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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173656
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0444 20160101AFI20231130BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20231130BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231130BHJP
【FI】
H01M8/0444
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04664
H01M8/04 H
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086074
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA58
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127CC07
5H127DA01
5H127DA11
5H127DA15
5H127DB91
5H127DB92
5H127DB96
5H127DC02
5H127DC19
5H127DC39
5H127DC90
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE04
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】ディテクタが正常に機能するか否かを精度良く判定できる燃料電池システムの制御方法を提供すること。
【解決手段】燃料電池システム10の制御方法において、ディテクタ値判定処理では、ディテクタ値が、ディテクタ用閾値未満か否かを判定する。水素濃度調整処理では、ディテクタ値判定処理で、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満であると判定された後、燃料電池スタック13による発電が停止された後に続く次の燃料電池スタック13の発電時に、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度がディテクタ値判定処理実行時よりも高く、かつディテクタ用閾値以上の調整後濃度に調整されるように燃料電池ユニット11を制御する。判定処理では、燃料電池スタック13から排出された水素ガスの濃度が調整後濃度に調整された状態で、ディテクタ31が正常に機能するか否かを判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを含む燃料ガス、及び酸化剤ガスが供給されることによって発電する燃料電池を含み、かつ前記水素ガスを含む排出ガスを排出する燃料電池ユニットと、
前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度をディテクタ値として検出するディテクタと、
制御装置と、を備える燃料電池システムにおいて前記制御装置によって実行される燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池ユニットが起動された後、前記ディテクタ値が、前記ディテクタを異常とみなすためのディテクタ用閾値未満か否かを判定するディテクタ値判定処理と、
前記ディテクタ値判定処理で、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定された後、前記燃料電池による発電が停止された後に続く次の前記燃料電池の発電時に、前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度が前記ディテクタ値判定処理の実行時よりも高く、かつ前記ディテクタ用閾値以上の調整後濃度に調整されるように前記燃料電池ユニットを制御する水素濃度調整処理と、
前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度が、前記調整後濃度に調整された状態で、前記ディテクタが正常に機能するか否かを判定するための判定処理と、を有することを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
前記燃料電池ユニットは、前記燃料電池に前記水素ガスを供給するインジェクタと、前記燃料電池のアノードに接続されたアノードオフガス排出路を開閉するアノード側開閉弁と、前記燃料電池のカソードに接続されたカソードオフガス排出路を開閉するカソード側開閉弁とを備え、
前記水素濃度調整処理は、前記燃料電池ユニットによる発電が停止された後、前記カソード側開閉弁及び前記アノード側開閉弁を閉じるとともに、前記インジェクタを駆動させて当該インジェクタから前記燃料電池に供給される前記水素ガスの量を増加させる処理であり、
前記判定処理は、前記燃料電池ユニットによる発電が停止された後に続く次の前記燃料電池ユニットの起動時に実行される請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項3】
前記燃料電池システムは、前記燃料電池ユニットの周囲に空気の流れを発生させる送風部を備え、
前記送風部は、前記燃料電池ユニットの周囲に前記空気の流れを発生させるための第1モード、及び前記空気の流れを前記第1モードより少なくする、又はゼロとする第2モードのいずれかに設定でき、
前記燃料電池システムの制御方法は、
前記ディテクタ値判定処理で、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定された後、かつ前記判定処理の前に、前記送風部を前記第2モードに設定する設定処理を有し、
前記判定処理は、前記送風部が前記第2モードにある状況下で行われる請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を含む燃料電池ユニットでは、燃料ガスに含まれる水素ガスが、燃料電池ユニットの各部品からの透過や漏出により、わずかながらも排出される場合があることが知られている。例えば、特許文献1には、水素ガスの漏洩を検出する水素検出システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された水素検出システムは、燃料電池車に設置された水素センサからの検出値を閾値と比較して、燃料電池スタックや水素タンクからの水素漏れを検出するとともに、水素漏れを運転者等に報知する。また、水素検出システムは、通常の水素漏れ検出時と、水素センサの点検時とで閾値を変えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4277925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の水素検出システムにおいて、水素センサが正常に機能していないと、水素センサの検出値に基づいた判定が不可能になってしまう。すると、水素ガスの透過や漏出を検出できなくなってしまう。このため、水素センサが正常に機能するか否かを精度良く判定することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための燃料電池システムの制御方法は、水素ガスを含む燃料ガス、及び酸化剤ガスが供給されることによって発電する燃料電池を含み、かつ前記水素ガスを含む排出ガスを排出する燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度をディテクタ値として検出するディテクタと、制御装置と、を備える燃料電池システムにおいて前記制御装置によって実行される燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池ユニットが起動された後、前記ディテクタ値が、前記ディテクタを異常とみなすためのディテクタ用閾値未満か否かを判定するディテクタ値判定処理と、前記ディテクタ値判定処理で、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定された後、前記燃料電池による発電が停止された後に続く次の前記燃料電池の発電時に、前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度が前記ディテクタ値判定処理の実行時よりも高く、かつ前記ディテクタ用閾値以上の調整後濃度に調整されるように前記燃料電池ユニットを制御する水素濃度調整処理と、前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度が、前記調整後濃度に調整された状態で、前記ディテクタが正常に機能するか否かを判定するための判定処理と、を有することを要旨とする。
