IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AgIC株式会社の特許一覧

特開2023-173689積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板
<>
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図1
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図2
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図3
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図4
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図5
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図6
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図7
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図8
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173689
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/12 20060101AFI20231130BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20231130BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20231130BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20231130BHJP
   C23C 18/20 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K3/12 610B
H05K3/10 D
H05K3/24 C
H05K3/38 B
C23C18/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086120
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】514015019
【氏名又は名称】エレファンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098350
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 睦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健二
(72)【発明者】
【氏名】須賀 淳
(72)【発明者】
【氏名】清水 信哉
【テーマコード(参考)】
4K022
5E343
【Fターム(参考)】
4K022AA13
4K022AA14
4K022AA15
4K022AA16
4K022AA17
4K022AA20
4K022AA22
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA01
4K022BA03
4K022BA08
4K022BA14
4K022BA21
4K022CA06
4K022CA19
4K022CA24
4K022DA01
4K022DB06
5E343AA02
5E343AA16
5E343AA18
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB44
5E343BB48
5E343BB72
5E343DD01
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD63
5E343ER32
5E343ER43
5E343FF02
5E343FF16
5E343GG11
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】金属ナノ粒子を含む溶液(インク)を用いる際に比較的低濃度のものを用いてめっき層を形成することができる積層体および積層体の製造方法、溶液およびプリント配線板を提供する。
【解決手段】積層体10は、絶縁性の基材11と、この基材11上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層13と、このめっき種層上に形成されためっき層15とを備える。好ましくは、めっき種層13は金属ナノ粒子の焼結層を含まない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材と、
前記基材上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層と、
前記めっき種層上に形成されためっき層と
を備えた積層体。
【請求項2】
