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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173655
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】燃料タンク固定装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/07 20060101AFI20231130BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60K15/07
F17C13/08 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086073
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本村 浩平
(72)【発明者】
【氏名】吉房 敬二
【テーマコード(参考)】
3D038
3E172
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CA20
3D038CD09
3E172AA02
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD10
3E172DA90
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】搭載対象に対する燃料タンクの固定を適切に実施できる。燃料タンク固定装置を提供すること。
【解決手段】燃料タンク固定装置は、移動部材70と、移動部材70に設けられた弾性部材62と、ボルト63を含むとともに、移動部材70の移動量を調整可能とした調整機構90と、ボルト63が挿通される挿通孔52が形成されたフレーム50と、を含む。移動部材70は、ボルト63の先端面63bが挿入される挿入穴H73を区画するとともに、先端面63bを当接可能とした底面73aを含む窪み部73を有している。調整機構90は、ボルト63により移動部材70を燃料タンクに接近させて、且つ弾性部材62を燃料タンクに押し付けることにより燃料電池が搭載される搭載対象に対して燃料タンクを固定する。窪み部73は、挿入穴の入口73dから底面73aに向かうほど挿入穴の中心軸線mに向かって延びるガイド面73cを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池で用いられる燃料ガスを貯留する燃料タンクに接離可能とした移動部材と、
前記燃料タンクと対向するように前記移動部材に設けられた弾性部材と、
柱状の調整部材を含むとともに、前記移動部材の移動量を調整可能とした調整機構と、
前記燃料タンクに対向する位置に設けられており、前記移動部材が対向する位置に前記調整部材が挿通される挿通孔が形成されたフレームと、を含み、
前記移動部材は、前記調整部材の先端面が挿入される挿入穴を区画するとともに、前記先端面を当接可能とした底面を含む窪み部を有し、
前記調整機構は、前記調整部材により前記移動部材を前記燃料タンクに接近させて、且つ前記弾性部材を前記燃料タンクに押し付けることにより前記燃料電池が搭載される搭載対象に対して前記燃料タンクを固定する燃料タンク固定装置であって、
前記窪み部は、前記挿入穴の入口から前記底面に向かうほど前記挿入穴の中心軸線に向かって延びるガイド面を有していることを特徴とする燃料タンク固定装置。
【請求項2】
前記ガイド面は、環状である、請求項1に記載の燃料タンク固定装置。
【請求項3】
前記ガイド面は、傾斜面である、請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク固定装置は、移動部材と、弾性部材と、調整機構と、フレームと、を含む。移動部材は、燃料電池で用いられる燃料ガスを貯留する燃料タンクに接離可能である。弾性部材は、燃料タンクに対向するように移動部材に設けられている。調整機構は、柱状の調整部材を含む。調整機構は、移動部材の移動量を調整可能である。フレームは、燃料タンクに対向する位置に設けられている。フレームには、移動部材が対向する位置に挿通孔が形成されている。挿通孔には、調整部材が挿通される。
【0003】
