(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173679
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/13 20160101AFI20231130BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20231130BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20231130BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20231130BHJP
B60W 20/30 20160101ALI20231130BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20231130BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20231130BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231130BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231130BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20231130BHJP
B60K 6/547 20071001ALN20231130BHJP
【FI】
B60W20/13
B60K6/48 ZHV
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W20/30
B60W10/10 900
B60L7/14
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
B60K6/547
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086106
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 康夫
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB02
3D202BB11
3D202BB32
3D202BB53
3D202CC22
3D202CC57
3D202DD01
3D202DD18
3D202DD20
3D202DD32
3D202DD44
3D202DD45
3D202EE03
3D202FF08
3D202FF12
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA09
5H125CB02
5H125EE27
5H125EE31
5H125EE44
(57)【要約】
【課題】EV走行が制限された状況であっても燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】HCUは、第3蓄電装置の充電状態に基づいて、アシスト領域と発電領域とを含むようにHEV走行時のモータジェネレータの動作領域を決定する。HCUは、アシスト領域ではエンジンをアシストするようにモータジェネレータを力行させ、発電領域ではモータジェネレータを回生発電させるように制御する。そして、HCUは、EV走行が制限される状態では、アシスト領域を拡大し、エンジンの動作点を補正し、HEV走行を行うように制御する。または、HCUは、EV走行が制限される状態では、発電領域を縮小し、エンジンの動作点を補正し、HEV走行を行うように制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのエンジンおよびモータジェネレータと、
力行時に前記モータジェネレータに電力を供給し、車両の減速時に前記モータジェネレータで回生発電された電力が充電されるバッテリと、を備え、
前記エンジンを停止させて前記モータジェネレータの動力により走行するEV走行と、前記エンジンを運転して前記エンジンおよび前記モータジェネレータの動力により走行するHEV走行と、が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
前記バッテリの充電状態に基づいて、アシスト領域と発電領域とを含むように前記HEV走行時の前記モータジェネレータの動作領域を決定し、
前記アシスト領域では前記エンジンをアシストするように前記モータジェネレータを力行させ、
前記発電領域では前記モータジェネレータを回生発電させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記EV走行が制限される状態では、前記アシスト領域を拡大し、前記エンジンの動作点を補正し、前記HEV走行を行うように制御することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記アシスト領域を拡大して前記HEV走行を行う際に、前記エンジンを効率の良い動作点で運転させるように前記エンジンの動作点を補正することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
駆動源としてのエンジンおよびモータジェネレータと、
力行時に前記モータジェネレータに電力を供給し、車両の減速時に前記モータジェネレータで回生発電された電力が充電されるバッテリと、を備え、
