(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173691
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】材料数量予測装置と材料数量予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20231130BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231130BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086123
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】薮田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】西 拓馬
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】設計対象建物の材料数量の概算値を、設計段階において、設計者の経験値に左右されることなく高精度に予測することのできる、材料数量予測装置と材料数量予測方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】建物の施工に要する材料数量を予測する、材料数量予測装置10であり、記憶部110と予測部104とを有し、記憶部110には、材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データと、過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、該実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データとが記憶され、予測部104は、実績建物情報データを参照して、予測対象建物基本情報データから予測対象建物の材料数量を予測する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の施工に要する材料数量を予測する、材料数量予測装置であって、
記憶部と予測部とを有し、
前記記憶部には、材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データと、過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、該実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データとが記憶され、
前記予測部は、前記実績建物情報データを参照して、前記予測対象建物基本情報データから前記予測対象建物の材料数量を予測することを特徴とする、材料数量予測装置。
【請求項2】
機械学習部をさらに有し、
前記機械学習部では、複数の前記実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成するとともに、該実績建物情報データの蓄積に応じて該予測モデルを更新し、
前記予測部は、前記予測モデルに前記予測対象建物基本情報データを入力し、出力データである材料数量データを取得することを特徴とする、請求項1に記載の材料数量予測装置。
【請求項3】
前記予測対象建物基本情報データには、前記延床面積の他に、建物の階数、主要構造、基礎形式が含まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料数量予測装置。
【請求項4】
前記予測対象建物が鉄骨造建物の場合に、前記材料数量は、上部工の鉄骨量と、基礎工のコンクリート量であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料数量予測装置。
【請求項5】
建物の施工に要する材料数量を予測する、材料数量予測方法であって、
材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データを設定する、A工程と、
過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、該実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データを参照して、前記予測対象建物基本情報データから前記予測対象建物の材料数量を予測する、B工程とを有することを特徴とする、材料数量予測方法。
【請求項6】
機械学習により、複数の前記実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成するとともに、該実績建物情報データの蓄積に応じて該予測モデルを更新する、C工程をさらに有し、
前記B工程では、前記予測モデルに前記予測対象建物基本情報データを入力し、出力データである材料数量データを取得することを特徴とする、請求項5に記載の材料数量予測方法。
【請求項7】
施工に要する材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データを設定する、A工程と、
