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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173649
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】半導体装置、電子機器、車両
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H01L29/78 656A
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 652N
H01L29/78 657G
H01L29/78 652K
H01L29/78 657A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086052
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宅間 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 肇
(57)【要約】
【課題】高温時に適切なアクティブクランプ動作を行う。
【解決手段】半導体装置1は、第1端子11と第2端子12との間に接続される第1出力トランジスタ56及び第2出力トランジスタ57と、第1出力トランジスタ56の第1ゲート(=第1ゲート制御信号G1の印加端)に接続されて第1端子11と第2端子12との間に現れる端子間電圧Vdsを第1クランプ電圧VclpC以下に制限する第1アクティブクランプ回路26Cと、第2出力トランジスタ57の第2ゲート(=第2ゲート制御信号G2の印加端)に接続されて端子間電圧Vdsを第2クランプ電圧VclpD(≠VclpC)以下に制限する第2アクティブクランプ回路26Dと、温度情報(例えば過熱保護信号S36)に応じて第1アクティブクランプ回路26C及び第2アクティブクランプ回路26Dそれぞれの有効/無効を排他的に切り替える切替回路SWと、を備える。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と第2端子との間に接続されるように構成された第1出力トランジスタ及び第2出力トランジスタと、
前記第1出力トランジスタの第1ゲートに接続されて前記第1端子と前記第2端子との間に現れる端子間電圧を第1クランプ電圧以下に制限するように構成された第1アクティブクランプ回路と、
前記第2出力トランジスタの第2ゲートに接続されて前記端子間電圧を前記第1クランプ電圧とは異なる第2クランプ電圧以下に制限するように構成された第2アクティブクランプ回路と、
温度情報に応じて前記第1アクティブクランプ回路及び前記第2アクティブクランプ回路それぞれの有効/無効を排他的に切り替えるように構成された切替回路と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記第1クランプ電圧は、前記第2クランプ電圧よりも高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記切替回路は、前記温度情報として検出される素子温度が閾値よりも低いときに前記第1アクティブクランプ回路を有効として前記第2アクティブクランプ回路を無効とし、前記素子温度が閾値よりも高いときに前記第1アクティブクランプ回路を無効として前記第2アクティブクランプ回路を有効とする、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記温度情報の一つとして前記第1出力トランジスタの第1素子温度を検出するように構成された第1温度検出素子と、
前記温度情報の一つとして前記第2出力トランジスタの第2素子温度を検出するように構成された第2温度検出素子と、
をさらに備え、
前記切替回路は、前記第1素子温度が第1閾値よりも低く前記第2素子温度が第2閾値よりも高いときには前記第1アクティブクランプ回路を有効として前記第2アクティブクランプ回路を無効とし、前記第1素子温度が前記第1閾値よりも高く前記第2素子温度が前記第2閾値よりも低いときには前記第1アクティブクランプ回路を無効として前記第2アクティブクランプ回路を有効とする、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1出力トランジスタ及び前記第2出力トランジスタは、少なくとも前記第1ゲート及び前記第2ゲートを備えており複数のチャネル領域を個別に制御することができるように構成されたゲート分割型の出力トランジスタとして形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ゲートにより制御される第1チャネル領域、及び、前記第2ゲートにより制御される第2チャネル領域は、それぞれ、セル領域に対して第1チャネル割合及び第2チャネル割合で形成されている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1アクティブクランプ回路は、
カソードが前記第1端子に接続されるように構成された第1ツェナダイオード列と、
アノードが前記第1ツェナダイオード列のアノードに接続されるように構成された第1ダイオード列と、
ドレインが前記第1端子に接続されてソースが前記第1出力トランジスタの前記第1ゲートに接続されてゲートが前記第1ダイオード列のカソードに接続されるように構成された第1トランジスタと、
を含み、
前記第2アクティブクランプ回路は、
カソードが前記第1端子に接続されるように構成された第2ツェナダイオード列と、
アノードが前記第2ツェナダイオード列のアノードに接続されるように構成された第2ダイオード列と、
ドレインが前記第1端子に接続されてソースが前記第2出力トランジスタの前記第2ゲートに接続されてゲートが前記第2ダイオード列のカソードに接続されるように構成された第2トランジスタと、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置に接続される負荷と、
を備える、電子機器。
【請求項9】
前記負荷は、誘導性負荷である、請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
請求項8に記載の電子機器を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、及び、これを用いた電子機器並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、これまで、車載IPD[intelligent power device]などの半導体装置に関して、数多くの新技術を提案している(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/187785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載IPDなどの半導体装置は、一般に、誘導性負荷の逆起電力を吸収するための手段として、アクティブクランプ回路を備えている。
【0005】
しかしながら、従来の半導体装置では、高温時のアクティブクランプ動作について、さらなる検討の余地があった。
【0006】
特に、近年では、車載用ICに対して、ISO26262(自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格)を順守することが求められており、車載IPDについても、より高い信頼性設計が重要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本明細書中に開示されている半導体装置は、第1端子と第2端子との間に接続されるように構成された第1出力トランジスタ及び第2出力トランジスタと、前記第1出力トランジスタの第1ゲートに接続されて前記第1端子と前記第2端子との間に現れる端子間電圧を第1クランプ電圧以下に制限するように構成された第1アクティブクランプ回路と、前記第2出力トランジスタの第2ゲートに接続されて前記端子間電圧を前記第1クランプ電圧とは異なる第2クランプ電圧以下に制限するように構成された第2アクティブクランプ回路と、温度情報に応じて前記第1アクティブクランプ回路及び前記第2アクティブクランプ回路それぞれの有効/無効を排他的に切り替えるように構成された切替回路と、を備える。
【0008】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高温時に適切なアクティブクランプ動作を行うことのできる半導体装置、及び、これを用いた電子機器並びに車両を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、半導体装置を1つの方向から見た斜視図である。
図2図2は、半導体装置の電気的構造を示すブロック回路図である。
図3図3は、半導体装置の通常動作及びアクティブクランプ動作を説明するための回路図である。
図4図4は、主要な電気信号の波形図である。
図5図5は、図1に示す領域Vの断面斜視図である。
図6図6は、アクティブクランプ耐量及び面積抵抗率の関係を実測によって調べたグラフである。
図7図7は、半導体装置の通常動作を説明するための断面斜視図である。
図8図8は、半導体装置のアクティブクランプ動作を説明するための断面斜視図である。
図9図9は、第1実施形態に係る半導体装置を示すブロック回路図である。
図10図10は、図9のパワーMISFETを第1MISFET及び第2MISFETとして表した等価回路図である。
図11図11は、図10におけるゲート制御回路及びアクティブクランプ回路の一構成例を示す回路図である。
図12図12は、アクティブクランプ動作時にパワーMISFETの第1Half-ON制御が行われる様子を示すタイミングチャートである。
図13図13は、ゲート・ソース間電圧とオン抵抗との関係を示す図である。
図14図14は、ゲート・ソース間電圧と出力電流との関係を示す図である。
図15図15は、アクティブクランプ動作時の問題点を示す図(ハイサイドスイッチICの場合)である。
図16図16は、アクティブクランプ動作時の問題点を示す図(ローサイドスイッチICの場合)である。
図17図17は、第2実施形態に係る半導体装置を示す図である。
図18図18は、第2実施形態のアクティブクランプ動作を示す図である。
図19図19は、第3実施形態に係る半導体装置を示す図である。
図20図20は、過熱保護回路の一構成例を示す図である。
図21図21は、第3実施形態のアクティブクランプ動作を示す図である。
図22図22は、第4実施形態に係る半導体装置を示す図である。
図23図23は、温度検出素子の配置例を示す図である。
図24図24は、過熱保護信号とゲート制御信号の関係を示す図である。
図25図25は、第4実施形態のアクティブクランプ動作を示す図である。
図26図26は、車両の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<半導体装置>
以下では、添付図面を参照して、半導体装置に関する種々の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、半導体装置1を1つの方向から見た斜視図である。以下では、半導体装置1がハイサイド側のスイッチングデバイスである形態例について説明するが、半導体装置1はハイサイド側のスイッチングデバイスに限定されるものではない。半導体装置1は、各種構造の電気的な接続形態または機能を調整することにより、ローサイド側のスイッチングデバイスとしても提供されることができる。
【0013】
図1を参照して、半導体装置1は、半導体層2を含む。半導体層2はシリコンを含む。半導体層2は、直方体形状のチップ状に形成されている。半導体層2は、一方側の第1主面3、他方側の第2主面4、及び、第1主面3並びに第2主面4を接続する側面5A,5B,5C,5Dを有している。
【0014】
第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。側面5Aおよび側面5Cは、第1方向Xに沿って延び、第1方向Xに交差する第2方向Yに互いに対向している。側面5Bおよび側面5Dは、第2方向Yに沿って延び、第1方向Xに互いに対向している。第2方向Yは、より具体的には、第1方向Xに直交している。
【0015】
半導体層2には、出力領域6および入力領域7が設定されている。出力領域6は、側面5C側の領域に設定されている。入力領域7は、側面5A側の領域に設定されている。平面視において、出力領域6の面積SOUTは、入力領域7の面積SIN以上である(SIN≦SOUT)。
【0016】
出力領域6は、絶縁ゲート型のパワートランジスタ(=出力トランジスタ)の一例として、パワーMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)9を含む。パワーMISFET9は、ゲート、ドレイン及びソースを含む。パワーMISFET9は、電源端と負荷との間を導通/遮断するハイサイドスイッチとして機能する。
【0017】
入力領域7は、制御回路の一例としてのコントロールIC(Integrated Circuit)10を含む。コントロールIC10は、種々の機能を実現する複数種の機能回路を含む。複数種の機能回路は、外部からの電気信号に基づいてパワーMISFET9を駆動制御するゲート制御信号を生成する回路を含む。コントロールIC10は、パワーMISFET9と共に所謂IPD(Intelligent Power Device)を形成している。なお、IPDは、IPM(Intelligent Power Module)とも称される。
【0018】
入力領域7は、領域分離構造8によって出力領域6から電気的に絶縁されている。図1では、領域分離構造8がハッチングによって示されている。具体的な説明は省略するが、領域分離構造8は、トレンチに絶縁体が埋め込まれたトレンチ絶縁構造を有してもよい。
【0019】
半導体層2の上には、複数(ここでは6つ)の電極11,12,13,14,15,16が形成されている。図1では、ハッチングによって複数の電極11~16が示されている。複数の電極11~16は、導線(たとえばボンディングワイヤ)等によって外部接続される端子電極として形成されている。複数の電極11~16の個数、配置および平面形状は任意であり、図1に示される形態に限定されない。
【0020】
複数の電極11~16の個数、配置および平面形状は、パワーMISFET9の仕様またはコントロールIC10の仕様に応じて調整される。複数の電極11~16は、この形態では、ドレイン電極11(電源電極)、ソース電極12(出力電極)、入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15およびSENSE電極16を含む。
【0021】
ドレイン電極11は、半導体層2の第2主面4の上に形成されている。ドレイン電極11は、半導体層2の第2主面4に電気的に接続されている。ドレイン電極11は、パワーMISFET9のドレインとコントロールIC10の各種回路に電源電圧VBを伝える。
【0022】
ソース電極12は、第1主面3において出力領域6の上に形成されている。ソース電極12は、パワーMISFET9のソースに電気的に接続されている。ソース電極12は、パワーMISFET9によって生成された電気信号を外部に伝達する。
【0023】
入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15及びSENSE電極16は、第1主面3において入力領域7の上にそれぞれ形成されている。入力電極13は、コントロールIC10を駆動するための入力電圧を伝達する。
【0024】
基準電圧電極14は、コントロールIC10に基準電圧(たとえばグランド電圧)を伝達する。ENABLE電極15は、コントロールIC10の一部または全部の機能を有効または無効にするための電気信号を伝達する。SENSE電極16は、コントロールIC10の異常を検出するための電気信号を伝達する。
【0025】
半導体層2の上には、制御配線の一例としてのゲート制御配線17がさらに形成されている。ゲート制御配線17は、出力領域6及び入力領域7に選択的に引き回されている。ゲート制御配線17は、出力領域6においてパワーMISFET9のゲートに電気的に接続され、入力領域7においてコントロールIC10に電気的に接続されている。
【0026】
ゲート制御配線17は、コントロールIC10によって生成されたゲート制御信号をパワーMISFET9のゲートに伝達する。ゲート制御信号は、オン信号Vonおよびオフ信号Voffを含み、パワーMISFET9のオン状態およびオフ状態を制御する。
【0027】
オン信号Vonは、パワーMISFET9のゲート閾値電圧Vthよりも高い(Vth<Von)。オフ信号Voffは、パワーMISFET9のゲート閾値電圧Vthよりも低い(Voff<Vth)。オフ信号Voffは、基準電圧(たとえばグランド電圧)であってもよい。
【0028】
ゲート制御配線17は、この形態では、第1ゲート制御配線17A、第2ゲート制御配線17Bおよび第3ゲート制御配線17Cを含む。第1ゲート制御配線17A、第2ゲート制御配線17Bおよび第3ゲート制御配線17Cは、互いに電気的に絶縁されている。
【0029】
この形態では、2つの第1ゲート制御配線17Aが異なる領域に引き回されている。また、2つの第2ゲート制御配線17Bが異なる領域に引き回されている。また、2つの第3ゲート制御配線17Cが異なる領域に引き回されている。
【0030】
第1ゲート制御配線17A、第2ゲート制御配線17Bおよび第3ゲート制御配線17Cは、同一のまたは異なるゲート制御信号をパワーMISFET9のゲートに伝達する。ゲート制御配線17の個数、配置、形状等は任意であり、ゲート制御信号の伝達距離、または、伝達すべきゲート制御信号の数に応じて調整される。
【0031】
