押圧することにより、設置ベースに適度な力を与えつつ、設置ベースを下治具プレートに仮固定することができる。また、下治具プレートの加熱に伴い、設置ベースに変形が生じるような事態が生じた場合には、設置ベースから受ける応力によって、可動部材が設置ベースから仮固定治具に向けて(すなわち、設置ベースの変形方向に)押し戻されることにより、設置ベースの変形を妨げることなく、設置ベースを下治具プレートの上で面方向に自在に変形させ、設置ベースの変形に伴い発生する応力を効果的に逃がすことができる。
【0020】
前記設置ベースは略矩形状を有し、前記仮固定枠は、前記設置ベースの第1側面に対応する位置に設けられており、前記仮固定治具は、前記第1側面に対向する前記設置ベースの第2側面に対応する位置に設けられていてもよい。このような構成とした場合、設置ベースの第1側面に対応する位置では、設置ベースの縁部が仮固定枠に当接することにより、設置ベースが下治具プレートに仮固定される。また、設置ベースの第2側面に対応する位置では、設置ベースの縁部が仮固定治具に当接することにより、設置ベースが下治具プレートに仮固定される。これにより、仮固定枠と仮固定治具とで設置ベースの第1側面と第2側面とを挟み込むようにして、設置ベースを下治具プレートに仮固定することができる。このように、仮固定枠および仮固定治具の両方を用いて設置ベースを下治具プレートに仮固定することにより、仮固定枠および仮固定治具のいずれか一方による設置ベースの仮固定を他方によって補強することができる。
【0021】
前記設置ベースは略矩形状を有し、前記仮固定枠は、前記設置ベースの第1角部に対応する位置に設けられており、前記仮固定治具は、前記第1角部に対して略対角線上に位置する前記設置ベースの第2角部に対応する位置に設けられていてもよい。このような構成とした場合、設置ベースの第1角部に対応する位置では、設置ベースの縁部が仮固定枠に当接することにより、設置ベースが下治具プレートに仮固定される。また、設置ベースの第2角部に対応する位置では、設置ベースの縁部が仮固定治具に当接することにより、設置ベースが下治具プレートに仮固定される。これにより、仮固定枠と仮固定治具とで設置ベースの角部を挟み込むようにして、設置ベースを下治具プレートに仮固定することができる。
【0022】
前記設置ベースは略円形状を有し、前記仮固定枠および前記仮固定治具は、それぞれ前記設置ベースの径方向に関して対向する位置に設けられていてもよい。このような構成とした場合、仮固定枠と仮固定治具とで設置ベースの外周を挟み込むようにして、設置ベースを下治具プレートに仮固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A図1Aは本発明の一実施形態に係る基板処理装置の斜視図である。
図1B図1B図1Aに示す基板処理装置の側面図である。
図2図2は、図1Aに示す基板処理装置の加圧対象である基板を示す図である。
図3A図3Aは、図1Aに示す基板処理装置の基板加圧部の拡大側面図である。
図3B図3Bは、図3Aに示す基板加圧部の下治具プレートに撓みを発生させたときの状態を示す拡大側面図である。
図4図4図3Aに示す基板加圧部のIV-IV線に沿う断面図である。
図5A図5Aは複数の柱状部材で下治具プレートを支持しなかった場合において感圧紙に加わる荷重の面内分布を示す図である。
図5B図5Bは複数の柱状部材で下治具プレートを支持したときに感圧紙に加わる荷重の面内分布を示す図である。
図6A図6A図3Aに示す支持部材の変形例を示す拡大側面図である。
図6B図6B図3Aに示す支持部材の他の変形例を示す拡大側面図である。
図7A図7Aは複数の柱状部材の他の配置例を示す図である。
図7B図7B図7Aに示す配置で複数の柱状部材を配置したときに基板あるいは下治具プレートに加わる荷重の面内分布を示す図である。
図8A図8Aは下治具プレートに配置された設置ベースの構成を示す斜視図である。
図8B図8B図8Aに示す基板加圧部から断熱材を取り外したときの状態を示す斜視図である。
図9図9図8Aに示す基板加圧部の変形例を示す斜視図である。
図10A図10A図9に示す仮固定治具の動作を示す図である。
図10B図10B図10Aに示す仮固定治具の動作の続きを示す図である。
図11図11図9に示す仮固定枠および仮固定治具の他の配置例を示す図である。
図12図12図9に示す仮固定枠および仮固定治具の他の配置例を示す図である。
図13図13図9に示す仮固定枠および仮固定治具の各々の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0025】
図1Aに示すように、本発明の一実施形態に係る基板処理装置10は、複数の素子4a,4b,4cからなる素子アレイ4(図2)を基板2上に形成するための装置であり、複数の素子4a,4b,4cが配置された基板2に対し、複数の素子4a,4b,4cを所定の手段で押し付ける処理を行うことにより、複数の素子4a,4b,4cと基板2との機械的な接合の強度や接合の安定性の向上を図るためのものである。すなわち、基板処理装置10は、素子アレイ4を基板2上に形成するにあたって、加圧部(加圧装置)として機能する。
【0026】
基板2の材質は、例えばガラスエポキシ材である。ただし、基板2の材質は、これに限定されるものではなく、例えば、ガラス基板としてSiO2あるいはAl23で構成されてもよく、あるいはフレキシブル基板としてポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ウレタン、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエラストマー等、さらにはグラスウール等で構成されてもよい。
【0027】
基板2の表面には、例えば図示しない導電性接合材料が予め形成されている。この導電性接合材料は、異方性導電粒子接続あるいはバンプ圧接接続等により、基板2と素子4a,4b,4cとを電気的および機械的に接続し、加熱により硬化する。導電性接合材料としては、例えばACF、ACP、NCFあるいはNCP等が挙げられる。導電性接合材料の厚みは、好ましくは、1.0~10000μmである。
【0028】
基板2には、配線が所定のパターンで形成されており、この配線に素子4a,4b,4cの電極を導電性接合材料を介して接続することが可能となっている。
【0029】
素子4a,4b,4cは、基板2上にアレイ状に配置される。アレイ状とは、決められたパターンに従って複数行複数列に素子4a,4b,4cが配置された状態をいい、行方向と列方向の間隔は同一でもよく、あるいは相違していてもよい。
【0030】
素子4a,4b,4cは、ディスプレイ用の表示基板にRGBの各画素として配列され、またバックライトの発光体として照明基板に配列される。素子4aは赤色光素子であり、素子4bは緑色発光素子であり、素子4cは青色発光素子である。ただし、基板2に配置される素子は、これらの素子に限定されるものではない。
【0031】
本実施形態における素子4a,4b,4cは、マイクロ発光素子(マイクロLED素子)であり、そのサイズ(幅×奥行き)は、例えば5μm×5μm~50μm×50μmである。また、素子4a~4cの厚み(高さ)は、例えば50μm以下である。
【0032】
基板処理装置10は、架台20と、荷重発生部30と、基板加圧部40とを有する。図面において、X軸は架台20の幅方向に対応し、Y軸は架台20の奥行方向に対応し、Z軸は架台20の高さ方向に対応するものとする。
【0033】
架台20は、例えば金属の筐体で構成され、架台上部21と、可動加圧部22と、架台下部23と、ガイドブッシュ24と、ガイドシャフトガイドシャフト25と、を有する。架台下部23は、架台20の土台部分(テーブル)を構成しており、所定の高さを有する。図示の例では、架台下部23の内部には中空部が形成されているが、架台下部23の形状はこれに限定されるものではなく、架台下部23の内部が中実になっていてもよい。
【0034】
架台下部23の四隅には、4本のガイドシャフト25の下端部が固定(挿入)されている。これらのガイドシャフト25は、それぞれ所定の長さを有し、Z軸方向に直立した状態で配置されている。各ガイドシャフト25の下端部は架台下部23に固定され、各ガイドシャフト25の上端部は架台上部21に固定されている。ガイドシャフト25は、架台上部21と架台下部23との間に配置された可動加圧部22の四隅を貫通している。これらのガイドシャフト25は、架台上部21を支持する役割を果たすとともに、可動加圧部22をZ軸方向に沿って上下に摺動可能に支持する役割を果たす。
【0035】
可動加圧部22は、矩形状を有する板体(剛体)からなり、架台下部23と架台上部21との間に位置する。可動加圧部22は、荷重発生部30から荷重を受けることにより、4本のガイドシャフト25に沿って、上下方向に摺動自在に構成されている。図1Bに示すように、可動加圧部22は、基板加圧部40の上面に当接し、これを加圧することにより、基板加圧部40に例えば0~100kN程度の荷重を与える。可動加圧部22は、基板加圧部40に対して平行に当接していることが好ましく、その平行度Aは1μm≦A<2μmであることが好ましい。
【0036】
図1Aに示すように、可動加圧部22の四隅には、4つの貫通孔220がそれぞれ形成されており、これらの貫通孔220の内部には、4本のガイドシャフト25がそれぞれ挿入されている。可動加圧部22の下面(Z軸負方向側の面)には、4つの貫通孔220に対応する位置で、4つのガイドブッシュ24が固定されている。ガイドブッシュ24は、可動加圧部22による上下方向への移動時において、可動加圧部22の滑りを良くする(ガイドシャフト25に対する摩擦を低減する)機能を有するとともに、貫通孔220の軸心に対するガイドシャフト25の位置決めを容易に実現させる機能を有する。
【0037】
架台上部21は、架台20の天井部分を構成している。架台上部21の下面の四隅には、4本のガイドシャフト25の上端部が固定(挿入)されている。架台上部21の中央部には、荷重発生部30が固定されている。荷重発生部30は、例えば加圧用シリンダ、サーボプレス、モータ、あるいはアクチュエータ等の装置で構成されており、可動加圧部22に荷重を印加する役割を果たす。なお、図面が煩雑になるのを防止するため、可動加圧部22の詳細構成については図示を省略し、その一部の構成のみを図示している。
【0038】
