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特開2023-173678ポリウレタン発泡体、バット、及びウレタンプレポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173678
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ポリウレタン発泡体、バット、及びウレタンプレポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20231130BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20231130BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20231130BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20231130BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C08G18/48 004
C08G18/00 F
C08G18/10
C08G18/76 078
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086105
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧原 伸征
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG02
4J034DG04
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QA03
4J034QB01
4J034QB14
4J034QC01
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】ポリウレタン発泡体の反発弾性を確保しつつ、成形性を良くする。
【解決手段】ポリオールに由来する構造と、ポリイソシアネートに由来する構造と、を有するポリウレタン発泡体であって、前記ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールと、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールと、が少なくとも含まれる、ポリウレタン発泡体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールに由来する構造と、ポリイソシアネートに由来する構造と、を有するポリウレタン発泡体であって、
前記ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールと、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールと、が少なくとも含まれる、ポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイドユニットを少なくとも含むポリエーテルポリオールである、請求項1に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記ポリオールと、前記ポリイソシアネートとの反応物であって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを用いて得られた、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートには、1,5-ナフタレンジイソシアネートが含まれる、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン発泡体を備えるバット。
【請求項6】
ポリオールに由来する構造とポリイソシアネートに由来する構造とを有し、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであって、
前記ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールと、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールと、が少なくとも含まれる、ウレタンプレポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン発泡体、バット、及びウレタンプレポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高反発性を有するポリウレタン発泡体が記載されている。このポリウレタン発泡体は、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコールのみを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-150460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリオールとしてポリテトラメチレングリコールのみを用いた場合には、ポリウレタン発泡体の反発弾性率を向上できるものの、シュリンク等の成形不良を生じやすいという課題があった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリウレタン発泡体の反発弾性を確保しつつ、成形性を良くすることを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポリオールに由来する構造と、ポリイソシアネートに由来する構造と、を有するポリウレタン発泡体であって、
前記ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールと、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールと、が少なくとも含まれる、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ポリウレタン発泡体の反発弾性を確保しつつ、成形性を良くできる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイドユニットを少なくとも含むポリエーテルポリオールである、ポリウレタン発泡体。
・前記ポリオールと、前記ポリイソシアネートとの反応物であって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを用いて得られた、ポリウレタン発泡体。
・前記ポリイソシアネートには、1,5-ナフタレンジイソシアネートが含まれる、ポリウレタン発泡体。
・ポリウレタン発泡体を備えるバット。
・ポリオールに由来する構造とポリイソシアネートに由来する構造とを有し、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであって、
前記ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールと、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールと、が少なくとも含まれる、ウレタンプレポリマー。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.ポリウレタンフォーム
