(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173677
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/474 20210101AFI20231130BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20231130BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231130BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231130BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231130BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/486 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/474
H01M10/0585
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M50/262 E
H01M50/486
H01M50/477
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/105
H01M50/489
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086104
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】大崎 真由子
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC08
5H011FF02
5H011KK00
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK04
5H021AA02
5H021CC20
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE09
5H021EE10
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH04
5H021HH06
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM12
5H029BJ03
5H029BJ12
5H029DJ04
5H029DJ13
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ15
5H040AA14
5H040AT04
5H040AY06
5H040NN00
5H040NN01
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA19
5H050FA02
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】長期に亘って電極体からの反力の上昇を抑えられる非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】ここで開示される電池100は、正極と負極とが積層方向に積層された電極体20と、電極体20を収容する外装体10と、電極体20の積層方向の面に対向するスペーサ50とを備える。上記負極は、黒鉛およびシリコン系活物質を含み、上記シリコン系活物質が、Si換算で3質量%以上である。スペーサ50は、1MPaで圧縮したときの潰れ量が、電極体20の厚さの2.5%以上であり、かつ1000サイクル充放電した後のヤング率が、0.1MPa以上5MPa以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極活物質層を備える正極と、負極活物質を含む負極活物質層を備える負極とが、絶縁された状態で積層方向に積層された電極体と、
前記電極体を収容する外装体と、
前記電極体の前記積層方向の面に対向するスペーサと、
を備える非水電解質二次電池であって、
前記負極は、
前記負極活物質として黒鉛およびシリコン系活物質を含み、
前記負極活物質の総量を100質量%としたときに、前記シリコン系活物質が、Si換算で3質量%以上であり、
前記スペーサは、
1MPaで圧縮したときの潰れ量が、前記電極体の厚さの2.5%以上であり、かつ
1000サイクル充放電した後に、オートグラフで応力を加えて、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力とした応力歪み曲線を作成したときに、前記応力歪み曲線の潰れ始めから変曲点までの区間における傾きで求められるヤング率が、0.1MPa以上5MPa以下である、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記潰れ量が、前記スペーサの厚さの50%以上99%以下である、
