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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173695
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20231130BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20231130BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086131
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】515185924
【氏名又は名称】株式会社プロギア
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】中原 紀彦
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH04
2C002CH06
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】反発性能の向上および高初速エリアの拡大を図ると共に、耐久性の向上を図る。
【解決手段】クラウン部側フランジ20の長さΔL1およびソール部側フランジ22の長さΔL2を2.0mm以上7.0mm以下とし、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1およびソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2を0.7mm以上1.4mm以下とした。また、互いに対向するヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差を0.3mm以下とし、互いに対向するヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、クラウン部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差が0.3mm以下とした。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を呈しフェース部側に開口が設けられたヘッド本体と、
前記開口に接合されるフェース部材とを備え、
前記フェース部材は、前記フェース部を構成する本体板部と、前記本体板部の上部からクラウン部側に延在し前記クラウン部の一部を構成し前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合されるクラウン部側フランジとを備えるゴルフクラブヘッドであって、
前記クラウン部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合される後縁とを有し、
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース基準断面としたとき、
前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までのクラウン面に沿った距離であるクラウン部側フランジの長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁と前記クラウン部側フランジの後縁との接合箇所に第1ビード部が形成され、前記第1ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のクラウン部の部分の肉厚dcと前記クラウン部側フランジの部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1との差が0.3mm以下である、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
中空構造を呈しフェース部側に開口が設けられたヘッド本体と、
前記開口に接合されるフェース部材とを備え、
前記フェース部材は、前記フェース部を構成する本体板部と、前記本体板部の下部からソール部側に延在し前記ソール部の一部を構成し前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合されるソール部側フランジとを備えるゴルフクラブヘッドであって、
前記ソール部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合される後縁とを有し、
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース基準断面としたとき、
前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までのソール面に沿った距離であるソール部側フランジの長さΔL2が2.0mm以上7.0mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるソール部側フランジの平均肉厚Δd2が0.7mm以上1.4mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のソール部の前縁と前記ソール部側フランジの後縁との接合箇所に第2ビード部が形成され、前記第2ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のソール部の部分の肉厚dsと前記ソール部側フランジの部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd2との差が0.3mm以下である、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
中空構造を呈しフェース部側に開口が設けられたヘッド本体と、
前記開口に接合されるフェース部材とを備え、
前記フェース部材は、前記フェース部を構成する本体板部と、前記本体板部の上部からクラウン部側に延在し前記クラウン部の一部を構成し前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合されるクラウン部側フランジと、前記本体板部の下部からソール部側に延在し前記ソール部の一部を構成し前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合されるソール部側フランジとを備えるゴルフクラブヘッドであって、
前記クラウン部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合される後縁とを有し、
前記ソール部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合される後縁とを有し、
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース基準断面としたとき、
前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までのクラウン面に沿った距離であるクラウン部側フランジの長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁と前記クラウン部側フランジの後縁との接合箇所に第1ビード部が形成され、前記第1ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のクラウン部の部分の肉厚dcと前記クラウン部側フランジの部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1との差が0.3mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までのソール面に沿った距離であるソール部側フランジの長さΔL2が2.0mm以上7.0mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるソール部側フランジの平均肉厚Δd2が0.7mm以上1.4mm以下であり、
前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のソール部の前縁と前記ソール部側フランジの後縁との接合箇所に第2ビード部が形成され、前記第2ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のソール部の部分の肉厚dsと前記ソール部側フランジの部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd2との差が0.3mm以下である、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース基準断面において、前記本体板部のうち前記クラウン部側フランジの前縁との境目から前記フェース部の中央に向かって5mm以内の範囲における肉厚の最小値を前記フェース部のクラウン部寄りの端部の肉厚D1としたとき、
前記フェース部のクラウン部寄りの端部の肉厚D1が1.0mm以上2.5mm以下であり、
前記フェース部のクラウン部寄りの端部の肉厚D1が前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1よりも大である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記基準状態で、前記ゴルフクラブヘッドを前記フェース面の前方から見たとき前記水平面に対して22.23mm上方に位置するヒール側の箇所から最もトウ側に位置する端部までの距離を前記水平面に投影した寸法をトウヒール方向のヘッド長さHLとしたとき、
前記基準状態で、前記ゴルフクラブヘッドを平面視したときに、前記クラウン部側フランジの長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、かつ、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、かつ、前記フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1が1.0mm以上2.5mm以下を満たす前記ゴルフクラブヘッドの部分がトウヒール方向にわたって延在しており、この部分は、前記フェース中心基準断面と交差すると共に、そのトウヒール方向の長さが前記ヘッド長さHLの20%以上である、
ことを特徴とする請求項4記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース中心基準断面において、前記フェース面の上端とクラウン面の前端との境界点を第1境界点K1とし、
前記フェース中心基準断面において、前記第1境界点K1を含み前記水平面と平行する平面上で前記第1境界点K1からフェースバック方向に5mm離れた点を通り前記水平面と直交する直線と前記クラウン面との交点を第1交点P1とし、
前記第1境界点K1と前記第1交点P1とを結ぶ直線が前記水平面に対してなす角度をクラウン部側フランジ角度θ1としたとき、
前記クラウン部側フランジ角度θ1が15°以上50°以下であり、
前記フェース中心基準断面において、前記第1交点P1から前記フェースバック方向に離れた前記ヘッド本体のクラウン面の箇所にクラウン部側変曲点H1が形成され、