前記エンジンを停止させて前記モータジェネレータの動力により走行するEV走行と、前記エンジンを運転して前記エンジンおよび前記モータジェネレータの動力により走行するHEV走行と、が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
前記バッテリの充電状態に基づいて、アシスト領域と発電領域とを含むように前記HEV走行時の前記モータジェネレータの動作領域を決定し、
前記アシスト領域では前記エンジンをアシストするように前記モータジェネレータを力行させ、
前記発電領域では前記モータジェネレータを回生発電させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記EV走行が制限される状態では、前記発電領域を縮小し、前記エンジンの動作点を補正し、前記HEV走行を行うように制御することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記発電領域を縮小して前記HEV走行を行う際に、前記エンジンを効率の良い動作点で運転させるように前記エンジンの動作点を補正することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド車両の駆動制御装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置は、エンジンと、バッテリから供給される電力で駆動するモータジェネレータとを駆動源として備えており、エンジンを停止させてモータジェネレータが発生する動力のみによるEV走行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、EV走行の可否は、モータジェネレータに電力を供給するバッテリの充電状態によって左右されるが、エンジンの運転要求等の他の要因によっても制限される。EV走行が制限される状況では、エンジンおよびモータジェネレータの両方が走行用の動力原として用いられる。このため、EV走行が制限される状況であっても、エンジンの燃料消費量を抑制して燃費を向上させることが望まれる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、EV走行が制限される状況においてエンジンの燃料消費量を抑制して燃費を向上させることについて検討されていないため、EV走行が制限された状況では燃費を向上させることができないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、EV走行が制限された状況であっても燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一態様は、駆動源としてのエンジンおよびモータジェネレータと、力行時に前記モータジェネレータに電力を供給し、車両の減速時に前記モータジェネレータで回生発電された電力が充電されるバッテリと、を備え、前記エンジンを停止させて前記モータジェネレータの動力により走行するEV走行と、前記エンジンを運転して前記エンジンおよび前記モータジェネレータの動力により走行するHEV走行と、が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、前記バッテリの充電状態に基づいて、アシスト領域と発電領域とを含むように前記HEV走行時の前記モータジェネレータの動作領域を決定し、前記アシスト領域では前記エンジンをアシストするように前記モータジェネレータを力行させ、前記発電領域では前記モータジェネレータを回生発電させるように制御する制御部を備え、前記制御部は、前記EV走行が制限される状態では、前記アシスト領域を拡大し、前記エンジンの動作点を補正し、前記HEV走行を行うように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、EV走行が制限された状況であっても燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載するハイブリッド車両の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置においてアシスト領域を拡大および発電領域を縮小するときのモータ作動領域設定マップである。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置においてアシスト領域を拡大するときのモータ作動領域設定マップである。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置において発電領域を縮小するときのモータ作動領域設定マップである。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の制御装置におけるエンジン動作点の遷移図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の制御装置における変速マップである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、駆動源としてのエンジンおよびモータジェネレータと、力行時にモータジェネレータに電力を供給し、車両の減速時にモータジェネレータで回生発電された電力が充電されるバッテリと、を備え、エンジンを停止させてモータジェネレータの動力により走行するEV走行と、エンジンを運転してエンジンおよびモータジェネレータの動力により走行するHEV走行と、が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、バッテリの充電状態に基づいて、アシスト領域と発電領域とを含むようにHEV走行時のモータジェネレータの動作領域を決定し、アシスト領域ではエンジンをアシストするようにモータジェネレータを力行させ、発電領域ではモータジェネレータを回生発電させるように制御する制御部を備え、制御部は、EV走行が制限される状態では、アシスト領域を拡大し、エンジンの動作点を補正し、HEV走行を行うように制御することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、EV走行が制限された状況であっても燃費を向上させることができる。