移動部材は、調整部材の先端面が挿入される挿入穴を区画するとともに、調整部材の先端面を当接可能とした底面を含む窪み部を有している。調整機構は、調整部材により移動部材を燃料タンクに接近させて、且つ弾性部材を燃料タンクに押し付けることにより燃料電池が搭載される搭載対象に対して燃料タンクが固定する。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の燃料タンク固定装置において、フレームに形成された挿通孔としてのネジ孔に、調整部材としての調整ボルトが螺合される。調整ボルトの先端面は、移動部材に形成された窪み部に挿入される。そして、調整ボルトが回転することにより、移動部材が弾性部材としてのゴム板とともに燃料タンクに向けて押し込まれる。調整機構としての調整ボルト及びネジ孔により、ゴム板が燃料タンクに押し付けられる。よって、燃料タンクが搭載対象としての車両に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-40478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、移動部材の燃料タンクに対する姿勢によっては、移動部材の窪み部と、フレームに形成された挿通孔との位置がずれる場合がある。この場合、調整部材の先端面は、移動部材の窪み部に挿入されていない状態で移動部材に当接することが考えられる。すると、調整部材により移動部材とともに弾性部材を燃料タンクに向けて押し込んだとき、調整部材が移動部材を押圧する力が十分に弾性部材に伝わらない。このため、弾性部材が燃料タンクに対して十分に押し付けられない虞がある。ひいては、搭載対象に対する燃料タンクの固定が適切に実施できない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する燃料タンク固定装置は、燃料電池で用いられる燃料ガスを貯留する燃料タンクに接離可能とした移動部材と、前記燃料タンクと対向するように前記移動部材に設けられた弾性部材と、柱状の調整部材を含むとともに、前記移動部材の移動量を調整可能とした調整機構と、前記燃料タンクに対向する位置に設けられており、前記移動部材が対向する位置に前記調整部材が挿通される挿通孔が形成されたフレームと、を含み、前記移動部材は、前記調整部材の先端面が挿入される挿入穴を区画するとともに、前記先端面を当接可能とした底面を含む窪み部を有し、前記調整機構は、前記調整部材により前記移動部材を前記燃料タンクに接近させて、且つ前記弾性部材を前記燃料タンクに押し付けることにより前記燃料電池が搭載される搭載対象に対して前記燃料タンクを固定する燃料タンク固定装置であって、前記窪み部は、前記挿入穴の入口から前記底面に向かうほど前記挿入穴の中心軸線に向かって延びるガイド面を有している。
【0008】
上記構成によれば、移動部材の燃料タンクに対する姿勢によって、移動部材の窪み部の位置と、フレームに形成された挿通孔の位置とがずれた場合を想定する。調整部材により移動部材を燃料タンクに接近させるとき、調整部材の先端縁が窪み部のガイド面に当接すると、調整部材の先端縁がガイド面を滑る。すると、調整部材の先端面は、窪み部の底面に向かうように案内される。そして、調整部材の先端面が窪み部の底面に当接する。すると、調整部材の先端面に沿って移動部材の姿勢が矯正される。よって、調整部材が移動部材を押圧する力が十分に弾性部材に伝わるため、弾性部材が燃料タンクに対して十分に押し付けられる。したがって、移動部材の窪み部の位置と、フレームに形成された挿通孔の位置とがずれた場合であっても、搭載対象に対する燃料タンクの固定を適切に実施できる。
【0009】
上記の燃料タンク固定装置において、前記ガイド面は、環状であるとよい。
移動部材の窪み部の位置と、フレームに形成された挿通孔の位置とのずれは、燃料タンクを搭載対象に固定する時々で変わる。上記構成によれば、ガイド面が環状であるため、移動部材の窪み部の位置と、フレームに形成された挿通孔の位置とのずれ方によらず、ガイド面により調整部材の先端面を窪み部の底面に案内できる。
【0010】
上記の燃料タンク固定装置において、前記ガイド面は、傾斜面であるとよい。
上記構成によれば、ガイド面を簡易的な形状としつつ、調整部材の先端縁をガイド面に引っかかりにくくできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、搭載対象に対する燃料タンクの固定を適切に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】燃料タンク固定装置の正面図である。
図2図1の2-2線で切断したときの断面図である。
図3図2の3-3線で切断したときの断面図である。
図4】移動部材の姿勢の一例を示す断面図である。