荷重発生部30は、可動加圧部22の中央領域221をプレスヘッド(図示略)で加圧することにより、可動加圧部23に荷重を与える。これにより、可動加圧部22は下方に移動し、基板加圧部40を加圧する結果、基板加圧部40において、加圧対象物(複数の素子4a,4b,4cが配置された基板2)に荷重を与えることが可能となっている。
【0039】
図3Aに示すように、基板加圧部40は、上側ステージ41と、下側ステージ42と、上側搭載部43と、上治具プレート44と、支持部材45と、下治具プレート46と、設置ベース47とを有する。上側ステージ41は、可動加圧部22の下面に設けられており、下側ステージ42は、架台下部23の上面に設けられている。上側ステージ41および下側ステージ42の厚みは、それぞれ基板2の厚みよりも厚くなっている。上側ステージ41および下側ステージ42は、それぞれ同一形状を有し、各々のX軸方向幅は、上側搭載部43および支持部材45の各々のX軸方向幅よりも大きくなっている。なお、上側ステージ41および下側ステージ42の形状は図示の形状に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0040】
上側ステージ41は、平板状の板体(剛体)からなり、表面精度(例えば平坦性や平滑性等)が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。例えば、上側ステージ41の上面の表面精度は、可動加圧部22の下面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。
【0041】
このように、表面精度に優れた上側ステージ41を可動加圧部22の下面に固定しておくことにより、上側ステージ41の下面に上側搭載部43を固定したときに、上側搭載部43あるいはこれに搭載される上治具プレート44を水平面に対して傾斜させることなく、安定した状態で配置することが可能となる。
【0042】
下側ステージ42は、平板状の板体(剛体)からなり、表面精度(例えば平坦性や平滑性等)が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。例えば、下側ステージ42の上面の表面精度は、架台下部23の上面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。
【0043】
このように、表面精度に優れた下側ステージ42を架台下部23の上面に固定しておくことにより、下側ステージ42の上面に支持部材45を固定したときに、支持部材45あるいはこれに支持される下治具プレート46を水平面に対して傾斜させることなく、安定した状態で配置することが可能となる。
【0044】
上側搭載部43は、平板状の外観形状を有し、上側ステージ41の下面に固定されている。上側搭載部43には上治具プレート44が搭載される。上側搭載部43は、上治具プレート44を支持する役割を果たす。
【0045】
上治具プレート44は、平板状の板体(剛体)からなり、上側搭載部43の下面に固定(搭載)されている。上治具プレート44は、設置ベース47に配置された基板2を加圧する機能を有する。上治具プレート44には、加熱機能(例えばヒータ)が内蔵されており、上治具プレート44で基板2を加圧するときに、上治具プレート44によって基板2を加熱することが可能となっている。例えば、複数の素子4a,4b,4cと基板2との接続にあたって導電性接合材料を用いる場合には、基板2を加熱することにより、基板2に対して複数の素子4a,4b,4cを良好に接続させることが可能となり、基板2とその上に配置された複数の素子4a,4b,4cとの接合力を高めることが可能となっている。
【0046】
上治具プレート44は、表面精度が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。上治具プレート44の下面の表面精度は、例えば上側ステージ41の下面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。上治具プレート44の表面(特に下面)の表面粗さRaは、特に好ましくはRa≦1μmである。
【0047】
このように、上治具プレート44の表面精度を高めておくことにより、上治具プレート44の下面で設置ベース47に配置された基板2を加圧するときに、基板2に加わる荷重のムラを低減し、基板2上の複数の素子4a,4b,4cに対して均一な荷重を与えることができる。
【0048】
下治具プレート46は、平板状の板体(剛体)からなり、支持部材45によって支持されている。下治具プレート46は、上治具プレート44と略同一からなる形状を有し、上治具プレート44に対して対向して配置されている。下治具プレート46には、設置ベース47を配置することが可能となっている。上治具プレート44と同様に、下治具プレート46には、加熱機能(例えばヒータ)が内蔵されており、上治具プレート44で基板2を加圧するときに、下治具プレート46(および上治具プレート44)によって、設置ベース47に配置された基板2を加熱することが可能となっている。
【0049】
下治具プレート46は、表面精度が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。下治具プレート46の上面の表面精度は、例えば下側ステージ42の上面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。
【0050】
下治具プレート46の表面(特に上面)の表面粗さRaは、上治具プレート46の表面の表面粗さRaと同様に、特に好ましくはRa≦1μmである。また、下治具プレート46と上治具プレート44との平行度Aは、A<1μmであることが好ましい。後述する設置ベース47についても同様である。
【0051】
このように、下治具プレート46(あるいは設置ベース47)の表面精度を高めておくことにより、下治具プレート46に設置ベース47を配置したときに、水平面に対する設置ベース47の平行度を高めることができる。また、上治具プレート44の下面で設置ベース47に配置された基板2を加圧するときに、上治具プレート44の下面と基板2とが平行になり(密着し)、上述した基板2に加わる荷重分布の均一性を高める効果を得ることができる。
【0052】
上治具プレート44および下治具プレート46の表面精度をある程度確保することができたとしても、上治具プレート44で基板2を加圧するときには、下治具プレート46に少なからず撓みが生じ、下治具プレート46と上治具プレート44との間の接触性(密着性)が不良になる等の理由により、基板2(あるいは、基板2に配置された複数の素子4a,4b,4c)に対して均一な荷重を与えることが困難となり、基板2と複数の素子4a,4b,4cとの接合状態にばらつきが発生するおそれがある。
【0053】
すなわち、基板2には、相対的に見たときに、小さな面圧が加わることにより荷重が減少する方向に変動する領域と、大きな面圧が加わることにより荷重が増大する方向に変動する領域とが形成され、基板2の荷重分布が不均一となる。そこで、本実施形態における基板処理装置10では、支持部材45に、この基板2の加圧時における荷重分布の不均一性を解消するための手段を具備させている。以下、支持部材45の詳細について説明する。
【0054】
支持部材45は、下側ステージ42の上面に固定され、下治具プレート46を支持する。すなわち、本実施形態では、下治具プレート46は、支持部材45を介して、下側ステージ42に配置される。支持部材45は、上述した下治具プレート46の撓みに伴う基板2の被荷重量の変動を調整可能に構成されており、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じた支持力を下治具プレート46に与える。
【0055】
例えば、下治具プレート46のうち、その中心に近い位置ほど、下治具プレート46が下に凸となるように凹形状に撓み、当該位置に加わる面圧が相対的に小さくなり、下治具プレート46の被荷重量が相対的に小さくなる場合がある。このように下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置では、支持部材45は下治具プレート46に相対的に大きな支持力を与える。これにより、下治具プレート46の中心に近い位置では、下治具プレート46が撓みにくくなり、下治具プレート46に加わる荷重を増大させることが可能となる。その結果、当該位置において、設置ベース47に配置された基板2に加わる荷重を増大させることが可能となる。
【0056】
また、下治具プレート46のうち、その中心から離れた位置ほど、当該位置に加わる面圧が相対的に大きくなり、被荷重量が相対的に大きくなる場合がある。このように下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置では、支持部材45は下治具プレート46に小さな支持力を与える。これにより、下治具プレート46の中心から離れた位置では、下治具プレート46が撓みやすくなり、下治具プレート46に加わる荷重を減少させることが可能となる。その結果、当該位置において、設置ベース47に配置された基板2に加わる荷重を減少させることが可能となる。
【0057】
このようにして、支持部材45は、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46の撓みを調整し、基板2に加わる荷重を均一にするのである。以下、支持部材45が下治具プレート46の荷重の面内分布に応じた支持力を下治具プレート46に与えるための具体的手段について説明する。
【0058】
支持部材45は、複数の柱状部材50の集合体500と、複数の柱状部材50が設置される設置部52とを有する。複数の柱状部材50は、それぞれ円柱形状からなり、下治具プレート46を支持する役割を果たす。各柱状部材50の形状は、これに限定されるものではなく、三角柱形状、四角柱形状、その他の多角柱形状、円錐形状、三角錐形状、その他の多角錐形状であってもよい。また、各柱状部材50は、中空形状を有していてもよい。
【0059】
複数の柱状部材50は、弾性変形可能な剛体で構成されていることが好ましい。図4に示すように、複数の柱状部材50は、設置部52に、例えば7行7列のマトリクス状に整然と配置されており、それぞれX軸方向およびY軸方向に所定の間隔をあけて配置されている。図示の例では、複数の柱状部材50の各々の中心間距離は実質的に同一であり、複数の柱状部材50はそれぞれ等間隔で配置されているが、各柱状部材50の間隔は必ずしも同一でなくてもよい。また、複数の柱状部材50は、上方から見たときに、それぞれ設置部52のX軸方向およびY軸方向の各々の一端から他端にかけて満遍なく配置されているが、設置部52の一部に偏在(密集)していてもよい。