請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記電極体は、オートグラフで応力を加えて、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力とした応力歪み曲線を作成したときに、前記応力が0.5MPa~1MPaの区間における前記応力歪み曲線の傾きで求められるヤング率が、30MPa以上200MPa以下である、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記スペーサの前記電極体と対向する面の面積が、前記正極活物質層の面積以上である、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記スペーサが前記外装体の内部に収容され、前記電極体と当接している、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記外装体がラミネートフィルムからなり、
前記スペーサが前記外装体の外部に配置され、
前記外装体と前記スペーサとに対して、前記積層方向から拘束圧を加える拘束手段をさらに備える、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記スペーサが、連続気泡を有するウレタンフォームまたはゴムスポンジから構成されている、
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非水電解質二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、絶縁された状態で積層方向に積層された電極体と、電極体を収容する外装体と、を備える。このような非水電解質二次電池において充放電が行われると、電極体が積層方向に膨張・収縮して、外装体の積層方向の厚さが変化する。外装体の積層方向の厚さが変化すると、電極体に加わる荷重が変化して電池特性(例えばサイクル特性)が低下したり、充放電が不均質になって負極で金属析出(例えばLi析出)が発生したりすることがある。これに関連する先行技術文献として、特許文献1~3が挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には、電極体の積層方向の側面と外装体の内面との間に高分子発泡体を配置することで、充放電時に電極体の膨張に応じて高分子発泡体が収縮して、電極体に加わる荷重を均質化し得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-76476号公報
【特許文献2】特開2016-522546号公報
【特許文献3】特開2010-287466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極体と対向するスペーサ、例えば特許文献1に開示されるような高分子発泡体は、繰り返しの充放電による圧力変動や、使用環境の温度変化(例えば氷点下~60℃)の影響で、電極体からの反力を繰り返し受ける。このため、本発明者の検討によれば、スペーサの種類等によっては、繰り返し反力を受けることで次第に硬化していき、ある時期に一定の弾性を保てなくなることがあった。これにより、電極体からの反力が急激に上昇し、電極体に加わる荷重を調整できなくなることがあった。特に、負極にシリコン系活物質を含む電池は充放電時に電極体の膨張収縮が大きいため、かかる傾向が顕著だった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負極にシリコンを含み、かつ長期に亘って電極体からの反力の上昇を抑えられる非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、正極活物質を含む正極活物質層を備える正極と、負極活物質を含む負極活物質層を備える負極とが、絶縁された状態で積層方向に積層された電極体と、上記電極体を収容する外装体と、上記電極体の上記積層方向の面に対向するスペーサと、を備える非水電解質二次電池が提供される。上記負極は、上記負極活物質として黒鉛およびシリコン系活物質を含み、上記負極活物質の総量を100質量%としたときに、上記シリコン系活物質が、Si換算で3質量%以上である。上記スペーサは、1MPaで圧縮したときの潰れ量が、上記電極体の厚さの2.5%以上であり、かつ1000サイクル充放電した後に、オートグラフで応力を加えて、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力とした応力歪み曲線を作成したときに、上記応力歪み曲線の潰れ始めから変曲点までの区間における傾きで求められるヤング率が、0.1MPa以上5MPa以下である。
【0008】
ここに開示されるスペーサは、潰れ量ないしヤング率が所定の範囲を満たすような圧縮特性を有する。このようなスペーサを用いることで、負極に所定割合以上でシリコンを含む場合であっても、長期に亘って電極体からの反力をスペーサで好適に吸収することができる。その結果、充放電サイクルを繰り返しても反力の上昇を安定して抑えることができ、電池の膨らみを効果的に抑制できる。
【0009】
ここに開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、上記潰れ量が、上記スペーサの厚さの50%以上99%以下である。このように潰れ量が大きいと、スペーサの占有体積を最小限に抑えられる。したがって、体積エネルギー密度の低下を抑制できる。
【0010】
