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特開2023-173659ミラーユニット及びヘッドアップディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173659
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ミラーユニット及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231130BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231130BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086078
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】吹野 陽平
(72)【発明者】
【氏名】田中 通夫
(72)【発明者】
【氏名】宮下 和広
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H042DA20
2H042DE01
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA46
3D344AA11
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】製造を容易とすることができるミラーユニット及びヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ミラーユニットは、表示光を反射するミラー本体部と、ミラー本体部の回転軸AXに沿って延び、ミラー本体部とともに回転軸AXを中心に回転可能に支持される軸部82と、軸部82が回転軸AXを中心に回転可能に支持された状態で、弾性力により軸部82を軸部82のラジアル方向R及びスラスト方向Sへ押圧する線バネ81と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するミラー本体部と、
前記ミラー本体部の回転軸に沿って延び、前記ミラー本体部とともに前記回転軸を中心に回転可能に支持される軸部と、
前記軸部が前記回転軸を中心に回転可能に支持された状態で、弾性力により前記軸部を前記軸部のラジアル方向及びスラスト方向へ押圧する線バネと、を備える、
ミラーユニット。
【請求項2】
金属製の前記線バネ及び樹脂製の前記軸部の間に介在し、樹脂により形成され、前記軸部が軸支持部により前記回転軸を中心に回転可能に支持された状態で、前記線バネからの弾性力を受けて、前記軸部を前記ラジアル方向及び前記スラスト方向へ前記軸支持部に向けて押圧する介在部材を備える、
請求項1に記載のミラーユニット。
【請求項3】
前記線バネは、前記回転軸に直交する方向に延び、前記ミラー本体部及び前記軸部を収容するケース内の底面に形成されるバネ収容部に収容され、
前記軸部は、前記回転軸に対して傾斜する第1傾斜面を備え、
前記介在部材は、前記回転軸に対して傾斜し、前記第1傾斜面に接触することにより、前記軸部を前記ラジアル方向及び前記スラスト方向へ押圧する第2傾斜面を備える、
請求項2に記載のミラーユニット。
【請求項4】
前記介在部材は、前記線バネが嵌まる凹部を備える、
請求項2又は3に記載のミラーユニット。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載のミラーユニットと、
表示光を前記ミラーユニットに向けて放射する表示器と、を備え、
前記ミラーユニットは、前記表示器からの前記表示光を被投射部材に向けて反射することにより虚像を表示する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミラーユニット及びヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のミラーユニットは、板バネの弾性力により、反射部材の被支持部を支持部に押し付けるように構成されている。
また、特許文献2に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、断面コの字状の弾性部材である板バネの弾性力により、反射部の被支持部と支持部を互いに押し付け合うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-78966号公報
