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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173640
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086037
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小泉 洋
(72)【発明者】
【氏名】進藤 修
(72)【発明者】
【氏名】牧田 光悦
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡史
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK02
5F044KK03
5F044LL09
5F044LL11
5F044PP15
5F044RR01
(57)【要約】
【課題】加圧対象物に加わる荷重を均一にすることを可能とする基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、加圧対象物である基板2が配置される下治具プレート46と、下治具プレート46を支持する複数の柱状部材50と、下治具プレート46に直接または間接的に当接し、複数の柱状部材50よりも放熱性が高い放熱用柱53と、を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧対象物が配置される下治具プレートと、
前記下治具プレートを支持する複数の柱状部材と、
前記下治具プレートに直接または間接的に当接し、複数の前記柱状部材よりも放熱性が高い放熱用柱と、を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記放熱用柱は複数からなり、
複数の前記放熱用柱は、前記下治具プレートの温度の面内分布に応じて配置される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記放熱用柱は、柱本体部と、前記柱本体部の表面を覆い、前記柱本体部よりも熱伝導率が高い部材で構成されたカバー部とを有する請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記カバー部は、弾性部材を介して、前記柱本体部の頂部に取り付けられている請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記放熱用柱は、前記下治具プレートに加わる荷重が大きくなる位置に設けられている請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
複数の前記柱状部材と前記放熱用柱とが設置される設置部を有する請求項1または2に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の素子が配置された基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の素子からなる素子アレイを基板上に形成する技術では、複数の素子と基板との機械的な接合の強度や接合の安定性の向上を図るために、基板処理装置を用いて、複数の素子が配置された基板に対し複数の素子を平板で押し付ける処理が行われる(例えば特許文献1)。
【0003】
この種の処理を実行する基板処理装置として、例えば、加圧対象物(複数の素子が配置された基板)が配置される下治具プレートと、下治具プレートに配置された加圧対象物を加圧する上治具プレートと、を有する基板処理装置が用いられる。下治具プレート上で、複数の素子が配置された基板を上治具プレートで加圧することにより、当該基板に荷重が与えられ、これに伴い、複数の素子を当該基板に対して押し付けることが可能となっている。
【0004】
近年では、基板に配置される素子のサイズ(高さ)は数μm程度まで微細化しており、下治具プレートあるいは上治具プレートの表面の平行度や平坦度等が数十μm程度でばらつくと、上治具プレートによって、基板上の複数の素子に対して均一な荷重を与えることが困難となり、複数の素子と基板との間で接合不良が発生するおそれがある。
【0005】
また、上治具プレートで基板を加圧するときには、上治具プレートあるいは下治具プレートの加熱に伴い下治具プレート等に熱変形が生じ、基板に対して均一な荷重を与えることが困難となる。そのため、無負荷状態において、上治具プレートや下治具プレートの表面の平行度や平坦度等をある程度確保することができたとしても、基板加圧時における下治具プレートの熱変形に起因して、複数の素子と基板との間で接合不良が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-232234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、加圧対象物に加わる荷重を均一にすることを可能とする基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る基板処理装置は、
加圧対象物が配置される下治具プレートと、
前記下治具プレートを支持する複数の柱状部材と、
前記下治具プレートに直接または間接的に当接し、複数の前記柱状部材よりも放熱性が高い放熱用柱と、を有する。
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、下治具プレートを支持する複数の柱状部材を有する。下治具プレートを複数の柱状部材で支持した状態で、下治具プレートに配置された加圧対象物を加圧することにより、複数の柱状部材の形状、材質あるいは配置等に応じて、下治具プレートに発生する撓みの面内分布を調整し、加圧対象物に加わる荷重の面内分布を均一となるように調整することができる。
【0010】
また、本発明に係る基板処理装置は、下治具プレートに直接または間接的に当接し、複数の柱状部材よりも放熱性が高い放熱用柱を有する。下治具プレートの加熱時において、柱状部材が配置された位置では、柱状部材を介して、下治具プレートの熱が放熱される。一方、例えば柱状部材が配置されていない位置では、放熱用柱を下治具プレートに直接または間接的に当接させることにより、柱状部材から下治具プレートに与えられる支持力の大きさに影響を与えることなく、放熱用柱を介して、下治具プレートの熱を放熱させることが可能となる。これにより、柱状部材が配置されている位置と配置されていない位置とで、下治具プレートに温度差が生じにくくなり、下治具プレートの熱変形に起因して下治具プレートの各位置の表面精度(例えば平坦性や平滑性等)にばらつきが発生しにくくなる。したがって、下治具プレートに配置された加圧対象物に対して均一な荷重を加えることができる。
【0011】
好ましくは、前記放熱用柱は複数からなり、複数の前記放熱用柱は、前記下治具プレートの温度の面内分布に応じて配置される。例えば、複数の柱状部材が密集して配置されている位置や、横断面積が大きい柱状部材が配置された位置では、これらの柱状部材を介した放熱が促進され、下治具プレートの温度が相対的に低くなる傾向がある。そのため、これらの柱状部材が配置されていない位置、すなわち下治具プレートの温度が相対的に高くなる位置に、放熱用柱を配置することにより、下治具プレートの各位置に温度差が生じることを有効に防止することができる。
【0012】
好ましくは、前記放熱用柱は、柱本体部と、前記柱本体部の表面を覆い、前記柱本体部よりも熱伝導率が高い部材で構成されたカバー部とを有する。カバー部を下治具プレートに当接させることにより、放熱用柱を介して下治具プレートの熱を効果的に外部へ発散させることができる。
【0013】
好ましくは、前記カバー部は、弾性部材を介して、前記柱本体部の頂部に取り付けられている。このような構成とした場合、カバー部には、弾性部材によるクッション性が具備される。そのため、下治具プレートを複数の柱状部材で支持した状態において、下治具プレートに撓みが発生すると、その撓みに応じて、弾性部材が弾性変形するとともに、その変形方向にカバー部の高さ位置が変動する。これにより、複数の柱状部材によって下治具プレートに発生する撓みの面内分布を調整しつつ、放熱用柱を介して、下治具プレートの放熱を促進させることができる。
【0014】
好ましくは、前記放熱用柱は、前記下治具プレートに加わる荷重が相対的に大きくなる位置に設けられている。下治具プレートに加わる荷重が相対的に大きくなる位置において、当該荷重を減少させるために、例えば横断面積が相対的に小さい支持部材を配置した場合、下治具プレートに加わる荷重が相対的に小さくなる位置に比べて、放熱量が少なくなり、下治具プレートに温度差が生じ得る。そのため、下治具プレートに加わる荷重が相対的に大きくなる位置に放熱用柱を設けることにより、放熱用柱を介した放熱を促進させ、下治具プレートに温度差が生じることを有効に防止することができる。
【0015】
好ましくは、複数の前記柱状部材と前記放熱用柱とが設置される設置部を有する。このような構成とすることにより、複数の柱状部材の位置決めが容易になるとともに、複数の柱状部材の位置ずれを防止し、安定した状態で、複数の柱状部材で下治具プレートを支持することができる。また、放熱用柱の位置決めが容易になるとともに、放熱用柱の位置ずれを防止し、安定した状態で、放熱用柱を下治具プレートに当接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは本発明の一実施形態に係る基板処理装置の斜視図である。
図1B図1B図1Aに示す基板処理装置の側面図である。
図2図2は、図1Aに示す基板処理装置の加圧対象である基板を示す図である。
図3A図3Aは、図1Aに示す基板処理装置の基板加圧部の拡大側面図である。
図3B図3Bは、図3Aに示す基板加圧部の下治具プレートに撓みを発生させたときの状態を示す拡大側面図である。