【実施例0011】
(実施例1)
以下、本発明の実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載したハイブリッド車両について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、駆動源としての内燃機関型のエンジン2およびモータジェネレータ4と、トランスミッション3と、駆動輪5と、ハイブリッド車両1を総合的に制御する制御部としてのHCU(Hybrid Control Unit)10と、エンジン2を制御するECM(Engine Control Module)11と、トランスミッション3を制御するTCM(Transmission Control Module)12と、ISGCM(Integrated Starter Generator Control Module)13と、INVCM(Invertor Control Module)14と、低電圧BMS(Battery Management System)15と、高電圧BMS16とを含んで構成される。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0014】
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20と、スタータ21とが連結されている。ISG20は、ベルト22などを介してエンジン2のクランクシャフト18に連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転することでエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフト18から入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0015】
本実施例では、ISG20は、ISGCM13の制御により、電動機として機能することで、エンジン2をアイドリングストップ機能による停止状態から再始動させるようになっている。ISG20は、電動機として機能することで、ハイブリッド車両1の走行をアシストすることもできる。
【0016】
スタータ21は、図示しないモータとピニオンギヤとを含んで構成されている。スタータ21は、モータを回転させることにより、クランクシャフト18を回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与えるようになっている。このように、エンジン2は、スタータ21によって始動され、アイドリングストップ機能による停止状態からISG20によって再始動される。
【0017】
トランスミッション3は、エンジン2から出力された回転を変速し、ドライブシャフト23を介して駆動輪5を駆動するようになっている。トランスミッション3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の変速機構25と、ノーマルクローズタイプの乾式クラッチによって構成されるクラッチ26と、ディファレンシャル機構27と、図示しないアクチュエータとを備えている。
【0018】
トランスミッション3は、手動変速機の構造をベースに変速動作を自動化した自動変速機であるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、TCM12により制御されたアクチュエータにより変速機構25における変速段の切換えとクラッチ26の接続及び解放が行われるようになっている。ディファレンシャル機構27は、変速機構25によって出力された動力をドライブシャフト23に伝達するようになっている。
【0019】
モータジェネレータ4は、ディファレンシャル機構27に対して、チェーン等の動力伝達機構28を介して連結されている。モータジェネレータ4は、電動機として機能する。
【0020】
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータジェネレータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータジェネレータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行するようになっている。
【0021】
モータジェネレータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行うようになっている。なお、モータジェネレータ4は、エンジン2から駆動輪5までの動力伝達経路の何れかの箇所に動力伝達可能に連結されていればよく、必ずしもディファレンシャル機構27に連結される必要はない。
【0022】
ハイブリッド車両1は、第1蓄電装置30と、第2蓄電装置31を含む低電圧パワーパック32と、バッテリとしての第3蓄電装置33を含む高電圧パワーパック34と、高電圧ケーブル35と、低電圧ケーブル36とを備えている。
【0023】