図2は、図1に示す半導体装置1の電気的構造を示すブロック回路図である。以下では半導体装置1が車両に搭載される場合を例にとって説明する。
【0032】
半導体装置1は、ドレイン電極11、ソース電極12、入力電極13、基準電圧電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16、ゲート制御配線17、パワーMISFET9およびコントロールIC10を含む。
【0033】
ドレイン電極11(=電源電極VBB)は、電源に接続される。ドレイン電極11は、パワーMISFET9およびコントロールIC10に電源電圧VBを提供する。電源電圧VBは、10V以上20V以下であってもよい。一方、ソース電極12(=出力電極OUT)は、負荷に接続される。
【0034】
入力電極13(=入力電極IN)は、MCU(Micro Controller Unit)、DC/DCコンバータ、LDO(Low Drop Out)等に接続されてもよい。入力電極13は、コントロールIC10に入力電圧を提供する。入力電圧は、1V以上10V以下であってもよい。基準電圧電極14は基準電圧配線に接続される。基準電圧電極14は、パワーMISFET9およびコントロールIC10に基準電圧を提供する。
【0035】
ENABLE電極15は、MCUに接続されてもよい。ENABLE電極15には、コントロールIC10の一部または全部の機能を有効または無効にするための電気信号が入力される。SENSE電極16は、抵抗器に接続されてもよい。
【0036】
パワーMISFET9のゲートは、ゲート制御配線17を介してコントロールIC10(後述のゲート制御回路25)に接続されている。パワーMISFET9のドレインは、ドレイン電極11に接続されている。パワーMISFET9のソースは、コントロールIC10(後述する電流検出回路27)およびソース電極12に接続されている。
【0037】
コントロールIC10は、センサMISFET21、入力回路22、電流・電圧制御回路23、保護回路24、ゲート制御回路25、アクティブクランプ回路26、電流検出回路27、電源逆接続保護回路28および異常検出回路29を含む。
【0038】
センサMISFET21のゲートは、ゲート制御回路25に接続されている。センサMISFET21のドレインは、ドレイン電極11に接続されている。センサMISFET21のソースは、電流検出回路27に接続されている。
【0039】
入力回路22は、入力電極13および電流・電圧制御回路23に接続されている。入力回路22は、シュミットトリガ回路を含んでいてもよい。入力回路22は、入力電極13に印加された電気信号の波形を整形する。入力回路22により生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0040】
電流・電圧制御回路23は、保護回路24、ゲート制御回路25、電源逆接続保護回路28および異常検出回路29に接続されている。電流・電圧制御回路23は、ロジック回路を含んでいてもよい。
【0041】
電流・電圧制御回路23は、入力回路22からの電気信号および保護回路24からの電気信号に応じて種々の電圧を生成する。電流・電圧制御回路23は、この形態では、駆動電圧生成回路30、第1定電圧生成回路31、第2定電圧生成回路32および基準電圧・基準電流生成回路33を含む。
【0042】
駆動電圧生成回路30は、ゲート制御回路25を駆動するための駆動電圧を生成する。駆動電圧は、電源電圧VBから所定値を差し引いた値に設定されてもよい。駆動電圧生成回路30は、電源電圧VBから5Vを差し引いた5V以上15V以下の駆動電圧を生成してもよい。駆動電圧は、ゲート制御回路25に入力される。
【0043】
第1定電圧生成回路31は、保護回路24を駆動するための第1定電圧を生成する。第1定電圧生成回路31は、ツェナダイオードまたはレギュレータ回路(ここではツェナダイオード)を含んでいてもよい。第1定電圧は、1V以上5V以下であってもよい。第1定電圧は、保護回路24(より具体的には、後述する負荷オープン検出回路35等)に入力される。
【0044】
第2定電圧生成回路32は、保護回路24を駆動するための第2定電圧を生成する。第2定電圧生成回路32は、ツェナダイオードまたはレギュレータ回路(ここではレギュレータ回路)を含んでいてもよい。第2定電圧は、1V以上5V以下であってもよい。第2定電圧は、保護回路24(より具体的には、後述する過熱保護回路36及び低電圧誤動作抑制回路37)に入力される。
【0045】
基準電圧・基準電流生成回路33は、各種回路の基準電圧および基準電流を生成する。基準電圧は、1V以上5V以下であってもよい。基準電流は、1mA以上1A以下であってもよい。基準電圧および基準電流は、各種回路に入力される。各種回路がコンパレータを含む場合、基準電圧および基準電流は、当該コンパレータに入力されてもよい。
【0046】
保護回路24は、電流・電圧制御回路23、ゲート制御回路25、異常検出回路29、パワーMISFET9のソース及びセンサMISFET21のソースに接続されている。保護回路24は、過電流保護回路34、負荷オープン検出回路35、過熱保護回路36および低電圧誤動作抑制回路37を含む。
【0047】
過電流保護回路34は、過電流からパワーMISFET9を保護する。過電流保護回路34は、ゲート制御回路25およびセンサMISFET21のソースに接続されている。過電流保護回路34は、電流モニタ回路を含んでいてもよい。過電流保護回路34によって生成された信号は、ゲート制御回路25(より具体的には、後述する駆動信号出力回路40)に入力される。
【0048】
負荷オープン検出回路35は、パワーMISFET9のショート状態及びオープン状態を検出する。負荷オープン検出回路35は、電流・電圧制御回路23及びパワーMISFET9のソースに接続されている。負荷オープン検出回路35により生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0049】
過熱保護回路36は、パワーMISFET9の温度を監視し、過度な温度上昇からパワーMISFET9を保護する。過熱保護回路36は、電流・電圧制御回路23に接続されている。過熱保護回路36は、感温ダイオードまたはサーミスタ等の感温デバイスを含んでいてもよい。過熱保護回路36によって生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0050】
低電圧誤動作抑制回路37は、電源電圧VBが所定値未満である場合にパワーMISFET9が誤動作するのを抑制する。低電圧誤動作抑制回路37は、電流・電圧制御回路23に接続されている。低電圧誤動作抑制回路37によって生成された信号は、電流・電圧制御回路23に入力される。
【0051】
ゲート制御回路25は、パワーMISFET9のオン状態並びにオフ状態、及び、センサMISFET21のオン状態並びにオフ状態を制御する。ゲート制御回路25は、電流・電圧制御回路23、保護回路24、パワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに接続されている。
【0052】
ゲート制御回路25は、電流・電圧制御回路23からの電気信号および保護回路24からの電気信号に応じて、ゲート制御配線17の個数に応じた複数のゲート制御信号を生成する。複数のゲート制御信号は、ゲート制御配線17を介してパワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートにそれぞれ入力される。
【0053】
ゲート制御回路25は、具体的に述べると、入力電極13に印加された電気信号(入力信号)に応じて複数のゲート制御信号を一括制御することによりパワーMISFET9をオン/オフする一方、アクティブクランプ回路26の動作時にパワーMISFET9のオン抵抗を引き上げるように複数のゲート制御信号を個別制御する機能を備えている(詳細については後述)。
【0054】
ゲート制御回路25は、より具体的には、発振回路38、チャージポンプ回路39および駆動信号出力回路40を含む。発振回路38は、電流・電圧制御回路23からの電気信号に応じて発振し、所定の電気信号を生成する。発振回路38によって生成された電気信号は、チャージポンプ回路39に入力される。チャージポンプ回路39は、発振回路38からの電気信号を昇圧させる。チャージポンプ回路39によって昇圧された電気信号は、駆動信号出力回路40に入力される。
【0055】
駆動信号出力回路40は、チャージポンプ回路39からの電気信号および保護回路24(より具体的には、過電流保護回路34)からの電気信号に応じて複数のゲート制御信号を生成する。複数のゲート制御信号は、ゲート制御配線17を介してパワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに入力される。センサMISFET21およびパワーMISFET9は、ゲート制御回路25によって同時に制御される。
【0056】
アクティブクランプ回路26は、逆起電力からパワーMISFET9を保護する。アクティブクランプ回路26は、ドレイン電極11、パワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに接続されている。アクティブクランプ回路26は、複数のダイオードを含んでいてもよい。
【0057】
アクティブクランプ回路26は、互いに順バイアス接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いに逆バイアス接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いに順バイアス接続された複数のダイオード、および、互いに逆バイアス接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。
【0058】
複数のダイオードは、pn接合ダイオード、または、ツェナダイオード、もしくは、pn接合ダイオードおよびツェナダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いにバイアス接続された複数のツェナダイオードを含んでいてもよい。アクティブクランプ回路26は、互いに逆バイアス接続されたツェナダイオードおよびpn接合ダイオードを含んでいてもよい。
【0059】
電流検出回路27は、パワーMISFET9およびセンサMISFET21を流れる電流を検出する。電流検出回路27は、保護回路24、異常検出回路29、パワーMISFET9のソースおよびセンサMISFET21のソースに接続されている。電流検出回路27は、パワーMISFET9によって生成された電気信号およびセンサMISFET21によって生成された電気信号に応じて、電流検出信号を生成する。電流検出信号は、異常検出回路29に入力される。
【0060】
電源逆接続保護回路28は、電源が逆接続された際に、逆電圧から電流・電圧制御回路23及びパワーMISFET9等を保護する。電源逆接続保護回路28は、基準電圧電極14および電流・電圧制御回路23に接続されている。
【0061】
異常検出回路29は、保護回路24の電圧を監視する。異常検出回路29は、電流・電圧制御回路23、保護回路24および電流検出回路27に接続されている。過電流保護回路34、負荷オープン検出回路35、過熱保護回路36および低電圧誤動作抑制回路37のいずれかに異常(電圧の変動等)が生じた場合、異常検出回路29は、保護回路24の電圧に応じた異常検出信号を生成し、外部に出力する。
【0062】
異常検出回路29は、より具体的には、第1マルチプレクサ回路41および第2マルチプレクサ回路42を含む。第1マルチプレクサ回路41は、2つの入力部、1つの出力部および1つの選択制御入力部を含む。第1マルチプレクサ回路41の入力部には、保護回路24および電流検出回路27がそれぞれ接続されている。第1マルチプレクサ回路41の出力部には、第2マルチプレクサ回路42が接続されている。第1マルチプレクサ回路41の選択制御入力部には、電流・電圧制御回路23が接続されている。
【0063】
第1マルチプレクサ回路41は、電流・電圧制御回路23からの電気信号、保護回路24からの電圧検出信号および電流検出回路27からの電流検出信号に応じて、異常検出信号を生成する。第1マルチプレクサ回路41によって生成された異常検出信号は、第2マルチプレクサ回路42に入力される。
【0064】
第2マルチプレクサ回路42は、2つの入力部および1つの出力部を含む。第2マルチプレクサ回路42の入力部には、第2マルチプレクサ回路42の出力部およびENABLE電極15がそれぞれ接続されている。第2マルチプレクサ回路42の出力部には、SENSE電極16が接続されている。
【0065】
ENABLE電極15にMCUが接続され、SENSE電極16に抵抗器が接続されている場合、MCUからENABLE電極15にオン信号が入力され、SENSE電極16から異常検出信号が取り出される。異常検出信号は、SENSE電極16に接続された抵抗器によって電気信号に変換される。半導体装置1の状態異常は、この電気信号に基づいて検出される。
【0066】
図3は、図1に示す半導体装置1のアクティブクランプ動作を説明するための回路図である。図4は、図3に示す回路図の主要な電気信号の波形図である。
【0067】
ここでは、パワーMISFET9に誘導性負荷Lが接続された回路例を用いて、半導体装置1の通常動作及びアクティブクランプ動作を説明する。ソレノイド、モータ、トランス、リレー等の巻線(コイル)を利用したデバイスが、誘導性負荷Lとして例示される。誘導性負荷Lは、L負荷とも称される。
【0068】
図3を参照して、パワーMISFET9のソースは、誘導性負荷Lに接続されている。パワーMISFET9のドレインは、ドレイン電極11に電気的に接続されている。パワーMISFET9のゲートおよびドレインは、アクティブクランプ回路26に接続されている。アクティブクランプ回路26は、この回路例では、m個(mは自然数)のツェナダイオードDZおよびn個(nは自然数)のpn接合ダイオードDを含む。pn接合ダイオードDは、ツェナダイオードDZに対して逆バイアス接続されている。
【0069】
図3および図4を参照して、オフ状態のパワーMISFET9のゲートにオン信号Vonが入力されると、パワーMISFET9がオフ状態からオン状態に切り替わる(通常動作)。オン信号Vonは、ゲート閾値電圧Vth以上(Vth≦Von)の電圧を有している。パワーMISFET9は、所定のオン時間TONだけ、オン状態に維持される。
【0070】
パワーMISFET9がオン状態に切り替わると、ドレイン電流IDが、パワーMISFET9のドレインからソースに向けて流れ始める。ドレイン電流IDは、零から所定の値まで増加し、飽和する。誘導性負荷Lは、ドレイン電流IDの増加に起因して誘導性エネルギを蓄積させる。
【0071】
パワーMISFET9のゲートにオフ信号Voffが入力されると、パワーMISFET9がオン状態からオフ状態に切り替わる。オフ信号Voffは、ゲート閾値電圧Vth未満の電圧(Voff<Vth)を有している。オフ信号Voffは、基準電圧(たとえばグランド電圧)であってもよい。
【0072】
パワーMISFET9がオン状態からオフ状態に切り替わる遷移時では、誘導性負荷Lの誘導性エネルギが、逆起電力としてパワーMISFET9に印加される。これにより、パワーMISFET9がアクティブクランプ状態になる(アクティブクランプ動作)。パワーMISFET9がアクティブクランプ状態になると、ソース電圧VSSが、基準電圧(グランド電圧)未満の負電圧まで急激に下降する。
【0073】
このとき、ソース電圧VSSは、アクティブクランプ回路26の動作に起因して、電源電圧VBから制限電圧VL及びクランプオン電圧VCLPを減算した電圧以上の電圧(VSS≧VB-VL-VCLP)に制限される。
【0074】
換言すると、パワーMISFET9がアクティブクランプ状態になると、パワーMISFET9のドレイン・ソース間のドレイン電圧VDSは、クランプ電圧VDSSCLまで急激に上昇する。クランプ電圧VDSSCLは、パワーMISFET9およびアクティブクランプ回路26によって、クランプオン電圧VCLPおよび制限電圧VLを加算した電圧以下の電圧(VDS≦VCLP+VL)に制限される。
【0075】
制限電圧VLは、この形態では、アクティブクランプ回路26におけるツェナダイオードDZの端子間電圧VZ及びpn接合ダイオードDの端子間電圧VFの総和(VL=m・VZ+n・VF)である。
【0076】
クランプオン電圧VCLPは、パワーMISFET9のゲート・ソース間に印加される正電圧(つまり、ゲート電圧VGS)である。クランプオン電圧VCLPは、ゲート閾値電圧Vth以上(Vth≦VCLP)である。したがって、パワーMISFET9は、アクティブクランプ状態においてオン状態を維持する。
【0077】
クランプ電圧VDSSCLが最大定格ドレイン電圧VDSSを超えた場合(VDSS<VDSSCL)、パワーMISFET9は破壊に至る。パワーMISFET9は、クランプ電圧VDSSCLが最大定格ドレイン電圧VDSS以下(VDSSCL≦VDSS)になるように設計される。
【0078】
クランプ電圧VDSSCLが最大定格ドレイン電圧VDSS以下の場合(VDSSCL≦VDSS)、ドレイン電流IDがパワーMISFET9のドレインからソースに向けて流れ続け、誘導性負荷Lの誘導性エネルギがパワーMISFET9において消費(吸収)される。
【0079】
ドレイン電流IDは、アクティブクランプ時間TAVを経て、パワーMISFET9のオフ直前のピーク値IAVからゼロに減少する。これにより、ゲート電圧VGSが基準電圧(たとえばグランド電圧)になり、パワーMISFET9がオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0080】
パワーMISFET9のアクティブクランプ耐量Eacは、アクティブクランプ動作時におけるパワーMISFET9の耐量によって定義される。アクティブクランプ耐量Eacは、より具体的には、パワーMISFET9のオン状態からオフ状態への遷移時において、誘導性負荷Lの誘導性エネルギに起因して生じる逆起電力に対するパワーMISFET9の耐量によって定義される。