図4図4図3Aに示す基板加圧部のIV-IV線に沿う断面図である。
図5A図5Aは複数の柱状部材で下治具プレートを支持しなかった場合において感圧紙に加わる荷重の面内分布を示す図である。
図5B図5Bは複数の柱状部材で下治具プレートを支持したときに感圧紙に加わる荷重の面内分布を示す図である。
図6A図6A図3Aに示す支持部材の変形例を示す拡大側面図である。
図6B図6B図3Aに示す支持部材の他の変形例を示す拡大側面図である。
図7A図7Aは複数の柱状部材の他の配置例を示す図である。
図7B図7B図7Aに示す配置で複数の柱状部材を配置したときに基板あるいは下治具プレートに加わる荷重の面内分布を示す図である。
図8図8は下治具プレートの下に複数の柱状部材に加えて放熱用柱を配置したときの断面図である。
図9図9図8に示す放熱用柱の構成を示す拡大断面図である。
図10A図10A図8に示す放熱用柱の固定態様の変形例を示す断面図である。
図10B図10B図10Aに示す放熱用柱の固定態様の変形例を示す断面図である。
図10C図10C図10Bに示す放熱用柱の固定態様の変形例を示す断面図である。
図11A図11A図8に示す放熱用柱の配置例を示す図である。
図11B図11B図8に示す放熱用柱の他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
図1Aに示すように、本発明の一実施形態に係る基板処理装置10は、複数の素子4a,4b,4cからなる素子アレイ4(図2)を基板2上に形成するための装置であり、複数の素子4a,4b,4cが配置された基板2に対し、複数の素子4a,4b,4cを所定の手段で押し付ける処理を行うことにより、複数の素子4a,4b,4cと基板2との機械的な接合の強度や接合の安定性の向上を図るためのものである。すなわち、基板処理装置10は、素子アレイ4を基板2上に形成するにあたって、加圧部(加圧装置)として機能する。
【0019】
基板2の材質は、例えばガラスエポキシ材である。ただし、基板2の材質は、これに限定されるものではなく、例えば、ガラス基板としてSiO2あるいはAl23で構成されてもよく、あるいはフレキシブル基板としてポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ウレタン、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエラストマー等、さらにはグラスウール等で構成されてもよい。
【0020】
基板2の表面には、例えば図示しない導電性接合材料が予め形成されている。この導電性接合材料は、異方性導電粒子接続あるいはバンプ圧接接続等により、基板2と素子4a,4b,4cとを電気的および機械的に接続し、加熱により硬化する。導電性接合材料としては、例えばACF、ACP、NCFあるいはNCP等が挙げられる。導電性接合材料の厚みは、好ましくは、1.0~10000μmである。
【0021】
基板2には、配線が所定のパターンで形成されており、この配線に素子4a,4b,4cの電極を導電性接合材料を介して接続することが可能となっている。
【0022】
素子4a,4b,4cは、基板2上にアレイ状に配置される。アレイ状とは、決められたパターンに従って複数行複数列に素子4a,4b,4cが配置された状態をいい、行方向と列方向の間隔は同一でもよく、あるいは相違していてもよい。
【0023】
素子4a,4b,4cは、ディスプレイ用の表示基板にRGBの各画素として配列され、またバックライトの発光体として照明基板に配列される。素子4aは赤色光素子であり、素子4bは緑色発光素子であり、素子4cは青色発光素子である。ただし、基板2に配置される素子は、これらの素子に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態における素子4a,4b,4cは、マイクロ発光素子(マイクロLED素子)であり、そのサイズ(幅×奥行き)は、例えば5μm×5μm~50μm×50μmである。また、素子4a~4cの厚み(高さ)は、例えば50μm以下である。
【0025】
基板処理装置10は、架台20と、荷重発生部30と、基板加圧部40とを有する。図面において、X軸は架台20の幅方向に対応し、Y軸は架台20の奥行方向に対応し、Z軸は架台20の高さ方向に対応するものとする。
【0026】
架台20は、例えば金属等の筐体で構成され、架台上部21と、可動加圧部22と、架台下部23と、ガイドブッシュ24と、ガイドシャフト25と、を有する。架台下部23は、架台20の土台部分(テーブル)を構成しており、所定の高さを有する。図示の例では、架台下部23の内部には中空部が形成されているが、架台下部23の形状はこれに限定されるものではなく、架台下部23の内部が中実になっていてもよい。
【0027】
架台下部23の四隅には、4本のガイドシャフトガイドシャフト25の下端部が固定(挿入)されている。これらのガイドシャフト25は、それぞれ所定の長さを有し、Z軸方向に直立した状態で配置されている。各ガイドシャフト25の下端部は架台下部23に固定され、各ガイドシャフト25の上端部は架台上部21に固定されている。ガイドシャフト25は、架台上部21と架台下部23との間に配置された可動加圧部22の四隅を貫通している。これらのガイドシャフト25は、架台上部21を支持する役割を果たすとともに、可動加圧部22をZ軸方向に沿って上下に摺動可能に支持する役割を果たす。
【0028】
可動加圧部22は、矩形状を有する板体(剛体)からなり、架台下部23と架台上部21との間に位置する。可動加圧部22は、荷重発生部30から荷重を受けることにより、4本のガイドシャフト25に沿って、上下方向に摺動自在に構成されている。図1Bに示すように、可動加圧部22は、基板加圧部40の上面に当接し、これを加圧することにより、基板加圧部40に例えば0~100kN程度の荷重を与える。可動加圧部22は、基板加圧部40に対して平行に当接していることが好ましく、その平行度Aは1μm≦A<2μmであることが好ましい。
【0029】
図1Aに示すように、可動加圧部22の四隅には、4つの貫通孔220がそれぞれ形成されており、これらの貫通孔220の内部には、4本のガイドシャフト25がそれぞれ挿入されている。可動加圧部22の下面(Z軸負方向側の面)には、4つの貫通孔220に対応する位置で、4つのガイドブッシュ24が固定されている。ガイドブッシュ24は、可動加圧部22による上下方向への移動時において、可動加圧部22の滑りを良くする(ガイドシャフト25に対する摩擦を低減する)機能を有するとともに、貫通孔220の軸心に対するガイドシャフト25の位置決めを容易に実現させる機能を有する。
【0030】
架台上部21は、架台20の天井部分を構成している。架台上部21の下面の四隅には、4本のガイドシャフト25の上端部が固定(挿入)されている。架台上部21の中央部には、荷重発生部30が固定されている。荷重発生部30は、例えば加圧用シリンダ、サーボプレス、モータ、あるいはアクチュエータ等の装置で構成されており、可動加圧部22に荷重を印加する役割を果たす。なお、図面が煩雑になるのを防止するため、可動加圧部22の詳細構成については図示を省略し、その一部の構成のみを図示している。
【0031】
荷重発生部30は、可動加圧部22の中央領域221をプレスヘッド(図示略)で加圧することにより、可動加圧部23に荷重を与える。これにより、可動加圧部22は下方に移動し、基板加圧部40を加圧する結果、基板加圧部40において、加圧対象物(複数の素子4a,4b,4cが配置された基板2)に荷重を与えることが可能となっている。
【0032】
図3Aに示すように、基板加圧部40は、上側ステージ41と、下側ステージ42と、上側搭載部43と、上治具プレート44と、支持部材45と、下治具プレート46と、を有する。上側ステージ41は、可動加圧部22の下面に設けられており、下側ステージ42は、架台下部23の上面に設けられている。上側ステージ41および下側ステージ42の厚みは、それぞれ基板2の厚みよりも厚くなっている。上側ステージ41および下側ステージ42は、それぞれ同一形状を有し、各々のX軸方向幅は、上側搭載部43および支持部材45の各々のX軸方向幅よりも大きくなっている。なお、上側ステージ41および下側ステージ42の形状は図示の形状に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0033】
上側ステージ41は、平板状の板体(剛体)からなり、表面精度(例えば平坦性や平滑性等)が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。例えば、上側ステージ41の上面の表面精度は、可動加圧部22の下面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。
【0034】
このように、表面精度に優れた上側ステージ41を可動加圧部22の下面に固定しておくことにより、上側ステージ41の下面に上側搭載部43を固定したときに、上側搭載部43あるいはこれに搭載される上治具プレート44を水平面に対して傾斜させることなく、安定した状態で配置することが可能となる。
【0035】
下側ステージ42は、平板状の板体(剛体)からなり、表面精度(例えば平坦性や平滑性等)が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。例えば、下側ステージ42の上面の表面精度は、架台下部23の上面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。
【0036】
このように、表面精度に優れた下側ステージ42を架台下部23の上面に固定しておくことにより、下側ステージ42の上面に支持部材45を固定したときに、支持部材45あるいはこれに支持される下治具プレート46を水平面に対して傾斜させることなく、安定した状態で配置することが可能となる。
【0037】