【特許文献2】特開2016-180796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に記載の構成では、曲げ加工等により板バネを製造するため、板バネの弾性力のバラツキを少なく製造することが困難であった。
【0005】
本開示は、上記実状を鑑みてなされたものであり、製造を容易とすることができるミラーユニット及びヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係るミラーユニットは、光を反射するミラー本体部と、前記ミラー本体部の回転軸に沿って延び、前記ミラー本体部とともに前記回転軸を中心に回転可能に支持される軸部と、前記軸部が前記回転軸を中心に回転可能に支持された状態で、弾性力により前記軸部を前記軸部のラジアル方向及びスラスト方向へ押圧する線バネと、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の第2の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、前記ミラーユニットと、表示光を前記ミラーユニットに向けて放射する表示器と、を備え、前記ミラーユニットは、前記表示器からの前記表示光を被投射部材に向けて反射することにより虚像を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ミラーユニット及びヘッドアップディスプレイ装置において、製造を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
図2】本開示の一実施形態に係る上ケース部及びミラー本体部が省略されたヘッドアップディスプレイ装置の部分的な斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係る上ケース部が省略されたヘッドアップディスプレイ装置の部分的な斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係る下ケース部が省略されたヘッドアップディスプレイ装置の部分的な側面図である。
図5】本開示の一実施形態に係る一対のカラー押さえ部、ミラー軸機構、軸支持部及びバネ収容部の斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係るカラー押さえ部、ミラー軸機構、軸支持部及びバネ収容部の斜視図である。
図7】本開示の一実施形態に係るミラー軸機構、軸支持部及びバネ収容部の分解斜視図である。
図8】本開示の一実施形態に係る軸部、介在部材、線バネ及びバネ収容部の断面図である。
図9】本開示の一実施形態に係る切断されたバネ収容部及び線バネの斜視図である。
図10】本開示の一実施形態に係るカラー押さえ部、ミラー軸機構、軸支持部及びバネ収容部の断面図である。
図11】本開示の一実施形態に係るカラー押さえ部、ミラー軸機構、軸支持部及びバネ収容部の断面図である。
図12】本開示の変形例に係る軸部、カラー、介在部材、線バネ及びバネ収容部の平面図である。
図13】本開示の変形例に係る軸部、カラー、介在部材、線バネ及びバネ収容部の正面図である。
図14】本開示の変形例に係る軸部、カラー、介在部材、線バネ及びバネ収容部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一実施形態に係るミラーユニット及びヘッドアップディスプレイ装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置は、自動車に搭載されている。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示光Lを被投射部材の一例であるウインドシールド201に投射することにより、車両情報を含む複数の虚像Vを表示する。
【0011】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置100の構成について説明する。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、ミラー軸機構80L,80Rを含むミラーユニット50と、折り返しミラー60と、表示器20と、ミラー駆動機構70と、ケース30と、を備える。
【0012】
