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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173673
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 75/20 20060101AFI20231130BHJP
   A01D 34/43 20060101ALI20231130BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A01D75/20 Z
A01D34/43
E02F9/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086099
(22)【出願日】2022-05-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、農業機械技術クラスター事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木島 悦男
【テーマコード(参考)】
2B083
2B085
2D015
【Fターム(参考)】
2B083AA01
2B083BA11
2B083BA15
2B083DA02
2B083GA06
2B083HA52
2B083HA60
2B085AA05
2B085AC41
2B085BC20
2B085BE25
2B085CA03
2D015EA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、作業機転倒時の復帰作業軽減を課題とする。
【解決手段】本発明は、保護フレームを備えた作業機であって、前記保護フレームは、前記作業機上面を守るように覆っており、前記作業機の上方内側に最高所となる突出部を有する作業機とすることで課題を解決した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護フレームを備えた作業機であって、
前記保護フレームは、前記作業機上面を守るように覆っており、
前記作業機の上方内側に最高所となる突出部を有する作業機。
【請求項2】
前記保護フレームは、左前フレームと右後フレームで構成される一続きのフレームと右前フレームと左後フレームで構成される一続きのフレームがクロスして構成されるものであり、
前記クロス部分は、前記突出部となっている請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記保護フレームは、左前フレームと右前フレームと左後フレームと右後フレームを備え、
右側転倒時に接地する前記右後フレームと前記右前フレームの接地点を結ぶ右接地ラインまたは左側転倒時に接地する前記左後フレームと前記左前フレームの接地点を結ぶ左接地ラインの方向は、前記作業機の車体部前後軸方向と平面視で異なった向きになっている請求項1記載の作業機。
【請求項4】
作業機は、草刈部を有する請求項1~3のいずれか1項記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機、ブルドーザー、除雪機などの農業、土木、建築などの技術分野を問わない作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機が作業を行う場所は、必ずしも平坦とは限らない。特に草刈機は、法面などで使われることが多く、作業機や運転者を守るため安全フレームが取り付けられていることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-227424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の安全フレーム(ロールバー)は、上部がフラットなものであり、作業機が転倒すると裏返しになることがあった。
裏返し(逆位)になった作業機は、燃料などが漏れる危険がある。さらに、漏れた燃料や潤滑油は、環境保全の観点からも好ましくない。また、裏返し(逆位)になった作業機は、転倒状態が長く続くと、潤滑油や燃料が望ましくない部位へ流入するなどにより、エンジン再起動に支障を生じることもある。
そして、作業機は裏返し(逆位)になってしまうと、作業員は、180度回転させて正常な向きに復帰させることになる。作業機が逆位になると復帰は著しく困難となる。加えて、作業機が傾斜地で転倒した場合、作業員は危険な傾斜地で復帰作業を行う必要があり、作業員が危険を伴う作業を強いられることがあった。