過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、該実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データを参照して、前記予測対象建物基本情報データから前記予測対象建物の材料数量を予測する、B工程を、コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料数量予測装置と材料数量予測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の設計者は、設計された建物の施工に要する材料数量(設計数量)の概算値と、この材料数量の概算値に基づき算定された建設コストの概算値を例えば設計の初期段階で把握することにより、設計内容の妥当性の確認や早期の設計見直し等を行うことが可能になる。材料数量の概算値とこれに付随する建設コストの概算値は、大規模な公共工事においては、採算の取れる受注可能な案件であるか否かの大きな判断要素となり、一般の戸建て住宅等の工事においては、販売の上で適正な価格帯に入っているか否かの重要な指標となる。設計対象建物が鉄骨造建物の場合、材料数量の概算値には、本体(上部工)の鉄骨重量(鉄骨総重量)と基礎工のコンクリート体積(コンクリート量)等が挙げられ、木造建物の場合、材料数量の概算値には、上部工の木材体積(木材量)と基礎工のコンクリート体積等が挙げられる。また、鉄筋コンクリート造の場合、材料数量の概算値には、上部工と基礎の双方のコンクリート体積が挙げられる。
【0003】
しかしながら、従来は、各設計者の経験則に基づき、設計された建物の構造形式(鉄骨造や木造等)や建物の規模等から材料数量の概算値を特定しており、そのため、材料数量の概算値の予測は各設計者の経験値に依拠するところが大きく、設計者によって材料数量の概算値が変動するといった課題がある。このことから、設計者の経験値に左右されることなく、設計対象建物の例えば延床面積等の基本情報に基づいて、精度の高い材料数量の概算値を予測することのできる、材料数量予測装置や材料数量予測方法が望まれる。
【0004】
ここで、特許文献1には、建設予定の建物の建築価格または建設工期を予測する、予測方法が提案されている。このうち、建物の建築価格の予測方法は、過去に建設された複数の建物ごとに、各建物の建設地域と、地域ごとの物価に依存した地域物価係数と、各建物が建設された建設年と、年ごとの物価に依存した年物価係数と、各建物の建設階数と敷地面積等を含むデータを予測システムに入力する、入力工程を有する。予測方法はさらに、各建物の建設地域に対応した地域物価係数と、各建物の建設年に対応した年物価係数とを用いて、各建物の建築価格を、建設地域および建設された年の物価に依存しない標準建築価格に補正する、第1補正工程を有する。予測方法はさらに、各建物に関して、建設階数と敷地面積と地盤パラメータと用途パラメータとに基づいて標準建築予測価格を算出し、建物ごとに算出した標準建築予測価格の値が各建物の標準建築価格の値に収束するように、機械学習により標準建築予測価格の算出方法を学習する、学習工程と、建設予定の建物の建設地域と建設年と建設階数と敷地面積と地盤条件に応じた地盤パラメータと用途に応じた用途パラメータと、建設予定の建物の建設階数と敷地面積と地盤パラメータ用途パラメータとに基づいて、建設予定の建物の標準建築予測価格を算出する、算出工程を有する。予測方法はさらに、建設予定の建物の建設地域に対応した地域物価係数と建設年に対応した年物価係数とを用いて、算出工程で算出した建設予定の建物の標準建築予測価格を、建設予定の建物の建設地域および建設年の物価に依存した建築予測価格に補正する、第2補正工程を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の建設予定の建物の建築価格の予測方法によれば、建設予定の建物の建築価格等を、迅速かつ正確に予測することが可能になる。ところで、特許文献1に記載の予測方法では、建築価格の予測を行うために、過去に建設された建物の地域情報や地域物価係数情報、建設年情報等を適用することで建築価格の予測精度を高めているが、上記するように、設計対象建物の材料数量の概算値を、設計段階において、設計者の経験値に左右されることなく高精度に予測したいというニーズを充足する技術ではない。
【0007】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、設計対象建物の材料数量の概算値を、設計段階において、設計者の経験値に左右されることなく高精度に予測することのできる、材料数量予測装置と材料数量予測方法、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による材料数量予測装置の一態様は、
建物の施工に要する材料数量を予測する、材料数量予測装置であって、
記憶部と予測部とを有し、
前記記憶部には、材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データと、過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、該実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データとが記憶され、
前記予測部は、前記実績建物情報データを参照して、前記予測対象建物基本情報データから前記予測対象建物の材料数量を予測することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、記憶部に対して、予測対象建物基本情報データに含まれる少なくとも延床面積と、過去の実績建物に関する実績建物基本情報とその材料数量とを含む実績建物情報データとが記憶され、予測部が実績建物情報データを参照して予測対象建物の材料数量を予測することにより、設計者の経験値に左右されることなく、予測対象建物基本情報データの入力のみによって予測対象建物の材料数量の概算値を高精度に予測することが可能になる。
【0010】
ここで、予測対象建物基本情報データには、延床面積の他にも、予測対象建物の建築面積や階数、主要構造や基礎形式等、様々な要素に関するデータが含まれるが、本発明者等による検証によれば、少なくとも延床面積に関するデータを用いることにより、材料数量の概算値をおよそ高い精度で特定できることが分かっていることから、本態様では、「少なくとも延床面積」に関するデータを記憶部に記憶させることとした。