【0081】
アクティブクランプ耐量Eacは、さらに具体的には、クランプ電圧VDSSCLに起因して生じるエネルギに対するパワーMISFET9の耐量によって定義される。たとえば、アクティブクランプ耐量Eacは、制限電圧VL、クランプオン電圧VCLP、ドレイン電流ID及びアクティブクランプ時間TAVを用いて、Eac=(VL+VCLP)×ID×TAVの式で表される。
【0082】
図5は、図1に示す領域Vの断面斜視図である。なお、本図では、説明の便宜上、第1主面3の上部構造(ソース電極12並びにゲート制御配線17、及び、層間絶縁層など)を省略している。
【0083】
本図の半導体装置1において、半導体層2は、この形態では、n型の半導体基板51およびn型のエピタキシャル層52を含む積層構造を有している。半導体基板51によって半導体層2の第2主面4が形成されている。エピタキシャル層52によって半導体層2の第1主面3が形成されている。半導体基板51およびエピタキシャル層52によって半導体層2の側面5A~5Dが形成されている。
【0084】
半導体基板51は、ドレイン領域53として半導体層2の第2主面4側に形成されている。エピタキシャル層52は、ドリフト領域54(ドレインドリフト領域)として半導体層2の第1主面3の表層部に形成されている。ドリフト領域54の底部は、半導体基板51およびエピタキシャル層52の境界によって形成されている。以下、エピタキシャル層52をドリフト領域54という。
【0085】
出力領域6において半導体層2の第1主面3の表層部には、p型のボディ領域55が形成されている。ボディ領域55は、パワーMISFET9の基礎となる領域である。ボディ領域55のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下であってもよい。
【0086】
ボディ領域55は、ドリフト領域54の表層部に形成されている。ボディ領域55の底部は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に形成されている。ボディ領域55の厚さは、0.5μm以上2μm以下であってもよい。ボディ領域55の厚さは、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、または、1.5μm以上2μm以下であってもよい。
【0087】
パワーMISFET9は、第1MISFET56(第1トランジスタ)および第2MISFET57(第2トランジスタ)を含む。第1MISFET56は、第2MISFET57から電気的に分離されており、独立して制御される。第2MISFET57は、第1MISFET56から電気的に分離されており、独立して制御される。
【0088】
つまり、パワーMISFET9は、第1MISFET56及び第2MISFET57の双方がオン状態において駆動するように構成されている(Full-ON制御)。また、パワーMISFET9は、第1MISFET56がオン状態である一方で第2MISFET57がオフ状態で駆動するように構成されている(第1Half-ON制御)。更に、パワーMISFET9は、第1MISFET56がオフ状態である一方で第2MISFET57がオン状態で駆動するように構成されている(第2Half-ON制御)。
【0089】
Full-ON制御の場合、全ての電流経路が解放された状態でパワーMISFET9が駆動される。したがって、半導体層2内のオン抵抗は相対的に低下する。一方、第1Half-ON制御または第2Half-ON制御の場合、一部の電流経路が遮断された状態でパワーMISFET9が駆動される。したがって、半導体層2内のオン抵抗は相対的に増加する。
【0090】
第1MISFET56は、具体的には複数の第1FET(Field Effect Transistor)構造58を含む。複数の第1FET構造58は、平面視において第1方向Xに沿って間隔を空けて配列され、第2方向Yに沿って帯状にそれぞれ延びている。複数の第1FET構造58は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。
【0091】
図5では第1FET構造58の一端部側の領域を図示し、第1FET構造58の他端部側の領域の図示を省略している。なお、第1FET構造58の他端部側の領域の構造は、第1FET構造58の一端部側の領域の構造とほぼ同様である。以下では、第1FET構造58の一端部側の領域の構造を例にとって説明し、第1FET構造58の他端部側の領域の構造についての説明は省略する。
【0092】
第1トレンチゲート構造60は、一方側の第1側壁61、他方側の第2側壁62、および、第1側壁61並びに第2側壁62を接続する底壁63を含む。以下では、第1側壁61、第2側壁62および底壁63を纏めて「内壁」または「外壁」ということがある。
【0093】
第1トレンチゲート構造60の底壁63は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。第1トレンチゲート構造60の底壁63は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状(U字状)に形成されている。
【0094】
第2MISFET57は、この形態では、複数の第2FET構造68を含む。複数の第2FET構造68は、平面視において第1方向Xに沿って間隔を空けて配列され、第2方向Yに沿って帯状にそれぞれ延びている。
【0095】
複数の第2FET構造68は、複数の第1FET構造58と同一方向に沿って延びている。複数の第2FET構造68は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。複数の第2FET構造68は、この形態では、1個の第1FET構造58を挟む態様で複数の第1FET構造58と交互に配列されている。
【0096】
図5では第2FET構造68の一端部側の領域を図示し、第2FET構造68の他端部側の領域の図示を省略している。なお、第2FET構造68の他端部側の領域の構造は、第2FET構造68の一端部側の領域の構造とほぼ同様である。以下では、第2FET構造68の一端部側の領域の構造を例にとって説明し、第2FET構造68の他端部側の領域の構造についての説明は省略する。
【0097】
第2トレンチゲート構造70は、一方側の第1側壁71、他方側の第2側壁72、ならびに、第1側壁71および第2側壁72を接続する底壁73を含む。以下では、第1側壁71、第2側壁72および底壁73を纏めて「内壁」または「外壁」ということがある。
【0098】
第2トレンチゲート構造70の底壁73は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。第2トレンチゲート構造70の底壁73は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状(U字状)に形成されている。
【0099】
複数の第1トレンチゲート構造60および複数の第2トレンチゲート構造70の間の領域には、セル領域75がそれぞれ区画されている。複数のセル領域75は、平面視において第1方向Xに沿って間隔を空けて配列され、第2方向Yに沿って帯状にそれぞれ延びている。複数のセル領域75は、第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70と同一方向に沿って延びている。複数のセル領域75は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。
【0100】
第1トレンチゲート構造60の外壁からは、ドリフト領域54の内部に第1空乏層が拡がる。第1空乏層は、第1トレンチゲート構造60の外壁から第1主面3に沿う方向および法線方向Zに向けて広がる。同様に、第2トレンチゲート構造70の外壁からは、ドリフト領域54内に第2空乏層が拡がる。第2空乏層は、第2トレンチゲート構造70の外壁から第1主面3に沿う方向および法線方向Zに向けて広がる。
【0101】
第1トレンチゲート構造60は、より具体的には、第1ゲートトレンチ81、第1絶縁層82および第1電極83を含む。第1ゲートトレンチ81は、第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0102】
第1ゲートトレンチ81は、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61、第2側壁62および底壁63を区画している。以下では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61、第2側壁62および底壁63を、第1ゲートトレンチ81の第1側壁61、第2側壁62および底壁63ともいう。
【0103】
第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81の内壁に沿って膜状に形成されている。第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81内において凹状の空間を区画している。第1絶縁層82において第1ゲートトレンチ81の底壁63を被覆する部分は、第1ゲートトレンチ81の底壁63に倣って形成されている。これにより、第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81内においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0104】
第1絶縁層82は、第1ゲートトレンチ81の底壁63側から第1主面3側に向けてこの順に形成された第1底側絶縁層84および第1開口側絶縁層85を含む。
【0105】
第1電極83は、第1絶縁層82を挟んで、第1ゲートトレンチ81に埋め込まれている。第1電極83にはオン信号Vonおよびオフ信号Voffを含む第1ゲート制御信号(第1制御信号)が印加される。第1電極83は、この形態では、第1底側電極86、第1開口側電極87および第1中間絶縁層88を含む絶縁分離型のスプリット電極構造を有している。
【0106】
各第1FET構造58は、p型の第1チャネル領域91(第1チャネル)を更に含む。第1チャネル領域91は、ボディ領域55において第1絶縁層82(第1開口側絶縁層85)を挟んで第1電極83(第1開口側電極87)に対向する領域に形成される。
【0107】
第1チャネル領域91は、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61または第2側壁62、もしくは、第1側壁61および第2側壁62に沿って形成されている。第1チャネル領域91は、この形態では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に沿って形成されている。
【0108】
各第1FET構造58は、ボディ領域55の表層部に形成されたn型の第1ソース領域92をさらに含む。第1ソース領域92は、ボディ領域55内においてドリフト領域54との間で第1チャネル領域91を画定する。第1ソース領域92のn型不純物濃度は、ドリフト領域54のn型不純物濃度を超えている。第1ソース領域92のn型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0109】
各第1FET構造58は、この形態では、複数の第1ソース領域92を含む。複数の第1ソース領域92は、ボディ領域55の表層部において第1トレンチゲート構造60に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第1ソース領域92は、より具体的には、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61または第2側壁62、もしくは、第1側壁61及び第2側壁62に沿って形成されている。複数の第1ソース領域92は、この形態では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に沿って間隔を空けて形成されている。
【0110】
複数の第1ソース領域92の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。これにより、複数の第1ソース領域92は、第1絶縁層82(第1開口側絶縁層85)を挟んで第1電極83(第1開口側電極87)に対向している。このようにして、第1MISFET56の第1チャネル領域91が、ボディ領域55において複数の第1ソース領域92およびドリフト領域54に挟まれた領域に形成される。
【0111】
各第1FET構造58は、ボディ領域55の表層部に形成されたp型の第1コンタクト領域93を更に含む。第1コンタクト領域93のp型不純物濃度は、ボディ領域55のp型不純物濃度を超えている。第1コンタクト領域93のp型不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0112】
各第1FET構造58は、この形態では、複数の第1コンタクト領域93を含む。複数の第1コンタクト領域93は、ボディ領域55の表層部において第1トレンチゲート構造60に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第1コンタクト領域93は、より具体的には、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61または第2側壁62、もしくは、第1側壁61および第2側壁62に沿って形成されている。
【0113】
複数の第1コンタクト領域93は、この形態では、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61及び第2側壁62に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第1コンタクト領域93は、より具体的には、複数の第1ソース領域92に対して交互の配列となる態様でボディ領域55の表層部に形成されている。複数の第1コンタクト領域93の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。
【0114】
第2トレンチゲート構造70は、第2ゲートトレンチ101、第2絶縁層102および第2電極103を含む。第2ゲートトレンチ101は、第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0115】
第2ゲートトレンチ101は、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71、第2側壁72および底壁73を区画している。以下では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71、第2側壁72および底壁73を、第2ゲートトレンチ101の第1側壁71、第2側壁72および底壁73ともいう。
【0116】
第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101の内壁に沿い膜状に形成されている。第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101内において凹状の空間を区画している。第2絶縁層102において第2ゲートトレンチ101の底壁73を被覆する部分は、第2ゲートトレンチ101の底壁73に倣って形成されている。これにより、第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101内においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0117】
第2絶縁層102は、第2ゲートトレンチ101の底壁73側から第1主面3側に向けてこの順に形成された第2底側絶縁層104および第2開口側絶縁層105を含む。
【0118】
第2電極103は、第2絶縁層102を挟んで第2ゲートトレンチ101に埋め込まれている。第2電極103にはオン信号Vonおよびオフ信号Voffを含む所定の第2ゲート制御信号(第2制御信号)が印加される。
【0119】
第2電極103は、この形態では、第2底側電極106、第2開口側電極107および第2中間絶縁層108を含む絶縁分離型のスプリット電極構造を有している。第2底側電極106は、この形態では、第1底側電極86に電気的に接続されている。第2開口側電極107は、第1開口側電極87から電気的に絶縁されている。
【0120】
各第2FET構造68は、p型の第2チャネル領域111(第2チャネル)をさらに含む。第2チャネル領域111は、より具体的には、ボディ領域55において第2絶縁層102(第2開口側絶縁層105)を挟んで第2電極103(第2開口側電極107)に対向する領域に形成される。
【0121】
第2チャネル領域111は、より具体的には、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71または第2側壁72、もしくは、第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。第2チャネル領域111は、この形態では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。
【0122】
各第2FET構造68は、ボディ領域55の表層部に形成されたn型の第2ソース領域112をさらに含む。第2ソース領域112は、ボディ領域55内においてドリフト領域54との間で第2チャネル領域111を画定する。
【0123】
第2ソース領域112のn型不純物濃度は、ドリフト領域54のn型不純物濃度を超えている。第2ソース領域112のn型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2ソース領域112のn型不純物濃度は、第1ソース領域92のn型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0124】
