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特開2023-173666ガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173666
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C03B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086090
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 直弘
(57)【要約】
【課題】ガラスフィルムの主面の傷を削減することのできるガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置を提供する。
【解決手段】ガラスフィルムの製造方法は、不要部付きガラスフィルムG1を、成形装置12を用いて成形する成形工程と、不要部付きガラスフィルムG1の不要部の少なくとも一部を処理装置13で分離して除去する処理を行う処理工程とを備える。ガラスフィルムの製造方法は、成形装置12から処理装置13まで不要部付きガラスフィルムG1を搬送する第1搬送工程と、処理ガラスフィルムG2を処理装置13から処理ガラスフィルムG2を収集する収集装置14まで搬送する第2搬送工程とを備える。搬送工程では、ガラスフィルムよりも軟質の搬送用シートCS1等の搬送用シート以外の部材が製品となるガラスフィルムに接触しない状態で、不要部付きガラスフィルムG1又は処理ガラスフィルムG2を搬送する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品となるガラスフィルムと前記ガラスフィルムの幅方向の両側縁に設けられた不要部とを有する不要部付きガラスフィルムを、成形装置を用いて成形する成形工程と、
前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部の少なくとも一部を処理装置で分離して除去する処理を行うことで、処理ガラスフィルムを得る処理工程と、
前記成形装置から前記処理装置まで前記不要部付きガラスフィルムを搬送する第1搬送工程と、
前記処理ガラスフィルムを前記処理装置から前記処理ガラスフィルムを収集する収集装置まで搬送する第2搬送工程と、を備え、
前記第1搬送工程及び前記第2搬送工程では、前記ガラスフィルムよりも軟質の搬送用シート以外の部材が製品となる前記ガラスフィルムに接触しない状態で、前記不要部付きガラスフィルム又は前記処理ガラスフィルムを搬送する、ガラスフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記処理装置は、前記ガラスフィルムが下方に撓んだ状態で前記不要部の高さを位置決めする位置決め装置を備える、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1搬送工程は、前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部を支持した状態であり、前記ガラスフィルムが下方に撓んだ状態で前記不要部付きガラスフィルムを搬送する工程を含む、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第2搬送工程は、前記処理ガラスフィルムの幅方向の両端部を支持した状態であり、前記ガラスフィルムが下方に撓んだ状態で前記処理ガラスフィルムを搬送する工程を含む、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ガラスフィルムは、下方から前記ガラスフィルムに向かって噴射される気体により浮上されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第1搬送工程は、前記成形装置から搬送された前記不要部付きガラスフィルムの進行方向を縦方向から横方向へ変換する方向変換工程を含み、
前記方向変換工程において、前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部のみを前記縦方向から前記横方向へ案内する複数の方向変換用ローラーで支持する、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第1搬送工程では、横方向に沿って前記不要部付きガラスフィルムを搬送するベルトコンベア装置を用いる搬送を含み、
前記ベルトコンベア装置は、ベルト本体と、前記ベルト本体に着脱可能な補助ベルトと、を備え、
前記補助ベルトにより前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部のみを支持する、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第2搬送工程では、横方向に沿って前記処理ガラスフィルムを搬送するベルトコンベア装置を用いる搬送を含み、
前記ベルトコンベア装置は、ベルト本体と、前記ベルト本体に着脱可能な補助ベルトと、を備え、
前記補助ベルトにより前記処理ガラスフィルムの両端部を支持する、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第1搬送工程では、横方向に沿って搬送される前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部を摺動可能に支持する摺動支持装置を用いる、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記第2搬送工程では、横方向に沿って搬送される前記処理ガラスフィルムの幅方向の両端部を摺動可能に支持する摺動支持装置を用いる、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記収集装置は、前記ガラスフィルムを巻き取る巻取装置、又は前記ガラスフィルムを枚葉で収集する枚葉収集装置である、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記ガラスフィルムは、厚さ寸法が0.3mm以下のアリカリアルミノシリケートガラスから構成される、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項13】