前記基準状態で、前記フェース中心基準断面において、前記変曲点Hを含み前記水平面と平行する平面上で前記クラウン部側変曲点H1からフェースバック方向に5mm離れた点を通り前記水平面と直交する直線と、前記クラウン面との交点を第2交点P2とし、
前記クラウン部側変曲点H1と前記第2交点P2とを結ぶ直線と前記水平面とがなす角度をクラウン部側変曲点角度θ2としたとき、
前記クラウン部側変曲点角度θ2は0°以上15°以下であり、
前記第1境界点K1と前記クラウン部側変曲点H1とを結ぶ直線を前記水平面に投影した長さD10が4mm以上20mm以下である、
ことを特徴とする請求項5記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記フェース基準断面において、前記本体板部のうち前記ソール部側フランジの前縁との境目から前記フェース部の中央に向かって5mm以内の範囲における肉厚の最小値を前記フェース部のソール部寄りの端部の肉厚D2としたとき、
前記フェース部のソール部寄りの端部の肉厚D2が1.0mm以上2.5mm以下であり、
前記フェース部のソール部寄りの端部の肉厚D2が前記ソール部側フランジの平均肉厚Δd2よりも大である、
ことを特徴とする請求項1または3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記基準状態で、前記ゴルフクラブヘッドを前記フェース面の前方から見たとき前記水平面に対して22.23mm上方に位置するヒール側の箇所から最もトウ側に位置する端部までの距離を前記水平面に投影した寸法をトウヒール方向のヘッド長さHLとしたとき、
前記基準状態で、前記ゴルフクラブヘッドを平面視したときに、前記ソール部側フランジの長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、かつ、前記ソール部側フランジの平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、かつ、前記フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2が1.0mm以上2.5mm以下を満たす前記ゴルフクラブヘッドの部分がトウヒール方向にわたって延在しており、この部分は、前記フェース中心基準断面と交差すると共に、そのトウヒール方向の長さが前記ヘッド長さHLの20%以上である、
ことを特徴とする請求項7記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記フェース中心基準断面において、前記フェース面の下端とソール面の前端との境界点を第2境界点K2とし、
前記フェース中心基準断面において、前記第2境界点K2を含み前記水平面と平行する平面上で前記第2境界点K2からフェースバック方向に5mm離れた点を通り前記水平面と直交する直線と前記ソール面との交点を第3交点P3とし、
前記第2境界点K2と前記第3交点P3とを結ぶ直線が前記水平面に対してなす角度をソール部側フランジ角度φ1としたとき、
前記ソール部側フランジ角度φ1が30°以上70°以下であり、
前記フェース中心基準断面において、前記第3交点P3から前記フェースバック方向に離れた前記ヘッド本体のソール面の箇所にソール部側変曲点H2が形成され、
前記基準状態で、前記フェース中心基準断面において、前記ソール部側変曲点H2を含み前記水平面と平行する平面上で前記ソール部側変曲点H2からフェースバック方向に5mm離れた点を通り前記水平面と直交する直線と、前記ソール面との交点を第4交点P4とし、
前記ソール部側変曲点H2と前記第4交点P4とを結ぶ直線と前記水平面とがなす角度をソール部側変曲点角度φ2としたとき、
前記ソール部側変曲点角度φ2は1°以上15°以下であり、
前記第2境界点K2と前記ソール部側変曲点H2とを結ぶ直線を前記水平面に投影した長さD12が4mm以上20mm以下である、
ことを特徴とする請求項8記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドでゴルフボールを打撃した際のゴルフボールの初速を向上させ、飛距離を改善するためには、フェース部のたわみ量(変形量)を如何にして確保するかが重要であり、またスイートエリアを如何にして拡大するかが重要である。
ゴルフクラブヘッドの構造として、フェース部に開口が設けられたヘッド本体と、開口に溶接で接合されたフェース部材とを備えるものがある。
このような構造では、フェース部に、フェース部材の全周に沿って剛性が高くなるビード部が形成されることからフェース部のたわみ量を確保し、スイートエリアを拡大する上で不利がある。
一方、フェース部材の縁部からクラウン部の一部あるいはソール部の一部を構成するフランジをフェースバック方向に延在して設けるとともに、このようなフランジを有するフェース部材(カップフェース)をヘッド本体の開口に溶接により接合する、いわゆるカップフェース構造のゴルフクラブヘッドが提案されている(特許文献1参照)。
このようなカップフェース構造のゴルフクラブによれば、ビード部の一部がクラウン部あるいはソール部に形成されると共に、フェース部に形成されるビード部の量が削減されることから、フェース部の剛性の抑制を図り、フェース部のたわみ量を確保して反発性能を向上させる共に高初速エリア(スイートエリア)を拡大する上で一定の効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-191938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、打球時にフェース部が変形することに加えてフランジも変形しやすくなることから、打球時におけるゴルフクラブヘッドの変形箇所が分散するため、フェース部のたわみ量を確保する上で、また、高初速エリアの拡大を図る上で改善の余地がある。また、打球時には、フェース部材のフランジとヘッド本体の接合箇所に荷重が集中しやすく、耐久性の向上を図る上で改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反発性能の向上および高初速エリアの拡大を図ると共に、耐久性の向上を図る上で有利なカップフェース構造のゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、中空構造を呈しフェース部側に開口が設けられたヘッド本体と、前記開口に接合されるフェース部材とを備え、前記フェース部材は、前記フェース部を構成する本体板部と、前記本体板部の上部からクラウン部側に延在し前記クラウン部の一部を構成し前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合されるクラウン部側フランジとを備えるゴルフクラブヘッドであって、前記クラウン部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合される後縁とを有し、前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース基準断面としたとき、前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までのクラウン面に沿った距離であるクラウン部側フランジの長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁と前記クラウン部側フランジの後縁との接合箇所に第1ビード部が形成され、前記第1ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のクラウン部の部分の肉厚dcと前記クラウン部側フランジの部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1との差が0.3mm以下であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、中空構造を呈しフェース部側に開口が設けられたヘッド本体と、前記開口に接合されるフェース部材とを備え、前記フェース部材は、前記フェース部を構成する本体板部と、前記本体板部の下部からソール部側に延在し前記ソール部の一部を構成し前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合されるソール部側フランジとを備えるゴルフクラブヘッドであって、前記ソール部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合される後縁とを有し、前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース基準断面としたとき、前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までのソール面に沿った距離であるソール部側フランジの長さΔL2が2.0mm以上7.0mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるソール部側フランジの平均肉厚Δd2が0.7mm以上1.4mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のソール部の前縁と前記ソール部側フランジの後縁との接合箇所に第2ビード部が形成され、前記第2ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のソール部の部分の肉厚dsと前記ソール部側フランジの部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd2との差が0.3mm以下であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は中空構造を呈しフェース部側に開口が設けられたヘッド本体と、前記開口に接合されるフェース部材とを備え、前記フェース部材は、前記フェース部を構成する本体板部と、前記本体板部の上部からクラウン部側に延在し前記クラウン部の一部を構成し前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合されるクラウン部側フランジと、前記本体板部の下部からソール部側に延在し前記ソール部の一部を構成し前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合されるソール部側フランジとを備えるゴルフクラブヘッドであって、前記クラウン部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁に接合される後縁とを有し、前記ソール部側フランジは、前記フェース部に接続される前縁と、前記ヘッド本体のソール部の前縁に接合される後縁とを有し、前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース基準断面としたとき、前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までのクラウン面に沿った距離であるクラウン部側フランジの長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記クラウン部側フランジの前縁から前記クラウン部