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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173668
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ロボットアームの制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B25J13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086092
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CY01
3C707DS02
3C707FS01
3C707FU01
3C707HS27
3C707KV01
3C707LV01
3C707MT02
3C707MT04
3C707NS02
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】作業時間の長期化を招くことなく、ワークを容器内の所望する投入位置に精度良く配置する。
【解決手段】コントローラは、シールカット部21、22を有するピロー包装品であるワーク20を平面視において4つの辺51~54を有する矩形状をなす容器50に整列状態で投入する作業を行うロボットアーム40を制御するものであって、位置設定部および動作制御部を備える。動作制御部は、投入位置が容器50に既に配置されているワーク20である既配置ワークの第1方向B1における隣である場合、これから配置するワーク20である未配置ワークを既配置ワークに接触させることにより未配置ワークのシールカット部21、22および既配置ワークのシールカット部21、22が容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで未配置ワークを投入位置に配置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両端にシールカット部を有するピロー包装品であるワークを平面視において4つの辺を有する矩形状をなす容器に整列状態で投入する作業を行うロボットアームを制御するロボットアームの制御システムであって、
前記4つの辺のうち互いに対向する2つの辺である第1辺および第2辺に沿う方向を第1方向とするとともに、前記4つの辺のうち前記第1辺および前記第2辺を除く2つの辺である第3辺および第4辺に沿う方向を第2方向とすると、
前記整列状態は複数の前記ワークが前記シールカット部が設けられた側部同士が隣接するように前記第1方向に沿って並ぶ状態を含むものであり、
前記容器における前記ワークの投入位置を設定する位置設定部と、
前記ワークを所定の取得位置にて取るとともに、その取った前記ワークを前記位置設定部により設定された前記投入位置に配置するように前記ロボットアームの動作を制御する動作制御部と、
を備え、
前記動作制御部は、前記投入位置が前記容器に既に配置されている前記ワークである既配置ワークの前記第1方向における隣である場合、これから配置する前記ワークである未配置ワークを前記既配置ワークに接触させることにより前記未配置ワークの前記シールカット部および前記既配置ワークの前記シールカット部が前記容器の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで前記未配置ワークを前記投入位置に配置するロボットアームの制御システム。
【請求項2】
前記動作制御部は、前記投入位置が前記既配置ワークの前記第1方向における隣である場合、前記未配置ワークの前記シールカット部を前記既配置ワークの前記シールカット部に接触させることにより前記未配置ワークの前記シールカット部および前記既配置ワークの前記シールカット部が前記容器の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで前記未配置ワークを前記投入位置に配置する請求項1に記載のロボットアームの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、複数のワークをコンベアなどの搬送装置により搬送することで工場内の生産ラインに流通させ、それら流通されるワークに対してロボットアームが所定の作業を行うといった生産システムがある。このようなロボットアームによる作業の一つとして、シールカット部を有するピロー包装品であるワークを取って平面視において矩形状をなす容器内の所定の投入位置に投入するといったピックアンドプレース作業が挙げられる。なお、シールカット部を有するピロー包装品は例えば個包装されたバームクーヘンなどのお菓子であり、平面視において矩形状をなす容器は例えば番重である。このようなケースでは、容器にワークを出来る限り隙間なく且つ整列した状態で詰めるということが求められる。
【0003】
この場合、ロボットアームは、ワークを容器に配置するプレース時に次のような動作を行うことが一般的である。すなわち、ロボットアームは、アーム先端に取り付けられたハンドでワークを把持した状態でアームを移動させてアーム先端を容器内の投入位置の上方に位置させた後、アーム先端を真っすぐ下降させ、ハンドからワークを離して容器内の投入位置にワークを配置するといった一連の動作を行う。また、この場合、容器にワークを投入する順番としては、次のようなものが一般的である。すなわち、ロボットアームは、最初に容器の一方の端である一端の列にワークを投入し、次に容器の両端の間の列である中列にワークを投入し、その後に容器の他方の端である他端の列にワークを投入する、といった順番でワークを容器に投入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-125989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した一般的なプレース時の動作および一般的なワークの投入順を採用した従来のピックアンドプレース作業によれば、中列または他端の列にワークを投入しようとしてロボットアームからワークを離した際、そのワークと、既に配置されている隣接するワークとが干渉する可能性、具体的には、それらワークのシールカット部同士が接触する可能性が高くなる。なお、以下では、このような従来のピックアンドプレース作業のことを従来技術と称することがある。
【0006】
このようなワーク同士の干渉、具体的にはワークのシールカット部同士の接触が発生すると、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、接触したシールカット部が折り曲げられると、それに起因して生じる反発力、具体的にはシールカット部が元に戻ろうとすることで生じる反発力により容器に投入されたワークの位置が所望する投入位置から外れた位置となる位置ずれが生じる可能性がある。基本的に、お菓子は、パン、冷凍食品などに比べて軽いことが多い。そのため、このような比較的重量が軽いワークを容器に隙間なく整列状態で詰める場合、上述した位置ずれの問題が一層顕著に表れることになる。
【0007】
このような位置ずれが生じた場合、次に別のワークを容器に投入する際に位置ずれが生じたワークを上から押し潰すなどして、ワークにダメージを与えるおそれがある。また、番重などの容器は、複数段に重ねられることがあるが、位置ずれが生じたワークが投入された容器の上に別の容器が重ねられる場合、位置ずれによりワークが容器の上面から飛び出した状態になっている可能性がある。そのため、容器の重量が比較的重いものである場合にはワークにダメージを与えるといった問題が生じるおそれがあるとともに、容器の重量が比較的軽いものである場合には容器をうまく重ねられなくなるといった問題が生じるおそれがある。
【0008】