ガラスフィルムの製造装置であって、
幅方向の両側縁に沿って不要部が設けられた不要部付きガラスフィルムを成形する成形装置と、
前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部の少なくとも一部を分離して除去する処理を行うことで、処理ガラスフィルムを得る処理装置と、
前記処理ガラスフィルムを収集する収集装置と、
前記成形装置から前記処理装置まで前記不要部付きガラスフィルムを搬送する第1搬送装置と、
前記処理ガラスフィルムを前記処理装置から前記収集装置まで搬送する第2搬送装置と、を備え、
前記第1搬送装置及び前記第2搬送装置は、前記ガラスフィルムよりも軟質の搬送用シート以外の部材が製品となる前記ガラスフィルムに接触しない状態で、前記不要部付きガラスフィルム又は前記処理ガラスフィルムを搬送する、ガラスフィルムの製造装置。
【請求項14】
製品となるガラスフィルムと前記ガラスフィルムの幅方向の両側縁に設けられた不要部とを有する不要部付きガラスフィルムを、成形装置を用いて成形する成形工程と、
前記不要部付きガラスフィルム、又は、前記不要部付きガラスフィルムから前記不要部の少なくとも一部を分離して除去する処理を行った処理ガラスフィルムを、収集装置まで搬送する搬送工程と、を備え、
前記搬送工程では、前記ガラスフィルムよりも軟質の搬送用シート以外の部材が製品となる前記ガラスフィルムに接触しない状態で、前記不要部付きガラスフィルム又は前記処理ガラスフィルムを搬送する、ガラスフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、ガラスフィルムの製造方法は、成形装置を用いてガラスフィルムを成形する成形工程を備えている。このような成形工程では、製品となるガラスフィルム(つまり、品質を保証する部分)とガラスフィルムの幅方向の両側縁に設けられた不要部とを有する不要部付きガラスフィルムが得られる。ガラスフィルムの製造方法では、不要部付きガラスフィルムの不要部の少なくとも一部を除去する処理が行われた後、例えば、巻取装置で巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-084829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、成形工程で成形された不要部付きガラスフィルムを処理した後、巻取装置等で収集されるまでにガラスフィルムの主面に傷が生じることがある。
本発明の目的は、ガラスフィルムの主面の傷を削減することのできるガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置の各態様について説明する。
態様1のガラスフィルムの製造方法は、製品となるガラスフィルムと前記ガラスフィルムの幅方向の両側縁に設けられた不要部とを有する不要部付きガラスフィルムを、成形装置を用いて成形する成形工程と、前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部の少なくとも一部を処理装置で分離して除去する処理を行うことで、処理ガラスフィルムを得る処理工程と、前記成形装置から前記処理装置まで前記不要部付きガラスフィルムを搬送する第1搬送工程と、前記処理ガラスフィルムを前記処理装置から前記処理ガラスフィルムを収集する収集装置まで搬送する第2搬送工程と、を備え、前記第1搬送工程及び前記第2搬送工程では、前記ガラスフィルムよりも軟質の搬送用シート以外の部材が製品となる前記ガラスフィルムに接触しない状態で、前記不要部付きガラスフィルム又は前記処理ガラスフィルムを搬送する。この方法によれば、第1搬送工程及び第2搬送工程において、ガラスフィルムの主面に他の部材が接触することを要因とした傷の発生を防止することができる。従って、ガラスフィルムの主面の傷を削減することができる。
【0006】
態様2のガラスフィルムの製造方法では、態様1において、前記処理装置は、前記ガラスフィルムが下方に撓んだ状態で前記不要部の高さを位置決めする位置決め装置を備えてもよい。この方法によれば、例えば、不要部付きガラスフィルムの不要部の位置を安定させた状態で処理工程を行うことができる。
【0007】
態様3のガラスフィルムの製造方法では、態様1又は態様2において、前記第1搬送工程は、前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部を支持した状態であり、前記ガラスフィルムが下方に撓んだ状態で前記不要部付きガラスフィルムを搬送する工程を含んでもよい。この方法によれば、不要部付きガラスフィルムの姿勢を安定させて搬送することができる。
【0008】
態様4のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様3のいずれか一つの態様において、前記第2搬送工程は、前記処理ガラスフィルムの幅方向の両端部を支持した状態であり、前記ガラスフィルムが下方に撓んだ状態で前記処理ガラスフィルムを搬送する工程を含んでもよい。この方法によれば、処理ガラスフィルムの姿勢を安定させて搬送することができる。
【0009】
態様5のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様4のいずれか一つの態様において、前記ガラスフィルムは、下方から前記ガラスフィルムに向かって噴射される気体により浮上されていてもよい。この場合、上述した搬送用シート以外の部材がガラスフィルムに接触しない状態を維持しつつ、ガラスフィルムの姿勢を安定させて不要部付きガラスフィルム又は処理ガラスフィルムを搬送することができる。
【0010】