図5】移動部材の窪み部に調整部材が挿入された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、燃料タンク固定装置を具体化した実施形態を図1図5にしたがって説明する。なお、本実施形態の燃料タンク固定装置は、例えば、燃料電池式のフォークリフトに用いられている。
【0014】
<燃料タンク固定装置>
図1及び図2に示すように、燃料タンク固定装置10は、燃料電池が搭載される搭載対象としての燃料電池式フォークリフトに対して燃料タンク100を固定する装置である。燃料タンク100は、燃料電池で用いられる燃料ガスを貯留するタンクである。本実施形態では、燃料タンク100には、燃料ガスとしての水素が貯留されている。燃料タンク100は、全体的に円筒形に形成されている。燃料タンク100の軸線が延びる方向を軸方向Aとする。
【0015】
燃料タンク100は、外周面101と、タンク端面102と、を有している。外周面101は、円筒面である。タンク端面102は、燃料タンク100の軸方向Aの両端に位置する面である。タンク端面102は、外周面101と連続している。タンク端面102は、外周面101から軸方向Aの外側に向けて丸く膨出している。外周面101及びタンク端面102は、燃料タンク100の外表面を形成している。
【0016】
燃料タンク固定装置10は、ベースウェイト20と、複数のタンク受け台30と、2つの支持アーム41,42と、フレーム50と、タンク固定構造60と、を備えている。ベースウェイト20は、フォークリフトの重量のバランスをとるために図示しない車体に設けられるウェイトである。ベースウェイト20の上面には、全てのタンク受け台30が設けられている。全てのタンク受け台30には、燃料タンク100が載置されている。タンク受け台30は、燃料タンク100の外周面101を支持している。燃料タンク100は、全てのタンク受け台30を介してベースウェイト20上に搭載されている。
【0017】
ベースウェイト20には、2つの支持アーム41,42が固定されている。一方の支持アーム41は、燃料タンク100における軸方向Aの一端側に配置され、他方の支持アーム42は、燃料タンク100における軸方向Aの他端側に配置されている。2つの支持アーム41,42は、ベースウェイト20から垂直に立ち上がるように配置されている。
【0018】
フレーム50は、2つの支持アーム41,42の間に掛け渡されている。フレーム50は、2つの支持アーム41,42と一体に形成されていてもよいし、2つの支持アーム41,42とは別体に形成されていてもよい。フレーム50が2つの支持アーム41,42と別体に形成される場合、フレーム50は、2つの支持アーム41,42にボルト等の固定部材により固定される。
【0019】
フレーム50は、燃料タンク100の上方に配置されている。フレーム50は、燃料タンク100の外周面101から所定の間隔をあけて配置されている。フレーム50は、燃料タンク100の軸方向Aと平行に配置されている。
【0020】
図3に示すように、フレーム50には、2つのガイド孔51と、2つの挿通孔52とが形成されている。2つの挿通孔52は、軸方向Aに並んでいる。挿通孔52の内周面には、ネジ溝52aが形成されている。2つのガイド孔51は、2つの挿通孔52を軸方向Aにおいて挟む位置に配置されている。2つのガイド孔51及び2つの挿通孔52は、軸方向Aにおいて一列に並んでいる。なお、各ガイド孔51及び各挿通孔52は、図2に示す燃料タンク100の外周面101のうち頂上に位置する部分に対向している。
【0021】
<タンク固定構造>
タンク固定構造60は、ガイドピン61と、移動部材70と、弾性部材62と、柱状の調整部材としてのボルト63と、ナット64と、を備えている。すなわち、燃料タンク固定装置10は、移動部材70と、弾性部材62と、ボルト63と、フレーム50と、を含む。
【0022】
ガイドピン61は、軸方向Aに所定の間隔をあけて2つ設けられている。ガイドピン61は、フレーム50の各ガイド孔51に挿通されている。ガイドピン61は、断面円形の丸ピンである。ガイドピン61の外径は、ガイド孔51の内径よりも僅かに小さい。ガイドピン61は、第1端部61aと、第2端部61bと、を有している。第1端部61aは、フレーム50よりも上方に位置している。第2端部61bは、フレーム50よりも下方に位置している。ガイドピン61は、フレーム50のガイド孔51を区画する内周面に案内されることにより上下方向に移動可能である。なお、ガイドピン61の第1端部61aには、図示しない抜け止めクリップが設けられる。抜け止めクリップにより、ガイドピン61は、フレーム50の下方への脱落が防止されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、移動部材70は、フレーム50と燃料タンク100との間に設けられている。移動部材70は、各ガイド孔51及び各挿通孔52に対向する位置に設けられている。すなわち、フレーム50には、移動部材70が対向する位置に各ガイド孔51及び各挿通孔52が形成されている。
