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特開2023-173684位置検出システム、プログラム、及び、位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173684
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】位置検出システム、プログラム、及び、位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/56 20060101AFI20231130BHJP
   G01S 13/34 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
G01S13/56
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086115
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知明
(72)【発明者】
【氏名】石川 智大
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AC02
5J070AC13
5J070AD05
5J070AD09
5J070AE09
5J070AE10
5J070AF01
5J070AH04
5J070AH12
5J070AH35
5J070AK15
5J070AK16
(57)【要約】
【課題】検出対象の位置検出の正確度が向上し得る位置検出システムを提供する。
【解決手段】位置検出システム1において、情報取得部31は、実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得する。相関情報演算部32は、複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、複数の信号変化情報のうち第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報である。検出部は、相関情報に基づいて、検出対象の位置を検出する。複数の第二信号変化情報は、複数の領域のうち、第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得する情報取得部と、
前記複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、前記複数の信号変化情報のうち前記第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算する相関情報演算部と、
前記相関情報に基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出する検出部と、を備え、
前記複数の第二信号変化情報は、前記複数の領域のうち、前記第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している、位置検出システム。
【請求項2】
前記信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する前記領域からの反射波に関する信号のパワー情報を含んでおり、
前記相関情報演算部は、前記複数の信号変化情報から複数の前記第一信号変化情報を決定し、前記複数の第一信号変化情報の各々に対して前記相関情報を演算し、
前記複数の第一信号変化情報は、前記複数の信号変化情報のうち、前記複数の第一信号変化情報以外の前記信号変化情報が示すパワー情報よりも大きいパワー情報を示している、請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記相関情報演算部は、前記第一信号変化情報と、前記複数の第二信号変化情報との複数の前記相関情報を含む相関マップを演算し、
前記検出部は、前記相関マップにおける前記複数の相関情報の状態を評価し、前記複数の相関情報の評価結果に基づいて、前記検出対象の位置を検出する、請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記複数の相関情報の評価結果に基づいて、前記相関マップの演算において選択された前記第一信号変化情報に対応する前記第一領域に、前記検出対象が位置しているか否かを判断する、請求項3に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記相関マップは、前記複数の相関情報として、前記第一信号変化情報と、前記複数の第二信号変化情報の各々との相関値を含んでおり、
前記検出部は、前記相関マップについて前記相関値の標準偏差を演算し、前記標準偏差が0以下0.1以上である場合に、前記第一領域に前記検出対象が位置していないと判断する、請求項4に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記相関情報演算部は、複数の前記相関マップを演算し、
前記複数の相関マップは、それぞれ、前記複数の領域のうち互いに異なる領域に対応する前記第一信号変化情報に対して演算された複数の前記相関情報を含んでおり、
前記検出部は、前記複数の相関マップの各々における前記複数の相関情報の状態を評価し、前記複数の相関マップの各々における前記複数の相関情報の評価結果に基づいて、前記検出対象の位置を検出する、請求項3に記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記相関マップは、複数の画素を含んでいる相関情報画像を含んでおり、
前記相関情報画像の前記複数の画素は、それぞれ、互いに異なる前記領域における前記相関情報を示しており、
前記検出部は、前記相関情報画像に基づいて、前記検出対象の位置を検出する、請求項3に記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記情報取得部は、前記複数の信号変化情報を含む信号データセットを取得し、
前記検出部は、前記相関情報に基づいて前記信号データセットを更新し、更新された前記信号データセットに基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する前記領域からの反射波に関する信号のパワー情報を含んでおり、
前記更新された信号データセットは、複数の画素を含んでいる信号情報画像を含んでおり、
前記信号情報画像の前記複数の画素は、それぞれ、互いに異なる前記領域に対応する前記信号変化情報の前記パワー情報を示しており、
前記検出部は、前記信号情報画像に基づいて、前記検出対象の位置を検出する、請求項8に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する前記領域からの反射波に関する信号のパワー情報を含んでおり、
前記検出部は、前記更新された信号データセットに含まれる複数の前記信号変化情報から少なくとも1つの前記信号変化情報を選択し、前記少なくとも1つの信号変化情報の前記パワー情報が閾値よりも低い場合に、前記少なくとも1つの信号変化情報に対応する前記領域に前記検出対象が位置していないと判断し、
前記閾値は、前記更新された信号データセットに含まれる前記複数の信号変化情報のうち、前記少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の前記信号変化情報の前記パワー情報の平均に基づいており、
前記少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の前記信号変化情報は、前記少なくとも1つの信号変化情報に対応する前記領域の周辺に位置する複数の前記領域に対応している、請求項8に記載の位置検出システム。
【請求項11】
前記複数の信号変化情報は、センサによって検出された信号に基づいており、
前記複数の領域は、それぞれ、前記センサからの距離、及び、前記センサに対する方位の少なくとも一つが互いに異なる範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項12】
前記情報取得部は、
前記実空間からの反射波に関する信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部によって取得された信号を複数の成分に分解し、前記複数の成分をそれぞれ座標軸とする空間における前記信号の軌跡の長さに関する値を前記信号変化情報として演算する変化情報演算部と、を含んでいる、請求項1から7のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項13】
前記検出対象は、被検出生体又は被検出生体の部位を含んでおり、
前記検出部は、前記複数の信号変化情報に基づいて、前記検出対象の生体情報を検出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項14】
実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得することと、
前記複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、前記複数の信号変化情報のうち前記第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算することと、
前記相関情報に基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出することと、をコンピュータに実行させ、
前記複数の第二信号変化情報は、前記複数の領域のうち、前記第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している、プログラム。
【請求項15】
実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得することと、
前記複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、前記複数の信号変化情報のうち前記第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算することと、
前記相関情報に基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出することと、を有しており、