ここに開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、上記電極体は、オートグラフで応力を加えて、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力とした応力歪み曲線を作成したときに、上記応力が0.5MPa~1MPaの区間における上記応力歪み曲線の傾きで求められるヤング率が、30MPa以上200MPa以下である。上記範囲を満たすことで、電極体そのものが膨らみにくい構造となり、ここに開示される技術の効果を高いレベルで安定して発揮できる。
【0011】
ここに開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、上記スペーサの上記電極体と対向する面の面積が、上記正極活物質層の面積以上である。これにより、ここに開示される技術の効果を、より安定して発揮できる。
【0012】
ここに開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、上記スペーサが上記外装体の内部に収容され、上記電極体と当接している。これにより、充放電に伴って電極体が膨張し、スペーサが潰れた際に、スペーサから電解液が排出されて、電解液をタイムリーに電極体へ供給することができる。
【0013】
ここに開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、上記外装体がラミネートフィルムからなり、上記スペーサが上記外装体の外部に配置され、上記外装体と上記スペーサとに対して、上記積層方向から拘束圧を加える拘束部材をさらに備える。外装体の外部にスペーサを配置することにより、スペーサが電解液に曝されることがないため、ここに開示される技術の効果を安定して発揮できる。
【0014】
ここに開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、上記スペーサが、連続気泡を有するウレタンフォームまたはゴムスポンジから構成されている。これにより、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る非水電解質二次電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】実施例に係るラミネートセルとスペーサの配置を表す模式的な縦断面図である。
【
図5】充放電サイクルと電極体からの反力との関係を表すグラフである。
【
図6】充放電サイクルと電極体の膨れ量との関係を表すグラフである。
【
図7】拘束圧と膨張速度との関係を表すグラフである。
【
図8】セルおよびスペーサの寸法と拘束圧との関係を表すグラフである。
【
図9】スペーサのヤング率とセルの膨れ量および1000サイクル後の反力との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0018】
<非水電解質二次電池100>
図1は、非水電解質二次電池100(以下、単に「電池100」ということがある。)の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の長辺方向、上記長辺方向と直交する短辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。短辺方向Yは積層方向の一例である。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0019】
図2に示すように、電池100は、外装体10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、スペーサ50(
図3参照)と、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解質を備えている。電池100は、電極体20とスペーサ50と図示しない電解質とが外装体10の内部に収容されて構成されている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。電池100は、ここに開示されるスペーサ50を備えることによって特徴付けられ、それ以外の構成は従来同様であってよい。
【0020】
外装体10は、電極体20とスペーサ50と図示しない電解質とを収容する筐体である。
図1に示すように、外装体10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)に形成されている。ただし、外装体10の形状は角形に限定されず、円柱や袋状等の任意の形状であってよい。外装体10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。外装体10は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の軽量で熱伝導性の良い金属材料で構成されている。外装体10は、所謂、ラミネートフィルム、例えば、アルミニウムを含む金属層と、樹脂を含む融着層と、を有するアルミラミネートフィルムであってもよい。
【0021】
図2に示すように、外装体10は、ここでは、開口部12hを有するケース本体12と、開口部12hを塞ぐ蓋体(封口板)14と、を備えている。ケース本体12は、