前記めっき種層は金属ナノ粒子の焼結層を含まない請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を、絶縁性の基材の表面に塗布する工程と、
前記溶液が塗布された基材を露光する工程と、
前記露光された基材を焼成する工程と、
前記焼成された基材をめっきする工程と
を備えた積層体の製造方法。
【請求項4】
前記溶液中の前記金属ナノ粒子の成分が重量濃度で8%~20%である請求項3に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記露光する工程は、前記光硬化樹脂の光硬化時の硬化を不完全とする請求項3または4に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記露光する工程における前記光硬化樹脂の硬化率を40%以下とする請求項5に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記塗布する工程では前記溶液をパターン状に塗布する請求項3に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記基材の表面に塗布する方法がインクジェット印刷方法である請求項3または7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
積層体を製造するために基材の表面に塗布される溶液であって、
光により硬化される光硬化樹脂と、めっき種として機能する金属ナノ粒子とが混合された溶液。
【請求項10】
前記金属ナノ粒子の成分が重量濃度で8%~20%である請求項9に記載の溶液。
【請求項11】
請求項1または2に記載の積層体を用いて形成されたプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、積層体の製造方法、溶液、およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板は、樹脂などの絶縁性基材(ベース材料)の上に金属層を形成した後、この金属層の不要な部分をエッチングにより除去することによって配線パターンを形成する、という方法で製造されてきた。この方法では大量の水と、エッチングで捨てられる余分な金属を使用し、多くの工程を経ねばならなかった。
【0003】
これに対し、本出願人は、インクジェット法などの印刷で金属ナノ粒子を含む導電性インクを必要な部分にのみ塗布し、さらに抵抗値を下げるためめっき処理で金属層を増膜するという手法を提案している(特許文献1)。この手法は基板製造工程の大幅な簡略化を可能とし、特に使用する水の量を大幅に削減すること、さらにCO2の排出量削減に成功した。インクジェット法は、オンデマンドで少量のプリント配線板を最小の時間とコストで作れる信頼できる方法である。
【0004】
特許文献2には、導電性パターンとして用いることのできる積層体として、金属粉を含有する流動体を塗布した後に行う焼成工程で、金属粉同士を密着し接合することで導電性を有する導電層を形成することが開示されている。
【0005】
特許文献3には、銅ナノ粒子同士が固着して結合した構造を含む銅ナノ粒子結合層(焼結体)を有するプリント配線板用基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6300213号公報
【特許文献2】特開2015-156459号公報
【特許文献3】特開2017-73415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、金属ナノ粒子を含有するインク(溶液)では、例えばポリイミドのような樹脂製の基材(基板)に金属ナノ粒子が強く定着する理由が無く、上記特許文献1~3に記載の従来技術のように、多くの金属ナノ粒子が焼結されて初めて基材に密着することができる。
【0008】
また、バインダーを用いたインクでは、ある程度の強度で金属ナノ粒子を基材に定着することが可能である。しかし、金属ナノ粒子の濃度として相応の濃度以上のインクが必要であり、少なくともコストの観点から改善の余地があった。
【0009】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、金属ナノ粒子を含む溶液(インク)を用いる際に比較的低濃度のものを用いてめっき層を形成することができる積層体および積層体の製造方法、溶液およびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本開示の積層体は、絶縁性の基材と、前記基材上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層と、前記めっき種層上に形成されためっき層とを備えたものである。
【0011】
好ましくは、前記めっき種層は金属ナノ粒子の焼結層を含まないものである。
【0012】
本開示による積層体の製造方法は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を、絶縁性の基材の表面に塗布する工程と、前記溶液が塗布された基材を露光する工程と、前記露光された基材を焼成する工程と、前記焼成された基材をめっきする工程とを備えたものである。
【0013】
この積層体の製造方法では、光硬化樹脂の溶液を用い、この中に金属ナノ粒子を含ませるというアプローチを採用している。