【0005】
本発明は、作業機転倒時の復帰作業軽減を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保護フレームを備えた作業機であって、前記保護フレームは、前記作業機上面を守るように覆っており、前記作業機の上方内側に最高所となる突出部を有する作業機とすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の作業機は転倒した際、復帰作業を軽減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の草刈機(作業機)の斜視図。
図2】実施例1の草刈機(作業機)の説明図。(A)草刈機(作業機)1を上から観た平面図。(B)草刈機(作業機)1を横から観た側面図。(C)草刈機(作業機)1を進行方向後方から観た背面図。
図3】保護フレームの位置関係と転倒の方向の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
実施例1は、草刈機(作業機)1を例にした例である。図1は、実施例1の草刈機(作業機)1の斜視図である。実施例1の草刈機(作業機)1は、堤防や高速道路の法面の草を刈ることができる仕様となっている。草刈機(作業機)1は、危険を避けるために、操縦席が設けられておらず、遠隔操作で操作される。
なお、図1の前後は、草刈機(作業機)1の草刈部(作業部)11を前とした前後であり、以下の図面でも前後右左は同様である。
【0010】
走行部15は、車輪より接地面積が大きく転倒しにくいクローラが採用されている。車体部12の前方には草刈部(作業部)11が取り付けられている。草刈機(作業機)1は重量バランスが偏っていると転倒の危険が大きくなる。その対策として、実施例1の草刈機(作業機)1は、重量物のエンジン13や油圧タンクを後方に設け、前方の草刈部(作業部)11とバランスを取るように設計されている。
【0011】
傾斜面を草刈する場合、作業員は、草刈機(作業機)1を等高線に沿って運転し作業することが普通である。このとき草刈機(作業機)1は、草を刈りながら車体部前後軸Aを等高線の方向に向け、等高線に沿うように(車体部12の左側面または右側面を低い側にして)動く。そのため、草刈機(作業機)1が転倒する場合、右左方向、すなわち、横転することが多い。草刈機(作業機)1は、前後方向の幅が右左方向の幅より長いため前後方向には倒れにくく、傾斜地を旋回したときに草刈部(作業部)11が低い方向を向くことがあるが、前転するように転倒することはまれである。
【0012】
草刈機(作業機)1は、転倒時に作業機上面を守るため、作業機上面を覆う保護フレーム4が設けられている。実施例1の左前フレーム41Lと右後フレーム42Rは、連結されて一続きのフレームとなっている。また、右前フレーム41Rと左後フレーム42Lは、連結されて一続きのフレームとなっている。
そして、保護フレーム4は草刈機(作業機)1の上方内側に、最高所となる頂部(突出部)43を有している。これらの一続きのフレームは、頂部(突出部)43でX字状にクロスされ、頂部締結部431で締結される。
【0013】
実施例1ではこのような構造が採用されているが、保護フレーム4は、少なくとも草刈機(作業機)1上面を覆い、頂部(突出部)を有していれば、どのようなものでもよい。さらに強度を向上させるため、もう一本の保護フレームが追加されてもよい。
【0014】
[頂部(突出部)の機能]
頂部(突出部)43は、保護フレーム4に設けられており、草刈機(作業機)1の上方内側の最高所にある。頂部(突出部)43は、草刈機(作業機)1が転倒して逆さまになったときに、敢えて不安定になるように機能する。逆さまになった草刈機(作業機)1は、頂部(突出部)43を下に留まることができず、傾斜に沿ってさらに回転し、走行部15が接地し元に戻りやすくなる。
また、草刈機(作業機)1が、そこまで大きく転倒しなくとも、横倒しになったまま止まった草刈機(作業機)1は、保護フレーム4の頂部(突出部)43が保護フレーム4の最高所にあるため、完全に逆位にならない。逆さまになった草刈機(作業機)1は最高所にある頂部(突出部)43の1点で支えることはできず、頂部(突出部)43を傾斜面に向けて倒れる。尖った芯を下に鉛筆を立てることができないのと同様である。作業員は傾斜地の高い方から走行部15を押すことで、草刈機(作業機)1を簡単に正位復帰できる。
【0015】