各第2FET構造68は、この形態では、複数の第2ソース領域112を含む。複数の第2ソース領域112は、ボディ領域55の表層部において第2トレンチゲート構造70に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2ソース領域112は、具体的には、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71または第2側壁72、もしくは、第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。複数の第2ソース領域112は、この形態では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に沿って間隔を空けて形成されている。
【0125】
各第2ソース領域112は、この形態では、第1方向Xに沿って各第1ソース領域92と対向している。また、各第2ソース領域112は、各第1ソース領域92と一体を成している。図5では、第1ソース領域92および第2ソース領域112を境界線によって区別して示しているが、第1ソース領域92および第2ソース領域112の間の領域には、実際には明確な境界線はない。
【0126】
各第2ソース領域112は、第1方向Xに沿って各第1ソース領域92の一部または全部と対向しないように、各第1ソース領域92から第2方向Yにずれて形成されていてもよい。つまり、複数の第1ソース領域92および複数の第2ソース領域112は、平面視において千鳥状に配列されていてもよい。
【0127】
複数の第2ソース領域112の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。これによって、複数の第2ソース領域112は、第2絶縁層102(第2開口側絶縁層105)を挟んで第2電極103(第2開口側電極107)に対向している。このようにして、第2MISFET57の第2チャネル領域111が、ボディ領域55において複数の第2ソース領域112およびドリフト領域54に挟まれた領域に形成される。
【0128】
各第2FET構造68は、ボディ領域55の表層部に形成されたp型の第2コンタクト領域113を更に含む。第2コンタクト領域113のp型不純物濃度は、ボディ領域55のp型不純物濃度を超えている。第2コンタクト領域113のp型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2コンタクト領域113のp型不純物濃度は、第1コンタクト領域93のp型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0129】
各第2FET構造68は、この形態では、複数の第2コンタクト領域113を含む。複数の第2コンタクト領域113は、ボディ領域55の表層部において第2トレンチゲート構造70に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2コンタクト領域113は、より具体的には、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71または第2側壁72、もしくは、第1側壁71および第2側壁72に沿って形成されている。複数の第2コンタクト領域113の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。
【0130】
複数の第2コンタクト領域113は、この形態では、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2コンタクト領域113は、より具体的には、複数の第2ソース領域112に対して交互の配列となる態様でボディ領域55の表層部に形成されている。
【0131】
図5を参照して、各第2コンタクト領域113は、この形態では、第1方向Xに沿って各第1コンタクト領域93と対向している。各第2コンタクト領域113は、各第1コンタクト領域93と一体を成している。
【0132】
図5では、第1ソース領域92および第2ソース領域112と区別するため、第1コンタクト領域93および第2コンタクト領域113を纏めて「p」の記号で示している。
【0133】
各第2コンタクト領域113は、第1方向Xに沿って各第1コンタクト領域93の一部または全部と対向しないように、各第1コンタクト領域93から第2方向Yにずれて形成されていてもよい。つまり、複数の第1コンタクト領域93および複数の第2コンタクト領域113は、平面視において千鳥状に配列されていてもよい。
【0134】
図5を参照して、半導体層2の第1主面3において第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部の間の領域からは、この形態では、ボディ領域55が露出している。第1ソース領域92、第1コンタクト領域93、第2ソース領域112および第2コンタクト領域113は、第1主面3において第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部に挟まれた領域に形成されていない。
【0135】
同様に、図示はしないが、半導体層2の第1主面3において第1トレンチゲート構造60の他端部及び第2トレンチゲート構造70の他端部の間の領域からは、この形態では、ボディ領域55が露出している。第1ソース領域92、第1コンタクト領域93、第2ソース領域112および第2コンタクト領域113は、第1トレンチゲート構造60の他端部および第2トレンチゲート構造70の他端部に挟まれた領域に形成されていない。
【0136】
図5を参照し、半導体層2の第1主面3には、複数(ここでは2つ)のトレンチコンタクト構造120が形成されている。複数のトレンチコンタクト構造120は、一方側のトレンチコンタクト構造120および他方側のトレンチコンタクト構造120を含む。
【0137】
一方側のトレンチコンタクト構造120は、第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部側の領域に位置する。他方側のトレンチコンタクト構造120は、第1トレンチゲート構造60の他端部および第2トレンチゲート構造70の他端部側の領域に位置する。
【0138】
他方側のトレンチコンタクト構造120は、一方側のトレンチコンタクト構造120とほぼ同様の構造を有している。以下では、一方側のトレンチコンタクト構造120側の構造を例にとって説明し、他方側のトレンチコンタクト構造120側の構造についての具体的な説明は、省略される。
【0139】
トレンチコンタクト構造120は、第1トレンチゲート構造60の一端部および第2トレンチゲート構造70の一端部に接続されている。トレンチコンタクト構造120は、この形態では、平面視において第1方向Xに沿って帯状に延びている。
【0140】
トレンチコンタクト構造120は、一方側の第1側壁121と、他方側の第2側壁122と、第1側壁121および第2側壁122を接続する底壁123とを含む。以下では、第1側壁121、第2側壁122および底壁123を纏めて「内壁」ということがある。第1側壁121は、第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70に接続された接続面である。
【0141】
第1側壁121、第2側壁122および底壁123は、ドリフト領域54内に位置している。第1側壁121および第2側壁122は、法線方向Zに沿って延びている。第1側壁121および第2側壁122は、第1主面3に対して垂直に形成されていてもよい。
【0142】
トレンチコンタクト構造120は、コンタクトトレンチ131、コンタクト絶縁層132およびコンタクト電極133を含む。コンタクトトレンチ131は、半導体層2の第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0143】
コンタクト絶縁層132は、第1ゲートトレンチ81およびコンタクトトレンチ131の間の連通部において第1絶縁層82と一体を成している。コンタクト絶縁層132は、第2ゲートトレンチ101およびコンタクトトレンチ131の間の連通部において第2絶縁層102と一体を成している。
【0144】
コンタクト絶縁層132は、この形態では、第1ゲートトレンチ81の一端部および第2ゲートトレンチ101の一端部に引き出された引き出し絶縁層132Aを有している。引き出し絶縁層132Aは、連通部を横切って第1ゲートトレンチ81の一端部の内壁を被覆している。引き出し絶縁層132Aは、連通部を横切って第2ゲートトレンチ101の一端部の内壁を被覆している。
【0145】
コンタクト電極133は、コンタクト絶縁層132を挟んでコンタクトトレンチ131に埋め込まれている。コンタクト電極133は、第1電極83および第2電極103とは異なり、一体物としてコンタクトトレンチ131に埋め込まれている。コンタクト電極133は、コンタクトトレンチ131から露出する上端部、コンタクト絶縁層132に接する下端部を有している。
【0146】
コンタクト電極133は、第1ゲートトレンチ81およびコンタクトトレンチ131の間の接続部において第1底側電極86に電気的に接続されている。コンタクト電極133は、第2ゲートトレンチ101およびコンタクトトレンチ131の間の接続部において第2底側電極106に電気的に接続されている。これにより、第2底側電極106は、第1底側電極86に電気的に接続されている。
【0147】
コンタクト電極133は、より具体的には、第1ゲートトレンチ81の一端部および第2ゲートトレンチ101の一端部に引き出された引き出し電極133Aを有している。引き出し電極133Aは、第1ゲートトレンチ81およびコンタクトトレンチ131の間の連通部を横切って第1ゲートトレンチ81内に位置している。引き出し電極133Aは、さらに、第2ゲートトレンチ101およびコンタクトトレンチ131の間の連通部を横切って第2ゲートトレンチ101内に位置している。
【0148】
引き出し電極133Aは、第1ゲートトレンチ81内においてコンタクト絶縁層132によって区画されたU字空間に埋め込まれている。引き出し電極133Aは、第1ゲートトレンチ81内において第1底側電極86と一体を成している。これにより、コンタクト電極133は、第1底側電極86に電気的に接続されている。
【0149】
第1ゲートトレンチ81内においてコンタクト電極133および第1開口側電極87の間には、第1中間絶縁層88が介在している。これにより、コンタクト電極133は、第1ゲートトレンチ81内において第1開口側電極87から電気的に絶縁されている。
【0150】
引き出し電極133Aは、第2ゲートトレンチ101内においてコンタクト絶縁層132によって区画されたU字空間に埋め込まれている。引き出し電極133Aは、第2ゲートトレンチ101内において第2底側電極106と一体を成している。これにより、コンタクト電極133は、第2底側電極106に電気的に接続されている。
【0151】
第2ゲートトレンチ101内において、コンタクト電極133と第2開口側電極107との間には、第2中間絶縁層108が介在している。これにより、コンタクト電極133は、第2ゲートトレンチ101内において、第2開口側電極107から電気的に絶縁されている。
【0152】
なお、コントロールIC10から第1ゲート制御配線17A(不図示)に入力されるゲート制御信号は、第1開口側電極87に伝達される。また、コントロールIC10から第2ゲート制御配線17B(不図示)に入力されるゲート制御信号は、第2開口側電極107に伝達される。また、コントロールIC10から第3ゲート制御配線17C(不図示)に入力されるゲート制御信号は、コンタクト電極133を介して第1底側電極86および第2底側電極106に伝達される。
【0153】
第1MISFET56(第1トレンチゲート構造60)及び第2MISFET57(第2トレンチゲート構造70)が共にオフ状態に制御される場合、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は共にオフ状態に制御される。
【0154】
第1MISFET56および第2MISFET57が共にオン状態に制御される場合、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は共にオン状態に制御される(Full-ON制御)。
【0155】
第1MISFET56がオン状態に制御される一方で、第2MISFET57がオフ状態に制御される場合、第1チャネル領域91はオン状態に制御され、第2チャネル領域111はオフ状態に制御される(第1Half-ON制御)。
【0156】
第1MISFET56がオフ状態に制御される一方で、第2MISFET57がオン状態に制御される場合、第1チャネル領域91はオフ状態に制御され、第2チャネル領域111はオン状態に制御される(第2Half-ON制御)。
【0157】
このようにして、パワーMISFET9では、1つの出力領域6に形成された第1MISFET56および第2MISFET57を利用して、Full-ON制御、第1Half-ON制御および第2Half-ON制御を含む複数種の制御が実現される。
【0158】
第1MISFET56を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第1底側電極86にオン信号Vonが印加され、第1開口側電極87にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第1底側電極86および第1開口側電極87は、ゲート電極として機能する。
【0159】
これにより、第1底側電極86および第1開口側電極87の間の電圧降下を抑制できるので、第1底側電極86及び第1開口側電極87の間の電界集中を抑制できる。また、半導体層2のオン抵抗を低下させることができるので、消費電力低減を図ることができる。
【0160】
第1MISFET56を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第1底側電極86にオフ信号Voff(たとえば基準電圧)が印加され、第1開口側電極87にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第1底側電極86がフィールド電極として機能する一方で、第1開口側電極87がゲート電極として機能する。これにより、寄生容量を低下させることができるから、スイッチング速度の向上を図ることができる。
【0161】
第2MISFET57を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第2底側電極106にオン信号Vonが印加され、第2開口側電極107にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第2底側電極106および第2開口側電極107は、ゲート電極として機能する。
【0162】
これにより、第2底側電極106および第2開口側電極107の間の電圧降下を抑制できるから、第2底側電極106及び第2開口側電極107の間の電界集中を抑制できる。また、半導体層2のオン抵抗を低下させることができるから、消費電力の低減を図ることができる。
【0163】
第2MISFET57を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第2底側電極106にオフ信号Voff(基準電圧)が印加され、第2開口側電極107にオン信号Vonが印加されてもよい。この場合、第2底側電極106がフィールド電極として機能する一方で、第2開口側電極107がゲート電極として機能する。これにより、寄生容量を低下させることができるから、スイッチング速度の向上を図ることができる。
【0164】
図5を参照して、第1チャネル領域91は、各セル領域75において第1チャネル面積S1で形成されている。第1チャネル面積S1は、各セル領域75に形成された複数の第1ソース領域92のトータル平面面積によって定義される。
【0165】
第1チャネル領域91は、各セル領域75において第1チャネル割合R1(第1割合)で形成されている。第1チャネル割合R1は、各セル領域75の平面面積を100%としたとき、各セル領域75において第1チャネル面積S1が占める割合である。
【0166】
第1チャネル割合R1は、0%以上50%以下の範囲で調整される。第1チャネル割合R1は、0%以上5%以下、5%以上10%以下、10%以上15%以下、15%以上20%以下、20%以上25%以下、25%以上30%以下、30%以上35%以下、35%以上40%以下、40%以上45%以下、または、45%以上50%以下であってもよい。第1チャネル割合R1は、10%以上35%以下であることが好ましい。
【0167】
第1チャネル割合R1が50%の場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62のほぼ全域に第1ソース領域92が形成される。この場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に第1コンタクト領域93は形成されない。第1チャネル割合R1は、50%未満であることが好ましい。
【0168】
第1チャネル割合R1が0%の場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62に第1ソース領域92は形成されない。この場合、第1トレンチゲート構造60の第1側壁61および第2側壁62にボディ領域55および/または第1コンタクト領域93だけが形成される。第1チャネル割合R1は、0%を超えることが好ましい。この形態では、第1チャネル割合R1が25%である例が示されている。
【0169】