【0060】
また、複数の柱状部材50は、設置部52にランダムに配置されていてもよく、あるいは同心円状に配置されていてもよい。複数の柱状部材50の配置は、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて適宜決定される。
【0061】
本実施形態では、複数の柱状部材50の横断面積(XY平面に平行な面の断面積)は全て同一となっている訳ではなく、複数の柱状部材50は、横断面積が相対的に大きい柱状部材50(柱状部材50a)と、横断面積が相対的に小さい柱状部材50(柱状部材50c)と、これらの中間の横断面積を有する柱状部材50(柱状部材50b)とで構成されている。すなわち、複数の柱状部材50は、形状の異なる複数の部材で形成されている。
【0062】
下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置には複数の柱状部材50aが配置され、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置には複数の柱状部材50b,50cが配置されている。すなわち、複数の柱状部材50a,50b,50cは、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて配置されている。
【0063】
図示の例では、複数の柱状部材50aは、設置部52に、5行5列のマトリクス状に配置されている。以下では、複数の柱状部材50aの集合体のうち、中央に位置する柱状部材50aを特に柱状部材50a1と表記する場合がある。柱状部材50a1は、下治具プレート46の略中央部(荷重発生部30による加圧軸の直下)に配置される。なお、加圧軸は、単一で構成されてもよく、あるいは複数で構成されてもよい。
【0064】
複数の柱状部材50bおよび複数の柱状部材50cは、複数の柱状部材50aの集合体の外側(集合体500の最外周)に配置されており、これを取り囲んでいる。集合体500の最外周では、その四隅にそれぞれ4つの柱状部材50cが配置されており、さらに4つの柱状部材50cの各々の間に4つの柱状部材50cの各々が配置されている。また、各柱状部材50cの間には、2つの柱状部材50bが対になって配置されている。図4に示す複数の柱状部材50a,50b,50cの配置は一例であり、これらの配置は適宜変更してもよい。
【0065】
柱状部材50aの幅(直径)をDa、柱状部材50bの幅(直径)をDb、柱状部材50cの幅(直径)をDcとしたとき、Da>Db>Dcである。直径Da,Db,Dcは、好ましくは10~20mmである。また、最も直径が大きい柱状部材50aの直径Daと最も直径が小さい柱状部材50cの直径Dcとの比Da/Dcは、好ましくは2/1~1.5/1である。各柱状部材50a,50b,50cの直径(太さ)の範囲をこのような範囲に設定することにより、下治具プレート46に加わる荷重の大きさあるいは面内分布に応じて、各柱状部材50a,50b,50cを適度に撓ませることが可能となる。
【0066】
なお、複数の柱状部材50aのうち、柱状部材50a1の直径については、他の柱状部材50aよりも大きくし、他の柱状部材50aよりも撓みにくくしてもよい。
【0067】
各柱状部材50間の中心間距離(ピッチ)Pは、好ましくは20~50mm、さらに好ましくは20~ 25mmである。各柱状部材50間の中心間距離Lの範囲をこのような範囲に設定することにより、下治具プレート46の各位置を満遍なく各柱状部材50a,50b,50cで支持することが可能となり、適度な支持力で下治具プレート46を支持することが可能となる。本実施形態では、複数の柱状部材50a,50b,50cが配置された位置において、複数の柱状部材50a,50b,50cから下治具プレート46へ局所的に支持力を与えることが可能となっている。
【0068】
複数の柱状部材50の長さLは、好ましくは20~50mmであり、さらに好ましくは20~25mmである。複数の柱状部材50の長さLは、下治具プレート46の高さと略同一であってもよい。
【0069】
柱状部材50aの横断面積をSa、柱状部材50bの横断面積をSb、柱状部材50cの横断面積をScとしたとき、Sa>Sb>Scである。下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置に配置される柱状部材50aの横断面積Saは、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置に配置される柱状部材50b,50cの横断面積Sb,Scに比べて大きくなっている。
【0070】
そのため、複数の柱状部材50a,50b,50cで下治具プレート46が支持された状態において、上治具プレート44(図3A)による基板2の加圧により、下治具プレート46(図3A)に荷重が与えられ、それに伴い、複数の柱状部材50a,50b,50cに荷重が与えられると、柱状部材50aには相対的に小さな歪み量の歪み(Z軸負方向側への圧縮歪み)が発生する一方で、柱状部材50b,50cには相対的に大きな歪み量の歪み(Z軸負方向側への圧縮歪み)が発生する。このように、本実施形態では、柱状部材50a,50b,50cが荷重を受けたときに、柱状部材50a,50b,50cに、これらの横断面積Sa,Sb,Scに応じた歪み量の歪みを発生させることが可能となっている。
【0071】
柱状部材50a,50b,50cは、一定荷重を受けたときに、その横断面積に応じた歪みを発生させることにより、その延在方向に沿って伸縮自在となっている。柱状部材50a,50b,50cが荷重を受けることにより歪みを発生させるタイミングは、下治具プレート46が上治具プレート44から荷重を受けるタイミング、あるいは上治具プレート44が可動加圧部22から荷重を受けるタイミング、あるいは可動加圧部22が荷重発生部30から荷重を受けるタイミングと概ね同期している。柱状部材50a,50b,50cに荷重が加わっていない無負荷状態では、柱状部材50a,50b,50cは、歪み状態を解除し、元の状態へ復帰する。
【0072】
本実施形態では、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置に配置される柱状部材50aの歪み量は、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置に配置される柱状部材50b,50cの歪み量に比べて小さくなっている。すなわち、複数の柱状部材50には、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて、歪み量の勾配が形成されており、下治具プレート46の中央付近に配置された柱状部材50ほど歪みが小さく、下治具プレート46の外周付近に配置された柱状部材50ほど歪みが大きくなっている。
【0073】
下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置において、歪み量が相対的に小さい柱状部材50aで下治具プレート46を支持することにより、柱状部材50aから下治具プレート46に相対的に大きな支持力を与え、下治具プレート46を撓みにくくし、下治具プレート46に発生する撓みを柱状部材50aの歪み量に応じた小さな撓み量へ調整することが可能となる。すなわち、何ら策を講じなければ、凹形状に撓んでいた下治具プレート46の中央付近では、図3Bに示すように撓みが相対的に小さくなる。その結果、下治具プレート46に加わる荷重を増大させ、下治具プレート46の上(設置ベース47)に配置される基板2の被荷重量を増大させることが可能となっている。
【0074】
また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置において、歪み量が相対的に大きい柱状部材50b,50cで下治具プレート46を支持することにより、柱状部材50b,50cから下治具プレート46に相対的に小さな支持力を与え、下治具プレート46を撓みやすくし、下治具プレート46に発生する撓みを柱状部材50b,50cの歪み量に応じた大きな撓み量へ調整することが可能となる。すなわち、何ら策を講じなければ、撓みがほとんど発生していなかった下治具プレート46の外周付近には、図3Bに示すように相対的に大きな撓みが発生する。その結果、下治具プレート46に加わる荷重を減少させ、下治具プレート46の上(設置ベース47)に配置される基板2の被荷重量を減少させることが可能となる。
【0075】
図5Aは、本実施形態における支持部材45を用いず、平板形状の部材(上側搭載部43に対応する部材)に下治具プレート46(図3A)を搭載したときに、下治具プレート46に配置された感圧紙6に加わる荷重の分布を示す図(すなわち、比較例を示す図)である。また、図5Bは、本実施形態における支持部材45で下治具プレート46を支持したときに、下治具プレート46に配置された感圧紙6に加わる荷重の分布を示す図(すなわち、実施例を示す図)である。図5Aおよび図5Bにおいて、感圧紙6に加わる荷重の分布は、基板2に加わる荷重部の分布に対応する。これらの図面において、濃色で示されている部分には相対的に大きな荷重が加わっていることを表しており、薄色で示されている部分には相対的に小さな荷重が加わっていることを表している。なお、感圧紙は、設置ベース47を介することなく、下治具プレート46の上面に直接的に配置されている。
【0076】
図5Aに示すように、比較例では、感圧紙6の中央部に近づくほど、感圧紙6に加わる荷重が相対的に小さくなっている一方で、感圧紙6の外周部に近づくほど、感圧紙6に加わる荷重が相対的に大きくなっていくことが分かる。すなわち、比較例では、下治具プレート46の中央付近に相対的に大きな撓みが発生している一方で、下治具プレート46の外周付近には相対的に小さな撓みが発生している。
【0077】
一方、図5Bに示すように、実施例では、感圧紙6の各位置において、感圧紙6に加わる荷重が一様になっていることが分かる。本実施形態では、図3Bに示すように、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46を撓ませることにより、図5Bに示すように、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を均一になるように調整し、下治具プレート46に配置された基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0078】