従来技術において、このような位置ずれの発生を防止するためには、一端の列にワークを配置する際にワークを容器の一端側の内壁に十分に寄せるなどして、次に配置される中列のワークとの干渉を極力避けるようにするといった対策が考えられる。ただし、このような対策では、プレース時にワークを容器の内壁に寄せるための動作が必要となることから、次のような別の問題が生じるおそれがある。すなわち、上記対策では、ワークを内壁に寄せるといったピックアンドプレース作業において本来は必要のない余分な動作が行われることになるため、作業時間の長期化を招くおそれがある。また、上記対策では、寄せ過ぎに起因してワークが内壁に接触してワークにダメージを与えるおそれがある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業時間の長期化を招くことなく、ワークを容器内の所望する投入位置に精度良く配置することができるロボットアームの制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のロボットアームの制御システムは、少なくとも両端にシールカット部を有するピロー包装品であるワークを平面視において4つの辺を有する矩形状をなす容器に整列状態で投入する作業を行うロボットアームを制御するものであって、位置設定部および動作制御部を備える。この場合、前記4つの辺のうち互いに対向する2つの辺である第1辺および第2辺に沿う方向を第1方向とするとともに、前記4つの辺のうち前記第1辺および前記第2辺を除く2つの辺である第3辺および第4辺に沿う方向を第2方向とすると、前記整列状態は、複数の前記ワークが前記シールカット部が設けられた側部同士が隣接するように前記第1方向に沿って並ぶ状態を含むものである。
【0011】
前記位置設定部は、前記容器における前記ワークの投入位置を設定する。前記動作制御部は、前記ワークを所定の取得位置にて取るとともに、その取った前記ワークを前記位置設定部により設定された前記投入位置に配置するように前記ロボットアームの動作を制御する。前記動作制御部は、前記投入位置が前記容器に既に配置されている前記ワークである既配置ワークの前記第1方向における隣である場合、これから配置する前記ワークである未配置ワークを前記既配置ワークに接触させることにより前記未配置ワークの前記シールカット部および前記既配置ワークの前記シールカット部が前記容器の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで前記未配置ワークを前記投入位置に配置する。
【0012】
このようにすれば、既配置ワークの第1方向における隣の投入位置に未配置ワークを配置するときには、それらワークの各シールカット部が底部側に向けて折り畳まれた状態となっているため、未配置ワークがロボットアームから離れた際に未配置ワークと既配置ワークとが干渉して位置ずれが発生することが抑制される。このように、上記構成によれば、位置ずれの発生が抑制されることから、ワークにダメージを与えたり、容器をうまく重ねることができなくなったり、といった不具合の発生を防止することができる。
【0013】
上記構成によれば、第3辺および第4辺のうち一方に隣接する投入位置、つまり容器の端の列の投入位置にワークを配置する際にワークを容器の端側の内壁に十分に寄せるなどの余分な動作をすることなく、上述したようにして位置ずれの発生が防止される。したがって、上記構成によれば、作業時間の長期化を招くことなく、ワークを容器の所望する投入位置に精度良く配置することができるという優れた効果が得られる。
【0014】
請求項2に記載のロボットアームの制御システムにおいて、前記動作制御部は、前記投入位置が前記既配置ワークの前記第1方向における隣である場合、前記未配置ワークの前記シールカット部を前記既配置ワークの前記シールカット部に接触させることにより前記未配置ワークの前記シールカット部および前記既配置ワークの前記シールカット部が前記容器の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで前記未配置ワークを前記投入位置に配置する。
【0015】
上記構成において、未配置ワークのシールカット部および既配置ワークのシールカット部を容器の底部側に向けて折り畳まれた状態とするため、各ワークのシールカット部を除く部分である本体部分同士を接触させる方法、一方のワークのシールカット部と他方のワークの本体部分とを接触させる方法なども考えられる。しかし、このような方法によれば、次のような問題が生じる可能性がある。
【0016】
すなわち、ワークが例えばバームクーヘンなどのお菓子のピロー包装品である場合、その中身は、シールカット部に比べて柔らかい。そのため、このようなワークを作業対象とした場合、各ワークの本体部分同士を接触させる方法または一方のワークのシールカット部と他方のワークの本体部分とを接触させる方法では、比較的柔らかいワークの中身にダメージが与えられるおそれがある。これに対し、上記したように、ワークのシールカット部同士を接触させる方法によれば、比較的柔らかいワークの中身にダメージを与えることなく、各シールカット部を折り畳むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る生産システムの構成を模式的に示す図
図2】第1実施形態に係るコントローラの構成を模式的に示す図
図3】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その1
図4】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その2
図5】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その3
図6】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その4
図7】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その5
図8】第1実施形態に係るハンドの把持部のそれぞれにより複数のワークが把持された状態を模式的に示す図
図9】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その6
図10】第1実施形態に係る第1方向に沿って並べられる3つのワークの投入位置が第1設定方法により設定された場合におけるプレース動作の一例を示す図
図11】第1実施形態に係る第1方向に沿って並べられる3つのワークの投入位置が第2設定方法により設定された場合におけるプレース動作の一例を示す図
図12】第1実施形態に係る斜めアプローチ動作の第1具体例を説明するための図その1
図13】第1実施形態に係る斜めアプローチ動作の第1具体例を説明するための図その2
図14】第1実施形態に係る斜めアプローチ動作の第1具体例を説明するための図その3
図15】第1実施形態に係る斜めアプローチ動作の第2具体例を説明するための図その1
図16】第1実施形態に係る斜めアプローチ動作の第2具体例を説明するための図その2
図17】第1実施形態に係る斜めアプローチ動作の第2具体例を説明するための図その3
図18】第1比較例に係る第1方向に沿って並べられる3つのワークの投入位置が第2設定方法により設定された場合において通常アプローチ動作を用いたプレース動作の一例を示す図
図19】第2比較例に係るハンドの把持部のそれぞれにより複数のワークが把持された状態を模式的に示す図
図20】第2実施形態に係る第2容器にワークを投入する場合のピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図
図21】第2実施形態に係る第1容器にワークを投入する場合のピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その1
図22】第2実施形態に係る第1容器にワークを投入する場合のピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その2