【0024】
移動部材70は、基材71と、複数の支持部材72と、を有している。基材71は、軸方向Aに延びる長板状である。基材71は、各ガイドピン61の第2端部61bが取り付けられている。全ての支持部材72は、基材71の下面に取り付けられている。全ての支持部材72は、軸方向Aにおいて間隔をあけて基材71に取り付けられている。全ての支持部材72は、例えば溶接等により基材71に固定されている。
【0025】
軸方向Aと鉛直方向Vdの両方に直交する方向を幅方向とすると、支持部材72の幅方向の寸法は、基材71の幅方向の寸法よりも大きい。そして、支持部材72は、幅方向において基材71の両端から突出する突出板部72aを有している。基材71は、ガイドピン61とともに上下方向に移動可能である。このため、移動部材70は、各ガイドピン61によりフレーム50から吊り下げた状態で支持されている。そして、移動部材70は、各ガイドピン61とともに上下方向に移動可能である。すなわち、移動部材70は、燃料タンク100に接離可能である。
【0026】
図2に示すように、弾性部材62は、エラストマー等のゴム部材である。弾性部材62は、各支持部材72の突出板部72aを抱き込むかたちで、支持部材72に取り付けられている。弾性部材62は、燃料タンク100に対向している。すなわち、弾性部材62は、燃料タンク100と対向するように移動部材70に設けられている。なお、弾性部材62は、弾性を有する樹脂部材であってもよい。
【0027】
図3に示すように、ボルト63は、軸方向Aに所定の間隔をあけて2つ設けられている。ボルト63は、各挿通孔52に挿通されている。ボルト63は、各挿通孔52の内周面に形成されたネジ溝52aに螺合されている。ボルト63は、垂直に配置されている。ボルト63は、頭部63aと、先端面63bと、を有している。頭部63aは、フレーム50の上方に位置している。先端面63bは、フレーム50の下方に位置している。先端面63bは、ボルト63の軸線に対して直交する面である。
【0028】
ボルト63は、第1方向に回転させるとボルト63の全体が移動部材70に近づくように移動する。ボルト63は、第1方向とは反対の方向である第2方向に回転させるとボルト63の全体が移動部材70から離れるように移動する。
【0029】
図1及び図2に示すように、ボルト63の先端面63bが移動部材70の基材71に接触した状態でボルト63が第1方向に回転すると、ボルト63により移動部材70が弾性部材62とともに燃料タンク100に向けて押し込まれる。このとき、弾性部材62が移動部材70と燃料タンク100との間で圧縮されるとともに燃料タンク100が弾性部材62とタンク受け台30との間で固定される。ボルト63及びネジ溝52aは、移動部材70の移動量を調整可能とした調整機構90である。調整機構90は、ボルト63を含む。よって、調整機構90は、ボルト63により移動部材70を燃料タンク100に接近させて、且つ弾性部材62を燃料タンク100に押し付けることにより搭載対象に燃料タンク100を固定する。
【0030】
移動部材70と燃料タンク100との間で弾性部材62が圧縮された状態において、ボルト63が第2方向に回転すると、弾性部材62の圧縮が弱まる。ボルト63を第2方向に回転させ続けることにより弾性部材62の圧縮が解除された時点で、搭載対象に対する燃料タンク100の固定が解除される。
【0031】
ナット64は、フレーム50の上方に配置されている。ナット64は、フレーム50の上方においてボルト63に螺合されている。ナット64は、燃料タンク100に弾性部材62を押し付けた状態で移動部材70の位置を固定する固定部材として機能する。具体的には、ナット64を締めつけると、ナット64の締め付け力によってボルト63が第2方向に回転することによりボルト63が移動部材70から離れることが抑制される。すると、フレーム50の位置を基準としたボルト63の突出量と、移動部材70の上下方向の位置が決まる。このため、ナット64の締め付けにより移動部材70の位置を固定できる。
【0032】
<窪み部>