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のクラウン部の前縁と前記クラウン部側フランジの後縁との接合箇所に第1ビード部が形成され、前記第1ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のクラウン部の部分の肉厚dcと前記クラウン部側フランジの部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1との差が0.3mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までのソール面に沿った距離であるソール部側フランジの長さΔL2が2.0mm以上7.0mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記ソール部側フランジの前縁から前記ソール部側フランジの後縁までの肉厚の加重平均値であるソール部側フランジの平均肉厚Δd2が0.7mm以上1.4mm以下であり、前記フェース基準断面において、前記ヘッド本体のソール部の前縁と前記ソール部側フランジの後縁との接合箇所に第2ビード部が形成され、前記第2ビード部を挟んで互いに対向する前記ヘッド本体のソール部の部分の肉厚dsと前記ソール部側フランジの部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、前記クラウン部側フランジの平均肉厚Δd2との差が0.3mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、クラウン部側フランジの長さΔL1およびソール部側フランジの長さΔL2の少なくとも一方を2.0mm以上7.0mm以下とし、クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1およびソール部側フランジの平均肉厚Δd2の少なくとも一方を0.7mm以上1.4mm以下とした。
そのため、クラウン部側フランジまたはソール部側フランジの変形量を適度に確保できるため、反発性能を確保しつつ高初速エリアの拡大を図る上で有利となり、また、応力が適度に分散するため耐久強度を確保する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、第1ビード部を挟んで互いに対向するヘッド本体のクラウン部の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジの部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジの平均肉厚Δd1との差、および、第2ビード部を挟んで互いに対向するヘッド本体のソール部の部分の肉厚dsとソール部側フランジの部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2との差の少なくとも一方を0.3mm以下としたので、応力集中を緩和できるため、耐久強度を確保する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドをフェース面の前方から見た正面図である。
図2図1のA矢視図である。
図3図1のB矢視図である。。
図4図1のC-C線断面図である。
図5】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第1の説明図である。
図6】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第2の説明図である。
図7】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第3の説明図である。
図8】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第4の説明図である。
図9】ゴルフクラブヘッドの重心点G0とフェース面上重心点FGとの関係を示すゴルフクラブヘッドの断面図である。
図10】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
図11】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの断面図である。
図12】フェース面の中心点Pcの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
図13】クラウン部側フランジの拡大断面図である。
図14】ソール部側フランジの拡大断面図である。
図15】クラウン部側フランジおよびヘッド本体のクラウン部の断面図であり、各部の規定を説明する説明図である。
図16】第1境界点K1の規定を示す説明図である。
図17】ソール部側フランジおよびヘッド本体のソール部の断面図であり、各部の規定を説明する説明図である。
図18】第2境界点K2の規定を示す説明図である。
図19】実施の形態における条件1における実験例の評価結果を示す図である。
図20】実施の形態における条件2における実験例の評価結果を示す図である。
図21】実施の形態における条件3における実験例の評価結果を示す図である。
図22】実施の形態における条件4における実験例の評価結果を示す図である。
図23】実施の形態における条件5における実験例の評価結果を示す図である。
図24】実施の形態における条件6、7における実験例の評価結果を示す図である。
図25】実施の形態における条件8における実験例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について説明する。
図1図3に示すように、本実施の形態において、ゴルフクラブヘッド10は、中空のウッド型ゴルフクラブヘッド(ドライバー)であり、カップフェース構造で構成されている。
すなわち、ゴルフクラブヘッド10は、ヘッド本体12とフェース部材(カップフェース)14とを含んで構成されている。
図4に示すように、ヘッド本体12は、中空構造を呈しフェース部24側に開口16が設けられている。
フェース部材14は、フェース部24を構成する本体板部18と、本体板部18の周囲全周からフェースバック32方向に延在するフランジとを備えている。
そして、フェース部材14がヘッド本体12の開口16を閉塞した状態で、フェース部材14のフランジの後縁がヘッド本体12の開口16の周囲の部分に溶接により接合され、これによりゴルフクラブヘッド10が構成される。
したがって、フェース部材14によりフェース部24の全部が構成され、フェース部材14のフランジによってクラウン部26、ソール部28、サイド部30のフェース部24寄りの部分が構成されることになる。
【0009】
詳細に説明すると、フェース部材14のフランジは、クラウン部側フランジ20と、ソール部側フランジ22と、不図示のトウ側フランジと、不図示のヒール側フランジとを含んで構成されている。
クラウン部側フランジ20は、本体板部18の上部からトウヒール方向にわたってフェースバック32方向に延在し、後述するクラウン部26のフェース部24寄りの部分を構成する。
ソール部側フランジ22は、本体板部18の下部からトウヒール方向にわたってフェースバック32方向に延在し、後述するソール部28の一部を構成する。
トウ側フランジは、本体板部18のトウ36側から上下方向にわたってフェースバック32方向に延在し後述するサイド部30のトウ36側の一部を構成する。
ヒール側フランジは、本体板部18のヒール38側から上下方向にわたってフェースバック32方向に延在し後述するサイド部30のヒール38側の一部を構成する。
なお、本実施の形態では、本体板部18の周囲全周からフェースバック方向に延在するフランジが設けられている場合について説明するが、本発明は、クラウン部側フランジ20およびソール部側フランジ22の少なくも一方または双方が設けられていればよい。したがって、フェース部材14がトウ側フランジおよびヒール側フランジを備えていても備えていなくも本発明は適用可能である。
言い換えると、フェース部材14に、クラウン部側フランジ20およびソール部側フランジ22のみが設けられたカップフェース構造、クラウン部側フランジ20のみが設けられたカップフェース構造、ソール部側フランジ22のみが設けられたカップフェース構造にも本発明は適用可能である。
【0010】
ヘッド本体12は、主に金属材料により構成され、その金属材料としては、例えば純チタン、チタン合金(6Al-4V、8Al-1V-1Mo)、ステンレス鋼、マルエージング鋼、又はアルミニウム合金等の1種又は2種以上が用いられる。
フェース部材14は、金属材料により構成され、その金属材料としては、例えば6Al-4Vチタン合金などが用いられる。
【0011】
図1図3に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、フェース部24と、クラウン部26と、ソール部28と、サイド部30とを備えている。
フェース部24は、上下の高さを有して左右に延在している。
クラウン部26は、フェース部24よりも小さい肉厚でフェース部24の上部から後方に延在している。
ソール部28は、フェース部24の下部から後方に延在している。
サイド部30は、クラウン部26とソール部28の間でフェース部24のトウ側縁とヒール側縁との間をフェースバック32を通って延在している。
図4に示すように、ゴルフクラブヘッド10は、それらフェース部24とクラウン部26とソール部28とサイド部30とで囲まれた内部が中空部34とされた中空構造を呈している。
フェース部24の外側に露出する表面がゴルフボールを打撃するフェース面24Aであり、フェース部24の中空部34に面した裏面がフェース裏面24Bとなっている。
クラウン部26の外側に露出する表面がクラウン面26Aであり、クラウン部26の中空部34に面した裏面がクラウン裏面26Bとなっている。
図1図3に示すように、クラウン部26には、フェース面24A側でかつヒール38寄りの位置にシャフトに接続するホーゼル40が設けられ、ホーゼル40にシャフト100が接続されることでゴルフクラブが構成される。
図4に示すように、ソール部28の外側に露出する表面がソール面28Aであり、ソール部28の中空部34に面した裏面がソール裏面28Bとなっている。
図2図3において、符号42はリーディングエッジを示す。
【0012】
なお、図4において、符号44A、44Bは、フェース部材14とヘッド本体12とが接合される箇所に沿って形成された溶接による第1ビード部、第2ビード部を示す。
ゴルフクラブヘッド10の外面に位置する第1ビード部44A、第2ビード部44Bの部分は研磨によって除去されるが、ゴルフクラブヘッド10の中空部34に面した内面には、中空部34側に突出する第1ビード部44A、第2ビード部44Bが存在する。
【0013】
次に、ゴルフクラブヘッド10の各部の規定について詳細に説明するが、その前に、ゴルフクラブヘッド10の各部の規定を行なうために必要となるフェース面24Aの中心点Pc、フェース中心基準断面Pfc、フェース基準断面Pfについて説明する。
【0014】
(フェース面24Aの中心点Pcの規定)
まず、フェース面24Aの中心点Pcの規定方法について説明する。
フェース面24Aの中心点Pcは、フェース面24Aの幾何学的中心であり、中心点Pcの規定方法としては以下に例示する第1の規定方法、第2の規定方法を含め従来公知のさまざまな方法が採用可能である。