【0007】
これによれば、水素濃度調整処理が実行される前は、燃料電池ユニットの周囲での水素ガスの濃度は、調整後濃度より低くなっている。この場合、ディテクタが正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満になってしまうことがある。
【0008】
そこで、ディテクタ値判定処理で、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満であると判定されると、制御装置は水素濃度調整処理を実行させる。このため、水素濃度調整処理実行後の判定処理は、燃料電池ユニットの周囲での水素ガスの濃度が、水素濃度調整処理前より高い状態で実行される。その結果、ディテクタが正常に機能していれば、ディテクタ値が得られやすいとともに、ディテクタが異常であれば、異常なディテクタ値が得られやすくなる。したがって、水素濃度調整処理が実行されることにより、ディテクタが正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満になることを抑制できる。その結果として、ディテクタが正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタが異常であると判定されることを抑制できる。
【0009】
燃料電池システムの制御方法について、前記燃料電池ユニットは、前記燃料電池に前記水素ガスを供給するインジェクタと、前記燃料電池のアノードに接続されたアノードオフガス排出路を開閉するアノード側開閉弁と、前記燃料電池のカソードに接続されたカソードオフガス排出路を開閉するカソード側開閉弁とを備え、前記水素濃度調整処理は、前記燃料電池ユニットによる発電が停止された後、前記カソード側開閉弁及び前記アノード側開閉弁を閉じるとともに、前記インジェクタを駆動させて当該インジェクタから前記燃料電池に供給される前記水素ガスの量を増加させる処理であり、前記判定処理は、前記燃料電池ユニットによる発電が停止された後に続く次の前記燃料電池ユニットの起動時に実行されてもよい。
【0010】
これによれば、水素濃度調整処理が実行されると、燃料電池ユニットによる発電が停止された後、燃料電池に残存する水素ガスの量が増える。そして、燃料電池ユニットの起動時、燃料電池から排出される水素ガスの量が増えて調整後濃度に調整される。水素濃度調整処理は、燃料電池ユニットによる発電が停止された後に実行されるパージ処理において、インジェクタから供給される水素ガスの量を増加させる処理である。つまり、水素濃度調整処理は、既に実行されているパージ処理において水素ガスの供給量を増やすだけの処理である。したがって、燃料電池システムの制御方法によれば、新たに処理を追加することなく、ディテクタが正常に機能しているか否かを判定できる。
【0011】
燃料電池システムの制御方法について、前記燃料電池システムは、前記燃料電池ユニットの周囲に空気の流れを発生させる送風部を備え、前記送風部は、前記燃料電池ユニットの周囲に前記空気の流れを発生させるための第1モード、及び前記空気の流れを前記第1モードより少なくする、又はゼロとする第2モードのいずれかに設定でき、前記燃料電池システムの制御方法は、前記ディテクタ値判定処理で、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定された後、かつ前記判定処理の前に、前記送風部を前記第2モードに設定する設定処理を有し、前記判定処理は、前記送風部が前記第2モードにある状況下で行われてもよい。
【0012】
これによれば、送風部が第2モードであれば、排出ガスは、送風によって押し流されにくくなる。つまり、調整後濃度に調整された水素ガスが、送風によって押し流されにくくなる。このため、判定処理は、燃料電池ユニットの周囲での水素ガスの濃度が調整後濃度において実行されやすくなる。その結果、ディテクタの周囲に排出ガスが比較的触れやすくなるため、ディテクタが正常に機能していれば、正常なディテクタ値が得られ、ディテクタが異常であれば、異常なディテクタ値が得られることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディテクタが正常に機能するか否かを精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フォークリフトを示す側面図である。
図2】燃料電池システムを示す概略図である。
図3】燃料電池システムを筐体から示す斜視図である。
図4】ディテクタ判定処理を示すフローチャートである。
図5】第1モードでの燃料電池システムを示す概略図である。
図6】第2モードでの燃料電池システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、燃料電池システムの制御方法を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
<燃料電池システム>
図1に示すように、燃料電池システム10は、フォークリフトFに搭載されている。なお、燃料電池システム10は、フォークリフトF以外の産業車両に適用してもよいし、さらに、産業車両以外の車両、例えば乗用車、バス、トラック等に適用してもよい。
【0016】
図2に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11と、制御装置51と、を備えている。さらに、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11を収容する筐体12と、ディテクタ31の異常を報知する報知器52と、を備えていてもよい。
【0017】
<フォークリフト>
図1に示すように、フォークリフトFは、座席Faを有している。フォークリフトFは、座席Faの下方に収容部Fbを有している。収容部Fbには燃料電池システム10が収容されている。フォークリフトFは、燃料電池システム10の燃料電池ユニット11により発電された電力により動作する。
【0018】
<筐体>
図2及び図3に示すように、筐体12は、底板12aと、天板12bと、周壁12cと、通気口12fと、を備えている。周壁12cは、底板12aの周縁と天板12bの周縁とを繋ぐ筒状である。筐体12が水平面上に置かれているものとして鉛直方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。
【0019】
筐体12において、底板12aと天板12bとはZ軸の延びる方向に対向する。周壁12cは、X軸の延びる方向に対向する第1側壁12dと第2側壁12eを備えている。通気口12fは、第1側壁12dに複数配置されている。
【0020】
<燃料電池ユニット>
図2に示すように、燃料電池ユニット11は、燃料電池スタック13、水素タンク14、エアコンプレッサ15、希釈器16、及び気液分離器26を備えている。また、燃料電池ユニット11は、水素ガス供給路17、エア供給路18、アノードオフガス排出路19a、カソードオフガス排出路19b、水素ガス循環路19c、及びガス排出路20を備えている。さらに、燃料電池ユニット11は、熱交換器21、ラジエータファン21a、循環流路22、補機23、及び補機用ファン24を備えている。
【0021】
燃料電池としての燃料電池スタック13は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、固体分子型燃料電池である。燃料電池スタック13は、水素ガスを含む燃料ガス、及び酸化剤ガスが供給されることによって発電する。酸化剤ガスは、空気である。
【0022】
水素タンク14は、水素ガスを高圧状態で貯蔵する。水素ガス供給路17は、燃料電池スタック13の図示しないアノードと水素タンク14を接続している。水素ガス供給路17には圧力調整弁17aが設けられている。圧力調整弁17aは、水素タンク14から供給された水素ガスの圧力を低下させる。また、水素ガス供給路17にはインジェクタ17bが設けられている。したがって、燃料電池ユニット11は、燃料電池スタック13に水素ガスを供給するインジェクタ17bを備えている。インジェクタ17bは、圧力調整弁17aによって減圧された水素ガスを燃料電池スタック13のアノードに供給する。詳細には、インジェクタ17bは、水素ガスを燃料電池スタック13に向けて噴射する。インジェクタ17bは、燃料電池スタック13のアノードへの水素ガスの供給量を調整する。インジェクタ17bは、制御装置51に信号接続されている。インジェクタ17bは、制御装置51によって制御される。