図4に示す例では、異なる断面積を有する複数の柱状部材50a,50b,50cの歪み量の違いに基づいて、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布の調整を行う態様について示したが、当該調整を行うための態様はこれに限定されるものではない。
【0079】
例えば、支持部材45は、一定荷重を受けた場合における複数の柱状部材50のヤング率に基づく歪み量の違いにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を調整してもよい。図6Aに示す例では、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’はそれぞれヤング率(機械強度)あるいは硬度の異なる部材で構成されている。
【0080】
より詳細には、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる下治具プレート46の中央付近には、ヤング率が相対的に大きい柱状部材50a’が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる下治具プレート46の外周付近には、ヤング率が相対的に小さい柱状部材50c’が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に中程度である下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には、ヤング率が相対的に中程度である柱状部材50b’が配置されている。すなわち、各柱状部材50a’,50b’,50c’のヤング率は、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じた値となっており、各柱状部材50のヤング率には下治具プレート46の中心から離れた位置ほど小さくなるような勾配が形成されている。なお、各柱状部材50a’,50b’,50c’の断面積および形状は全て同一になっている。
【0081】
この場合、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’で下治具プレート46が支持された状態において、上治具プレート44による基板2の加圧により、下治具プレート46に荷重が与えられ、それに伴い、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’に荷重が与えられると、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’にそのヤング率に応じた歪みが発生し、これらの歪み量に応じた撓み量の撓みが下治具プレート46に発生する。
【0082】
すなわち、柱状部材50a’に相対的に小さな歪みが発生する結果、下治具プレート46の中央付近には相対的に小さな撓みが発生する。また、柱状部材50c’に相対的に大きな歪みが発生する結果、下治具プレート46の外周付近には相対的に大きな撓みが発生する。また、柱状部材50b’に相対的に中程度の歪みが発生する結果、下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には相対的に中程度の撓みが発生する。
【0083】
このように、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に複数の柱状部材50a’,50b’,50c’の歪み量を対応させ、その歪み量に応じた撓み量の撓みを下治具プレート46に発生させることにより、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46を撓ませ(図3B参照)、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0084】
複数の柱状部材50のヤング率Eは、好ましくは100GPa~500GPaである。また、最もヤング率Eが大きい柱状部材50a’のヤング率Emaxと最もヤング率Eが小さい柱状部材50c’のヤング率Eminとの比Emax/Eminは、好ましくは2/1~4/1である。各柱状部材50a’,50b’,50c’のヤング率の範囲をこのような範囲に設定することにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて、各柱状部材50a’,50b’,50c’を適度に撓ませることが可能となる。なお、支持部材45には、柱状部材50a’,50b’,50c’とは異なるヤング率を有する他の柱状部材50を含めてもよい。
【0085】
上記のようなヤング率を有する材料として、複数の柱状部材50は、例えば、炭素銅、窒化珪素、炭化珪素等の材料で構成されることが好ましい。
【0086】
また、例えば、支持部材45は、複数の柱状部材50の長さの違いにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を調整してもよい。図6Bに示す例では、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”はそれぞれ長さの異なる部材で構成されており、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”の上端の高さ位置に分布が形成されている。
【0087】
より詳細には、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる下治具プレート46の中央付近には、長さが相対的に長い柱状部材50a”が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる下治具プレート46の外周付近には、長さが相対的に短い柱状部材50c”が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に中程度である下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には、長さが相対的に中程度である柱状部材50b”が配置されている。すなわち、各柱状部材50a”,50b”,50c”の長さは、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じた値となっており、各柱状部材50の長さ(上端の高さ位置)には下治具プレート46の中心から離れた位置ほど小さくなるような勾配が形成されている。なお、各柱状部材50a”,50b”,50c”の断面積およびヤング率は全て同一になっている。
【0088】
この場合、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”で下治具プレート46が支持された状態において、上治具プレート44による基板2の加圧により、下治具プレート46に荷重が与えられ、それに伴い、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”に荷重が与えられると、複数の下治具プレート46には、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”の長さに応じた撓みが発生する。
【0089】
すなわち、柱状部材50a”が配置された下治具プレート46の中央付近には、相対的に小さな撓みが発生する。また、柱状部材50c”が配置された下治具プレート46の外周付近には、相対的に大きな撓みが発生する。また、柱状部材50b”が配置された下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には、相対的に中程度の撓みが発生する。このように、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて、異なる長さの複数の柱状部材50a”,50b”,50c”を配置し、その長さに応じた撓み量の撓みを下治具プレート46に発生させることにより、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46を撓ませ(図3B参照)、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。なお、支持部材45には、柱状部材50a”,50b”,50c”とは異なる長さを有する他の柱状部材50を含めてもよい。
【0090】
なお、下治具プレート46の撓みを調整するにあたって、複数の柱状部材50の高さを調整する場合に比較して、複数の柱状部材50の材質(ヤング率)あるいは径(断面積)を調整する方が、精度を出しやすく、容易である。
【0091】
複数の柱状部材50の配置は図4に示す例に限定されるものではなく、例えば図7A,8A,9A,10Aに示すような配置で、複数の柱状部材50を配置してもよい。図7Aに示す例では、点線で示す設置部52の中央領域520に9個の柱状部材50dが3行3列でマトリクス状に配置されている。また、設置部52の中央領域520の外側には、複数の柱状部材50eが局所的に配置されている。複数の柱状部材50d,50eは、設置部52の中心から放射状に延びるように配置されている。設置部52の中央領域520では、複数の柱状部材50dが相対的に高い密度で配置されており、設置部52の中央領域520の外側では、複数の柱状部材50eが相対的に低い密度で配置されている。
【0092】
すなわち、図7Aに示す例では、下治具プレート46(図1B)に加わる荷重が相対的に小さくなる位置(中央領域520)では、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置(中央領域520の外側)に比べて、相対的に多くの本数の柱状部材50dが密集して配置されている。
【0093】
図7Bは、図7Aに示す複数の柱状部材50d,50eで下治具プレート46を支持したときに、下治具プレート46に発生する撓みの分布をCAE(Computer Aided Engineering)解析により解析した結果を示す図である。これらの図面において、濃色で示されている部分には相対的に大きな撓みが発生していることを表しており、薄色で示されている部分には相対的に小さな撓みが発生していることを表している。
【0094】