態様6のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様5のいずれか一つの態様において、前記第1搬送工程は、前記成形装置から搬送された前記不要部付きガラスフィルムの進行方向を縦方向から横方向へ変換する方向変換工程を含み、前記方向変換工程において、前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部のみを前記縦方向から前記横方向へ案内する複数の方向変換用ローラーで支持してもよい。この方法によれば、例えば、成形装置から縦方向に搬送される不要部付きガラスフィルムを横方向に容易に方向変換することができる。
【0011】
態様7のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様6のいずれか一つの態様において、前記第1搬送工程では、横方向に沿って前記不要部付きガラスフィルムを搬送するベルトコンベア装置を用いる搬送を含み、前記ベルトコンベア装置は、ベルト本体と、前記ベルト本体に着脱可能な補助ベルトと、を備え、前記補助ベルトにより前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部のみを支持してもよい。この方法によれば、例えば、平坦な搬送面を有するベルト本体に補助ベルトを装着することで、ガラスフィルムとベルト本体とを非接触とした状態で搬送することができる。
【0012】
態様8のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様7のいずれか一つの態様において、前記第2搬送工程では、横方向に沿って前記処理ガラスフィルムを搬送するベルトコンベア装置を用いる搬送を含み、前記ベルトコンベア装置は、ベルト本体と、前記ベルト本体に着脱可能な補助ベルトと、を備え、前記補助ベルトにより前記処理ガラスフィルムの両端部を支持してもよい。
【0013】
態様9のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様8のいずれか一つの態様において、前記第1搬送工程では、横方向に沿って搬送される前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部を摺動可能に支持する摺動支持装置を用いてもよい。この方法によれば、搬送される不要部付きガラスフィルムを、ガラスフィルムを非接触とした状態で容易に支持することができる。
【0014】
態様10のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様9のいずれか一つの態様において、前記第2搬送工程では、横方向に沿って搬送される前記処理ガラスフィルムの幅方向の両端部を摺動可能に支持する摺動支持装置を用いてもよい。
【0015】
態様11のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様10のいずれか一つの態様において、前記収集装置は、前記ガラスフィルムを巻き取る巻取装置、又は前記ガラスフィルムを枚葉で収集する枚葉収集装置であってもよい。
【0016】
態様12のガラスフィルムの製造方法では、態様1から態様11のいずれか一つの態様において、前記ガラスフィルムは、厚さ寸法が0.3mm以下のアリカリアルミノシリケートガラスから構成されてもよい。このように上記製造方法は、特に搬送工程において表面に傷欠陥が生じ易いアルカリアルミノシリケートガラスから構成されるガラスフィルムの製造において、歩留まりを高めることが可能となる。
【0017】
態様13のガラスフィルムの製造装置は、ガラスフィルムの製造装置であって、幅方向の両側縁に沿って不要部が設けられた不要部付きガラスフィルムを成形する成形装置と、前記不要部付きガラスフィルムの前記不要部の少なくとも一部を分離して除去する処理を行うことで、処理ガラスフィルムを得る処理装置と、前記処理ガラスフィルムを収集する収集装置と、前記成形装置から前記処理装置まで前記不要部付きガラスフィルムを搬送する第1搬送装置と、前記処理ガラスフィルムを前記処理装置から前記収集装置まで搬送する第2搬送装置と、を備え、前記第1搬送装置及び前記第2搬送装置は、前記ガラスフィルムよりも軟質の搬送用シート以外の部材が製品となる前記ガラスフィルムに接触しない状態で、前記不要部付きガラスフィルム又は前記処理ガラスフィルムを搬送する。
【0018】
態様14のガラスフィルムの製造方法は、製品となるガラスフィルムと前記ガラスフィルムの幅方向の両側縁に設けられた不要部とを有する不要部付きガラスフィルムを、成形装置を用いて成形する成形工程と、前記不要部付きガラスフィルム、又は、前記不要部付きガラスフィルムから前記不要部の少なくとも一部を分離して除去する処理を行った処理ガラスフィルムを、収集装置まで搬送する搬送工程と、を備え、前記搬送工程では、前記ガラスフィルムよりも軟質の搬送用シート以外の部材が製品となる前記ガラスフィルムに接触しない状態で、前記不要部付きガラスフィルム又は前記処理ガラスフィルムを搬送する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ガラスフィルムの主面の傷を削減する効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態におけるガラスフィルムの製造装置を示す概略側面図である。
図2図2は、ガラスフィルムの製造装置を示す概略平面図である。
図3図3は、処理装置を示す概略断面図である。
図4図4は、ベルトコンベア装置を示す概略断面図である。
図5図5は、ベルトコンベア装置を示す概略斜視図である。
図6図6は、摺動支持装置を示す概略断面図である。
図7図7は、摺動支持装置を示す概略斜視図である。
図8図8は、第1接触搬送装置を示す概略断面図である。
図9図9は、第1接触搬送装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ガラスフィルムの製造方法、及びガラスフィルムの製造装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0022】
<ガラスフィルムの製造装置>
図1及び図2に示すように、ガラスフィルムの製造装置11は、成形装置12と、処理装置13と、収集装置14とを備えている。ガラスフィルムの製造装置11は、さらに第1搬送装置15と、第2搬送装置16とを備えている。
【0023】