表示器20は、画像を表す表示光Lを放射する。表示器20は、液晶パネル及び照明装置を有するタイプであってもよいし、DMD(Digital Micro mirror Device)素子等の反射型表示素子及びプロジェクタを有するタイプであってもよい。
【0013】
折り返しミラー60は、表示器20から放射された表示光Lをミラーユニット50に向けて反射する。折り返しミラー60は、表示器20の上方に位置し、折り返しミラー60の反射面は、車両前下方向を向いている。折り返しミラー60は、平面鏡又は凹面鏡である。
なお、折り返しミラー60は省略されてもよい。
【0014】
ミラーユニット50は、折り返しミラー60にて反射した表示光Lをウインドシールド201に向けて反射する。ミラーユニット50の反射面55aは、車両後上方向を向いている。ウインドシールド201で反射した表示光Lは視認者(主に運転者)に到達する。
ミラーユニット50の具体的な構成については後述する。
【0015】
ミラー駆動機構70は、ミラーユニット50を回転軸AXを中心に回転させる。回転軸AXは車幅方向(図1の紙面垂直方向)に沿って延びる。ミラー駆動機構70は、例えば、モータと、モータの回転力を直線運動に変換する変換機構と、を備え、この変換機構により変換された直線運動をミラーユニット50に伝達することによりミラーユニット50を回転軸AXを中心に回転させる。
【0016】
図1に示すように、ケース30は、遮光性の樹脂又は金属により中空状に形成されている。ケース30は、下ケース部31と、上ケース部32と、を備える。
上ケース部32は、下ケース部31の開口を塞ぐ蓋部として形成されている。上ケース部32は、ミラーユニット50が反射した表示光Lが透過する光透過性部材からなる窓部32aを備える。
【0017】
図4及び図5に示すように、上ケース部32は、ミラーユニット50の後述する軸受けに相当するカラー87を押さえる一対のカラー押さえ部33L,33Rを備える。一対のカラー押さえ部33L,33Rは、上ケース部32の内面の窓部32aの外周に位置し、窓部32aを介して回転軸AXに沿う方向の両側に配置される。一対のカラー押さえ部33L,33Rは、それぞれ、下方向に延びる板状をなし、下端部がカラー87の外周面の上部に接触する。
【0018】
図1に示すように、下ケース部31は、上方向に開口した有底の箱状に形成されている。下ケース部31内には、ミラーユニット50、折り返しミラー60、表示器20及びミラー駆動機構70が収容されている。
【0019】
図2に示すように、下ケース部31は、一対のバネ収容部35L,35Rと、一対の軸支持部36L,36Rと、を備える。
バネ収容部35L及び軸支持部36Lは、視認者から見て、下ケース部31の底面31Bの左側端部に位置する。バネ収容部35R及び軸支持部36Rは、視認者から見て、下ケース部31の底面31Bの右側端部に位置する。下ケース部31の底面31Bは、ミラーユニット50の裏側に対向する面であり、車両前方に向かうにつれて上方向へ向かうように傾斜している。
【0020】
一対のバネ収容部35L,35Rは、それぞれ後述する線バネ81を収容する。一対のバネ収容部35L,35Rは、それぞれ車両前後方向に沿って延び、車幅方向に離れた位置に設けられる。一対のバネ収容部35L,35Rは、互いに平行をなす。各バネ収容部35L,35Rは、下ケース部31の底面31Bに車両前後方向に長いバネ収容穴35hを有する。バネ収容穴35hは、図9に示すように、断面略U字状をなす。
【0021】
バネ収容部35Lは、図6に示すように、第1バネ支持部35a,35b,35c,35dと、図8に示すように、第2バネ支持部35e,35fと、を備える。
図6及び図9に示すように、第1バネ支持部35a,35bは、それぞれ線バネ81の第1端部を線バネ81の幅方向(径方向)から挟持する。第1バネ支持部35a,35bは、バネ収容穴35h内の側面に位置し、互いに線バネ81の幅方向に対向する。第1バネ支持部35a,35bは、バネ収容穴35hの深さ方向から見て、線バネ81の外周面に突出する凸状(本例では、三角形凸状)をなす。
第1バネ支持部35c,35dは、それぞれ線バネ81の第2端部を線バネ81の幅方向(径方向)から挟持する。第1バネ支持部35c,35dは、バネ収容穴35h内の側面に位置し、互いに線バネ81の幅方向に対向する。第1バネ支持部35c,35dは、バネ収容穴35hの深さ方向から見て、線バネ81の外周面に突出する凸状(本例では、三角形凸状)をなす。
【0022】