頂部(突出部)43は、草刈機(作業機)1の上方内側の最高所にあるが、その位置は、草刈機(作業機)1の中央付近にあることが好ましい。等高線に沿って作業する草刈機(作業機)1が左側面からまたは右側面からのいずれの側から横転しても同じように草刈機(作業機)1の上方を守り、同じように正位に復帰するからである。
なお、頂部(突出部)43は、草刈機(作業機)1の左右前後のいずれかの方向に寄せて設けられていてもよい。例えば、乗用型作業機の座席が右側に偏って設けられている場合、作業員を守るために座席の直上に頂部(突出部)43を設けると、結果的に頂部(突出部)43が右に偏ることがある。右側に偏った頂部(突出部)43を有する草刈機(作業機)1は、左側面から倒れる場合と右側面から倒れる場合とで、倒れる様子が異なることになる。
【0016】
[保護フレーム]
また、実施例1の保護フレーム4はX字状にクロスさせた構造を採用しており、草刈機(作業機)1の上面を守るように覆っている。本発明の保護フレーム4は、草刈機(作業機)1の上面を転倒時に守れれば、どのような構造でもよい。
【0017】
[頂部(突出部)の変形例]
保護フレーム4が頂部(突出部)43を有することは、別の利点がある。実施例1は、無人草刈機(作業機)1であるが、有人草刈機(作業機)1で法面作業を行うことも行われている。変形例は、前述したような頂部(突出部)43の下に座席を配置する態様である。頂部(突出部)43は、X字状にクロスしている。作業員は、シートベルト等で守られてはいるといえ、水平方向に草刈機(作業機)1の上面を覆う従来の保護フレームでは逆さに転倒すると作業員の頭が保護フレーム4から上に飛び出し、傾斜面側に出てしまうことがあった。万が一にも保護フレーム4から作業員の頭が出ることは危険なことである。実施例1の草刈機(作業機)1は、X字状に交差している頂部(突出部)43に作業員の頭がぶつかるため、保護フレーム4の外に頭が飛び出すことはなく作業員を守ることできる。
また、クロスした保護フレーム4のクロス部分を頂部(突出部)43としているが、草刈機(作業機)1の上方内側に突起のような構造物を保護フレーム4に取り付けて頂部(突出部)43としてもよい。
【0018】
[保護フレームの変形例]
実施例1の保護フレーム4は、左前フレーム41Lと右後フレーム42Rは、一続きのフレームとなっており、右前フレーム41Rと左後フレーム42Lが一続きのフレームとなっている。
保護フレーム4をどのような部材単位とするかは適宜決めることができる。例えば、一本のバーが曲げ加工され、左前フレーム41Lと右前フレーム41Rとなってもよい。また、左前フレーム41Lは、いくつかのパーツに分けられており、接続ジョイントで組み立てることで左前フレーム41Lとなるようにしてもよい。
【0019】
[保護フレームの取り付け]
図2(A)は草刈機(作業機)1を上から観た平面図であり、図2(B)は草刈機(作業機)1を横から観た側面図であり、図2(C)は草刈機(作業機)1を進行方向後方から観た背面図である。図2の前後左右の基準は図1と同様である。
保護フレーム4は、転倒時に草刈機(作業機)1の荷重を支えるため、堅牢なもので構成されている。また、左前フレーム41Lや右前フレーム41Rの基部は、図2(A)に図示されているように、車体機枠14のような堅牢な部材に固定されている。図2(C)に図示されているように、左後フレーム42Lや右後フレーム42Rも、車体機枠14に固定されている。草刈機(作業機)1の車体後部には、エンジンや油圧タンクのような重量物が配置されており、これらを守るために、ガード板52が左後フレーム42Lと右後フレーム42Rに固定されている。
【0020】
[転倒からの復帰]
図2(A)に図示されているように、草刈機(作業機)1は、傾斜面を走行部15の左側面が高く、走行部15の右側面が低くなるように等高線に沿って走行している。そのため草刈機(作業機)1の車体部前後軸Aは、等高線と平行な位置関係となっている。一見、危険がないと思われる斜面でも、石が草に隠れていたりすると走行部15が石に乗り上げ傾斜面の低い側に向かって転倒することが起き得る。
ここで、図2(A)の草刈機(作業機)1が、低い側に向けて横転し、裏返し(逆位)となり、さらに元の状態(正位)に復帰するまでを考える。草刈機(作業機)1は、次の(1)~(7)のような状態を経て正位に戻る。
【0021】