ポリウレタン発泡体は、ポリオールに由来する構造と、ポリイソシアネートに由来する構造と、を有する。ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールと、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールと、が少なくとも含まれる。
【0011】
ポリウレタン発泡体は、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートとの反応物であって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(以下、単に「ウレタンプレポリマー」とも称する)を用いて得ることができる。ウレタンプレポリマーを用いたプレポリマー法によって得られたポリウレタン発泡体は、ソフトセグメントとハードセグメントの分布を調整し易く、ポリウレタンフォームの機械強度等に優れる。ポリウレタン発泡体は、プレポリマー法以外にも、ポリオールとポリイソシアネート等を一括に仕込み、反応させるワンショット法によって得てもよい。
【0012】
ウレタンプレポリマーは、例えば、ポリオールに由来する構造とポリイソシアネートに由来する構造とを有し、末端にイソシアネート基を有する。ウレタンプレポリマーのNCO%は特に限定されない。ウレタンプレポリマーのNCO%は、機械強度、柔軟性、及び耐久性の観点から、好ましくは2.5%以上5.0%以下であり、より好ましくは3.0%以上5.0%以下である。
【0013】
(1)ポリオール
ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールが含まれる。ポリテトラメチレングリコールは、[-CHCHCHCH-O-]で示される繰り返し単位を有するポリオールである。ポリトリメチレングリコールは、[-CHCHCH-O-]で示される繰り返し単位を有するポリオールである。
【0014】
ポリテトラメチレングリコールの重量平均分子量及び水酸基価は特に限定されない。ポリテトラメチレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは500-5000であり、より好ましくは1000-4500であり、更に好ましくは1300-4000である。ポリテトラメチレングリコールの水酸基価は、好ましくは20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、より好ましくは25mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、更に好ましくは30mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である。
なお、本開示において、ポリオールの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法による測定値である。ポリオールが市販品である場合には、重量平均分子量としてカタログ値を採用してもよい。
【0015】
ポリトリメチレングリコールの重量平均分子量及び水酸基価は特に限定されない。ポリトリメチレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは500-5000であり、より好ましくは1000-4000であり、更に好ましくは1300-3000である。ポリトリメチレングリコールの水酸基価は、好ましくは25mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、より好ましくは25mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、更に好ましくは35mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である。
【0016】
ポリテトラメチレングリコールとポリトリメチレングリコールは、いずれか一方のみが用いられてもよく、併用されてもよい。反発弾性率を向上する観点から、ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール及びポリトリメチレングリコールのうちポリテトラメチレングリコールのみが含まれることが好ましい。以下の説明では、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール等とも称する。
【0017】
ポリウレタン発泡体の反発弾性率を向上する観点から、ポリテトラメチレングリコール等の含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、65質量部以上が更に好ましい。ポリテトラメチレングリコール等の含有量は、例えば、95質量部以下である。
【0018】
ポリオールには、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールが含まれる。ポリエーテルポリオールは、官能基数が3であり、重量平均分子量が1000-10000であれば、特に限定されない。以下の説明では、本ポリオールを3官能のポリエーテルポリオールとも称する。3官能のポリエーテルポリオールは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
3官能のポリエーテルポリオールは、活性水素含有基を3個有する化合物に、1種以上のアルキレンオキサイドをランダム的又はブロック的に、好ましくはブロック的に開環付加させて得ることができる。開環付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイドユニットを少なくとも含むポリエーテルポリオールであることが好ましく、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体であることがより好ましく、両末端にポリエチレンオキサイドが付加されているポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体であることが更に好ましい。
【0020】
3官能のポリエーテルポリオールの重量平均分子量は1000-10000であり、好ましくは2500-9000であり、より好ましくは4000-8000である。ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは15mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であり、より好ましくは18mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であり、更に好ましくは20mgKOH/g以上45mgKOH/g以下である。
3官能のポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上が更に好ましい。3官能のポリエーテルポリオールの含有量は、例えば、30質量部以下である。
【0021】