前記複数の第二信号変化情報は、前記複数の領域のうち、前記第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している、位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置検出システム、プログラム、及び、位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダを用いて検出対象の位置を検出する技術が知られている。例えば、非特許文献1には、MIMO FMCWレーダを用いて、人の位置を検出する技術が記載されている。この文献において、複数人の位置を検出することが試みられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】K. Han,S. Hong, “Detection and Localization ofMultiple Humans Based on Curve Length of I / Q Signal Trajectory Using MIMOFMCW Radar,” IEEE Microwave and Wireless ComponentsLetter,2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーダは、例えば、送信波を発振し、検出対象において反射した反射波を示す信号を取得する。このようなレーダを用いて検出対象の位置を検出する場合、検出対象以外の障害物からの反射波を示す信号の取得などによってクラッタが発生するおそれがある。クラッタが発生する場合、検出対象を示す信号情報とクラッタを示す信号情報とが区別され難く、検出対象の位置が正しく検出されないおそれがある。
【0005】
これに対して、レーダによって取得された信号情報の処理において、検出対象を示す信号のパワーとクラッタを示す信号のパワーとの違いに着目し、クラッタを示す信号情報を除外することが考えられる。しかし、障害物における送信波の反射に基づく信号の信号強度、又は、レーダの送信波に起因しない信号の信号強度が比較的大きい場合には、クラッタを示す信号情報が除去され難い。このため、この場合も、検出対象の位置が正しく検出されないおそれがある。
【0006】
レーダにおいて取得された信号情報において、検出対象に起因する位相変化の大きさと障害物に起因する位相変化の大きさとの違いに着目し、クラッタを示す信号情報を除外することも考えられる。しかし、この場合においても、送信波及び反射波の伝播経路における信号の位相変化によってクラッタが生じる場合には、当該クラッタを示す信号情報は除去され難い。例えば、マルチパスによって、クラッタが生じるおそれがある。
【0007】
本発明の一つの態様は、検出対象の位置検出の正確度が向上し得る位置検出システム、プログラム、及び、位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様における位置検出システムは、情報取得部と、相関情報演算部と、検出部とを備えている。情報取得部は、実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得する。相関情報演算部は、相関情報を演算する。演算される相関情報は、複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、複数の信号変化情報のうち第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報である。検出部は、相関情報に基づいて、検出対象の位置を検出する。複数の第二信号変化情報は、複数の領域のうち、第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様は、検出対象の位置検出の正確度が向上し得る位置検出システム、プログラム、及び、位置検出方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における位置検出システムのブロック図である。
図2】位置検出システムの概略説明図である。
図3】送信波の信号と受信される反射波の信号との関係の一例を示す図である。
図4】信号データセットを示す図である。
図5】I/Q信号の軌跡を示す図である。
図6】(a)及び(b)は、信号情報画像を示す図である。
図7】複数の選択領域に対応する画素を示す図である。
図8】選択領域と参照領域との比較を説明するための図である。
図9】相関情報画像を示す図である。
図10】相関情報画像を示す図である。
図11】CA-CFARを説明するための図である。
図12】(a)及び(b)は、CA-CFARが実行された相関マップを示す図である。
図13】位置検出システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図14】位置検出方法の一例を示すフローチャートである。
図15】位置検出システムと検出対象との位置関係を示す図である。
図16】実験例における相関マップを示す図である。
図17】ROC曲線及びAUCを示す図である。
図18】(a)は実験例における信号データセットを示す図であり、(b)は信号データセットにCA-CFARが実行された状態を示す図であり、(c)は相関マップにCA-CFARが実行された状態を示す図である。
図19】(a)及び(b)は、本実施形態における位置検出システムの実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
【0012】
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
【0013】
[1]本開示の実施形態における位置検出システムは、実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得する情報取得部と、前記複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、前記複数の信号変化情報のうち前記第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算する相関情報演算部と、前記相関情報に基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出する検出部と、を備え、前記複数の第二信号変化情報は、前記複数の領域のうち、前記第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している。
【0014】
上記[1]における位置検出システムにおいて、相関情報演算部が相関情報を演算し、検出部が相関情報に基づいて実空間における検出対象の位置を検出する。相関情報演算部は、第一信号変化情報と、複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算する。複数の第二信号変化情報は、複数の領域のうち第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している。この場合、クラッタの影響が抑制された位置検出が実現され得る。例えば、マルチパスによって生じるクラッタの影響も抑制され得る。この結果、検出対象の位置検出の正確度が向上し得る。
【0015】
[2]上記[1]の位置検出システムにおいて、前記信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する前記領域からの反射波に関する信号のパワー情報を含んでいてもよく、前記相関情報演算部は、前記複数の信号変化情報から複数の前記第一信号変化情報を決定し、前記複数の第一信号変化情報の各々に対して前記相関情報を演算してもよい、前記複数の第一信号変化情報は、前記複数の信号変化情報のうち、前記複数の第一信号変化情報以外の前記信号変化情報が示すパワー情報よりも大きいパワー情報を示していてもよい。この場合、検出対象が位置している可能性が高い第一信号変化情報について、相関情報が演算される。このため、処理負担が抑制されながら、クラッタの影響がさらに抑制された位置検出が実現され得る。
【0016】
[3]上記[1]又は[2]の位置検出システムにおいて、前記相関情報演算部は、前記第一信号変化情報と、前記複数の第二信号変化情報との複数の前記相関情報を含む相関マップを演算してもよく、前記検出部は、前記相関マップにおける前記複数の相関情報の状態を評価し、前記複数の相関情報の評価結果に基づいて、前記検出対象の位置を検出してもよい。この場合、相関マップに含まれる複数の相関情報に基づいて、検出対象の位置が検出される。このため、クラッタの影響がさらに抑制された位置検出が実現され得る。
【0017】
[4]上記[3]の位置検出システムにおいて、前記検出部は、前記複数の相関情報の評価結果に基づいて、前記相関マップの演算において選択された前記第一信号変化情報に対応する前記第一領域に、前記検出対象が位置しているか否かを判断してもよい。この場合、複数の領域のうちの第一領域において、検出対象が位置しているか否かが確実に判断され得る。
【0018】
[5]上記[4]の位置検出システムにおいて、前記相関マップは、前記複数の相関情報として、前記第一信号変化情報と、前記複数の第二信号変化情報の各々との相関値を含んでいてもよく、前記検出部は、前記相関マップについて前記相関値の標準偏差を演算し、前記標準偏差が0以下0.1以上である場合に、前記第一領域に前記検出対象が位置していないと判断してもよい。この場合、クラッタの影響がさらに抑制された位置検出が実現され得る。
【0019】
[6]上記[3]から[5]のいずれか1つの位置検出システムにおいて、前記相関情報演算部は、複数の前記相関マップを演算してもよく、前記複数の相関マップは、それぞれ、前記複数の領域のうち互いに異なる領域に対応する前記第一信号変化情報に対して演算された複数の前記相関情報を含んでいてもよく、前記検出部は、前記複数の相関マップの各々における前記複数の相関情報の状態を評価し、前記複数の相関マップの各々における前記複数の相関情報の評価結果に基づいて、前記検出対象の位置を検出してもよい。この場合、各相関マップに基づいて、クラッタの影響が抑制され得る。この結果、検出対象の位置検出の正確度がさらに向上し得る。
【0020】
[7]上記[3]から[6]のいずれか1つの位置検出システムにおいて、前記相関マップは、複数の画素を含んでいる相関情報画像を含んでいてもよく、前記相関情報画像の前記複数の画素は、それぞれ、互いに異なる前記領域における前記相関情報を示していてもよく、前記検出部は、前記相関情報画像に基づいて、前記検出対象の位置を検出してもよい。この場合、相関マップが相関情報画像を含んでいる。相関情報画像の複数の画素は、それぞれ、互いに異なる領域における相関情報を示している。この場合、データの管理が容易であるともに、相関情報画像に含まれる相関情報によってクラッタの影響がさらに抑制され得る。
【0021】