ガラスフィルムは、例えば、軽量性や曲げ性が求められるデバイスの材料として用いられる。ガラスフィルムの厚さ寸法は、好ましくは、0.3mm以下であり、より好ましくは、0.1mm以下であり、さらに好ましくは0.05mm以下であり、最も好ましくは、0.035mm以下である。ガラスフィルムの厚さ寸法の下限は、例えば、0.005mm以上である。このような厚さ寸法のガラスフィルムは、超薄板ガラス(UTG:Ultra Thin Glass)と呼ばれる。ガラスフィルムを構成するガラスとしては、例えば、ソーダガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスフィルムは、化学強化用のガラスフィルムであってもよい。化学強化用ガラスとしては、例えば、ガラス組成としてアルカリ金属酸化物を含むアルカリアルミノシリケートガラス、ソーダガラス等が挙げられる。アルカリアルミノシリケートガラスに含まれる金属酸化物は、LiO、NaO、及びKOから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。化学強化用ガラスは、アルカリアルミノシリケートガラスであることが好ましい。アルカリアルミノシリケートガラスは、質量%で、例えば、SiO:50~80%、Al:5~25%、B:0~15%、LiO:0~20%、NaO:1~20%、KO:0~10%を含有することが好ましい。なお、本明細書において、後述する不要部付きガラスフィルム、及び処理ガラスフィルムの状態においても、上述のガラスフィルムと同様のガラス組成を有する。
【0024】
本実施形態のガラスフィルム製造方法は、ガラスフィルムのビッカース硬度が585以下である場合、特には570以下である場合、560以下である場合、555以下である場合に好適である。ガラスフィルムのビッカース硬度が小さい場合、特に表面に傷が付き易くなるため、傷防止の効果をより一層享受しやすい。なお、本明細書に記載するビッカース硬度は、測定荷重を100gfとし、JIS Z2244に準拠した方法に基づいて測定した値を指す。
【0025】
<成形装置>
ガラスフィルムの製造装置11の成形装置12は、溶融ガラスから不要部付きガラスフィルムG1を成形する。不要部付きガラスフィルムG1は、製品となるガラスフィルムと、ガラスフィルムの幅方向の両側縁に設けられた不要部G1a,G1bとを有している。不要部G1a,G1bは、製品として利用されない不要ガラスフィルムである。本明細書では、製品となるガラスフィルムを単にガラスフィルムGpと言う場合がある。
【0026】
成形装置12は、例えば、オーバーフローダウンドロー法により不要部付きガラスフィルムG1を成形する。成形装置12は、溶融ガラスを流通する溝を有する成形部12aを備えている。成形部12aの溝に供給された溶融ガラスは、オーバーフローする。オーバーフローした溶融ガラスは、成形部12aの両面に沿って流下する。このように流下した溶融ガラスが成形部12aの下端で合流することで、フィルム状の溶融ガラスが得られる。フィルム状の溶融ガラスは、図面においてZ軸に沿った鉛直方向に牽引される。フィルム状の溶融ガラスが牽引される方向は、鉛直方向に対して、例えば、30°以内の範囲で傾斜していてもよい。
【0027】
成形装置12は、図示を省略したエッジローラー、エッジローラーの下方に配置されたアニーラー等を備えている。フィルム状の溶融ガラスの両端は、エッジローラーで挟み込まれた状態で下方に牽引される。フィルム状の溶融ガラスは、アニーラーに導かれる。アニーラーでは、フィルム状の溶融ガラスの除歪処理が施されることで、不要部付きガラスフィルムG1が得られる。
【0028】
成形装置12は、オーバーフローダウンドロー法以外の方法により、ガラスフィルムを成形する装置に変更することもできる。成形装置12は、例えば、スロット状の開口から溶融ガラスを流下させるスロットダウンドロー法を用いた成形装置であってもよい。また、成形装置12は、例えば、シート状の母材ガラスを再成形するリドロー法を用いて、ガラスフィルムを成形する装置であってもよい。
【0029】
<処理装置>
図1図3に示すように、ガラスフィルムの製造装置11の処理装置13は、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bの少なくとも一部を分離して除去する処理を行うことで、処理ガラスフィルムG2を得る装置である。処理装置13は、例えば、レーザー照射装置17と、位置決め装置18とを備えている。レーザー照射装置17は、一対のレーザー光照射部17a,17bを有している。一対のレーザー光照射部17a,17bは、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bにそれぞれ対応して配置される。
【0030】
一対のレーザー光照射部17a,17bは、不要部付きガラスフィルムG1の両側部にレーザー光LBを照射することで、不要部付きガラスフィルムG1を溶断する。このとき、不要部付きガラスフィルムG1は、レーザー光照射部17a,17bの下方位置で搬送されているため、レーザー光LBは、不要部付きガラスフィルムG1の長さ方向に沿って照射される。これにより、不要部付きガラスフィルムG1を処理ガラスフィルムG2と不要ガラスフィルムGa,Gbとに分離することができる。
【0031】
処理ガラスフィルムG2は、製品となるガラスフィルムGpのみから構成されていてもよいし、不要部G1a,G1bの一部を含んでいてもよい。すなわち、処理装置13は、不要部G1a,G1bの全体を取り除く装置であってもよいし、不要部G1a,G1bを部分的に取り除く装置であってもよい。本実施形態の処理装置13で得られる処理ガラスフィルムG2は、ガラスフィルムGpと、不要部G1a,G1bの一部とを有している。
【0032】
処理装置13は、レーザー光を用いて加熱したガラスに熱衝撃を加えることで割断するように構成することもできる。この場合、処理装置13は、レーザー照射装置17と、レーザーで加熱したガラスを冷却する冷却装置とを備えていてもよい。また、処理装置13は、不要部付きガラスフィルムG1にスクライブ線を形成した後、スクライブ線に沿って不要部付きガラスフィルムG1を割断するように構成することもできる。
【0033】