図7Bに示すように、設置部52の中央領域520に対応する下治具プレート46の中央領域460は、相対的に多くの本数の柱状部材50dで支持されているため、中央領域460では、下治具プレート46には複数の柱状部材50dから相対的に大きな支持力が与えられ、下治具プレート46に撓みが発生しにくくなる。すなわち、中央領域460において、下治具プレート46に発生する撓みは、複数の柱状部材50dの密度(本数)に応じた小さな撓み量へ調整され、中央領域460に相対的に小さな撓みが発生する結果、下治具プレート46に加わる荷重が増大することになる。
【0095】
一方、下治具プレート46の中央領域460の外側の領域は、相対的に少ない本数の柱状部材50eで支持されているため、当該領域では、下治具プレート46には複数の柱状部材50eから相対的に小さな支持力が与えられ、下治具プレート46に撓みが発生しやすくなる。すなわち、中央領域460の外側の領域において、下治具プレート46に発生する撓みは、複数の柱状部材50eの密度(本数)に応じた大きな撓み量へ調整され、当該領域に相対的に大きな撓みが発生する結果、下治具プレート46に加わる荷重が減少することになる。
【0096】
特に、柱状部材50eで支持されていない下治具プレート46の側方領域461では、下治具プレート46に撓みが特に発生しやすく、下治具プレート46の撓み量が他の領域に比べて特に大きくなっている。
【0097】
このように、複数の柱状部材50d,50eを、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて配置することにより、複数の柱状部材50d,50eの配置に応じて、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46の撓みを調整し、下治具プレート46の上(設置ベース47)に配置される基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0098】
図4および図7Aのいずれに示す配置で複数の柱状部材50を設置部52に設置するかは、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて適宜決定される。なお、図4および図7Aに示す配置以外の配置で、複数の柱状部材50を設置部52に設置してもよい。
【0099】
また、これらの設置態様は、前述したように、下治具プレート46を支持部材45で支持しなかった場合において、下治具プレート46に、その中心に近い位置ほど相対的に大きな撓みが発生し、その外周に近い位置ほど相対的に小さな撓みが発生する場合を前提としている。しかし、これとは逆に、下治具プレート46を支持部材45で支持しなかった場合において、下治具プレート46には、その中心に近い位置ほど相対的に小さな撓みが発生し、その外周に近い位置ほど相対的に大きな撓みが発生する場合がある。この場合、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布は、図5Aに示す荷重の面内分布とは概ね逆の関係になり、下治具プレート46の中心付近に加わる荷重が相対的に大きくなる一方で、下治具プレート46の外周付近に加わる荷重が相対的に小さくなる。
【0100】
このような場合には、下治具プレート46の中央付近に配置される柱状部材50ほど歪みが大きく、下治具プレート46の外周付近に配置される柱状部材50ほど歪みが小さくなるように、設置部52に配置する複数の柱状部材50の材質(ヤング率)、形状、あるいは配置等を適宜選択すればよい。例えば、下治具プレート46の中央付近に配置される柱状部材50については、ヤング率を小さくし、あるいは径を細くするとともに、下治具プレート46の外周付近に配置される柱状部材50については、ヤング率を大きくし、あるいは径を太くすればよい。
【0101】
このような歪み特性を有する複数の柱状部材50で下治具プレート46を支持した場合、下治具プレート46の中心に近い位置では、下治具プレート46が撓みやすくなり、下治具プレート46に加わる荷重を減少させることが可能となる。その結果、当該位置において、下治具プレート46の上(設置ベース47)に配置された基板2に加わる荷重を減少させることが可能となる。
【0102】
また、下治具プレート46の外周に近い位置では、下治具プレート46が撓みにくくなり、下治具プレート46に加わる荷重を増大させることが可能となる。その結果、当該位置において、下治具プレート46の上(設置ベース47)に配置された基板2に加わる荷重を増大させることが可能となる。
【0103】
図3Aに示すように、設置部52は、略平板形状を有する板体からなり、複数の柱状部材50が直立した状態で保持されるよう、複数の柱状部材50を支持する機能を有する。設置部52は、複数の柱状部材50を設置するための複数の設置孔(図示略)を有する。複数の設置孔には、複数の柱状部材50の下端部を挿入し、固定することが可能となっている。複数の設置孔の数は、複数の柱状部材50の数と等しくてもよく、あるいは複数の柱状部材50の数よりも多くてもよい。複数の柱状部材50は、それぞれボルト等の連結部材で設置部52(設置孔)に固定されてもよく、あるいは接着剤等の接続部材で設置部52(設置孔)に固定されてもよい。
【0104】
なお、設置部52に設置孔は必須ではなく、例えば平面形状(平坦形状)からなる設置部52の表面に、複数の柱状部材50を連結部材あるいは接続部材で固定してもよい。あるいは、複数の柱状部材50は、単に設置部52の表面に当接しているのみでもよい。図4に示す複数の柱状部材50のうち、中央に位置する柱状部材50a1については、連結部材あるいは接着部材等で設置部52に固定されていることが好ましい。
【0105】
また、柱状部材50a1については、連結部材あるいは接着部材等で下治具プレート46の下面に固定されていることが好ましい。複数の柱状部材50のうち、柱状部材50a1のみ、下治具プレート46の下面に固定することにより、下治具プレート46の中央部において、下治具プレート46の撓みが小さくなるように調整し、下治具プレート46に加わる荷重を相対的に大きくすることができる。
【0106】
上治具プレート44(図3A)で基板2を加圧するときには、上治具プレート44および下治具プレート46の加熱に伴い下治具プレート46等に熱変形が生じ、従来技術では、基板2に対して均一な荷重を与えることが困難となるおそれがあった。そこで、本実施形態における基板処理装置10では、このような不具合を防止するために、図8Aおよび図8Bに示すように、下治具プレート46の上面に設置ベース47が設けられている。設置ベース47は略平板形状を有する中実の板体で構成され、設置ベース47には基板2が配置される。すなわち、本実施形態では、基板2は下治具プレート46の上面に直接的に配置されることはなく、基板2と下治具プレート46との間には、設置ベース47が介在することになる。
【0107】
このような状態で、上治具プレート44で基板2を加圧する場合、下治具プレート46の加熱に伴い下治具プレート46に変形(熱膨張)が生じたとしても、その影響が基板2に直接的に及びにくく、設置ベース47に配置された基板2に対して、上治具プレート44によって均一な荷重を加えることができる。
【0108】
設置ベース47の下面は、下治具プレート46の上面に対して、密着するように当接している。設置ベース47の縁部(側部あるいは側面)471には、それぞれベース傾斜部472が形成されている。ここで、縁部471のうち、設置ベース47のX軸負方向側の縁部を「縁部471a」と表記し、設置ベース47のY軸負方向側の縁部を「縁部471b」と表記し、設置ベース47のX軸正方向側の縁部を「縁部471c」と表記し、設置ベース47のY軸正方向側の縁部を「縁部471d」と表記する。縁部471aと縁部471cとはX軸方向に対向しており、縁部471bと縁部471dとはY軸方向に対向している。
【0109】
ベース傾斜部472は、設置ベース47の外側(設置ベース47の中心から離れる側)に向かうにしたがって、その厚みが小さくなる(ベース傾斜部472の傾斜面の高さが低くなる)ように傾斜している。すなわち、設置ベース47は、全体として上に凸となる凸形状を有している。ベース傾斜部472の傾斜角度θは、好ましくは0°<θ<90°であり、さらに好ましく30°≦θ≦60°である。ベース傾斜部472の傾斜角度θを上記の範囲に設定することにより、設置ベース47の縁部471にある程度の厚みを持たせることが可能となり、縁部471の強度を高めることができる。
【0110】
設置ベース47の上面あるいは下面の面積は、下治具プレート46の上面の面積よりも小さく、基板2の上面あるいは下面の面積よりも大きいことが好ましい。設置ベース47の厚みT1(図10A)は、下治具プレート46の厚みT2(図10A)よりも小さく、厚みT1と厚みT2との比T1/T2は、好ましくは1/16~1であり、さらに好ましくは1/8~3/4である。上記比T1/T2を上記の範囲に設定することにより、設置ベース47に適度な厚みが付与され、下治具プレート46の変形(熱膨張)による影響が、設置ベース47に配置される基板2に及ぶことを効果的に防止することができる。
【0111】
設置ベース47は、セラミックスまたはガラスで構成されている。設置ベース47を構成するガラスとしては、ネオセラム(登録商標)、石英ガラス、等のガラス材料が好ましく用いられる。また、設置ベース47を構成するセラミックスとしては、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、等のセラミック材料が好ましく用いられる。また、上記の材料以外にも、下治具プレート46よりも低い熱膨張性を有する各種の無機固形体材料を用いることができる。
【0112】
このように、設置ベース47を構成する材料として、下治具プレート46を構成する金属(SUS、鉄、ニッケル等)等に比べて熱膨張率の小さいセラミックスまたはガラスを用いることにより、下治具プレート46の加熱に伴い、下治具プレート46の熱が設置ベース47に伝熱したとしても、設置ベース47に変形(熱膨張)が生じることを防止することが可能となる。したがって、設置ベース47に配置された基板2に設置ベース47の変形による影響が及ぶことを有効に防止することが可能となり、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0113】