[8]上記[1]から[7]のいずれか1つの位置検出システムにおいて、前記情報取得部は、前記複数の信号変化情報を含む信号データセットを取得してもよく、前記検出部は、前記相関情報に基づいて前記信号データセットを更新し、更新された前記信号データセットに基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出してもよい。この場合、信号データセットにおけるクラッタの影響が抑制され、検出対象の位置検出の正確度がさらに向上し得る。
【0022】
[9]上記[8]の位置検出システムにおいて、前記信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する前記領域からの反射波に関する信号のパワー情報を含んでいてもよく、前記更新された信号データセットは、複数の画素を含んでいる信号情報画像を含んでいてもよく、前記信号情報画像の前記複数の画素は、それぞれ、互いに異なる前記領域に対応する前記信号変化情報の前記パワー情報を示していてもよく、前記検出部は、前記信号情報画像に基づいて、前記検出対象の位置を検出してもよい。この場合、データの管理が容易であるともに、信号情報画像における検出対象に対応する信号変化情報の検出も比較的容易である。
【0023】
[10]上記[8]又は[9]の位置検出システムにおいて、前記信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する前記領域からの反射波に関する信号のパワー情報を含んでいてもよく、前記検出部は、前記更新された信号データセットに含まれる複数の前記信号変化情報から少なくとも1つの前記信号変化情報を選択し、前記少なくとも1つの信号変化情報の前記パワー情報が閾値よりも低い場合に、前記少なくとも1つの信号変化情報に対応する前記領域に前記検出対象が位置していないと判断してもよく、前記閾値は、前記更新された信号データセットに含まれる前記複数の信号変化情報のうち、前記少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の前記信号変化情報の前記パワー情報の平均に基づいていてもよく、前記少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の前記信号変化情報は、前記少なくとも1つの信号変化情報に対応する前記領域の周辺に位置する複数の前記領域に対応していてもよい。この場合、信号データセットにおけるクラッタの影響がさらに抑制され、検出対象の位置検出の正確度がさらに向上し得る。
【0024】
[11]上記[1]から[10]のいずれか1つの位置検出システムにおいて、前記複数の信号変化情報は、センサによって検出された信号に基づいていてもよく、前記複数の領域は、それぞれ、前記センサからの距離、及び、前記センサに対する方位の少なくとも一つが互いに異なる範囲であってもよい。この場合、センサからの距離及びセンサに対する方位を考慮した範囲において、高精度な検出対象の位置検出が提供され得る。
【0025】
[12]上記[1]から[11]のいずれか1つの位置検出システムにおいて、前記情報取得部は、前記実空間からの反射波に関する信号を取得する信号取得部と、前記信号取得部によって取得された信号を複数の成分に分解し、前記複数の成分をそれぞれ座標軸とする空間における前記信号の軌跡の長さに関する値を前記信号変化情報として演算する変化情報演算部と、を含んでいてもよい。この場合、静止した障害物に起因して生じるクラッタの影響がさらに抑制され得る。
【0026】
[13]上記[1]から[12]のいずれか1つの位置検出システムにおいて、前記検出対象は、被検出生体又は被検出生体の部位を含んでいてもよく、前記検出部は、前記複数の信号変化情報に基づいて、前記検出対象の生体情報を検出してもよい。相関情報に基づいて検出対象の位置検出が行われる場合、生体起因の信号情報は生体周辺の信号情報と相関関係が比較的低い。このため、処理負担が抑制されながら、被検出生体又は被検出生体の部位の位置と共に生体情報が検出される。
【0027】
[14]本開示の別の実施形態におけるプログラムは、実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得することと、前記複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、前記複数の信号変化情報のうち前記第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算することと、前記相関情報に基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出することと、をコンピュータに実行させ、前記複数の第二信号変化情報は、前記複数の領域のうち、前記第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している。
【0028】
[15]本開示のさらに別の実施形態における位置検出方法は、実空間における互いに異なる複数の領域の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得することと、前記複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、前記複数の信号変化情報のうち前記第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算することと、前記相関情報に基づいて、前記実空間における検出対象の位置を検出することと、を有しており、前記複数の第二信号変化情報は、前記複数の領域のうち、前記第一信号変化情報に対応する第一領域と異なる複数の第二領域に対応している。
[本開示の実施形態の詳細]
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明における位置検出システムの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
まず、図1から図12(a)及び図12(b)を参照して、本開示の実施形態における位置検出システムの概略構成について説明する。図1は、本実施形態における位置検出システム1のブロック図である。図2は、位置検出システム1の概略説明図である。図3は、送信波の信号と受信される反射波の信号との関係の一例を示す図である。図4は、信号データセットを示す図である。図5は、I/Q信号の軌跡を示す図である。図6(a)及び図6(b)は、信号情報画像を示す図である。図7は、複数の選択領域に対応する画素を示す図である。図8は、選択領域と参照領域との比較を説明するための図である。図9及び図10は、相関情報画像を示す図である。図11は、CA-CFARを説明するための図である。図12(a)及び図12(b)は、CA-CFARが実行された相関マップを示す図である。
【0031】
位置検出システム1は、実空間Sにおける検出対象TAの位置を検出する。位置検出システム1による検出対象TAは、例えば、被検出体又は被検出体の部位である。被検出体は、たとえば、被検出生体、及び、被検出物を含んでいる。被検出生体は、生物の全般を意味し、例えば、人、及び、人以外の動物を含んでいる。被検出物は、ロボットなどの機械を含んでいる。本実施形態に示す一例として、検出対象TAは、人である。位置検出システム1は、信号制御部2と、信号処理部3とを含んでいる。
【0032】
信号制御部2は、センサ10を含んでいる。たとえば、センサ10は、実空間Sに位置する。実空間Sは、たとえば、壁Wによって画定されている。実空間Sには、検出対象TA、及び、障害物B1が位置している。検出対象TAは、例えば、複数の被検出生体M1,M2,M2を含んでいる。センサ10において、実空間Sの少なくとも一部が検出範囲RAとして設定されている。信号制御部2は、電磁波又は音波などの送信波Tを照射し、反射波Rに関する情報を取得する。電磁波は、可視光を含んでいてもよい。信号制御部2は、互いに異なる複数の反射波Rに関する情報を取得する。「反射波に関する情報」とは、反射波の位相変化を示す情報である。換言すれば、「反射波に関する情報」とは、反射波の振幅の時間変化を示す情報である。
【0033】
信号制御部2は、センサ10として、少なくとも一つの信号送信部11と少なくとも一つの信号受信部12とを含んでいる。信号送信部11は、送信波Tを発振する。送信波Tは、例えば、無変調連続波(CW:Continuous Wave)である。信号受信部12は、反射波Rを受信する。
【0034】
センサ10は、例えば、周波数変調連続波(FMCW:Frequency Modulated Continuous Wave radar)レーダである。FMCWレーダは、マイクロ波を対象物に向かって送信し、FMCWレーダから対象物までの距離に応じたマイクロ波の位相変化を取得する。この結果、FMCWレーダから検出対象TAまでの距離が計測され得る。
【0035】
図2に示されているように、信号送信部11は、例えば、複数の送信アンテナ21を含んでいる。例えば、信号送信部11は、複数の送信アンテナ21から送信波Tを検出範囲RAに向けて発信し、検出範囲RAにおいて周期的に掃引する。本実施形態の変形例として、信号送信部11が含む送信アンテナ21は、1つであってもよい。
【0036】
信号受信部12は、送信波Tの反射波Rを受信する。信号受信部12は、例えば、複数の受信アンテナ22を含んでいる。本実施形態の変形例として、信号受信部12が含む受信アンテナ22は、1つであってもよい。受信アンテナ22は、反射波Rを信号に変換する。信号受信部12は、デジタル信号に変換した信号を信号処理部3に出力する。
【0037】
図3において、信号送信部11から送信される送信波Tと、信号受信部12において受信される反射波Rとの関係の一例が示されている。信号送信部11は、例えば、図3に示されているように、送信する送信波Tの周波数を直線的に掃引する。図3において、“ΔF”は掃引周波数であり、“T”は掃引時間であり、“f”は所定時刻に送信される送信波Tと当該所定時刻に受信される反射波Rとの周波数差である。光速が“c”であり、センサ10から送信波Tを反射した対象までの距離が“d”である場合、以下の式(1)が成立する。
【数1】
【0038】
センサ10として、例えば、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)レーダである。信号制御部2は、ビームフォーミングを行う。センサ10は、例えば、MIMO FMCWレーダである。図2に示されているように、信号制御部2は、所定の検出範囲RAに対して、各領域A1のビームフォーミングを行う。
【0039】
信号受信部12は、例えば、受信した反射波Rに対応する信号に直交ミキサーを適用して、同相信号と直交信号とを取得する。同相信号と直交信号とは、互いに対してπ/2の位相差を有している。I信号は、送信波Tを生成する信号の位相と同一の位相である同相(In-phase)成分を有している信号である。Q信号は、送信波Tを生成する信号の位相に対して直交する直交位相(Quadrature)成分を有している信号である。