図1に示すように、平板状の底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口部12hと対向している。長側壁12bおよび短側壁12cは、それぞれ平坦な面を有する。平面視において、長側壁12bの面積は、短側壁12cの面積よりも大きい。
図3に示すように、長側壁12bは、後述する電極体20の平坦部20fおよびスペーサ50と対向している。
【0022】
蓋体14は、ケース本体12の開口部12hを塞ぐようにケース本体12に取り付けられている。蓋体14は、ケース本体12の底壁12aと対向している。蓋体14は、ここでは略矩形状である。外装体10は、ケース本体12の開口部12hの周縁に蓋体14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。外装体10は、気密に封止(密閉)されている。
【0023】
電極体20は、正極および負極(図示せず)を有する。電極体20は、ここでは方形状(典型的には矩形状)の正極と、方形状(典型的には矩形状)の負極とが、セパレータを介して積層方向Yに積み重ねられてなる積層電極体である。ただし、電極体20は、例えば、帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心として捲回されてなる扁平な捲回電極体であってもよい。
【0024】
図3に示すように、電極体20は、積層方向Yの両端に一対の平坦部20fを有する。ここでは、一方(
図3の前側)の平坦部20fが、外装体10の長側壁12bと対向し、他方(
図3の後側)の平坦部20fが、スペーサ50と対向している。電池100の出荷時においては、電極体20の平坦部20fと外装体10の長側壁12bとの間には、隙間が存在することが好ましい。また、電極体20の積層方向Yと直交する端面は、底壁12a、蓋体14、および一対の短側壁12cとそれぞれ対向している。
【0025】
本実施形態において、電極体20は、ヤング率が、30MPa~200MPaであることが好ましい。上記範囲を満たすことで、電極体20そのものが膨らみにくい構造となり、ここに開示される技術の効果を高いレベルで安定して発揮できる。なお、本明細書において「電極体20のヤング率」とは、次のようにして求めた値をいう。すなわち、まずオートグラフを用いて、電極体20の中央部に正極よりも小さい面積(例えば2×2cm2等)で積層方向Yから一定応力をかけ、厚さ変化がほぼなくなるまで保持し、その際の歪量を読み取る。次に、電極体20に加える応力を段階的に上げていき、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力として測定結果をプロットし、応力歪み曲線を作成する。そして、得られた応力歪み曲線において、応力が0.5MPa~1MPaの区間における傾きを電極体20のヤング率とする。電極体20の応力歪み曲線は、応力が0.1MPa~0.5MPaの区間における傾きが、10MPa~100MPaであることが好ましく、応力が1MPa~2MPaの区間における傾きが、50MPa~300MPaであることが好ましい。
【0026】
正極は、
図2に示すように、正極集電体21と、正極集電体21の少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層(図示せず)と、を有する。正極集電体21は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極活物質層の充填密度(平均充填密度)は、3.0~3.8g/cm
3が好ましい。正極活物質層は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。正極活物質層は、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0027】
負極は、
図2に示すように、負極集電体22と、負極集電体22の少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層(図示せず)と、を有する。負極集電体は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極活物質層の充填密度(平均充填密度)は、典型的には正極活物質層よりも小さく、1.4~1.7g/cm
3が好ましく、1.4~1.6g/cm
3がより好ましい。これにより、電極体20のヤング率を上記範囲に調整しやすくなる。
【0028】
負極活物質層は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。本実施形態において、負極活物質は、黒鉛およびシリコン系活物質を必須として含んでいる。負極活物質は、黒鉛およびシリコン系活物質に加えて、その他の負極活物質、例えば黒鉛以外の炭素材料等をさらに含んでいてもよい。シリコン系活物質としては、例えばSiOx、Si-C複合体、多孔質炭素粒子内にナノSi粒子が分散されたもの、等が挙げられる。負極活物質の総量を100質量%としたときに、シリコン系活物質の割合は、ここではSi換算で3質量%以上である。負極活物質の総量に占めるシリコン系活物質の割合は、Si換算で3~20質量%であってもよく、5~10質量%であってもよい。また、シリコン系活物質の割合は、シリコン系活物質の質量と黒鉛の質量との合計を100質量%としたときに、Si換算で3質量%以上であることが好ましい。