また、加工精度の観点から、セラミックスまたはガラスは下治具プレート46を構成する金属等に比べて、その表面精度(例えば平坦性や平滑性等)を確保しやすい。そのため、設置ベース47をセラミックスまたはガラスで構成することにより、設置ベース47の表面精度を十分に確保することができる。
【0114】
下治具プレート46の上面には、設置ベース47の縁部471の一部に当接する仮固定枠48a,48bが設けられている。仮固定枠48aは縁部471aに当接し、仮固定枠48bは縁部471bに当接している。複数の仮固定枠48a,48bは、それぞれ設置ベース47のいずれかの辺(図示の例では、縁部471a,471bに対応する辺)に対応して設けられている。仮固定枠48a,48bは、設置ベース47を下治具プレート46の所定の位置に位置決めしつつ仮固定するためのものである。
【0115】
仮固定枠48aは、略平板形状(略直方体形状)を有する板体からなり、その長手方向がY軸方向と一致するように、下治具プレート46の上面に配置されている。仮固定枠48aの厚みは、設置ベース47の厚みと略同一となっているが、これよりも厚くてもよく、あるいはこれよりも薄くてもよい。仮固定枠48aのY軸方向幅は、設置ベース47の縁部471aのY軸方向幅と略等しくてもよく、あるいはこれよりも短くてもよい。すなわち、仮固定枠48aは、設置ベース47の縁部471aの全体に当接していてもよく、縁部471aの一部に当接していてもよい。
【0116】
図示の例では、1個の仮固定枠48aが縁部471aに当接しているが、複数の仮固定枠48aの各々が縁部471aに所定の間隔で局所的に当接していてもよい。仮固定枠48aの形状は図示の形状に限定されるものではなく、例えば略立方体形状等であってもよい。仮固定枠48aのX軸方向幅は、下治具プレート46上における設置ベース47の外側のスペースの大きさに応じて適宜変更してもよい。
【0117】
仮固定枠48bは、略平板形状(略直方体形状)を有する板体からなり、その長手方向がX軸方向と一致するように、下治具プレート46の上面に配置されている。仮固定枠48bの厚みは、設置ベース47の厚みと略同一となっているが、これよりも厚くてもよく、あるいはこれよりも薄くてもよい。仮固定枠48bのX軸方向幅は、設置ベース47の縁部471bのX軸方向幅と略等しくてもよく、あるいはこれよりも短くてもよい。すなわち、仮固定枠48bは、設置ベース47の縁部471bの全体に当接していてもよく、縁部471bの一部に当接していてもよい。
【0118】
図示の例では、1個の仮固定枠48bが縁部471bに当接しているが、複数の仮固定枠48bの各々が縁部471bに所定の間隔で局所的に当接していてもよい。仮固定枠48bの形状は図示の形状に限定されるものではなく、例えば略立方体形状等であってもよい。仮固定枠48bのY軸方向幅は、下治具プレート46上における設置ベース47の外側のスペースの大きさに応じて適宜変更してもよい。
【0119】
仮固定枠48a,48bは、複数の留め具480により、下治具プレート46に固定されている。複数の留め具480は、仮固定枠48a,48bの長手方向に沿って、所定の間隔で配置されている。留め具480は、仮固定枠48a,48bに形成された貫通孔の内部を貫通し、下治具プレート46に形成された凹部の内部に嵌め込まれている(図10A参照)。留め具480は、ボルトやピン等、種々の部材で構成することができる。なお、仮固定枠48a,48bを下治具プレート46に固定するための手段は、留め具480に限定されるものではなく、例えば接着剤等の接合部材で仮固定枠48a,48bを下治具プレート46に固定してもよい。
【0120】
仮固定枠48aと仮固定枠48bとは、略直交するように配置されている。仮固定枠48aと仮固定枠48bとの交差部(設置ベース47の角部に対応する位置)において、仮固定枠48aと仮固定枠48bとは接しておらず、所定の距離だけ離間して配置されている。
【0121】
設置ベース47の縁部471aに当接する仮固定枠48aの内側には、縁部471aに形成されたベース傾斜部472に係合する内側傾斜部481が形成されている。また、設置ベース47の縁部471bに当接する仮固定枠48bの内側には、縁部471bに形成されたベース傾斜部472に係合する内側傾斜部481が形成されている。内側傾斜部481は、設置ベース47に近づく方向に向かうにしたがって、その厚みが小さくなる(内側傾斜部481の傾斜面の高さが高くなる)ように傾斜している。内側傾斜部481の傾斜面は、ベース傾斜部472の傾斜面に対して略平行となっており、内側傾斜部481とベース傾斜部472とは係合可能となっている。
【0122】
内側傾斜部481の傾斜面は、設置ベース47に向かって上方に傾斜しているため、内側傾斜部481とベース傾斜部472とが係合したときに、設置ベース47の上方への位置ずれを防止することが可能となっている。なお、内側傾斜部481の傾斜面は、設置ベース47に向かって下方に傾斜していていてもよい。この場合、ベース傾斜部472は、その傾斜面が設置ベース47の外側に向かって上方に傾斜するように形成される。
【0123】
下治具プレート46の上には、複数の仮固定治具49が設けられている。より詳細には、複数の仮固定治具49は、設置ベース47の縁部471cに対応する位置に設けられている。仮固定治具49は、仮固定枠48aとともに、設置ベース47を下治具プレート46の所定の位置に位置決めしつつ仮固定するためのものである。複数の仮固定治具49は、仮固定枠48aにX軸方向に対向するように配置されており、Y軸方向から見たとき、設置ベース47は仮固定枠48aと複数の仮固定治具49とで挟まれるように配置される。
【0124】
複数の仮固定治具49は、所定の間隔で、Y軸方向に沿って配置されている。図示の例では、下治具プレート46には、3つの仮固定治具49が設けられているが、仮固定治具49の数は1つでもよく、2つあるいは4つ以上でもよい。
【0125】
仮固定治具49は、可動部材490をX軸方向に移動可能に保持する。仮固定治具49は、可動部材490を設置ベース47に向けて移動(延出)させ、可動部材490を設置ベース47の縁部471cに当接させることにより、下治具プレート46に対して設置ベース47を仮固定する。仮固定治具49の機能の詳細については後述する。
【0126】
図9に示すように、下治具プレート46の上面には、仮固定枠48a,48bに加えて、仮固定枠48c,48dが設けられていてもよい。仮固定枠48cは設置ベース47の縁部471cに対応する位置に設けられており、仮固定枠48dは設置ベース47の縁部471dに対応する位置に設けられている。
【0127】
仮固定枠48cは仮固定枠48aにX軸方向に対向して設けられており、Y軸方向から見て、設置ベース47は仮固定枠48aと仮固定枠48cとに挟まれるように配置されている。仮固定枠48dは仮固定枠48bにY軸方向に対向して設けられており、X軸方向から見て、設置ベース47は仮固定枠48bと仮固定枠48dとに挟まれるように配置されている。仮固定枠48a~48dは略リング状に配置されており、設置ベース47は仮固定枠48a~48dに囲まれるようにこれらの内側に配置される。
【0128】
仮固定枠48aと仮固定枠48cとの間の距離は設置ベース47のX軸方向幅よりも大きくなっており、仮固定枠48bと仮固定枠48dとの間の距離は設置ベース47のY軸方向幅よりも大きくなっている(図10A参照)。詳細については後述するが、設置ベース47の縁部471は、仮固定枠48a~48dのうち、仮固定枠48a,48bに当接し、仮固定枠48c,48dには当接しない。
【0129】
下治具プレート46の上面において、仮固定枠48cが配置された位置には、複数(4つ)の仮固定治具49cが設けられており、仮固定枠48dが配置された位置には、複数(4つ)の仮固定治具49dが設けられている。これらの仮固定治具49c,49dは、仮固定枠48c,48dに形成された複数の貫通孔の内部にそれぞれ配置されている。
【0130】
仮固定枠48cに配置された仮固定治具49cは、可動部材490をX軸方向に往復移動可能に保持する。仮固定枠48dに配置された仮固定治具49dは、可動部材490をY軸方向に往復移動可能に保持する。以下、図10Aおよび図10Bを参照しつつ、仮固定治具49dの詳細な構成について説明する。なお、仮固定治具49cの構成は仮固定治具49dの構成と同様であるため、その詳細な説明については省略する。
【0131】
図10Aおよび図10Bに示すように、仮固定治具49dは、例えばプランジャからなり、可動部材490と、弾性体491と、軸部材492と、筐体493とを有する。筐体493は、有底筒形状からなり、可動部材490と弾性体491とを内部に収容する。筐体493は、仮固定枠48dに形成された治具設置孔482の内部に設置(収容)されている。治具設置孔482は、仮固定枠48dの内側(設置ベース47が配置される側)から外側に向かって凹む長手状の孔からなる。筐体493の一端は、軸部材492に形成された凹部に嵌め込まれており、筐体493は、軸部材492に対して直交した状態で固定されている。
【0132】
可動部材490は、例えば棒状部材からなり、筐体493の内部に収容されている。可動部材490の長手方向は、可動部材490の移動方向と一致している。可動部材490の形状は図示の形状に限定されるものではなく、必ずしも長手状に形成されていなくてもよい。例えば、可動部材490の形状は、立方体形状等であってもよい。可動部材490は、その先端部で設置ベース47の縁部471dを押圧可能に構成されている。
【0133】
軸部材492は、例えば棒状部材からなり、下治具プレート46に対して直立した状態で設けられている。軸部材492は、筐体493をY軸方向に平行な状態で固定されるように支持する。軸部材492の下端部は、下治具プレート46に形成された凹部の内部に嵌め込まれており、下治具プレート46に固定されている。ただし、軸部材492の固定態様はこれに限定されるものではなく、接着剤等の接続部材で下治具プレート46の上面に固定されていてもよい。
【0134】
弾性体491は、弾性変形可能な弾性部材からなり、例えばばねやゴム等で構成される。弾性体491は、可動部材490に対して弾性力(付勢力)を与え、その弾性力により可動部材490をY軸正方向側およびY軸負方向側に移動させる。弾性体491の一端は筐体493の内面(底部)に接続されており、弾性体491の他端は可動部材490の一端に接続されている。
【0135】