(1)転倒は、右側の走行部15の機幅外側下接地ラインCDLを軸にして傾斜地を転がることで開始する。横転した草刈機(作業機)1は、右側の走行部15全体を接地させて傾斜面に対して一時的に直立する。つまり、草刈機(作業機)1は、走行部15の機幅外側下接地ラインCDLと機幅外側上接地ラインCULで囲まれる走行部15の右側面全体を接地させた状態となり、傾斜面に対して直立した(完全に横倒し)の状態となる。
【0022】
(2)右側の走行部15の低側に横転した草刈機(作業機)1は、さらに横に回転する。そして、横転した草刈機(作業機)1は一時的に右前フレーム接地点41RSと右後フレーム接地点42RSを結ぶ右接地ラインRLと走行部15の機幅外側上接地ラインCULで囲まれた面で接地するように裏返し方向に倒れ始める。
(3)草刈機(作業機)1がさらに回転すると、右接地ラインRLを軸に頂部(突出部)43に向けて回転し始める。そして、頂部(突出部)43と左前フレーム接地点41LSと左後フレーム接地点42LSを結ぶ三角形の面が接地するようにほぼ裏返しの状態となる。
【0023】
(4)この面は面積が小さく非常に不安定なため、さらに草刈機(作業機)1が回転すると頂部(突出部)43に向けて倒れ始める。最高所にある頂部(突出部)43だけで直立することは不安定で出来ないため、草刈機(作業機)1は、頂部(突出部)で一瞬支えられた後、直ちに左側を下にして倒れ始める。頂部(突出部)43を超えて回転する草刈機(作業機)1は左前フレーム接地点41LSと左後フレーム接地点42LSと頂部(突出部)43を結ぶ三角形の面で一旦接地する。この状態も、ほぼ裏返しの状態である。
【0024】
(5)さらに回転すると、草刈機(作業機)1は左前フレーム接地点41LSと左後フレーム接地点42LSとを結ぶ左接地ラインLLを軸に回転し、左接地ラインLLと走行部15の上部を接地させて、倒れた状態となり、やや起き上がり始める。
【0025】
(6)さらに回転すると、草刈機(作業機)1は、左側の走行部15の側面全体を接地させて、傾斜面に対して直立する状態となる。つまり、草刈機(作業機)1は、走行部15の機幅外側下接地ラインCDLと機幅外側上接地ラインCULで囲まれる走行部15の左側面全体を接地させて、傾斜面に対して直立した(完全に横倒しの)状態となる。
【0026】
(7)最後に草刈機(作業機)1は、走行部15の左側の機幅外側下接地ラインCDLを軸にしてさらに回転し、正位に復帰する。
以上のような過程により、傾斜面を右側に倒れた草刈機(作業機)1は正位に戻る。
【0027】
以上の説明は、草刈機(作業機)1が、傾斜面を走行部15の右側面が高く、走行部15の左側面が低くなるように等高線に沿って走行している状態で、横転しても同様であり、以上の説明の右を左に、左を右に読み替えればよい。
【0028】
[頂部(突出部)の作用]
仮に、草刈機(作業機)1が上記(1)~(6)のいずれかの状態で横転した状態で倒れたままとなっても、作業員は傾斜面の上側から横倒しになった草刈機(作業機)1を押すことで容易に正位に復帰させることができる。
さらに、草刈機(作業機)1は、保護フレーム4に頂部(突出部)43があるため、裏返し(逆位)の状態を不安定とすることができ、正位に戻しやすくなる。
実施例1の、草刈機(作業機)1は、保護フレーム4に頂部(突出部)43があるため、裏返し(逆位)の状態で転倒が止まることが従来技術(特許文献1)より少なく、そのまま回転し、正位で静止することが多くなる。
【0029】
従来、特に傾斜地で使われる作業機の保護フレームは、特許文献1に記載のように、上面が平らなものが多く、逆位で静止することが多かった。これは、逆位で静止したとしても転倒が続き傾斜面の最下部まで転落するより良いという技術思想に由来する。事実、上面が平らな保護フレームは、逆位からの復帰が困難であり、力をかけ続けないと復帰できない。転倒時の回転力が強くない場合、作業機は逆位で転倒が止まる。
実施例1は、転倒が続くかもしれないが、逆位で転倒が止まらず正位に復帰(静止)することを優先するという、または、逆位からの復帰を簡単にするという全く異なる技術思想に基づく。実施例1の草刈機(作業機)1は、逆位になっても、簡単に正位に戻せる、すなわち、回転力が強くなくとも転倒が続くことを意味する。
実施例1の転倒が続くという課題は、次の[前後の保護フレームの位置関係による作用]の項で解決される。
【0030】
[前後の保護フレームの位置関係による作用]
図3は、保護フレームの位置関係と転倒の方向の説明図である。図2図3の草刈機(作業機)1の構造は全く同じであり、転倒の過程は前述した[転倒からの復帰]の項と全く同じである。