図8に示すように、第2バネ支持部35e,35fは、それぞれ、バネ収容穴35hの底面に位置し、線バネ81の第1端部及び第2端部に接触する凸状(本例では、線バネ81の幅方向から見て半円凸状)をなす。第2バネ支持部35e,35fのバネ収容穴35hの底面に対する高さが高くなるにつれて、線バネ81が介在部材85を介して軸部82に付与する力が大きくなる。
図7に示すように、第2バネ支持部35eは、第1バネ支持部35a,35bを連結するように線バネ81の幅方向に延びる。第2バネ支持部35fは、第1バネ支持部35c,35dを連結するように線バネ81の幅方向に延びる。
【0023】
図2に示すように、軸支持部36L,36Rは、後述するカラー87を介して、ミラーユニット50の回転軸AX上の両側に位置する一対の軸部82を回転可能に支持する。軸支持部36L,36Rは、下ケース部31の底面31Bに立設されている。軸支持部36L,36Rは、バネ収容部35L,35Rを車幅方向の両側から挟み込むように配置される。軸支持部36Lは、バネ収容部35Lの長手方向の中央部に位置する。軸支持部36Rは、バネ収容部35Rの長手方向の中央部に位置する。
【0024】
図7に示すように、軸支持部36Lは、カラー収容穴部36a,36bを備える。カラー収容穴部36a,36bは、軸支持部36Lの上端面に形成される。カラー収容穴部36a,36bは、回転軸AXに沿う方向に繋がるように並べられ、互いに径の異なる上方向に開口する半円穴状をなす。カラー収容穴部36aは、カラー収容穴部36bよりも外側(軸部82から離れた側)に位置し、カラー収容穴部36bよりも小径で、かつ、回転軸AXに沿う方向の厚さが厚く形成されている。カラー収容穴部36a,36bの中心部は回転軸AXに一致するように形成されている。
軸支持部36Rは、回転軸AXに沿う方向に対称で軸支持部36Lと同様に構成されるため、その説明を省略する。
【0025】
次に、ミラーユニット50の具体的な構成について説明する。
図3に示すように、ミラーユニット50は、ミラー本体部55と、ミラー軸機構80L,80Rと、を備える。ミラー本体部55は、回転軸AXに沿う方向に長い凹面ミラーである。ミラー本体部55は、回転軸AXに沿う方向と回転軸AXに直交する方向に凹状に湾曲する板状をなすミラーホルダ55hと、ミラーホルダ55hの凹状面に形成される表示光を反射させる反射面55aと、を備える。
【0026】
ミラー軸機構80L,80Rは、それぞれ、ミラー本体部55の回転軸AXに沿う方向の両側に位置し、ミラー本体部55を回転軸AXを中心に回転可能に支持する。
図6及び図7に示すように、ミラー軸機構80Lは、線バネ81と、軸部82と、介在部材85と、カラー87と、を備える。線バネ81は金属製であり、軸部82、介在部材85及びカラー87はそれぞれ樹脂製である。
【0027】
線バネ81は、線状に延びる金属材からなる。線バネ81は、バネ収容部35Lに収容されている。詳しくは、線バネ81の第1端部は、第2バネ支持部35eに接触した状態で、第1バネ支持部35a,35bにより挟持される。線バネ81の第2端部は、第2バネ支持部35fに接触した状態で、第1バネ支持部35c,35dにより挟持される。これにより、線バネ81はバネ収容部35Lで両端支持され、線バネ81の中央部で弾性力を発生させることができる。
【0028】
図3に示すように、軸部82は、回転軸AX上に延びる略円柱状をなし、ミラーホルダ55hの側面に連結されている。
図7に示すように、軸部82は、カラー収容部82aと、軸本体部82bと、軸部凸部82cと、を備える。
軸本体部82bは、回転軸AXに沿って延びる略円柱状をなす。軸本体部82bの第1端面(図7の左側端面)はミラーホルダ55h(図3参照)の側面に連結され、軸本体部82bの第2端面(図7の右側端面)はカラー収容部82aに連結される。
カラー収容部82aは、略半円球状をなし、略半円球状の頂点部位が軸本体部82bの第2端面に連結されている。カラー収容部82aは、カラー87内に回転軸AXを中心に摺動回転可能に収容されている。
軸部凸部82cは、軸本体部82bの外周面に形成されている。軸部凸部82cは、回転軸AXを中心とした周方向に沿って延び、この周方向から見て三角形をなしている。軸部凸部82cは、軸部82のカラー収容部82aと反対側に形成される傾斜面82dを備える。傾斜面82dは、回転軸AXに沿う方向においてカラー収容部82aに近づくにつれて、軸部82の径方向外側に向かうように傾斜する。傾斜面82dは、介在部材85の後述する傾斜面85eに接触する面である。