【0014】
この積層体の製造方法の一態様として、前記溶液中の前記金属ナノ粒子の成分が重量濃度で8%~20%である。
【0015】
前記積層体の製造方法の他の態様として、前記露光する工程は、前記光硬化樹脂の光硬化時の硬化を不完全とする。
【0016】
この態様において、例えば、前記露光する工程における前記光硬化樹脂の硬化率を40%以下とする。
【0017】
前記積層体の製造方法の他の態様として、前記塗布する工程では前記溶液をパターン状に塗布する。
【0018】
前記積層体の製造法のさらに他の態様として、前記基材の表面に塗布する方法がインクジェット印刷方法である。
【0019】
本開示による溶液は、積層体を製造するために基材の表面に塗布される溶液であって、光により硬化される光硬化樹脂と、めっき種として機能する金属ナノ粒子とが混合された溶液である。
【0020】
本開示は、前記積層体を用いて形成されたプリント配線板をも提示する。
【発明の効果】
【0021】
本開示の積層体および積層体の製造方法、溶液およびプリント配線板によれば、金属ナノ粒子を含む溶液(インク)を用いる際に比較的低濃度のものを用いてめっき層を形成することができる。これにより、金属ナノ粒子の使用量を減少させ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による積層体の基本構成を模式的に表した断面図である。
図2】本発明の実施形態による積層体の引きはがし試験の際の断面の電子顕微鏡写真を示す図である。
図3】銀ナノインクを用いて表面に銅のめっきを施した、焼結層を有する従来の積層体の断面顕微鏡写真を示す図である。
図4】銅ナノインクを用いて表面に銅のめっきを施した、焼結層を有する従来の積層体の断面顕微鏡写真を示す図である。
図5】UV硬化が進んだ部分においてめっきが付かないことを示すめっき前後の写真を示す図である。
図6】UV照射の時間を左から1分、2分、5分と変えたサンプルを同時にめっき処理した結果を表す3つの写真を示す図である。
図7】めっきが付かなかった硬化率40%超と考えられるサンプルの写真を示す図である。
図8】X線光電子分光法(XPS)の測定対象のサンプルの写真を示す図である。
図9】表2の測定結果データを棒グラフで表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態による積層体の具体的な構成および製造方法ならびにこの製造方法に用いる溶液について説明する。
【0024】
<積層体の構成>
図1に本実施形態による積層体の基本構成を模式的に表した断面図を示す。図1(a)は概略の構成を示し、図1(b)は具体的な構成例を示している。
【0025】
図1(a)に示すように、積層体10は、絶縁性の基材11と、この基材11上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層13と、このめっき種層13上に形成されためっき層15とを備えて構成される。めっき種層13は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含有する溶液(インク)の層であるインク層に基いて形成される。めっき層15は導電層を構成する。
【0026】
積層体10の最終生成物の状態で、めっき種層13は従来の積層体と異なり、金属ナノ粒子の焼結層を含まない(あるいは構成しない)。ここでの焼結とは加熱処理により多数の金属ナノ粒子が互いに付着して固まることをいい、焼結層はそのような焼結により互いに結合した多数の金属ナノ粒子からなる層をいう。
【0027】
図1(b)は積層体10を用いて形成されたプリント配線板を示しており、めっき種層13の元となるインク層が配線パターン状に印刷塗布され、この上にめっき金属が析出して導電パターンとしてのめっき層15が形成されている。
【0028】
積層体10の構成要素の具体的な構成は次のとおりである。
【0029】
(絶縁性基材11)
絶縁性の基材(絶縁性基材)11は、典型的には樹脂で構成することができる。その樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン6-10、ナイロン46などのナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS、PMMA、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が挙げられる。
【0030】
本実施形態において使用する絶縁性基材11は特に限定するものではないが、フィルム状の基材としてのベースフィルムを例として説明する。
【0031】
ベースフィルムの厚みは、5μmから3mmが好ましく、12μmから1mmがより好ましく、25μmから200μmが最も好ましい。ベースフィルムの厚みが薄すぎる場合、強度が不十分になると共に、めっき工程時にベースフィルムの歪みが顕著になるおそれがある。ベースフィルムが厚すぎる場合、性能上特に問題はないが、その材料費が増大してしまうとともに、完成した基板の体積および重量が不必要に大きくなってしまうおそれがある。但し、これは絶縁性基材がフィルム状の基材である場合の条件であり、本発明が適用される絶縁性基材はフィルム状の基材に限定されないことは上述したとおりである。