【0040】
信号処理部3は、情報取得部31、相関情報演算部32、及び、検出部33を含んでいる。情報取得部31は、信号受信部12から出力された情報を取得する。例えば、情報取得部31は、信号受信部12から取得した情報に対して各種処理を行うことによって、検出対象TAに対応する周波数成分に応じた信号を生成し、生成された信号の情報(以下、「信号変化情報」ともいう)を取得する。
【0041】
情報取得部31は、例えば、信号取得部41と、変化情報演算部42とを含んでいる。信号取得部41は、実空間Sからの反射波Rに関する信号を取得する。変化情報演算部42は、信号取得部41によって取得された信号に基づいて、信号変化情報を演算する。本実施形態の変形例として、情報取得部31は、情報取得部31の外部から信号変化情報を取得してもよい。
【0042】
情報取得部31は、実空間Sにおける互いに異なる複数の領域A1の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得する。複数の領域A1は、検出範囲RAに含まれている。情報取得部31は、互いに異なる領域A1において反射した複数の反射波Rに関する信号の信号変化情報を取得する。信号変化情報は、反射波Rの位相変化に関する情報を含んでいる。反射波Rに関する信号は、たとえば、反射波Rを示す信号に相当する。
【0043】
複数の領域A1の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報は、センサ10によって検出された信号に基づいている。複数の領域A1は、それぞれ、センサ10からの距離、及び、方位の少なくとも一つが互いに異なる範囲である。領域A1に対応する信号変化情報は、当該領域A1からの反射波Rに関する情報を含んでいる。以下、「領域に対応する信号変化情報」を単に「領域の信号片化情報」ともいう。信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する領域A1に検出対象TA又は障害物B1が位置していることを示す情報を含んでいる。
【0044】
信号変化情報は、例えば、領域情報とパワー情報とを含んでいる。領域情報は、領域A1の位置を示す情報である。領域情報は、領域A1の基準点からの距離及び基準点に対応する方位を示す情報を含んでいる。領域情報は、複数の領域A1における位置関係を示す情報であってもよい。パワー情報は、領域A1に対応する信号のパワーに関する情報である。パワー情報は、例えば、信号変化情報に対応する領域A1からの反射波Rに関する信号のパワーを示す情報である。
【0045】
例えば、情報取得部31は、センサ10の掃引時間に基づく時間区分毎に、複数の領域A1の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得する。例えば、変化情報演算部42が、信号取得部41によって取得された信号に基づいて、複数の領域A1の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を演算する。これらの複数の領域A1は、例えば、信号送信部11によって送信波Tが送信された所定の範囲の空間に相当する。これらの複数の領域A1は、例えば、複数の受信アンテナ22に到達する複数の反射波Rが反射した位置の範囲に相当する。これらの複数の領域A1は、例えば、基準点からの距離、及び、基準点に対する方位の少なくとも1つが互いに異なる範囲である。基準点に対する方位は、基準点を中心とした方位に相当する。基準点に対する方位は、例えば、受信アンテナ22に対する複数の反射波Rの入射角に相当する。基準点は、例えば、任意の位置に設定される。基準点は、例えば、センサ10の位置である。
【0046】
変化情報演算部42は、例えば、信号取得部41によって取得された信号の情報に対して短時間フーリエ変換(STFT:Short-Time Fourier Transform)を行う。本明細書において、「短時間フーリエ変換」とは、入力された情報から複数の時間区分の情報を作成し、時間区分毎にフーリエ変換を行うことをいう。例えば、短時間フーリエ変換において、入力された情報に窓関数をずらしながら掛けることによって、複数の時間区分の情報が作成される。この結果、変化情報演算部42は、短時間フーリエ変換によって、時間区分毎に、入力された情報を時間領域から周波数領域に変換する。各時間区分は、例えば、互いに同一の時間幅を有している。
【0047】
変化情報演算部42は、信号取得部41において取得された複数の信号の情報に対して短時間フーリエ変換を行う。換言すれば、変化情報演算部42は、信号取得部41において取得された複数の信号の情報ごとに短時間フーリエ変換を行う。例えば、変化情報演算部42は、互いに異なる領域の各々に対応する信号の情報に対して短時間フーリエ変換を行う。
【0048】
変化情報演算部42は、入力された情報に対して短時間フーリエ変換を行うことによって、時間区分毎に、各周波数のパワーを示す情報を演算する。例えば、変化情報演算部42は、受信アンテナ22ごとに、取得された信号の情報に対して高速フーリエ変換を行う。例えば、変化情報演算部42は、高速フーリエ変換によって、各受信アンテナ22から、当該受信アンテナ22において受信された反射波Rが反射した位置までの距離を演算する。変化情報演算部42は、複数の受信アンテナ22において取得された複数の信号の情報に基づいて、ビームフォーミングによって、基準点に対する各方位における信号の情報を演算する。この結果、変化情報演算部42において、互いに異なる領域A1のそれぞれに対して、信号変化情報が演算される。変化情報演算部42において、互いに異なる領域A1のそれぞれに対して、反射波Rに関する信号のパワー情報が演算される。
【0049】
変化情報演算部42は、信号取得部41において取得された複数の信号の情報に基づいて、時間区分毎に、信号データセットDS1を演算する。図4は、信号データセットDS1を画像として示した図である。図4において、縦軸は基準点からの距離に対応しており、横軸は基準点に対する左右方向の方位に対応している。信号データセットDS1は、複数の信号変化情報を含んでいる。信号データセットDS1は、領域情報とパワー情報とを関連付けている。信号データセットDS1は、各領域A1に、当該領域A1に対応する信号のパワー情報を関連付けている。
【0050】
変化情報演算部42は、例えば、左右方向における所定の範囲の方位からの反射波Rに対応する複数の信号変化情報に基づいて、信号データセットDS1を作成する。換言すれば、変化情報演算部42は、例えば、左右方向における所定の範囲の方位における複数の領域A1について、各領域A1にパワー情報を関連付けた信号データセットDS1を作成する。変化情報演算部42は、例えば、基準点に対して+40°から-40°の範囲の方位において、信号データセットDS1を作成する。本実施形態の変形例として、変化情報演算部42は、上下方向における所定の範囲の方位における複数の信号変化情報、又は、上下左右方向における所定の範囲の方位における複数の信号変化情報に基づいて、信号データセットDS1を作成してもよい。
【0051】
変化情報演算部42は、例えば、基準点から所定距離の範囲からの反射波Rに対応する複数の信号変化情報に基づいて、信号データセットDS1を作成する。換言すれば、変化情報演算部42は、例えば、基準点から所定距離の範囲における複数の領域A1について、各領域A1にパワー情報を関連付けた信号データセットDS1を作成する。変化情報演算部42は、例えば、基準点から0m~9mの範囲からの反射波Rに対応する複数の信号変化情報に基づいて、信号データセットDS1を作成する。
【0052】
例えば、変化情報演算部42は、信号取得部41によって取得された信号を複数の成分に分解し、複数の成分をそれぞれ座標軸とする空間における信号の軌跡の長さに関する値を信号変化情報のパワー情報として演算する。本実施形態の変形例として、変化情報演算部42は、信号取得部41によって取得された信号の振幅を信号変化情報のパワー情報として演算してもよい。
【0053】
例えば、情報取得部31は、信号受信部12において受信された信号に基づいて、I/Q信号の軌跡の曲線長を信号変化情報として演算する。I/Q信号の軌跡とは、I信号の値を示す軸とQ信号の値を示す軸とによって形成される平面空間に、I/Q信号の時間変化をプロットした場合に描かれる線に相当する。例えば、図5において、横軸はI信号の値を示しており、縦軸はQ信号の値を示している。データD1,D2,D3は、それぞれ、人が位置する領域に対応するI/Q信号の軌跡を示している。データD4は、実空間Sを仕切る壁Wが位置する領域に対応するI/Q信号の軌跡を示している。I/Q信号の軌跡は、信号の位相変化の軌跡に相当する。I/Q信号の位相ブレが大きいほど、I/Q信号の上記曲線長も大きい。生体の体動に応じて、生体からの反射波Rに基づくI/Q信号の曲線長は変化する。I/Q信号の上記曲線長は、例えば、下記の式(2)によって表される。“T”は、コヒーレント処理間隔を示している。図5に示されている例において、データD1,D2,D3の軌跡の曲線長は、データD4の軌跡の曲線長よりも大きい。
【数2】
【0054】
変化情報演算部42は、複数の画素を含んでいる信号情報画像V1を形成してもよい。信号データセットDS1は、信号情報画像V1を含んでいる。信号情報画像V1は、2次元配列された複数の画素を含んでいる。信号情報画像V1の複数の画素は、実空間Sにおいて互いに異なる領域A1にそれぞれ対応している。信号情報画像V1の複数の画素は、実空間Sにおいて互いに異なる領域A1における信号変化情報を示している。信号情報画像V1の各画素は、信号データセットDS1の各信号変化情報に対応する。例えば、信号情報画像V1は、各画素において、画素に対応する領域A1において反射した反射波Rに関する信号のパワー情報を示している。
【0055】
変化情報演算部42は、例えば、図6(a)又は図6(b)に示されているように、時間区分毎に作成された信号データセットDS1に基づいて信号情報画像V1を作成してもよい。変化情報演算部42は、時間区分毎に、複数の信号情報画像V1を作成してもよい。信号情報画像V1において、信号のパワーが高い画素ほど、明るく示されている。信号情報画像V1において、縦軸は基準点からの距離に対応しており、横軸は基準点に対する左右方向の方位に対応している。
【0056】
信号情報画像V1は、基準点を原点として、左右方向において+40°から-40°の範囲に対応する位置におけるパワー情報を示している。図6(a)及び図6(b)に示されている信号情報画像V1は、基準点を原点として、0mから9mの範囲に対応する位置におけるパワー情報を示している。
【0057】