【0029】
図7及び図10に示すように、カラー87は、軸部82を回転可能に支持する滑り軸受けである。カラー87は、筒部87aと、鍔部87bと、を備える。筒部87aは、回転軸AXを中心とした有底の円筒状をなす。
図10に示すように、筒部87aは、筒部87aの底部に位置し、カラー87内に収容される軸部82が接触する位置決め凸部87t(図10参照)を有する。筒部87aは、軸支持部36Lのカラー収容穴部36aに収容される。カラー押さえ部33Lの下端部が筒部87aをカラー収容穴部36aに向けて押し付けることにより、カラー87がカラー収容穴部36a,36bに固定される。筒部87a内には、軸部82のカラー収容部82aが回転可能に収容されている。
図7に示すように、鍔部87bは、筒部87aの介在部材85側の端部に連結され、回転軸AXを中心とした平板リング状をなす。鍔部87bは、軸支持部36Lのカラー収容穴部36bに回転可能に収容される。鍔部87bがカラー収容穴部36bに収容されることにより、カラー87が回転軸AXに沿う方向に固定される。
【0030】
図7に示すように、介在部材85は、線バネ81の延出方向の中央部分に配置され、線バネ81により軸部82に向けて押し付けられ、カラー87内の軸部82にスラスト方向Sとラジアル方向R(図10参照)に分解される荷重Fを加える。荷重Fは、回転軸AXに対して傾斜する方向に作用する。
介在部材85は、本体部85aと、押圧凸部85bと、バネ嵌合部85cと、を備える。
【0031】
本体部85aは、回転軸AXに沿う方向と線バネ81の延出方向の2方向に沿う平板状をなす。本体部85aは、線バネ81の延出方向に長い長方形板状をなす。
バネ嵌合部85cは、本体部85aの下面(線バネ81側の面)に位置する。バネ嵌合部85cは、線バネ81が嵌まる凹部85dを備える。凹部85dは、線バネ81に沿う方向に延び、線バネ81の上部分に対応する半円状をなす。
【0032】
押圧凸部85bは、本体部85aの上面に位置し、軸部82の軸部凸部82cを押圧する部位である。押圧凸部85bは、線バネ81の延出方向において、本体部85aの上面中央に位置し、回転軸AXに沿う方向において、カラー87から遠い側に設けられる。押圧凸部85bは、線バネ81の延出方向から見て台形形状をなす。押圧凸部85bは、押圧凸部85bのカラー87側に位置する傾斜面85eを備える。図10に示すように、傾斜面85eは、軸部82の傾斜面82dに線接触し、回転軸AXに沿う方向においてカラー87に近づくにつれて本体部85aに向かうように傾斜する。
以上で、ミラー軸機構80Lの構成の説明を終了する。
【0033】
ミラー軸機構80Lにおいては、線バネ81の弾性力により、介在部材85がカラー87内の軸部82に向けて押し付けられる。この際、図10に示すように、介在部材85の傾斜面85eと軸部82の傾斜面82dの線接触により、傾斜面82d,85eに直交する方向に荷重Fが軸部82に加わる。この荷重Fは、ラジアル方向Rの荷重とスラスト方向Sの荷重に分解される。このため、軸部82に加わるラジアル方向Rへの荷重が筒部87aの内周面に作用し、軸部82に加わるスラスト方向Sへの荷重が筒部87aの底部の位置決め凸部87tに作用する。これにより、カラー87内で軸部82がラジアル方向Rとスラスト方向Sへの力で保持される。
軸部82が回転軸AXを中心に回転しても、介在部材85の傾斜面85eと軸部82の傾斜面82dの接触位置が回転軸AXを中心とした周方向に変化するが、上記同様に、カラー87内で軸部82をラジアル方向Rとスラスト方向Sへの力で保持した状態が維持される。
【0034】
図11に示すように、ミラー軸機構80Rは、ミラー軸機構80Lと同様に、線バネ81、軸部82、介在部材85及びカラー87を備え、ミラー軸機構80Lと回転軸AXに沿う方向に反転した構成をなす。ここでは、ミラー軸機構80Lとの相違点のみを説明する。
ミラー軸機構80Rにおいては、介在部材85の傾斜面85eと軸部82の傾斜面82dが接触せず、介在部材85の押圧凸部85bの上面85fが軸部82の軸本体部82bの外周面に接触する。これにより、ミラー軸機構80Rにおいては、介在部材85は、線バネ81の弾性力によりラジアル方向Rにのみ軸部82に力を加える。
以上の構成では、一対の軸部82の一方にのみスラスト方向Sの荷重が加わることで、反射面55aの歪みが抑制される。また、一対の軸部82の両方にラジアル方向Rの荷重が加わることで、ミラーユニット50のガタツキ、ひいては虚像Vの像ブレが抑制される。