【0015】
[A]フェース面24Aの中心点Pcの第1の規定方法:
フェース面24Aと他のゴルフクラブヘッド10の部分との境目が明確である場合、言い換えると、フェース面24Aの周縁が稜線によって特定される場合における中心点Pcの規定方法である。この場合はフェース面24Aが明瞭に定義されることになる。
図5図8はフェース面24Aの中心点Pcの規定方法を示す説明図である。
【0016】
(1)まず、図5に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平面HP上にゴルフクラブヘッド10を載置する。このときのゴルフクラブヘッド10の状態を基準状態とする。なお、ライ角およびフェース角の設定値は、例えば製品カタログに記載された値である。
【0017】
(2)次にクラウン部26及びソール部28を結ぶ方向における仮中心点c0を求める。
すなわち、図5に示すように、トウ36およびヒール38を結ぶ水平面HPと平行な線(以下水平線という)の概略中心点と交差する垂線f0を引く。
この垂線f0とフェース面24Aの上縁とが交差するa0点と、垂線f0とフェース面24Aの下縁とが交差するb0点の中点を仮中心点c0とする。
【0018】
(3)次に図6に示すように仮中心点c0を通る水平線g0を引く。
(4)次に図7に示すように水平線g0とフェース面24Aのトウ36側の縁とが交差するd0点と、水平線g0とフェース面24Aのヒール38側の縁とが交差するe0点の中点を仮中心点c1とする。
【0019】
(5)次に図8に示すように仮中心点c1を通る垂線f1を引き、この垂線f1とフェース面24Aの上縁とが交差するa1点と、垂線f1とフェース面24Aの下縁とが交差するb1点の中点を仮中心点c2とする。
ここで、仮中心点c1とc2とが合致したならばその点をフェース面24Aの中心点Pcとして規定する。
仮中心点c1とc2が合致しなければ、(2)乃至(5)の手順を繰り返す。
なお、フェース面24Aは曲面を呈しているため、水平線g0の中点、垂線f0、f1の中点を求める場合の水平線g0の長さ、垂線f0、f1の長さはフェース面24Aの曲面に沿った長さを用いるものとする。
そして、フェースセンターラインCLは、中心点Pcを通りかつトウヒール方向と直交する方向に延在する直線で定義される。
【0020】
[B]フェース面24Aの中心点Pcの第2の規定方法:
次に、フェース面24Aの周縁と他のゴルフクラブヘッド10の部分との間が曲面で接続されておりフェース面24Aが明瞭に定義できない場合の中心点Pcの定義を説明する。
【0021】
図9に示すように、ゴルフクラブヘッド10は中空であり、符号G0はゴルフクラブヘッド10の重心点を示し、符号Lpは重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線であり、言い換えると、直線Lpは重心点G0を通るフェース面24Aの垂線である。
すなわち、ゴルフクラブヘッド10の重心点G0をフェース面24Aに投影した点がフェース面上重心点FGである。
ここで、図10に示すように、重心点G0とフェース面上重心点FGとを結ぶ直線Lpを含む多数の平面H1、H2、H3、…、Hnを考える。
【0022】
ゴルフクラブヘッド10を各平面H1、H2、H3、…、Hnに沿って破断したときの断面において、図11に示されるように、ゴルフクラブヘッド10の外面の曲率半径r0を測定する。
曲率半径r0の測定に際して、フェース面24A上のフェースライン、パンチマーク等が無いものとして扱う。
曲率半径r0は、フェース面24Aの中心点Pcから外方向(図11における上方向、下方向)に向かって連続的に測定される。
そして、測定において曲率半径r0が最初に所定の値以下となる部分をフェース面24Aの周縁を表わす輪郭線Iとして定義する。
所定の値は例えば200mmである。
多数の平面H1、H2、H3、…、Hnに基づいて決定された輪郭線Iによって囲まれた領域が、図10図11に示すように、フェース面24Aとして定義される。
【0023】
次に、図12に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上(水平面HP)にゴルフクラブヘッド10を載置する。
直線LTは、フェース面24Aのトウ36側点PTを通過して鉛直方向に延在する。
直線LHは、フェース面24Aのヒール38側点PHを通過して鉛直方向に延在する。
直線LCは、直線LTおよび直線LHと平行である。直線LCと直線LTとの距離は、直線LCと直線LHとの距離と等しい。
符号Puは、フェース面24Aの上側点を示し、符号Pdはフェース面24Aの下側点である。上側点Puおよび下側点Pdは、いずれも直線LCと輪郭線Iとの交点である。
中心点Pcは、上側点Puと下側点Pdとを結ぶ線分の中点で定義される。
【0024】
(フェース中心基準断面Pfc、フェース基準断面Pfの規定)
次に、フェース中心基準断面Pfcについて説明する。
図1図2に示すように、ゴルフクラブヘッド10を水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態とする。
基準状態において、フェース面24Aの中心点Pcを通る法線を含みかつ水平面HPと直交する平面Xでゴルフクラブヘッド10を破断した断面をフェース中心基準断面Pfcとする。
言い換えると、フェース中心基準断面Pfcは、基準状態において、フェースセンターラインCLを含みかつ水平面HPと直交する平面Xでゴルフクラブヘッド10を破断した断面である。
また、フェース中心基準断面Pfcと平行する任意の平面でゴルフクラブヘッド10を破断した断面をフェース基準断面Pfとする。したがって、フェース基準断面Pfはフェース中心基準断面Pfcを含む。
【0025】
次に、ゴルフクラブヘッド10の各部の規定について詳細に説明する。
図13に示すように、クラウン部側フランジ20は、フェース部24に接続される前縁2002と、ヘッド本体12のクラウン部26の前縁2602に接合される後縁2004とを有し、クラウン部26の一部を構成している。
図14に示すように、ソール部側フランジ22は、フェース部24に接続される前縁2202と、ヘッド本体12のソール部28の前縁に接合される後縁2204とを有し、ソール部28の一部を構成している。
ここで、クラウン部側フランジ20の前縁2002およびソール部側フランジ22の前縁2202は、言い換えると、クラウン部側フランジ20の前縁2002とフェース部24との境目、および、ソール部側フランジ22の前縁2202とフェース面24Aとの境目は、フェース部24の周縁に形成された稜線によって規定され、このような稜線が不明な場合は、前述した図10図11に示した輪郭線Iによって規定される。
【0026】
図13に示すように、フェース基準断面Pfにおいて、クラウン部側フランジ20の前縁2002からクラウン部側フランジ20の後縁2004までのクラウン面26Aに沿った距離であるクラウン部側フランジ20の長さΔL1は2.0mm以上7.0mm以下である。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1が上記範囲内であると、打球時におけるクラウン部側フランジ20の変形量を適度に確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保でき、また、応力が適度に分散するため耐久強度を確保する上で有利となる。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1が上記範囲を下回ると、打球時におけるクラウン部側フランジ20の変形量が過小となって反発性能が低下すると共に、フェース部24の高初速エリアが低下し、また、応力がクラウン部側フランジ20に集中し易いため耐久強度を確保する上で不利となる。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1が上記範囲を上回ると、打球時におけるクラウン部側フランジ20の変形量が過剰となることでフェース部24のたわみ量(変形量)が低下して反発性能が低下する不利がある。
【0027】
また、フェース基準断面Pfにおいて、クラウン部側フランジ20の前縁2002からクラウン部側フランジ20の後縁2004までの肉厚の加重平均値であるクラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1は0.7mm以上1.4mm以下である。
ここで、上記肉厚の加重平均値とは、クラウン部側フランジ20の前縁2002からクラウン部側フランジ20の後縁2004までのフェース基準断面Pfに沿った長さで重み付けされたクラウン部側フランジ20の肉厚として定義される。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1が上記範囲内であると、打球時におけるクラウン部側フランジ20の変形量を適度に確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保でき、また、応力が適度に分散するため耐久強度を確保する上で有利となる。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1が上記範囲を下回ると、打球時におけるクラウン部側フランジ20の変形量が過剰となることでフェース部24のたわみ量が低下して反発性能が低下する不利がある。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1が上記範囲を上回ると、打球時におけるクラウン部側フランジ20の変形量が過小となって反発性能が低下すると共に、フェース部24の高初速エリアが低下し、また、応力がクラウン部側フランジ20に集中し易いため耐久強度を確保する上で不利となる。
【0028】
図13に示すように、フェース基準断面Pfにおいて、ヘッド本体12のクラウン部26の前縁2602とクラウン部側フランジ20の後縁2004との接合箇所に第1ビード部44Aが形成されている。
そして、第1ビード部44Aを挟んで互いに対向するヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差が0.3mm以下である。
上記肉厚の差が0.3mm以下であると、クラウン部26の前縁2602とクラウン部側フランジ20の後縁2004との溶接箇所と、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との段差が小さいことから、クラウン部26の前縁2602とクラウン部側フランジ20の後縁2004との溶接を円滑に行え、量産での形状ばらつきも踏まえた上でも溶接部の肉厚差が少なくなり、また、応力集中を緩和できるため、耐久強度を確保する上で有利となる。
上記肉厚の差が0.3mmを上回ると、クラウン部26の前縁2602とクラウン部側フランジ20の後縁2004との溶接箇所と、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との段差が大きくなることから、クラウン部26の前縁2602とクラウン部側フランジ20の後縁2004との溶接箇所に空気が入って孔が空いたり、第1ビード部44Aが不均一になるなどの溶接不良が生じやすく、また、量産での形状ばらつきも踏まえた上でも溶接部の肉厚差が大きくなり、応力集中が生じやすくなるため、耐久強度を確保する上で不利となる。