ポリテトラメチレングリコール等とポリエーテルポリオールを用いることによって、ポリウレタン発泡体の反発弾性を確保しつつ、成形性を良くできる。その理由は定かではないが、次のように推測される。なお、本開示はこの推測理由に限定解釈されない。
ポリテトラメチレングリコール等に由来する構造は、ポリウレタンの結晶性向上に寄与すると考えられる。ポリウレタンの結晶性が高くなると、ポリウレタン発泡体の反発弾性率を向上できる。他方、ポリウレタンの結晶性が高くなると、ポリウレタン発泡体の発泡時に破泡しにくくなり、シュリンク等の成形不良を生じる一因となる。ポリテトラメチレングリコール等に由来する構造と共に、3官能のポリエーテルポリオールに由来する構造が含まれると、ポリエーテルポリオールに由来する構造が立体障害となってポリウレタンの結晶性が適度に阻害されると考えられる。そして、ポリウレタン発泡体の発泡時に適度に破泡して、シュリンク等の成形不良が生じにくくなると推測される。
【0022】
ポリテトラメチレングリコール等と、3官能のポリエーテルポリオールの質量比は特に限定されない。ポリウレタン発泡体の反発弾性を確保しつつ、成形性を良くする観点から、ポリテトラメチレングリコール等と3官能のポリエーテルポリオールの質量比(ポリテトラメチレングリコール等:3官能のポリエーテルポリオール)は、95:5-70:30であり、好ましくは95:5-80:20であり、より好ましくは95:5-85:15である。
【0023】
ポリオールには、ポリテトラメチレングリコール等と3官能のポリエーテルポリオール以外のポリオール(その他のポリオール)が含まれていてもよい。その場合であっても、その他のポリオールの含有量は、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0024】
ポリテトラメチレングリコール等としては、カーボンニュートラルの考え方において、環境に配慮するという観点から、バイオマス由来(例えば、植物由来)のポリテトラメチレングリコール等を用いることが好ましい。バイオマス由来のポリテトラメチレングリコール等と化石燃料由来のポリテトラメチレングリコール等とは、分子量や機械的性質・熱的性質などの物性に差が生じないので、これらを区別するために、一般にASTM D6866で規定されたバイオマスプラスチック度が用いられる。
バイオマス由来のポリテトラメチレングリコール等を用いた場合において、ポリウレタン発泡体のバイオマスプラスチック度は、特に限定されない。ポリウレタン発泡体のバイオマスプラスチック度は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましい。上限値は、特に限定されず、通常100%未満である。
【0025】
(2)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、ポリウレタン発泡体の製造に用いられる公知の芳香族イソシアネート、脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネートを用いることができる。芳香族イソシアネートとしては、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、シロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
ポリウレタン発泡体の反発弾性率を向上する観点から、ポリイソシアネートには、1,5-ナフタレンジイソシアネートが少なくとも含まれることが好ましく、1,5-ナフタレンジイソシアネートのみが含まれることが好ましい。
【0027】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、機械強度及び反発弾性の観点から、80-140が好ましく、90-120がより好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリウレタン発泡体の分野で使用される指数であって、ポリウレタン発泡体用組成物中の活性水素基に対するイソシアネート基の当量比を百分率で表した数値[NCO基の当量/活性水素基の当量×100]である。
【0028】
2.ポリウレタン発泡体の製造
ポリウレタン発泡体の製造方法は特に限定されない。ポリウレタン発泡体は、例えば、イソシアネート成分と、活性水素基を有する化合物と、触媒とを含むポリウレタン発泡体用組成物から得られる。イソシアネート成分としては、上記のウレタンプレポリマーが挙げられる。具体的には、ポリウレタン発泡体は、ウレタンプレポリマーと、ウレタンプレポリマーと活性水素基を有する化合物との反応により得ることができる。
【0029】
活性水素基を有する化合物としては、数平均分子量18-1000の化合物が好ましい。活性水素基を有する化合物としては、水、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ヒマシ油等を挙げることができる。これらの中でも、水が好ましい。活性水素基を有する化合物が水の場合には、ウレタンプレポリマーと反応して炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。活性水素基を有する化合物が水の場合には、乳化剤と併用されることがより好ましい。乳化剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールエステル等のノニオン系乳化剤、ヒマシ油のナトリウム塩、スルホン化ヒマシ油のナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系乳化剤、アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられ、単独又は2種類以上を併用してもよい。
水の配合量は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下が好ましい。乳化剤の配合量は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0030】
ポリウレタン発泡体用組成物に含まれる触媒としては、公知のウレタン化触媒を用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の配合量は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対して0.001質量部以上0.5質量部以下が好ましい。
【0031】
ポリウレタン発泡体用組成物には、その他の成分が適宜含まれ得る。その他の成分としては、相溶化剤、可塑剤、整泡剤、酸化防止剤や光安定剤等の合成樹脂安定剤、充填材(フィラー)、着色剤、難燃剤等を挙げることができる。
【0032】
ポリウレタン発泡体は、公知の発泡方法によって製造できる。発泡は、スラブ発泡あるいはモールド発泡のいずれでもよい。スラブ発泡は、混合したポリウレタン発泡体用組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法であり、一方、モールド発泡は、混合したポリウレタン発泡体用組成物をモールド(金型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。
【0033】
3.ポリウレタンフォームの物性及び用途