第2チャネル領域111は、各セル領域75において第2チャネル面積S2で形成されている。第2チャネル面積S2は、各セル領域75に形成された複数の第2ソース領域112のトータル平面面積によって定義される。
【0170】
第2チャネル領域111は、各セル領域75において、第2チャネル割合R2(第2割合)で形成されている。第2チャネル割合R2は、各セル領域75の平面面積を100%としたとき、各セル領域75において第2チャネル面積S2が占める割合である。
【0171】
第2チャネル割合R2は、0%以上50%以下の範囲で調整される。第2チャネル割合R2は、0%以上5%以下、5%以上10%以下、10%以上15%以下、15%以上20%以下、20%以上25%以下、25%以上30%以下、30%以上35%以下、35%以上40%以下、40%以上45%以下、または、45%以上50%以下であってもよい。第2チャネル割合R2は、10%以上35%以下であることが好ましい。
【0172】
第2チャネル割合R2が50%の場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72のほぼ全域に第2ソース領域112が形成される。この場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に第2コンタクト領域113は形成されない。第2チャネル割合R2は、50%未満であることが好ましい。
【0173】
第2チャネル割合R2が0%の場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72に第2ソース領域112は形成されない。この場合、第2トレンチゲート構造70の第1側壁71および第2側壁72にボディ領域55および/または第2コンタクト領域113だけが形成される。第2チャネル割合R2は、0%を超えることが好ましい。この形態では、第2チャネル割合R2が25%である例が示されている。
【0174】
このように、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は、各セル領域75において0%以上100%以下(好ましくは0%を超えて100%未満)の総チャネル割合RT(RT=R1+R2)で形成される。
【0175】
各セル領域75における総チャネル割合RTは、この形態では50%である。この形態では、全ての総チャネル割合RTが等しい値に設定されている。そのため、出力領域6内(単位面積)における平均チャネル割合RAVは50%となる。平均チャネル割合RAVは、全ての総チャネル割合RTの和を、総チャネル割合RTの総数で除したものである。
【0176】
なお、総チャネル割合RTは、セル領域75毎に調整されてもよい。つまり、異なる値をそれぞれ有する複数の総チャネル割合RTがセル領域75毎に適用されてもよい。総チャネル割合RTは、半導体層2の温度上昇に関係している。たとえば、総チャネル割合RTを増加させると、半導体層2の温度が上昇し易くなる。一方で、総チャネル割合RTを減少させると、半導体層2の温度が上昇し難くなる。
【0177】
これを利用して、総チャネル割合RTは、半導体層2の温度分布に応じて調整されてもよい。たとえば、半導体層2において温度が高まり易い領域の総チャネル割合RTを比較的小さくし、半導体層2において温度が高まり難い領域の総チャネル割合RTを比較的大きくしてもよい。
【0178】
半導体層2において温度が高まり易い領域として、出力領域6の中央部を例示できる。半導体層2において温度が高まり難い領域として、出力領域6の周縁部を例示できる。むろん、半導体層2の温度分布に応じて総チャネル割合RTを調整しながら、平均チャネル割合RAVが調整されてもよい。
【0179】
20%以上40%以下(たとえば25%)の総チャネル割合RTを有するセル領域75を、温度が高まり易い領域(たとえば中央部)に複数集約させてもよい。60%以上80%以下(たとえば75%)の総チャネル割合RTを有するセル領域75を、温度が高まり難い領域(たとえば周縁部)に複数集約させてもよい。40%を超えて60%未満(たとえば50%)の総チャネル割合RTを有するセル領域75を、温度が高まり易い領域および温度が高まり難い領域の間の領域に複数集約させてもよい。
【0180】
さらに、20%以上40%以下の総チャネル割合RT、40%以上60%以下の総チャネル割合RTおよび60%以上80%以下の総チャネル割合RTが、規則的な配列で、複数のセル領域75に適用されてもよい。
【0181】
一例として、25%(low)→50%(middle)→75%(high)の順に繰り返す3種の総チャネル割合RTが、複数のセル領域75に適用されてもよい。この場合、平均チャネル割合RAVは、50%に調整されてもよい。このような構造の場合、比較的簡単な設計で、半導体層2の温度分布に偏りが形成されるのを抑制できる。
【0182】
図6は、アクティブクランプ耐量Eacおよび面積抵抗率Ron・Aの関係を実測によって調べたグラフである。図6のグラフは、第1MISFET56および第2MISFET57を同時にオン状態およびオフ状態に制御した場合の特性を示している。
【0183】
図6において、縦軸はアクティブクランプ耐量Eac[mJ/mm]を示しており、横軸は面積抵抗率Ron・A[mΩ・mm]を示している。アクティブクランプ耐量Eacは、図3において述べた通り、逆起電力に対する耐量である。面積抵抗率Ron・Aは、通常動作時における半導体層2内のオン抵抗を表している。
【0184】
図6には、第1プロット点P1、第2プロット点P2、第3プロット点P3および第4プロット点P4が示されている。第1プロット点P1、第2プロット点P2、第3プロット点P3および第4プロット点P4は、平均チャネル割合RAV(つまり、各セル領域75に占める総チャネル割合RT)が66%、50%、33%および25%に調整された場合の特性をそれぞれ示している。
【0185】
平均チャネル割合RAVを増加させた場合、通常動作時に面積抵抗率Ron・Aが低下し、アクティブクランプ動作時にアクティブクランプ耐量Eacが低下した。これとは反対に、平均チャネル割合RAVを低下させた場合、通常動作時に面積抵抗率Ron・Aが増加し、アクティブクランプ動作時にアクティブクランプ耐量Eacが向上した。
【0186】
面積抵抗率Ron・Aを鑑みると、平均チャネル割合RAVは33%以上(より具体的には33%以上100%未満)であることが好ましい。アクティブクランプ耐量Eacを鑑みると、平均チャネル割合RAVは33%未満(より具体的には0%を超えて33%未満)であることが好ましい。
【0187】
平均チャネル割合RAVの増加に起因して面積抵抗率Ron・Aが低下したのは、電流経路が増加したためである。また、平均チャネル割合RAVの増加に起因してアクティブクランプ耐量Eacが低下したのは、逆起電力に起因する急激な温度上昇が引き起こされたためである。
【0188】
とりわけ、平均チャネル割合RAV(総チャネル割合RT)が比較的大きい場合には、互いに隣り合う第1トレンチゲート構造60および第2トレンチゲート構造70の間の領域において局所的かつ急激な温度上昇が発生する可能性が高まる。アクティブクランプ耐量Eacは、この種の温度上昇に起因して低下したと考えられる。
【0189】
一方、平均チャネル割合RAVの低下に起因して面積抵抗率Ron・Aが増加した理由は、電流経路が縮小したためである。平均チャネル割合RAVの低下に起因してアクティブクランプ耐量Eacが向上したのは、平均チャネル割合RAV(総チャネル割合RT)が比較的小さくなり、局所的かつ急激な温度上昇が抑制されたためと考えられる。
【0190】
図6のグラフの結果から、平均チャネル割合RAV(総チャネル割合RT)に基づく調整法にはトレードオフの関係が存在するため、当該トレードオフの関係から切り離して優れた面積抵抗率Ron・Aおよび優れたアクティブクランプ耐量Eacを両立することは困難であることが分かる。
【0191】
一方、図6のグラフの結果から、パワーMISFET9において、通常動作時に第1プロット点P1(RAV=66%)に近づく動作をさせて、アクティブクランプ動作時に第4プロット点P4(RAV=25%)に近づく動作をさせることにより、優れた面積抵抗率Ron・A及び優れたアクティブクランプ耐量Eacを両立できることが分かる。そこで、半導体装置1では、以下の制御が実施される。
【0192】
図7は、図1に示す半導体装置1の通常動作を説明するための断面斜視図である。図8は、図1に示す半導体装置1のアクティブクランプ動作を説明するための断面斜視図である。図7および図8では、説明の便宜上、第1主面3の上の構造を省略し、ゲート制御配線17を簡略化している。
【0193】
図7を参照して、パワーMISFET9の通常動作時では、第1ゲート制御配線17Aに第1オン信号Von1が入力され、第2ゲート制御配線17Bに第2オン信号Von2が入力され、第3ゲート制御配線17Cに第3オン信号Von3が入力される。
【0194】
第1オン信号Von1、第2オン信号Von2および第3オン信号Von3は、コントロールIC10からそれぞれ入力される。第1オン信号Von1、第2オン信号Von2及び第3オン信号Von3は、ゲート閾値電圧Vth以上の電圧をそれぞれ有している。第1オン信号Von1、第2オン信号Von2および第3オン信号Von3は、それぞれ等しい電圧を有していてもよい。
【0195】
この場合、第1開口側電極87、第2開口側電極107、第1底側電極86および第2底側電極106がそれぞれオン状態になる。つまり、第1開口側電極87、第2開口側電極107、第1底側電極86および第2底側電極106は、ゲート電極としてそれぞれ機能する。
【0196】
これにより、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111は共にオン状態に制御される。図7では、オン状態の第1チャネル領域91および第2チャネル領域111がドット状のハッチングによって示されている。
【0197】
その結果、第1MISFET56および第2MISFET57の双方が駆動される(Full-ON制御)。通常動作時のチャネル利用率RUは、100%である。通常動作時の特性チャネル割合RCは、50%である。チャネル利用率RUは、第1チャネル領域91および第2チャネル領域111のうちオン状態に制御されている第1チャネル領域91および第2チャネル領域111の割合である。
【0198】
なお、特性チャネル割合RCは、平均チャネル割合RAVにチャネル利用率RUを乗じた値(RC=RAV×RU)である。パワーMISFET9の特性(面積抵抗率Ron・Aおよびアクティブクランプ耐量Eac)は、特性チャネル割合RCに基づいて定められる。これにより、面積抵抗率Ron・Aは、図6のグラフにおいて第2プロット点P2で示された面積抵抗率Ron・Aに近づく。
【0199】
一方、図8を参照して、パワーMISFET9のアクティブクランプ動作時では、第1ゲート制御配線17Aにオフ信号Voffが入力され、第2ゲート制御配線17Bに第1クランプオン信号VCon1が入力され、第3ゲート制御配線17Cに第2クランプオン信号VCon2が入力される。
【0200】
オフ信号Voff、第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、コントロールIC10からそれぞれ入力される。オフ信号Voffは、ゲート閾値電圧Vth未満の電圧(たとえば基準電圧)を有している。第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、ゲート閾値電圧Vth以上の電圧をそれぞれ有している。第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、それぞれ等しい電圧を有していてもよい。第1クランプオン信号VCon1および第2クランプオン信号VCon2は、通常動作時の電圧以下または未満の電圧を有していてもよい。
【0201】
この場合、第1開口側電極87がオフ状態となり、第1底側電極86、第2底側電極106及び第2開口側電極107がそれぞれオン状態になる。これにより、第1チャネル領域91がオフ状態に制御されると共に第2チャネル領域111がオン状態に制御される。図8では、オフ状態の第1チャネル領域91が塗りつぶしハッチングにより示され、オン状態の第2チャネル領域111がドット状のハッチングにより示されている。
【0202】
その結果、第1MISFET56がオフ状態に制御される一方、第2MISFET57がオン状態に制御される(第2Half-ON制御)。これによりアクティブクランプ動作時のチャネル利用率RUが、零を超えて通常動作時のチャネル利用率RU未満となる。
【0203】
アクティブクランプ動作時のチャネル利用率RUは、50%である。また、アクティブクランプ動作時の特性チャネル割合RCは、25%である。これにより、アクティブクランプ耐量Eacは、図6のグラフにおいて第4プロット点P4で示されたアクティブクランプ耐量Eacに近づく。
【0204】
この場合、コントロールIC10は、通常動作時及びアクティブクランプ動作時の間で異なる特性チャネル割合RC(チャネルの面積)が適用されるように、第1MISFET56及び第2MISFET57を制御する。コントロールIC10は、より具体的には、アクティブクランプ動作時のチャネル利用率RUが、零を超えて通常動作時のチャネル利用率RU未満となるように第1MISFET56及び第2MISFET57を制御する。
【0205】
コントロールIC10は、さらに具体的には、通常動作時に第1MISFET56および第2MISFET57をオン状態に制御し、アクティブクランプ動作時に第1MISFET56をオフ状態に制御すると共に第2MISFET57をオン状態に制御する。
【0206】
従って、通常動作時には、特性チャネル割合RCが相対的に増加する。すなわち、通常動作時には、第1MISFET56および第2MISFET57を利用して電流を流すことができる。これにより、電流経路が相対的に増加するから、面積抵抗率Ron・A(オン抵抗)の低減を図ることができる。
【0207】
一方、アクティブクランプ動作時には、特性チャネル割合RCが相対的に減少する。すなわち、第1MISFET56を停止させた状態で第2MISFET57を利用して電流を流すことができるから、第2MISFET57により逆起電力を消費(吸収)できる。これにより、逆起電力に起因する急激な温度上昇を抑制できるから、アクティブクランプ耐量Eacの向上を図ることができる。
【0208】
その結果、図6に示されるトレードオフの関係から切り離して、優れた面積抵抗率Ron・Aおよび優れたアクティブクランプ耐量Eacの両立を図ることができる半導体装置1を提供できる。
【0209】
なお、上記の制御例では、アクティブクランプ動作時において第2Half-ON制御が適用された例について説明した。しかし、アクティブクランプ動作時において第1Half-ON制御が適用されてもよい。
【0210】
<第1実施形態>
図9は、第1実施形態に係る半導体装置(=半導体装置1がハイサイドスイッチICである場合において、アクティブクランプ動作時にパワーMISFETの第1Half-ON制御を行うための電気的構造)を示すブロック回路図である。
【0211】
本実施形態の半導体装置1は、ドレイン電極11(=電源電極VBB)と、ソース電極12(=出力電極OUT)と、パワーMISFET9と、ゲート制御回路25と、アクティブクランプ回路26とを有する。なお、既出の構成要素については、これまでと同一の符号を付している。
【0212】
また、本図では、説明を簡単とするために、一部の構成要素のみを抽出して示したが、半導体装置1には、基本的に、先出の半導体装置1(図2を参照)と同様の構成要素が含まれていると理解してよい。
【0213】
パワーMISFET9は、これまでに種々の実施形態を例示して、その構造を詳細に説明してきたゲート分割素子である。すなわち、パワーMISFET9は、図10で示すように、並列接続された第1MISFET56及び第2MISFET57(=それぞれ第1トランジスタ及び第2トランジスタに相当)として等価的に表すことができる。
【0214】
別の見方をすると、それぞれ独立して制御される第1MISFET56及び第2MISFET57が、単一のゲート分割素子であるパワーMISFET9として、一体的に形成されていると理解することもできる。
【0215】
ゲート制御回路25は、パワーMISFET9のゲート制御(延いては、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのゲート制御)を行う。例えば、ゲート制御回路25は、イネーブル信号ENがハイレベルとされるイネーブル状態(=第1動作状態に相当)において、第1MISFET56及び第2MISFET57をいずれもオンする一方、イネーブル信号ENがローレベルとされるディセーブル状態(=第2動作状態に相当)において、第1MISFET56及び第2MISFET57をいずれもオフするように、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのゲート制御信号G1及びG2を生成する。
【0216】
なお、イネーブル信号ENは、入力電極13に入力される外部制御信号INがハイレベル(=パワーMISFET9をオンするときの論理レベル)であるときにハイレベルとなり、外部制御信号INがローレベル(=パワーMISFET9をオフするときの論理レベル)であるときにローレベルとなる。
【0217】
また、ゲート制御回路25は、アクティブクランプ回路26から内部ノード電圧Vxの入力を受け付けており、イネーブル状態(EN=H)からディセーブル状態(EN=L)への遷移後、アクティブクランプ回路26が動作する前(=出力電圧VOUTがクランプされる前)に、第2MISFET57のゲート・ソース間をショートする機能、つまり、G2=VOUTとして第2MISFET57を完全に停止させることにより、パワーMISFET9の第1Half-ON制御を実現する機能を備えている。
【0218】