図6(a)及び図6(b)において、信号情報画像V1は、範囲R11及び範囲R12を含んでいる。範囲R11は、検出対象TAが位置してない領域A1を示している。範囲R12は、検出対象TAが位置している領域A1を示している。図6(a)における信号情報画像V1は、情報取得部31によって取得された信号の振幅に関する情報を信号変化情報のパワー情報として示している。図6(b)における信号情報画像V1は、情報取得部31によって取得されたI/Q信号の軌跡の曲線長を信号変化情報のパワー情報として示している。図6(a)においては、クラッタが範囲R11に顕著に示されている。図6(b)においては、範囲R11においてクラッタの発生が抑制されている。このように、I/Q信号の軌跡の曲線長を信号変化情報のパワー情報として信号データセットDS1が作成される場合、SCR(Signal-to-Clutter Ratio)が改善され得る。
【0058】
相関情報演算部32は、複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、複数の信号変化情報のうち第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算する。第一信号変化情報に対応する領域は、選択領域に相当する。第二信号変化情報に対応する領域は、参照領域に相当する。参照領域は、複数の領域A1のうち選択領域と異なる領域である。換言すれば、複数の第二信号変化情報は、複数の領域A1のうち、第一信号変化情報に対応する選択領域と異なる複数の参照領域に対応している。相関情報の値は、例えば、相関値である。例えば、選択領域及び参照領域は、それぞれ複数の領域A1のうちの1又は複数の領域A1に相当する。例えば、複数の参照領域は、複数の領域A1のうち、第一信号変化情報に対応する選択領域以外の領域A1である。例えば、選択領域は第一領域に相当し、参照領域は第二領域に相当する。
【0059】
相関情報演算部32は、相関マップDS2を演算する。相関マップDS2は、検出範囲RAにおける領域A1ごとの相関情報を含んでいる。相関マップDS2は、選択された第一信号変化情報と、信号データセットDS1における複数の信号変化情報のうち、選択された第一信号情報と異なる複数の第二信号変化情報の複数の相関値を含んでいる。換言すれば、相関マップDS2は、第一信号変化情報と、複数の領域A1のうち選択領域と異なる複数の参照領域に対応する複数の第二信号変化情報の各々との相関値を含んでいる。相関マップDS2は、各領域A1に、当該領域A1に対応する信号の相関情報を関連付けている。
【0060】
例えば、相関情報演算部32は、信号データセットDS1に含まれる複数の信号変化情報から複数の第一信号変化情報を決定する。相関情報演算部32は、複数の第一信号変化情報の各々に対して相関情報を演算する。相関情報演算部32は、例えば、信号情報画像V1に基づいて、相関情報を演算する。
【0061】
相関情報演算部32は、例えば、各領域A1の信号変化情報に基づいて、信号データセットDS1の複数の信号変化情報から複数の第一信号変化情報を決定する。例えば、相関情報演算部32は、信号データセットDS1の複数の信号変化情報を信号変化情報の値が大きいものから順に並べた場合に、信号変化情報の値が上位n個の複数の信号変化情報を第一信号変化情報として決定する。この場合、nは自然数である。第一信号変化情報は、信号データセットDS1に含まれる複数の信号変化情報の数よりも少ない。複数の第一信号変化情報は、信号データセットDS1に含まれる複数の信号変化情報のうち、複数の第一信号変化情報以外の信号変化情報が示すパワー情報よりも大きいパワー情報を示している。
【0062】
相関情報演算部32は、複数の第一信号変化情報が決定される場合に、複数の相関マップDS2を演算する。複数の相関マップDS2は、それぞれ、互いに異なる第一信号変化情報に対して演算された複数の相関情報を含んでいる。換言すれば、相関情報演算部32は、各第一信号変化情報に対して相関マップDS2を演算する。
【0063】
相関情報の演算について、図7から図10を参照して更に詳細に説明する。信号データセットDS1は、複数のセルCE1,CE2を含んでいる。例えば、セルCE1,CE2は、2次元配列されている。相関情報演算部32は、信号データセットDS1から、少なくとも1つのセルCE1を選択する。セルCE1は、少なくとも1つの領域A1に対応する信号変化情報を含んでいる。セルCE1は、1つの選択領域に対応する信号変化情報を含んでいる。すなわち、セルCE1を選択することは、第一信号変化情報を選択することに相当する。セルCE1,CE2は、例えば、それぞれ、互いに異なる領域A1に対応している。
【0064】
例えば、相関情報演算部32は、図7に示されているように、信号データセットDS1から、互いに異なる複数のセルCE1を決定する。複数のセルCE1は、それぞれ、互いに異なる選択領域の信号変化情報を含んでいる。各セルCE1は、例えば、信号情報画像V1おける少なくとも1つの画素を含んでいる。図7に示されている例おいて、各セルCE1は、信号情報画像V1おける複数の画素を含んでいる。
【0065】
相関情報演算部32は、選択されたセルCE1の信号変化情報と、セルCE2の信号変化情報との相関情報を演算する。図8に示されているように、セルCE2は、信号データセットDS1のうち、選択されたセルCE1と異なる信号変化情報を含んでいる。セルCE2は、少なくとも1つの領域A1に対応する信号変化情報を含んでいる。セルCE2は、1つの参照領域に対応する信号変化情報を含んでいる。
【0066】
相関情報演算部32は、選択されたセルCE1の信号変化情報と、複数のセルCE2の各々の信号変化情報との相関情報を演算する。複数のセルCE2は、それぞれ、互いに異なる信号変化情報を含んでいる。複数のセルCE2の各々は、例えば、信号データセットDS1のうち、選択されたセルCE1以外の信号変化情報を含んでいる。相関情報演算部32は、セルCE2毎に、選択されたセルCE1に対する相関情報を演算する。各セルCE2は、例えば、信号情報画像V1おける少なくとも1つの画素を含んでいる。図8に示されている例において、各セルCE2は、信号情報画像V1おける複数の画素を含んでいる。
【0067】
相関情報演算部32は、相関マップDS2を演算する。相関マップDS2は、選択されたセルCE1の信号変化情報と、複数のセルCE2の各々の信号変化情報との複数の相関情報を含んでいる。相関マップDS2は、図9及び図10に示されているように、検出範囲RAにおける領域A1ごとの相関情報を示す相関マップを含んでいる。例えば、相関マップにおいて、相関値が0.4以上の相関情報の値は維持され、相関値が0.4未満の相関情報の値がゼロに設定される。相関値が0.4未満の相関情報の値は、Nullに設定されてもよい。検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて相関マップDS2を更新する。
【0068】
相関情報演算部32は、複数の画素を含んでいる相関情報画像V2を形成してもよい。相関マップDS2は、相関情報画像V2を含んでいる。相関情報画像V2は、相関マップに相当する。図9及び図10に示されている相関情報画像V2において、相関情報の値が大きい画素ほど、明るく示されている。相関情報画像V2において、縦軸は基準点からの距離に対応しており、横軸は基準点に対する左右方向の方位に対応している。
【0069】
相関情報画像V2は、2次元配列された複数の画素を含んでいる。相関情報画像V2の複数の画素は、実空間Sにおいて互いに異なる領域A1にそれぞれ対応している。相関情報画像V2の複数の画素は、それぞれ、信号データセットDS1のうち互いに異なる第二信号変化情報に対して演算された相関情報を示している。各画素が示す相関情報は、当該画素に対応する信号変化情報と、選択されている第一信号変化情報との相対情報に相当する。換言すれば、相関情報画像V2の複数の画素は、それぞれ、互いに異なる領域A1における相関情報を示している。例えば、相関情報画像V2の複数の画素は、当該画素に対応するセルCE2とセルCE1との相関情報を示している。
【0070】
相関情報画像V2の各画素は、相関マップDS2の各相関情報に対応する。例えば、相関情報画像V2に含まれる複数の画素は、それぞれ、信号情報画像V1に含まれる複数の画素に対応している。相関情報画像V2の各画素の位置は、当該画素の相関情報の演算に用いられた信号情報画像V1の画素の位置に対応している。例えば、信号情報画像V1と相関情報画像V2とを重ねた場合において、相関情報画像V2の各画素は、当該画素に対応する信号情報画像V1の画素と重なるように配置される。
【0071】
相関情報演算部32は、複数の第一信号変化情報が決定される場合に、複数の相関情報画像V2を形成する。各相関情報画像V2は、それぞれ、互いに異なる第一信号変化情報に対して演算された複数の相関情報を含んでいる。換言すれば、相関情報演算部32は、各第一信号変化情報に対して相関情報画像V2を形成する。
【0072】
検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて、実空間Sにおける検出対象TAの位置を検出する。例えば、検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報と信号データセットDS1とに基づいて、実空間Sにおける検出対象TAの位置を検出する。検出部33は、例えば、相関情報画像V2に基づいて検出対象TAの位置を検出する。
【0073】
検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて信号データセットDS1を更新し、更新された信号データセットDS1に基づいて、実空間Sにおける検出対象TAの位置を検出する。例えば、更新された信号データセットDS1における信号情報画像V1に含まれる複数の画素は、それぞれ、互いに異なる領域A1に対応する信号変化情報のパワーを示す。検出部33は、更新された信号情報画像V1に基づいて、検出対象TAの位置を検出する。
【0074】
検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて、実空間Sにおいて検出対象TAが位置していない領域A1を判断する。検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて、選択領域に検出対象TAが位置しているか否かを判断する。例えば、検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて、複数の選択領域のうちから検出対象TAが位置していない領域A1を判断する。例えば、検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて、セルCE1が検出対象TAの信号変化情報を示しているか否かを判断する。