【0011】
また、過去の実績建物に関する実績建物基本情報には、予測対象建物と同様に、少なくとも延床面積に関する情報が含まれ、例えば、実績建物の延床面積と材料数量に関する情報がセットとなって実績建物情報データとして記憶部に記憶される。記憶部には、複数(多数)の実績建物の実績建物情報データが集積される。集積された実績建物情報データは、延床面積と材料数量を横軸と縦軸とした二次元座標として装置の画面に表示することもできる。
【0012】
また、本発明による材料数量予測装置の他の態様は、
機械学習部をさらに有し、
前記機械学習部では、複数の前記実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成するとともに、該実績建物情報データの蓄積に応じて該予測モデルを更新し、
前記予測部は、前記予測モデルに前記予測対象建物基本情報データを入力し、出力データである材料数量データを取得することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、機械学習部により、実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成し、予測モデルに対して予測対象建物基本情報データを入力し、出力データである材料数量データを取得することにより、より一層精度の高い材料数量の予測を実現できる。ここで、予測モデルは機械学習モデルであり、例えばニューラルネットワークである。予測モデルは、実績建物情報データの蓄積に応じて随時更新され、更新に応じて予測精度が高められるようになっている。
【0014】
尚、コンピュータにより形成される1つの材料数量予測装置において、予測部と記憶部と機械学習部が内蔵されていてもよいし、材料数量予測装置が2つのコンピュータにより形成され、双方のコンピュータが通信を介してデータを送受信可能に接続されていて、一方のコンピュータに予測部と記憶部が内蔵され、他方のコンピュータに機械学習部が内蔵されているシステム形式の材料数量予測装置であってもよい。
【0015】
また、本発明による材料数量予測装置の他の態様において、
前記予測対象建物基本情報データには、前記延床面積の他に、建物の階数、主要構造、基礎形式が含まれることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、予測対象建物基本情報データとして、延床面積の他に、建物の階数や主要構造、基礎形式がさらに含まれることにより、予測対象建物の材料数量をより一層高精度に予測することが可能になる。
【0017】
また、本発明による材料数量予測装置の他の態様において、
前記予測対象建物が鉄骨造建物の場合に、前記材料数量は、上部工の鉄骨量と、基礎工のコンクリート量であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、予測対象建物が鉄骨造建物の場合の材料数量として、上部工の鉄骨量(鉄骨重量)と基礎工のコンクリート量(コンクリート体積)が含まれることにより、鉄骨造建物の主要材料の数量を把握することができ、建設コストの概算値の特定に繋がる。ここで、予測対象建物が木造建物の場合は、上部工の木材体積(木材量)と基礎のコンクリート体積等が挙げられ、鉄筋コンクリート造の場合は、上部工と基礎工の双方のコンクリート体積等が挙げられる。
【0019】
また、本発明による材料数量予測方法の一態様は、
建物の施工に要する材料数量を予測する、材料数量予測方法であって、
材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データを設定する、A工程と、
過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、該実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データを参照して、前記予測対象建物基本情報データから前記予測対象建物の材料数量を予測する、B工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と材料数量とを含む実績建物情報データを参照して、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データから予測対象建物の材料数量を予測することにより、設計者の経験値に左右されることなく、予測対象建物基本情報データの設定のみによって予測対象建物の材料数量の概算値を高精度に予測することが可能になる。
【0021】
また、本発明による材料数量予測方法の他の態様は、
機械学習により、複数の前記実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成するとともに、該実績建物情報データの蓄積に応じて該予測モデルを更新する、C工程をさらに有し、
前記B工程では、前記予測モデルに前記予測対象建物基本情報データを入力し、出力データである材料数量データを取得することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、機械学習により、実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成し、予測モデルに対して予測対象建物基本情報データを入力し、出力データである材料数量データを取得することにより、より一層精度の高い材料数量の予測を実現できる。
【0023】
また、本発明によるプログラムの一態様は、