上側搭載部43は、平板状の外観形状を有し、上側ステージ41の下面に固定されている。上側搭載部43には上治具プレート44が搭載される。上側搭載部43は、上治具プレート44を支持する役割を果たす。
【0038】
上治具プレート44は、平板状の板体(剛体)からなり、上側搭載部43の下面に固定(搭載)されている。上治具プレート44は、下治具プレート46に配置された基板2を加圧する機能を有する。上治具プレート44には、加熱機能(例えばヒータ)が内蔵されており、上治具プレート44で基板2を加圧するときに、上治具プレート44によって基板2を加熱することが可能となっている。例えば、複数の素子4a,4b,4cと基板2との接続にあたって導電性接合材料を用いる場合には、基板2を加熱することにより、基板2に対して複数の素子4a,4b,4cを良好に接続させることが可能となり、基板2とその上に配置された複数の素子4a,4b,4cとの接合力を高めることが可能となっている。
【0039】
上治具プレート44は、表面精度が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。上治具プレート44の下面の表面精度は、例えば上側ステージ41の下面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。上治具プレート44の表面(特に下面)の表面粗さRaは、特に好ましくはRa≦1μmである。
【0040】
このように、上治具プレート44の表面精度を高めておくことにより、上治具プレート44の下面で下治具プレート46に配置された基板2を加圧するときに、基板2に加わる荷重のムラを低減し、基板2上の複数の素子4a,4b,4cに対して均一な荷重を与えることができる。
【0041】
下治具プレート46は、平板状の板体(剛体)からなり、支持部材45によって支持されている。下治具プレート46は、上治具プレート44と略同一からなる形状を有し、上治具プレート44に対して対向して配置されている。下治具プレート46には、加圧対象物である基板2を配置することが可能となっている。上治具プレート44と同様に、下治具プレート46には、加熱機能(例えばヒータ)が内蔵されており、上治具プレート44で基板2を加圧するときに、下治具プレート46(および上治具プレート44)によって基板2を加熱することが可能となっている。
【0042】
下治具プレート46は、表面精度が比較的高い部材で構成されていることが好ましい。下治具プレート46の上面の表面精度は、例えば下側ステージ42の上面の表面精度よりも優れていることが好ましく、当該表面精度よりも、凹凸が少なく(平滑であり)、水平面に対する傾斜が小さくなっている(平坦である)ことが好ましい。
【0043】
下治具プレート46の表面(特に上面)の表面粗さRaは、上治具プレート46の表面の表面粗さRaと同様に、特に好ましくはRa≦1μmである。また、下治具プレート46と上治具プレート44との平行度Aは、A≦1μmであることが好ましい。
【0044】
このように、下治具プレート46の表面精度を高めておくことにより、上治具プレート44の下面で下治具プレート46に配置された基板2を加圧するときに、上治具プレート44の下面と基板2とが平行になり(密着し)、上述した基板2に加わる荷重分布の均一性を高める効果を得ることができる。
【0045】
上治具プレート44および下治具プレート46の表面精度をある程度確保することができたとしても、上治具プレート44で基板2を加圧するときには、下治具プレート46に少なからず撓みが生じ、下治具プレート46と上治具プレート44との間の接触性(密着性)が不良になる等の理由により、基板2(あるいは、基板2に配置された複数の素子4a,4b,4c)に対して均一な荷重を与えることが困難となり、基板2と複数の素子4a,4b,4cとの接合状態にばらつきが発生するおそれがある。
【0046】
すなわち、基板2には、相対的に見たときに、小さな面圧が加わることにより荷重が減少する方向に変動する領域と、大きな面圧が加わることにより荷重が増大する方向に変動する領域とが形成され、基板2の荷重分布が不均一となる。そこで、本実施形態における基板処理装置10では、支持部材45に、この基板2の加圧時における荷重分布の不均一性を解消するための手段を具備させている。以下、支持部材45の詳細について説明する。
【0047】
支持部材45は、下側ステージ42の上面に固定され、下治具プレート46を支持する。すなわち、本実施形態では、下治具プレート46は、支持部材45を介して、下側ステージ42に配置される。支持部材45は、上述した下治具プレート46の撓みに伴う基板2の被荷重量の変動を調整可能に構成されており、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じた支持力を下治具プレート46に与える。
【0048】
例えば、下治具プレート46のうち、その中心に近い位置ほど、下治具プレート46が下に凸となるように凹形状に撓み、当該位置に加わる面圧が相対的に小さくなり、下治具プレート46の被荷重量が相対的に小さくなる場合がある。このように下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置では、支持部材45は下治具プレート46に相対的に大きな支持力を与える。これにより、下治具プレート46の中心に近い位置では、下治具プレート46が撓みにくくなり、下治具プレート46に加わる荷重を増大させることが可能となる。その結果、当該位置において、下治具プレート46に配置された基板2に加わる荷重を増大させることが可能となる。
【0049】
また、下治具プレート46のうち、その中心から離れた位置ほど、当該位置に加わる面圧が相対的に大きくなり、被荷重量が相対的に大きくなる場合がある。このように下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置では、支持部材45は下治具プレート46に小さな支持力を与える。これにより、下治具プレート46の中心から離れた位置では、下治具プレート46が撓みやすくなり、下治具プレート46に加わる荷重を減少させることが可能となる。その結果、当該位置において、下治具プレート46に配置された基板2に加わる荷重を減少させることが可能となる。
【0050】
このようにして、支持部材45は、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46の撓みを調整し、基板2に加わる荷重を均一にするのである。以下、支持部材45が下治具プレート46の荷重の面内分布に応じた支持力を下治具プレート46に与えるための具体的手段について説明する。
【0051】
支持部材45は、複数の柱状部材50の集合体500と、複数の柱状部材50および放熱用柱53(図8)が設置される設置部52とを有する。複数の柱状部材50は、それぞれ円柱形状からなり、下治具プレート46を支持する役割を果たす。各柱状部材50の形状は、これに限定されるものではなく、三角柱形状、四角柱形状、その他の多角柱形状、円錐形状、三角錐形状、その他の多角錐形状であってもよい。また、各柱状部材50は、中空形状を有していてもよい。
【0052】
複数の柱状部材50は、弾性変形可能な剛体で構成されていることが好ましい。図4に示すように、複数の柱状部材50は、設置部52に、例えば7行7列のマトリクス状に整然と配置されており、それぞれX軸方向およびY軸方向に所定の間隔をあけて配置されている。図示の例では、複数の柱状部材50の各々の中心間距離は実質的に同一であり、複数の柱状部材50はそれぞれ等間隔で配置されているが、各柱状部材50の間隔は必ずしも同一でなくてもよい。また、複数の柱状部材50は、上方から見たときに、それぞれ設置部52のX軸方向およびY軸方向の各々の一端から他端にかけて満遍なく配置されているが、設置部52の一部に偏在(密集)していてもよい。
【0053】
また、複数の柱状部材50は、設置部52にランダムに配置されていてもよく、あるいは同心円状に配置されていてもよい。複数の柱状部材50の配置は、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて適宜決定される。なお、設置部52には、複数の柱状部材50に加えて、後述する放熱用柱53が設置されるが、図面が煩雑になるのを防止するため、図4ではその図示を省略している。
【0054】
本実施形態では、複数の柱状部材50の横断面積(XY平面に平行な面の断面積)は全て同一となっている訳ではなく、複数の柱状部材50は、横断面積が相対的に大きい柱状部材50(柱状部材50a)と、横断面積が相対的に小さい柱状部材50(柱状部材50c)と、これらの中間の横断面積を有する柱状部材50(柱状部材50b)とで構成されている。すなわち、複数の柱状部材50は、形状の異なる複数の部材で形成されている。
【0055】
下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置には複数の柱状部材50aが配置され、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置には複数の柱状部材50b,50cが配置されている。すなわち、複数の柱状部材50a,50b,50cは、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて配置されている。
【0056】
図示の例では、複数の柱状部材50aは、設置部52に、5行5列のマトリクス状に配置されている。以下では、複数の柱状部材50aの集合体のうち、中央に位置する柱状部材50aを特に柱状部材50a1と表記する場合がある。柱状部材50a1は、下治具プレート46の略中央部(荷重発生部30による加圧軸の直下)に配置される。なお、加圧軸は、単一で構成されてもよく、あるいは複数で構成されてもよい。
【0057】