【0023】
エアコンプレッサ15は、空気を圧縮してエア供給路18に供給する。エア供給路18は、燃料電池スタック13の図示しないカソードとエアコンプレッサ15を接続している。エア供給路18には、エアコンプレッサ15から吐出されたエアが流動する。
【0024】
アノードオフガス排出路19aは、燃料電池スタック13の図示しないアノードと希釈器16を接続している。アノードオフガス排出路19aには、燃料電池スタック13から希釈器16に向けてアノードオフガスが流動する。アノードオフガスには、燃料電池スタック13で未反応の水素ガスと、水素と酸素とが反応したときの水が主に含まれている。
【0025】
気液分離器26は、アノードオフガス排出路19aに設けられている。気液分離器26は、アノードオフガスから水を分離する。水の分離されたアノードオフガスは、希釈器16に向けてアノードオフガス排出路19aを流動する。アノードオフガス排出路19aを流動したアノードオフガスは、希釈器16に供給される。
【0026】
燃料電池スタック13から希釈器16に向けたアノードオフガスの流動方向において、気液分離器26より下流、かつ希釈器16の上流には、アノード側開閉弁19dが設けられている。アノード側開閉弁19dは、燃料電池スタック13のアノードに接続されたアノードオフガス排出路19aを開閉する。アノード側開閉弁19dは、制御装置51に信号接続されている。アノード側開閉弁19dの開閉は、制御装置51によって制御される。
【0027】
カソードオフガス排出路19bは、燃料電池スタック13の図示しないカソードと希釈器16を接続している。カソードオフガス排出路19bには、燃料電池スタック13から希釈器16に向けてカソードオフガスが流動する。カソードオフガスには、燃料電池スタック13で未反応の酸素を含むエアと、水素と酸素とが反応したときの水が主に含まれている。カソードオフガス排出路19bにはカソード側開閉弁18aが設けられている。カソード側開閉弁18aは、燃料電池スタック13のカソードに接続されたカソードオフガス排出路19bを開閉する。カソード側開閉弁18aは、制御装置51に信号接続されている。カソード側開閉弁18aの開閉は、制御装置51によって制御される。したがって、燃料電池ユニット11は、アノード側開閉弁19dとカソード側開閉弁18aを備えている。
【0028】
希釈器16には、気液分離器26から排出されたアノードオフガス、及び燃料電池スタック13から排出されたカソードオフガスが流入する。希釈器16は、流入したアノードオフガスをカソードオフガスで希釈する。希釈器16は、アノードオフガスにおける水素ガスの濃度を低下させる。希釈器16は、水素ガスの濃度を低下させた排出ガスをガス排出路20に排出する。ガス排出路20からは、排出ガスが排出される。したがって、燃料電池ユニット11は、水素ガスを含む排出ガスを排出する。排出ガスは、筐体12の内部に排出される。
【0029】
水素ガス循環路19cは、気液分離器26と水素ガス供給路17を接続している。水素タンク14から燃料電池スタック13に向けた水素ガスの流動方向において、水素ガス循環路19cは、インジェクタ17bより下流に接続されている。気液分離器26から排出されたアノードオフガスは、水素ガス供給路17に向けて水素ガス循環路19cを流動する。
【0030】
熱交換器21は、外気と熱交換媒体との間で熱交換を行う。ラジエータファン21aは、熱交換器21に向けて送風する。循環流路22は、熱交換媒体を燃料電池スタック13と熱交換器21との間で循環させる。熱交換媒体としては冷却水が用いられるが、その他の媒体を用いてもよい。
【0031】
熱交換器21は、筐体12の第2側壁12eに配置されている。熱交換器21は、燃料電池スタック13の側方に配置されている。送風部の一例であるラジエータファン21aは、モータMによって回転する。ラジエータファン21aのモータMは、制御装置51によって駆動が制御される。
【0032】
循環流路22は、往路22aと、復路22bと、図示しないポンプと、熱交換流路と、を有している。往路22aは、熱交換器21から燃料電池スタック13に向けて冷却水を流すための流路である。復路22bは、燃料電池スタック13から熱交換器21に向けて冷却水を流すための流路である。ポンプは、循環流路22で冷却水を循環させる。図示しない熱交換流路は、燃料電池スタック13内及び熱交換器21内に取り回されている。
【0033】
往路22aを通って燃料電池スタック13内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、燃料電池スタック13で発生した熱を吸収して燃料電池スタック13を冷却する。復路22bを通って熱交換器21内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、外気と熱交換されて冷却される。ラジエータファン21aが回転することにより、熱交換器21に向けて送風される。ラジエータファン21aによる送風により、熱交換器21内の熱交換流路での冷却水の冷却効率が高められる。
【0034】
また、ラジエータファン21aが回転することにより、図5の矢印Vに示すように、筐体12の外部から通気口12fを介して筐体12の内部に吸気される。筐体12の内部、つまり燃料電池ユニット11の周囲には、通気口12fからラジエータファン21aに向かう空気の流れWが発生する。
【0035】
ラジエータファン21aは、第1モードM1と第2モードM2とに切替可能である。第1モードM1は、冷却水を冷却することを目的としてラジエータファン21aを回転させるモードである。ラジエータファン21aが第1モードM1で回転すると、上記した空気の流れWを、燃料電池ユニット11の周囲に発生させることができる。したがって、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させるラジエータファン21aを備えている。ラジエータファン21aが第1モードM1で回転すると、筐体12の内部を空気が通過するように燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWが発生する。モータMは、ラジエータファン21aを回転させる。モータMの回転数を、ラジエータファン21aの回転数とする。そして、第1モードM1でのモータMの回転数を、ラジエータファン21aの第1動作量とする。
【0036】
第2モードM2は、第1動作量より少ない第2動作量、又は動作量をゼロとするモードである。本実施形態では、第2モードM2は、動作量をゼロとするモードである。このため、第2モードM2ではラジエータファン21aは回転しない。第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWは形成されない。したがって、ラジエータファン21aは、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させるための第1モードM1、及び空気の流れWをゼロとする第2モードM2のいずれかを取り得る。
【0037】
補機23の一例は二次電池である。高温による補機23の劣化を抑制するため、補機23は高温状態に維持されないようにすることが必要である。補機23の劣化を抑制するため、補機23には動作温度範囲が設定されている。
【0038】
燃料電池ユニット11の起動時、送風部の一例である補機用ファン24が回転することにより、筐体12の内部では、図5の矢印Wに示すように、補機23に向けた空気の流れWが発生する。補機23に向けて空気が流れる方向は、ラジエータファン21aが回転することにより熱交換器21に向けて流れる空気の流れ方向と同じ、又は略同じである。
【0039】
補機用ファン24はファンモータ25を有している。補機用ファン24は、ファンモータ25を制御することによって第1モードM1と第2モードM2とに切替可能である。第1モードM1は、補機23を冷却することを目的として補機用ファン24を回転させるモードである。補機用ファン24が第1モードM1で回転すると、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させることができる。したがって、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させる補機用ファン24を備えている。ファンモータ25の回転数を、補機用ファン24の回転数とする。そして、第1モードM1での補機用ファン24の回転数を、補機用ファン24の第1動作量とする。