【0029】
また、図14に示すように、フェース基準断面Pfにおいて、ソール部側フランジ22の前縁2202からソール部側フランジ22の後縁2204までのソール面28Aに沿った距離であるソール部側フランジ22の長さΔL2が2.0mm以上7.0mm以下である。
ソール部側フランジ22の長さΔL2が上記範囲内であると、打球時におけるソール部側フランジ22の変形量を適度に確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保でき、また、応力が適度に分散するため耐久強度を確保する上で有利となる。
ソール部側フランジ22の長さΔL2が上記範囲を下回ると、打球時におけるソール部側フランジ22の変形量が過小となって反発性能が低下すると共に、フェース部24の高初速エリアが低下し、また、応力がソール部側フランジ22に集中し易いため耐久強度を確保する上で不利となる。
ソール部側フランジ22の長さΔL2が上記範囲を上回ると、打球時におけるソール部側フランジ22の変形量が過剰となることでフェース部24のたわみ量(変形量)が低下して反発性能が低下する不利がある。
【0030】
また、フェース基準断面Pfにおいて、ソール部側フランジ22の前縁2202からソール部側フランジ22の後縁2204までの肉厚の加重平均値であるソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2が0.7mm以上1.4mm以下である。
ここで、上記肉厚の加重平均値とは、ソール部側フランジ22の前縁2202からソール部側フランジ22の後縁2204までのフェース基準断面Pfに沿った長さで重み付けされたソール部側フランジ22の肉厚として定義される。
ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2が上記範囲内であると、打球時におけるソール部側フランジ22の変形量を適度に確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保でき、また、応力が適度に分散するため耐久強度を確保する上で有利となる。
ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2が上記範囲を下回ると、打球時におけるソール部側フランジ22の変形量が過剰となることでフェース部24のたわみ量が低下して反発性能が低下する不利がある。
ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2が上記範囲を上回ると、打球時におけるソール部側フランジ22の変形量が過小となって反発性能が低下すると共に、フェース部24の高初速エリアが低下し、また、応力がソール部側フランジ22に集中し易いため耐久強度を確保する上で不利となる。
【0031】
図14に示すように、フェース基準断面Pfにおいて、ヘッド本体12のソール部28の前縁2802とソール部側フランジ22の後縁2204との接合箇所に第2ビード部44Bが形成されている。
第2ビード部44Bを挟んで互いに対向するヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、クラウン部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差が0.3mm以下である。
上記肉厚の差が0.3mm以下であると、ソール部28の前縁2802とソール部側フランジ22の後縁2204との溶接箇所と、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との段差が小さいことから、ソール部28の前縁2802とソール部側フランジ22の後縁2204との溶接を円滑に行え、量産での形状ばらつきも踏まえた上でも溶接部の肉厚差が少なくなり、また、応力集中を緩和できるため、耐久強度を確保する上で有利となる。
上記肉厚の差が0.3mmを上回ると、ソール部28の前縁2802とソール部側フランジ22の後縁2204との溶接箇所と、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との段差が大きくなることから、ソール部28の前縁2802とソール部側フランジ22の後縁2204との溶接箇所に空気が入って孔が空いたり、第2ビード部44Bが不均一になるなどの溶接不良が生じやすく、また、量産での形状ばらつきも踏まえた上でも溶接部の肉厚差が大きくなり、応力集中が生じやすくなるため、耐久強度を確保する上で不利となる。
【0032】
図13に示すように、フェース基準断面Pfにおいて、本体板部18のうちクラウン部側フランジ20の前縁2002との境目からフェース部24の中央(言い換えるとソール部28)に向かって5mm以内の範囲における肉厚の最小値をフェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1としたとき、フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1が1.0mm以上2.5mm以下であり、フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1がクラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1よりも大であるとした。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1が上記範囲内であると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保する上で有利となる。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1が上記範囲を下回ると、フェース部24の耐久強度を確保する効果が低下する。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1が上記範囲を上回ると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保する効果が低下し、フェース部24の高初速エリアを確保する効果が低下する。
また、フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1がクラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1よりも大であるとフェース部24の耐久強度を確保する上で有利となる。
また、フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1がクラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1以下であるとフェース部24の耐久強度を確保する効果が低下する。
なお、フェース基準断面Pfにおいて、本体板部18のうちクラウン部側フランジ20の前縁2002との境目からフェース面24Aの中心点Pcに向かって5mm以内の範囲における肉厚は、均一であっても、フェース面24Aの中心点Pcに向かうに連れて次第に小さくなっていてもよい。
【0033】
フェース基準断面Pfにおいて、本体板部18のうちソール部側フランジ22の前縁2202との境目からフェース部24の中央(言い換えるとクラウン部26)に向かって5mm以内の範囲における肉厚の最小値をフェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2としたとき、フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2が1.0mm以上2.5mm以下であり、フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2がソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2よりも大であるとした。
フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2が上記範囲内であると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保する上で有利となる。
フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2が上記範囲を下回ると、フェース部24の耐久強度を確保する効果が低下する。
フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2が上記範囲を上回ると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保する効果が低下し、フェース部24の高初速エリアを確保する効果が低下する。
また、フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2がソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2よりも大であるとフェース部24の耐久強度を確保する上で有利となる。
また、フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2がソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2以下であるとフェース部24の耐久強度を確保する効果が低下する。
なお、フェース基準断面Pfにおいて、本体板部18のうちソール部側フランジ22の前縁2202との境目からフェース面24Aの中心点Pcに向かって5mm以内の範囲における肉厚は、均一であっても、フェース面24Aの中心点Pcに向かうに連れて次第に小さくなっていてもよい。
【0034】
上記肉厚D1、D2についてさらに説明する。
図4に示すように、フェース中心基準断面Pfcにおいて、第1境界点K1と第2境界点K2とを結ぶ距離をフェース部高さHfとしたとき、フェース部高さHfが大きくなるほど、フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1およびフェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2を大きくすることが好ましい。
具体的な数値を例示すると以下の通りである。
フェース部高さHf/フェース部24の端部の肉厚D1、D2
40~45mm/1.0~1.5mm
45~50mm/1.5~2.0mm
50~55mm/2.0~2.5mm
これは、ペンデュラムテストプロトコル(R&AとUSGAテスト内規)に定められている上限を超えるスプリング効果を持ってはならないというルールを順守するためである。
すなわち、フェース部高さHfが大きくなるほど、打球時におけるフェース部24の変形量が大きいため、上記肉厚D1、D2を大きく確保することでフェース部24の過剰な変形量を抑制し、ルールを順守できる。また、フェース部高さHfが小さくなるほど、打球時におけるフェース部24の変形量が小さいため、上記肉厚D1、D2を抑制することでフェース部24の変形量を確保してもルールを順守できる。
【0035】