複数の柱状部材50bおよび複数の柱状部材50cは、複数の柱状部材50aの集合体の外側(集合体500の最外周)に配置されており、これを取り囲んでいる。集合体500の最外周では、その四隅にそれぞれ4つの柱状部材50cが配置されており、さらに4つの柱状部材50cの各々の間に4つの柱状部材50cの各々が配置されている。また、各柱状部材50cの間には、2つの柱状部材50bが対になって配置されている。図4に示す複数の柱状部材50a,50b,50cの配置は一例であり、これらの配置は適宜変更してもよい。
【0058】
柱状部材50aの幅(直径)をDa、柱状部材50bの幅(直径)をDb、柱状部材50cの幅(直径)をDcとしたとき、Da>Db>Dcである。直径Da,Db,Dcは、好ましくは10~20mmである。また、最も直径が大きい柱状部材50aの直径Daと最も直径が小さい柱状部材50cの直径Dcとの比Da/Dcは、好ましくは2/1~1.5/1である。各柱状部材50a,50b,50cの直径(太さ)の範囲をこのような範囲に設定することにより、下治具プレート46に加わる荷重の大きさあるいは面内分布に応じて、各柱状部材50a,50b,50cを適度に撓ませることが可能となる。
【0059】
なお、複数の柱状部材50aのうち、柱状部材50a1の直径については、他の柱状部材50aよりも大きくし、他の柱状部材50aよりも撓みにくくしてもよい。
【0060】
各柱状部材50間の中心間距離(ピッチ)Pは、好ましくは20~50mm、さらに好ましくは20~25mmである。各柱状部材50間の中心間距離Lの範囲をこのような範囲に設定することにより、下治具プレート46の各位置を満遍なく各柱状部材50a,50b,50cで支持することが可能となり、適度な支持力で下治具プレート46を支持することが可能となる。本実施形態では、複数の柱状部材50a,50b,50cが配置された位置において、複数の柱状部材50a,50b,50cから下治具プレート46へ局所的に支持力を与えることが可能となっている。
【0061】
複数の柱状部材50の長さLは、好ましくは20~50mmであり、さらに好ましくは20~25mmである。複数の柱状部材50の長さLは、下治具プレート46の高さと略同一であってもよい。
【0062】
柱状部材50aの横断面積をSa、柱状部材50bの横断面積をSb、柱状部材50cの横断面積をScとしたとき、Sa>Sb>Scである。下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置に配置される柱状部材50aの横断面積Saは、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置に配置される柱状部材50b,50cの横断面積Sb,Scに比べて大きくなっている。
【0063】
そのため、複数の柱状部材50a,50b,50cで下治具プレート46が支持された状態において、上治具プレート44(図3A)による基板2の加圧により、下治具プレート46(図3A)に荷重が与えられ、それに伴い、複数の柱状部材50a,50b,50cに荷重が与えられると、柱状部材50aには相対的に小さな歪み量の歪み(Z軸負方向側への圧縮歪み)が発生する一方で、柱状部材50b,50cには相対的に大きな歪み量の歪み(Z軸負方向側への圧縮歪み)が発生する。このように、本実施形態では、柱状部材50a,50b,50cが荷重を受けたときに、柱状部材50a,50b,50cに、これらの横断面積Sa,Sb,Scに応じた歪み量の歪みを発生させることが可能となっている。
【0064】
柱状部材50a,50b,50cは、一定荷重を受けたときに、その横断面積に応じた歪みを発生させることにより、その延在方向に沿って伸縮自在となっている。柱状部材50a,50b,50cが荷重を受けることにより歪みを発生させるタイミングは、下治具プレート46が上治具プレート44から荷重を受けるタイミング、あるいは上治具プレート44が可動加圧部22から荷重を受けるタイミング、あるいは可動加圧部22が荷重発生部30から荷重を受けるタイミングと概ね同期している。柱状部材50a,50b,50cに荷重が加わっていない無負荷状態では、柱状部材50a,50b,50cは、歪み状態を解除し、元の状態へ復帰する。
【0065】
本実施形態では、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置に配置される柱状部材50aの歪み量は、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置に配置される柱状部材50b,50cの歪み量に比べて小さくなっている。すなわち、複数の柱状部材50には、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて、歪み量の勾配が形成されており、下治具プレート46の中央付近に配置された柱状部材50ほど歪みが小さく、下治具プレート46の外周付近に配置された柱状部材50ほど歪みが大きくなっている。
【0066】
下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる位置において、歪み量が相対的に小さい柱状部材50aで下治具プレート46を支持することにより、柱状部材50aから下治具プレート46に相対的に大きな支持力を与え、下治具プレート46を撓みにくくし、下治具プレート46に発生する撓みを柱状部材50aの歪み量に応じた小さな撓み量へ調整することが可能となる。すなわち、何ら策を講じなければ、凹形状に撓んでいた下治具プレート46の中央付近では、図3Bに示すように撓みが相対的に小さくなる。その結果、下治具プレート46に加わる荷重を増大させ、下治具プレート46に配置される基板2の被荷重量を増大させることが可能となっている。
【0067】
また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置において、歪み量が相対的に大きい柱状部材50b,50cで下治具プレート46を支持することにより、柱状部材50b,50cから下治具プレート46に相対的に小さな支持力を与え、下治具プレート46を撓みやすくし、下治具プレート46に発生する撓みを柱状部材50b,50cの歪み量に応じた大きな撓み量へ調整することが可能となる。すなわち、何ら策を講じなければ、撓みがほとんど発生していなかった下治具プレート46の外周付近には、図3Bに示すように相対的に大きな撓みが発生する。その結果、下治具プレート46に加わる荷重を減少させ、下治具プレート46に配置される基板2の被荷重量を減少させることが可能となる。
【0068】
図5Aは、本実施形態における支持部材45を用いず、平板形状の部材(上側搭載部43に対応する部材)に下治具プレート46(図3A)を搭載したときに、下治具プレート46に配置された感圧紙6に加わる荷重の分布を示す図(すなわち、比較例を示す図)である。また、図5Bは、本実施形態における支持部材45で下治具プレート46を支持したときに、下治具プレート46に配置された感圧紙6に加わる荷重の分布を示す図(すなわち、実施例を示す図)である。図5Aおよび図5Bにおいて、感圧紙6に加わる荷重の分布は、基板2に加わる荷重部の分布に対応する。これらの図面において、濃色で示されている部分には相対的に大きな荷重が加わっていることを表しており、薄色で示されている部分には相対的に小さな荷重が加わっていることを表している。
【0069】
図5Aに示すように、比較例では、感圧紙6の中央部に近づくほど、感圧紙6に加わる荷重が相対的に小さくなっている一方で、感圧紙6の外周部に近づくほど、感圧紙6に加わる荷重が相対的に大きくなっていくことが分かる。すなわち、比較例では、下治具プレート46の中央付近に相対的に大きな撓みが発生している一方で、下治具プレート46の外周付近には相対的に小さな撓みが発生している。
【0070】
一方、図5Bに示すように、実施例では、感圧紙6の各位置において、感圧紙6に加わる荷重が一様になっていることが分かる。本実施形態では、図3Bに示すように、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46を撓ませることにより、図5Bに示すように、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を均一になるように調整し、下治具プレート46に配置された基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0071】
図4に示す例では、異なる断面積を有する複数の柱状部材50a,50b,50cの歪み量の違いに基づいて、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布の調整を行う態様について示したが、当該調整を行うための態様はこれに限定されるものではない。
【0072】
例えば、支持部材45は、一定荷重を受けた場合における複数の柱状部材50のヤング率に基づく歪み量の違いにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を調整してもよい。図6Aに示す例では、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’はそれぞれヤング率(機械強度)あるいは硬度の異なる部材で構成されている。
【0073】
より詳細には、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる下治具プレート46の中央付近には、ヤング率が相対的に大きい柱状部材50a’が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる下治具プレート46の外周付近には、ヤング率が相対的に小さい柱状部材50c’が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に中程度である下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には、ヤング率が相対的に中程度である柱状部材50b’が配置されている。すなわち、各柱状部材50a’,50b’,50c’のヤング率は、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じた値となっており、各柱状部材50のヤング率には下治具プレート46の中心から離れた位置ほど小さくなるような勾配が形成されている。なお、各柱状部材50a’,50b’,50c’の断面積および形状は全て同一になっている。