【0040】
第2モードM2は、第1動作量より少ない第2動作量、又は動作量をゼロとしたモードである。本実施形態では、第2モードM2は、動作量をゼロとしたモードである。このため、第2モードM2では補機用ファン24は回転しない。第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWは形成されない。したがって、補機用ファン24は、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させるための第1モードM1、及び空気の流れWをゼロとする第2モードM2のいずれかに設定できる。
【0041】
<ディテクタ>
図2及び図3に示すように、燃料電池システム10は、2つのディテクタ31を備えている。2つのディテクタ31は、筐体12の天板12bに配置されている。各ディテクタ31の各々は水素ガスの検出面31aを備えている。検出面31aは、筐体12の内部に露出している。一方のディテクタ31は、天板12bの第1側壁12d寄りに配置されているとともに、他方のディテクタ31は、天板12bの第2側壁12e寄りに配置されている。ディテクタ31は、検出面31aに排出ガスが触れることによって水素ガスの濃度を検出する。つまり、ディテクタ31は、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度をディテクタ値として検出する。ディテクタ31は、燃料電池ユニット11の各部品からの透過や漏出により、わずかながらも排出される水素ガスの濃度を検出する。
【0042】
排出ガスにおける水素ガスの濃度が低いほど、ディテクタ31による水素ガスの検出の可能性が低くなりやすい。その結果、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が正常値よりも低い値になりやすい。
【0043】
一方、排出ガスにおける水素ガスの濃度が高いほど、ディテクタ31による水素ガスの検出の可能性が高くなりやすい。その結果、ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値は、正常値になる。
【0044】
また、第1モードM1でラジエータファン21a及び補機用ファン24が回転すると、ラジエータファン21a及び補機用ファン24からの送風によって排出ガスが押し流される。すると、ディテクタ31の周囲から排出ガスが拡散されてしまうため、排出ガスの水素ガスがディテクタ31の検出面31aに触れにくくなる。その結果、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が正常値よりも低い値になりやすい。
【0045】
一方、ラジエータファン21a及び補機用ファン24が回転しない第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWは発生しない。すると、排出ガスは、送風によって押し流されにくくなる。ディテクタ31の周囲に排出ガスが比較的触れやすくなるため、排出ガスの水素ガスがディテクタ31の検出面31aに触れやすくなる。このため、第2モードM2では、ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値は、正常値になる。
【0046】
<制御装置>
制御装置51は、プロセッサ51aと、記憶部51bと、カウンタ51cと、を備えている。プロセッサ51aとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部51bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部51bは、処理をプロセッサ51aに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部51b、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置51は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置51は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0047】
制御装置51は、フォークリフトFのキーオフを契機としてパージ処理を実行させる。なお、キーオフとは、フォークリフトFを停止させるために作業者によって実行される。キーオフされると、フォークリフトFは走行できなくなる。言い換えると、フォークリフトFが停止されている状態は、キーオフ状態である。また、フォークリフトFが停止されると、燃料電池スタック13の発電が停止される。なお、キーオフ以外にも、燃料電池スタック13の発電量が、上位制御装置からの発電指令量を上回ると、燃料電池スタック13の発電は停止される。
【0048】
<パージ処理>
制御装置51は、フォークリフトFのキーオフに伴う燃料電池スタック13の発電が停止されるとパージ処理を実行させる。パージ処理は、燃料電池スタック13の発電停止中に、各燃料電池セルのアノードへの酸素の拡散を抑制するために実行される。パージ処理は、各燃料電池セルのカソードを水素に置き換える処理である。
【0049】
パージ処理が実行されると、制御装置51は、アノード側開閉弁19dを閉じるとともに、カソード側開閉弁18aを閉じる。これにより、燃料電池スタック13、ひいては各燃料電池セルからのアノードオフガス及びカソードオフガスの排出が規制される。
【0050】
そして、各燃料電池セルからのアノードオフガス及びカソードオフガスの排出が規制された状態で、制御装置51は、インジェクタ17bを駆動させる。すると、各燃料電池セルのアノードに水素ガスが供給される。インジェクタ17bから供給される水素ガスの量は、キーオフ後に燃料電池スタック13に残存する酸素を消費し切る量に設定されている。パージ処理時に、インジェクタ17bから供給される水素ガスの量は、燃料電池システム10の稼働時の燃料電池スタック13の発電量に応じて決まる。燃料電池システム10の稼働時、制御装置51は、燃料電池スタック13の発電量、水素タンク14からの水素ガスの供給量、エアコンプレッサ15からのエア供給量に応じて、燃料電池スタック13に残存する酸素量を把握する。制御装置51は、燃料電池スタック13に残存する酸素量から、燃料電池スタック13に供給する水素ガスの量を算出する。制御装置51はインジェクタ17bの駆動を制御して、算出された水素ガスの量を燃料電池スタック13に供給する。インジェクタ17bは、水素ガスを加圧して燃料電池スタック13に供給する。
【0051】
すると、各燃料電池セルのカソードに残存する酸素と水素が反応するため、カソードに残存する酸素が消費される。その後、各燃料電池セルのカソードも水素に置き換えられる。その結果、各燃料電池セルにおいて、アノードへの酸素の拡散が抑制される。
【0052】
アノード側開閉弁19d及びカソード側開閉弁18aが閉じた状態でパージ処理が実行される。このため、パージ処理が完了すると、各燃料電池セルは、水素ガスで満たされた状態となっている。そして、パージ処理において、インジェクタ17bから各燃料電池セルに供給される水素ガスの量を増やすほど、パージ処理の完了後に各燃料電池セルに残存する水素ガスの量は多くなる。
【0053】
<ディテクタ判定処理>
制御装置51は、ディテクタ31が正常に機能するか否かを判定する処理を実行させる。以下の説明において、「ディテクタ31が正常に機能するか否かを判定する処理」を、単に「ディテクタ判定処理」と記載する。
【0054】
ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値は、正常値になる。しかし、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度が低いと、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が正常値よりも低い値になりやすい。ディテクタ値が、予め定めたディテクタ用閾値Tb未満となる場合を、ディテクタ31の「異常」とみなす。したがって、ディテクタ用閾値Tbは、ディテクタ31を異常とみなすための閾値である。
【0055】
制御装置51の記憶部51bには、ディテクタ31が正常に機能するか否かを判定する処理を実行させるためのプログラムコードまたは指令が記憶されている。
制御装置51の記憶部51bには、ディテクタ判定処理を実行する際に用いられるディテクタ用閾値Tb、確定用カウンタ閾値Ta及びカウンタ閾値Tcが記憶されている。
【0056】