【0075】
例えば、検出部33は、相関マップDS2に含まれる複数の相関情報に基づいて、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に、検出対象TAが位置しているか否かを判断する。検出部33は、相関情報演算部32によって複数の第一信号変化情報にそれぞれ対応する複数の相関マップDS2が演算された場合に、各相関マップDS2に含まれる複数の相関情報に基づいて、各相関マップDS2の第一信号変化情報に検出対象TAが位置しているか否かを判断する。
【0076】
例えば、検出部33は、相関マップDS2における複数の相関情報の状態を評価し、複数の相関情報の評価結果に基づいて、検出対象TAの位置を検出する。例えば、検出部33は、複数の相関マップDS2の各々における複数の相関情報の状態を評価し、複数の相関マップDS2の各々における複数の相関情報の評価結果に基づいて、検出対象TAの位置を検出する。例えば、検出部33は、複数の相関情報の評価結果に基づいて、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象が位置しているか否かを判断する。換言すれば、検出部33は、信号データセットDS1内の複数のセルCE2に対する複数の相関情報の状態を評価し、複数の相関情報の評価結果に基づいて、選択されたセルCE1に、検出対象TAが位置しているか否かを判断する。
【0077】
本実施形態に示す例において、検出部33は、相関マップDS2に含まれる複数の相関情報において、相関情報の値が閾値以上の相関情報を抽出し、抽出された相関情報に基づいて、実空間Sにおいて検出対象TAが位置していない領域A1を判断する。検出部33は、例えば、信号データセットDS1において、検出対象TAが位置していないと判断した領域A1に対応する信号変化情報をゼロ又はNullに設定する。検出部33は、例えば、信号データセットDS1において、検出対象TAが位置していないと判断した領域A1に対応するセルCE1の値をゼロ又はNullに設定する。換言すれば、検出部33は、相関情報演算部32において演算された相関情報に基づいて信号データセットDS1を更新する。
【0078】
例えば、検出部33は、相関マップDS2における相関情報のバラツキ、又は、相関マップDS2に含まれる複数の相関情報のうち抽出された相関情報が占める割合などに基づいて、検出対象TAが位置していない領域A1を判断する。相関マップDS2における相関情報のバラツキは、例えば、抽出された相関情報に対応する領域A1の実空間Sにおけるバラツキを含んでいる。
【0079】
本実施形態に示す例において、検出部33は、相関マップDS2における相関情報のバラツキが所定の範囲である場合に、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に検出対象TAが位置していないと判断する。換言すれば、検出部33は、相関マップDS2において相関情報のバラツキが所定の範囲である場合に、当該相関マップDS2の演算において選択されていたセルCE1が検出対象TA以外の信号変化情報を示していると判断する。
【0080】
本実施形態に示す例において、検出部33は、相関マップDS2において、相関値が0.4以上の相関情報の値を維持し、相関値が0.4未満の相関情報の値をゼロに設定した相関マップDS2を形成する。検出部33は、当該相関マップについて相関値の標準偏差を演算する。検出部33は、標準偏差が所定の範囲を満たさない場合に、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象TAが位置していないと判断する。例えば、検出部33は、標準偏差が0以下0.1以上である場合に、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象TAが位置していないと判断する。本実施形態の変形例として、検出部33は、標準偏差が0.3~0.5の範囲である場合に、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象TAが位置していないと判断してもよい。本実施形態の別の変形例として、検出部33は、標準偏差が0.02~0.09の範囲外である場合に、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象TAが位置していないと判断してもよい。
【0081】
本実施形態の変形例として、検出部33は、相関マップDS2に含まれる複数の相関情報に対する、抽出された相関情報の割合が閾値よりも大きい場合に、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象TAが位置していないと判断してもよい。相関マップDS2に含まれる複数の相関情報に対する、抽出された相関情報の割合は、例えば、相関マップDS2に含まれる相対情報の数に対する、抽出された相関情報の数の割合である。相関マップDS2に含まれる複数の相関情報に対する、抽出された相関情報の割合は、相関情報画像V2において相関情報を示す画素の面積に対する、抽出された相関情報を示す画素の面積の割合であってもよい。
【0082】
本実施形態のさらに別の変形例として、検出部33は、検出範囲RAの複数の領域A1に対する複数の相関情報における、相関情報の値の分散を演算し、演算された分散に基づいて、検出対象TAの位置を検出してもよい。換言すれば、検出部33は、相関マップDS2に含まれる複数の相関情報において、相関情報の値の分散を演算し、演算された分散に基づいて、検出対象TAの位置を検出してもよい。例えば、検出部33は、演算された分散が閾値よりも大きい場合に、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象TAが位置していないと判断してもよい。
【0083】
例えば、検出部33は、信号データセットDS1に対して、CA-CFAR(Cell Average Constant False Alarm Rate)を適用する。図12(a)及び図12(b)は、CA-CFARが適用された信号データセットDS1に相当する信号情報画像V3が示されている。検出部33は、信号データセットDS1に対するCA-CFARの適用によって、検出対象TAの位置を検出する。
【0084】
検出部33は、例えば、相関マップDS2に基づいて信号データセットDS1を更新し、その後、更新された信号データセットDS1に対して上述したCA-CFARを適用する。更新された信号データセットDS1においては、相関マップDS2に基づいて検出対象TAが位置していないと判断された領域A1に対応する信号変化情報が、ゼロ又はNullに設定されている。図12(a)は、更新される前の信号データセットDS1に対してCA-CFARを提供した信号情報画像V3を示している。更新される前の信号データセットDS1は、情報取得部31において取得された信号データセットDS1である。図12(b)は、更新された信号データセットDS1に対してCA-CFARを提供した信号情報画像V3を示している。
【0085】
CA-CFARの適用において、検出部33は、更新された信号データセットDS1に含まれる複数の信号変化情報から少なくとも1つの信号変化情報を選択する。検出部33は、少なくとも1つの信号変化情報のパワー情報が閾値よりも低い場合に、少なくとも1つの信号変化情報に対応する領域A1に検出対象TAが位置していないと判断する。閾値は、更新された信号データセットDS1に含まれる複数の信号変化情報のうち、少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の信号変化情報のパワー情報の平均に基づいている。少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の信号変化情報は、少なくとも1つの信号変化情報に対応する領域A1の周辺に位置する複数の領域A1に対応している。
【0086】
例えば、更新された信号データセットDS1は、複数のセルCE11,CE12,CE13を含んでいる。例えば、セルCE1,CE2,CE13は、2次元配列されている。セルCE11,CE12,CE13は、例えば、それぞれ、互いに異なる領域A1に対応している。
【0087】
検出部33は、例えば、図11に示されているように、信号データセットDS1におけるセルCE11を選択する。検出部33は、選択されたセルCE11の周辺のセルCE13における信号変化情報のパワー情報の平均μを演算する。セルCE11とセルCE13との間には、セルCE12が位置している。例えば、セルCE11は、セルCE12に囲われている。セルCE11及びセルCE12は、セルCE13に囲われている。セルCE11は注目セル(CUT:Cell Under Test)に相当し、セルCE12はトレーニングセルに相当し、セルCE13はガードセルに相当する。
【0088】
検出部33は、セルCE11における信号変換情報のパワー情報が閾値Vthを超えているか否かを判断する。検出部33は、当該パワー情報が閾値Vthを超えている場合には、当該セルCE1に対応する領域A1に検出対象TAが位置していると判断する。閾値Vthは、例えば、上述した平均μに閾値係数αを掛けた値である。
【0089】
検出部33は、例えば、検出対象TAの生体情報をさらに検出する。この場合、位置検出システム1の検出対象TAは、被検生体又は被検出生体の部位である。位置検出システム1は、生体情報を非接触で検出する。「生体情報」は、例えば、生体において周期的に繰り返される動作の情報であり、心拍、及び、呼吸の情報を含んでいる。検出部33は、生体からの複数の反射波Rに関する情報を取得する。検出部33は、例えば、取得された複数の反射波Rに関する情報に基づいて、複数の反射波Rによるダイバーシチ効果を利用して、生体情報を検出する。検出部33は、例えば、複数の反射波Rに関する情報に基づいて生体情報の時間変化の周期を示す複数のピークを推定することによって、生体情報を検出する。「生体情報の時間変化の周期」とは、例えば、生体の動作の周期である。例えば、生体情報として、心拍の周期、又は、呼吸の周期などの生体の動作の周期が検出される。
【0090】
次に、図13を参照して、位置検出システム1の信号処理部3のハードウェア構成について説明する。図13は、位置検出システム1の信号処理部3のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0091】