図23】第2実施形態に係る第1容器にワークを投入する場合のピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その3
図24】第2実施形態に係る第1容器にワークを投入する場合のピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その4
図25】第2実施形態に係る第1容器にワークを投入する場合のピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その5
図26】第2実施形態に係る第1容器にワークを投入する場合のピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その6
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1図19を参照して説明する。
【0019】
図1および図3などに示すように、本実施形態の生産システム10では、ワーク20をベルトコンベア装置であるコンベア30により搬送することで工場内の生産ラインに流通させるようになっている。生産システム10には、図1および図3などに示すような工程、つまりワーク20がコンベア30により搬送されてくると、そのワーク20をロボットアーム40で取って容器50に整列状態で投入する工程、つまりコンベア30から容器50への移し変え工程が含まれる。
【0020】
すなわち、ロボットアーム40は、コンベア30により所定の流れ方向A1に向けて搬送されるワーク20を取り、その取ったワーク20を容器50に整列状態で投入するピックアンドプレース作業を行うようになっている。コンベア30は、搬送装置に相当するものであり、基本的には、停止することなく動作し続けるようになっている。ワーク20は、シールカット部21、22を有するピロー包装品であり、その中身は例えばバームクーヘンなどのお菓子となっている。シールカット部21、22は、ワーク20の4つの側部のうち、互いに対向する2つの側部に設けられている。なお、図1図3などでは、一部のシールカット部にだけ符号を付し、他のシールカット部の符号は省略している。
【0021】
この場合、ワーク20は、本工程よりも前の前工程においてピロー包装が施され、個包装された状態で本工程へと搬送される。また、この場合、ワーク20は、コンベア30により、一定の速度且つ一定の間隔で連続して搬送されるとともに、シールカット部21、22が設けられた側部が流れ方向A1と直交する方向となるような向きで搬送されるようになっている。
【0022】
ロボットアーム40は、例えば6軸のアームを有する垂直多関節型ロボットとして構成されている。容器50は、例えば番重など、平面視において4つの辺51、52、53、54を有する矩形状をなす容器である。本明細書では、4つの辺51~54のうち互いに対向する2つの辺51および52のことを、それぞれ第1辺51および第2辺52とも称するとともに、4つの辺51~54のうち第1辺51および第2辺52を除く2つの辺53および54のことを、それぞれ第3辺53および第4辺54とも称する。
【0023】
また、本明細書では、第1辺51および第2辺52に沿う方向を第1方向B1とするとともに、第3辺53および第4辺54に沿う方向を第2方向B2とする。さらに、本明細書では、第1方向B1のことを行と称することがあるとともに、第2方向B2のことを列と称することがある。この場合、前述した整列状態は、図10図11などに示すような状態、つまり、複数のワーク20、具体的には3つのワーク20がシールカット部21、22が設けられた側部同士が隣接するように第1方向B1に沿って並ぶとともに、複数のワーク20、具体的には5つのワーク20がシールカット部21、22が設けられていない側部同士が隣接するように第2方向B2に沿って並ぶ状態である。
【0024】
つまり、本実施形態では、15個のワーク20が、5行3列の形態で整列された整列状態で容器50に配置されるようになっている。なお、本明細書では、5つの行について、図10図11などにおける上から順に、第1行、第2行、第3行、第4行および第5行と称するとともに、3つの列について、図10図11などにおける左から順に、第1列、第2列および第3列と称することとする。
【0025】
ロボットアーム40および容器50は、それぞれ作業台60、70上に配置されている。この場合、作業台60、70、ひいてはロボットアーム40および容器50は、流れ方向A1に向かって右側に配置されている。なお、本明細書では、流れ方向A1に向かって右側のことを単に右側と称するとともに、流れ方向A1に向かって左側のことを単に左側と称することがある。
【0026】
ロボットアーム40のアーム先端にはハンド80が取り付けられている。図1および図3などに示すように、ハンド80は、ワーク20を把持することができる複数の把持部、具体的には5つの把持部81、82、83、84、85が所定の並び方向C1に並ぶように配置されたものである。把持部81~85は、ワーク20を吸着して保持するための吸着機構を備えている。このように、本実施形態では、ハンド80が有する把持部81~85の数は、整列状態において第2方向B2に沿って並ぶワーク20の数と同じ数である「5」になっている。
【0027】
ロボットアーム40は、アーム先端を移動させてコンベア30の近傍に位置させた後、さらにアーム先端を移動させるとともにハンド80の複数の把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取るピック動作を行う。そして、ロボットアーム40は、アーム先端を移動させて容器50の近傍に位置させた後、さらにアーム先端を移動させるとともに把持部81~85からワーク20を離して容器50の所定の投入位置に配置するプレース動作を行う。ロボットアーム40は、このようなワーク20に対する一連の作業、つまりコンベア30により搬送されるワーク20を取るとともに容器50に投入するという作業を繰り返し実行する。
【0028】
ロボットアーム40は、図2に示すコントローラ90により制御される。コントローラ90は、ロボットアームの制御システムを構成するものであり、図示しないCPU、ROMおよびRAMなどで構成されたコンピュータからなる制御手段においてコンピュータプログラムを実行することで、ロボットアーム40を制御している。具体的には、コントローラ90は、インバータ回路などから構成された駆動部を備えており、ロボットアーム40の各軸を駆動するモータに対応して設けられているエンコーダで検知したモータの回転位置に基づいて例えばフィードバック制御によりそれぞれのモータを駆動する。コントローラ90は、予め設定された動作プログラムを実行することにより、ロボットアーム40の各軸が予め定められた所定の動作を自動的に実行するようにロボットアーム40を制御する。
【0029】
コントローラ90は、位置設定部91および動作制御部92などの機能ブロックを備えている。これら各機能ブロックは、コントローラ90が備えるCPUがROMなどに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、各機能ブロックのうち少なくとも一部をハードウェアにより実現する構成としてもよい。
【0030】
位置設定部91は、容器50におけるワーク20の投入位置を設定する。位置設定部91は、ユーザにより実施されるティーチング時の位置合わせ、つまり座標設定により指定された位置を投入位置として設定するようになっている。位置設定部91は、第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20の投入位置を設定する際、次の2つの設定方法のうちいずれかを行うことができる。第1設定方法では、位置設定部91は、最初に第3辺53および第4辺54のうち一方に隣接する位置を投入位置として設定し、次に第3辺53および第4辺54のうち他方に隣接する位置を投入位置として設定し、その後に第3辺53および第4辺54のいずれにも隣接しない位置を投入位置として設定する。