【0032】
ベースフィルムの表面には、後述するインクを均一に塗るために、易接着処理を施すことが好ましい。易接着処理としては、例えばコロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理を用いることができる。このような易接着処理を実行する代わりに、市販の易接着処理済のベースフィルムを利用してもよい。
【0033】
(めっき種層13;インク層;金属ナノ粒子を含む層)
めっき種層13は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含有する溶液としての光硬化樹脂インク(以下、「UV硬化インク」または「UVインク」「ナノインク」ともいう)の塗布に基いて形成される層である。光硬化樹脂インクは、積層体10を製造するために絶縁性の基材の表面に塗布される溶液であって、光により硬化される光硬化樹脂と、めっき種として機能する金属ナノ粒子とが混合された溶液である。
【0034】
本実施形態における光硬化のための光は紫外線(UV:ultraviolet)であり、以下、光硬化樹脂をUV硬化樹脂という。
【0035】
めっき種層13の厚みは、100nmから20μmが好ましく、200nmから5μmがさらに好ましく、500nmから2μmが最も好ましい。
【0036】
金属ナノ粒子の素材としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)などが用いられ、一種または複数の金属を含んでもよいが、導電性の観点から金、銀、銅が好ましく、銅に比べて酸化されにくく金に比べて安価な銀がよいが、さらに安価な銅を利用可能ならばなおよい。
【0037】
金属ナノ粒子の平均粒子径は1nmから200nmが好ましく、10nmから100nmがより好ましい。粒子径が小さすぎる場合、粒子の反応性が高くなりインクの保存性・安定性に悪影響を与えるおそれがある。粒子径が大きすぎる場合、薄膜の均一形成が困難になると共に、インクの粒子の沈殿が起こりやすくなるおそれがある。
【0038】
UV硬化インクの粘度については1cpsから50cpsが好ましい。塗布工程にインクジェット法を用いる場合には2cpsから20cpsが好ましい。
【0039】
通常のインクでは、金属ナノ粒子を混合しても、ポリイミドのような樹脂基材に金属ナノ粒子を強く定着する理由が無く、多数の金属ナノ粒子が焼結されて初めて樹脂基材に密着することができる。また、バインダーを用いたインクでは、ある程度の強度で金属粒子を定着することが可能であるが、金属ナノ粒子の濃度を低減した場合はこの限りでは無い。金属ナノ粒子が焼結していない場合、金属ナノ粒子が脱落・流出してしまい、密着性が得られないばかりか、めっき槽にも悪影響を与えるおそれがある。一方、UVインクや熱硬化可能なバインダーを用いた場合には、次の工程での金属ナノ粒子の流失を防止することが可能と考えられ、この結果として、金属ナノ粒子の焼結層が無くても密着性が得られると推定した。
【0040】
しかし、金属ナノ粒子をUVインクに混合した場合、粒子の光遮蔽力が強いため、UV硬化しようとしてもUV光が遮蔽されて樹脂の硬化が妨げられる。このため、金属ナノ粒子を含有するUVインクは実用化が困難であると考えていた。
【0041】
銀を例にすると銀ナノ粒子が存在するめっき種層を膜としてとらえた場合、例えば100nmの層では、Filmetricsinc社のシミュレータによれば、365nmで光量が1/100になってしまい、金属ナノ粒子を含むUV硬化インクの開発は困難と思われた。
【0042】
しかし、本願発明者らは、金属ナノ粒子を混入したUVインクでは必ずしもUV光による完全硬化は必要ではなく、めっきの可否に関してはむしろ生硬化(不完全硬化)の方が好ましい結果が得られることに気づいた。ここに、「完全硬化」とは硬化率100%ということではなく、これ以上硬化がほとんど進行しないという状態を意味する。めっき種層にめっきが付くにはその表面の近傍に金属ナノ粒子が位置する必要がある。インク層の表面またはその近傍にある金属ナノ粒子の表面に保護剤による保護膜があっても、焼成によりこの保護膜が除去される。しかし、金属ナノ粒子の上に完全に硬化した樹脂が乗りすぎると、当該金属ナノ粒子はインク層の表面から深い場所に位置することになりメッキが付かない。これが光硬化樹脂の硬化率が高すぎるとめっきが付かない理由と考えられる。
【0043】
UVインクの金属ナノ粒子の濃度に関しては、めっき工程では、めっき種(めっき触媒)としての金属ナノ粒子が多いほうがよいが、UV光を過度に遮蔽しないという観点およびコストの観点からインクに投入できる金属ナノ粒子は少ないほうがよい。
【0044】
このような観点から、種々の実験を繰り返し、UVインクに対する適正な金属ナノ粒子の投入量(重量濃度)の範囲を求めた。
【0045】
例えば、ビスフェノールAジアルキジルエーテル(53wt%),信越化学社製の4官能エポキシモノマーKR-470(5wt%),オキセタン(40wt%),光重合開始剤(2wt%)を混合した系に銀ナノインクを銀ナノ粒子が5wt%の濃度になるように混合した系では、UV硬化するが、無電解めっき1時間で、めっきはつかなかった。
【0046】