第1蓄電装置30、第2蓄電装置31及び第3蓄電装置33は、充電可能な二次電池から構成されている。第1蓄電装置30は鉛電池からなる。第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30よりも高出力かつ高エネルギー密度な蓄電装置である。
【0024】
第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30と比較して短い時間で充電が可能である。本実施例では、第2蓄電装置31はリチウムイオン電池からなる。なお、第2蓄電装置31はニッケル水素蓄電池であってもよい。
【0025】
第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、約12Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定された低電圧バッテリである。第3蓄電装置33は、例えば、リチウムイオン電池からなる。
【0026】
第3蓄電装置33は、第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31より高電圧を発生するようにセルの個数等が設定された高電圧バッテリであり、例えば、100Vの出力電圧を発生させる。第3蓄電装置33の残容量などの状態は、高電圧BMS16によって管理される。第3蓄電装置33は、力行時はモータジェネレータ4に電力を供給する。第3蓄電装置33には、車両の減速時にモータジェネレータ4で回生発電された電力が充電される。
【0027】
ハイブリッド車両1には、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38が設けられている。一般負荷37及び被保護負荷38は、スタータ21及びISG20以外の電気負荷である。
【0028】
被保護負荷38は、常に安定した電力供給が要求される電気負荷である。この被保護負荷38は、ハイブリッド車両1の横滑りを防止するスタビリティ制御装置38A、操舵輪の操作力を電気的にアシストする電動パワーステアリング制御装置38B、及びヘッドライト38Cを含んでいる。なお、被保護負荷38は、図示しないインストルメントパネルのランプ類及びメータ類並びにカーナビゲーションシステムも含んでいる。
【0029】
一般負荷37は、被保護負荷38と比較して安定した電力供給が要求されず、一時的に使用される電気負荷である。一般負荷37には、例えば、図示しないワイパー、及び、エンジン2に冷却風を送風する電動クーリングファンが含まれる。
【0030】
低電圧パワーパック32は、第2蓄電装置31に加えて、スイッチ40、41と、低電圧BMS15とを有している。第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、低電圧ケーブル36を介して、スタータ21と、ISG20と、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38とに電力を供給可能に接続されている。被保護負荷38に対しては、第1蓄電装置30と第2蓄電装置31とが並列に電気的に接続されている。
【0031】
スイッチ40は、第2蓄電装置31と被保護負荷38との間の低電圧ケーブル36に設けられている。スイッチ41は、第1蓄電装置30と被保護負荷38との間の低電圧ケーブル36に設けられている。
【0032】
低電圧BMS15は、スイッチ40、41の開閉を制御することで、第2蓄電装置31の充放電及び被保護負荷38への電力供給を制御している。低電圧BMS15は、アイドリングストップによりエンジン2が停止しているときは、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、高出力かつ高エネルギー密度な第2蓄電装置31から被保護負荷38に電力を供給するようになっている。
【0033】
低電圧BMS15は、エンジン2をスタータ21によって始動するとき、及び、アイドリングストップ制御によって停止しているエンジン2をISG20によって再始動するときに、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、第1蓄電装置30からスタータ21又はISG20に電力を供給するようになっている。スイッチ40を閉じてスイッチ41を開いた状態では、第1蓄電装置30から一般負荷37にも電力が供給される。
【0034】
このように、第1蓄電装置30は、エンジン2を始動する始動装置としてのスタータ21及びISG20に少なくとも電力を供給するようになっている。第2蓄電装置31は、一般負荷37及び被保護負荷38に少なくとも電力を供給するようになっている。
【0035】
第2蓄電装置31は、一般負荷37と被保護負荷38の両方に電力を供給可能に接続されているが、常に安定した電力供給が要求される被保護負荷38に優先的に電力を供給するようにスイッチ40、41が低電圧BMS15により制御される。
【0036】
低電圧BMS15は、第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31の充電状態(充電残量)、並びに、一般負荷37及び被保護負荷38への作動要求を考慮し、被保護負荷38が安定して作動することを優先して、スイッチ40、41を上述した例と異なるように制御することがある。
【0037】
高電圧パワーパック34は、第3蓄電装置33に加えて、インバータ45と、INVCM14と、高電圧BMS16とを有している。高電圧パワーパック34は、高電圧ケーブル35を介して、モータジェネレータ4に電力を供給可能に接続されている。