【0029】
負極活物質層は、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダや、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール系バインダ、ポリアクリル酸(PAA)等のアクリル系バインダ等を使用し得る。負極活物質層は、負極活物質層に占めるバインダの割合が、3質量%以上であることが好ましい。これにより、電極体20のヤング率を上記範囲に調整しやすくなる。
【0030】
セパレータは、積層方向Yにおいて正極の正極活物質層と負極の負極活物質層との間に介在し、これらを絶縁する部材である。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。セパレータは、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に設けられた接着層と、を有する接着セパレータであることが好ましい。接着層は、融点が100℃以下で粘着性(あるいは接着性)の樹脂材料を含む層である。接着層に含まれ得る樹脂材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。セパレータは、接着層を介して、正極および/または負極と接着され、一体化されていることが好ましい。これにより、電極体20のヤング率を上記範囲に調整しやすくなる。なお、ここで「接着されている」とは、乾燥状態での剥離強度が1N/m以上であることをいう。
【0031】
図2に示すように、電極体20の長辺方向Xの中央部には、正極活物質層と負極活物質層とが絶縁された状態で積層された積層部が形成されている。一方、電極体20の長辺方向Xの左端部には、正極集電体21の一部分(正極集電体露出部)が積層部からはみ出している。正極集電体露出部には、正極リード部材23が付設されている。また、電極体20の長辺方向Xの右端部には、負極集電体22の一部分(負極集電体露出部)が積層部からはみ出している。負極集電体露出部には、負極リード部材24が付設されている。
【0032】
正極端子30および負極端子40は、
図1に示すように、蓋体14の長辺方向Xの両端部に配置されている。正極端子30および負極端子40は、外装体10の外部に突出している。正極端子30および負極端子40は、ここでは、外装体10の同じ面(具体的には蓋体14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、外装体10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。
図2に示すように、正極端子30は、外装体10の内部で、正極リード部材23を介して、電極体20の正極と電気的に接続されている。負極端子40は、外装体10の内部で、負極リード部材24を介して、電極体20の負極と電気的に接続されている。
【0033】
電解質は従来と同様でよく、特に制限はない。電解質は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水系の液状電解質(非水電解液)である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解質は、固体状(固体電解質)で、電極体20に一体化されていてもよい。
【0034】
スペーサ50は、電極体20の平坦部20f(積層方向Yの面)に対向して、電極体20の反力を吸収する部材である。スペーサ50の数は、
図3では1つである。スペーサ50の数は、電極体20の数と同数である。スペーサ50は、外装体10の内部に配置されている。積層方向Yにおいて、スペーサ50は、電極体20と外装体10の長側壁12bとの間に配置されている。スペーサ50は電極体20の平坦部20fと当接している。ただし、他の実施形態において、スペーサ50の数は、電極体20の数と異なっていてもよい。また、スペーサ50は、2つ以上の複数であってもよく、例えば電極体20を積層方向Yの両側から挟み込むように配置されていてもよい。また、後述する実施例ないし変形例にも示すように、スペーサ50は外装体10の外部に配置されていてもよい。
【0035】
スペーサ50は、シート状である。スペーサ50は、電極体20に対向する側の面の面積が、正極活物質層の面積以上であることが好ましい。これにより、ここに開示される技術の効果を安定して発揮できる。スペーサ50は、例えば電極体20に接着されて、電極体20と一体化されていてもよい。スペーサ50は、例えば電極体20と外装体10の内側面との間、あるいは、2つの電極体20の間に、着脱可能なように挟持されていてもよい。
【0036】
本実施形態において、スペーサ50は、1MPaで圧縮したときの潰れ量が、電極体20の厚さ(積層方向Yの長さ)の2.5%以上である。なお、本明細書において「潰れ量」とは、オートグラフを用いて、スペーサ50に積層方向Yから1MPaの応力をかけ、厚さ変化がほぼなくなるまで圧縮したときの厚さの最大変化量をいう。1つの電極体20に対して複数のスペーサ50を使用する場合は、複数のスペーサ50の合計厚さの最大変化量を、上記潰れ量とする。潰れ量は、電極体20の厚さの3%以上であることが好ましく、5%以上、さらには6%以上であることがより好ましく、概ね20%以下、例えば10%以下、さらには8%以下であることが好ましい。