施工に要する材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データを設定する、A工程と、
過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、該実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データを参照して、前記予測対象建物基本情報データから前記予測対象建物の材料数量を予測する、B工程を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、コンピュータ等にインストールされたプログラムにより、過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と材料数量とを含む実績建物情報データを参照して、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データから予測対象建物の材料数量を予測することにより、予測対象建物の材料数量の概算値を高精度に予測することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明による材料数量予測装置と材料数量予測方法、及びプログラムによれば、設計対象建物の材料数量の概算値を、設計段階において、設計者の経験値に左右されることなく高精度に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る材料数量予測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る材料数量予測装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】表示部に表示されている、予測対象建物基本情報データの一例を示す図である。
【
図4】
図3に示すデータに連続している、予測対象建物基本情報データの一例を示す図である。
【
図5】
図4に示すデータに連続している、予測データの一例を示す図である。
【
図6】表示部に表示される、実績建物情報データと、予測対象建物の予測データのうち、上部工の鉄骨量に関する表示例を示す図である。
【
図7】表示部に表示される、実績建物情報データと、予測対象建物の予測データのうち、基礎工のコンクリート量に関する表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る材料数量予測装置と材料数量予測方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る材料数量予測装置と材料数量予測方法]
図1乃至
図7を参照して、実施形態に係る材料数量予測装置と材料数量予測方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る材料数量予測装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図2は、実施形態に係る材料数量予測装置の機能構成の一例を示す図である。また、
図3乃至
図5は、表示部に表示されている、予測対象建物基本情報データと予測データの一例を示す図である。
【0029】
材料数量予測装置10は、建物の施工に要する材料数量を予測する装置であり、例えば、設計の初期段階において、設計者が材料数量予測装置10を用いて自身の設計した予測対象建物の材料数量の概算値を予測し、材料数量の概算値に基づいてさらに建設コストの概算値の予測に供する装置である。以下、予測対象建物として鉄骨造建物を取り上げて説明するが、材料数量予測装置10によって材料数量が予測される予測対象建物には、鉄骨造建物の他にも、木造建物や鉄筋コンクリート造建物、鉄骨鉄筋コンクリート造建物等が含まれる。
【0030】
材料数量予測装置10は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の情報処理装置(コンピュータ)により構成される。材料数量予測装置10を構成するコンピュータは、接続バス16により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入出力IF(interface)14、及び通信IF15を備えている。主記憶装置12と補助記憶装置13は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0031】
CPU11は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU11は、コンピュータからなる材料数量予測装置10の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU11は、例えば、補助記憶装置13に記憶されたプログラムを主記憶装置12の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0032】
主記憶装置12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムや、CPU11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置13は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置13には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF15を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。
【0033】