前述した[転倒からの復帰]の項は、図2を用いて転倒からの正位に復帰する過程に焦点を当てた説明であった。この項では、復帰時に草刈機(作業機)1の向きが変わることに焦点を絞った説明を行う。全く同じ草刈機(作業機)1の、全く同じ転倒時に起きる現象を、別の観点で説明しているため、一部の説明は[転倒からの復帰]の項と重複している。
【0031】
[転倒からの復帰]の項で説明したのと同様に、草刈機(作業機)1が走行部15の右側面を傾斜面の低い側にした等高線走行中に横転し、裏返し(逆位)となり、さらに元の状態(正位)に復帰するまでを考える。
(1)[転倒からの復帰]の項(1)と同様であり、転倒は、右側の走行部15の機幅外側下接地ラインCDLを軸にして傾斜地を転がることで始まる。横転した草刈機(作業機)1は、右側の走行部15全体を接地させて傾斜面に対して直立する。
【0032】
(2)[転倒からの復帰]の項(2)と同様である。右側の走行部15を接地させて横転した草刈機(作業機)1は、さらに横転する。そして、一時的に右前フレーム接地点41RSと右後フレーム接地点42RSを結ぶ右接地ラインRLと走行部15の機幅外側上接地ラインCULで囲まれた面で接地するように裏返し方向に倒れ始める。
【0033】
(3)[転倒からの復帰]の項(3)と同様であり、草刈機(作業機)1がさらに回転すると、右後フレーム接地点42RSと右前フレーム接地点41RSを結ぶ右接地ラインRLを軸に頂部(突出部)43に向けて回転し始める。
ここで、保護フレームの位置関係による作用を説明する。図3で図示されているように右接地ラインRLの方向は、車体部前後軸Aの方向と平面視で異なった向きになっている。右接地ラインRLの方向は、草刈機(作業機)1後方の右側の走行部15を超えた内側付近から始まり、次第に車体部前後軸Aから右側に離れるように延びている。そのため、右接地ラインRLを軸に回転する草刈機(作業機)1は、向きを変え始める。等高線に向かって延びていた車体部前後軸Aは方向を変え、等高線からやや低い側に向かうようになる。草刈機(作業機)1の前方に装着された草刈部(作業部)11は、向きを少しだけ低い側に変える。
そして、頂部(突出部)43と左前フレーム接地点41LSと左後フレーム接地点42LSを結ぶ三角形の面が接地するようにほぼ裏返しの状態となる。
【0034】
(4)[転倒からの復帰]の項(4)と同様であり、この面は面積が小さく非常に不安定なため、さらに草刈機(作業機)1が回転すると頂部(突出部)43を通り越し、草刈機(作業機)1の左側が接地するようになる。頂部(突出部)43を超えて回転する草刈機(作業機)1は左前フレーム接地点41LSと左後フレーム接地点42LSと頂部(突出部)43を結ぶ三角形の面で一旦接地する。この状態も、ほぼ裏返しの状態である。
【0035】
(5)[転倒からの復帰]の項(5)と同様である。さらに回転すると、草刈機(作業機)1は左前フレーム接地点41LSと左後フレーム接地点42LSを結ぶ左接地ラインLLを軸に回転し、左接地ラインLLと走行部15の上部を接地させて、倒れた状態となり、やや起き上がるようになる。
ここで、保護フレームの位置関係による作用を説明する。
左接地ラインLLの方向は、草刈機(作業機)1後方の左側の走行部15を超えた内側付近から始まり、次第に車体部前後軸Aから左側に離れるように延びている。
両軸の方向が平面視で異なった向きになっているため、さらに傾斜面の低い側に車体部前後軸Aが向くように草刈機(作業機)1の方向が変わる。すなわち、草刈機(作業機)1は、草刈部(作業部)11がより低い方を向くように方向を変えて起き上がり始める。
【0036】
(6)[転倒からの復帰]の項(6)と同様であり、さらに回転すると、草刈機(作業機)1は、左側の走行部15全体を接地させて傾斜面に対して直立する状態となる。つまり、草刈機(作業機)1は、走行部15の機幅外側下接地ラインCDLと機幅外側上接地ラインCULで囲まれる走行部15の左側面全体を接地させて、草刈部(作業部)11を低い側に向け傾斜面に対して直立した(完全に横倒しの)状態となる。
【0037】
(7)[転倒からの復帰]の項(6)と同様であり、走行部15の左側の機幅外側下接地ラインCDLを軸にして回転し、草刈機(作業機)1は正位に復帰する。
図3の「転倒後正位に復帰した状態」は、その状態を図示している。
上記(3)および(5)において、2回にわたりが等高線から低い側に草刈機(作業機)1の方向が変わったため、車体部前後軸Aは、転倒前に等高線に沿っていたのが低い側に向けて傾く。
【0038】
従来技術では転倒後正位に復帰しても、車体部前後軸Aは等高線に沿ったままであった。車体部前後軸Aが等高線に沿ったままだと、勢いよく転倒した場合、傾斜面の最も低いところまで転がる心配があった。