また、処理装置13は、ワイヤソーや丸ノコ(サーキュラーソー)等を用いて不要部付きガラスフィルムG1を機械的に切断するように構成することもできる。
図3に示すように、処理装置13の位置決め装置18は、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で不要部G1a,G1bの高さを位置決めする。位置決め装置18は、吸引部18a,18bを有している。吸引部18a,18bは、レーザー光照射部17a,17bと向かい合うように配置されている。吸引部18a,18bは、図示を省略した吸引孔を有している。吸引孔は、吸引部18a,18bの上面に開口している。
【0034】
吸引部18a,18bは、吸引孔から気体を吸引することで、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bにおいて、レーザー光LBを照射する部分を吸引する。これにより、不要部G1a,G1bにおいてレーザー光LBを照射する部分の浮き上がりを抑えることができる。このため、不要部G1a,G1bにおいてレーザー光LBを照射する部分と、レーザー光照射部17a,17bとの距離を安定させることができる。不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bは、吸引部18a,18bに接触した状態であってもよいし、吸引部18a,18bと非接触の状態であってもよい。
【0035】
位置決め装置18は、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bに対応して設けられる第1浮上部18c,18dと、第2浮上部18e,18fとを備えている。
第1浮上部18c,18dは、不要部付きガラスフィルムG1の幅方向において、吸引部18a,18bの外側に配置されている。第2浮上部18e,18fは、不要部付きガラスフィルムG1の幅方向において、吸引部18a,18bの内側に配置されている。
【0036】
第1浮上部18c,18d及び第2浮上部18e,18fは、図示を省略した噴射孔を有している。第1浮上部18c,18d及び第2浮上部18e,18fは、噴射孔から上方に気体を噴射することで、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bを浮上させる。なお、図面では、気体の流れを破線矢印で示している。
【0037】
上記のように吸引部18a,18bは、第1浮上部18c,18dと第2浮上部18e,18fとの間に配置されている。この場合、例えば、第1浮上部18c,18dと第2浮上部18e,18fとの間に位置する不要部G1a,G1bの下方へ膨出する変形を促進することができる。これにより、例えば、第1浮上部18c,18dと第2浮上部18e,18fとの間における不要部G1a,G1bの吸引が安定し易くなる。
【0038】
位置決め装置18は、ガラスフィルムGpを浮上させるガラスフィルム浮上部18gを備えている。ガラスフィルム浮上部18gは、図示を省略した噴射孔を有している。ガラスフィルム浮上部18gは、噴射孔からガラスフィルムGpに向けて気体を噴射する。ガラスフィルムGpは、下方からガラスフィルムGpに向かって噴射される気体により浮上される。
【0039】
<収集装置>
図1及び図2に示すように、ガラスフィルムの製造装置11の収集装置14は、処理ガラスフィルムG2を収集する。収集装置14の一例である巻取装置は、巻取ローラー14aと、巻取ローラー14aを回転駆動する図示しない駆動部とを備えている。収集装置14は、処理ガラスフィルムG2を保護する保護用シートPSが巻回されてなる保護用シートロールPSRを備えている。収集装置14は、保護用シートロールPSRから繰り出させた保護用シートPSを処理ガラスフィルムG2に重ね合わせるように供給する。収集装置14の巻取ローラー14aは、処理ガラスフィルムG2と保護用シートPSと重ね合わせた状態で処理ガラスフィルムG2と保護用シートPSとをロール状に巻き取る。これにより、ガラスフィルムロールGRが得られる。
【0040】
保護用シートPSとしては、処理ガラスフィルムG2よりも軟質なシートが用いられる。すなわち、保護用シートPSは、ガラスフィルムGpと擦れたときにガラスフィルムGpに傷を発生させないシートである。保護用シートPSとしては、樹脂シートであることが好ましく、発泡樹脂シートであることがより好ましい。
【0041】
収集装置14は、処理ガラスフィルムG2を枚葉で収集する枚葉収集装置であってもよい。枚葉収集装置は、例えば、処理ガラスフィルムG2を所定の長さで切断する切断装置と、所定の長さの処理ガラスフィルムと所定の長さの保護用シートとを重ね合わせた状態で配置する重ね合わせ装置とを備える。なお、収集装置14は、保護用シートPSを用いずに処理ガラスフィルムG2を収集するように構成してもよい。
【0042】
<第1搬送装置>
ガラスフィルムの製造装置11の第1搬送装置15は、成形装置12から処理装置13まで不要部付きガラスフィルムG1を搬送する。第1搬送装置15は、成形装置12で成形された長尺状の不要部付きガラスフィルムG1を連続して処理装置13に搬送できるように構成されている。
【0043】
第1搬送装置15は、方向変換装置19と、ベルトコンベア装置20と、摺動支持装置21と、第1接触搬送装置22とを上流側から順に備えている。
(方向変換装置)
第1搬送装置15の方向変換装置19は、成形装置12から搬送された不要部付きガラスフィルムG1の進行方向を縦方向から横方向へ変換する。方向変換装置19は、複数の方向変換用ローラー19a,19bを備えている。複数の方向変換用ローラー19a,19bは、不要部付きガラスフィルムG1の両不要部G1a,G1bのみを支持する。このような方向変換装置19は、不要部付きガラスフィルムG1のガラスフィルムGpと非接触の状態とされる。
【0044】
複数の方向変換用ローラー19a,19bは、方向変換用ローラー19a,19bの軸線方向から見て湾曲状に配列されている。複数の方向変換用ローラー19a,19bは、不要部付きガラスフィルムG1を鉛直方向から横方向へ案内する。不要部付きガラスフィルムG1は、図面においてX軸に沿った水平方向に案内されている。不要部付きガラスフィルムG1は、水平方向に対して傾斜する方向に案内されていてもよい。不要部付きガラスフィルムG1は、例えば、水平方向に対して上下にそれぞれ45°未満の範囲内となる方向に案内されることが好ましく、30°未満の範囲内となる方向に案内されることがより好ましい。