図3に示すように、移動部材70は、窪み部73を有している。窪み部73は、軸方向Aに所定の間隔をあけて2つ設けられている。窪み部73は、各挿通孔52に対向する位置に配置されている。窪み部73は、基材71におけるフレーム50に対向する上面71aから凹む。窪み部73には、ボルト63の先端面63bが挿入される。窪み部73は、ボルト63の先端面63bが挿入される挿入穴H73を区画している。
【0033】
窪み部73は、底面73aと、円筒面73bと、ガイド面73cと、を有している。底面73aは、挿入穴H73の底に位置する面である。底面73aは、上面71aと平行に延びている。底面73aは、円形である。底面73aの直径は、ボルト63の直径よりも若干大きい。底面73aには、ボルト63の先端面63bが当接する。よって、窪み部73は、ボルト63の先端面63bを当接可能とした底面73aを有している。
【0034】
円筒面73bは、底面73aの縁に連続している。ガイド面73cは、円筒面73bにおける底面73aとは反対側に位置する縁に連続している。ガイド面73cは、環状である。ガイド面73cは、傾斜面である。ガイド面73cは、挿入穴H73の入口73dから底面73aに向かうにつれて徐々に縮径されている。底面73aの中心を通過しつつ底面73aに直交する方向に延びる仮想線を挿入穴H73の中心軸線mとする。ガイド面73cは、中心軸線mを中心として描く円が延びる方向の全周にわたって滑らかに連続する面である。ガイド面73cは、挿入穴H73の入口73dから底面73aに向かうほど中心軸線mに向かって延びている。
【0035】
図4に示すように、ガイド孔51の内部でガイドピン61がガタつくことにより移動部材70の燃料タンク100に対する姿勢が変化することがある。移動部材70の姿勢が変化すると、窪み部73と挿通孔52との相対位置がずれる。中心軸線mに直交する方向におけるガイド面73cの寸法は、移動部材70の燃料タンク100に対する姿勢が変化しても、ボルト63の先端面63bの全体が、窪み部73が形成される範囲に含まれるように設定される。
【0036】
図4及び図5に示すように、ボルト63の先端縁がガイド面73cに当接した状態でボルト63を第1方向に回転させる場合を想定する。この場合、ガイド面73cの中心軸線mに対する傾斜角度は、ボルト63の先端縁がガイド面73c上を底面73aに向けて滑る程度に設定されている。
【0037】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
図4に示すように、移動部材70の燃料タンク100に対する姿勢によって、窪み部73の位置と、挿通孔52の位置とがずれた場合を想定する。ボルト63により移動部材70を燃料タンク100に接近させるとき、ボルト63の先端縁が窪み部73のガイド面73cに当接すると、ボルト63の先端縁がガイド面73cを滑る。すると、ボルト63の先端面63bは、窪み部73の底面73aに向かうように案内される。そして、図5に示すように、ボルト63の先端面63bが窪み部73の底面73aに当接する。すると、ボルト63の先端面63bに沿って移動部材70の姿勢が矯正される。よって、ボルト63が移動部材70を押圧する力が十分に弾性部材62に伝わるため、弾性部材62が燃料タンク100に対して十分に押し付けられる。したがって、窪み部73の位置と、挿通孔52の位置とがずれた場合であっても、搭載対象に対する燃料タンク100の固定が適切に実施される。
【0038】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)窪み部73にガイド面73cを設けたため、ガイド面73cにより、ボルト63の先端面63bを窪み部73の底面73aに案内できる。そして、ボルト63の先端面63bに沿って移動部材70の姿勢が矯正される。よって、ボルト63によって、弾性部材62を燃料タンク100に対して十分に押し付けることができる。したがって、窪み部73の位置と、挿通孔52の位置とがずれた場合であっても、搭載対象に対する燃料タンク100の固定を適切に実施できる。
【0039】
(2)ガイド面73cが環状であるため、窪み部73の位置と、挿通孔52の位置とのずれ方によらず、ガイド面73cによりボルト63の先端面63bを窪み部73の底面73aに案内できる。
【0040】
(3)ガイド面73cは、傾斜面である。このため、ガイド面73cを簡易的な形状としつつ、ボルト63の先端面63bをガイド面73cに引っかかりにくくできる。
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