【0038】
インバータ45は、INVCM14の制御により、高電圧ケーブル35にかかる交流電力と、第3蓄電装置33にかかる直流電力とを相互に変換するようになっている。例えば、INVCM14は、モータジェネレータ4を力行させるときには、第3蓄電装置33が放電した直流電力をインバータ45により交流電力に変換させてモータジェネレータ4に供給する。
【0039】
INVCM14は、モータジェネレータ4を回生させるときには、モータジェネレータ4が発電した交流電力をインバータ45により直流電力に変換させて第3蓄電装置33に充電する。
【0040】
HCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0041】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0042】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16としてそれぞれ機能する。
【0043】
ハイブリッド車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線48、49が設けられている。
【0044】
HCU10は、INVCM14及び高電圧BMS16にCAN通信線48によって接続されている。HCU10、INVCM14及び高電圧BMS16は、CAN通信線48を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
【0045】
HCU10は、ECM11、TCM12、ISGCM13及び低電圧BMS15にCAN通信線49によって接続されている。HCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13及び低電圧BMS15は、CAN通信線49を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
【0046】
このように、ハイブリッド車両1において、トランスミッション3を介してエンジン2の動力が駆動輪5に伝達される。モータジェネレータ4は、力行トルクを駆動輪5に伝達可能であって、発電トルクを駆動輪5から伝達可能な回転電機である。
【0047】
エンジン2のクランクシャフト18には、空調用の図示しないエアコンディショナのコンプレッサ50がベルト51を介して連結されており、このコンプレッサ50は、エンジン2の動力によって作動する。このため、コンプレッサ50が作動するためにはエンジン2が運転される必要がある。
【0048】
HCU10は、ハイブリッド車両1の走行状態(走行モード)を切り替えるようになっている。ハイブリッド車両1の走行状態としては、EV走行とHEV走行とがある。
【0049】
EV走行は、エンジン2の運転を停止させてモータジェネレータ4の動力によりハイブリッド車両1を走行させる走行状態である。EV走行時は、HCU10は、モータジェネレータ4の動力によりドライバ要求トルクを満たすように、モータジェネレータ4を制御する。
【0050】
HEV走行は、エンジン2を運転して、エンジン2の動力(以下、エンジントルクともいう)とモータジェネレータ4の動力(以下、モータトルクともいう)とによりハイブリッド車両1を走行させる走行状態である。HEV走行時は、HCU10は、エンジン2の動力とモータジェネレータ4の動力とを加算した合計トルクによりドライバ要求トルクが満たされるように、エンジン2およびモータジェネレータ4を制御する。HCU10は本発明における制御部を構成する。
【0051】
HCU10は、HEV走行時に、所定のEV走行移行条件が成立した場合は、EV走行に移行する。EV走行移行条件は、モータジェネレータ4に電力を供給する図示しないバッテリの充電状態(SOC:State Of Charge)が規定値以上であること、および、ドライバ要求トルクをモータジェネレータ4が発生する動力(モータトルク)により達成することができること、を含む複数の要件を全て満たす場合に成立する。
【0052】
ここで、ハイブリッド車両1においては、高電圧パワーパック34の第3蓄電装置33の充電状態がEV走行の条件を満たしている場合であっても、空調用のコンプレッサ50を作動させるためにエンジン2を運転する必要があるときは、EV走行移行条件が成立せず、EV走行が制限される。ここで、EV走行が制限される状態とは、コンプレッサ50を連続的に作動させるためにエンジン2を継続して運転する必要があることからEV走行が全く不可能な場合と、コンプレッサ50を断続的に作動させるためにエンジン2を間欠的に運転する必要があることからEV走行を連続して行うことができない場合(短時間のEV走行は可能であっても、継続的なEV走行は不可能な場合)との両方を含む状態である。また、ハイブリッド車両1においては、鉛電池からなる第1蓄電装置30が低温の場合、放電性能が著しく低下する。第1蓄電装置30が低温状態で放電させた場合、第1蓄電装置30の劣化が促進してしまう。そのため、第1蓄電装置30の低温時はエンジン2を運転してISG20により発電された電力が一般負荷37に供給される。また、エンジン2を始動する必要が無いため、第1蓄電装置30からISG20やスタータ21に電力を供給しないようにすることができる。このようにして第1蓄電装置30を保護するため、第1蓄電装置30の低温時はEV走行移行条件が成立せず、EV走行が制限される。
【0053】
したがって、コンプレッサ50の作動や第1蓄電装置30の温度管理等に起因するエンジン2の運転要求がある場合はEV走行が制限されるため、HCU10はHEV走行を行うが、このHEV走行においてもエンジン2の燃料消費量を低減して燃費を向上させることが望ましい。