【0045】
(ベルトコンベア装置)
図2図4、及び図5示すように、第1搬送装置15のベルトコンベア装置20は、横方向に沿って不要部付きガラスフィルムG1を搬送する。ベルトコンベア装置20は、ベルト本体20aと、ベルト本体20aに着脱可能な補助ベルト20b,20cとを備えている。ベルトコンベア装置20は、補助ベルト20b,20cにより不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bのみを支持する。ベルト本体20aは、不要部付きガラスフィルムG1のガラスフィルムGpと非接触の状態とされる。ベルトコンベア装置20は、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で不要部付きガラスフィルムG1を搬送する。
【0046】
補助ベルト20b,20cは、図示を省略した連結部を有し、帯状のベルトが連結部で連結されることで無端状に形成されている。補助ベルト20b,20cは、ベルト本体20aの幅方向において離間して配置されている。補助ベルト20b,20cは、帯状のベルトを連結部で連結することで、ベルト本体20aに装着することができる。補助ベルト20b,20cは、帯状のベルトの連結部による連結を解除することで、ベルト本体20aから脱離させることができる。
【0047】
ベルトコンベア装置20のベルト本体20aは、図示を省略した噴射孔を有している。ベルト本体20aは、噴射孔からガラスフィルムGpに向けて気体を噴射する。ガラスフィルムGpは、下方からガラスフィルムGpに向かって噴射される気体により浮上される。
【0048】
(摺動支持装置)
図2図6、及び図7に示すように、第1搬送装置15の摺動支持装置21は、横方向に沿って搬送される不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bを摺動可能に支持する。摺動支持装置21は、基台部21aと、基台部21aに設けられる摺動支持部21b,21cとを備えている。
【0049】
摺動支持装置21は、摺動支持部21b,21cにより不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bのみを支持する。摺動支持装置21は、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で不要部付きガラスフィルムG1を支持する。
【0050】
摺動支持部21b,21cは、基台部21aの幅方向において離間して配置されている。摺動支持部21b,21cの材料としては、例えば、樹脂材料、金属材料、ガラス、セラミックス等が挙げられる。摺動支持部21b,21cの材料は、樹脂材料であることが好ましい。樹脂材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。樹脂材料には、炭素系材料等の帯電防止剤を含有させることもできる。
【0051】
摺動支持装置21の基台部21aは、不要部付きガラスフィルムG1のガラスフィルムGpと非接触の状態とされる。基台部21aは、図示を省略した噴射孔を有している。基台部21aは、噴射孔からガラスフィルムGpに向けて気体を噴射する。ガラスフィルムGpは、下方からガラスフィルムGpに向かって噴射される気体により浮上される。
【0052】
(第1接触搬送装置)
図1図2図8、及び図9に示すように、第1搬送装置15の第1接触搬送装置22は、ガラスフィルムGpよりも軟質の第1搬送用シートCS1を不要部付きガラスフィルムG1に接触させて不要部付きガラスフィルムG1を搬送する。第1接触搬送装置22は、第1搬送部22aと、第1搬送部22a上に第1搬送用シートCS1を連続的に供給する第1搬送用シート供給部22bとを備えている。
【0053】
第1搬送用シート供給部22bは、第1搬送用シートCS1が巻回されてなる搬送用シートロールCSRを備えている。第1搬送用シート供給部22bは、搬送用シートロールCSRから繰り出された第1搬送用シートCS1を第1搬送部22aと不要部付きガラスフィルムG1との間に供給する。第1搬送部22a上に供給された第1搬送用シートCS1は、処理装置13に向けて移動される。このように移動される搬送用シート上に不要部付きガラスフィルムG1を載置することによって不要部付きガラスフィルムG1を搬送することができる。第1搬送用シートCS1は、第1搬送部22a上を通過した後、下方に退避されることで、不要部付きガラスフィルムG1から離間する。
【0054】
第1搬送部22aは、第1搬送用シートCS1が摺動される上面を有する搬送台であってもよいし、第1搬送用シートCS1が載置されるベルトを有するベルトコンベア装置であってもよい。第1搬送用シートCS1としては、ガラスフィルムGpと擦れたときにガラスフィルムGpに傷を発生させないシートであれば特に限定されない。第1搬送用シートCS1としては、樹脂シートであることが好ましく、発泡樹脂シートであることがより好ましい。
【0055】
<第2搬送装置>
図1及び図2に示すように、ガラスフィルムの製造装置11の第2搬送装置16は、第2接触搬送装置23を備えている。第2接触搬送装置23は、ガラスフィルムGpよりも軟質の第2搬送用シートCS2を処理ガラスフィルムG2に接触させて処理ガラスフィルムG2を搬送する。第2接触搬送装置23は、第2搬送部23aと、第2搬送部23a上に第2搬送用シートCS2を連続的に供給する第2搬送用シート供給部23bとを備えている。
【0056】
第2搬送用シート供給部23bは、第1接触搬送装置22で使用した第1搬送用シートCS1を、第2搬送用シートCS2として処理装置13の下方から第2搬送部23aと処理ガラスフィルムG2との間に供給する。すなわち、第2搬送用シートCS2は、第1搬送用シートCS1を再利用したものである。第2搬送部23a上に供給された第2搬送用シートCS2は、収集装置14に向けて移動される。このように移動される第2搬送用シートCS2上に処理ガラスフィルムG2を載置することによって処理ガラスフィルムG2を搬送することができる。第2搬送用シートCS2は、第2搬送部23aを通過した後、図示を省略した巻取機で巻き取られる。