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
(1)密度(見掛け密度)
密度(JIS K7222:2005)は、好ましくは0.20g/cm以上0.50g/cm以下であり、より好ましくは0.25g/cm以上0.50g/cm以下であり、更に好ましくは、0.30g/cm以上0.45g/cm以下である。
(2)反発弾性率
反発弾性率(JIS K6255(リュプケ式):2013)は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、更に好ましくは80%以上である。反発弾性率の上限値は特に限定されず、例えば、90%以下である。
(3)引張強度
引張強度(JIS K6251:2017)は、好ましくは2.0MPa以上であり、より好ましくは2.5MPa以上であり、更に好ましくは3.0MPa以上である。引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、5.0MPa以下である。
(4)伸び(切断時伸び)
伸び(JIS K6251:2017)は、好ましくは250%以上であり、より好ましくは280%以上であり、更に好ましくは300%以上である。伸びの上限値は特に限定されず、例えば、400%以下である。
【0034】
(5)用途
ポリウレタン発泡体が使用される物品は、特に限定されない。本開示の技術は、ポリウレタン発泡体を備えるバットに好適である。ポリウレタン発泡体は、野球・ソフトボール等のバットの打球部に設けられることが好ましい。具体的には、バットは、グリップエンドと先端部との間に装着部を有するバット本体と、筒状に形成されたポリウレタン発泡体を前記装着部に装着した打球部と、を備えているとよい。それ以外にも、本開示のポリウレタン発泡体は、スポーツ用靴底等の高反発性が求められる物品に好適である。
【実施例0035】
1.ポリウレタン発泡体の製造
表1に示す配合割合でポリオールとイソシアネートを配合し、窒素ガス気流下、130℃で約30分反応させて、ウレタンプレポリマー(B液)を作製した。
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリテトラメチレングリコール1:バイオマス由来のポリテトラメチレングリコール、官能基数2、水酸基価53-59mgKOH/g、重量平均分子量2000、品番;BioPTMG2000、三菱ケミカル社製
・ポリテトラメチレングリコール2:バイオマス由来のポリテトラメチレングリコール、官能基数2、水酸基価35-40mgKOH/g、重量平均分子量3000、品番;BioPTMG3000、三菱ケミカル社製
・ポリトリメチレングリコール:バイオマス由来のポリトリメチレングリコール、官能基数2、水酸基価53.4-59.1mgKOH/g、重量平均分子量1900-2100、品番;ECOPROL H2000、SK chemicals社製
・ポリエーテルポリオール:官能基数3、水酸基価29mgKOH/g、重量平均分子量6000、品番;プレミノール7001K、AGC社製
・ポリイソシアネート:1,5-ナフタレンジイソシアネート、NCO%;40%、品番;コスモネートND、三井化学社製
【0036】
実施例1-3は、ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコールとポリエーテルポリオールを、質量比90.9:9.1で用いた例である。実施例4は、ポリオールとして、ポリトリメチレングリコールとポリエーテルポリオールを、質量比90.9:9.1で用いた例である。比較例は、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコールのみを用いた例である。
表1における「ウレタンプレポリマーのNCO%」は、計算によって得られたNCO%の理論値であり、以下の式によって算出した。
NCO%=[〔NCO基のモル数-(ポリテトラメチレングリコール等のモル数+ポリエーテルポリオールのモル数)〕×NCO分子量]/[イソシアネートの配合量+ポリテトラメチレングリコール等の配合量+ポリエーテルポリオールの配合量]×100
【表1】
【0037】
A液として、表2に示す配合割合で活性水素基を有する化合物と触媒を含む配合液を準備した。A液において、相溶化剤は、A液とB液の配合比率を適切にし、安定して混合・撹拌するためにA液の嵩増しの目的で添加されている。
各原料の詳細は以下の通りである。
・発泡剤:ヒマシ油と水(活性水素基を有する化合物)を含む混合液、品番;アドベードSV(ヒマシ油と水の重量比50:50)、ラインケミージャパン社製
・触媒:アミン触媒、品番;Addocat PP、ラインケミージャパン社製
・相溶化剤:ポリオキシエチレンモノオレエート、ブラウノン200SA、青木油脂工業社製
【表2】
【0038】
B液(ウレタンプレポリマー)とA液を、表3に示す配合量で混合して金型内に注入し、モールド発泡によってポリウレタン発泡体を作製した。金型は、200mm×110mm×30mm厚みのキャビティ(成形空間)を有する金型を使用した。
【表3】
【0039】
2.評価方法
実施例1-4及び比較例のポリウレタン発泡体の外観を目視にて観察して、成形性を評価した。成形性が良い場合は「良」とした。成形性が良くない場合は「不良」として、具体的な不良内容を括弧内に記載した。
【0040】
密度は、テストピース(横幅200mm×縦幅110mm×厚み30mm、6面スキン層有)についてJIS K7222:2005に準拠して、測定した。
反発弾性率は、テストピースを厚み12.5mmにスライス(上面スキン層有)し、直径29mmに打抜いてサンプルを作製し、JIS K6255(リュプケ式):2013に準拠して、リュプケ振子の打撃端がスキン層に当るように測定を行った。
引張強度及び伸びは、テストピースを厚み2mmにスライス(スキン層無)し、ダンベル状2号形に打抜いたサンプルを作製し、JIS K6251:2017に準拠して、測定を行った。
なお、比較例のポリウレタン発泡体は、成形不良を生じたため、密度、反発弾性率、引張強度、伸びの測定を行わなかった。
【0041】
3.結果
結果を表3に併記する。
比較例は、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコールのみを用いたポリウレタン発泡体である。比較例は、シュリンクを生じ、成形性が不良であった。
実施例1-3は、ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコールとポリエーテルポリオールを用いたポリウレタン発泡体である。実施例1-3は、成形性が良かった。
実施例4は、ポリオールとして、ポリトリメチレングリコールとポリエーテルポリオールを用いたポリウレタン発泡体である。実施例1-3は、成形性が良かった。
【0042】
実施例1-4は、反発弾性率が70%以上であり、十分な反発弾性を有していた。また、実施例1-4は、密度が0.20g/cm以上0.50g/cm以下であり、実用に適した密度であった。実施例1-4は、引張強度が2.0MPa以上、伸びが250%以上であり、実用に適した機械強度であった。
【0043】
以上の実施例によれば、ポリウレタン発泡体の反発弾性を確保しつつ、成形性を良くできることが確認できた。
【0044】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。