【0054】
そこで、本実施例では、ハイブリッド車両1の全体の制御を司るHCU10は、EV走行が制限される状態では、アシスト領域の拡大または発電領域の縮小の少なくとも一方を行い、エンジン2の動作点を補正し、HEV走行を行うようにしている。詳しくは、EV走行が制限される状態であることをECM11が検知すると、EV走行が制限される状態であることを表すEV走行制限状態検知フラグをECM11がHCU10に通知する。そして、EV走行制限状態検知フラグが通知されたHCU10は、アシスト領域を拡大した動作領域マップを参照してモータジェネレータ4を制御するとともに、エンジン2の動作点の補正をECM11に要求する。
【0055】
図2に示すように、HCU10は、第3蓄電装置33の充電状態に基づいて、アシスト領域と発電領域とを含むようにHEV走行時のモータジェネレータ4の動作領域を決定する。そして、HCU10は、アシスト領域ではエンジン2をアシストするようにモータジェネレータ4を力行させ、発電領域ではモータジェネレータ4を回生発電させるように制御する。
【0056】
そして、HCU10は、EV走行が制限される状態では、アシスト領域を拡大し、エンジン2の動作点を補正し、HEV走行を行うように制御する。
【0057】
詳しくは、HCU10のROMには、HEV走行時のモータジェネレータ4の動作領域を定めた動作領域マップとして、EV走行が制限されていない状態でHEV走行を行う場合に参照する動作領域マップ(
図2における変更前の動作領域マップ)と、EV走行が制限されている状態でHEV走行を行う場合に参照する動作領域マップ(
図2における変更後の動作領域マップ)とが記憶されている。HCU10は、EV走行の制限の有無に応じて動作領域マップを変更する。
【0058】
HCU10は、EV走行が制限されていない状態でHEV走行を行う場合には、
図2における変更前の動作領域マップを参照し、EV走行が制限されている状態でHEV走行を行う場合には
図2における変更後の動作領域マップを参照し、第3蓄電装置33の充電状態に基づいてモータジェネレータ4を力行または回生発電させる。
【0059】
図2において、EV走行が制限されていない状態で参照する動作領域マップ(変更前)では、第3蓄電装置33の充電状態(図中、SOCと記す)がX[%]以上の領域がアシスト領域に設定され、X[%]未満の領域が発電領域に設定されている。また、EV走行が制限されている状態で参照する動作領域マップ(変更後)では、第3蓄電装置33の充電状態がY[%]以上の領域がアシスト領域に設定され、Y[%]未満の領域が発電領域に設定されている。また、YはXより小さい値に設定されている。このため、EV走行が制限されていない状態で参照する動作領域マップと比較して、EV走行が制限されている状態で参照する動作領域マップでは、アシスト領域が拡大され、かつ、発電領域が縮小されている。
【0060】
HCU10は、EV走行が制限される状態では、
図2におけるアシスト領域を拡大した動作領域マップを参照し、モータジェネレータ4を制御する。このため、EV走行が制限される状態では、EV走行が制限されていない状態と比較して、モータジェネレータ4が力行する機会が多くなり、かつ、モータジェネレータ4が回生発電する機会が少なくなる。
【0061】
HCU10は、HEV走行を行う場合に参照する動作領域マップとして、
図3に示す動作領域マップを用いてもよい。
【0062】
図3において、EV走行が制限されていない状態で参照する動作領域マップ(変更前)では、第3蓄電装置33の充電状態(図中、SOCと記す)がX2[%]以上の領域がアシスト領域に設定され、所定充電状態未満の領域が発電領域に設定され、X2[%]未満かつ所定充電状態以上の領域が、力行も回生発電も行わない非動作領域に設定されている。また、EV走行が制限されている状態で参照する動作領域マップ(変更後)では、第3蓄電装置33の充電状態がY2[%]以上の領域がアシスト領域に設定され、所定充電状態未満の領域が発電領域に設定され、Y2[%]未満かつ所定充電状態以上の領域が、力行も回生発電も行わない非動作領域に設定されている。また、Y2はX2より小さい値に設定されている。このため、EV走行が制限されていない状態で参照する動作領域マップと比較して、EV走行が制限されている状態で参照する動作領域マップでは、アシスト領域が拡大されている。
【0063】
HCU10は、EV走行が制限される状態では、
図3におけるアシスト領域を拡大した動作領域マップを参照し、モータジェネレータ4を制御する。このため、EV走行が制限される状態では、EV走行が制限されていない状態と比較して、モータジェネレータ4が力行する機会が多くなる。
【0064】
HCU10は、EV走行が制限される状態では、発電領域を縮小し、エンジン2の動作点を補正し、HEV走行を行うように制御してもよい。
【0065】
この場合、
図2を参照して説明したような、アシスト領域の拡大に伴って発電領域が縮小されるように動作領域マップを変更する手法と、
図4を参照して後述するように、力行も回生発電も行わない非動作領域の拡大に伴って発電領域が縮小されるように動作領域マップを変更する手法とがある。
【0066】
HCU10は、HEV走行を行う場合に参照する動作領域マップとして、
図4に示す動作領域マップを用いてもよい。
【0067】