信号処理部3は、プロセッサ101と、主記憶装置102と、補助記憶装置103と、通信装置104と、入力装置105と、出力装置106とを備えている。信号処理部3は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された、1又は複数のコンピュータを含んでいる。情報取得部31、相関情報演算部32、検出部33のそれぞれは、1つのコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。位置検出システム1は、ハードウェアと協働して実現されている。
【0092】
信号処理部3が、複数のコンピュータによって構成される場合には、これらのコンピュータはローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの位置検出システム1が構築される。
【0093】
プロセッサ101は、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。例えば、信号処理部3の各種機能部の少なくとも一部は、プロセッサ101及び主記憶装置102によって実現され得る。
【0094】
補助記憶装置103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置103は、一般的に主記憶装置102よりも大量のデータを記憶する。例えば、格納部69の少なくとも一部は、補助記憶装置103によって実現され得る。
【0095】
通信装置104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。例えば、情報取得部31の少なくとも一部は、通信装置104によって実現され得る。入力装置105は、キーボード、マウス、及び、タッチパネルなどにより構成される。例えば、情報取得部31の少なくとも一部は、入力装置105によって実現され得る。出力装置106は、プリンタ、及び、ディスプレイなどにより構成される。例えば、相関情報演算部32及び検出部33の少なくとも一部は、出力装置106によって実現され得る。
【0096】
補助記憶装置103は、予め、プログラム及び処理に必要なデータを格納している。このプログラムは、位置検出システム1の各機能要素をコンピュータに実行させる。このプログラムによって、例えば、後述する位置検出方法における各処理がコンピュータにおいて実行される。このプログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。このプログラムは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0097】
次に、図14を参照して、位置検出方法について説明する。図14は、位置検出方法の一例を示すフローチャートである。
【0098】
まず、ビームフォーミングが実行される(処理S1)。例えば、処理S1において、信号送信部11が送信波Tを検出範囲RAに向けて送信し、信号受信部12が反射波Rを受信する。例えば、変化情報演算部42は、受信アンテナ22ごとに、取得された信号の情報に対して高速フーリエ変換を行う。これによって、基準点から反射波Rの反射位置までの距離が算出され得る。変化情報演算部42は、複数の受信アンテナ22において取得された複数の信号の情報に基づいて、ビームフォーミングによって、基準点に対する各方位における信号の情報を演算する。情報取得部31は、検出範囲RAにおけるI/Q信号に関する情報を取得する。
【0099】
次に、I/Q信号の軌跡の曲線長が演算される(処理S12)。例えば、情報取得部31が、I/Q信号の軌跡の曲線長を信号変化情報として演算する。情報取得部31は、実空間Sにおける互いに異なる複数の領域A1の各々にそれぞれ対応する複数の信号変化情報を取得する。
【0100】
次に、複数の第一信号変化情報が決定される(処理S13)。例えば、相関情報演算部32が、信号データセットDS1における複数の信号変化情報から複数の第一信号変化情報を決定する。複数の第一信号変化情報は、例えば、複数の信号変化情報のうち、複数の第一信号変化情報以外の信号変化情報が示すパワーよりも大きいパワーを示している。
【0101】
次に、相関情報が演算される(処理S14)。例えば、相関情報演算部32が、複数の第一信号変化情報の各々に対して相関情報を演算する。相関情報演算部32は、複数の信号変化情報から選択された第一信号変化情報と、複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算する。
【0102】
次に、不要データが除去される(処理S15)。例えば、検出部33が、相関マップDS2における複数の相関情報の状態を評価する。検出部33は、複数の相関情報の評価結果に基づいて、当該相関マップDS2の演算における選択領域に、検出対象TAが位置しているか否かを判断する。検出部33は、相関マップDS2の演算における選択領域に、検出対象TAが位置していないと判断した場合に、不要データとして、当該選択領域に対応する信号変化情報を信号データセットDS1から除去する。例えば、検出部33は、例えば、信号データセットDS1において、検出対象TAが位置していないと判断した選択領域に対応する信号変化情報をゼロ又はNullに設定する。換言すれば、検出部33は、相関マップDS2の相関情報に基づいて信号データセットDS1を更新する。
【0103】
次に、位置検出が実行される(処理S16)。例えば、検出部33が、検出対象TAの位置を検出する。検出部33は、信号データセットDS1に基づいて検出対象TAの位置を検出する。
【0104】
次に、上述した実施形態における位置検出システム1、プログラム、位置検出方法による作用効果について説明する。
【0105】
上述した位置検出システム1、プログラム、位置検出方法において、相関情報演算部32が相関情報を演算し、検出部33が相関情報に基づいて実空間Sにおける検出対象TAの位置を検出する。相関情報演算部32は、選択された第一信号変化情報と、選択された第一信号変化情報と異なる複数の第二信号変化情報の各々との相関情報を演算する。複数の第二信号変化情報は、複数の領域A1のうち第一信号変化情報に対応する選択領域と異なる複数の参照領域に対応している。この場合、クラッタの影響が抑制された位置検出が実現され得る。例えば、マルチパスによって生じるクラッタの影響も抑制され得る。この結果、検出対象TAの位置検出の正確度が向上し得る。
【0106】
信号変化情報は、当該信号変化情報に対応する領域A1からの反射波Rに関する信号のパワー情報を含んでいる。相関情報演算部32は、複数の信号変化情報から複数の第一信号変化情報を決定する。決定された複数の第一信号変化情報の各々に対して相関情報が演算される。決定された複数の第一信号変化情報は、複数の信号変化情報のうち、複数の第一信号変化情報以外の信号変化情報が示すパワー情報よりも大きいパワー情報を示している。この場合、検出対象TAが位置している可能性が高い第一信号変化情報について、相関情報が演算される。このため、処理負担が抑制されながら、クラッタの影響がさらに抑制された位置検出が実現され得る。
【0107】
相関情報演算部32は、選択された第一信号変化情報と、複数の第二信号変化情報との複数の相関情報を含む相関マップDS2を演算する。検出部33は、相関マップDS2における複数の相関情報の状態を評価し、複数の相関情報の評価結果に基づいて、検出対象TAの位置を検出する。この場合、相関マップDS2に含まれる複数の相関情報に基づいて、検出対象TAの位置が検出される。このため、クラッタの影響がさらに抑制された位置検出が実現され得る。
【0108】
検出部33は、複数の相関情報の評価結果に基づいて、当該相関マップDS2の演算において選択された第一信号変化情報に対応する選択領域に、検出対象TAが位置しているか否かを判断する。この場合、複数の領域A1のうちの選択領域において、検出対象TAが位置しているか否かが確実に判断され得る。
【0109】
相関マップDS2は、複数の相関情報として、選択された第一信号変化情報と、複数の第二信号変化情報の各々との相関値を含んでいる。検出部33は、相関マップDS2について相関値の標準偏差を演算する。検出部33は、標準偏差が0以下0.1以上である場合に、選択領域に検出対象TAが位置していないと判断する。この場合、クラッタの影響がさらに抑制された位置検出が実現され得る。
【0110】
相関情報演算部32は、複数の相関マップDS2を演算する。複数の相関マップDS2は、それぞれ、複数の領域A1のうち互いに異なる領域A1に対応する第一信号変化情報に対して演算された複数の相関情報を含んでいる。検出部33は、複数の相関マップDS2の各々における複数の相関情報の状態を評価する。検出部33は、複数の相関マップDS2の各々における複数の相関情報の評価結果に基づいて、検出対象TAの位置を検出する。この場合、各相関マップDS2に基づいて、クラッタの影響が抑制され得る。この結果、検出対象TAの位置検出の正確度がさらに向上し得る。
【0111】
相関マップDS2は、複数の画素を含んでいる相関情報画像V2を含んでいる。相関情報画像V2の複数の画素は、それぞれ、互いに異なる領域A1における相関情報を示している。検出部33は、相関情報画像V2に基づいて、検出対象TAの位置を検出する。この場合、相関マップDS2が相関情報画像V2を含んでいる。相関情報画像V2の複数の画素は、それぞれ、互いに異なる領域A1における相関情報を示している。この場合、データの管理が容易であるともに、相関情報画像V2に含まれる相関情報によってクラッタの影響がさらに抑制され得る。
【0112】
情報取得部31は、複数の信号変化情報を含む信号データセットDS1を取得している。検出部33は、相関情報に基づいて信号データセットDS1を更新する。検出部33は、更新された信号データセットDS1に基づいて、実空間Sにおける検出対象TAの位置を検出する。この場合、信号データセットDS1におけるクラッタの影響が抑制され、検出対象TAの位置検出の正確度がさらに向上し得る。
【0113】
更新された信号データセットDS1は、複数の画素を含んでいる信号情報画像V1を含んでいる。信号情報画像V1の複数の画素は、それぞれ、互いに異なる領域A1に対応する信号変化情報のパワーを示していてもよい。検出部33は、信号情報画像V1に基づいて、検出対象TAの位置を検出している。この場合、データの管理が容易であるともに、信号情報画像V1における検出対象TAに対応する信号変化情報の検出も比較的容易である。
【0114】
検出部33は、更新された信号データセットDS1に含まれる複数の信号変化情報から少なくとも1つの信号変化情報を選択する。検出部33は、上記少なくとも1つの信号変化情報のパワー情報が閾値よりも低い場合に、上記少なくとも1つの信号変化情報に対応する領域A1に検出対象TAが位置していないと判断する。上記閾値は、更新された信号データセットDS1に含まれる複数の信号変化情報のうち、上記少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の信号変化情報のパワー情報の平均に基づいている。上記少なくとも1つの信号変化情報に関連する複数の信号変化情報は、上記少なくとも1つの信号変化情報に対応する領域A1の周辺に位置する複数の領域A1に対応している。この場合、信号データセットDS1におけるクラッタの影響がさらに抑制され、検出対象TAの位置検出の正確度がさらに向上し得る。