また、図1図3に示すように、ゴルフクラブヘッド10の基準状態で、ゴルフクラブヘッド10をフェース面24Aの前方から見たとき水平面に対して22.23mm上方に位置するヒール38側の箇所から最もトウ36側に位置する端部までの距離を水平面に投影した寸法をトウヒール方向のヘッド長さHLとする。
基準状態で、ゴルフクラブヘッド10を平面視したときに、クラウン部側フランジ20の長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、かつ、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、かつ、フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1が1.0mm以上2.5mm以下を満たすゴルフクラブヘッド10の部分がトウヒール方向にわたって延在しており、この部分は、フェース中心基準断面Pfcと交差すると共に、そのトウヒール方向の長さがヘッド長さHLの20%以上であるものとした。
このようにすると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保する上でより有利となる。
また、上記部分がフェース中心基準断面Pfcと交差せず、あるいは、そのトウヒール方向の長さがヘッド長さHLの20%以上未満であると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保する効果が低下し、フェース部24の高初速エリアを確保する効果が低下する。
【0036】
また、基準状態で、ゴルフクラブヘッド10を平面視したときに、ソール部側フランジ22の長さΔL1が2.0mm以上7.0mm以下であり、かつ、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd1が0.7mm以上1.4mm以下であり、かつ、フェース部24のソール部28寄りの端部の肉厚D2が1.0mm以上2.5mm以下を満たすゴルフクラブヘッド10の部分がトウヒール方向にわたって延在しており、この部分は、フェース中心基準断面Pfcと交差すると共に、そのトウヒール方向の長さがヘッド長さHLの20%以上であるものとした。
このようにすると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保できると共に、フェース部24の高初速エリアを確保する上でより有利となる。
また、上記部分がフェース中心基準断面Pfcと交差せず、あるいは、そのトウヒール方向の長さがヘッド長さHLの20%以上未満であると、打球時におけるフェース部24の変形量を確保して反発性能を確保する効果が低下し、フェース部24の高初速エリアを確保する効果が低下する。
【0037】
(クラウン部側フランジ20に関する規定)
次に、フェース部材14のクラウン部側フランジ20に関する規定について詳細に説明する。
【0038】
(第1境界点K1)
図15に示すように、第1境界点K1は、フェース中心基準断面Pfcにおいて、フェース面24Aの上端とクラウン面26Aの前端との境界点をいう。
本実施の形態では、第1境界点K1を以下の方法で規定する。
図16に示すように、フェース中心基準断面Pfcにおいて、中心点Pcからクラウン部26に向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率半径Rを測定するとともに、この曲率半径の測定を3つの測定点pを1mmずつクラウン部26に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率半径R(R=R1、R2、R3、……Rn-1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。
測定された曲率半径Rnをその直前に測定された曲率半径Rn-1で除した値が0.3未満となったときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pをフェース側第1規定点A1とする。
フェース側第1規定点A1よりも1mm中心点Pc寄りの測定点pをフェース側第2規定点A2とする。
フェース側第2規定点A2よりも1mm中心点Pc寄りの測定点pをフェース側第3規定点A3とする。
フェース側第1規定点A1、フェース側第2規定点A2、フェース側第3規定点A3を通る円弧をクラウン部26側に延長した曲線(円弧)を第1規定線αとする。
なお、第1規定線αを規定する複数の測定点pのうち、フェース側第2規定点A2から最もフェース面24Aの中心点Pcに近い測定点pまでの第1規定線αに沿った距離は約3mm~15mmである。実際の中空ゴルフクラブヘッド10では、フェース中心基準断面Pfcにおいて、上記約3mm~15mmの範囲でフェース面24Aの曲率半径Rはほぼ一定である。
【0039】
フェース中心基準断面Pfcにおいて、クラウン部26からフェース部24に向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率半径Rを測定するとともに、この曲率半径の測定を3つの測定点pを1mmずつフェース部24に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率半径R(R=R1、R2、R3、……Rn-1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。
なお、クラウン部26の測定点pの始点は以下のように定めることが好ましい。
すなわち、フェース中心基準断面Pfcにおいて、フェース側第1規定点A1を含み水平面HPと平行する平面上でフェース側第1規定点A1からフェースバック32方向に30mm離れた点を通り水平面HPと直交する直線L10とクラウン面26Aとが交差する交点P10の箇所を始点とするか、あるいは、交点P10よりもフェース部24寄りの箇所をクラウン部26の測定点pの始点とする。
【0040】
測定された曲率半径Rnをその直前に測定された曲率半径Rn-1で除した値が0.4未満となったときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pをクラウン側第1規定点B1とする。
クラウン側第1規定点B1よりも1mmフェースバック32寄りの測定点pをクラウン側第2規定点B2とする。
クラウン側第2規定点B2よりも1mmフェースバック32寄りの測定点pをクラウン側第3規定点B3とする。
クラウン側第1規定点B1、クラウン側第2規定点B2、クラウン側第3規定点B3を通る円弧をフェース部24側に延長した曲線(円弧)を第2規定線βとする。
なお、第2規定線βを規定する複数の測定点pのうち、クラウン側第2規定点B2から最もフェース面24Aの中心点Pcから遠い測定点pまでの第2規定線βに沿った距離は約3~15mmである。実際の中空ゴルフクラブヘッド10では、フェース中心基準断面Pfcにおいて、上記約3mmから15mmの範囲でクラウン面26Aの曲率半径はほぼ一定である。
【0041】
上記の第1規定線αと第2規定線βとの交点を第1境界点K1とする。
したがって、図16に示すように、第1境界点K1は、ゴルフクラブヘッド10の外面から外側に僅かに離れた箇所に位置している。
本実施の形態では、上述のような手順で第1境界点K1を規定したため、第1境界点K1を簡単かつ確実に定める上で有利となる。
第1境界点K1を規定するための各曲率半径を測定するためのデータ作製方法は、ゴルフクラブヘッド10をレーザースキャン等を用いて寸法測定を行うことにより、CADデータ(外面データ)を作成して、曲率半径を測定するなどすればよい。
【0042】
(クラウン部側フランジ角度θ1)
図15に示すように、基準状態で、フェース中心基準断面Pfcにおいて、第1境界点K1を含み水平面HPと平行する平面HP′上で第1境界点K1からフェースバック32方向に5mm離れた点を通り水平面HPと直交する直線L1とクラウン面26Aとの交点を第1交点P1とする。
クラウン部側フランジ角度θ1は、第1境界点K1と第1交点P1とを結ぶ直線L20が水平面HP(HP′)に対してなす角度である。
【0043】
(クラウン部側変曲点H1)
図15に示すように、クラウン部側変曲点H1は、フェース中心基準断面Pfcにおいて、第1交点P1からフェースバック32方向に離れたクラウン面26Aの箇所に形成されている。
なお、クラウン部側変曲点H1は、クラウン部側フランジ20の後縁2004とヘッド本体12とが接合される箇所(第1ビード部44A)よりもフェースバック32側に位置している。
曲率半径RAは、フェース中心基準断面Pfcにおけるクラウン部側変曲点H1の曲率半径であり、曲率半径RAは、第1交点P1とクラウン部側変曲点H1との間に位置するクラウン面26Aの曲率半径よりも小さい値である。
なお、クラウン部側変曲点H1の曲率半径RAが比較的小さい値の場合、クラウン部側変曲点H1がトウヒール方向に連続して形成されることで稜線がクラウン面26Aの箇所に視認可能に形成される。
また、クラウン部側変曲点H1の曲率半径RAが比較的大きい値の場合、クラウン部側変曲点H1がトウヒール方向に連続して形成されることで稜線は視認されないが、トウヒール方向に連続する緩やかな湾曲面がクラウン面26Aの箇所に形成される。
【0044】
なお、ゴルフクラブヘッド10の基準状態で、フェース基準断面Pfにおいて、クラウン部側変曲点H1を含み水平面HPと平行する平面上でクラウン部側変曲点H1からフェース部24方向に1mm離れた点を通り水平面HPと直交する直線と、クラウン面26Aとの交点の曲率半径をRCとする。
この場合、クラウン部側変曲点H1の曲率半径RA/曲率半径RCを0.5以下とすると、そうでない場合に比較して、クラウン面26Aに形成されるクラウン部側変曲点H1による稜線が視認しやすくなるため、構えやすさを確保し、ゴルクラブヘッド10で打ち出したボールの方向のばらつきを抑制する上で有利となる。
【0045】
(クラウン部側変曲点角度θ2)
図15に示すように、基準状態で、フェース中心基準断面Pfcにおいて、クラウン部側変曲点H1を含み水平面HPと平行する平面HP″上でクラウン部側変曲点H1からフェースバック32方向に5mm離れた点を通り水平面HPと直交する直線L2と、クラウン面26Aとの交点を第2交点P2とする。
クラウン部側変曲点角度θ2は、クラウン部側変曲点H1と第2交点P2とを結ぶ直線L22と水平面HP(HP″)とがなす角度である。
【0046】
本実施の形態では、クラウン部側フランジ角度θ1を15°以上50°以下とした。
クラウン部側フランジ角度θ1を上記範囲内とすると、打球時にクラウン部側変曲点H1(稜線)を含むクラウン部26の部分に応力が集中することでフェース部24寄りのクラウン部26の部分の変形量を大きく確保でき、これによりフェース部24のたわみ量が増加するため、反発係数を高くすると共に、打ち出し角を大きくできるので、初速および飛距離の向上を図る上で有利となる。
クラウン部側フランジ角度θ1が15°未満であると、打球時にクラウン部側変曲点H1(稜線)を含むクラウン部26の部分の変形量を確保する上で不利となる。
クラウン部側フランジ角度θ1が50°より大きいと、ゴルファーがゴルフクラブヘッド10としての形状に違和感を感じやすくなり、スイングしにくくなり、ヘッドスピードが低下し、飛距離を確保する上で不利となる。特にディープフェースになりすぎてアドレス時に違和感を感じやすくなる。また、クラウン部側フランジ角度θ1が50°より大きいと、第1境界点K1に対応するヘッド本体12の部分(フェース面24Aとクラウン面26Aとの境目)の強度が低下するため、ゴルフクラブヘッド10の耐久性を確保する効果が低下する。