図4において、EV走行が制限されていない状態で参照する動作領域マップ(変更前)では、第3蓄電装置33の充電状態(図中、SOCと記す)が所定充電状態以上の領域がアシスト領域に設定され、X3[%]未満の領域が発電領域に設定され、所定充電状態未満かつX3[%]以上の領域が、力行も回生発電も行わない非動作領域に設定されている。また、EV走行が制限されている状態で参照する動作領域マップ(変更後)では、第3蓄電装置33の充電状態が所定充電状態異常の領域がアシスト領域に設定され、Y3[%]未満の領域が発電領域に設定され、所定充電状態未満かつY3[%]以上の領域が、力行も回生発電も行わない非動作領域に設定されている。また、Y3はX3より小さい値に設定されている。このため、EV走行が制限されていない状態で参照する動作領域マップと比較して、EV走行が制限されている状態で参照する動作領域マップでは、発電領域が縮小されている。
【0068】
HCU10は、EV走行が制限される状態では、
図4における発電領域を縮小した動作領域マップを参照し、モータジェネレータ4を制御する。このため、EV走行が制限される状態では、EV走行が制限されていない状態と比較して、モータジェネレータ4が回生発電する機会が少なくなる。
【0069】
HCU10は、
図2および
図3のようにアシスト領域を拡大する場合、アシスト領域を拡大する前と比較して、アシスト領域におけるモータジェネレータ4の力行時のモータトルク(アシストトルク)を増加させて、その増加分だけエンジン2のエンジントルクを減少させるようになっている。また、拡大されたアシスト領域におけるモータトルク(アシストトルク)は、上限SOCにおいて最も大きく、Y[%]またはY2[%]に近づくほど小さくなるように設定されている。
【0070】
また、HCU10は、
図2および
図4のように発電領域を縮小する場合、発電領域を縮小する前と比較して、発電領域におけるモータジェネレータ4のモータトルク(発電トルク)を減少させて、発電に用いられるエンジントルク(エンジン2の負荷トルク)を減少させるようになっている。
【0071】
したがって、HCU10は、アシスト領域を拡大する場合と、発電領域を縮小する場合との両方で、アシスト領域を拡大する前または発電領域を縮小する前よりも、エンジントルクを減少するようにしている。
【0072】
以上説明したように、本実施例において、HCU10は、第3蓄電装置33の充電状態に基づいて、アシスト領域と発電領域とを含むようにHEV走行時のモータジェネレータ4の動作領域を決定する。HCU10は、アシスト領域ではエンジン2をアシストするようにモータジェネレータ4を力行させ、発電領域ではモータジェネレータ4を回生発電させるように制御する。そして、HCU10は、EV走行が制限される状態では、アシスト領域を拡大し、エンジン2の動作点を補正し、HEV走行を行うように制御する。
【0073】
これにより、EV走行が制限される状態ではアシスト領域を拡大するので、EV走行が制限された状態であっても、HEV走行におけるモータアシストの機会を増やすことができ、減速時に第3蓄電装置33に回収した回生エネルギーを使用してモータアシストを行うことによりエンジン2の燃料消費を抑えることができる。この結果、EV走行が制限された状況であっても燃費を向上させることができる。
【0074】
また、EV走行が制限される状態ではアシスト領域を拡大するので、EV走行が制限された状態であっても、モータジェネレータ4に電力を供給する第3蓄電装置33が高充電状態になることを回避でき、減速時の回生が制限されにくくすることができる。このため、ハードブレーキの使用頻度を少なくすることができる。
【0075】
また、EV走行が制限される状態ではアシスト領域を拡大してHEV走行を行うので、EV走行が制限された状態であっても、減速時にモータジェネレータ4で回収される回生エネルギーを効率よく使用することができる。
【0076】
また、本実施例において、HCU10は、EV走行が制限される状態では、発電領域を縮小し、エンジン2の動作点を補正し、HEV走行を行うように制御する。
【0077】
これにより、EV走行が制限される状態では発電領域を縮小してHEV走行を行うので、EV走行が制限された状態であってもHEV走行におけるエンジン2の動力を用いた発電の機会を減らすことができ、発電のために用いられるエンジン2の動力(負荷トルク)を小さくすることができ、エンジン2の燃料消費を抑えることができる。この結果、EV走行が制限された状況であっても燃費を向上させることができる。
【0078】
これに加え、EV走行が制限される状態では発電領域を縮小するので、EV走行が制限された状態であっても、モータジェネレータ4に電力を供給する第3蓄電装置33が高充電状態になることを回避して、減速時の回生が制限されにくくすることができる。このため、ハードブレーキの使用頻度を少なくすることができる。
【0079】
(実施例2)
図5、
図6を参照して第2実施例について説明する。第2実施例では、EV走行が制限される状態における、エンジン2の動作点の補正と、トランスミッション3の変速制御とについて説明する。
【0080】
HCU10は、アシスト領域を拡大してHEV走行を行う際に、エンジン2を効率の良い動作点で運転させるようにエンジン2の動作点を補正する。また、HCU10は、発電領域を縮小してHEV走行を行う際に、エンジン2を効率の良い動作点で運転させるようにエンジン2の動作点を補正する。
【0081】
HCU10のROMには、
図5に示すエンジン動作点マップが記憶されている。エンジン動作点マップは、エンジン要求パワーに基づく現在のエンジントルクが熱効率の最適となるエンジン2の動作点を定めたものであり、予め実験的に求められたものである。
【0082】