【0074】
この場合、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’で下治具プレート46が支持された状態において、上治具プレート44による基板2の加圧により、下治具プレート46に荷重が与えられ、それに伴い、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’に荷重が与えられると、複数の柱状部材50a’,50b’,50c’にそのヤング率に応じた歪みが発生し、これらの歪み量に応じた撓み量の撓みが下治具プレート46に発生する。
【0075】
すなわち、柱状部材50a’に相対的に小さな歪みが発生する結果、下治具プレート46の中央付近には相対的に小さな撓みが発生する。また、柱状部材50c’に相対的に大きな歪みが発生する結果、下治具プレート46の外周付近には相対的に大きな撓みが発生する。また、柱状部材50b’に相対的に中程度の歪みが発生する結果、下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には相対的に中程度の撓みが発生する。
【0076】
このように、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に複数の柱状部材50a’,50b’,50c’の歪み量を対応させ、その歪み量に応じた撓み量の撓みを下治具プレート46に発生させることにより、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46を撓ませ(図3B参照)、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0077】
複数の柱状部材50のヤング率Eは、好ましくは100GPa~500GPaである。また、最もヤング率Eが大きい柱状部材50a’のヤング率Emaxと最もヤング率Eが小さい柱状部材50c’のヤング率Eminとの比Emax/Eminは、好ましくは2/1~4/1である。各柱状部材50a’,50b’,50c’のヤング率の範囲をこのような範囲に設定することにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて、各柱状部材50a’,50b’,50c’を適度に撓ませることが可能となる。なお、支持部材45には、柱状部材50a’,50b’,50c’とは異なるヤング率を有する他の柱状部材50を含めてもよい。
【0078】
上記のようなヤング率を有する材料として、複数の柱状部材50は、例えば、炭素銅、窒化珪素、炭化珪素等の材料で構成されることが好ましい。
【0079】
また、例えば、支持部材45は、複数の柱状部材50の長さの違いにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を調整してもよい。図6Bに示す例では、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”はそれぞれ長さの異なる部材で構成されており、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”の上端の高さ位置に分布が形成されている。
【0080】
より詳細には、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる下治具プレート46の中央付近には、長さが相対的に長い柱状部材50a”が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる下治具プレート46の外周付近には、長さが相対的に短い柱状部材50c”が配置されている。また、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に中程度である下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には、長さが相対的に中程度である柱状部材50b”が配置されている。すなわち、各柱状部材50a”,50b”,50c”の長さは、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じた値となっており、各柱状部材50の長さ(上端の高さ位置)には下治具プレート46の中心から離れた位置ほど小さくなるような勾配が形成されている。なお、各柱状部材50a”,50b”,50c”の断面積およびヤング率は全て同一になっている。
【0081】
この場合、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”で下治具プレート46が支持された状態において、上治具プレート44による基板2の加圧により、下治具プレート46に荷重が与えられ、それに伴い、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”に荷重が与えられると、複数の下治具プレート46には、複数の柱状部材50a”,50b”,50c”の長さに応じた撓みが発生する。
【0082】
すなわち、柱状部材50a”が配置された下治具プレート46の中央付近には、相対的に小さな撓みが発生する。また、柱状部材50c”が配置された下治具プレート46の外周付近には、相対的に大きな撓みが発生する。また、柱状部材50b”が配置された下治具プレート46の中央部と外周部の間の位置には、相対的に中程度の撓みが発生する。このように、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて、異なる長さの複数の柱状部材50a”,50b”,50c”を配置し、その長さに応じた撓み量の撓みを下治具プレート46に発生させることにより、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46を撓ませ(図3B参照)、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。なお、支持部材45には、柱状部材50a”,50b”,50c”とは異なる長さを有する他の柱状部材50を含めてもよい。
【0083】
なお、下治具プレート46の撓みを調整するにあたって、複数の柱状部材50の高さを調整する場合に比較して、複数の柱状部材50の材質(ヤング率)あるいは径(断面積)を調整する方が、精度を出しやすく、容易である。
【0084】
複数の柱状部材50の配置は図4に示す例に限定されるものではなく、例えば図7Aに示すような配置で、複数の柱状部材50を配置してもよい。図7Aに示す例では、点線で示す設置部52の中央領域520に9個の柱状部材50dが3行3列でマトリクス状に配置されている。また、設置部52の中央領域520の外側には、複数の柱状部材50eが局所的に配置されている。複数の柱状部材50d,50eは、設置部52の中心から放射状に延びるように配置されている。設置部52の中央領域520では、複数の柱状部材50dが相対的に高い密度で配置されており、設置部52の中央領域520の外側では、複数の柱状部材50eが相対的に低い密度で配置されている。
【0085】
すなわち、図7Aに示す例では、下治具プレート46(図1B)に加わる荷重が相対的に小さくなる位置(中央領域520)では、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置(中央領域520の外側)に比べて、相対的に多くの本数の柱状部材50dが密集して配置されている。
【0086】
図7Bは、図7Aに示す複数の柱状部材50d,50eで下治具プレート46を支持したときに、下治具プレート46に発生する撓みの分布をCAE(Computer Aided Engineering)解析により解析した結果を示す図である。これらの図面において、濃色で示されている部分には相対的に大きな撓みが発生していることを表しており、薄色で示されている部分には相対的に小さな撓みが発生していることを表している。
【0087】
図7Bに示すように、設置部52の中央領域520に対応する下治具プレート46の中央領域460は、相対的に多くの本数の柱状部材50dで支持されているため、中央領域460では、下治具プレート46には複数の柱状部材50dから相対的に大きな支持力が与えられ、下治具プレート46に撓みが発生しにくくなる。すなわち、中央領域460において、下治具プレート46に発生する撓みは、複数の柱状部材50dの密度(本数)に応じた小さな撓み量へ調整され、中央領域460に相対的に小さな撓みが発生する結果、下治具プレート46に加わる荷重が増大することになる。
【0088】
一方、下治具プレート46の中央領域460の外側の領域は、相対的に少ない本数の柱状部材50eで支持されているため、当該領域では、下治具プレート46には複数の柱状部材50eから相対的に小さな支持力が与えられ、下治具プレート46に撓みが発生しやすくなる。すなわち、中央領域460の外側の領域において、下治具プレート46に発生する撓みは、複数の柱状部材50eの密度(本数)に応じた大きな撓み量へ調整され、当該領域に相対的に大きな撓みが発生する結果、下治具プレート46に加わる荷重が減少することになる。
【0089】
特に、柱状部材50eで支持されていない下治具プレート46の側方領域461では、下治具プレート46に撓みが特に発生しやすく、下治具プレート46の撓み量が他の領域に比べて特に大きくなっている。
【0090】