【0031】
つまり、第1設定方法では、位置設定部91は、最初に容器50の一方の端である一端側の列である第1列の位置を投入位置として設定し、次に容器50の他方の端である他端側の列である第3列の位置を投入位置として設定し、その後に容器50の両端の間の列である第2列の位置を投入位置として設定する。
【0032】
また、第2設定方法では、位置設定部91は、最初に第3辺53および第4辺54のうち一方に隣接する位置を投入位置として設定し、次に第3辺53および第4辺54のいずれにも隣接しない位置を投入位置として設定し、その後に第3辺53および第4辺54のうち他方に隣接する位置を投入位置として設定する。つまり、第2設定方法では、位置設定部91は、最初に第1列の位置を投入位置として設定し、次に第2列の位置を投入位置として設定し、その後に第3列の位置を投入位置として設定する。
【0033】
動作制御部92は、ワーク20をコンベア30上の所定の取得位置にて取るとともに、その取ったワーク20を位置設定部91により設定された投入位置に配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。この場合、コンベア30は図2における左右方向に延びており、ワーク20は図2における右から左へと搬送されるようになっている。つまり、この場合、ワーク20の搬送方向は、図2に白抜きの矢印で示す流れ方向A1となる。
【0034】
動作制御部92は、投入位置が容器50に既に配置されているワーク20である既配置ワークの第1方向B1における隣である場合、これから配置するワーク20である未配置ワークを既配置ワークに接触させることにより未配置ワークのシールカット部21、22および既配置ワークのシールカット部21、22が容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで未配置ワークを投入位置に配置することができる。
【0035】
動作制御部92は、ハンド80の向きを流れ方向A1および並び方向C1が互いに直交するような向きとした状態で、並び方向C1に沿って右側から左側に向けてハンド80を移動させるとともに複数の把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取り、それら取った全てのワーク20を投入位置に一括して配置することができる。また、動作制御部92は、ワーク20を投入位置に配置した後、複数の把持部81~85のうちいずれか1つが取得位置の上方に位置するような初期位置に戻るようにロボットアーム40の動作を制御することができる。
【0036】
次に、上記構成のロボットアーム40により行われるピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例について説明する。なお、図3図7図9などでは、ロボットアーム40の図示は省略し、そのアーム先端に取り付けられたハンド80だけを示している。
【0037】
[1]ピック動作
図3図7に示すように、ピック動作は、ハンド80の向きを流れ方向A1および並び方向C1が互いに直交するような向きとした状態で、ハンド80を並び方向C1に沿って右側から左側に向けて移動させるとともに把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取る動作となる。まず、図3に示すように、動作制御部92は、把持部81が取得位置の上方に位置するような初期位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。
【0038】
そして、動作制御部92は、ワーク20が取得位置、つまり把持部81の直下の位置に到達したときに把持部81によりワーク20を把持する。なお、動作制御部92は、コンベア30に取り付けられた各種のセンサによりワーク20が取得位置に到達するタイミングを知ることができるようになっており、そのタイミングに基づいてワーク20の把持を行うようになっている。
【0039】
続いて、図4に示すように、動作制御部92は、把持部82が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部82の直下の位置に到達したときに把持部82によりワーク20を把持する。続いて、図5に示すように、動作制御部92は、把持部83が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部83の直下の位置に到達したときに把持部83によりワーク20を把持する。
【0040】
続いて、図6に示すように、動作制御部92は、把持部84が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部84の直下の位置に到達したときに把持部84によりワーク20を把持する。続いて、図7に示すように、動作制御部92は、把持部85が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部85の直下の位置に到達したときに把持部85によりワーク20を把持する。
【0041】
このようなピック動作が行われることにより、ハンド80の把持部81~85のそれぞれにより5つのワーク20が把持された状態となる。この場合、ワーク20がシールカット部21、22が設けられた側部が流れ方向A1と直交する方向となるような向きで搬送されるとともにハンド80の向きを流れ方向A1および並び方向C1が互いに直交するような向きとした状態でワーク20を取るようになっていることから、図8に示すように、ハンド80により把持された5つのワーク20は、自ずとシールカット部21、22が設けられていない側部同士が隣り合うような配置となる。
【0042】
この場合、容器50は、第2方向B2がコンベア30の流れ方向A1に沿うように配置されていることから、プレース動作を行う際にはハンド80の向きをピック動作時の向きから90度回転させる必要がある。そこで、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより5つのワーク20を把持した後、アーム先端を容器50に向けて移動させる前、アーム先端を容器50に向けて移動させた後、またはアーム先端を容器50に向けて移動させながら、ハンド80の向きをピック動作時の向きから90度回転させる。これにより、図9に示すように、ハンド80の並び方向C1が容器50の第2方向B2に沿う方向となる。
【0043】
[2]プレース動作
第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20の投入位置が第1設定方法により設定された場合におけるプレース動作は、例えば図10に示すようなものとなる。なお、図10などでは、一部のワークにだけ符号を付し、他のワークの符号は省略している。すなわち、図10(a)に示すように、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより把持した5つのワーク20を第1列の各投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。この際、動作制御部92は、5つのワーク20のそれぞれを各投入位置の真上に位置させた後、アーム先端を真っすぐ下降させ、その後、把持部81~85からワーク20を離して第1列の各投入位置にワーク20を配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。なお、本明細書では、上述したようにしてワーク20を配置する動作のことを通常アプローチ動作と称する。
【0044】