この無電解めっきはホルムアルデヒドを還元剤とした硫酸銅溶液をpH10以上にした標準的なものである。同じ組成で銀ナノ粒子が5wt%では、同じめっき液で、顕微鏡で観察するとわずかにめっきがつき始めているのが観測された。さらに8wt%では、めっきに成功し、同じめっき液で3時間すると十分なめっきが付くことが分かった。ここから実用的にめっきが付く下限を8wt%と判定した。一方で20wt%以上にするとUVインクが硬化しなくなるため、ここを限度とした。より好ましくは10wt%前後がよいと言える。
【0047】
なお、当初、UVランプの強度が非常に低い(マイクロオーダー)ものを使用していたが、その後、強力なランプを使用すると、ランプを当てずに熱硬化する組成では、当該強力なランプにより光と熱で十分な硬化が短時間で得られることを確認した。80mW/cm以上あれば十分と言える。
【0048】
このような実験の結果、インク中の金属ナノ粒子の含有割合については、必要最低限の範囲として、重量濃度(wt%)で、8%~20%であることが好ましいことが判明した。この重量濃度の低下は高価な金属ナノ粒子のコストを低減につながる。但し、重量濃度がこの範囲の下限を下回ると、めっき層が導電層として機能しなくなるおそれがある。
【0049】
なお、本実施形態において、当該重量濃度範囲のインクで形成されためっき種層13(露光および焼成後)自体は導電層として機能しなくてもよく、最終的に生成されためっき層15が導電層として機能すれば足りる。めっき種層13が導電層として機能しなくてもよいことは、導電性の焼結層が不要であることを意味する。
【0050】
(めっき層15)
導電層としてのめっき層15は、めっき種層13の上にめっき処理(電解めっきまたは無電解めっき)により形成される。
【0051】
めっき金属としては、銅、ニッケル、錫、銀、金などを用いることができるが、経済性および導電性の観点から銅を用いることが最も好ましい。
【0052】
めっき層15の厚さは、3μmから100μmが好ましく、3μmから35μmがより好ましい。めっき層15が薄すぎると、機械的強度が不足すると共に、導電性が実用上十分に得られないおそれがある。逆に、めっき層15が厚すぎると、めっき処理に必要な時間が長くなり、製造コストが増大するおそれがある。一般に電解めっきの方が無電解めっきに比べてめっきに必要な時間が短いため、電解めっきの場合のほうがより厚いめっき層に現実的なコストで対応できる。ただし、無電解めっきは、つながった電極ラインだけでなく、島として浮いた領域にめっきができる利点を有する。
【0053】
<積層体の製造方法>
本実施形態による積層体の製造方法は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を、絶縁性の基材の表面に塗布する工程と、前記溶液が塗布された基材を露光する工程と、前記露光された基材を焼成する工程と、前記焼成された基材をめっきする工程とを備える。
【0054】
より具体的には、絶縁性基材11上に、金属ナノ粒子を含むUV硬化インクを塗布した後、UV光で露光して、焼成を行うことにより、基材上に金属ナノ粒子を含むめっき種層を形成する工程と、めっき処理によりめっき種層の上にめっき金属層としての導電層を形成する工程とを備える。
【0055】
上記光硬化時の硬化率は本実施の形態では40%以下とすることが好ましい。この根拠については後述する。本明細書における評価の対象となる「硬化率」は光硬化後かつ焼成前のめっき種層(インク層)の硬化の度合いであるUV硬化率(重合度)である。なお、UV硬化樹脂の硬化は追加的に焼成工程でも行われるとはいえ、主としてUV光の照射によって行われるものである。したがって、めっき種層ひいてはプリント配線板の機械的な強度を得るためには、UV照射によりある程度以上の硬化率が達成されることが必要である。この意味では光硬化時の硬化率は40%以下でかつ比較的40%に近い値であることが好ましい。その下限値は40%より小さい特定の値、例えば約30%である。ただし、この上限値及び下限値は、UV硬化樹脂の設計に大きく依存すると考えられる。
【0056】
この製造方法によれば、めっき種層において従来技術のように金属ナノインクの焼結層を形成する必要なく、めっきによる導電層を形成することができる。
【0057】
インクジェット法による溶液(インク)塗布の場合、インクの着弾直後の露光による硬化によりインクの広がりが防止され、いわゆるピンニング性を確保することで、高精細なパターンを生成することができる。また、溶媒乾燥型のインクが放置しておいても乾燥していくのに比べて、UV硬化インクは、UV光を照射するまでは硬化しないため、インクの物性が安定し、結果として吐出特性が安定する。
【0058】
(インクの塗布工程)
基材の表面への金属ナノ粒子を含むインクの塗布は、典型的にはインクジェット法を用いて行う。但し、必ずしもインクジェット法に限るものではなく、これ以外の塗布方法を用いてもよい。また、後述する実験では、バーコーターによる塗布も行っている。
【0059】
金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクを基材としてのベースフィルムに塗布した後、溶媒がある場合はこれを除去する乾燥工程を行う。この工程は公知の金属ナノ粒子インクの乾燥工程と同様である。金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクの乾燥方法としては、オーブンなどによる加熱、温風乾燥等を採用することができる。