なお、より好ましくはクラウン部側フランジ角度θ1が20°以上40°以下であり、さらに好ましくはクラウン部側フランジ角度θ1が25°以上35°以下である。
【0047】
また、本実施の形態では、クラウン部側変曲点角度θ2を0°以上15°以下とした。
クラウン部側変曲点角度θ2を上記範囲内とすると、稜線を視認しやすくなることから、構えやすさを確保し、ゴルクラブヘッド10で打ち出したボールの方向の安定を確保する上でより有利となる。
なおクラウン部側変曲点角度θ2は、フェース中心基準断面Pfcからのフェース基準断面Pfの距離によって厳密には僅かに変化し、言い換えると、一定の範囲内で変化する。
クラウン部側変曲点角度θ2が上記範囲を下回ると、稜線の視認性を確保する効果が低下する。
クラウン部側変曲点角度θ2が上記範囲を上回ると、稜線の前後でクラウン面26Aの高低差が大き過ぎるため、構えやすさを確保する効果が低下し、ゴルクラブヘッド10で打ち出したボールの方向の安定を確保する効果が低下する。
なお、より好ましくはクラウン部側変曲点角度θ2が2°以上10°以下である。
【0048】
また、本実施の形態では、第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1とを結ぶ直線を水平面HPに投影した長さD10を4mm以上20mm以下とした。
長さD10が上記範囲内であると、アドレス時にゴルクラブヘッド10を平面視した場合、稜線RLとフェース部24との距離がゴルファーに違和感を感じさせない範囲となっている。
【0049】
(ソール部側フランジ22に関する規定)
次に、フェース部材14のソール部側フランジ22に関する規定について詳細に説明する。
【0050】
(第2境界点K2)
図17に示すように、第2境界点K2は、フェース中心基準断面Pfcにおいて、フェース面24Aの下端とソール面28Aの前端との境界点をいう。
本実施の形態では、第2境界点K2を以下の方法で規定する。
図20に示すように、フェース中心基準断面Pfcにおいて、中心点Pcからソール部28に向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率半径Rを測定するとともに、この曲率半径の測定を3つの測定点pを1mmずつソール部28に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率半径R(R=R1、R2、R3、……Rn-1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。
測定された曲率半径Rnをその直前に測定された曲率半径Rn-1で除した値が0.3未満となったときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pを下部フェース側第1規定点A1とする。
下部フェース側第1規定点A1よりも1mm中心点Pc寄りの測定点pを下部フェース側第2規定点A2とする。
下部フェース側第2規定点A2よりも1mm中心点Pc寄りの測定点pを下部フェース側第3規定点A3とする。
下部フェース側第1規定点A1、下部フェース側第2規定点A2、下部フェース側第3規定点A3を通る円弧をソール部28側に延長した曲線(円弧)を第1規定線αとする。
なお、第1規定線αを規定する複数の測定点pのうち、下部フェース側第2規定点A2から最もフェース面24Aの中心点Pcに近い測定点pまでの第1規定線αに沿った距離は約3mm~15mmである。実際の中空ゴルフクラブヘッド10では、フェース中心基準断面Pfcにおいて、上記約3mm~15mmの範囲でフェース面24Aの曲率半径Rはほぼ一定である。
【0051】
フェース中心基準断面Pfcにおいて、ソール部28からフェース部24に向かって1mm間隔で3つの測定点pを規定し3つの測定点pを通る円弧の曲率半径Rを測定するとともに、この曲率半径の測定を3つの測定点pを1mmずつフェース部24に近づく方向に向かって変位させつつ行なう操作を繰り返すことで曲率半径R(R=R1、R2、R3、……Rn-1、Rn、Rn+1、……)を順次測定する。
なお、ソール部28の測定点pの始点は以下のように定めることが好ましい。
すなわち、フェース中心基準断面Pfcにおいて、下部フェース側第1規定点A1を含み水平面HPと平行する平面上で下部フェース側第1規定点A1からフェースバック32方向に30mm離れた点を通り水平面HPと直交する直線L10とソール面28Aとが交差する交点P10の箇所を始点とするか、あるいは、交点P10よりもフェース部24寄りの箇所をソール部28の測定点pの始点とする。
【0052】
測定された曲率半径Rnをその直前に測定された曲率半径Rn-1で除した値が0.4未満となったときに、3つの測定点pのうちの中間の測定点pをソール側第1規定点B1とする。
ソール側第1規定点B1よりも1mmフェースバック32寄りの測定点pをソール側第2規定点B2とする。
ソール側第2規定点B2よりも1mmフェースバック32寄りの測定点pをソール側第3規定点B3とする。
ソール側第1規定点B1、ソール側第2規定点B2、ソール側第3規定点B3を通る円弧をフェース部24側に延長した曲線(円弧)を第2規定線βとする。
なお、第2規定線βを規定する複数の測定点pのうち、ソール側第2規定点B2から最もフェース面24Aの中心点Pcから遠い測定点pまでの第2規定線βに沿った距離は約3~15mmである。実際の中空ゴルフクラブヘッド10では、フェース中心基準断面Pfcにおいて、上記約3mmから15mmの範囲でソール面28Aの曲率半径はほぼ一定である。
【0053】
上記の第1規定線αと第2規定線βとの交点を第2境界点K2とする。
したがって、図20に示すように、第2境界点K2は、ゴルフクラブヘッド10の外面から外側に僅かに離れた箇所に位置している。
【0054】
(ソール部側フランジ角度φ1)
図17に示すように、基準状態で、フェース中心基準断面Pfcにおいて、第2境界点K2を含み水平面HPと平行する平面HP′上で第2境界点K2からフェースバック32方向に5mm離れた点を通り水平面HP(HP′)と直交する直線L3とソール面28Aとの交点を第3交点P3とする。
ソール部側フランジ角度φ1は、第2境界点K2と第3交点P3とを結ぶ直線L20が水平面HP(HP′)に対してなす角度である。
【0055】
(ソール部側変曲点H2)
図17に示すように、ソール部側変曲点H2は、フェース中心基準断面Pfcにおいて、第3交点P3からフェースバック32方向に離れたソール面28Aの箇所に形成されている。
なお、ソール部側変曲点H2は、ソール部側フランジ22の後縁2204とヘッド本体12とが接合される箇所(第2ビード部44B)よりもフェースバック32側に位置している。
曲率半径RBは、フェース中心基準断面Pfcにおけるソール部側変曲点H2の曲率半径であり、曲率半径RBは、第3交点P3とソール部側変曲点H2との間に位置するソール面28Aの曲率半径よりも小さい値である。
なお、ソール部側変曲点H2の曲率半径RBが比較的小さい値の場合、ソール部側変曲点H2がトウヒール方向に連続して形成されることで稜線がソール面28Aの箇所に視認可能に形成される。
また、ソール部側変曲点H2の曲率半径RBが比較的大きい値の場合、ソール部側変曲点H2がトウヒール方向に連続して形成されることで稜線は視認されないが、トウヒール方向に連続する緩やかな湾曲面がソール面28Aの箇所に形成される。
【0056】
なお、ゴルフクラブヘッド10の基準状態で、フェース基準断面Pfにおいて、ソール部側変曲点H2を含み水平面HPと平行する平面上でソール部側変曲点H2からフェース部24方向に1mm離れた点を通り水平面HPと直交する直線とソール面28Aとの交点の曲率半径を曲率半径RDとする。
この場合、ソール部側変曲点H2の曲率半径RB/曲率半径RDを0.8以下とすると、そうでない場合に比較して、打球時においてソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分に応力が集中しやすく、ソール部28の部分の変形量を確保する上で有利となり、これによりフェース部24のたわみ量が増加するため、反発係数を高くすることができるので、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る上で有利となる。
【0057】
(ソール部側変曲点角度φ2)
図17に示すように、基準状態で、フェース中心基準断面Pfcにおいて、ソール部側変曲点H2を含み水平面HPと平行する平面HP″上でソール部側変曲点H2からフェースバック32方向に5mm離れた点を通り水平面HP(HP″)と直交する直線L4とソール面28Aとの交点を第4交点P4としたとき、ソール部側変曲点H2と第4交点P4を結ぶ直線L22と水平面HP(HP″)とがなす角度をソール部側変曲点角度φ2とする。
なお、ソール部側変曲点角度φ2の正負は以下の通りとする。
直線L22がフェースバック32に至るにつれて平面HP″から下方に離間する傾斜となる場合にソール部側変曲点角度φ2を正の値とする。
直線L22がフェースバック32に至るにつれて平面HP″から上方に離間する傾斜となる場合にソール部側変曲点角度φ2を負の値とする。
【0058】
本実施の形態では、ソール部側フランジ角度φ1を30°以上70°以下とし、フェース中心基準断面Pfcにおいて、第3交点P3からフェースバック32方向に離れたソール面28Aの箇所にソール部側変曲点H2が形成され、ソール部側変曲点H2の曲率半径RBを第3交点P3とソール部側変曲点H2との間に位置するソール面28Aの曲率半径よりも小さい値とした。
ソール部側フランジ角度φ1を上記範囲内とすることによって、打球時にソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分に応力が集中することでフェース部24寄りのソール部28の部分の変形量を大きく確保でき、これによりフェース部24のたわみ量が増加するため、反発係数を高くすることができるので、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る上で有利となる。
ソール部側フランジ角度φ1が上記範囲を下回ると、打球時にソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分の変形量を確保する上で不利となり、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る上で不利となる。
ソール部側フランジ角度φ1が上記範囲を上回ると、ゴルフクラブヘッド10を正面視した場合にフェース部24寄りのソール部28の部分の面積が拡大することでフェース面24Aの面積が相対的に縮小するため、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る上で不利となる。
また、ソール部側フランジ角度φ1を70°より大きく確保し、かつ、フェース面24Aの面積を大きく確保するようにヘッド本体12を構成すると、ゴルフクラブヘッド10を正面視した場合のゴルフクラブヘッド10の上下幅が広くなる、いわゆるディープフェースとなり、ボールを打ちにくくなることから初速が低下する不利がある。