【0037】
上記潰れ量は、スペーサ50の厚さ(積層方向Yの長さ)の50%以上であるとよく、例えば50~99%が好ましい。上記潰れ量は、スペーサ50の厚さの60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。このように潰れ量が大きいと、スペーサ50の占有体積を最小限に抑えられる。したがって、スペーサ50が大きくなって電池100の体積エネルギー密度が低下することを抑制できる。
【0038】
また、本実施形態において、スペーサ50は、1000サイクル充放電した後のヤング率が、0.1MPa~5MPaである。スペーサ50は、1~1000サイクルの充放電の間、上記ヤング率を維持することが好ましい。なお、本明細書において「スペーサのヤング率」とは、次のようにして求めた値をいう。すなわち、まずオートグラフを用いて、スペーサ50に積層方向Yから一定応力をかけ、厚さ変化がほぼなくなるまで保持し、その際の歪量を読み取る。次に、スペーサ50に加える応力を段階的に上げていき、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力にして測定結果をプロットし、応力歪み曲線を作成する。そして、得られた応力歪み曲線において、潰れ始めから変曲点までの区間における傾きを、スペーサ50のヤング率とする。スペーサ50のヤング率は、0.15MPa以上であることが好ましく、3MPa以下、例えば2MPa以下であることが好ましい。
【0039】
上記のような潰れ量およびヤング率を有するスペーサ50としては、例えば、ゴムスポンジ、ウレタンフォーム、発泡ポリスチレン等からなる、多孔質あるいは架橋された構造体や、グラスウール、不織布等の繊維状の構造体が挙げられる。より具体的には、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロプレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、クロロブレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム等のなかで、長期の使用に耐えられる老化し難い反発弾性を有するものが挙げられる。なかでも潰れ量を確保する観点から、発泡体等の構造体が好ましい。発泡体等の構造体は、気孔の戻り易さの観点から、気密性がある独立気泡よりも、連続気泡もしくは貫通気孔を有することが好ましく、積層方向Yと直交する方向(電極体20と対向する面方向)に連続気泡を有することがさらに好ましい。スペーサ50は、気孔率が40%以上であることが好ましく、なかでも弾力性があり、粘性が低く、かつ永久歪が小さいものが好ましい。
【0040】
特に限定されるものではないが、車載用等の用途では、低温~高温の広範な環境下で1000回以上の圧縮を繰り返しても上記ヤング率の範囲を満たすことが好ましい。スペーサ50は、耐熱温度が100℃以上であることが好ましく、さらに-30℃以下の耐候性と耐老化性を有するものがより好ましい。また、スペーサ50は、難燃性で断熱性が高いことが好ましく、300Kでの熱伝導率が、概ね10W/(m・K)以下の難燃素材からなることがさらに好ましい。また、本実施形態のように外装体10の内部にスペーサ50を配置する場合は、多孔質構造で電解液を保持する機能を有することが好ましい。これにより、充放電に伴って電極体20が膨張し、スペーサ50が潰れた際に、スペーサ50から電解液が排出されて、電解液をタイムリーに電極体20へ供給することができる。
【0041】
<電池100の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0042】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0043】
〔試験例:スペーサの種類の検討〕
<実施例1> まず、正極活物質等を含む正極活物質層(充填密度:3.5g/cm3)を備える正極を作製した。また、負極活物質としての黒鉛(負極活物質全体の93質量%)およびSi-C複合体(負極活物質全体の7質量%)と、バインダとしてのCMCとSBRとPAAと、を含む負極活物質層(充填密度:1.6g/cm3)を備える負極を作製した。次に、これら正極および負極を、未塗工部を残して矩形状に切りだし、セパレータを介して交互に積層して、電極体(積層方向の厚さが約10mm)を作製した。なお、セパレータとしては、PVdFを含む接着層が両側に塗布されたものを用いた。そして、上記電極体を1~4MPaでプレスして、正極とセパレータと負極とを相互に接着させ、一体化させた。
【0044】
次に、電池ケースとして、袋状のアルミラミネートフィルムを用意した。ラミネートフィルムは、電極体が膨張しても突っ張らないように大きめのものを使用し、電極体が浸漬する量の電解液を入れて封止した。これにより、ラミネートセル(リチウムイオン二次電池)を構築した。
【0045】
次に、スペーサとして、耐久性に優れるポリエーテルタイプで連続気泡を有するウレタンフォーム(厚さ2mm)を用意した。このスペーサの物性を上記した方法で測定したところ、(初期の)ヤング率は1.2MPaであり、スペーサの厚さに対する潰れ量は60%、電極体の厚さに対する潰れ量は、6.0%であった。
【0046】