アクティブクランプ回路26は、第1MISFET56のドレイン・ゲート間に接続されており、外部制御信号IN(延いてはイネーブル信号EN)がローレベルとなった後、ソース電極12の出力電圧VOUTが負電圧となったときに、第1MISFET56を強制的にオンさせる(フルオフさせない)ことで、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのドレイン・ソース間電圧(=VB-VOUT)を所定のクランプ電圧Vclp以下に制限する。
【0219】
なお、第2MISFET57は、アクティブクランプ動作に寄与しないので、そのドレイン・ゲート間には、アクティブクランプ回路26が接続されていない。
【0220】
図11は、図9におけるゲート制御回路25及びアクティブクランプ回路26の一構成例を示す回路図である。
【0221】
まず、アクティブクランプ回路26の構成について具体的に説明する。本構成例のアクティブクランプ回路26は、m段(例えばm=8)のツェナダイオード列261と、n段(例えばn=3)のダイオード列262と、Nチャネル型のMISFET263(=第3トランジスタに相当)と、を含む。
【0222】
ツェナダイオード列261のカソードとMISFET263のドレインは、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのドレインと共にドレイン電極11(=電源電圧VBが印加される電源電極VBBに相当)に接続されている。ツェナダイオード列261のアノードは、ダイオード列262のアノードに接続されている。ダイオード列262のカソードは、MISFET263のゲートに接続されている。MISFET263のソースは、第1MISFET56のゲート(=ゲート制御信号G1の印加端)に接続されている。MISFET263のバックゲートは、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのソースと共に、ソース電極12(=出力電圧VOUTが印加される出力電極OUTに相当)に接続されている。なお、ソース電極12には、先出の図9及び図10で示したように、コイルまたはソレノイドなどの誘導性負荷Lが接続され得る。
【0223】
次に、ゲート制御回路25の構成について具体的に説明する。本構成例のゲート制御回路25は、電流源251~254と、コントローラ255と、Nチャネル型のMISFET256(=第4トランジスタに相当)と、を含む。
【0224】
電流源251は、昇圧電圧VG(=チャージポンプ出力)の印加端と第1MISFET56のゲートとの間に接続されており、ソース電流IH1を生成する。
【0225】
電流源252は、昇圧電圧VGの印加端と第2MISFET57のゲートとの間に接続されており、ソース電流IH2を生成する。
【0226】
電流源253は、第1MISFET56のゲートと出力電圧VOUTの印加端(=ソース電極12)との間に接続されており、シンク電流IL1を生成する。
【0227】
電流源254は、第2MISFET57のゲートと出力電圧VOUTの印加端との間に接続されており、シンク電流IL2を生成する。
【0228】
コントローラ255は、イネーブル状態(EN=H)において、電流源251及び252をオンし、電流源253及び254をオフする。このような電流制御により、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのゲートには、ソース電流IH1及びIH2が流し込まれる。
【0229】
一方、コントローラ255は、ディセーブル状態(EN=L)において、電流源251及び252をオフし、電流源253及び254をオンする。このような電流制御により、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのゲートから、シンク電流IL1及びIL2が引き抜かれる。
【0230】
MISFET256は、第2MISFET57のゲート・ソース間に接続されており、アクティブクランプ回路26の内部ノード電圧Vxに応じてオン/オフされる。なお、内部ノード電圧Vxとしては、例えば、本図で示したように、MISFET263のゲート電圧を入力することが望ましい。ただし、内部ノード電圧Vxは、これに限定されるものではなく、例えば、ダイオード列262を形成するn段のダイオードのうち、いずれかのアノード電圧を内部ノード電圧Vxとして用いても構わない。
【0231】
また、半導体装置1には、上記構成要素のほか、静電破壊保護素子として、ツェナダイオードZD1~ZD3と、ダイオードD1及びD2と、トランジスタDN1(例えばデプレッションNチャネル型MISFET)が設けられている。それぞれの接続関係について簡単に述べる。
【0232】
ツェナダイオードZD1及びZD2それぞれのカソードは、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのゲートに接続されている。ツェナダイオードZD1及びZD2それぞれのアノードは、ダイオードD1及びD2それぞれのアノードに接続されている。ツェナダイオードZD3のカソードとトランジスタDN1のドレインは、いずれもMISFET263のゲートに接続されている。ダイオードD1並びにD2それぞれのカソード、ツェナダイオードZD3のアノード、及び、トランジスタDN1のソース、ゲート並びにバックゲートは、出力電圧VOUTの印加端に接続されている。
【0233】
以下では、第1MISFET56のゲート・ソース間電圧をVgs1とし、MISFET263のゲート・ソース間電圧をVgs2とし、MISFET256のゲート・ソース間電圧をVgs3とし、ツェナダイオード列261の降伏電圧をmVZとし、ダイオード列262の順方向降下電圧をnVFとして、アクティブクランプ動作時におけるパワーMISFET9の第1Half-ON制御を説明する。
【0234】
図12は、半導体装置1において、アクティブクランプ動作時にパワーMISFET9の第1Half-ON制御が行われる様子を示すタイミングチャートであり、上から順にイネーブル信号EN、出力電圧VOUT(実線)、ゲート制御信号G1(一点鎖線)並びにG2(破線)、及び、出力電流IOUTが描写されている。なお、本図ではソース電極12(=出力電極OUT)と接地端との間に誘導性負荷Lが接続されているものとする。
【0235】
時刻t1において、イネーブル信号ENがハイレベル(=パワーMISFET9をオンするときの論理レベル)に立ち上げられると、ゲート制御信号G1及びG2がハイレベル(≒VG)に立ち上がり、第1MISFET56及び第2MISFET57がオンする。その結果、出力電流IOUTが流れ始めるので、出力電圧VOUTが電源電圧VB近傍まで上昇する。この状態は、パワーMISFET9のFull-ON状態に相当する。
【0236】
その後、時刻t2において、イネーブル信号ENがローレベル(=パワーMISFET9をオフするときの論理レベル)に立ち下げられると、第1MISFET56及び第2MISFET57をオフするために、ゲート制御信号G1及びG2がローレベル(≒VOUT)に立ち下がる。
【0237】
このとき、誘導性負荷Lは、パワーMISFET9のオン期間に蓄えたエネルギを放出するまで出力電流IOUTを流し続ける。その結果、出力電圧VOUTは、接地電圧GNDよりも低い負電圧まで急低下する。
【0238】
ただし、時刻t4において、出力電圧VOUTが電源電圧VBよりも所定値α(=mVZ+nVF+Vgs1+Vgs2)だけ低い下限電圧VB-α(例えばVB-50V)まで低下すると、アクティブクランプ回路26の働きにより、第1MISFET56がオンする(フルオフされない)ので、出力電流IOUTが第1MISFET56を介して放電される。従って、出力電圧VOUTは、下限電圧VB-α以上に制限される。
【0239】
つまり、アクティブクランプ回路26は、電源電圧VB基準で出力電圧VOUTを制限することにより、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vds(=VB-VOUT)を所定のクランプ電圧Vclp(=α)以下に制限する。このようなアクティブクランプ動作は、誘導性負荷Lに蓄えられたエネルギが放出し尽くされて出力電流IOUTが流れなくなる時刻t5まで継続される。
【0240】
一方、第2MISFET57に着目すると、イネーブル状態(EN=H)からディセーブル状態(EN=L)への遷移後、時刻t3において、出力電圧VOUTが電源電圧VBよりも所定値β(=mVZ+nVF+Vgs3)だけ低いチャネル切替電圧VB-β(>VB-α)まで低下すると、内部ノード電圧Vxがゲート・ソース間電圧Vgs3よりも高くなるので、MISFET256がオンして、第2MISFET57のゲート・ソース間がショート(G2=VOUT)される。
【0241】
すなわち、第2MISFET57は、MISFET256の働きにより、アクティブクランプ回路26が動作する前(時刻t4以前)に完全に停止される。この状態は、パワーMISFET9の第1Half-ON状態に相当する。
【0242】
このように、Full-ON状態から第1Half-ON状態への切替を行うことにより、アクティブクランプ動作時(=時刻t4~t5)のチャネル利用率RUが、零を超えて通常動作時(=時刻t1~t2)のチャネル利用率RU未満となる。
【0243】
従って、通常動作時には、特性チャネル割合RCが相対的に増加する(例えばRC=50%)。これにより、電流経路が相対的に増加するから、面積抵抗率Ron・A(オン抵抗)の低減を図ることができる。一方、アクティブクランプ動作時には、特性チャネル割合RCが相対的に減少する(例えばRC=25%)。これにより、誘導性負荷Lの逆起電力に起因する急激な温度上昇を抑制できるから、アクティブクランプ耐量Eacの向上を図ることができる。
【0244】
よって、図6に示されるトレードオフの関係から切り離して、優れた面積抵抗率Ron・Aおよび優れたアクティブクランプ耐量Eacの両立を図ることができる半導体装置1を提供することが可能となる。特に、IPD分野において、アクティブクランプ耐量Eacは、より大きな誘導性負荷Lを駆動するために重要な特性の一つとなる。
【0245】
なお、図9図12では、アクティブクランプ動作時において、第1Half-ON制御が適用された例について説明した。しかし、アクティブクランプ動作時において、第2Half-ON制御が適用されてもよい。その場合には、第1MISFET56と第2MISFET57を相互に入れ替えて理解すればよい。
【0246】
<アクティブクランプ動作に関する考察>
第1実施形態の半導体装置1であれば、アクティブクランプ動作時にパワーMISFET9のチャネル制御(先述の第1Half-ON制御又は第2Half-ON制御)を行うことにより、パワーMISFET9での発熱を分散しつつ、アクティブクランプ耐量Eac(=Vclp×IOUT×TAV)を高めることが可能となる。
【0247】
上記のアクティブクランプ耐量Eacは、クランプ電圧Vclp(=mVZ+nVF+Vgs1+Vgs2)が高いほど高くなる。なお、ゲート・ソース間電圧Vgs1及びVgs2は、パワーMISFET9の素子サイズ及びチャネル割合により変動する。
【0248】
図13は、パワーMISFET9のゲート・ソース間電圧Vgs(=Vgs1又はVgs2に相当)とオン抵抗Ronとの関係を示す図である。
【0249】
アクティブクランプ動作時にパワーMISFET9のチャネル制御が行われると、パワーMISFET9のオン抵抗Ronが高くなる。なお、本図で示したように、オン抵抗Ronが高められた状態は、ゲート・ソース間電圧Vgsが引き下げられた状態と等価であり、パワーMISFET9の電流能力が小さく絞られる。そのため、出力電流IOUTが大きい場合には、アクティブクランプ動作時におけるゲート・ソース間電圧Vgsの制御が困難となり得る。
【0250】
図14は、パワーMISFET9のゲート・ソース間電圧Vgs(=Vgs1又はVgs2に相当)と出力電流IOUTとの関係を示す図である。
【0251】
本図で示すように、アクティブクランプ動作時に吸収すべき出力電流IOUTが大きいほど、パワーMISFET9のゲート・ソース間電圧Vgsを高める必要がある。特に、第1実施形態の半導体装置1では、アクティブクランプ動作時におけるパワーMISFET9のチャネル制御により、パワーMISFET9の電流能力が小さく絞られる。そのため、出力電流IOUTが大きいときには、これを吸収するために必要なパワーMISFET9のゲート・ソース間電圧Vgsが高くなり、クランプ電圧Vclpが上昇する。
【0252】
図15は、アクティブクランプ動作時の問題点を示す図(半導体装置1がハイサイドスイッチICである場合)である。
【0253】
第1実施形態の半導体装置1において、パワーMISFET9のオフ遷移時における出力電圧VOUTは、基本的に、電源電圧VBよりもクランプ電圧Vclpだけ低い下限電圧VB-Vclp以上に制限される。
【0254】
ただし、アクティブクランプ動作時に吸収すべき出力電流IOUTが大きく、第1MISFET56の電流能力が不足した場合には、出力電流IOUTを吸収し切れずに出力電圧VOUTのアンダーシュートを生じるおそれがある。
【0255】
なお、アクティブクランプ動作時のクランプ電圧Vclpを高めるほど、より早く出力電流IOUTを吸収することができる。しかしながら、出力電圧VOUTのアンダーシュートが生じたときに、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vdsが素子耐圧を超えてしまう懸念があった。
【0256】
そこで、一般には、アクティブクランプ耐量Eacの向上よりもパワーMISFET9の耐圧破壊防止を優先し、ツェナダイオード列261及びダイオード列262の段数を調整することでクランプ電圧Vclpが低めに設定される。
【0257】
具体的には、パワーMISFET9の素子耐圧(最大定格ドレイン電圧VDSS、例えばVDSS=60V)に対して十分なマージンを持つように、低めのクランプ電圧Vclp(例えばVclp=45V)を設定することが多い。
【0258】
なお、上記の問題点は、ハイサイドスイッチICだけでなく、ローサイドスイッチICのアクティブクランプ動作時にも当てはまる(図16を参照)。
【0259】
以下では、上記の考察に鑑み、アクティブクランプ動作時における耐圧破壊の防止と電流能力不足の解消を両立することのできる新規な実施形態を提案する。
【0260】
<第2実施形態>
図17は、第2実施形態に係る半導体装置1を示す図である。本実施形態の半導体装置1は、ドレイン電極11(=電源電極VBB)と、ソース電極12(=出力電極OUT)と、パワーMISFET9と、アクティブクランプ回路26A及び26Bと、ツェナダイオードZD1及びZD2と、ダイオードD1及びD2と、を有する。なお、既出の構成要素については、これまでと同一の符号を付している。
【0261】
また、本図では、説明を簡単とするために、一部の構成要素のみを抽出して示したが、半導体装置1には、基本的に、先出の半導体装置1(図2を参照)と同様の構成要素が含まれていると理解してよい。この点については、先出の第1実施形態と同様である。
【0262】
パワーMISFET9は、ゲート制御信号G1及びG2をそれぞれ受け付ける第1ゲート及び第2ゲートを備えており、第1チャネル領域91及び第2チャネル領域111を個別に制御することができるように構成されたゲート分割型の出力トランジスタである。
【0263】
例えば、パワーMISFET9の第1ゲートによって制御される第1チャネル領域91は、セル領域75に対して第1チャネル割合R1で形成されている。また、パワーMISFET9の第2ゲートによって制御される第2チャネル領域111は、セル領域75に対して第2チャネル割合R2で形成されている。第1チャネル割合R1は、第2チャネル割合R2と同値であってもよいし、或いは、第2チャネル割合R2よりも小さい値であってもよい(例えばR1=12.5%、R2=37.5%)。
【0264】
なお、パワーMISFET9の素子構造については、既に説明した通りである。そのため、重複した説明は省略する。
【0265】
アクティブクランプ回路26A(=第1アクティブクランプ回路に相当)は、パワーMISFET9のドレインとパワーMISFET9の第1ゲートとの間に接続されており、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vdsを第1クランプ電圧VclpA以下(例えばVclpA=50V)に制限する。
【0266】
本図に即して具体的に述べると、アクティブクランプ回路26Aは、mA段のツェナダイオード列26A1(=第1ツェナダイオード列に相当)と、nA段のダイオード列26A2(=第1ダイオード列に相当)と、MISFET26A3(=第1トランジスタに相当)と、を含む。
【0267】
ツェナダイオード列26A1のカソードとMISFET26A3のドレインは、パワーMISFET9のドレインと共に、ドレイン電極11(=電源電圧VBの印加端)に接続されている。ツェナダイオード列26A1のアノードは、ダイオード列26A2のアノードに接続されている。ダイオード列26A2のカソードは、MISFET26A3のゲートに接続されている。MISFET26A3のソース及びバックゲートは、いずれもパワーMISFET9の第1ゲートに接続されている。
【0268】
アクティブクランプ回路26B(=第2アクティブクランプ回路に相当)は、パワーMISFET9のドレインとパワーMISFET9の第2ゲートとの間に接続されており、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vdsを第1クランプ電圧VclpAとは異なる第2クランプ電圧VclpB以下に制限する。なお、第2クランプ電圧VclpBは、第1クランプ電圧VclpAよりも高い値(例えばVclpB=55V)に設定してもよい。
【0269】