続いて、図10(b)に示すように、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより把持した5つのワーク20を第3列の各投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。この際、動作制御部92は、第1列の各投入位置にワーク20を配置する場合と同様、通常アプローチ動作によりワーク20を第3列の各投入位置に配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。
【0045】
最後に、図10(c)に示すように、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより把持した5つのワーク20を第2列の各投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。この際、動作制御部92は、第1列、第3列の各投入位置にワーク20を配置する場合と同様、通常アプローチ動作によりワーク20を第2列の各投入位置に配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。
【0046】
また、第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20の投入位置が第2設定方法により設定された場合におけるプレース動作は、例えば図11に示すようなものとなる。すなわち、図11(a)に示すように、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより把持した5つのワーク20を第1列の各投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。この際、動作制御部92は、前述した通常アプローチ動作によりワーク20を第1列の各投入位置に配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。
【0047】
続いて、図11(b)に示すように、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより把持した5つのワーク20を第2列の各投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。この際、動作制御部92は、5つのワーク20のそれぞれを各投入位置の上方に位置させた後、ワーク20を傾けた状態で下降させ、その後、把持部81~85からワーク20を離して第2列の各投入位置にワーク20を配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。なお、本明細書では、上述したようにしてワーク20を配置する動作のことを斜めアプローチ動作と称する。
【0048】
最後に、図11(c)に示すように、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより把持した5つのワーク20を第3列の各投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。この際、動作制御部92は、第2列の各投入位置にワーク20を配置する場合と同様、斜めアプローチ動作によりワーク20を第3列の各投入位置に配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。
【0049】
上記した斜めアプローチ動作としては、具体的には、例えば以下において説明する第1具体例および第2具体例のような動作を行うことができる。なお、ここでは、投入位置にこれから配置する未配置ワークをワーク20Aとするとともに、その投入位置の第1方向B1における隣に既に配置されている既配置ワークをワーク20Bとする。斜めアプローチ動作の第1具体例は、図12図14に示すようなものとなっている。
【0050】
この場合、動作制御部92は、図12に示すように、把持部81により把持したワーク20Aのシールカット部21が図12などにおける下向き、つまり鉛直下向き、言い換えると、ワーク20の設置面、つまり容器50の底面に対して直交する方向における下向きに垂れるようにワーク20Aを斜めに傾ける。続いて、動作制御部92は、ワーク20Aがワーク20Bに向けて斜めに下降するようにアーム先端を移動させる。これにより、図13に示すように、ワーク20Aのシールカット部21とワーク20Bのシールカット部22とが接触した状態となる。
【0051】
その後、動作制御部92は、図14に示すように、ワーク20Aの傾きを元に戻す、つまりワーク20Aの図14などにおける下側の面である底面が容器50の底部に沿う方向となるようにアーム先端を移動させる。これにより、ワーク20Aのシールカット部21とワーク20Bのシールカット部22とが容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態とされたうえでワーク20Aが投入位置に配置される。このような第1動作によれば、動作制御部92は、未配置ワークであるワーク20Aのシールカット部21を既配置ワークであるワーク20Bのシールカット部22に接触させることによりワーク20Aのシールカット部21およびワーク20Bのシールカット部22が容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態とするようになっている。
【0052】
斜めアプローチ動作の第2具体例は、図15図17に示すようなものとなっている。この場合、動作制御部92は、図15に示すように、把持部81により把持したワーク20Aを90度傾ける、つまりワーク20Aのシールカット部21が設けられた側部が図15などにおける下側となるような向きにワーク20を傾ける。続いて、動作制御部92は、ワーク20Aがワーク20Bに向けて下降するようにアーム先端を移動させる。これにより、図16に示すように、ワーク20Aの本体部分とワーク20Bの本体部分とが接触した状態となる。
【0053】
その後、動作制御部92は、ワーク20Aの傾きを元に戻す、つまりワーク20Aの図14などにおける下側の面である底面が容器50の底部に沿う方向となるようにアーム先端を移動させる。これにより、ワーク20Aのシールカット部21とワーク20Bのシールカット部22とが容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態とされたうえでワーク20Aが投入位置に配置される。このような第2動作によれば、動作制御部92は、未配置ワークであるワーク20Aの本体部分を既配置ワークであるワーク20Bの本体部分に接触させることによりワーク20Aのシールカット部21およびワーク20Bのシールカット部22が容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態とするようになっている。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
位置設定部91は、第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20の投入位置を設定する際、第1設定方法および第2設定方法のうちいずれかを行うことができる。第1設定方法では、位置設定部91は、最初に容器50の一方の端である一端側の列である第1列の位置を投入位置として設定し、次に容器50の他方の端である他端側の列である第3列の位置を投入位置として設定し、その後に容器50の両端の間の列である第2列の位置を投入位置として設定する。
【0055】
第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20の投入位置が第1設定方法により設定された場合におけるプレース動作では、ロボットアーム40は、第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20について、最初に容器50の第1列の位置にワークを投入し、次に容器50の第3列の位置にワーク20を投入し、最後に容器50の両端の間の列である第2列の位置にワーク20を投入する、といった順番でワーク20を容器50に投入することになる。