材料数量予測装置10が、材料数量の予測対象建物を設計する設計担当者の所有するコンピュータである場合に、外部装置等には、例えば、当該予測対象建物の関係者の所有するコンピュータや、関係するハウスメーカーの本支店の関係部署にあるコンピュータ等が含まれる。
【0034】
補助記憶装置13は、例えば、主記憶装置12を補助する記憶領域として使用され、CPU11が実行するコンピュータプログラムや、CPU11が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置13は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置13として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0035】
入出力IF14は、材料数量予測装置10に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF14には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。材料数量予測装置10は、入出力IF14を介して、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0036】
また、入出力IF14には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。
【0037】
例えば、以下で説明するように、予測対象建物基本情報データがエクセル(Excel、登録商標)形式等でテキスト表示される画像や、実績建物情報データと、予測対象建物の予測データに関する画像等が画面表示されるようになっている。
【0038】
通信IF15は、材料数量予測装置10が接続するケーブルやネットワークとのインターフェイスである。通信IF15は、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等、様々なネットワークを介して、材料数量予測装置10により作成された、実績建物情報データと、予測対象建物の予測データに関する画像等を、各関係者の有するコンピュータや携帯端末(スマートフォンやタブレット端末)等に送信する。
【0039】
また、材料数量予測装置10が2つのコンピュータにより構成される場合は、双方のコンピュータがそれぞれの通信IF15を介してデータを送受信可能に接続される。
【0040】
図2に示すように、材料数量予測装置10は、CPU11によるプログラムの実行により、少なくとも、取得部102、予測部104、機械学習部106、表示部108、及び記憶部110の各種機能を提供する。ここで、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。また、上記するように、材料数量予測装置10が2つのコンピュータにより構成される場合は、一方のコンピュータが、取得部102、予測部104、表示部108、及び記憶部110を備え、他方のコンピュータが、取得部102、機械学習部106、及び記憶部110を備え、他方のコンピュータの機械学習部106にて生成された学習モデルに対して、一方のコンピュータの予測部104がデータを入力等して材料数量データを出力し、材料数量の予測を行ってもよい。
【0041】
取得部102は、キーボード等を介して入力された測対象建物基本情報データを取得し、取得された予測対象建物基本情報データは記憶部110に記憶(格納)される。
【0042】
ここで、
図3乃至
図5を参照して、予測対象建物基本情報データと予測データの一例を説明する。
図3乃至
図5は、表示部108に表示されている表示例として示すものであり、一つの画面上に、
図3乃至
図5が横方向に連続して表示されている。
【0043】
予測対象建物基本情報データには、
図3に示すように、建設地、延床面積、建築面積、階数、基準階高、柱割短手、柱割長手、地耐力、積載荷重が含まれる。予測対象建物基本情報データにはさらに、
図4に示すように、耐震種、主要構造、架構種、屋根種、壁種、床種、柱脚形式、基礎形式が含まれる。
図3及び
図4に示す予測対象建物基本情報データの横には、
図5に示すように、材料数量予測装置10により予測された予測データ(予測結果)が表示される。
【0044】
図示例の予測対象建物基本情報データと予測データはエクセルデータであり、予測対象建物基本情報データを構成する各基本情報の入力においては、プルダウンにて複数種の基本情報が提示され、設計担当者は予測対象建物に応じた基本情報を選択することができる。
【0045】
例えば、主用途や従用途には、事務室の他、居室、教室、車庫、倉庫、集会室、店舗、病院等が選択項目として設定される。また、耐震種には、耐震、免震、制振の3種の選択項目が設定される。
【0046】
また、主要構造には、S造(Steel:鉄骨造)、RC造(Reinforced concrete:鉄筋コンクリート造)、SRC造(Steel reinforced concrete:鉄骨鉄筋コンクリート造)、木造等が選択項目として設定される。また、架構種には、ラーメン架構とブレース架構の混合種、妻方向と桁行方向がいずれもラーメン架構、妻方向と桁行方向がいずれもブレース架構の3種が選択項目として設定される。
【0047】
また、屋根種には、スレート葺き、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete:圧力処理済み軽量気泡コンクリート)版、瓦、乾式断熱屋根、合成スラブ、折板葺き、鉄板葺き等が選択項目として設定される。また、壁種には、DRS(金属系サンドイッチパネル:ロックウール+ガルバリウム鋼板(登録商標))、ECP(Extruded Cement Panel:押出成形セメント板)、GRC(Glass fiber Reinforced Cement:繊維補強セメント板)、PC(Precast concrete:プレキャストコンクリート板)、サイディング、鉄板張り等が選択項目として設定される。