○ 窪み部73は、底面73aと、ガイド面73cと、を有しており、円筒面73bを省略してもよい。この場合、ガイド面73cは、底面73aの縁に連続する。
○ ガイド面73cは、傾斜面でなくてもよい。例えば、ガイド面73cは、曲面であってもよい。このように変更する場合であっても、ガイド面73cは、挿入穴H73の入口73dから底面73aに向かうにつれて徐々に縮径されているとよい。
【0042】
○ 窪み部73の底面73aは、矩形であってもよい。この場合、底面73aの大きさは、ボルト63の先端面63bよりも大きくする。そして、円筒面73bは、底面73aの四辺に連続する四角筒面に変更するとよい。そして、ガイド面73cは、四角筒面における底面73aとは反対側に位置する四つの縁に連続しているとよい。
【0043】
○ ガイド面73cは、中心軸線mを中心として描く円が延びる方向の全周にわたって滑らかに連続する面でなくてもよい。例えば、上記の変更例において、円筒面73bを四角筒面に変更した場合、ガイド面73cは、四角筒面の四つの縁に連続する複数の傾斜面により形成されてもよい。この場合、ガイド面73cのうちで隣り合う傾斜面の間には、直線状に延びる境界が形成される。なお、ガイド面73cを形成する複数の傾斜面の数は、適宜変更してもよい。
【0044】
○ ガイド面73cは、環状でなくてもよい。例えば、窪み部73の円筒面73bの縁から一方向に向けて延びる面であってもよい。この場合であっても、ガイド面73cは、挿入穴H73の入口73dから底面73aに向かうほど中心軸線mに向かって延びていればよい。なお、ガイド面73cが設けられる位置は、移動部材70の燃料タンク100に対する姿勢が変化したとしても、ボルト63の先端面63bが対向する位置であるとよい。
【0045】
○ 調整部材としてボルト63が採用されていたが、これに限らない。例えば、ボルト63に代替して、柱状の丸棒を調整部材としてもよい。丸棒が挿通孔52に挿通された状態において、丸棒の第1端部がフレーム50の上方に位置しており、且つ丸棒の第2端部がフレーム50の下方に位置しているとする。丸棒の第2端部は、窪み部73に挿入される。丸棒の第1端部は、例えば、図示しない押圧機構により移動部材70に向けて押圧されるとよい。押圧機構により丸棒が押圧されると、弾性部材62が燃料タンク100に押し付けられるため、燃料タンク100が弾性部材62とタンク受け台30との間で固定される。押圧機構による丸棒の第1端部の押圧が弱まると、弾性部材62の圧縮が弱まる。押圧機構による丸棒の第1端部の押圧を弱め続けることにより、弾性部材62の圧縮が解除されると、搭載対象に対する燃料タンク100の固定が解除される。すなわち、丸棒及び押圧機構により調整機構90を構成してもよい。なお、この場合、ナット64を省略してもよい。
【0046】
○ 燃料タンク100の形状は適宜変更してもよい。燃料タンク100は、弾性部材62により押圧される面を有していればよい。
○ 搭載対象は、燃料電池式定置型発電機であってもよい。
【0047】
○ 燃料タンク固定装置10は、ベースウェイト20と、2つの支持アーム41,42と、フレーム50と、タンク固定構造60と、を備え、複数のタンク受け台30を省略してもよい。この場合、例えば、燃料タンク100をベースウェイト20上に搭載する。そして、弾性部材62とベースウェイト20とにより燃料タンク100を挟み込むとよい。
【0048】
○ 搭載対象は、燃料電池式フォークリフト以外の燃料電池車両であってもよい。この場合、燃料タンク固定装置10は、フレーム50と、タンク固定構造60と、を備えていればよい。フレーム50は、燃料電池車両の車体の任意の箇所に固定されていたり、一体に形成されていたりしてもよい。タンク固定構造60により燃料タンク100が燃料電池車両に固定されていればよい。
【0049】
○ 各ガイド孔51及び各挿通孔52は、軸方向Aにおいて一列に並んでいなくてもよい。
○ ガイド孔51の数は、適宜変更してもよい。ガイド孔51の数に応じてガイドピン61の数を適宜変更するとよい。
【0050】
○ 挿通孔52の数は、適宜変更してもよい。挿通孔52の数に応じて調整部材の数を適宜変更するとよい。
【符号の説明】
【0051】
10…燃料タンク固定装置、50…フレーム、52…挿通孔、62…弾性部材、63…ボルト、63b…先端面、70…移動部材、73…窪み部、73a…底面、73c…ガイド面、73d…挿入穴の入口、90…調整機構、100…燃料タンク、H73…挿入穴、m…中心軸線。
図1
図2
図3
図4
図5