ディテクタ用閾値Tbの一例は100ppmである。実際にディテクタ31が異常であると、ディテクタ値がゼロになったり、異常に低い値になったりする。これらを踏まえて予め実験により、ディテクタ用閾値Tbが設定されている。なお、ディテクタ用閾値Tbは、100ppmに限らず、ディテクタ31の性能や、ディテクタ31の周囲での部品の配置に応じて変更してもよい。そして、制御装置51は、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満か否かを判定するディテクタ値判定処理を所定周期で行っている。
【0057】
ここで、カウンタ51cについて説明する。
カウンタ51cは、ディテクタ用閾値Tb未満のディテクタ値が検出される度に、つまり、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であると判定される度に異常カウンタ値を加算する。詳細には、カウンタ51cは、ディテクタ31が異常とみなされる度に、異常カウンタ値を「1」ずつ加算する。
【0058】
制御装置51によるディテクタ値判定処理は、所定の制御周期で繰り返し行われる。制御周期は、例えば、数m秒毎である。このため、制御周期と、異常カウンタ値との積算値は、ディテクタ31が異常とみなされた総時間となる。ディテクタ31が異常とみなされた総時間とは、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である状態が継続した場合の総時間のことである。
【0059】
フォークリフトFが稼働している間、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満になる度に、つまり、制御周期の度に異常カウンタ値は、「1」ずつ増えていく。そして、カウンタ51cによって計測された異常カウンタ値が、所定値以上になると、ディテクタ31が異常とみなされた総時間が所定時間以上になる。すると、制御装置51は、ディテクタ31が異常であることを確定する。
【0060】
ディテクタ判定処理では、ディテクタ31が異常であることを確定するため、確定用カウンタ閾値Taを用いている。確定用カウンタ閾値Taは、ディテクタ31の異常を確定するための閾値である。
【0061】
確定用カウンタ閾値Taは、「異常とみなされた総時間」に対する閾値である。確定用カウンタ閾値Taの一例は200時間である。燃料電池システム10では、水素ガスがディテクタ31の検出面31aに触れない時間が、200時間以上続くことはほとんどない。言い換えると、200時間経過するまでには、検出面31aに水素ガスが触れてディテクタ値は検出される。
【0062】
このため、ディテクタ31が正常に機能していれば、200時間経過するまでの間に、ディテクタ用閾値Tb以上のディテクタ値が検出される。したがって、200時間経過するまでの間に、ディテクタ用閾値Tb以上のディテクタ値が検出されなければ、ディテクタ31は正常に機能していない、つまり異常であるといえる。
【0063】
なお、確定用カウンタ閾値Taを200時間としているが、確定用カウンタ閾値Taは適宜変更可能である。ディテクタ判定処理によって、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを短時間で把握したい場合は、確定用カウンタ閾値Taを200時間より短くしてもよい。一方、ディテクタ判定処理によって、ディテクタ31が正常に機能しているか否かをより精度良く把握したい場合は、確定用カウンタ閾値Taを200時間より長くしてもよい。
【0064】
ディテクタ31が異常であることを確定するにあたり、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満となることを条件としている。しかし、燃料電池ユニット11では、例えば、発電量の増加に伴って各燃料電池セルに残存する水素ガスの量が少なくなって、排出ガスの水素ガスの濃度が低くなっているときがある。
【0065】
水素ガスの濃度が低いことを原因として、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満になることが、確定用カウンタ閾値Ta以上続く場合がある。このような場合に、ディテクタ31が正常であるにもかかわらず、異常であることを確定することを避けることが好ましい。そこで、ディテクタ判定処理では、制御装置51は、異常カウンタ値が、確定用カウンタ閾値Taに到達する前に、ディテクタ31が正常に機能するか否かを精度良く判定するために、燃料電池スタック13から排出された水素ガスの濃度を高くする水素濃度調整処理を実行させる。
【0066】
<水素濃度調整処理>
水素濃度調整処理は、ディテクタ値判定処理で、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であると判定された後、燃料電池スタック13による発電が停止された後に続く次の燃料電池スタック13の発電時の水素ガスの濃度を調整する処理である。また、水素濃度調整処理は、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度が、ディテクタ値判定処理の実行時よりも高く、かつディテクタ用閾値Tb以上の調整後濃度に調整されるように燃料電池ユニット11を制御する処理である。
【0067】
水素濃度調整処理は、パージ処理において、インジェクタ17bから燃料電池スタック13に供給される水素ガスの量を、通常のパージ処理よりも増加するように、制御装置51によってインジェクタ17bを制御する処理である。具体的には、水素濃度調整処理は、パージ処理時に、制御装置51の算出した水素ガスの量よりも多量の水素ガスが各燃料電池セルに供給されるように、制御装置51が、インジェクタ17bを制御する。この水素濃度調整処理が実行されると、通常のパージ処理に比べて、1.2倍程度の水素ガスが燃料電池スタック13に供給される。その結果、燃料電池ユニット11の起動後に、燃料電池スタック13から排出される水素ガスの濃度は、水素濃度調整処理の実行前よりも高い調整後濃度に調整される。
【0068】
水素濃度調整処理が実行されると、各燃料電池セルには、通常のパージ処理実行時に比べて多量の水素ガスが残存する。このため、燃料電池ユニット11の起動時、カソード側開閉弁18a及びアノード側開閉弁19dが開かれると、通常のパージ処理実行後に比べて、多量の水素ガスが燃料電池スタック13から排出される。その結果、希釈器16を経由してガス排出路20から排出された排出ガスにおける水素ガスの濃度は、通常のパージ処理実行後に比べて高くなる。したがって、燃料電池ユニット11の起動に伴う燃料電池スタック13の発電時に、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度が、ディテクタ値判定処理の実行時よりも高く、かつディテクタ用閾値Tb以上の濃度である調整後濃度に調整される。
【0069】
<設定処理>
設定処理は、排出ガスがディテクタ31の検出面31aに触れやすい状態とする処理である。設定処理では、制御装置51は、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を第1モードM1から第2モードM2に切り替える。
【0070】
<報知器>
報知器52は、ディテクタ31の異常が確定した場合、フォークリフトFの操作者にディテクタ31の異常を報知するための装置である。報知器52は、制御装置51に信号接続されている。報知器52は、ディテクタ31の異常を操作者に報知できれば特に限定はない。報知器52は、ブザー、異常を表示できるディスプレイ、異常を音声で表す音声出力器、異常時に点灯、点滅する表示灯が挙げられる。
【0071】
<燃料電池システムの制御方法>
ディテクタ判定処理は、フォークリフトFが起動された後、所定の制御周期で繰り返し行われる。「フォークリフトFが起動されている」とは、フォークリフトFが走行できる状態にあることである。フォークリフトFが起動されている状態は、キーオン状態ともいわれる。また、フォークリフトFが起動されると、燃料電池システム10が起動される。燃料電池システム10が起動されると、制御装置51は、燃料電池ユニット11を起動させてアノード側開閉弁19dを周期的に開くとともに、カソード側開閉弁18aを常に開いた状態とする。また、制御装置51は、インジェクタ17bを制御する。
【0072】
すると、水素タンク14から供給された水素ガスは、圧力調整弁17aによって圧力調整された後、インジェクタ17bによって燃料電池スタック13に供給される。また、エアコンプレッサ15によって圧縮されたエアは、カソード側開閉弁18aを通じて燃料電池スタック13に供給される。そして、燃料電池スタック13は、発電する。