【0048】
また、床種には、EZ50、EZ75、ハイパーデッキ、フェローデッキ、構造スラブ等が選択項目として設定される。また、柱脚形式には、根巻き、埋込み、露出の3種が選択項目として設定される。さらに、基礎形式には、鋼管杭、柱状改良、PHC杭、直接基礎、直接基礎と杭の併用等が選択項目として設定される。
【0049】
記憶部110には、図示例における予測対象建物基本情報データの全項目が記憶されることにより、予測精度の高い材料数量の概算値を予測できるが、予測対象建物基本情報データのうち、少なくとも延床面積が記憶されることで、材料数量の概算値を比較的高い精度で予測できることが本発明者等により特定されている。
【0050】
記憶部110には、予測対象建物基本情報データの他に、過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データがさらに記憶されている。
【0051】
予測部104は、記憶部110に記憶されている実績建物情報データを参照して、同様に予測対象建物基本情報データから、予測対象建物の材料数量を予測する。表示部108には、不図示のツール起動アイコンが表示され、設計担当者がツール起動アイコンをクリックすることにより、予測部104が起動し、記憶部110に記憶されている実績建物情報データを参照しながら、予測対象建物基本情報データから、予測対象建物の材料数量を予測する。
【0052】
予測部104における、材料数量特定アルゴリズムの一例として、実績建物情報データにおける複数の実績建物の延床面積と材料数量との関係から双方の相関性を特定し、定式化するアルゴリズムを挙げることができる。定式化の一例としては、単回帰分析により回帰直線を特定する方法がある。
【0053】
例えば、記憶部110に入力された予測対象建物の延床面積に関するデータ(予測対象建物基本情報データ)を回帰直線等に代入することにより、実績建物情報データを参照した予測対象建物の材料数量の予測を実行する。尚、予測部104における、実績建物情報データを用いた実績建物基本情報と材料数量との相関性の特定アルゴリズムには、様々なアルゴリズムが適用されてよい。
【0054】
予測部104が実行されることにより、
図5に示すように、鉄骨造建物である予測対象建物の材料数量に関し、上部工の鉄骨量が122tonと予測され、基礎工のコンクリート量が310m
3と予測される。
【0055】
機械学習部106は、記憶部110に記憶されている実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成する。予測部104は、記憶部110に記憶されている予測対象建物基本情報データを機械学習部106に生成されている予測モデルに入力し、材料数量データを出力する。すなわち、機械学習部106を利用して材料数量を特定する場合は、予測部104により、機械学習部106に対して記憶部110に記憶されているデータが適用される制御が実行される。
【0056】
ここで、機械学習部106において生成される予測モデルは機械学習モデルであり、例えばニューラルネットワークである。機械学習部106では、実績建物情報データの蓄積に応じて予測モデルを随時更新し、更新された予測モデルにより予測精度が高められるようになっている。
【0057】
表示部108には、
図6と
図7に示すように、実績建物情報データと、予測対象建物の予測データが同時に表示され、予測データが実績建物情報データの傾向に沿っているか否かを確認できるようになっている。ここで、
図6は、上部工の鉄骨量に関する表示例を示す図であり、横軸と縦軸がそれぞれ、延床面積と鉄骨量を示している。一方、
図7は、基礎工のコンクリート量に関する表示例を示す図であり、横軸と縦軸がそれぞれ、延床面積とコンクリート量を示している。
【0058】
図6と
図7に示す例では、上部工の鉄骨量と基礎工のコンクリート量がいずれも、実績建物情報データの傾向に沿っていることが分かり、予測結果の信憑性が保証される。
【0059】
材料数量予測装置10によれば、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データを装置に入力することにより、設計対象建物の材料数量の概算値を、設計段階において、設計者の経験値に左右されることなく高精度に予測することが可能になる。
【0060】
また、実施形態に係る材料数量予測方法は、以下の通りとなる。まず、材料数量の予測対象建物に関する、少なくとも延床面積を含む予測対象建物基本情報データを設定する(A工程)。
【0061】
次に、過去の実績における、実績建物に関する実績建物基本情報と、実績建物の材料数量とを含む、実績建物情報データを参照して、予測対象建物基本情報データから予測対象建物の材料数量を予測する(B工程)。
【0062】
上記一連の工程は、プログラムに記憶され、当該プログラムがコンピュータにインストール等され、コンピュータがプログラムを実行することにより、材料数量が予測されてもよい。
【0063】
また、機械学習により、複数の実績建物情報データを教示データとして学習処理を実行し、材料数量を予測する予測モデルを生成するとともに、実績建物情報データの蓄積に応じて予測モデルを更新してもよい(C工程)。このC工程を有する方法では、B工程において、予測モデルに予測対象建物基本情報データを入力することにより、材料数量データが出力される。
【0064】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0065】
10:材料数量予測装置
102:取得部
104:予測部
106:機械学習部
108:表示部
110:記憶部