【0056】
このような投入順によれば、容器50の両端の列である第1列および第3列における投入位置にワーク20を配置するときには、その投入位置の隣に既に配置されているワーク20である既配置ワークが存在しないことから、これから配置するワーク20である未配置ワークと既配置ワークとの干渉による位置ずれは発生しない。なお、このような投入順によれば、容器50の両端の間の列である第2列にワーク20を配置するときには、その投入位置の両隣に既配置ワークが存在することになる。
【0057】
そのため、未配置ワークと既配置ワークとの干渉に起因して生じる反発力により未配置ワークの位置が所望する投入位置から外れた位置となる可能性がある。しかし、この場合、第2列の位置に投入されたワーク20の第1方向B1に沿う移動は、その両隣である第1列および第3列に存在する既配置ワークにより規制される。したがって、この場合、容器50の両端の間の列である第2列の投入位置にワーク20を配置するときにも、未配置ワークと既配置ワークとの干渉による位置ずれの発生を防止することができる。
【0058】
第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20の投入位置が第2設定方法により設定された場合におけるプレース動作では、ロボットアーム40は、第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20について、最初に容器50の第1列の位置にワークを投入し、次に容器50の第2列の位置にワーク20を投入し、最後に容器50の第3列の位置にワーク20を投入する、といった順番でワーク20を容器50に投入することになる。
【0059】
このような投入順によれば、容器50の第2列および第3列における投入位置にワーク20を配置するときには、その投入位置の隣に既配置ワークが存在することになる。そのため、第2列および第3列における投入位置にワーク20を配置する際に通常アプローチ動作を用いた場合、第1比較例として図18に示すように、未配置ワークと既配置ワークとの干渉に起因して生じる反発力により未配置ワークの位置が所望する投入位置から外れた位置となる位置ずれが生じる可能性がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、第1方向B1に沿って並べられる3つのワーク20の投入位置が第2設定方法により設定された場合におけるプレース動作において、容器50の第2列および第3列における投入位置にワーク20を配置する際、動作制御部92は、未配置ワークを既配置ワークに接触させることにより未配置ワークのシールカット部21、22および既配置ワークのシールカット部21、22が容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで未配置ワークを投入位置に配置するようになっている。
【0061】
このようにすれば、既配置ワークの第1方向B1における隣の投入位置に未配置ワークを配置するときには、それらワーク20の各シールカット部21、22が底部側に向けて折り畳まれた状態となっているため、未配置ワークがロボットアーム40のアーム先端に取り付けられたハンド80から離れた際に未配置ワークと既配置ワークとが干渉して位置ずれが発生することが抑制される。
【0062】
動作制御部92は、斜めアプローチ動作の具体的な動作として第1具体例の動作を採用することができる。第1具体例の動作によれば、未配置ワークのシールカット部21、22を既配置ワークのシールカット部21、22に接触させることにより未配置ワークのシールカット部21、22および既配置ワークのシールカット部21、22を容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態とすることができる。
【0063】
上記構成において、未配置ワークのシールカット部21、22および既配置ワークのシールカット部21、22を容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態とするため、各ワーク20のシールカット部21、22を除く部分である本体部分同士を接触させる方法、つまり第2具体例の動作を採用したり、一方のワーク20のシールカット部21、22と他方のワーク20の本体部分とを接触させる方法を採用したりすることも考えられる。しかし、これらの方法によれば、次のような問題が生じる可能性がある。
【0064】
すなわち、本実施形態のようにワーク20がバームクーヘンなどのお菓子のピロー包装品である場合、その中身は、シールカット部21、22に比べて柔らかい。そのため、このようなワーク20をピックアンドプレース作業の対象とした場合、各ワーク20の本体部分同士を接触させる方法または一方のワーク20のシールカット部21、22と他方のワーク20の本体部分とを接触させる方法では、比較的柔らかいワーク20の中身にダメージが与えられるおそれがある。
【0065】
これに対し、本実施形態のように、ワーク20のシールカット部21、22同士を接触させる方法によれば、比較的柔らかいワーク20の中身にダメージを与えることなく、各シールカット部21、22を折り畳むことができる。なお、ワーク20の中身がシールカット部21、22に比べて特に柔らかいものではない場合などであれば、斜めアプローチ動作の具体的な動作として第2具体例の動作を採用することができる。
【0066】
このように、本実施形態によれば、位置ずれの発生が抑制されることから、ワーク20にダメージを与えたり、容器50をうまく重ねることができなくなったり、といった不具合の発生を防止することができる。また、本実施形態によれば、第3辺53および第4辺54のうち一方に隣接する投入位置、つまり容器50の端の列である第1列または第3列の投入位置にワーク20を配置する際にワーク20を容器50の端側の内壁に十分に寄せるなどの余分な動作を必要とすることなく、位置ずれの発生を防止することができる。したがって、本実施形態によれば、作業時間の長期化を招くことなく、ワーク20を容器50の所望する投入位置に精度良く配置することができるという優れた効果が得られる。
【0067】
本実施形態では、ワーク20は、シールカット部21、22が設けられた側部がコンベア30の流れ方向A1と直交する方向となるような向きで搬送されるようになっている。この場合、ロボットアーム40は、ワーク20を把持することができる複数の把持部81~85が所定の並び方向C1に並ぶように配置されたハンド80を備えている。上記構成において、動作制御部92は、本実施形態において説明した制御内容に代えて、次のような第2比較例の制御内容を行うことも可能である。
【0068】
すなわち、第2比較例では、動作制御部92は、ハンド80の向きを並び方向C1が流れ方向A1に沿うような向きとした状態でハンド80を移動させるとともに複数の把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取り、それら取った全てのワーク20を投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御する。このような第2比較例によれば、図19に示すように、把持部81~85により把持された複数のワーク20は、シールカット部21、22が設けられた側部同士が隣り合うような配置となる。
【0069】
そのため、第2比較例によれば、ハンド80の把持部81~85により把持された複数のワーク20においてシールカット部21、22同士が接触して位置がずれるおそれがあり、その結果、精度良くピッキングを行うことができなくなる可能性がある。上記構成では、ピッキングの精度が低下した場合、プレース時の精度も同様に低下して位置ずれが生じる可能性がある。
【0070】