【0060】
(UV露光工程)
金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクのUV露光工程では、UV硬化樹脂に含まれる光重合開始剤の感度波長によって露光ランプを選択する。UV硬化樹脂の露光された部分は光重合開始剤が反応して硬化する。
【0061】
(UV硬化樹脂の焼成工程)
UV露光工程に続く焼成工程ではUV硬化樹脂の追加的な硬化が行われるとともに、インク層表面において樹脂に裂け目を生じさせる。金属ナノ粒子はこの裂け目を通して表面につながり、後続のめっき工程ではこの裂け目を通してめっき種層の表面に金属が析出すると推測される。この裂け目を生じさせる作用については、焼成前のUV硬化樹脂が硬化し過ぎず不完全硬化状態となっていることがその作用を助けていると推測される。また、この焼成工程では、めっき種層と基材との密着性の向上も期待される。上述したように、例えば銅ナノ粒子のように金属ナノ粒子によってはその表面に保護剤による保護膜が形成されている場合がある。保護剤は例えば有機酸類等を含む。焼成工程では、このような金属ナノ粒子についてはめっき種として機能させるために、UV露光後めっき前に焼成によりこのような保護膜が除去される。焼成温度は160℃から260℃程度で焼成時間は10分から1時間としたが、UVインクの場合には焼成温度は160℃では不十分で260℃以上が好ましい。この工程を経て後続のめっき工程へ移行する。
【0062】
通常、銅や銀を焼結させる温度は、非常に高温で、銅の場合は融点が1085℃であり、銀は融点が962℃である。しかし粒子がナノスケールまで小さくなると、この温度は低下することが知られており、ナノ粒子を用いて配線を形成する利点はここにあると言える。しかしながら、ナノ粒子であっても銅の場合は従来例のように粒子の密度を上げて塗布し、焼結で導電層を作ろうとすると、粒子径にもよるが、粒子径が比較的大きい場合には350℃以上が必要となる。本実施の形態における焼成は、このような従来の金属焼結層を生成することを目的としないので、それほどの高温処理は必要ない。
【0063】
(めっき工程)
上記インク塗布工程およびUV露光工程の後、ベースフィルム上に形成されためっき種層に対し、めっき処理(電解めっきまたは無電解めっき)を行う。これにより、めっき種層の表面および内部にめっき金属を析出させる。
【0064】
めっき方法は公知のめっき液を用いた公知のめっき処理と同様であり、具体的には無電解銅めっき、電解銅めっき、電解ニッケルめっき等を含みうる。
【0065】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0066】
(実施例1)
この実施例1ではラジカル重合のUVインクを用いた例を説明する。基材としてのベースフィルムには、PI(ポリイミド)フィルムを用いた。
【0067】
UV硬化インクとしては次のものを使用した。すなわち、金属ナノ粒子の素材としてヒドラジンで還元した銅のナノ粒子を用い、その重量濃度は7.5wt%とした。UV硬化ベース樹脂としてはアクリル樹脂ベースのUV硬化インクを調整した。二官能アクリル酸エステル(40wt%)とクレゾールノボラック系エポキシ樹脂(2.5wt%)、3官能アクリル酸エステル(1wt%)、1官能アクリル酸エステル(15wt%)を配合し、ここに光重合開始剤(5wt%)を入れたものを調整した。これらの比率はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。このインクには金属ナノ粒子のために分散剤を入れてもよい。
【0068】
このようにして調整したインクを10番手(OSP-10:osp社製)のバーコーターでベースフィルム上に塗布し、Hgランプで露光し、260°Cのオーブンで60分焼成した。実際のプリント配線板の製造工程では、パターン状のめっき種層の形成は印刷塗布によるが、ここでは実験的にバーコーターを用いた。
【0069】
ついで、金属ナノ粒子層を形成したベースフィルムに対し、10%硫酸で1分間のクリーニングを行った。ここでのクリーニングの目的は、一部の酸化銅を除去し、後のめっき工程でめっきが付きやすくするためである。
【0070】
その後、無電解銅めっき液のプレディップを行い、銅、アルカリ、ホルムアルデヒドを主成分とする無電解銅めっき液を用いて、液温65°Cで180分間の無電解銅めっきを行った。その結果、十分にめっきが付いたことを確認した。
【0071】
その後、変色防止剤に常温で1分間浸けた後、乾燥させた。
【0072】
この後、200℃1hのアニールをかけ、種々の試験を行った。基材破断テストでは米国のUL試験法によって測定すると平均で0.73N/mmの高い密着性があることを確認した。この試験は密着性測定のための破壊試験であり、「めっき層とめっき種層」「めっき種層」「めっき種層と基材」の密着性のうち最も弱いところの測定結果が数値として観測される。この試験の結果、0.73N/mmの密着性があるということは、めっき種層、つまりUV硬化樹脂と金属ナノ粒子の混合層の強度も0.73N/mm以上であるということが分かる。
【0073】