【0115】
複数の信号変化情報は、センサ10によって検出された信号に基づいている。複数の領域A1は、それぞれ、センサ10からの距離、及び、センサ10に対する方位の少なくとも一つが互いに異なる範囲である。この場合、センサ10からの距離及びセンサ10に対する方位を考慮した範囲において、高精度な検出対象TAの位置検出が提供され得る。
【0116】
情報取得部31は、信号取得部41と、変化情報演算部42とを含んでいる。信号取得部41は、実空間Sからの反射波Rに関する信号を取得する。変化情報演算部42は、信号取得部41によって取得された信号を複数の成分に分解し、複数の成分をそれぞれ座標軸とする空間における信号の軌跡の長さに関する値を信号変化情報として演算する。この場合、静止した障害物に起因して生じるクラッタの影響がさらに抑制され得る。
【0117】
検出対象TAは、被検出生体又は被検出生体の部位を含んでいる。検出部33は、複数の信号変化情報に基づいて、検出対象TAの生体情報を検出している。相関情報に基づいて検出対象TAの位置検出が行われる場合、生体起因の信号情報は生体周辺の信号情報と相関関係が比較的低い。このため、処理負担が抑制されながら、被検出生体又は被検出生体の部位の位置と共に生体情報が検出される。
【0118】
次に、図15から図19(a)及び図19(b)を参照して、上述した位置検出システム1及び処理S1から処理S16による位置検出方法の検証の一例を説明する。以下、上述した位置検出システム1を用いた位置検出方法、及び、処理S1から処理S15による位置検出方法を「本提案手法」という。
【0119】
本検証の諸条件は以下の通りである。本検証において、センサ10としてMIMO FMCWレーダが用いられた。このセンサ10は、3つの送信アンテナ21と4つの受信アンテナ22を含んでいた。掃引開始周波数は、77.06GHzであった。帯域幅は、3.43GHzであった。チャープ内サンプル数は、240であった。検出範囲RAの角度範囲は、-40度から+40度であった。計測時間は、60秒であった。被験者M11,M12,M13,M14は、図15に示されるように位置していた。センサ10から被験者M13,M14までの距離L1は、2.5mであった。センサ10から被験者M11,M12までの距離L2は、5.0mであった。センサ10から壁Wまでの距離L3は、6.0mであった。
【0120】
CA-CFARは、以下のパラメータによって適用された。基準点からの距離に関するガードセル長は、3であった。基準点に対する方位に関するガードセル長は、7であった。基準点からの距離に関するトレーニングセル長は、5であった。基準点に対する方位に関するトレーニングセル長は、7であった。
【0121】
位置検出システム1は、13個の信号データセットDS1を作成した。13個の信号データセットDS1は、位置検出システム1によって4秒ステップで12秒ごとに作成された。換言すれば、13個の信号データセットDS1の各々における検出時間は、それぞれ、0~12秒、4~16秒、8~20秒、12~24秒、16~28秒、20~32秒、24~36秒、28~40秒、32~44秒、36~48秒、40~52秒、44~56秒、48~60秒であった。
【0122】
作成された13個の信号データセットDS1に対して、検出率Pと誤警報率Pfaとが算出された。13個の信号データセットDS1には、CA-CFARが適用された。検出率Pと誤警報率Pfaとは、検出結果に応じた13個の信号データセットDS1のポイントの平均によって算出された。検出結果は、例えば、範囲R21及び範囲R22とゼロより大きい信号変化情報の位置との関係に応じて決定された。
【0123】
図16は、CA-CFARが適用された信号データセットDS1の信号情報画像V11を示している。図16に示した例において、範囲R21は、被験者M11が位置する範囲であった。範囲R22は、被験者M14が位置する範囲であった。ゼロより大きい信号変化情報は、信号情報画像V11において白で示されている。以下、「ゼロより大きい信号変化情報の存在が確認された」ことを「信号が確認された」と称する。
【0124】
検出率Pの算出において、範囲R21と範囲R22との何れかに信号が確認された場合は0.5の値、範囲R21と範囲R22との双方に信号が確認された場合は1の値、範囲R21と範囲R22との何れにも信号が確認されない場合は0の値が加算され、13個の信号データセットDS1のポイントの平均が検出率Pとして算出された。誤警報率Pfaの算出において、範囲R21及び範囲R22の外側に信号が確認された場合は1の値、信号情報画像V11に信号が確認されない場合は0の値が加算され、13個の信号データセットDS1のポイントの平均が誤警報率Pfaとして算出された。
【0125】
図17は、上述した検出率Pと誤警報率Pfaとを用いて算出されたROC(Receiver Operating Characteristic)曲線及びAUC(Area Under Curve)を示している。ROC曲線及びAUCの算出において、CA-CFARの閾値係数αを1.0から9.9まで0.1ステップずつずらすことによって、検出率Pと誤警報率Pfaとの組み合わせについて90組のデータが演算された。P-Pfa平面において、検出率Pと誤警報率Pfaとの組み合わせがプロットされている。曲線C30は、ROC曲線に相当する。曲線C30によって囲まれたエリアA30は、AUCに相当する。以上の条件において、以下の実験結果が得られた。
【0126】
図18(a)は、情報取得部31において取得された信号データセットDS1を示している。図18(b)は、情報取得部31において取得された信号データセットDS1にCA-CFARが適用された信号データセットDS1の信号情報画像V103を示している。図18(c)は、情報取得部31において取得された信号データセットDS1に対して、相関マップDS2に基づく更新が実行され、さらにCA-CFARが適用された信号情報画像V3を示している。
【0127】
図18(a)において、範囲R31及び範囲R32に、被験者M11及び被験者M12に基づく信号が確認された。しかし、範囲R41及び範囲R42には、壁Wに基づくクラッタを示す信号が確認された。相関マップDS2を用いずに単にCA-CFARのみが適用された場合には、図18(b)に示されているように、クラッタを示す信号が確認された。この場合、クラッタを示す信号によって、被験者の位置が誤検出されるおそれがある。
【0128】
相関マップDS2に基づく更新が実行され、さらにCA-CFARが適用された場合には、図18(c)に示されているように、クラッタを示す信号が確認されなかった。すなわち、マルチパスの影響が低減されることが確認された。この場合、被験者の位置の誤検出が低減され得る。
【0129】
図19(a)及び図19(b)は、相関マップDS2に基づく更新が実行された場合と、相関マップDS2に基づく更新が実行さていない場合とのそれぞれにおけるAUCを示している。図19(a)及び図19(b)において、縦軸はAUCを示しており、横軸はセルCE1が選択されたポイント数である。横軸によって示されているポイント数だけ、互いの異なるセルCE1に関して相関マップDS2が演算されている。
【0130】
データD11は、被験者M11及び被験者M12において、相関マップDS2を用いずに単にCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。データD12は、被験者M12及び被験者M13において、相関マップDS2を用いずに単にCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。データD13は、被験者M11及び被験者M12において、相関マップDS2に基づく更新が実行され、更にCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。データD14は、被験者M12及び被験者M13において、相関マップDS2に基づく更新が実行され、更にCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。
【0131】
データD21は、被験者M11及び被験者M14において、相関マップDS2に基づく更新が実行され、さらにCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。データD22は、被験者M11及び被験者M14において、相関マップDS2を用いずに単にCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。データD23は、被験者M13及び被験者M14において、相関マップDS2に基づく更新が実行され、さらにCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。データD24は、被験者M13及び被験者M14において、相関マップDS2を用いずに単にCA-CFARのみが適用された場合におけるAUCを示している。
【0132】
データD11及びデータD13によって、壁Wの付近に被験者M11,M12が位置している場合には、相関マップDS2を用いることによってAUCが約17%以上改善されることが確認された。ポイント数が増え、相関マップDS2が増えるほど、AUCも改善されることが確認された。データD11及びデータD11以外のデータによって、壁Wの付近に被験者が位置していない場合にも、相関マップDS2を用いることによってAUCの平均値が約4%以上改善されることが確認された。
【0133】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0134】
例えば、位置検出システム1におけるセンサ10は、MIMO FMCWレーダに限らず、SIMO、MISOなどのレーダであってもよい。センサ10は、互いに異なる複数種のレーダを含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…位置検出システム、10…センサ、31…情報取得部、32…相関情報演算部、33…検出部、41…信号取得部、42…変化情報演算部、A1…領域、DS1…信号データセット、DS2…相関マップ、L1,L2,L3…距離、M1,M2…被検出生体、R…反射波、R11,R12,R21,R22…範囲、S…実空間、TA…検出対象、V1,V3…信号情報画像、V2…相関情報画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19