【0057】
<ガラスフィルムの製造方法>
次に、ガラスフィルムGpの製造方法について説明する。
ガラスフィルムGpの製造方法は、成形工程と、処理工程と、第1搬送工程と、第2搬送工程とを備えている。図1及び図2に示すように、成形工程では、不要部付きガラスフィルムG1を、成形装置12を用いて成形する。処理工程では、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bの少なくとも一部を処理装置13で分離して除去する処理を行うことで、処理ガラスフィルムG2を得る。
【0058】
第1搬送工程では、成形装置12から処理装置13まで不要部付きガラスフィルムG1を搬送する。第2搬送工程では、処理ガラスフィルムG2を処理装置13から処理ガラスフィルムG2を収集する収集装置14まで搬送する。第1搬送工程及び第2搬送工程では、ガラスフィルムGpよりも軟質の搬送用シート以外の部材がガラスフィルムGpに接触しない状態で、不要部付きガラスフィルムG1又は処理ガラスフィルムG2を搬送する。収集装置14では、例えば、処理ガラスフィルムG2を巻き取る収集工程が行われることで、ガラスフィルムロールGRが得られる。
【0059】
特に主面の平滑性が求められる用途では、処理ガラスフィルムG2のうち、ガラスフィルムGpのみを使用することが推奨される。なお、求められる性能に応じて、処理ガラスフィルムG2のうち、残されている不要部を含む部分を製品に使用してもよい。
【0060】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ガラスフィルムGpの製造方法は、ガラスフィルムGpを製造する方法である。ガラスフィルムGpの製造方法は、第1搬送工程及び第2搬送工程では、ガラスフィルムGpよりも軟質の搬送用シート以外の部材がガラスフィルムGpに接触しない状態で、不要部付きガラスフィルムG1又は処理ガラスフィルムG2を搬送する。例えば、第1搬送工程で用いる方向変換装置19、ベルトコンベア装置20、及び摺動支持装置21では、ガラスフィルムGpと非接触の状態である。また、例えば、第1搬送工程で用いる第1接触搬送装置22及び第2搬送工程で用いる第2接触搬送装置23では、ガラスフィルムGpよりも軟質の第1搬送用シートCS1又は第2搬送用シートCS2をガラスフィルムGpに接触させている。この方法によれば、第1搬送工程及び第2搬送工程において、ガラスフィルムGpの主面に他の部材が接触することを要因とした傷の発生を防止することができる。従って、ガラスフィルムGpの主面の傷を削減することができる。
【0061】
(2)ガラスフィルムGpの製造方法で用いる処理装置13は、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で不要部G1a,G1bの高さを位置決めする位置決め装置18を備えている。この場合、例えば、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bの位置を安定させた状態で処理工程を行うことができる。従って、例えば、処理ガラスフィルムG2の幅方向の端面の品位を高めることが可能となる。
【0062】
(3)ガラスフィルムGpの製造方法において、第1搬送工程は、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bを支持した状態であり、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で不要部付きガラスフィルムG1を搬送する工程を含む。この場合、不要部付きガラスフィルムG1の姿勢を安定させて搬送することができる。
【0063】
(4)ガラスフィルムGpの製造方法において、不要部付きガラスフィルムG1のガラスフィルムGpは、下方からガラスフィルムGpに向かって噴射される気体により浮上されている。この場合、上述した搬送用シート以外の部材がガラスフィルムGpに接触しない状態を維持しつつ、ガラスフィルムGpの姿勢を安定させて不要部付きガラスフィルムG1を搬送することができる。
【0064】
(5)ガラスフィルムGpの製造方法において、第1搬送工程は、成形装置12から搬送された不要部付きガラスフィルムG1の進行方向を縦方向から横方向へ変換する方向変換工程を含む。方向変換工程において、不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bのみを縦方向から横方向へ案内する複数の方向変換用ローラー19aで支持している。この場合、例えば、成形装置12から縦方向に搬送される不要部付きガラスフィルムG1を横方向に容易に方向変換することができる。
【0065】
(6)ガラスフィルムGpの製造方法において、第1搬送工程では、横方向に沿って不要部付きガラスフィルムG1を搬送するベルトコンベア装置20を用いる搬送を含む。ベルトコンベア装置20は、ベルト本体20aと、ベルト本体20aに着脱可能な補助ベルト20b,20cとを備えている。ベルトコンベア装置20は、補助ベルト20b,20cにより不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bのみを支持している。この場合、例えば、平坦な搬送面を有するベルト本体20aに補助ベルト20b,20cを装着することで、ガラスフィルムGpとベルト本体20aとを非接触とした状態で搬送することができる。また、例えば、補助ベルト20b,20cの厚さ寸法を変更することで、不要部付きガラスフィルムG1の高さを調整することが可能となる。
【0066】
(7)ガラスフィルムGpの製造方法において、第1搬送工程では、横方向に沿って搬送される不要部付きガラスフィルムG1の不要部G1a,G1bを摺動可能に支持する摺動支持装置21を用いている。この場合、搬送される不要部付きガラスフィルムG1を、ガラスフィルムGpを非接触とした状態で容易に支持することができる。
【0067】