【0035】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ミラーユニット50は、表示光Lを反射するミラー本体部55と、ミラー本体部55の回転軸AXに沿って延び、ミラー本体部55とともに回転軸AXを中心に回転可能に支持される軸部82と、軸部82が回転軸AXを中心に回転可能に支持された状態で、弾性力により軸部82を軸部82のラジアル方向R及びスラスト方向Sへ押圧する線バネ81と、を備える。
この構成によれば、軸部82をラジアル方向R及びスラスト方向Sへ押圧する手段として、線バネ81が利用される。線バネ81は、板バネと比べて弾性力が大きく、バラツキも少ないため、弾性力不足による歩留まりを向上でき、ひいては製造することが容易とすることができる。また、線バネ81は、線材から切り出すだけなので、板バネで必要となる曲げ加工や打ち抜き加工が不要となり、製造が容易である。また、線バネ81は、板バネと比較して塑性変形に到るまでに耐えられる外力が大きい。これは、他部材の公差により外力が増大した場合であっても、線バネ81が弾性力を発揮できる点で歩留まりを良くし、ひいては製造することが容易とすることができる。
より具体的には、例えば、板バネでは、材料特性の制約から十分な荷重を発生させるためには、加工時の公差に応じて弾性力が著しく変化するので高い加工精度が必要であったり、たわみ量のバラツキで大きな荷重変化が発生したりするなど設計上の自由度が取りにくいといった問題点があった。この点、線バネ81では、このような問題点がなく、設計自由度が改善する。さらに、板バネでは、このように自由度が少ない状態で製品を成り立たせるために板バネを凹面鏡と保持する固定側に精度よく組み付ける必要が発生し、組み立て作業が複雑になっていた。この点、線バネ81では、高い組み付け精度が要求されないため、組み立て作業が容易となる。
【0036】
(2)ミラーユニット50は、金属製の線バネ81及び樹脂製の軸部82の間に介在し、樹脂により形成され、軸部82が軸支持部の一例であるカラー87により回転軸AXを中心に回転可能に支持された状態で、線バネ81からの弾性力を受けて、軸部82をラジアル方向R及びスラスト方向Sへカラー87に向けて押圧する介在部材85を備える。
この構成によれば、介在部材85により、軸部82が線バネ81との間で摺動摩耗することが抑制される。また、線バネ81と軸部82の間での摺動異音の発生を抑制することができる。
また、介在部材85を設けることで、軸部82又は線バネ81に潤滑剤や潤滑メッキ等の処理を施す必要がなくなる。
【0037】
(3)線バネ81は、回転軸AXに直交し、ミラー本体部55及び軸部82を収容するケース30内の底面31Bに形成されるバネ収容部35Lに収容される。軸部82は、回転軸AXに対して傾斜する第1傾斜面の一例である傾斜面82dを備える。介在部材85は、回転軸AXに対して傾斜し、傾斜面82dに接触することにより、軸部82をラジアル方向R及びスラスト方向Sへカラー87に向けて押圧する第2傾斜面の一例である傾斜面85eを備える。
この構成によれば、軸部82の傾斜面82dと介在部材85の傾斜面85eの接触により、線バネ81の一方向(ラジアル方向R)のみに作用する弾性力が、ラジアル方向R及びスラスト方向Sへの押圧力へ分解される。これにより、1つの弾性部材(線バネ81)で2方向の押圧力を発生させることができる。
【0038】
(4)介在部材85は、線バネ81が嵌まる凹部85dを備える。
この構成によれば、介在部材85が線バネ81からの弾性力を受けやすくなる。
【0039】
(5)ヘッドアップディスプレイ装置100は、ミラーユニット50と、表示光Lをミラーユニット50に向けて放射する表示器20と、を備える。ミラーユニット50は、表示器20からの表示光Lを被投射部材の一例であるウインドシールド201に向けて反射することにより虚像Vを表示する。
この構成によれば、線バネ81の弾性力のバラツキが少なくなるため、ミラーユニット50の軸部82に安定的な保持力を加えることができる。これにより、より安定的に虚像Vの像ブレを抑制することができる。
【0040】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0041】
(変形例)