図5に示すように、エンジン動作点マップには、エンジン要求パワーの等しい点を結んだ等パワーラインと、エンジン熱効率の良い点を結んだ最適燃費ラインとが定められている。なお、
図5には、エンジン要求パワーが相対的に大、中、小の場合に対応する3つの等パワーラインが記載されている。エンジン動作点マップにおける等パワーラインは、エンジン要求パワーが大きくなるほど右上に遷移し、エンジン要求パワーが小さくなるほど左下に遷移する。
【0083】
HCU10は、等パワーラインと最適燃費ラインとの交点をエンジン2の動作点(以下、「エンジン動作点」という)として算出し、このエンジン動作点に対応するエンジン回転速度及びエンジントルクとなるよう、エンジン2を制御する。
【0084】
HCU10のROMには、
図6に示す変速マップが記憶されている。変速マップは、車速及びアクセル開度に基づき変速(アップシフトまたはダウンシフト)のタイミングを規定する変速線を定めたものであり、予め実験的に求められたものである。この変速マップには、エンジン要求パワーが相対的に大、中、小の場合に対応する3つの変速線が定められている。
【0085】
HCU10は、車速及びアクセル開度に基づき変速マップを参照することにより、変速マップ上に設定された変速線を跨いだ場合にアップシフト又はダウンシフトの変速を行う。
図6に示す変速マップは、アップシフトにおける変速マップの一例である。
【0086】
アシスト領域を拡大する際は、モータトルクが増加する分、エンジントルクが減少する。そのため、
図5のエンジン動作点マップにおいて、エンジン動作点がP1からP2へ遷移しようとするが、P2へ遷移するとエンジン2の熱効率が低下する。そこで、HCU10は、最適燃費ライン上にありエンジン熱効率が良いP3へエンジン動作点を遷移させる。なお、HCU10は、エンジン動作点を、P1からP2を経ることなくP3に直接遷移させる。
【0087】
エンジン動作点がP1からP3へ遷移する際にはエンジン回転速度が低下するため、HCU10は、エンジン回転速度の低下量を抑制するためにトランスミッション3の変速比を小さくする。詳しくは、HCU10は、
図6の変速マップにおける変速線を「エンジン要求パワー 中」の変速線から「エンジン要求パワー 小」の変速線に切り換える。そして、HCU10は、変速マップにおいて、アクセル開度と車速との組み合わせがP5にある場合、変速段を3rdから4thに切り換え、変速比を小さくする。
【0088】
発電領域を縮小する際は、モータトルク(発電トルク)が減少する分、エンジン負荷が減少し、その結果としてエンジントルクが減少する。そのため、HCU10は、アシスト領域を拡大する場合と同様の動作を行い、エンジン動作点をP1からP3に遷移させ、変速段を3rdから4thに切り換え、変速比を小さくする。
【0089】
アシスト領域の拡大を解除する際は、モータトルクが減少する分、エンジントルクが増加する。そのため、
図5のエンジン動作点マップにおいて、エンジン動作点がP3からP4へ遷移しようとするが、P4へ遷移するとエンジンの熱効率が低下する。そこで、HCU10は、最適燃費ライン上にありエンジン熱効率が良いP1へエンジン動作点を遷移させる。なお、HCU10は、エンジン動作点を、P3からP4を経ることなくP1に直接遷移させる。
【0090】
エンジン動作点がP3からP1へ遷移する際にエンジン回転速度が上昇するため、HCU10は、エンジン回転速度の上昇量を抑制するためにトランスミッション3の変速比を大きくする。詳しくは、HCU10は、
図6の変速マップにおける変速線を「エンジン要求パワー 小」の変速線から「エンジン要求パワー 中」の変速線に切り換える。そして、HCU10は、変速マップにおいて、アクセル開度と車速との組み合わせがP5にある場合、変速段を4thから3rdに切り換え、変速比を大きくする。
【0091】
発電領域の縮小を解除する際は、モータトルク(発電トルク)が増加する分、エンジン負荷が増加し、その結果としてエンジントルクが増加する。そのため、HCU10は、アシスト領域の拡大を解除する場合と同様の動作を行い、エンジン動作点をP3からP1に遷移させ、変速段を4thから3rdに切り換え、変速比を大きくする。
【0092】
なお、実際のエンジン動作点のP1からP3への遷移量およびP3からP1への遷移量は、
図5に表される遷移量よりも小さい。
【0093】
また、トランスミッション3は、AMTに限らず、遊星歯車を用いた多段式自動変速機や、金属ベルトおよびプーリを用いたCVT(Continuously Variable Transmission)等の無段式自動変速機であってよい。本実施例のハイブリッド車両1は、変速比を無段階に変更可能であることから、トランスミッション3としてCVTを用いることが好ましい。
【0094】
以上説明したように、本実施例において、HCU10は、アシスト領域を拡大してHEV走行を行う際に、エンジン2を効率の良い動作点で運転させるようにエンジン2の動作点を補正する。
【0095】
これにより、アシスト領域を拡大してHEV走行を行う際に、エンジン2を効率の良い動作点で運転させるので、システム効率を向上させることができる。
【0096】
また、本実施例において、HCU10は、発電領域を縮小してHEV走行を行う際に、エンジン2を効率の良い動作点で運転させるようにエンジン2の動作点を補正する。
【0097】
これにより、発電領域を縮小してHEV走行を行う際に、エンジン2を効率の良い動作点で運転させるので、システム効率を向上させることができる。
【0098】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。