(8)アリカリアルミノシリケートガラスから構成されるガラスフィルムは、特に搬送工程において表面に傷欠陥が生じ易い。このようなアリカリアルミノシリケートガラスから構成されるガラスフィルムの製造に対して、上記ガラスフィルムGpの製造方法を適用することは、例えば、歩留まりを高めるという観点で特に有利である。
【0068】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・上記第2搬送工程は、処理ガラスフィルムG2の幅方向の両端部を支持した状態であり、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で処理ガラスフィルムG2を搬送する工程を含んでもよい。このとき、処理ガラスフィルムG2の両端部に残されている不要部G1a,G1bを支持する。この場合、処理ガラスフィルムG2の姿勢を安定させて搬送することができる。
【0070】
・上記第2搬送工程は、上記ベルトコンベア装置20と同様の構成を有するベルトコンベア装置を用いる搬送を含んでもよい。すなわち、第2搬送工程では、処理ガラスフィルムG2の両端部に残されている不要部G1a,G1bを、ベルトコンベア装置の補助ベルト20b,20cにより支持して処理ガラスフィルムG2を搬送することもできる。この場合、第2搬送工程において、上記(6)欄に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0071】
・上記第2搬送工程において、上記摺動支持装置21と同様の構成を有する摺動支持装置を用いてもよい。すなわち、第2搬送工程において、処理ガラスフィルムG2の幅方向の両端部を摺動支持装置の摺動支持部により支持してもよい。このとき、処理ガラスフィルムG2の両端部に残されている不要部G1a,G1bを摺動支持部により支持する。この場合、第2搬送工程において、上記(7)欄に記載の効果と同様の効果が得られる。
【0072】
・上記第2搬送工程において、ガラスフィルムGpは、下方からガラスフィルムGpに向かって噴射される気体により浮上されていてもよい。この場合、上述した搬送用シート以外の部材がガラスフィルムGpに接触しない状態を維持しつつ、ガラスフィルムGpの姿勢を安定させて処理ガラスフィルムG2を搬送することができる。
【0073】
・上記第2搬送工程は、第2接触搬送装置23を用いずに行うこともできる。
・上記第1搬送工程は、摺動支持装置21を用いずに行うこともできる。
・上記第1搬送工程は、第1接触搬送装置22を用いずに行うこともできる。
【0074】
・第1接触搬送装置22の第1搬送用シートCS1と、第2接触搬送装置23の第2搬送用シートCS2は、互いに独立した搬送用シートロールから供給することもできる。
・例えば、成形装置12が不要部付きガラスフィルムG1を横方向に搬出する成形装置の場合、上記第1搬送工程における方向変換工程を省略することもできる。不要部付きガラスフィルムG1を横方向に搬出する成形装置としては、例えば、フロート法を用いた成形装置が挙げられる。
【0075】
・上記処理装置13では、下方からガラスフィルムGpに向かって気体を噴射しているが、この気体の噴射を省略することもできる。
・上記第1搬送工程では、下方からガラスフィルムGpに向かって気体を噴射して搬送する工程を含んでいるが、気体の噴射を省略することもできる。すなわち、例えば、ベルトコンベア装置20では、ガラスフィルムGpに向かって噴射される気体によりガラスフィルムGpを浮上させているが、この浮上を省略することもできる。摺動支持装置21についても、ガラスフィルムGpの浮上を省略することもできる。
【0076】
・上記ベルトコンベア装置20の補助ベルト20b,20cをベルト本体20aとは独立して駆動されるように構成したベルトコンベア装置に変更してもよい。この場合、ベルト本体20aを省略し、例えば、ガラスフィルムGpに向けて気体を噴出し、ガラスフィルムGpを浮上させる浮上装置を配置してもよい。
【0077】
・上記第1搬送工程は、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で不要部付きガラスフィルムG1を搬送する工程を含むが、ガラスフィルムGpが下方に撓ませずに搬送する工程に変更してもよい。
【0078】
・上記処理装置13は、ガラスフィルムGpが下方に撓んだ状態で不要部G1a,G1bの高さを位置決めする位置決め装置18を備えているが、この位置決め装置18を省略することもできる。
【0079】
・上記ガラスフィルムGpの製造方法の搬送工程は、不要部付きガラスフィルムG1から不要部G1a,G1bの少なくとも一部を分離して除去する処理を行った処理ガラスフィルムG2を収集装置14まで搬送している。この搬送工程は、不要部付きガラスフィルムG1を収集装置14まで搬送する搬送工程に変更することもできる。この場合、搬送工程の途中で、例えば、ガラスフィルムGpの表面処理等、上記の処理以外の処理を行ってもよい。
【0080】
・ガラスフィルムGpの製造方法における処理工程は、不要部付きガラスフィルムG1の両不要部G1a,G1bのうち、一方の不要部を処理した後、他方の不要部を処理する工程に変更することもできる。また、ガラスフィルムGpの製造方法における処理工程は、不要部付きガラスフィルムG1の両不要部G1a,G1bのうち、一方の不要部のみを処理する工程に変更することもできる。すなわち、処理ガラスフィルムG2の両側部のうち、一側部には、不要部の全体が残されていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
11…ガラスフィルムの製造装置
12…成形装置
13…処理装置
14…収集装置
15…第1搬送装置
16…第2搬送装置
18…位置決め装置
19a,19b…方向変換用ローラー
20…ベルトコンベア装置
20a…ベルト本体
20b,20c…補助ベルト
21…摺動支持装置
CS1…第1搬送用シート
CS2…第2搬送用シート
G1…不要部付きガラスフィルム
G1a,G1b…不要部
G2…処理ガラスフィルム
Gp…ガラスフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9