仮固定枠48b(あるいは仮固定枠48a)と仮固定枠48d(あるいは仮固定枠48c)との間に設置ベース47を配置する段階では、弾性体491は、可動部材490を付勢した状態で保持しており、弾性体491には弾性力が蓄積されている。また、仮固定枠48b(あるいは仮固定枠48a)と仮固定枠48d(あるいは仮固定枠48c)との間に設置ベース47を配置する段階では、設置ベース47の縁部471bと仮固定枠48bとの間には隙間が形成されており、これらは当接してはいない。また、設置ベース47の縁部471dと仮固定枠48dとの間にも隙間が形成されている。
【0136】
この状態において、仮固定治具49dが弾性体491に蓄積された弾性力(付勢力)を開放させると、図10Bに示すように、弾性体491が伸張するとともに、弾性体491から受ける弾性力によって、可動部材490が、付勢位置(図10Aに示す位置)から設置ベース47に向けてY軸方向に沿って押し出される。
【0137】
その結果、可動部材490の先端部が、設置ベース47の縁部471d(ベース傾斜部472)に当接するとともに、仮固定枠48bが配置されている側に向けて縁部471dを押圧する。可動部材490によって押圧された設置ベース47は、縁部471bが仮固定枠48bに当接するまで、仮固定枠48bに向けて移動する。設置ベース47の縁部471bが仮固定枠48bに当接し、仮固定枠48bの内側傾斜部481が設置ベース47のベース傾斜部472に係合することにより、縁部471b側において、設置ベース47が仮固定枠48bによって下治具プレート46に仮固定される。
【0138】
また、この状態において、可動部材490の先端部は設置ベース47の縁部471dを適度な力で押圧した状態を維持しており、縁部471d側において、設置ベース47が仮固定治具49dによって下治具プレート46に仮固定される。その結果、設置ベース47は仮固定枠48bと可動部材490とで挟持された状態となり、仮固定枠48bと可動部材490とによって、所定位置から位置ずれすることを防止することが可能となっている。なお、設置ベース47の縁部471dは、仮固定枠48dに当接することはなく、設置ベース47が下治具プレート46に仮固定された状態においても、設置ベース47の縁部471dと仮固定枠48dとの間には隙間が形成されたままとなっている。
【0139】
このように設置ベース47を下治具プレート46に仮固定した状態において、下治具プレート46を加熱すると、その熱が設置ベース47に伝熱し、設置ベース47に少なからず熱膨張が発生し、設置ベース47が面方向に(X軸方向およびY軸方向)に膨張する可能性がある。本実施形態では、仮固定治具49dは設置ベース47を本固定(完全固定)ではなく仮固定しているため、例えば設置ベース47がY軸方向に膨張した場合には、設置ベース47から受ける応力によって、可動部材490が、設置ベース47から仮固定治具49dに向けて押し戻される。なお、本固定(完全固定)とは、設置ベース47が下治具プレート46に対して移動できないように締結具等によってきつく固定されている状態をいう。
【0140】
すなわち、仮固定治具49dが配置されている側に向けて、設置ベース47が面方向に膨出することにより、その膨張時の応力によって、可動部材490が、仮固定治具49dが配置されている側に向けて、設置ベース47の変形方向に押し戻される。そして、設置ベース47の膨張時の応力と弾性体491による弾性力とが釣り合う位置において、可動部材490の押し戻しが止まり、その状態で設置ベース47は下治具プレート46に仮固定される。なお、その後、設置ベース47が収縮したときには、再び、設置ベース47は、可動部材490で押圧される形で仮固定枠48bが配置されている側に向けて移動し、弾性体491による弾性力と設置ベース47が発生する応力とが釣り合う位置で、下治具プレート46に仮固定される。
【0141】
このように、本実施形態では、設置ベース47は、設置ベース47の変形を許容(吸収)可能に、下治具プレート46に仮固定されている。そのため、設置ベース47の変形を妨げることなく、設置ベース47を下治具プレート46の上で面方向に自在に変形させ、設置ベース47の変形に伴い発生する応力を効果的に逃がすことができる。また、設置ベース47はX軸方向およびY軸方向に自在に変形(膨張)することができるため、設置ベース47のZ軸方向への変形は相対的に小さくなる。そのため、設置ベース47の上面の表面精度(平坦性や平滑性等)が悪化することを防止することが可能となり、設置ベース47の上面に配置される基板2に対して、上治具プレート44によって均一な荷重を与えることができる。
【0142】
以上、図10Aおよび図10Bに示しつつ、仮固定治具49dの構成および動作について説明したが、これと同様のことが仮固定治具49cについても当てはまる。すなわち、本実施形態では、図9に示すように、X軸方向に関しては、仮固定枠48aとそのX軸方向の反対側に位置する複数の仮固定治具49cとによって、設置ベース47のX軸方向に沿う変形(熱膨張)に応じて移動自在に設置ベース47を下治具プレート46に仮固定する。また、Y軸方向に関しては、仮固定枠48bとそのY軸方向の反対側に位置する複数の仮固定治具49dとによって、設置ベース47のY軸方向に沿う変形に応じて移動自在に設置ベース47を下治具プレート46に仮固定する。
【0143】
なお、図8Aに示すように、X軸方向に関してのみ、仮固定枠48aと複数の仮固定治具49とで、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定してもよい。この場合、Y軸方向に関しては、仮固定枠48bとそのY軸方向の反対側に位置する複数の留め具480とで、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定してもよい。
【0144】
なお、仮固定枠48a~48dの配置は、図8Aおよび図9に示す配置に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、図11に示すように、設置ベース47が略矩形状を有する場合には、設置ベース47の第1角部473aに対応する位置に仮固定枠48aを設け、第1角部473aに対して略対角線上に位置する第3角部473cに対応する位置に仮固定治具49cを設けてもよい。また、設置ベース47の第2角部473bに対応する位置に仮固定枠48bを設け、第2角部473bに対して略対角線上に位置する第4角部473dに対応する位置に仮固定治具49dを設けてもよい。
【0145】
図示の例では、仮固定治具49cが配置されている第3角部473cには仮固定枠48cが設けられ、仮固定治具49dが配置されている第4角部473dには仮固定枠48dが設けられている。
【0146】
設置ベース47の角部473a~473dに面する仮固定枠48a~48dの各々の角部には、内側傾斜部481が形成されている。各内側傾斜部481の位置には、設置ベース47の第1角部473a~第4角部473dの各々が配置される。
【0147】
仮固定治具49cでは、可動部材490が、設置ベース47の第3角部473cの位置において縁部471に当接し、縁部471を設置ベース47の中心に向けて押圧する。そのため、設置ベース47は仮固定枠48aに向けて斜め方向に移動し、設置ベース47の第1角部473aに形成されたベース傾斜部472が、仮固定枠48aの内側傾斜部481に当接する。これにより、当該ベース傾斜部472は、当該内側傾斜部481に係合するようになっている。
【0148】
また、仮固定治具49dでは、可動部材490が、設置ベース47の第4角部473dの位置において縁部471に当接し、縁部471を設置ベース47の中心に向けて押圧する。そのため、設置ベース47は仮固定枠48bに向けて斜め方向に移動し、設置ベース47の第2角部473bに形成されたベース傾斜部472が、仮固定枠48bの内側傾斜部481に当接する。これにより、当該ベース傾斜部472は、当該内側傾斜部481に係合するようになっている。
【0149】
その結果、仮固定枠48aとその対角線上に配置された仮固定治具49cとによって挟持されるように、設置ベース47が下治具プレート46に仮固定されるとともに、仮固定枠48bとその対角線上に配置された仮固定治具49dとによって挟持されるように、設置ベース47が下治具プレート46に仮固定される。なお、図示の例において、仮固定枠48a(あるいは仮固定枠48b)およびその対角線上に位置する仮固定治具49c(あるいは仮固定治具49d)の設置を省略し、仮固定枠48b(あるいは仮固定枠48a)およびその対角線上に位置する仮固定治具49d(あるいは仮固定治具49c)のみによって、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定してもよい。
【0150】
また、図12に示すように、設置ベース47が略円形状を有する場合には、設置ベース47の外周の任意の位置に仮固定枠48aを設け、設置ベース47の径方向に関して仮固定枠48aと対向する位置(すなわち、仮固定枠48aに対して点対象となる位置)に、仮固定治具49cを設けてもよい。また、仮固定枠48aに対して周方向に略90度だけ時計回りに回転した位置に仮固定枠48bを設け、設置ベース47の径方向に関して仮固定枠48bと対向する位置に、仮固定治具49dを設けてもよい。このような構成とした場合、仮固定枠48a,48bと仮固定治具49c,49dとで設置ベース47の外周を挟み込むようにして、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定することができる。
【0151】
図10Aおよび図10Bに示す例では、設置ベース47の縁部471bに形成されたベース傾斜部472に仮固定枠48bの内側傾斜部481が係合するとともに、設置ベース47の縁部471dに形成されたベース傾斜部472に仮固定治具49dの可動部材490が当接することにより、設置ベース47は下治具プレート46に仮固定されていたが、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定する態様はこれに限定されるものではない。例えば、図13に示すように、仮固定枠48bの内側に鉤部483bを形成するとともに、仮固定枠48dの内側に鉤部483dを形成し、設置ベース47の縁部471bを鉤部483bに係合させるとともに、設置ベース47の縁部471dを鉤部483dに係合させることにより、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定してもよい。鉤部483b,483dは、設置ベース47の縁部471よりも内側の領域に突出しており、この突出部分が設置ベース47の上方への位置ずれに対するストッパとして機能する。