本図に即して具体的に述べると、アクティブクランプ回路26Bは、mB段のツェナダイオード列26B1(=第2ツェナダイオード列に相当)と、nB段のダイオード列26B2(=第2ダイオード列に相当)と、MISFET26B3(=第2トランジスタに相当)と、を含む。なお、mB>mAであってもよい。また、nB>nAであってもよい。
【0270】
ツェナダイオード列26B1のカソードとMISFET26B3のドレインは、パワーMISFET9のドレインと共に、ドレイン電極11に接続されている。ツェナダイオード列26B1のアノードは、ダイオード列26B2のアノードに接続されている。ダイオード列26B2のカソードは、MISFET26B3のゲートに接続されている。MISFET26B3のソース及びバックゲートは、いずれもパワーMISFET9の第2ゲートに接続されている。
【0271】
図18は、第2実施形態のアクティブクランプ動作を示す図であり、パワーMISFET9のオフ遷移時における出力電圧VOUTが描写されている。図中の実線は第2実施形態の挙動を示しており、破線は第1実施形態の挙動を示している。
【0272】
パワーMISFET9のオフ遷移時には、誘導性負荷LがパワーMISFET9のオン期間に蓄えたエネルギを放出するまで出力電流IOUTを流し続ける。その結果、出力電圧VOUTは、電源電圧VBから接地電圧GNDよりも低い負電圧まで急低下する。
【0273】
このとき、出力電圧VOUTは、基本的に、アクティブクランプ回路26Aの働きにより、電源電圧VBよりも第1クランプ電圧VclpA(例えばVclpA=50V)だけ低い第1下限電圧VB-VclpA以上に制限される。
【0274】
なお、先にも述べた通り、第2クランプ電圧VclpBは、第1クランプ電圧VclpAよりも高い値(例えばVclpB=55V)に設定されている。従って、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vds(=VB-VOUT)が第1クランプ電圧VclpA以下であるときには、特段の制御を要することなく、アクティブクランプ回路26Bが非動作状態となる。
【0275】
ただし、アクティブクランプ動作時に吸収すべき出力電流IOUTが大きく、第1MISFET56の電流能力が不足した場合には、出力電流IOUTを吸収し切れずに出力電圧VOUTのアンダーシュートを生じるおそれがある(図中の破線を参照)。
【0276】
そこで、本実施形態の半導体装置1では、出力電圧VOUTのアンダーシュートが生じてパワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vdsが第1クランプ電圧VclpAを上回った場合にアクティブクランプ回路26Bが動作状態となる。
【0277】
このとき、出力電圧VOUTは、アクティブクランプ回路26A及び26B双方の働きにより、電源電圧VBよりも第2クランプ電圧VclpB(例えばVclpA=55V)だけ低い第2下限電圧VB-VclpB以上に制限される。なお、第2クランプ電圧VclpBは、パワーMISFET9の素子耐圧(最大定格ドレイン電圧VDSS、例えばVDSS=60V)よりも低い値に設定しておくとよい。
【0278】
その後、誘導性負荷Lに蓄えられたエネルギの放出に伴い、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vds(=VB-VOUT)が第1クランプ電圧VclpA以下に戻ると、アクティブクランプ回路26Bが再び非動作状態となる。
【0279】
このように、本実施形態の半導体装置1では、基本的にアクティブクランプ回路26Aを用いて第1Half-ON状態でのアクティブクランプ動作を行うことができる。従って、パワーMISFET9での発熱を分散しつつ、アクティブクランプ耐量Eacを高めることができる。この点については、第1実施形態(図11)と変わらない。
【0280】
さらに、本実施形態の半導体装置1であれば、第1Half-ON状態でのアクティブクランプ動作中にパワーMISFET9の電流能力が不足して出力電圧VOUTのアンダーシュートが生じた場合にアクティブクランプ回路26Bが動作状態となる。従って、パワーMISFET9の第1チャネル領域91だけでなく第2チャネル領域111も利用して出力電流IOUTを吸収することができるので、パワーMISFET9の電流能力不足を解消することができる。その結果、出力電圧VOUTのアンダーシュートを抑制して、パワーMISFET9の耐圧破壊を防止することが可能となる。
【0281】
<高温時のアクティブクランプ動作に関する考察>
先出のクランプ電圧Vclpは、電源電圧VBの最大定格値(例えば40V)よりも高く、かつ、パワーMISFET9の素子耐圧(例えば60V)よりも低い電圧値に設定しておく必要がある。
【0282】
ところで、IPDを含むパワーICには、インダクタンス(例えば5mH)を持つ経路を介して出力端子を天絡または地絡した状態で、パワーICのオン/オフを複数サイクル(グレードに応じて300サイクル~100万サイクル)に亘って繰り返す負荷ショート信頼性試験(AEC-Q100-012)が課せられる。
【0283】
ここで、パワーICの過電流制限値が数十A~100Aに設定されていた場合には、数百W~1000Wもの大電力が消費される。そのため、パワーICでは、過熱を検出した状態(高温状態)でオン/オフが繰り返される。
【0284】
このような高温時には、熱の影響により半導体装置1のアクティブクランプ耐量Eacが低下する。そのため、パワーMISFET9の熱破壊を防止するためには、クランプ電圧Vclpを引き下げることが望ましい。
【0285】
以下では、上記の考察に鑑み、高温時に適切なアクティブクランプ動作を行うことのできる新規な実施形態を提案する。
【0286】
<第3実施形態>
図19は、第3実施形態に係る半導体装置1を示す図である。本実施形態の半導体装置1は、ドレイン電極11(=第1端子に相当)と、ソース電極12(=第2端子に相当)と、パワーMISFET9と、アクティブクランプ回路26C及び26Dと、切替回路SWとを備える。なお、既出の構成要素については、これまでと同一の符号を付している。
【0287】
また、本図では、説明を簡単とするために、一部の構成要素のみを抽出して示したが、半導体装置1には、基本的に、先出の半導体装置1(図2を参照)と同様の構成要素が含まれていると理解してよい。この点については、先出の第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0288】
パワーMISFET9は、ゲート制御信号G1及びG2をそれぞれ受け付ける第1ゲート及び第2ゲートを備えており、第1チャネル領域91及び第2チャネル領域111を個別に制御することができるように構成されたゲート分割型の出力トランジスタである。
【0289】
本図の吹き出しで示したように、パワーMISFET9は、ドレイン電極11とソース電極12との間に並列接続された第1MISFET56及び第2MISFET57として等価的に表すことができる。
【0290】
なお、パワーMISFET9の素子構造については、既に説明した通りである。そのため、重複した説明は省略する。
【0291】
アクティブクランプ回路26C(=第1アクティブクランプ回路に相当)は、パワーMISFET9のドレインとパワーMISFET9の第1ゲートとの間に接続されており、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vdsを第1クランプ電圧VclpC以下に制限する。なお、アクティブクランプ回路26Cは、第1実施形態(図9図11)のアクティブクランプ回路26として理解され得る。
【0292】
アクティブクランプ回路26D(=第2アクティブクランプ回路に相当)は、パワーMISFET9のドレインとパワーMISFET9の第2ゲートとの間に接続されており、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vdsを第1クランプ電圧VclpCとは異なる第2クランプ電圧VclpD以下に制限する。
【0293】
第1クランプ電圧VclpCは、第2クランプ電圧VclpDよりも高い電圧値に設定してもよい。具体的に述べると、第1クランプ電圧VclpC及び第2クランプ電圧VclpDは、電源電圧VBの定常値をVB1として最大定格値をVB2としたとき、VB1<VclpD<VB2<VclpCを満たすように設定してもよい。
【0294】
なお、第1クランプ電圧VclpC及び第2クランプ電圧VclpDは、それぞれ、先出の第2実施形態(図17)と同じく、ツェナダイオード列の段数(例えば7~8段)又はダイオード列の段数(例えば2~3段)で調整してもよい。
【0295】
また、第2クランプ電圧VclpDは、電源電圧VBを基準として生成するのではなく接地電圧GNDを基準として生成してもよい。
【0296】
切替回路SWは、半導体装置1の温度情報(本図では過熱保護回路36から出力される過熱保護信号S36)に応じてアクティブクランプ回路26C及び26Dそれぞれの有効/無効を排他的に切り替えるように構成された機能ブロックであり、トランジスタM1~M3(本図ではNチャネル型MISFET)と、トランジスタM4(本図ではPチャネル型MISFET)と、インバータINV1と、を含む。
【0297】
トランジスタM1及びM2それぞれのゲートは、いずれも過熱保護信号S36の印加端に接続されている。トランジスタM1のドレインとトランジスタM3のゲートは、いずれも内部ノード電圧Vx(図11を参照)の印加端に接続されている。トランジスタM2のドレインは、パワーMISFET9の第1ゲート(=ゲート制御信号G1の印加端)に接続されている。トランジスタM3のドレインは、パワーMISFET9の第2ゲート(=ゲート制御信号G2の印加端)に接続されている。トランジスタM1~M3それぞれのソースは、いずれもソース電極12に接続されている。
【0298】
インバータINV1の入力端は、過熱保護信号S36の印加端に接続されている。インバータINV1の出力端(=反転過熱保護信号S36Bの印加端)は、トランジスタM4のゲートに接続されている。トランジスタM4のソースは、ドレイン電極11に接続されている。トランジスタM4のドレインは、第2アクティブクランプ回路26D(具体的にはツェナダイオード列のカソード)に接続されている。
【0299】
なお、過熱保護信号S36は、先出の過熱保護回路36で生成される論理信号である。過熱保護信号S36は、例えば、パワーMISFET9の素子温度Tjが閾値(例えば175℃)よりも低いときにローレベルとなり、パワーMISFET9の素子温度Tjが閾値よりも高いときにハイレベルとなる。
【0300】
本構成例の切替回路SWにおいて、過熱保護信号S36がローレベルであるときには、トランジスタM1、M2及びM4がオフ状態となり、トランジスタM3が内部ノード電圧Vxに応じてオン/オフされる状態となる。この状態は、アクティブクランプ回路26Cを有効としてアクティブクランプ回路26Dを無効とした状態に相当する。一方、過熱保護信号S36がハイレベルであるときには、トランジスタM1、M2及びM4がオン状態となり、トランジスタM3がオフ状態となる。この状態は、アクティブクランプ回路26Cを無効としてアクティブクランプ回路26Dを有効とした状態に相当する。
【0301】
ところで、アクティブクランプ動作が発動するのは、外部制御信号IN(延いてはイネーブル信号EN)がローレベルに立ち下げられた後なので、半導体装置1全体がディセーブル状態となっている。そのため、アクティブクランプ動作中に過熱保護信号S36を生成するためには、過熱保護回路36の回路構成を工夫する必要がある。
【0302】
図20は、過熱保護回路36の一構成例を示す図である。本構成例の過熱保護回路36は、温度監視制御部361と、内部電源部362と、温度検出部363と、バッファ364と、ラッチ365と、レベルシフタ366と、を含む。
【0303】
温度監視制御部361は、パワーMISFET9のドレイン・ソース間電圧Vds(=VB-VOUT)を監視してアクティブクランプ動作中にパワーMISFET9がオン状態であること(フルオフしていないこと)を示すイネーブル信号ENを生成する。イネーブル信号ENは、例えば、内部電源部362を駆動状態とするときにハイレベルとなり、内部電源部362を非駆動状態とするときにローレベルとなる。
【0304】
内部電源部362は、イネーブル信号ENに応じて温度検出部363を駆動するための駆動電圧Vd及び駆動電流Idを生成する。具体的に述べると、内部電源部362は、イネーブル信号ENがハイレベルであるときに駆動電圧Vd及び駆動電流Idそれぞれを生成し、イネーブル信号ENがローレベルであるときに駆動電圧Vd及び駆動電流Idそれぞれの生成を停止する。
【0305】
温度検出部363は、駆動電圧Vd及び駆動電流Idの供給を受けて動作し、パワーMISFET9の素子温度Tj(ジャンクション温度)に応じた温度検出信号VTjを生成する。例えば、温度検出信号VTjは、パワーMISFET9の素子温度Tjが低いほど低くなり、パワーMISFET9の素子温度Tjが高いほど高くなる。
【0306】
バッファ364は、温度検出信号VTjを受けてセット信号SSを出力する。なお、セット信号SSは、温度検出信号VTjが閾値よりも低いときにローレベルとなり、温度検出信号VTjが閾値よりも高いときにハイレベルとなる。
【0307】
ラッチ365は、セット入力端(S)に入力されるセット信号SSと、リセット入力端(R)に入力されるリセット信号SRに応じて、出力端(Q)から出力される出力信号SQの論理レベルを切り替えるRSフリップフロップである。例えば、出力信号SQは、セット信号SSのパルスエッジに同期してハイレベルにセットされ、リセット信号SRのパルスエッジに同期してローレベルにリセットされる。なお、ラッチ365は、リセット信号SRとして、低電圧誤動作抑制回路37から出力されるUVLO[under voltage lock-out]信号を受けてもよい。
【0308】
レベルシフタ366は、出力信号SQをレベルシフトすることにより、切替回路SWの入力ダイナミックレンジに適合した過熱保護信号S36を生成する。
【0309】
本構成例の過熱保護回路36であれば、アクティブクランプ動作中に温度検出部363を駆動することができるので、過熱保護信号S36を生成することが可能となる。
【0310】
図21は、第3実施形態のアクティブクランプ動作を示す図であり、出力電圧VOUT(実線)、ゲート制御信号G1(一点鎖線)、及び、ゲート制御信号G2(小破線)が描写されている。なお、本図ではソース電極12(=出力電極OUT)と接地端との間に誘導性負荷Lが接続されているものとする。
【0311】
パワーMISFET9のオフ遷移時には、誘導性負荷LがパワーMISFET9のオン期間に蓄えたエネルギを放出するまで出力電流IOUTを流し続ける。その結果、出力電圧VOUTは、接地電圧GNDよりも低い負電圧まで急低下する。
【0312】
ここで、過熱保護信号S36がローレベル(=過熱未検出時の論理レベル)である場合には、切替回路SWの働きにより、アクティブクランプ回路26Cが有効とされて、アクティブクランプ回路26Dが無効とされる。
【0313】
従って、出力電圧VOUTが電源電圧VBよりも第1クランプ電圧VclpCだけ低い下限電圧VB-VclpCまで下がると、アクティブクランプ回路26Cの働きにより、第1MISFET56がオンする(フルオフされない)ので、出力電流IOUTが第1MISFET56を介して放電される。従って、出力電圧VOUTは、下限電圧VB-VclpC以上に制限される。
【0314】
また、第2MISFET57は、トランジスタM3の働きにより、アクティブクランプ回路26Cが動作する前にオフ状態となる(G2=VOUT)。この状態は、パワーMISFET9の第1Half-ON状態に相当する。
【0315】
このように、Full-ON状態から第1Half-ON状態への切替を行うことにより、アクティブクランプ動作時には、特性チャネル割合RCが通常動作時と比べて相対的に減少する。これにより、誘導性負荷Lの逆起電力に起因する急激な温度上昇を抑制できるので、アクティブクランプ耐量Eacの向上を図ることができる。
【0316】
上記のアクティブクランプ回路26Cによるアクティブクランプ動作については、これまでに説明してきた通りである。
【0317】
一方、半導体装置1の発熱が大きくなり、過熱保護信号S36がハイレベル(=過熱検出時の論理レベル)に立ち上がると、切替回路SWの働きにより、アクティブクランプ回路26Cが無効とされて、アクティブクランプ回路26Dが有効とされる。
【0318】
従って、出力電圧VOUTは、アクティブクランプ回路26Dの働きにより、先述の下限電圧VB-VclpCよりも高い下限電圧VB-VclpD以上に制限される。
【0319】
このように、半導体装置1の温度情報(例えば過熱保護信号S36)に応じてアクティブクランプ回路26C及び26Dそれぞれの有効/無効を排他的に切り替える構成であれば、半導体装置1のアクティブクランプ耐量Eacが低下する高温時にアクティブクランプ電圧を引き下げることができる(VclpC→VclpD)。従って、パワーMISFET9の熱破壊を防止することが可能となる。
【0320】
<第4実施形態>
図22は、第4実施形態に係る半導体装置1を示す図である。本実施形態の半導体装置1は、先出の第3実施形態(図19)を基本としつつ、温度情報を得るための手段として温度検出素子ThD1及びThD2を備えている。また、温度検出素子ThD1及びThD2それぞれの導入に伴い、切替回路SWの内部構成にも変更が加えられている。
【0321】
温度検出素子ThD1は、温度情報の一つとして第1MISFET56の素子温度Tj1を検出する。素子温度Tj1は、過熱保護信号TSD1の生成処理に用いられる。例えば、過熱保護信号TSD1は、素子温度Tj1が閾値温度Tth1よりも低いときにローレベルとなり、素子温度Tj1が閾値温度Tth1よりも高いときにハイレベルとなる。
【0322】