図2に、引きはがし試験の際の断面の電子顕微鏡写真を示す。この図から分かるように、ポリイミド層である基材11の上にめっき種層13があり、その上にめっき層15が形成されている。この図から、めっき種層13上にナノ粒子の焼結した部分(焼結層)が存在しないことが分かる。UL試験は、めっきされた金属部分を写真の上端側へ向かって引き上げる試験である。このときに図の右のほうから引き上げているので、右のほうから、めっき層15と基材11の間に亀裂14が広がっている。引きはがし試験の際に「断面」を見るのはめっき層とめっき種層(インク層)の境目を明確に認識できるようにするためである。
【0074】
(比較例1)
図3に、比較例1として、銀ナノインクを用いて同じように表面に銅のめっきを施した、焼結層を有する従来の積層体の断面顕微鏡写真を示す。この場合には銀ナノ粒子を焼結させているので、銀ナノ粒子の焼結層(導電層)13aがはっきりと映っている。
【0075】
(比較例2)
図4に比較例2として、銅ナノインクを用いて表面に銅のめっきを施した、焼結層を有する従来の積層体の断面顕微鏡写真を示す。図4内の右側の図は左側の図の一部の拡大図である。銅ナノインクの場合はめっき層と連続的につながっている部分は見分けが難しいが、図4内の右側の拡大図では、銅ナノ粒子の焼結層13bが存在することが確認できる。このような焼結層は、めっき処理の前に、一般的に金属ナノ粒子の形態によりバルクの金属より大幅に融点の下がったことを利用して加熱でナノ粒子の焼結をするか、フォトシンタリングなどの手法で形成されるのが通例である。図4の積層体の焼結層はフォトシンタリングで形成したものである。このような一般的な焼結層のある場合はUL式引きはがし試験のデータとしては0.6N/mm以下のものが多い。
【0076】
(実施例2)
この実施例2では、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を、基材に塗布し、UV露光し、焼成後にこの基材を無電解めっき液に浸漬して、めっき処理したもので、UV硬化時の硬化率を40%以下とした場合を説明する。
【0077】
PI(ポリイミド)フィルムをベースフィルムとし、カチオン重合のUV硬化インクを用いた。より具体的にはUV硬化インクとして以下のものを使用した。金属ナノ粒子の素材としてヒドラジンで還元した銅のナノ粒子を用いた(後で混合した全体に対して8wt%)。UV硬化ベース樹脂としてはカチオン重合樹脂のUV硬化インクを調整した。(%は樹脂ベースのみ)4官能エポキシモノマー(5wt%)とクレゾールノボラック系エポキシ樹脂(10wt%)、2官能オキセタンモノマー(45wt%)、2官能エポキシモノマー(35wt%)を配合し、ここに光重合開始剤(5wt%)を入れたものを調整した。めっき処理の結果、十分にめっきが付いたことを確認した。
【0078】
図5に、UV硬化が進んだ部分においてめっきが付かないことを示すめっき前後の写真を示す。図5内の左の写真は、めっき前のインク塗布膜で、左側にインクが偏り、結果として左端が厚塗りになってしまった様子を示している。これは、バーコーターの塗布の不手際でたまたま多めにUV硬化インクが偏って付いたところから、UV硬化樹脂の完全硬化はよくないという発見につながった実験である。このメッキ種層はカチオン重合で作製し、硬化度と直接関係ないが、厚塗りの部分にメッキが付きにくいという現象はラジカル重合の場合と共通して起こった。
【0079】
上述したように、表面に保護膜が形成されている金属ナノ粒子についてはめっき種として機能させるために、UV露光後に、めっき前の焼成によりこのような保護膜を除去する。その際、UVインクの場合には160℃では不十分では260℃以上が好ましいことが分かった。すなわち、160℃では銅めっきが十分に付かないが、260℃1h以上で処理したものはめっきが付くことを見出した。
【0080】
図6(a)(b)(c)に、UV照射の時間を左から1分、2分、5分と変えたサンプルを同時にめっき処理した結果を表す3つの写真を示す。ここに示すようにUV照射時間が長くなるに伴って硬化率が高くなると、その程度に応じてめっきは付きにくくなるのが分かる。
【0081】
表1に、実施例1で使ったラジカル重合のベース樹脂でインクを用いた場合のUV照射とオレフィンの硬化率を示す。フーリエ変換赤外線分光法(FTIR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)の全反射測定法(ATR:Attenuated Total Reflection)方式で塗布膜表面における硬化率(「UV硬化率」)の測定を行ったものである。アクリル基のカルボニルの伸縮振動によるピーク(1721cm-1)を基準に、同じアクリルモノマーのオレフィン部分のピーク(1690~1524cm-1)のUV硬化による減少から、硬化率を評価した。「UV1min」という表記はUV照射1分を表し、「260℃30min」という表記は260℃で30分焼成、を表している。
【表1】
【0082】