これに対し、本実施形態では、動作制御部92は、ハンド80の向きを流れ方向A1および並び方向C1が互いに直交するような向きとした状態でハンド80を並び方向C1に沿って移動させるとともに複数の把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取り、それら取った全てのワーク20を投入位置に一括して配置するようにロボットアーム40の動作を制御するようになっている。このようにすれば、ハンド80の把持部81~85により複数のワーク20が把持されたとき、それら把持された複数のワーク20は、自ずとシールカット部21、22が設けられていない側部同士が隣り合うような配置となる。
【0071】
そのため、上記構成によれば、ハンド80の把持部81~85により把持された複数のワーク20においてシールカット部21、22同士が接触して位置がずれることがなくなり、その結果、精度良くピッキングを行うこと、ひいてはプレース時における位置ずれの発生を抑えることができる。このように、上記構成によれば、位置ずれの発生が抑制されることから、ワーク20にダメージを与えたり、容器50をうまく重ねることができなくなったり、といった不具合の発生を防止することができる。
【0072】
上記構成によれば、上述したようにして位置ずれの発生が防止されることから、ハンド80としてピッチを調整する機構を持つ調整機構付きハンドを用いる必要がない。そのため、上記構成によれば、調整機構付きハンドを用いた場合に生じ得る問題、つまりハンドの構造が複雑化したり、作業中にピッチの調整動作が必要になることからワーク20の高速搬送に不向きになったり、といった問題が生じることがない。したがって、本実施形態によれば、作業時間の長期化を招くことなく、ワーク20を容器50の所望する投入位置に精度良く配置することができるという優れた効果が得られる。
【0073】
この場合、ハンド80が有する把持部81~85の数は、整列状態において第2方向B2に沿って並ぶワーク20の数と同じ数である「5」になっている。このような構成によれば、1回の作業で、容器50の第2方向B2に沿って並ぶ最大数のワーク20を取り、それらワーク20を一括して容器50の第2方向B2に沿って並ぶように配置することができる。そのため、上記構成によれば、このような作業を、第1方向B1に沿って並ぶワーク20の数と同じ回数である3回だけ行うことにより、容器50内の全ての投入位置にワーク20を配置すること、つまり容器50内にワーク20を全て詰めた状態にすることができる。したがって、本実施形態によれば、作業時間の短縮効果を最大限に得ることができる。
【0074】
また、この場合、動作制御部92は、ワーク20を投入位置に配置した後、複数の把持部81~85のうちいずれか1つ、具体的には把持部81が取得位置の上方に位置するような初期位置に戻るようにロボットアーム40の動作を制御するようになっている。このようにすれば、ロボットアーム40は、ワーク20を投入位置に一括して配置した後、つまりプレース動作を終えた後、直ちに最初のワーク20を取る動作、つまり最初のピック動作に移ることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、ロボットアーム40は、プレース動作からほとんど遅延なく最初のピック動作へと遷移することが可能となり、その結果、作業時間を一層短縮することができるという効果が得られる。
【0075】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図20図26を参照して説明する。
本実施形態の生産システム100は、第1実施形態の生産システム10に対し、容器50が2つ配置されている点などが異なっている。すなわち、生産システム100では、コンベア30の流れ方向A1に向かって右側および左側の双方に容器50が配置されている。上記構成において、右側に配置された容器50を第1容器50Aとするとともに、左側に配置された容器50を第2容器50Bとする。
【0076】
この場合、動作制御部92は、第1取得動作および第2取得動作を実行可能である。第1取得動作は、ハンド80の向きを流れ方向A1および並び方向C1が互いに直交するような向きとした状態で、並び方向C1に沿って右側から左側に向けてハンド80を移動させるとともに把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取る動作である。また、第2取得動作は、ハンド80の向きを流れ方向A1および並び方向C1が互いに直交するような向きとした状態で、並び方向C1に沿って左側から右側に向けてハンド80を移動させるとともに把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取る動作である。
【0077】
動作制御部92は、位置設定部91により設定された投入位置が第1容器50Aにおける位置である場合、第2取得動作を実行してワーク20を取り、それら取った全てのわーう20を第1容器50Aにおける投入位置に一括して配置することができる。動作制御部92は、位置設定部91により設定された投入位置が第2容器50Bにおける位置である場合、第1取得動作を実行してワーク20を取り、それら取った全てのワーク20を第2容器50Bにおける投入位置に一括して配置することができる。
【0078】
次に、本実施形態の構成によるピックアンドプレース作業、特にはピック動作の具体例について説明する。なお、プレース動作の具体例については、第1実施形態において説明した各動作と同様の動作を採用することができるため、ここでは、その説明を省略することとする。
【0079】
[1]第2容器50Bにワーク20を投入する場合のピック動作
この場合、動作制御部92は、第1取得動作を実行して把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取る。第1取得動作は、第1実施形態におけるピック動作、つまり図3図7に示すような動作と同様である。この場合、第2容器50Bは、第2方向B2がコンベア30の流れ方向A1に沿うように配置されていることから、プレース動作を行う際にはハンド80の向きをピック動作時の向きから90度回転させる必要がある。
【0080】
そこで、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより5つのワーク20を把持した後、アーム先端を第2容器50Bに向けて移動させる前、アーム先端を第2容器50Bに向けて移動させた後、またはアーム先端を第2容器50Bに向けて移動させながら、ハンド80の向きをピック動作時の向きから90度回転させる。これにより、図20に示すように、ハンド80の並び方向C1が第2容器50Bの第2方向B2に沿う方向となる。
【0081】
[2]第1容器50Aにワーク20を投入する場合のピック動作
この場合、動作制御部92は、第2取得動作を実行して把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取る。まず、図21に示すように、動作制御部92は、把持部85が取得位置の上方に位置するような初期位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が取得位置、つまり把持部85の直下の位置に到達したときに把持部85によりワーク20を把持する。
【0082】
続いて、図22に示すように、動作制御部92は、把持部84が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部84の直下の位置に到達したときに把持部84によりワーク20を把持する。続いて、図23に示すように、動作制御部92は、把持部83が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部83の直下の位置に到達したときに把持部83によりワーク20を把持する。
【0083】