このように、複数の柱状部材50d,50eを、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて配置することにより、複数の柱状部材50d,50eの配置に応じて、下治具プレート46の各位置に加わる荷重が均衡するように下治具プレート46の撓みを調整し、下治具プレート46に配置される基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0091】
図4あるいは図7Aのいずれに示す配置で複数の柱状部材50を設置部52に設置するかは、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて適宜決定される。なお、図4あるいは図7Aに示す配置以外の配置で、複数の柱状部材50を設置部52に設置してもよい。
【0092】
また、これらの設置態様は、前述したように、下治具プレート46を支持部材45で支持しなかった場合において、下治具プレート46に、その中心に近い位置ほど相対的に大きな撓みが発生し、その外周に近い位置ほど相対的に小さな撓みが発生する場合を前提としている。しかし、これとは逆に、下治具プレート46を支持部材45で支持しなかった場合において、下治具プレート46には、その中心に近い位置ほど相対的に小さな撓みが発生し、その外周に近い位置ほど相対的に大きな撓みが発生する場合がある。この場合、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布は、図5Aに示す荷重の面内分布とは概ね逆の関係になり、下治具プレート46の中心付近に加わる荷重が相対的に大きくなる一方で、下治具プレート46の外周付近に加わる荷重が相対的に小さくなる。
【0093】
このような場合には、下治具プレート46の中央付近に配置される柱状部材50ほど歪みが大きく、下治具プレート46の外周付近に配置される柱状部材50ほど歪みが小さくなるように、設置部52に配置する複数の柱状部材50の材質(ヤング率)、形状、あるいは配置等を適宜選択すればよい。例えば、下治具プレート46の中央付近に配置される柱状部材50については、ヤング率を小さくし、あるいは径を細くするとともに、下治具プレート46の外周付近に配置される柱状部材50については、ヤング率を大きくし、あるいは径を太くすればよい。
【0094】
このような歪み特性を有する複数の柱状部材50で下治具プレート46を支持した場合、下治具プレート46の中心に近い位置では、下治具プレート46が撓みやすくなり、下治具プレート46に加わる荷重を減少させることが可能となる。その結果、当該位置において、下治具プレート46に配置された基板2に加わる荷重を減少させることが可能となる。
【0095】
また、下治具プレート46の外周に近い位置では、下治具プレート46が撓みにくくなり、下治具プレート46に加わる荷重を増大させることが可能となる。その結果、当該位置において、下治具プレート46に配置された基板2に加わる荷重を増大させることが可能となる。
【0096】
図3Aに示すように、設置部52は、略平板形状を有する板体からなり、複数の柱状部材50が直立した状態で保持されるよう、複数の柱状部材50を支持する機能を有する。また、設置部52は、複数の柱状部材50に加えて、放熱用柱53(図8)を支持する機能を有する。設置部52は、複数の柱状部材50等を設置するための複数の設置孔(図示略)を有する。複数の設置孔には、複数の柱状部材50の下端部を挿入し、固定することが可能となっている。複数の設置孔の数は、複数の柱状部材50の数と等しくてもよく、あるいは複数の柱状部材50の数よりも多くてもよい。複数の柱状部材50は、それぞれボルト等の連結部材で設置部52(設置孔)に固定されてもよく、あるいは接着剤等の接続部材で設置部52(設置孔)に固定されてもよい。
【0097】
なお、設置部52に設置孔は必須ではなく、例えば平面形状(平坦形状)からなる設置部52の表面に、複数の柱状部材50を連結部材あるいは接続部材で固定してもよい。あるいは、複数の柱状部材50は、単に設置部52の表面に当接しているのみでもよい。図4に示す複数の柱状部材50のうち、中央に位置する柱状部材50a1については、連結部材あるいは接着部材等で設置部52に固定されていることが好ましい。
【0098】
また、柱状部材50a1については、連結部材あるいは接着部材等で下治具プレート46の下面に固定されていることが好ましい。図8に示すように、複数の柱状部材50のうち、柱状部材50a1のみ、連結部材54を介して下治具プレート46の下面に固定することにより、下治具プレート46の中央部において、下治具プレート46の撓みが小さくなるように調整し、下治具プレート46に加わる荷重を相対的に大きくすることができる。なお、図8に示す例では、柱状部材50a1は、連結部材55を介して、下治具プレート46および設置部52のいずれにも固定されている。連結部材55は、例えばボルトやピン等、各種の留め具で構成される。
【0099】
上治具プレート44(図3A)で基板2を加圧するときには、上治具プレート44および下治具プレート46の加熱に伴い下治具プレート46等に熱変形が生じ、従来技術では、基板2に対して均一な荷重を与えることが困難となるおそれがあった。そこで、本実施形態における基板処理装置10では、このような不具合を防止するために、図8に示すように、下治具プレート46には、複数の柱状部材50よりも放熱性が高い複数の放熱用柱53が直接的に当接している。以下、放熱用柱53の詳細について説明する。
【0100】
複数の放熱用柱53は、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる位置に設けられている。すなわち、前述の通り、本実施形態では、図4に示すように、下治具プレート46に加わる荷重が大きくなる下治具プレート46の外周部では、当該荷重を減少させるために、横断面積が相対的に小さい柱状部材50b,50cが配置される一方で、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる下治具プレート46の中央部では、当該荷重を増大させるために、横断面積が相対的に大きい柱状部材50aが配置される。あるいは、図7Aに示すように、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に大きくなる下治具プレート46の外周部では、当該荷重を減少させるために、相対的に少ない本数の柱状部材50eが配置される一方で、下治具プレート46に加わる荷重が相対的に小さくなる下治具プレート46の中央部では、当該荷重を増大させるために、相対的に多い本数の柱状部材50dが配置される。
【0101】
このように、下治具プレート46の中央部に、複数の柱状部材50dが密集して配置され、あるいは横断面積が大きい柱状部材50aが配置された場合、下治具プレート46の中央部では、これらの柱状部材50を介した放熱が促進され、下治具プレート46の外周部に比べて、下治具プレート46の温度が低くなる傾向がある。また、図7Aに示す例では、下治具プレート46の外周部には、柱状部材50dが配置されていない領域があり、当該領域では、下治具プレート46の温度が相対的に高くなる傾向がある。そのため、何ら策を施さなければ、下治具プレート46の中央部の温度は、下治具プレート46の外周部の温度よりも低くなり、下治具プレート46の中央部と外周部とで温度差が生じ得る。
【0102】
そこで、本実施形態では、下治具プレート46の中央部と外周部との間の温度差を低減させるために、設置部52には、下治具プレート46の温度の面内分布に応じて、複数の放熱用柱53が設置される。より詳細には、複数の放熱用柱53は、下治具プレート46の温度が相対的に高くなる位置(下治具プレート46に加わる荷重が大きくなる下治具プレート46の外周部)に配置される。これにより、下治具プレート46の外周部において、複数の放熱用柱53を介した放熱を促進させ、下治具プレート46の外周部の温度を低減させることが可能となっている。その結果、下治具プレート46の中央部と外周部とで温度が均衡するようになり、下治具プレート46の中央部と外周部とで温度差が生じることを防止することができる。
【0103】
このように、放熱用柱53は冷却機構としての役割を果たしており、下治具プレート46に温度が高くなっている部分に放熱用柱53を当接させることにより、当該部分を冷却することが可能となっている。
【0104】
複数の放熱用柱53の本数は、下治具プレート46の各部における温度差に応じて適宜決定してもよい。例えば、下治具プレート46の外周部の温度が中央部の温度に比べて顕著に高くなっている場合には、下治具プレート46の外周部に対応する位置に相対的に多くの本数の放熱用柱53を設置することが好ましい。あるいは、複数の放熱用柱53を集合体として密集するように設置してもよく、あるいは相対的に多くの本数の放熱用柱53を離散的に設置してもよい。
【0105】
また、下治具プレート46の外周部の温度が中央部の温度とさほど変わらない場合には、比較的少ない本数の放熱用柱53を設置してもよい。
【0106】
複数の放熱用柱53は、下治具プレート46の外周部において、複数の柱状部材50が配置された領域にこれらと共に配置されていてもよい。この場合、複数の放熱用柱53は、複数の柱状部材50に挟まれるように(囲まれるように)、複数の柱状部材50の間に配置されてもよい。あるいは、複数の放熱用柱53は、下治具プレート46の外周部において、複数の柱状部材50が配置されていない領域に配置されていてもよい。
【0107】
図9に示すように、放熱用柱53は、柱本体部530と、カバー部531と、弾性部532とを有する。柱本体部530は柱状部材からなり、設置部52の上面に直立した状態で設置される。柱本体部530の長さは、柱状部材50の長さよりも短く、また設置部52の上面と下治具プレート46の下面との間の距離よりも小さくなっている(図8参照)。柱本体部530は、柱状部材50と同様の部材で構成されていてもよく、あるいは柱状部材50とは異なる部材で構成されていてもよい。例えば、柱本体部530を柱状部材50(特に、下治具プレート46の外周部に配置される柱状部材50)よりも剛性(ヤング率)の低い部材で構成してもよい。