表1から分かるように、照射時間に比例して硬化率(「UV硬化率」)が上がる。表1の上から4行までの実験結果は10番手(OSP-10)のバーコーターで塗布したもので、塗布されたUVインク層は塗布時に概ね10μmの膜厚となっている。下の行2つの実験結果は30番手のバーコーターでUVインクを塗布したものである。30番手(OSP-30)のバーコーターではUVインク層は概ね30μmの膜厚に近いと考えられる。ラジカル重合では、UVインク層の膜厚が薄いと酸素の影響が大きくなり、重合度(UV硬化率)が上がらないことが知られており、30μmでやや重合度が上がる程度であった。40%程度の硬化率(重合度)から、表面に皺が出始め、この重合度を大きく超えるとATRでは表面の凹凸のために測れなくなった。結果として、めっきが十分に付いたものは硬化率40%以下のものであった。
【0083】
図7に、めっきが付かなかった硬化率40%超と考えられるサンプルの写真を示す。この図に示すように30番手のバーコーターで塗布した場合、硬化率がさらに上がり、皺が非常に大きくなったサンプルではめっきが付かないようになった。
【0084】
ATRでは表面の1~2μmしか測れないが、めっきの付は視認により(見た目で)判断した。概ね生硬化(不完全硬化)のほうがめっきの付きがよい。このくらいの硬化率では、硬いもので表面をひっかくとその部分が容易に取れる。
【0085】
(実施例3)
実施例3では、市販の銀ナノ粒子を市販のUVインクに混合したUVインクを用意した。基材にこのUVインクを塗布し、UV露光し、焼成後に、この基材を無電解めっき液に浸漬して、めっき処理を行った。UVインクとしては重量濃度で8%~20%のものを用いた。
【0086】
このUV硬化インクはUV露光によるUV硬化で完全硬化することなく、6.2wt%から22wt%までの重量濃度で、めっきはすべて成功した。塗布後の焼結温度は150℃でも、めっきは付いた。ただし、ナノ粒子濃度が低い場合には、めっき膜厚も薄くなる傾向がみられた。また実施例1において示したような自作の樹脂ベースを用いて、市販の銀ナノインクで試したところ、8wt%からめっきがつき始め、20wt%で良好なめっき膜厚(1時間3μm)となった。
【0087】
また、金属ナノ粒子を含むUV硬化樹脂のUV硬化は、UV照射機の光量に依存することを確認した。すなわち80mW/cm以上の光量であれば、メタルハライド、水銀灯、発光ダイオード(LED)など、どのような光源でも完全硬化ではなく、少なくとも表面の硬化が観測された。これらのことから、金属ナノ粒子成分が重量濃度で8%~20%であれば、金属ナノ粒子を含むUVインクとして、十分機能できることを見出した。
【0088】
表2に、X線光電子分光法(XPS)を用いたワイドスキャンによる基板の最表層の元素成分比の測定(測定視野700×300μm)の結果を示す。
【表2】
【0089】
図8にXPSの測定対象のサンプルを示す。図8(a)はめっき不良部分(図の四角枠部分)を有するめっき処理後のサンプルを示し、図8(b)は良好なめっきが付くことが分かっている部分(図の四角枠の部分)を有するめっき前のサンプルを示している。図8(a)の図は図5(b)の図に対応している。測定に際しては、サンプルの表面から20nmずつ削った後の元素成分比変化を測定した。エッチング条件は4kV,250secであり、SiO2換算で20nm削れる。
【0090】
表2の「銅めっきできない部分」ではエッチング回数0から5回目、すなわちエッチング深さ100nmまで銅(Cu)が検出されず、C(炭素)およびO(酸素)のみが検出され、エッチング回数10(エッチング深さ200nm)で初めて銅が検出されている。
【0091】
これに対して、「銅めっきできる(であろう)部分」では、エッチング回数0(すなわちエッチング深さ0nm)では銅(Cu)が検出されないが、エッチング回数3回目(エッチング深さ60nm)で銅が検出されている。
【0092】
図9に、表2の測定結果データを棒グラフで表した図を示す。図9(a)は表2の「銅めっきできない部分」に対応し、図9(b)は表2の「銅めっきできる(であろう)部分」に対応している。いずれも、横軸に質量%(Mass%)、縦軸にエッチング深さ(nm)を表している。図9から、エッチング深さごとの元素の成分比を容易に把握することができる。
【0093】
この測定結果から、焼成後の基板において、その表面に金属の露出がなくても浅い位置にある金属ナノ粒子がめっき種として機能することが分かる。
【0094】
銅ナノ粒子のように表面が保護膜で被覆されていても、表面近傍の表層にある銅ナノ粒子についてはその保護膜は焼成により除去されるものと推定される。より具体的には、上述したように、インク層の表面から比較的浅い位置にある金属ナノ粒子については焼成により表層の樹脂層に裂け目が生じ、金属ナノ粒子はこの裂け目を通して表面につながり、めっき工程ではこの裂け目をとおしてめっき種層の表面に金属が析出すると推測される。銅ナノ粒子のようにその表面が保護膜で被覆されている場合、焼成工程でその保護膜が気化して裂け目から放散すると考えられる。
【0095】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形・変更を行うことが可能である。使用した材料、長さ、比率、温度、時間等は例示であり、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
10 積層体
11 基材
13 めっき種層
13a 銀ナノ粒子の焼結層(導電層)
13b 銅ナノ粒子の焼結層
14 亀裂
15 めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9