【0073】
燃料電池スタック13から排出されたアノードオフガスは、気液分離器26に供給される。気液分離器26によって水の分離されたアノードオフガスの一部は、水素ガス循環路19cを介して水素ガス供給路17に供給される。
【0074】
制御装置51によってアノード側開閉弁19dが周期的に開かれると、アノードオフガスが燃料電池スタック13から排出される。燃料電池スタック13から排出されたアノードオフガスは希釈器16に供給される。また、燃料電池スタック13から排出されたカソードオフガスは希釈器16に供給される。希釈器16は、カソードオフガスによってアノードオフガスを希釈して排出する。
【0075】
フォークリフトFが停止されると、フォークリフトFは走行できなくなる。フォークリフトFが停止されると、燃料電池ユニット11が停止される。燃料電池ユニット11が停止されると、燃料電池スタック13の発電は停止される。燃料電池スタック13の発電が停止されると、制御装置51はパージ処理を実行させる。
【0076】
さて、上記のようにフォークリフトFが起動されると、制御装置51は、ディテクタ判定処理を開始する。また、制御装置51は、フォークリフトFが起動されると、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を第1モードM1で回転させる。
【0077】
すると、図5に示すように、ラジエータファン21aから熱交換器21に向けて送風されるとともに、補機用ファン24から補機23に向けて送風される。その結果、筐体12の内部では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWが発生する。このため、希釈器16から排出された排出ガスは、空気の流れWによって熱交換器21に向けて押し流される。
【0078】
<ディテクタ判定処理の詳細>
さて、図4に示すように、ディテクタ判定処理のステップS1では、制御装置51は、2つのディテクタ31から取得されたディテクタ値のそれぞれがディテクタ用閾値Tb未満であるか否かを判定する。したがって、ステップS1は、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満か否かを判定するディテクタ値判定処理である。このステップS1は、燃料電池ユニット11が起動された後であり、かつ燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度が調整後濃度より低い状態において実行される。
【0079】
ステップS1において、2つのディテクタ値が両方とも、ディテクタ用閾値Tb以上の場合(ステップS1でNO)、制御装置51は、ステップS6に移行する。ステップS6では、制御装置51は、カウンタ51cの異常カウンタ値をリセットしてステップS1に移行する。このとき、2つのディテクタ31は、ディテクタ用閾値Tbより大きい値を検知しているため、ディテクタ31は正常に機能していることになる。
【0080】
一方、ステップS1において、取得された2つのディテクタ値が両方ともディテクタ用閾値Tb未満の場合(ステップS1でYES)、制御装置51は、ステップS2の処理を実行する。ステップS2では、制御装置51は、カウンタ51cによって計測された異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上であるか否かを判定する。ステップS2は、ステップS1にてディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である場合にカウンタ51cの結果がカウンタ閾値Tc以上であるか否かを判定する処理である。
【0081】
そして、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc未満の場合(ステップS2でNO)、制御装置51は、ステップS5の処理を実行する。ステップS5では、制御装置51は、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上であるか否かを判定する。異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta未満の場合(ステップS5でNO)、制御装置51は、ステップS7の処理を実行する。ステップS7では、制御装置51は、カウンタ51cに異常カウンタ値を「1」加算する。その後、制御装置51は、ステップS1に移行する。したがって、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の場合は、制御装置51は、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上になるまで、ステップS1、ステップS2、ステップS5、及びステップS7の処理を繰り返す。このため、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の場合は、カウンタ51cには異常カウンタ値が「1」ずつ増えていく。つまり、ディテクタ31が異常とみなされた時間が増えていく。このとき、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である状態が継続していることになる。
【0082】
その後、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満のまま、フォークリフトFの稼働が継続されるとともに、燃料電池スタック13の発電が継続されると、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上になる(ステップS2でYES)。つまり、ディテクタ31が異常とみなされた総時間がカウンタ閾値Tc以上になる。すると、制御装置51は、ステップS3の処理を実行する。ステップS3では、制御装置51は、記憶部51bに、水素濃度調整処理フラグをオンにする。
【0083】
制御装置51は、水素濃度調整処理フラグがオンの状態でステップS4に遷移しても、カソード側開閉弁18a及びアノード側開閉弁19dを閉じないとともに、インジェクタ17bによる水素ガスの供給量を増加させない。水素濃度調整処理フラグは、キーオフ後のパージ処理が実行されることでオフされる。
【0084】
ステップS3の後、ステップS4において、制御装置51は、記憶部51bに、モータM及びファンモータ25を駆動させないためのファン停止フラグをオンにする。
制御装置51は、ファン停止フラグがオンの状態でステップS5に遷移しても、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を第2モードM2に設定しない。ファン停止フラグは、ラジエータファン21a及び補機用ファン24のモードが第1モードM1から第2モードM2に設定変更されることでオフされる。
【0085】
ステップS4の後、制御装置51は、ステップS5及びステップS7の処理を実行する。ステップS4の後、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上になるまで、制御装置51は、ステップS1、ステップS2、ステップS5、及びステップS7の処理を繰り返す。このため、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の場合は、カウンタ51cには異常カウンタ値が「1」ずつ増えていく。つまり、ディテクタ31が異常とみなされた時間が増えていく。このとき、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である状態が継続していることになる。
【0086】
その後、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta未満でフォークリフトFが停止されると、ディテクタ判定処理が終了する。そして、フォークリフトFが停止されるとともに燃料電池ユニット11における燃料電池スタック13の発電が停止されると、制御装置51は、水素濃度調整処理フラグに応じて、水素濃度調整処理を実行させる。制御装置51は、カソード側開閉弁18aを閉じるとともにアノード側開閉弁19dを閉じる。さらに、制御装置51は、インジェクタ17bを駆動させて、通常のパージ処理実行時に比べて増加させた水素ガスを燃料電池スタック13に供給する。したがって、水素濃度調整処理は、燃料電池ユニット11による発電が停止された後、カソード側開閉弁18a及びアノード側開閉弁19dを閉じるとともに、インジェクタ17bを駆動させて当該インジェクタ17bから燃料電池スタック13に供給される水素ガスの量を増加させる処理である。このような水素濃度調整処理が実行されると、各燃料電池セルではパージ処理が実行されることに加え、通常のパージ処理実行時に比べて多量の水素ガスが燃料電池スタック13に残存する状態となる。