次に、
図4に示すように、作製したラミネートセルを積層方向に2つ並べ、電極体の平坦部に対向するようにラミネートセルの間にスペーサを1つ配置し、2枚の拘束板(SUS板)で挟み込んだ。次に、応力(電極体からの反力)を計測するためロードセル(図示せず)を片方のSUS板とラミネートセルとの間に入れた。次に、SUS板の四方にあるボルトを軽く手で締め、積層方向から応力Pを加えて、ラミネートセルとスペーサを密着させた。そして、温度35℃の大気環境下において、3~4.25Vの電圧範囲で1000サイクルの充放電を繰り返し、1サイクル目、250サイクル目、500サイクル目、1000サイクル目で、それぞれラミネートセルからの反力とラミネートセルの膨れ量(厚みの変化)を計測した。また、充放電試験が終了した後、スペーサを取出し、1000サイクル充放電した後のスペーサのヤング率を測定した。
【0047】
<実施例2> スペーサとして、連続気泡を有するEPDMゴムスポンジ(厚さ2mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にセルを構築し、評価を行った。このスペーサの(初期の)ヤング率は0.5MPaであり、スペーサの厚さに対する潰れ量は70%、電極体の厚さに対する潰れ量は、7.0%であった。
【0048】
<実施例3> スペーサとして、連続気泡を有するシリコーンゴムスポンジ(厚さ2mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にセルを構築し、評価を行った。このスペーサの(初期の)ヤング率は0.1MPaであり、スペーサの厚さに対する潰れ量は80%、電極体の厚さに対する潰れ量は、8.0%であった。
【0049】
<比較例1> スペーサとして、気泡を有しないEPDMゴムスポンジ(厚さ2mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にセルを構築し、評価を行った。
【0050】
<比較例2> スペーサを使用せず(ヤング率を0MPaとして)、ラミネートセルのみ用いたこと以外は、上記実施例1と同様にセルを構築し、評価を行った
【0051】
<比較例3> 実施例1と同じゴムスポンジ1個に対して、ラミネートセルを積層方向に6つ並べて使用したこと以外は、上記実施例1と同様にセルを構築し、評価を行った。なお、実施例1のゴムスポンジは、厚さが2mm、スペーサの厚さに対する潰れ量が60%なので、実際の潰れは、1.2mm(=2mm×0.6)である。比較例3では、ラミネートセルを6つ並べているため、電極体の合計厚さ(10mm×6)に対する潰れ量は、2%(=(1.2mm/60mm)×100)となる。
【0052】
<比較例4> スペーサとして、発泡率の大きい硬質のポリウレタンフォーム(厚さ2mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にセルを構築し、評価を行った。
【0053】
<実施例4> スペーサとして、独立気泡を有する天然ゴムスポンジ(厚さ2mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にセルを構築し、評価を行った。このスペーサの(初期の)ヤング率は0.4MPaであり、スペーサの厚さに対する潰れ量は70%、電極体の厚さに対する潰れ量は、7.0%であった。
【0054】
結果を纏めて表1に示す。なお、アルミラミネートの厚みは、数十ミクロン程度であり、電極体の積層方向の厚み(2つで合計約20mm)に比べて極薄いため、ここでは、セルの厚み≒電極体の厚み、セルの反力≒電極体の反力とみなしている。充放電サイクルと電極体からの反力との関係を
図5に示し、充放電サイクルと電極体の膨れ量との関係を
図6に示す。
【0055】
【0056】
表1の結果を確認すると、電極体の厚さに対する潰れ量が小さく、かつヤング率が大きいスペーサを用いた比較例1では、
図5に示すように、1サイクル目の時点ですでに電極体からの反力が大きく、250サイクル目で、さらに反力が上昇していた。また、スペーサを省いた比較例2では、負極とセパレータにLi析出が生じて、
図6に示すように、ラミネートセルが異常に膨化したうえに、1000サイクル後の電池容量の低下が大きかった。また、電極体の厚さに対する潰れ量が小さいスペーサを用いた比較例3では、
図5に示すように、500サイクル目でスペーサが潰れ切ると、電極体からの反力が急激に上昇した。また、1000サイクル後のヤング率が小さいスペーサを用いた比較例4も、
図5に示すように、サイクル数を重ねるごとに電極体からの反力が上昇した。この理由としては、充放電時の電極体の発熱あるいは繰り返しの圧縮によって、スペーサが硬化したことが考えられる。
【0057】
これら比較例に対して、1MPaで圧縮したときの潰れ量が電極体の厚さの2.5%以上であり、かつ1000サイクル充放電した後のヤング率が0.1MPa~5MPaであるスペーサを用いた実施例1~4では、
図5に示すように、1~1000サイクルの充放電の間、電極体からの反力をスペーサで好適に吸収することができ、反力の上昇が安定して抑えられていた。その結果、
図6に示すように、セル(電極体)の膨らみが効果的に抑制されていた。かかる結果は、ここに開示される技術の意義を示すものである。
【0058】
〔理論計算:スペーサの潰れ量のシミュレーション〕