温度検出素子ThD2は、温度情報の一つとして第2MISFET57の素子温度Tj2を検出する。素子温度Tj2は、過熱保護信号TSD2の生成処理に用いられる。例えば、過熱保護信号TSD2は、素子温度Tj2が閾値温度Tth2よりも低いときにローレベルとなり、素子温度Tj2が閾値温度Tth2よりも高いときにハイレベルとなる。
【0323】
なお、温度検出素子ThD1及びThD2としては、例えば、順方向降下電圧が負の温度特性を持つ温度検出ダイオードを用いてもよい。
【0324】
図23は、温度検出素子ThD1及びThD2の配置例を示す図である。本実施形態の半導体装置1において、第1MISFET56及び第2MISFET57は、先出の図5などで示したデバイス構造と異なり、それぞれのチャネル領域(言い換えれば発熱領域)が明確に分離されるように形成されている。
【0325】
さらに言えば、本実施形態の半導体装置1において、第1MISFET56及び第2MISFET57は、必ずしもゲート分割型のパワーMISFET9として実装する必要はなく、別個のパワーMISFETとして独立に形成されていてもよい。
【0326】
このように、第1MISFET56及び第2MISFET57が個別に形成されている場合には、それぞれの素子形成領域の中央付近に温度検出素子ThD1及びThD2を各個配置すればよい。
【0327】
図22に戻り、第4実施形態の半導体装置1について説明を続ける。切替回路SWは、過熱保護信号TSD1及びTSD2に応じてアクティブクランプ回路26C及び26Dそれぞれの有効/無効を排他的に切り替えるように構成された機能ブロックであり、トランジスタM5及びM6(例えばNチャネル型MISFET)と、ロジックLGCを含む。
【0328】
トランジスタM5のドレインは、ゲート制御信号G1の印加端に接続されている。トランジスタM5のソースは、ソース電極12に接続されている。トランジスタM5のゲートは、過熱保護信号TSD1の印加端に接続されている。従って、トランジスタM5は、過熱保護信号TSD1がローレベルであるときにオフ状態となり、過熱保護信号TSD1がハイレベルであるときにオン状態となる。
【0329】
トランジスタM6のドレインは、ゲート制御信号G2の印加端に接続されている。トランジスタM6のソースは、ソース電極12に接続されている。トランジスタM6のゲートは、過熱保護信号TSD2の印加端に接続されている。従って、トランジスタM6は、過熱保護信号TSD2がローレベルであるときにオフ状態となり、過熱保護信号TSD2がハイレベルであるときにオン状態となる。
【0330】
ロジックLGCは、過熱保護信号TSD1及びTSD2を受けてゲート制御信号G1及びG2を制御するように構成された機能ブロックであり、インバータINV2及びINV3と、論理積ゲートAND1及びAND2と、否定論理和ゲートNOR1と、論理和ゲートOR1と、を含む。
【0331】
インバータINV2は、過熱保護信号TSD1の論理レベルを反転させて反転過熱保護信号TSD1Bを生成する。従って、反転過熱保護信号TSD1Bは、過熱保護信号TSD1がローレベルであるときにハイレベルとなり、過熱保護信号TSD1がハイレベルであるときにローレベルとなる。
【0332】
インバータINV3は、過熱保護信号TSD2の論理レベルを反転させて反転過熱保護信号TSD2Bを生成する。従って、反転過熱保護信号TSD2Bは、過熱保護信号TSD2がローレベルであるときにハイレベルとなり、過熱保護信号TSD2がハイレベルであるときにローレベルとなる。
【0333】
論理積ゲートAND1は、反転過熱保護信号TSD1Bと過熱保護信号TSD2との論理積信号Sbを生成する。従って、論理積信号Sbは、反転過熱保護信号TSD1B及び過熱保護信号TSD2の少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなり、反転過熱保護信号TSD1B及び過熱保護信号TSD2の双方がハイレベルであるときにハイレベルとなる。
【0334】
論理積ゲートAND2は、過熱保護信号TSD1と反転過熱保護信号TSD2Bとの論理積信号Sdを生成する。従って、論理積信号Sdは、過熱保護信号TSD1及び反転過熱保護信号TSD2Bの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなり、過熱保護信号TSD1及び反転過熱保護信号TSD2Bの双方がハイレベルであるときにハイレベルとなる。
【0335】
否定論理和ゲートNOR1は、過熱保護信号TSD1と過熱保護信号TSD2との否定論理和信号Saを生成する。従って、否定論理和信号Saは、過熱保護信号TSD1及びTSD2の少なくとも一方がハイレベルであるときにローレベルとなり、過熱保護信号TSD1及びTSD2の双方がローレベルであるときにハイレベルとなる。
【0336】
論理和ゲートOR1は、否定論理和信号Saと論理積信号Sbとの論理和信号Scを生成する。従って、論理和信号Scは、否定論理和信号Sa及び論理積信号Sbの少なくとも一方がハイレベルであるときにハイレベルとなり、否定論理和信号Sa及び論理積信号Sbの双方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0337】
なお、論理和信号Scは、ゲート制御信号G1の印加端に出力される。また、論理積信号Sdは、ゲート制御信号G2の印加端に出力される。
【0338】
図24は、過熱保護信号TSD1及びTSD2とゲート制御信号G1及びG2との関係を示す図(真理値表)である。
【0339】
過熱保護信号TSD1及びTSD2がいずれもローレベル(0)であるときには、ゲート制御信号G1がハイレベル(1)となり、ゲート制御信号G2がローレベル(0)となる。言い換えると、切替回路SWは、素子温度Tj1が閾値温度Tth1よりも低く、素子温度Tj2が閾値温度Tth2よりも低いときには、第2MISFET57のゲート・ソース間をショートすることにより、アクティブクランプ回路26Cを有効とし、アクティブクランプ回路26Dを無効とする。
【0340】
過熱保護信号TSD1がローレベル(0)であって、過熱保護信号TSD2がハイレベル(1)であるときには、ゲート制御信号G1がハイレベル(1)となり、ゲート制御信号G2がローレベル(0)となる。言い換えると、切替回路SWは、素子温度Tj1が閾値温度Tth1よりも低く、素子温度Tj2が閾値温度Tth2よりも高いときには、第2MISFET57のゲート・ソース間をショートすることにより、アクティブクランプ回路26Cを有効とし、アクティブクランプ回路26Dを無効とする。
【0341】
過熱保護信号TSD1がハイレベル(1)であって、過熱保護信号TSD2がローレベル(0)であるときには、ゲート制御信号G1がローレベル(0)となり、ゲート制御信号G2がハイレベル(1)となる。言い換えると、切替回路SWは、素子温度Tj1が閾値温度Tth1よりも高く、素子温度Tj2が閾値温度Tth2よりも低いときには、第1MISFET56のゲート・ソース間をショートすることにより、アクティブクランプ回路26Cを無効とし、アクティブクランプ回路26Dを有効とする。
【0342】
過熱保護信号TSD1及びTSD2がいずれもハイレベル(1)であるときには、ゲート制御信号G1及びG2がいずれもローレベル(0)となる。言い換えると、切替回路SWは、素子温度Tj1が閾値温度Tth1よりも高く、素子温度Tj2が閾値温度Tth2よりも高いときには、第1MISFET56及び第2MISFET57それぞれのゲート・ソース間をいずれもショートすることにより、アクティブクランプ回路26C及び26Dをいずれも無効とする。
【0343】
図25は、第4実施形態のアクティブクランプ動作を示す図であり、出力電圧VOUTの挙動が描写されている。本実施形態のアクティブクランプ動作によれば、2つの温度検出素子ThD1及びThD2を用いてパワーMISFET9の第1ゲートと第2ゲートが交互に制御される。
【0344】
例えば、第1MISFET56及び第2MISFET57がいずれも低温状態(TSD1=L、TSD2=L)であるときには、第2MISFET57がオフ状態となり、第1MISFET56によるアクティブクランプ動作が行われる。
【0345】
第1MISFET56が高温状態(TSD1=H、TSD2=L)になると、第1MISFET56がオフ状態となり、第2MISFET57によるアクティブクランプ動作に切り替わる。
【0346】
第1MISFET56が放熱されて低温状態に戻ると、再び第2MISFET57がオフ状態となり、第1MISFET56によるアクティブクランプ動作が再開される。
【0347】
このように、第1MISFET56及び第2MISFET57が排他的に駆動されることで、一方の素子によるエネルギー吸収(=アクティブクランプ動作)と、他方の素子の放熱が交互に繰り返される。従って、パワーMISFET9の熱破壊を招くことなく、アクティブクランプ耐量Eacを向上することが可能となる。
【0348】
なお、本実施形態のアクティブクランプ動作は、例えば、小電流かつ大容量のアプリケーションに有効である。
【0349】
なお、上記実施形態では、ハイサイドスイッチICへの適用例を挙げたが、ローサイドスイッチICにも上記実施形態と同様の回路構成を適用することが可能である。
【0350】
<車両への適用>
図26は、車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器を搭載している。
【0351】
車両Xには、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle]、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0352】
なお、先に説明した半導体装置1は、車両Xに搭載される電子機器のいずれにも組み込むことが可能である。
【0353】
<総括>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0354】
例えば、本明細書中に開示されている半導体装置は、第1端子と第2端子との間に接続されるように構成された第1出力トランジスタ及び第2出力トランジスタと、前記第1出力トランジスタの第1ゲートに接続されて前記第1端子と前記第2端子との間に現れる端子間電圧を第1クランプ電圧以下に制限するように構成された第1アクティブクランプ回路と、前記第2出力トランジスタの第2ゲートに接続されて前記端子間電圧を前記第1クランプ電圧とは異なる第2クランプ電圧以下に制限するように構成された第2アクティブクランプ回路と、温度情報に応じて前記第1アクティブクランプ回路及び前記第2アクティブクランプ回路それぞれの有効/無効を排他的に切り替えるように構成された切替回路と、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0355】
なお、上記第1の構成による半導体装置において、前記第1クランプ電圧は、前記第2クランプ電圧よりも高い構成(第2の構成)にしてもよい。
【0356】
また、上記第2の構成による半導体装置において、前記切替回路は、前記温度情報として検出される素子温度が閾値よりも低いときに前記第1アクティブクランプ回路を有効として前記第2アクティブクランプ回路を無効とし、前記素子温度が閾値よりも高いときに前記第1アクティブクランプ回路を無効として前記第2アクティブクランプ回路を有効とする構成(第3の構成)にしてもよい。
【0357】
また、上記第2の構成による半導体装置は、前記温度情報の一つとして前記第1出力トランジスタの第1素子温度を検出するように構成された第1温度検出素子と、前記温度情報の一つとして前記第2出力トランジスタの第2素子温度を検出するように構成された第2温度検出素子とをさらに備え、前記切替回路は、前記第1素子温度が第1閾値よりも低く前記第2素子温度が第2閾値よりも高いときには前記第1アクティブクランプ回路を有効として前記第2アクティブクランプ回路を無効とし、前記第1素子温度が前記第1閾値よりも高く前記第2素子温度が前記第2閾値よりも低いときには前記第1アクティブクランプ回路を無効として前記第2アクティブクランプ回路を有効とする構成(第4の構成)にしてもよい。
【0358】
また、上記第1~第4いずれかの構成による半導体装置において、前記第1出力トランジスタ及び前記第2出力トランジスタは、少なくとも前記第1ゲート及び前記第2ゲートを備えており複数のチャネル領域を個別に制御することができるように構成されたゲート分割型の出力トランジスタとして形成される構成(第5の構成)にしてもよい。
【0359】
また、上記第5の構成による半導体装置において、前記第1ゲートにより制御される第1チャネル領域、及び、前記第2ゲートにより制御される第2チャネル領域は、それぞれセル領域に対して第1チャネル割合及び第2チャネル割合で形成されている構成(第6の構成)にしてもよい。
【0360】
また、上記第1~第6いずれかの構成による半導体装置において、前記第1アクティブクランプ回路は、カソードが前記第1端子に接続されるように構成された第1ツェナダイオード列と、アノードが前記第1ツェナダイオード列のアノードに接続されるように構成された第1ダイオード列と、ドレインが前記第1端子に接続されてソースが前記第1出力トランジスタの前記第1ゲートに接続されてゲートが前記第1ダイオード列のカソードに接続されるように構成された第1トランジスタと、を含み、前記第2アクティブクランプ回路は、カソードが前記第1端子に接続されるように構成された第2ツェナダイオード列と、アノードが前記第2ツェナダイオード列のアノードに接続されるように構成された第2ダイオード列と、ドレインが前記第1端子に接続されてソースが前記第2出力トランジスタの前記第2ゲートに接続されてゲートが前記第2ダイオード列のカソードに接続されるように構成された第2トランジスタと、を含む構成(第7の構成)にしてもよい。
【0361】
また、例えば、本明細書中に開示されている電子機器は、上記第1~第7いずれかの構成による半導体装置と、前記半導体装置に接続される負荷とを備える構成(第8の構成)とされている。
【0362】
なお、上記第8の構成による電子機器において、前記負荷は誘導性負荷である構成(第9の構成)にしてもよい。
【0363】
また、例えば、本明細書中に開示されている車両は、上記第8又は第9の構成による電子機器を備える構成(第10の構成)とされている。
【0364】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0365】
1 半導体装置(ハイサイドスイッチIC)
2 半導体層
3 第1主面
4 第2主面
5A、5B、5C、5D 側面
6 出力領域
7 入力領域
8 領域分離構造
9 パワーMISFET
10 コントロールIC
11 ドレイン電極(電源電極)
12 ソース電極(出力電極)
13 入力電極
14 基準電圧電極
15 ENABLE電極
16 SENSE電極
17 ゲート制御配線
17A 第1ゲート制御配線
17B 第2ゲート制御配線
17C 第3ゲート制御配線
21 センサMISFET
22 入力回路
23 電流・電圧制御回路
24 保護回路
25 ゲート制御回路
251~254 電流源
255 コントローラ
256 MISFET
26 アクティブクランプ回路
261 ツェナダイオード列
262 ダイオード列
263 MISFET
26A、26B、26C、26D アクティブクランプ回路
26A1、26B1 ツェナダイオード列
26A2、26B2 ダイオード列
26A3、26B3 MISFET
27 電流検出回路
28 電源逆接続保護回路
29 異常検出回路
30 駆動電圧生成回路
31 第1定電圧生成回路
32 第2定電圧生成回路
33 基準電圧・基準電流生成回路
34 過電流保護回路
35 負荷オープン検出回路
36 過熱保護回路
361 温度監視制御部
362 内部電源部
363 温度検出部
364 バッファ
365 ラッチ
366 レベルシフタ
37 低電圧誤動作抑制回路
38 発振回路
39 チャージポンプ回路
40 駆動信号出力回路
41 第1マルチプレクサ回路
42 第2マルチプレクサ回路
51 半導体基板
52 エピタキシャル層
53 ドレイン領域
54 ドリフト領域
55 ボディ領域
56 第1MISFET
57 第2MISFET
58 第1FET構造
60 第1トレンチゲート構造
61 第1側壁
62 第2側壁
63 底壁
68 第2FET構造
70 第2トレンチゲート構造
71 第1側壁
72 第2側壁
73 底壁
75 セル領域
81 第1ゲートトレンチ
82 第1絶縁層
83 第1電極
84 第1底側絶縁層
85 第1開口側絶縁層
86 第1底側電極
87 第1開口側電極
88 第1中間絶縁層
91 第1チャネル領域
92 第1ソース領域
93 第1コンタクト領域
101 第2ゲートトレンチ
102 第2絶縁層
103 第2電極
104 第2底側絶縁層
105 第2開口側絶縁層
106 第2底側電極
107 第2開口側電極
108 第2中間絶縁層
111 第2チャネル領域
112 第2ソース領域
113 第2コンタクト領域
120 トレンチコンタクト構造
121 第1側壁
122 第2側壁
123 底壁123
131 コンタクトトレンチ
132 コンタクト絶縁層
132A 引き出し絶縁層
133 コンタクト電極
133A 引き出し電極
AND1、AND2 論理積ゲート
D pn接合ダイオード
D1、D2 ダイオード
DN1 トランジスタ(デプレッションNチャネル型MISFET)
DZ ツェナダイオード
INV1、INV2、INV3 インバータ
L 誘導性負荷
LGC ロジック
M1、M2、M3 トランジスタ(Nチャネル型MISFET)
M4 トランジスタ(Pチャネル型MISFET)
M5、M6 トランジスタ(Nチャネル型MISFET)
NOR1 否定論理和ゲート
OR1 論理和ゲート
SW 切替回路
ThD1、ThD2 温度検出素子
X 車両
ZD1~ZD3 ツェナダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26