【0152】
この態様では、鉤部483bの位置に形成されたベース収容部484bに設置ベース47の縁部471bが収容され、鉤部483dの位置に形成されたベース収容部484dに設置ベース47の縁部471dが収容される。これにより、設置ベース47の上方への移動を鉤部483b,483dで規制することが可能となり、下治具プレート46に対する設置ベース47の仮固定が解除されることを防止することができる。このような構造は、図9に示す仮固定枠48aおよび仮固定枠48cにも適用することができる。
【0153】
図8A に示すように、下治具プレート46と設置部52との間には、断熱材60が配置されている。断熱材60は、略平板形状を有し、その内部には複数の柱状部材50を収容するための複数の収容孔(図示略)が形成されている。複数の柱状部材50は、複数の収容孔の内部に収容された状態で断熱材60によって覆われている。下治具プレート46と設置部52との間に断熱材60を介在させることにより、下治具プレート46およびその上に配置される設置ベース47の面内方向の各位置に温度差が形成されることを防止することが可能となっている。
【0154】
すなわち、図4に示すように、下治具プレート46の中央部に横断面積の大きい柱状部材50aが配置され、下治具プレート46の外周部に横断面積が小さい柱状部材50b,50cが配置された場合、横断面積が大きい柱状部材50aの方が横断面積が小さい柱状部材50b,50cに比べて熱伝導性(放熱性)が高くなる傾向があるため、下治具プレート46の中央部では外周部に比べて、下治具プレート46の熱がより多く放熱される。そのため、下治具プレート46の中央部に近づくほどその温度が低下しやすくなり、下治具プレート46の中央部と外周部とで温度差が生じ、下治具プレート46およびその上に配置される設置ベース47に温度分布の不均一性が生じ得る。
【0155】
そのため、本実施形態では、図8Aに示すように、断熱部材80を下治具プレート46の下に配置し、特に下治具プレート46の中央部における放熱を抑制することにより、下治具プレート46およびその上に配置される設置ベース47の温度分布が均一となるように調整している。
【0156】
なお、複数の柱状部材50(特に、下治具プレート46の中央部に配置される柱状部材50a)を、断熱性を有する部材で構成することにより、複数の柱状部材50を介した放熱を抑制してもよい。
【0157】
以上、本実施形態における基板処理装置10では、図8Aに示すように、設置ベース47が、その面方向の変形を許容可能に、下治具プレート46に仮固定されている。そのため、下治具プレート46の加熱に伴い、下治具プレート46の熱が設置ベース47に伝熱し、設置ベース47に変形(熱膨張)が生じるような事態が生じたとしても、その面方向の変形を妨げることなく、設置ベース47を下治具プレート46の上で面方向に自在に変形させることにより、設置ベース47の変形に伴い発生する応力を逃がすことが可能となる。したがって、設置ベース47の上面の表面精度(例えば平坦性や平滑性等)を十分に確保し、設置ベース47に配置された基板2に設置ベース47の変形による影響が及ぶことを防止することが可能となり、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0158】
また、本実施形態では、下治具プレート46の上には、設置ベース47の縁部471の一部に当接する仮固定枠48a,48bが設けられている。仮固定枠48a,48bに設置ベースの縁部471a,471bを当接させることにより、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定することができる。また、設置ベース47の縁部471c,471dを仮固定枠に当接させることなくフリーの状態とすることにより、下治具プレート46の加熱に伴い、設置ベース47に変形が生じるような事態が生じたとしても、その変形を妨げることなく、設置ベース47を下治具プレート46の上で面方向に自在に変形させ、設置ベース47の変形に伴い発生する応力を効果的に逃がすことができる。また、仮固定枠48a,48bを用いて設置ベース47を下治具プレート46に仮固定することにより、設置ベース47の位置決めが容易になる。
【0159】
また、複数の仮固定枠48a,48bを設置ベース47の縁部471a,471bに対応した位置に設けることにより、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定するときに、設置ベース47の位置決めを高精度で行うとともに、設置ベース47の位置ずれを有効に防止することができる。
【0160】
また、本実施形態では、設置ベース47の縁部471a,471bにはベース傾斜部472が設けられており、縁部471a,471bが当接する仮固定枠48a,48bの内側には、ベース傾斜部472に係合する内側傾斜部481が形成されている。ベース傾斜部472と内側傾斜部481とを係合させることにより、設置ベース47の位置ずれや、設置ベース47が下治具プレート46から外れることを有効に防止することができる。
【0161】
また、本実施形態では、図9に示すように、設置ベース47の縁部471a,471bに対応する位置では、縁部471a,471bが仮固定枠48a,48bに当接することにより、設置ベース47が下治具プレート46に仮固定される。また、設置ベースの縁部471c,471dに対応する位置では、縁部471c,471dが仮固定治具49c,49d(可動部材490)に当接することにより、設置ベース47が下治具プレート46に仮固定される。これにより、仮固定枠48a,48bと仮固定治具49c,49dとで設置ベース47の縁部471a~471dを挟み込むようにして、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定することができる。このように、仮固定枠48a,48bおよび仮固定治具49c,49dの両方を用いて設置ベース47を下治具プレート46に仮固定することにより、仮固定枠48a,48bおよび仮固定治具49c,49dのいずれか一方による設置ベース47の仮固定を他方によって補強することができる。
【0162】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0163】
上記実施形態では、複数の柱状部材50は全て円柱形状を有していたが、複数の柱状部材50のいずれかが円柱形状であり、残りのいずれかが多角柱形状、円錐形状、あるいは多角錐形状等であってもよい。このような形状からなる複数の柱状部材50は、一定荷重を受けた場合における歪み量が異なる。そのため、この場合も、上記実施形態と同様に、支持部材45は、複数の柱状部材50の形状の違いに基づく歪み量の違いにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を調整し、下治具プレート46に発生する撓みを調整することができる。
【0164】
上記実施形態において、支持部材45は、複数の素子4a,4b,4cが配置された基板2の高さの分布に応じた支持力を下治具プレート46に与えてもよい。基板2に加わる荷重の不均一性は、基板2の高さの分布が要因で生じる場合がある。基板2の高さの分布は、複数の素子4a,4b,4cの形状や大きさの違い、基板2に対する複数の素子4a,4b,4cの配置の非対称性、あるいは加圧時における複数の素子4a,4b,4cの変形等によって生じ得る。例えば、何ら策を講じなければ、基板2の高さが相対的に低い位置では、相対的に小さな荷重が与えられ、基板2の高さが相対的に高い位置では、相対的に大きな荷重が与えられる場合がある(その逆のパターンもある)。
【0165】
このような場合であっても、基板2の高さが相対的に低い位置では、歪みにくい柱状部材を配置する等して、支持部材45(複数の柱状部材50)から下治具プレート46に相対的に大きな支持力を与えて、下治具プレート46に加わる荷重が増大するようにし、基板2の高さが相対的に高い位置では、歪みやすい柱状部材50を配置する等して、支持部材45(複数の柱状部材50)から下治具プレート46に相対的に小さな支持力を与え、下治具プレート46に加わる荷重が減少するようにすることにより、下治具プレート46の各位置に加わる荷重を均衡させ、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0166】
上記実施形態では、図2に示すように、基板2の形状は略四角形であったが、円形あるいはその他の多角形であってもよい。
【0167】
上記実施形態において、下治具プレート46に設ける仮固定枠48a等の数は、図8A,9,11,12に示す仮固定枠の数に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。また、下治具プレート46に設ける仮固定治具49等の数についても同様である。また、図9において、仮固定枠48a,48bおよび仮固定治具49c,49dは必ずしも対になって設置されている必要はなく、いずれか一方の設置を省略してもよい。例えば、設置ベース47の縁部471a(あるいは縁部471b)と縁部471c(あるいは縁部471d)とを一対の仮固定治具49cで挟み込むようにして、設置ベース47を下治具プレート46に仮固定してもよい。
【符号の説明】
【0168】
2…基板
4…素子アレイ
4a,4b,4c…素子
6…感圧紙
10…基板処理装置
20…架台
21…架台上部
22…可動加圧部
220…貫通孔
221…中央領域
23…架台下部
24…ガイドブッシュ
25…ガイドシャフト
30…荷重発生部
40…基板加圧部
41…上側ステージ
42…下側ステージ
43…上側搭載部
44…上治具プレート
45…支持部材
46…下治具プレート
460…中央領域
461…側方領域
47…設置ベース
471,471a~471d…縁部
472…ベース傾斜部
473a~473d…角部
48a~48d…仮固定枠
480…留め具
481…内側傾斜部
482…治具設置孔
483b,483d…鉤部
484b,484d…ベース収容部
49,49c,49d…仮固定治具
490…可動部材
491…弾性体
492…軸部材
493…筐体
50,50a~50e…柱状部材
500…集合体
52…設置部
520…中央領域
60…断熱材
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13