【0087】
フォークリフトFが停止された後に続く次のフォークリフトFの起動時、制御装置51は、ファン停止フラグに応じて、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を停止状態にする。つまり、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を第2モードM2に設定する設定処理が制御装置51によって実行される。したがって、設定処理は、ディテクタ値判定処理で、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であると判定された後、かつその後のディテクタ判定処理の前に、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を第2モードM2に設定する処理である。設定処理は、燃料電池ユニット11が停止された後に続く次の燃料電池ユニット11の起動時に実行される。設定処理では、制御装置51は、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を第2モードM2に設定する。設定処理後、ラジエータファン21a及び補機用ファン24は回転しないため、燃料電池ユニット11の周囲には空気の流れWが発生しなくなる。
【0088】
そして、燃料電池ユニット11が起動されると、制御装置51は、アノード側開閉弁19dを周期的に開くとともに、カソード側開閉弁18aを常に開いた状態とする。すると、燃料電池スタック13からは、通常のパージ処理実行後に比べて、多量の水素ガスが排出される。その結果、希釈器16を経由してガス排出路20から排出された排出ガスにおける水素ガスの濃度は、通常のパージ処理実行後に比べて高くなった調整後濃度となる。つまり、水素濃度調整処理が実行されることにより、燃料電池スタック13による発電が停止された後に続く次の燃料電池スタック13の発電時に、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度が、ディテクタ値判定処理実行時よりも高く、かつディテクタ用閾値Tb以上の調整後濃度に調整される。
【0089】
そして、再び、ディテクタ判定処理が実行される。このディテクタ判定処理は、燃料電池システム10の制御方法における判定処理に相当する。つまり、ディテクタ判定処理は、燃料電池ユニット11の燃料電池スタック13による発電が停止された後に続く次の燃料電池ユニット11における燃料電池スタック13の起動時に実行される。このディテクタ判定処理は、希釈器16からの排出ガスの水素ガスの濃度、つまり、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度が、ディテクタ用閾値Tb以上の調整後濃度に高められた状態で、ディテクタ31が正常であるか否かを判定するための処理である。さらに、ディテクタ判定処理は、ラジエータファン21a及び補機用ファン24が第2モードM2にある状況下で行われる。
【0090】
このディテクタ判定処理において、ステップS1での判定は、水素濃度調整処理の未実施の場合に比べて、燃料電池ユニット11の周囲の水素ガスの濃度が調整後濃度に高められた状態で行われる。さらに、ステップS1での判定は、空気の流れWが発生していない状況で行われる。つまり、図6に示すように、ステップS1での判定は、ディテクタ31の検出面31aに排出ガスがより触れやすい状況で行われる。詳細には、排出ガスに含まれる水素がディテクタ31の検出面31aの周囲に比較的触れやすい状況で行われる。
【0091】
このため、ディテクタ31が正常に機能していれば、2つのディテクタ31から取得されたディテクタ値は、両方ともディテクタ用閾値Tb以上になる。そして、2つのディテクタ31から取得されたディテクタ値が両方ともディテクタ用閾値Tb以上になると(ステップS1でNO)、制御装置51は、ステップS6に移行する。ステップS6では、制御装置51は、カウンタ51cの異常カウンタ値をリセットしてステップS1に移行する。つまり、ディテクタ31は正常に機能していることになる。
【0092】
一方、取得された2つのディテクタ値が両方ともディテクタ用閾値Tb未満の場合(ステップS1でYES)、フォークリフトFが稼働されている間、制御装置51は、ステップS1、ステップS2、ステップS5、及びステップS7の処理を繰り返す。
【0093】
その後、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上となった場合(ステップS5でYES)、ディテクタ31の異常が確定する。排出ガスの水素ガス濃度が調整後濃度に高められるとともに、ラジエータファン21a及び補機用ファン24が第2モードM2にある状況下であってもディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の状態が、確定用カウンタ閾値Ta以上続く場合は、明らかなディテクタ31の異常である。そして、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上となった場合(ステップS5でYES)、制御装置51は、ディテクタ31が異常である旨の信号を報知器52に出力する。報知器52は、ディテクタ31の異常を操作者にエラーとして報知する。
【0094】
<作用>
ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の状態が、カウンタ閾値Tc以上になると、制御装置51は、水素濃度調整処理を実行させる。このため、フォークリフトFがキーオフされるとともに、燃料電池ユニット11における燃料電池スタック13の発電が停止されると、水素濃度調整処理が実行される。すると、燃料電池スタック13の各燃料電池セルに残存する水素ガスの濃度は、通常のパージ処理実行時に比べて高くなる。このため、燃料電池ユニット11が停止された後に続く次の燃料電池ユニット11の起動時、ガス排出路20から排出された排出ガスにおける水素ガスの濃度は、通常のパージ処理実行時に比べて高くなる。その結果、排出ガスに含まれる水素ガスの濃度がディテクタ31によって検知しやすくなる。
【0095】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ディテクタ値判定処理で、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であると判定されると、制御装置51は、水素濃度調整処理を実行する。このため、水素濃度調整処理実行後のディテクタ判定処理は、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度を高めた状態で行われる。その結果、ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値はディテクタ用閾値Tb未満にならず、正常値となる。
【0096】
燃料電池システム10の制御方法では、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満となった時間が確定用カウンタ閾値Taに到達する前に、燃料電池ユニット11の周囲の水素ガスの濃度をディテクタ用閾値Tb以上に高めた状態にする。この状態で、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であるか否かを判定する。このため、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が異常値となることを抑制できる。つまり、ステップS1での判定が正確に行われる。その結果として、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ31が異常であると判定されることを抑制できる。
【0097】