続いて、図24に示すように、動作制御部92は、把持部82が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部82の直下の位置に到達したときに把持部82によりワーク20を把持する。続いて、図25に示すように、動作制御部92は、把持部81が取得位置の上方に位置するような位置となるようにロボットアーム40の動作を制御する。そして、動作制御部92は、ワーク20が把持部81の直下の位置に到達したときに把持部81によりワーク20を把持する。
【0084】
このようなピック動作が行われることにより、ハンド80の把持部81~85のそれぞれにより5つのワーク20が把持された状態となる。この場合も、ワーク20がシールカット部21、22が設けられた側部が流れ方向A1と直交する方向となるような向きで搬送されるとともにハンド80の向きを流れ方向A1および並び方向C1が互いに直交するような向きとした状態でワーク20を取るようになっていることから、図8に示したように、ハンド80により把持された5つのワーク20は、自ずとシールカット部21、22が設けられていない側部同士が隣り合うような配置となる。
【0085】
この場合、第1容器50Aは、第2方向B2がコンベア30の流れ方向A1に沿うように配置されていることから、プレース動作を行う際にはハンド80の向きをピック動作時の向きから90度回転させる必要がある。そこで、動作制御部92は、把持部81~85のそれぞれにより5つのワーク20を把持した後、アーム先端を第1容器50Aに向けて移動させる前、アーム先端を第1容器50Aに向けて移動させた後、またはアーム先端を第1容器50Aに向けて移動させながら、ハンド80の向きをピック動作時の向きから90度回転させる。これにより、図26に示すように、ハンド80の並び方向C1が第1容器50Aの第2方向B2に沿う方向となる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態では、流れ方向A1に向かって右側に第1容器50Aが配置されるとともに左側に第2容器50Bが配置されている。また、本実施形態の動作制御部92は、右側から左側に向けてハンド80を移動させるとともに把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取る第1取得動作と、左側から右側に向けてハンド80を移動させるとともに把持部81~85のそれぞれによりワーク20を順次取る第2取得動作を実行可能となっている。
【0087】
上記構成において、動作制御部92は、投入位置が第1容器50Aにおける位置である場合、第2取得動作を実行して前記ワークを取り、それら取った全てのワーク20を第1容器50Aにおける投入位置に一括して配置する。このようにすれば、ワーク20を取り終えたときのハンド80の位置が第1容器50Aに近づいた位置となり、ピック動作からプレース動作へと円滑に移行することができる。
【0088】
また、上記構成において、動作制御部92は、投入位置が第2容器50Bにおける位置である場合、第1取得動作を実行してワーク20を取り、それら取った全てのワーク20を第2容器50Bにおける投入位置に一括して配置する。このようにすれば、ワーク20を取り終えたときのハンド80の位置が第2容器50Bに近づいた位置となり、ピック動作からプレース動作へと円滑に移行することができる。したがって、本実施形態によれば、コンベア30の流れ方向A1に向かって右側および左側の双方に容器50が配置されている場合における作業時間を一層短縮することができるという効果が得られる。
【0089】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0090】
ハンド80の把持部81~85としては、ワーク20を吸着して保持するための吸着機構を備えたものに限らずともよく、例えばワーク20を掴んで保持するためのチャックを備えたものなど様々なタイプのものを用いることができる。
ハンド80が有する把持部の数は、整列状態において容器50の第2方向B2に沿って並ぶワーク20の数と異なる数であってもよい。
【0091】
整列状態としては、4つ以上のワーク20がシールカット部21、22が設けられた側部同士が隣接するように容器50の第1方向B1に沿って並ぶ状態を含むものであってもよく、容器50の大きさおよびワーク20の大きさなどに応じて適宜変更することができる。例えば、20個のワーク20を5行4列の形態で整列された整列状態で容器50に配置してもよい。
【0092】
ただし、このようにする場合、次のような変更を行うとよい。なお、ここでは、両端の2つの列をそれぞれ第1列および第4列と称するともに、両端の間の2つの列をそれぞれ第2列および第3列と称することとする。この場合、第1方向B1に沿って並べられる4つのワーク20の投入位置が第1設定方法で設定された場合におけるプレース動作は、次のようなものとなる。すなわち、ロボットアーム40は、最初に第1列の投入位置にワーク20を配置し、続いて第4列の投入位置にワーク20を配置し、続いて第2列および第3列のうち一方の投入位置にワーク20を配置し、最後に第2列および第3列のうち他方の投入位置にワーク20を配置する。
【0093】
このような投入順によれば、容器50の第2列および第3列における投入位置にワーク20を配置するときには、その投入位置の隣に既配置ワークが存在することになる。そのため、第2列および第3列における投入位置にワーク20を配置する際に通常アプローチ動作を用いた場合、未配置ワークと既配置ワークとの干渉に起因して生じる反発力により未配置ワークの位置が所望する投入位置から外れた位置となる位置ずれが生じる可能性がある。
【0094】
そこで、第1方向B1に沿って並べられる4つのワーク20の投入位置が第1設定方法により設定された場合におけるプレース動作において、容器50の第2列および第3列における投入位置にワーク20を配置する際、動作制御部92は、未配置ワークを既配置ワークに接触させることにより未配置ワークのシールカット部21、22および既配置ワークのシールカット部21、22が容器50の底部側に向けて折り畳まれた状態としたうえで未配置ワークを投入位置に配置する、より具体的には斜めアプローチ動作によりワーク20を配置するとよい。このようにすれば、容器50の第2列および第3列における投入位置にワーク20を配置するときにも位置ずれが発生することが抑制される。
【0095】
ハンド80は、複数の把持部81~85を有するものに限らずともよく、1つの把持部を有するものであってもよい。
ワーク20は、少なくとも両端にシールカット部を有するピロー包装品であればよく、例えば4つの側部にシールカット部が設けられたピロー包装品であってもよい。また、ワーク20の中身は、お菓子に限らずともよく、例えばパン、冷凍食品などであってもよい。ワーク20の中身がお菓子に比べて重量が重いパン、冷凍食品などである場合であっても、既述した位置ずれの問題は少なからず生じることから、本発明は有益なものとなる。
【0096】
本発明は、生産システム10、100に適用されるロボットアーム40のコントローラ90を含んで構成されるロボットアームの制御システムに限らず、少なくとも両端にシールカット部を有するピロー包装品であるワークを平面視において4つの辺を有する矩形状をなす容器に整列状態で投入する作業を行うロボットアームを制御するロボットアームの制御システム全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
20…ワーク、21、22…シールカット部、30…コンベア、40…ロボットアーム、50…容器、50A…第1容器、50B…第2容器、51~54…辺、80…ハンド、81~85…把持部、90…コントローラ、91…位置設定部、92…動作制御部、A1…流れ方向、B1…第1方向、B2…第2方向、C1…並び方向。
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