【0108】
また、柱本体部530の径は、複数の柱状部材50の径よりも小さくてもよい。本実施形態では、柱本体部530の径は、下治具プレート46の中央部に配置される柱状部材50aの径よりも小さくてもよく、また下治具プレート46の外周部に配置される柱状部材50の径よりも小さくてもよい。柱本体部530は、例えば接着剤等の接続部材によって、略平面形状(略平坦形状)からなる設置部52の表面に固定されてもよく、あるいは後述するように連結部材を介して設置部52に固定されてもよい。
【0109】
弾性部532は、弾性部材からなり、例えばバネやゴム等で構成される。弾性部532は、ステンレス等、高熱伝導性を有する部材で構成されていることが好ましい。弾性部532の一端部は柱本体部530の頂部530aに接続され、弾性部532の他端部はカバー部531の内面に接続されている。
【0110】
カバー部531は、有底筒形状を有し、その断面形状は略C字形状となっている。カバー部531は、柱本体部530よりも放熱性(熱伝導率)が高い部材で構成され、柱本体部530の周囲(表面)を覆っている。カバー部531は、熱伝導性の高い部材で構成されており、カバー部531を構成する部材としては、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。なお、柱本体部530についても、これらの熱伝導性の高い部材で構成してもよい。カバー部531を下治具プレート46の下面に当接させることにより、カバー部531を介して下治具プレート46の熱を効果的に外部へ発散させることができる。なお、下治具プレート46からカバー部531に伝熱された熱の一部は、弾性部532および柱本体部530を介して、設置部52あるいは下側ステージ42(図3A)等に放熱される。
【0111】
カバー部531は、弾性部532を介して、柱本体部530の頂部530aに取り付けられている。柱本体部530の頂部530aとカバー部531の内面との間には第1隙間533が形成され、柱本体部530の側部530bとカバー部531の内面との間には第2隙間534が形成されている。なお、第2隙間534を省略し、カバー部531を柱本体部530の側部530bに当接させてもよい。カバー部531は、弾性部532による弾性力を受けて、上下方向に移動可能となっており、カバー部531は、弾性部532による弾性力を受けて、水平方向に移動可能となっている。
【0112】
図8に示すように、放熱用柱53を設置部52に設置した状態において、カバー部531の上面531aは、下治具プレート46の下面に密着するように当接する。カバー部531の開口縁部531bは、設置部52の上面には当接してはおらず、設置部52の上面から所定距離だけ離間した位置に配置されている。ただし、カバー部531は、開口縁部531bが設置部52の上面に当接するように構成されていてもよい。
【0113】
図3Bに示すように、本実施形態では、下治具プレート46の外周部に対応する位置には歪み量が相対的に大きな柱状部材50が配置される。そのため、下治具プレート46の外周部を複数の柱状部材50で支持した状態において、上治具プレート44による加圧が行われると、下治具プレート46の外周部に相対的に大きな撓みが発生する。下治具プレート46の外周部における撓みが放熱用柱53に作用すると、図9に示す弾性部532が下治具プレート46の撓み方向に弾性変形する。また、これに応じて、カバー部531が、弾性部532の弾性力を受けて、下治具プレート46の下面に当接したまま、弾性部532の変形方向に移動する。その結果、カバー部531の上面531aの高さ位置は、下治具プレート46の撓みあるいは弾性部532の弾性変形に応じて上下に変動する。
【0114】
弾性部532の弾性力により、カバー部531の上面531aが下治具プレート46の下面を押圧する力は、下治具プレート46の外周部を支持する柱状部材50(図4に示す例では、柱状部材50b,50c)が下治具プレート46に与える支持力に比べて十分に小さくなっている。そのため、複数の柱状部材50による下治具プレート46の撓みの面内分布の調整機能は、放熱用柱53によって阻害されることはない。したがって、複数の柱状部材50によって下治具プレート46に発生する撓みの面内分布を調整しつつ、放熱用柱53を介して、下治具プレート46の外周部における放熱を促進させることができる。
【0115】
図10A図10Cに示すように、放熱用柱53は、設置部52に対して種々の態様で固定することができる。例えば、図10Aに示すように、放熱用柱53は、連結部材(非貫通型連結部材)54を介して、設置部52に連結されていてもよい。図10Aに示す例では、放熱用柱53には連結用凹部535が形成され、設置部52には連結用凹部521が形成されている。連結部材54の一方側は、連結用凹部521の内部に挿入され、連結用凹部521に螺合(係合)している。また、連結部材54の他方側は、連結用凹部535の内部に挿入され、連結用凹部535に螺合(係合)している。これにより、連結部材54を介して、放熱用柱53を設置部52に固定することが可能となっている。連結部材54は、例えばボルトや鋲等の締結具、あるいはその他の連結部材からなる。
【0116】
なお、柱状部材50(50a1)については、連結部材(貫通型連結部材)55を介して、設置部52と下治具プレート46とに物理的に連結されている。連結部材55は、柱状部材50(50a1)に形成された貫通孔501の内部を貫通し、当該貫通孔に係合している。連結部材55の上端部は、下治具プレート46の下面に形成された連結用凹部462に挿入され、連結用凹部462に係合している。連結部材55の下端部は、設置部52に形成された連結用凹部521に挿入され、連結用凹部521に係合している。
【0117】
これにより、連結部材55を介して、設置部52と柱状部材50(50a1)と下治具プレート46とが物理的に連結されるとともに、柱状部材50(50a1)が設置部52と下治具プレート46との間に強固に固定(挟持)される。柱状部材50(50a1)を下治具プレート46だけでなく設置部52にも連結することにより、当該柱状部材50(50a1)が配置された位置において、下治具プレート46の撓みをより効果的に防止することができる。
【0118】
また、図10Bに示すように、放熱用柱53は、設置部52に形成された設置孔522の内部に埋設されていてもよい。図10Bに示す例では、設置部52の上面には設置孔522が形成され、設置孔522の底面には連結用凹部521が形成されている。連結部材54の一方側は、連結用凹部521の内部に挿入され、連結用凹部521に係合している。また、連結部材54の他方側は、連結用凹部535の内部に挿入され、連結用凹部535に係合している。これにより、連結部材54を介して、放熱用柱53を設置部52に固定することが可能となっている。このように、放熱用柱53を設置孔522に埋設することにより、放熱用柱53の位置ずれを効果的に防止することができるととともに、設置部52に対する放熱用柱53の位置決めが容易になる。
【0119】
なお、柱状部材50(50a1)についても、放熱用柱53と同様に、設置部52に形成された設置孔522の内部に埋設されており、この状態で、連結部材55を介して、設置部52および下治具プレート46に連結されている。
【0120】
また、図10Cに示す例では、放熱用柱53は、図10Bに示す連結部材54を介して、設置部52に連結されてはおらず、設置孔522の内部に埋設されているのみである。なお、放熱用柱53は、接着剤等の接続部材を介して、設置孔522の底面に固定されていてもよい。また、設置孔522の径を放熱用柱53の柱本体部530の径と同程度にし、柱本体部530を設置孔522から抜けないようにきつく嵌め込んでもよい。
【0121】
図11Aに示すように、設置部52に複数の設置孔522が5行5列のマトリクス状に形成されている場合、複数の柱状部材50および複数の放熱用柱53は、複数の設置孔522のうち、任意の設置孔522に設置されていてもよい。複数の柱状部材50は、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布に応じて、複数の設置孔522に設置されることが好ましい。
【0122】
図面において、黒塗部および斜線部は、設置孔522に柱状部材50が設置されていることを表している。特に、斜線部は、図10Aに示す連結部材55を介して、下治具プレート46および設置部52に連結された柱状部材50を表している。また、黒塗部は、例えば図10Aに示す連結部材54を介して設置部52に連結された柱状部材50、あるいは連結部材54を介することなく単に設置孔522に設置されているのみの柱状部材50を表している。また、図面において、網掛部は、設置孔522に放熱用柱53が設置されていることを表している。
【0123】
同図に示すように、設置部52の中央に位置する設置孔522には柱状部材50(50a1)が設置されており、柱状部材50(50a1)は、図10Aに示す連結部材55を介して設置孔522および下治具プレート46に連結されている。これにより、下治具プレート46の中央部が撓みにくくなり、下治具プレート46の中央部に加わる荷重を相対的に大きくすることが可能となっている。
【0124】
5行5列で形成された設置孔522のうち、設置部52の最外周に位置する複数の設置孔522には、2つの柱状部材50と4つの放熱用柱53とが設置されている。2つの柱状部材50は、図10Aに示す連結部材54を介して設置部52に連結されているか、あるいは単に設置孔522に設置されているのみであり、下治具プレート46には連結されていない。
【0125】