上記実施形態においては、線バネ81と軸部82の間に介在部材85が設けられていたが、介在部材85は省略されてもよい。この場合、線バネ81の中央部(非端部)が軸部82の傾斜面82dを直接的に押圧してもよい。また、この場合、例えば、線バネ81と傾斜面82dの接触部の少なくとも何れかに摩擦を低減するコーティング層が形成されてもよい。また、傾斜面82dに、線バネ81が嵌まる凹部が形成されてもよい。
【0042】
上記実施形態において、カラー87は、図示しないボルトでカラー収容穴部36a,36bに固定されていてもよい。この場合、上ケース部32のカラー押さえ部33L,33Rが省略可能である。また、カラー87は、軸支持部36L,36Rと一体形成されてもよい。
【0043】
上記実施形態においては、一対の線バネ81は互いに平行をなすようにバネ収容部35L,35Rに収容されていたが、平行でなくてもよく、互いにハの字状にバネ収容部35L,35Rに収容されていてもよい。
【0044】
上記実施形態においては、バネ収容部35L,35Rは、下ケース部31の底面31Bに穴として形成されていたが、穴ではなく、底面31Bに立設され線バネ81の両端部を支持する支持ピンとして形成されてもよい。
【0045】
上記実施形態においては、線バネ81は一直線状をなすように形成されたが、一直線状に限らず、屈曲されて形成されてもよい。例えば、図12図14に示すように、線バネ181は、回転軸AXに直交する方向に延びる本体部181aと、本体部181aの両端から本体部181aに直交する方向に延びる屈曲部181b,181cと、屈曲部181b,181cの下端部から回転軸AXに沿う方向で互いに離れる方向に延びる脚部181d,181eと、を備える。脚部181d,181eは、バネ収容部135の底面に接触することにより、本体部181aがこの底面から離れた状態となる。
図13に示すように、介在部材185は、線バネ181の本体部181aが延びる方向から見て、上下方向に倒立した略V字状をなす。介在部材185の内角部に本体部181aが嵌まる。介在部材185の外角部は、軸部182の外周面に形成される凹部182aに嵌まる。凹部182aは、上下方向に倒立した略V字状の穴として形成される。凹部182aは、介在部材185が接触する傾斜面182bを備える。線バネ181の本体部181aの弾性力により、介在部材185が傾斜面182bを押すことにより、上記実施形態と同様に、介在部材185が軸部182をカラー87内でスラスト方向及びラジアル方向に押圧する。
【0046】
上記実施形態においては、1つの軸部82に対応して1つの線バネ81が設けられていたが、1つの軸部82に対応して2つの線バネ81が設けられ、2つの線バネ81の一方が軸部82をラジアル方向Rへ押圧し、2つの線バネ81の他方が軸部82をスラスト方向Sへ押圧してもよい。
【0047】
上記実施形態においては、ヘッドアップディスプレイ装置100が車載されていたが、これに限らず、飛行機、船等の乗り物に搭載されてもよい。また、被投射部材はウインドシールド201に限られず、専用のコンバイナであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
20 表示器
30 ケース
31 下ケース部
31B 底面
32 上ケース部
32a 窓部
33L,33R カラー押さえ部
35L,35R,135 バネ収容部
35a,35b,35c,35d 第1バネ支持部
35e,35f 第2バネ支持部
35h バネ収容穴
36L,36R 軸支持部
36a,36b カラー収容穴部
50 ミラーユニット
55 ミラー本体部
55a 反射面
55h ミラーホルダ
60 折り返しミラー
70 ミラー駆動機構
80L,80R ミラー軸機構
81 線バネ
82,182 軸部
82a カラー収容部
82b 軸本体部
82c 軸部凸部
82d,85e,182b 傾斜面
85,185 介在部材
85a,181a 本体部
85b 押圧凸部
85c バネ嵌合部
85d,182a 凹部
85f 上面
87 カラー
87a 筒部
87b 鍔部
87t 位置決め凸部
100 ヘッドアップディスプレイ装置
181 線バネ
181b,181c 屈曲部
181d,181e 脚部
201 ウインドシールド
F 荷重
L 表示光
R ラジアル方向
S スラスト方向
V 虚像
AX 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
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図14