(2)制御装置51は、水素濃度調整処理の実行後、設定処理を実行する。このため、ディテクタ判定処理は、ラジエータファン21a及び補機用ファン24が回転しない状況下で行われる。したがって、水素濃度調整処理によって水素ガスの濃度を高めた状態が、ラジエータファン21a及び補機用ファン24からの送風によって崩されることを抑制できる。つまり、ディテクタ判定処理は、水素濃度調整処理によって水素ガスの濃度を高めた状態を維持して実行される。このため、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が異常値となることを抑制できる。つまり、ステップS1での判定が正確に行われる。その結果として、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ31が異常であると判定されることを抑制できる。
【0098】
(3)水素濃度調整処理は、通常のパージ処理実行時に比べてインジェクタ17bからの水素ガスの供給量を増加させる処理である。つまり、水素濃度調整処理は、既に実行されているパージ処理において水素ガスの供給量を増やすだけの処理である。したがって、燃料電池システム10の制御方法によれば、新たに処理を追加することなく、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定できる。
【0099】
(4)燃料電池システム10は、2つのディテクタ31を備えている。2つのディテクタ31のそれぞれについて、ディテクタ31の機能が正常か否かの判定を行う。例えば、2つのうちの1つのディテクタ31について機能が正常か否かの判定を行う場合と比べると、正常に機能するディテクタ31を1つでも多く確保することに繋がる。その結果、正常に機能するディテクタ31を残して、燃料電池システム10における水素ガスの漏洩を検知できる状態を維持できる。
【0100】
(5)燃料電池システム10のディテクタ31は、燃料電池ユニット11の各部品からの透過や漏出により、わずかながらも排出された水素ガスの濃度を検知するために設けられている。このディテクタ31が水素ガスの濃度を検知する機能を利用して、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定している。そして、ディテクタ判定処理では、水素濃度調整処理を実行するだけで、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定できる。つまり、燃料電池システム10にハードウェアを追加することなく、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定できる。
【0101】
上記の実施形態に制限されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○水素濃度調整処理は、インジェクタ17bによる水素ガスの供給量を増加させる処理ではなく、次に説明する処理であってもよい。
【0102】
この形態の水素濃度調整処理は、燃料電池ユニット11における燃料電池スタック13の発電が停止された後の次の燃料電池ユニット11の起動時、又は燃料電池スタック13による発電量がゼロとされた後の燃料電池スタック13の発電開始時に実行される。
【0103】
水素濃度調整処理が実行されると、制御装置51は、カソード側開閉弁18aを閉じたままとする。また、制御装置51は、アノード側開閉弁19dは開く。そして、インジェクタ17bから水素ガスを燃料電池スタック13に供給する。供給量は、通常のパージ処理と同じでもよいし、燃料電池スタック13の発電量に応じた水素ガスの供給量でもよい。
【0104】
カソード側開閉弁18aが閉じられているため、燃料電池スタック13にエアは供給されない。このため、インジェクタ17bから燃料電池スタック13に供給された水素ガスはエア中の酸素と反応しない。よって、水素ガスは、アノードオフガス排出路19a、気液分離器26、及びアノード側開閉弁19dを経由して、希釈器16から排出ガスとして排出される。燃料電池スタック13にエアが供給されていないため、燃料電池スタック13から排出されるカソードオフガスはほとんどない。このため、希釈器16におけるカソードオフガスによるアノードオフガスの希釈は僅かとなる。よって、希釈器16から排出される排出ガスにおいて、水素ガスの濃度は相対的に高くなる。よって、燃料電池スタック13から排出される水素ガスの濃度は、調整前の濃度よりも高く、かつディテクタ用閾値Tb以上の調整後濃度に調整される。これにより、水素濃度調整処理実行後のディテクタ判定処理は、燃料電池ユニット11の周囲の水素ガスの濃度を高めた状態で行われる。その結果、ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値はディテクタ用閾値Tb未満にならず、正常値となる。
【0105】
なお、水素濃度調整処理は、インジェクタ17bによる水素ガスの供給量を増加させる処理、及び燃料電池スタック13に対するエアの供給を停止して、水素ガス濃度を相対的に高くする処理の両方としてもよい。
【0106】
○ステップS3とステップS4の処理順序は入れ替えてもよい。
○燃料電池ユニット11の起動後、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を停止させた後に、水素濃度調整処理を行ってもよい。
【0107】
○ディテクタ判定処理は、ラジエータファン21a及び補機用ファン24を停止させることなく実行してもよい。
○第2モードM2では、ラジエータファン21a及び補機用ファン24の回転数である第2動作量を、ゼロより大きく、かつ第1動作量より少なくしてもよい。この場合、第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に発生する空気の流れWが、第1モードM1より少なくなるといえる。
【0108】
○燃料電池システム10は、筐体12を備えていなくてもよい。この場合、燃料電池ユニット11及びディテクタ31は、フォークリフトFの収容部Fbに直接収容される。
○燃料電池システム10は、定置型燃料電池システムであってもよい。この場合、燃料電池システム10は、筐体として外装パネルを備えていてもよいし、筐体12を備えていなくてもよい。
【0109】
○燃料電池システム10は、補機用ファン24を備えていなくてもよい。この場合、送風部の一例であるファンは、ラジエータファン21aだけとなる。
○ディテクタ31は1つだけであってもよいし、3つ以上であってもよい。ディテクタ31が3つ以上の場合、ステップS1では、3つ以上のディテクタ値のそれぞれがディテクタ用閾値Tb未満のときに、判定をYESとするのが好ましい。
【0110】
○ステップS1では、2つのディテクタ値のうち、1つのディテクタ値だけがディテクタ用閾値Tb未満のときに、判定をYESとしてもよい。
○ステップS1で判定がYESとなった後、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上か否かの判定(ステップS2)は行わずに、水素濃度調整処理フラグを記憶部51bにオンしてもよい。この場合、カウンタ51cによる異常カウンタ値の計測は行われない。そして、ディテクタ判定処理は、異常カウンタ値とカウンタ閾値Tcとの比較及び異常カウンタ値と確定用カウンタ閾値Taとの比較は行わずに、ディテクタ値とディテクタ用閾値Tbとの比較だけで行われる。
【0111】
○カウンタ51cの代わりにタイマを用いてもよい。そして、ディテクタ31が異常とみなされる時間をタイマにより計測してもよい。
○送風部は、通気口12fを開閉する扉であってもよい。第1モードM1では、通気口12fは開かれる。すると、通気口12fを介して、筐体12内には自然の空気の流れWが発生する。第2モードM2では、通気口12fは閉じられるか、第1モードM1よりも開口面積が小さくされる。
【0112】
○燃料電池ユニット11の燃料電池は、複数の燃料電池セルをスタック化したものでなく、1つの燃料電池セルでもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0113】
(イ)前記送風部は、前記筐体の内部を通過するように前記燃料電池システムの周囲に空気の流れを発生させるファンである。
(ロ)前記燃料電池システムは前記ディテクタを複数備え、前記ディテクタ値判定処理では、複数の前記ディテクタ値のそれぞれが前記ディテクタ用閾値未満であるか否かを判定する。
【符号の説明】
【0114】
10…燃料電池システム、11…燃料電池ユニット、13…燃料電池としての燃料電池スタック、17b…インジェクタ、18a…カソード側開閉弁、19a…アノードオフガス排出路、19b…カソードオフガス排出路、19d…アノード側開閉弁、21a…送風部としてのラジエータファン、24…送風部としての補機用ファン、31…ディテクタ、51…制御装置。
図1
図2
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図6