また、4つの放熱用柱53は、それぞれ設置部52の四隅に位置する設置孔522に設置されている。4つの放熱用柱53は、図10Bまたは図10Cに示す態様で、設置孔522に設置されている。このように、複数の放熱用柱53は、設置部52の外周部、すなわち下治具プレート46の外周部に対応する位置に配置されていることが好ましい。当該位置では、柱状部材50(50a1)が配置される下治具プレート46の中央部に比べて、放熱性が低くなっているため、当該位置に複数の放熱用柱53を設置することにより、下治具プレート46の外周部における放熱性を高めることができる。なお、図示の例では、複数の放熱用柱53は、設置部52の最外周に位置する設置孔522に設置されているが、これよりも内側に位置する設置孔522に設置されてもよい。
【0126】
また、図11Bに示す例では、設置部52には複数の設置孔522が同心円状に形成されており、複数の設置孔522のうち、任意の設置孔522に複数の柱状部材50および複数の放熱用柱53が設置されている。より詳細には、図11Aに示す例と同様に、設置部52の中央に位置する設置孔522には柱状部材50(50a1)が設置されており、柱状部材50(50a1)は、図10Aに示す連結部材55を介して設置部52および下治具プレート46に連結されている。
【0127】
設置部52の中央に最も近接した位置に配置された円上に位置する複数の設置孔522には、2つの柱状部材50が設置されている。また、その外側の円状に位置する複数の設置孔522には、2つの柱状部材50が設置されている。これらの柱状部材50は、図10Aに示す連結部材54を介して設置部52に連結されているか、あるいは単に設置孔522に設置されているのみであり、下治具プレート46には連結されていない。
【0128】
また、設置部52の中央から最も離間した位置に配置された円上に位置する複数の設置孔522には、4つの放熱用柱53が設置されている。4つの放熱用柱53は、図10Bまたは図10Cに示す態様で、設置孔522に設置されている。このように複数の設置孔522が同心円状に配置されている場合も、設置部52の外周部に複数の放熱用柱53を設置することにより、下治具プレート46の外周部における放熱性を高めることができる。
【0129】
なお、図11Aおよび図11Bに示す例では、設置部52には複数の設置孔522がマトリクス状あるいは同心円状に整然と配列されているが、複数の設置孔522は設置部52にランダムに形成されていてもよい。この場合も、複数の放熱用柱53は、設置部52の外周部に位置する複数の設置孔522に設置されていることが好ましい。
【0130】
上述した複数の放熱用柱53の設置態様は、下治具プレート46の中央部ほどその温度が相対的に低くなり、下治具プレート46の外周部ほどその温度が相対的に高くなる場合を前提としている。しかし、これとは逆に、複数の柱状部材50の設置態様によっては、下治具プレート46の中央部ほどその温度が相対的に高くなり、下治具プレート46の外周部ほどその温度が相対的に低くなる場合がある。このような場合には、下治具プレート46の中央部に複数の放熱用柱53を設置し、これらの放熱用柱53を下治具プレートの下面に当接すればよい。これにより、下治具プレート46の中央部において、放熱用柱53を介した放熱を促進させることが可能となり、下治具プレート46の中央部における温度を低減させることが可能となる。その結果、下治具プレート46の中央部と外周部とで、下治具プレート46の温度を均衡させ、下治具プレート46の各位置における温度を均一にすることができる。
【0131】
以上、本実施形態に係る基板処理装置10は、図8に示すように、下治具プレート46を支持する複数の柱状部材50を有する。下治具プレート46を複数の柱状部材50で支持した状態で、下治具プレート46に配置された基板2を加圧することにより、複数の柱状部材50の形状、材質あるいは配置等に応じて、下治具プレート46に発生する撓みの面内分布を調整し、基板2に加わる荷重の面内分布を均一となるように調整することができる。
【0132】
また、本実施形態では、柱状部材50が配置されていない位置、あるいは柱状部材50の本数が相対的に少ない位置等において、複数の放熱用柱53を下治具プレート46の下面に当接させることにより、複数の柱状部材50から下治具プレート46に与えられる支持力の大きさに影響を与えることなく、放熱用柱53を介して、下治具プレート46の熱を放熱させることが可能となっている。これにより、例えば柱状部材50が配置されている位置と配置されていない位置とで(あるいは、柱状部材50の本数が相対的に少ない位置と相対的に多い位置とで)、下治具プレート46に温度差が生じにくくなり、下治具プレート46の熱変形に起因して下治具プレート46の各位置の表面精度(例えば平坦性や平滑性等)にばらつきが発生しにくくなる。したがって、下治具プレート46に配置された基板2に対して均一な荷重を加えることができる。
【0133】
また、本実施形態では、複数の柱状部材50と複数の放熱用柱53とが設置される設置部52を有する。そのため、複数の柱状部材50の位置決めが容易になるとともに、複数の柱状部材50の位置ずれを防止し、安定した状態で、複数の柱状部材50で下治具プレート46を支持することができる。また、複数の放熱用柱53の位置決めが容易になるとともに、複数の放熱用柱53の位置ずれを防止し、安定した状態で、複数の放熱用柱53を下治具プレート46の下面に当接させることができる。
【0134】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0135】
上記実施形態では、複数の柱状部材50は全て円柱形状を有していたが、複数の柱状部材50のいずれかが円柱形状であり、残りのいずれかが多角柱形状、円錐形状、あるいは多角錐形状等であってもよい。このような形状からなる複数の柱状部材50は、一定荷重を受けた場合における歪み量が異なる。そのため、この場合も、上記実施形態と同様に、支持部材45は、複数の柱状部材50の形状の違いに基づく歪み量の違いにより、下治具プレート46に加わる荷重の面内分布を調整し、下治具プレート46に発生する撓みを調整することができる。
【0136】
上記実施形態において、支持部材45は、複数の素子4a,4b,4cが配置された基板2の高さの分布に応じた支持力を下治具プレート46に与えてもよい。基板2に加わる荷重の不均一性は、基板2の高さの分布が要因で生じる場合がある。基板2の高さの分布は、複数の素子4a,4b,4cの形状や大きさの違い、基板2に対する複数の素子4a,4b,4cの配置の非対称性、あるいは加圧時における複数の素子4a,4b,4cの変形等によって生じ得る。例えば、何ら策を講じなければ、基板2の高さが相対的に低い位置では、相対的に小さな荷重が与えられ、基板2の高さが相対的に高い位置では、相対的に大きな荷重が与えられる場合がある(その逆のパターンもある)。
【0137】
このような場合であっても、基板2の高さが相対的に低い位置では、歪みにくい柱状部材を配置する等して、支持部材45(複数の柱状部材50)から下治具プレート46に相対的に大きな支持力を与えて、下治具プレート46に加わる荷重が増大するようにし、基板2の高さが相対的に高い位置では、歪みやすい柱状部材50を配置する等して、支持部材45(複数の柱状部材50)から下治具プレート46に相対的に小さな支持力を与え、下治具プレート46に加わる荷重が減少するようにすることにより、下治具プレート46の各位置に加わる荷重を均衡させ、基板2に加わる荷重を均一にすることができる。
【0138】
上記実施形態では、図2に示すように、基板2の形状は略四角形であったが、円形あるいはその他の多角形であってもよい。
【0139】
上記実施形態では、図8に示すように、複数の放熱用柱53が下治具プレート46の下面に直接的に当接していたが、複数の放熱用柱53は下治具プレート46の下面に間接的に当接していてもよい。この場合も、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0140】
上記実施形態では、図8に示すように、下治具プレート46には複数の放熱用柱53が当接していたが、下治具プレート46には単一の放熱用柱53が当接していてもよい。
【0141】
図9に示す放熱用柱53の構成は一例であり、適宜変更してもよい。例えば、図4に示す設置部52の外周部に位置する柱状部材50b,50cの少なくとも一部分を熱伝導性の高い部材で構成し、設置部52の中央部に位置する柱状部材50aに比べて、柱状部材50b,50cの放熱性を高めてもよい。これにより、柱状部材50b,50cを放熱用柱53として機能させることが可能となり、柱状部材50b,50c自体によって、下治具プレート46の外周部における放熱を促進させることができる。
【0142】
あるいは、下治具プレート46の外周部を支持する複数の柱状部材50(図4に示す柱状部材50b,50c等)に、図9に示すカバー部531および弾性部532を具備させることにより、当該柱状部材50を放熱用柱53として機能させてもよい。この場合、当該柱状部材50から下治具プレート46に過大な支持力が与えられないように、当該柱状部材50の長さや弾性部532の弾性力等を適宜調整することが好ましい。
【符号の説明】
【0143】
2…基板
4…素子アレイ
4a,4b,4c…素子
6…感圧紙
10…基板処理装置
20…架台
21…架台上部
22…可動加圧部
220…貫通孔
221…中央領域
23…架台下部
24…ガイドブッシュ
25…ガイドシャフト
30…荷重発生部
40…基板加圧部
41…上側ステージ
42…下側ステージ
43…上側搭載部
44…上治具プレート
45…支持部材
46…下治具プレート
460…中央領域
461…側方領域
462…連結用凹部
50,50a~50g…柱状部材
500…集合体
501…貫通孔
52…設置部
520…中央領域
521…連結用凹部
522…設置孔
53…放熱用柱
530…柱本体部
530a…頂部
530b…側部
531…カバー部
531a…上面
531b…開口縁部
532…弾性部
533…第1隙間
534…第2隙間
535…連結用凹部
54,55…連結部材
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B