さらに、理論計算により、スペーサの潰れ量の適正値について検討した。具体的には、まず上記試験例と同様の手順でラミネートセルを複数作製した。なお、負極活物質は、Si-C複合体の割合を負極活物質全体の3.15質量%とした。次に、ラミネートセルをスペーサと共に一定の拘束力で拘束した。このとき、拘束圧を5KPa~3MPaの間で異ならせ、ラミネートセルとスペーサの合体物を複数準備した。次に、上記試験例と同様の手順で、充放電に伴うセルの厚みの変化量(膨張・収縮)と応力変動を計測した。そして、
図7に示すように、横軸を拘束圧、縦軸を膨張速度として結果をプロットし、得られた曲線の近似式を求めた。
【0059】
次に、スペーサとセルとについて、それぞれオートグラフで圧縮特性を測り、拘束力を上げては一定時間保持して変位をプロットすることを繰り返し、
図8の(a)に示すような荷重変位曲線(F-Sカーブ)を取得した。次に、
図8の(b)に示すように、スペーサのF-Sカーブを反転させて、セルのF-Sカーブと開始点を一致させるようにプロットした。そして、次の(1)~(3)の計算を1000サイクル行うシミュレーションを実施した。
(1)
図7の曲線の近似式に基づいて、膨張速度から+1サイクルのセルの膨れ量を求める。
(2)
図8の(a)において、セルのF-Sカーブを(1)の膨れ量の分、スライドさせる(
図8の(c)参照)。
(3)
図8において、スペーサのF-Sカーブとの交点を、反力とする。
【0060】
上記得られた結果と、上記試験例と同様の手順で別途測定したスペーサのヤング率とを用いて、スペーサのヤング率とセルの膨れ量および1000サイクル後の反力との関係をグラフにし、
図9に示す。
図9に示すように、シミュレーション結果からは、ヤング率が0.1MPa~5MPaの範囲において、スペーサが応力1MPaで少なくとも2.5%潰れることが必要であることがわかった。言い換えれば、1000サイクル後のセル(電極体)からの反力を1MPa以下に抑えるためには、スペーサの潰れ量を電極体の厚さの2.5%以上とすることが必要であるとわかった。
【0061】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極活物質を含む正極活物質層を備える正極と、負極活物質を含む負極活物質層を備える負極とが、絶縁された状態で積層方向に積層された電極体と、上記電極体を収容する外装体と、上記電極体の上記積層方向の面に対向するスペーサと、を備え、上記負極は、上記負極活物質として黒鉛およびシリコン系活物質を含み、上記負極活物質の総量を100質量%としたときに、上記シリコン系活物質が、Si換算で3質量%以上であり、上記スペーサは、1MPaで圧縮したときの潰れ量が、上記電極体の厚さの2.5%以上であり、かつ1000サイクル充放電した後に、オートグラフで応力を加えて、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力とした応力歪み曲線を作成したときに、上記応力歪み曲線の潰れ始めから変曲点までの区間における傾きで求められるヤング率が、0.1MPa以上5MPa以下である、非水電解質二次電池。
項2:上記潰れ量が、上記スペーサの厚さの50%以上99%以下である、項1に記載の非水電解質二次電池。
項3:上記電極体は、オートグラフで応力を加えて、横軸を歪量、縦軸を単位体積当たりの応力とした応力歪み曲線を作成したときに、上記応力が0.5MPa~1MPaの区間における上記応力歪み曲線の傾きで求められるヤング率が、30MPa以上200MPa以下である、項1または項2に記載の非水電解質二次電池。
項4:上記スペーサの上記電極体と対向する面の面積が、上記正極活物質層の面積以上である、項1~項3のいずれか一つに記載の非水電解質二次電池。
項5:上記スペーサが上記外装体の内部に収容され、上記電極体と当接している、項1~項4のいずれか一つに記載の非水電解質二次電池。
項6:上記外装体がラミネートフィルムからなり、上記スペーサが上記外装体の外部に配置され、上記外装体と上記スペーサとに対して、上記積層方向から拘束圧を加える拘束部材をさらに備える、項1~項4のいずれか一つに記載の非水電解質二次電池。
項7:上記スペーサが、連続気泡を有するウレタンフォームまたはゴムスポンジから構成されている、項1~項6のいずれか一つに記載の非水電解質二次電池。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0063】
例えば、上記実施形態では、スペーサ50が外装体10の内部に収容されていた。しかし、これには限定されない。上記した実施例にも記載のように、外装体10がラミネートフィルムのような薄い素材からなる場合、スペーサ50は外装体10の外部に配置されていてもよい。その場合、外装体10とスペーサ50とに対して積層方向Yから拘束圧を加える拘束手段をさらに備えていてもよい。外装体10の外部にスペーサ50を配置することにより、スペーサ50が電解液に曝されることがなくなり、ここに開示される技術の効果を長期に亘り安定して発揮できる。本発明者の検討によれば、スペーサ50が外装体10の内部に配置されていても、外部に配置されていても、ここに開示される技術の効果を変わりなく発揮できる。
【符号の説明】
【0064】
10 外装体
20 電極体
50 スペーサ
100 非水電解質二次電池(電池)