実施例1の草刈機(作業機)1は、転倒から復帰すると傾斜面の低い側に車体部前後軸Aの向きを変えて正位に復帰する。正位の草刈機(作業機)1の回転軸となり得る機幅外側下接地ラインCDLは図3で図示されているように、等高線に沿っておらず、低い側に向く。この時、さらに転倒することもありえるが、草刈機(作業機)1は、横幅より前後幅の方が長く、前転するような転倒はよほどの勢いがないと起きない。そのため、実施例1の草刈機(作業機)1は、通常の転倒では、続けて転がり続けることはない。
【0039】
[左接地ラインLLの方向と右接地ラインRLの方向の変形例]
以上のように保護フレーム4の左接地ラインLLの方向と右接地ラインRLの方向が車体部前後軸Aの方向と平面視で異なった向きになることを説明した。実施例1の左接地ラインLLの方向と右接地ラインRLの方向は、草刈機(作業機)1の後方から前方に延びており、草刈機(作業機)1の前方に行くにつれ車体部前後軸Aから外側にずれて行く。
このような場合、前述したように、草刈機(作業機)1の前方(草刈部(作業部)11)が次第に傾斜面の低い側に向くように転倒する。
【0040】
[左接地ラインLLと右接地ラインRLの向きの変形例]
本発明は、実施例1の左接地ラインLLの方向と右接地ラインRLの方向は、草刈機(作業機)1の後方から前方に延びており、草刈機(作業機)1の前方に行くにつれ車体部前後軸Aから内側に向く変形例も含む。
この変形例は、重たい作業部が後装されている作業機などに適している。また、乗用型の作業機の場合、転倒後傾斜面低い側に作業員が向くように転倒が止まることで恐怖を抱くこともある。敢えて、転倒後の作業機が、傾斜面の高い側を前に向くように転倒するように、左接地ラインLLの方向と右接地ラインRLの方向を決めてもよい。このような変形例の作業機に乗車している作業員は、作業機が高い方を向いて転倒するため恐怖感が少なくなる。
【0041】
[逆位になった草刈機(作業機)の復帰作業]
従来の保護フレーム4を備えた草刈機(作業機)1が逆位に転倒した場合、作業員は草刈機(作業機)1を90度回転させて、横倒した状態に戻す作業を要する。
傾斜地でこの作業を行うことは容易ではない。
実施例1の草刈機(作業機)1は、保護フレーム4に頂部(突出部)43を設けることで完全に逆位で静止することができない。そして、草刈機(作業機)1の上部を下に向けて転倒していても、実施例1の草刈機(作業機)1は[転倒からの復帰]の項の(3)~(5)に記したように、回転軸を変えながら数段階に分けて横倒した状態に戻すことができる。作業員は、従来技術のように一挙に90度回転させる必要がない。
実施例1の草刈機(作業機)1の復帰作業は、格段に安全になる。
【0042】
[他の作業機への適用]
以上のように、出願人は草刈機(作業機)1を例として実施例1に示し説明してきた。[転倒からの復帰]や[前後の保護フレームの位置関係による作用]の項の説明でも分かるように、保護フレーム4の作用は、特定の作業機だけの適用に留まらない。如何なる作業機においても、また傾斜地でなくとも、転倒は起き得ることであり、本発明はあらゆる作業機に適用できる技術である。
以上、本発明に係る実施例1や様々な変形例を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【0043】
(SDGsへの貢献)
本発明は、特に森林、堤防、公園など定期的に人が管理する必要がある場所で行う作業に使われる作業機に関する発明である。本発明は、森林、堤防や公園などの管理を通してSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の15番目の目標「陸の豊かさを守ろう。森林の持続的な管理」に寄与することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 草刈機(作業機)
11 草刈部(作業部)
12 車体部
13 エンジン
14 車体機枠
15 走行部
4 保護フレーム
41L 左前フレーム
41LS 左前フレーム接地点
41R 右前フレーム
41RS 右前フレーム接地点
42L 左後フレーム
42LS 左後フレーム接地点
42R 右後フレーム
42RS 右後フレーム接地点
43 頂部(突出部)
431 頂部締結部
52 ガード板
A 車体部前後軸
RL 右接地ライン
LL 左接地ライン
CUL 機幅外側上接地ライン
CDL 機幅外側下接地ライン
図1
図2
図3