さらに、フェース部24とソール部28の境界部が角張るので、耐久強度が低下する不利があり、打球時におけるフェース部24寄りのソール部28の部分の変形量を確保する上で不利となり高初速エリアも狭くなる不利がある。
また、ソール部側フランジ角度φ1が70°より大きいと、第2境界点K2に対応するヘッド本体12の部分(フェース面24Aとソール面28Aとの境目)の強度が低下するため、ゴルフクラブヘッド10の耐久性が低下する。
なお、より好ましくはソール部側フランジ角度φ1が40°以上60°以下であり、さらに好ましくはソール部側フランジ角度φ1が45°以上55°以下である。
【0059】
また、本実施の形態では、図17に示すように、基準状態で、第2境界点K2とソール部側変曲点H2とを結ぶ直線を水平面に投影した長さD12を4mm以上20mm以下とした。
長さD12が上記範囲内であると、打球時にソール部側変曲点H2よりも前方に位置するソール部28の部分に応力が集中することでフェース部24寄りのソール部28の部分の変形量を大きく確保でき、これによりフェース部24のたわみ量が増加するため、反発係数を高くすることができるので、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る上で有利となる。
上記長さD12が上記範囲を下回ると、第2境界点K2からソール部側変曲点H2が近すぎるため、ソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分の変形量を確保する上で不利となる。
長さD2が上記範囲を上回ると、第2境界点K2からソール部側変曲点H2が離れすぎているため、打球時にソール部側変曲点H2よりも前方に位置する部分に加わる応力が低下しまうことから、ソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分の変形量を確保する上で不利となる。
なお、より好ましくは、長さD12は5mm以上15mm以下である。
【0060】
また、本実施の形態では、ソール部側変曲点角度φ2を1°以上15°以下とした。
ソール部側変曲点角度φ2が上記範囲内であると、打球時にソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分に応力が適度に集中することでフェース部24寄りのソール部28の部分の変形量を大きく確保でき、これによりフェース部24のたわみ量が増加するため、反発係数を高くすることができるので、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る上で有利となる。
ソール部側変曲点角度φ2が上記範囲を下回ると、打球時にソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分の変形量を確保する上で不利となる。
ソール部側変曲点角度φ2が上記範囲を上回ると、ヘッド本体12の部分(打球時にソール部側変曲点H2を含むソール部28の部分)の強度が低下するため、ゴルフクラブヘッド10の耐久性を確保する効果が低下する。
【0061】
(ソール部側フランジ角度φ1とクラウン部側フランジ角θ1の関係)
また、一般的に、ソール面28Aとフェース面24Aとがなす角度である接続角度は鋭角であり、クラウン面16Aとフェース面24Aとがなす接続角度は鈍角である。
そのため、打球時において、ソール部18寄りのフェース部14の箇所に比較してクラウン部16寄りのフェース部14の箇所の方が変形しやすい。
本実施の形態では、ソール部側フランジ角度φ1はクラウン部側フランジ角θ1よりも大とした。
このようにソール部側フランジ角度φ1>クラウン部側フランジ角θ1とすると、打球時におけるクラウン部26のフェース部24寄りの部分の変形量が、ソール部18のフェース部24寄りの部分の変形量よりも過大となることを抑制できる。
言い換えると、打球時におけるクラウン部26のフェース部24寄りの部分の変形量とソール部28のフェース部24寄りの部分の変形量とのバランスを取ることができる。
そのため、クラウン部26のフェース部24寄りの部分の変形量が過大となることで生じるエネルギーロスを抑制することができ、これによりフェース部24の反発係数を向上する効果が向上し、また、打ち出し角を適切に維持することができ、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る効果が向上する。
これに対して、ソール部側フランジ角度φ1<クラウン部側フランジ角θ1とすると、クラウン部側フランジ角θ1が大きくなりすぎることから打球時にクラウン部26のフェース部24寄りの部分の変形量が過大となることからエネルギーロスが生じ、フェース部24の反発係数を向上する効果が低下し、また、打ち出し角が大きくなりすぎ、初速、高初速エリア、飛距離の向上を図る効果が低下する。
【0062】
以上説明したように本実施の形態によれば、クラウン部側フランジ20の長さΔL1およびソール部側フランジ22の長さΔL2を2.0mm以上7.0mm以下とし、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1およびソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2を0.7mm以上1.4mm以下とした。
そのため、クラウン部側フランジ20およびソール部側フランジ22の変形量(たわみ量)を適度に確保できるため、反発性能を確保しつつ高初速エリアの拡大を図る上で有利となり、また、応力が適度に分散するため耐久強度を確保する上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、第1ビード部44Aを挟んで互いに対向するヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差を0.3mm以下とし、第2ビード部44Bを挟んで互いに対向するヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、クラウン部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差が0.3mm以下としたので、フランジ20、22とヘッド本体12との溶接を円滑に行なうと共に溶接不良を抑制でき、また、応力集中を緩和できるため、耐久強度を確保する上で有利となる。
【0063】
なお、本実施の形態では、クラウン部側フランジ20およびソール部側フランジ22の双方がそれぞれ上述した各部の規定を満たすものである場合について説明した。
しかしながら、クラウン部側フランジ20およびソール部側フランジ22の何れか一方が上述した各部の規定を満たし、他方が上述した各部の規定を満たさないものであっても同様の作用効果が奏されることは無論である。
また、本実施の形態では、フェース部材14がクラウン部側フランジ20およびソール部側フランジ22の双方を備えるものである場合について説明したが、本発明は、フェース部材14がクラウン部側フランジ20およびソール部側フランジ22の何れか一方のみを備えるものであっても無論適用可能である。
【0064】
以下、本発明の実験例について説明する。
図19図25は、本発明に係るゴルフクラブヘッド10の実験結果を示す図である。
試料となるゴルフクラブヘッド10を各実験例毎に作成し、以下の4つの評価項目を測定し指数(評価点)を求めると共に、4つの指数の合計点を求めた。
【0065】
(1)初速
ゴルフクラブヘッド10を備えたゴルフクラブをスイングロボットに設置し、以下の条件で実打試験を行い9打点における初速の平均値を指数で評価した。比較例に相当する実験例の指数を100とし指数が大きいほど初速が速く、評価が良いことを示す。
ヘッドスピード:40m/s
ボール:株式会社プロギア製プロギアRSスピン(商品名)
打点位置は、以下の合計9打点とし、各打点で5回ずつボールを打撃した。
フェース面24Aの中心点Pcと、中心点Pcを通りフェースセンターラインCLと直交する直線上で中心点Pcからトウ36方向に7mm離間した点と、ヒール38方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからクラウン部26方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する上5mmライン上で、上記点からトウ36方向に7mm離間した点と、ヒール38方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからソール部28方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する下5mmライン上で、上記点からトウ36方向に7mm離間した点と、ヒール38方向に7mm離間した点の3打点。
【0066】
(2)高初速エリア(スイートエリア)
フェース面24Aの中心点Pcを中心に、トウヒール方向およびクラウンソール方向に等間隔をおいた45箇所を打点Piとして設定した。
専用のスイングロボットを用いて45の打点Piでゴルフクラブをスイングし、計測器によってゴルフボールの初速を計測した。ヘッドスピードは40m/sとした。
45打点の初速のデータを補間し、ゴルフボールの最大初速の98%以上となるフェース面24Aの高初速エリアの面積を指数化した。なお、中心点Pcより上打点(クラウン部26側)でのデータと、下打点(ソール部28側)でのデータは、ゴルファーの実使用打点位置に合わせて、上打点(クラウン部26側)でのデータの重み付けを重くした。
高初速エリアのデータは、実験例1のゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど評価が良いことを示す。
【0067】
(3)飛距離
初速の試験における上記打点位置での実打試験で得られた飛距離を測定した。
合計9打点の飛距離平均値を求め、比較例に相当する実験例の指数を100とし指数が大きいほど飛距離が長く、評価が良いことを示す。
【0068】
(4)耐久性
シャフトに固定したゴルフクラブヘッド10のフェース面24Aにエアキャノンにてゴルフボールを繰り返して当て、フェース部24の変形や破損が生じるまでに要した打撃回数を計測し、打撃回数を指数化した。ボールスピードは50m/sとした。打点位置はフェース面24Aの中心点Pcとした。
この場合、比較例に相当する実験例のゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど評価が良いことを示す。
【0069】
(5)合計点
上述した初速、高初速エリア、飛距離、耐久性の4つの指数を合計したものを合計点とした。
比較例に相当する実験例の合計点を400とし合計点が大きいほど評価が良いことを示す。
【0070】
実験条件について説明する。
ゴルフクラブヘッドの比較例としての実験例1を除く各実験例においては、クラウン部側フランジ部20およびソール部側フランジ22の双方を備えるものとした。
実験例1は、比較例であり、本発明の請求項1-3の規定を満たさないものであり、特許文献1に対応している。
実験例1の各部の仕様は以下の通りである。
ヘッド本体12の材料:チタン合金 Ti-8Al-1Mo-1V
フェース部材14の材料:チタン合金 Ti-6Al-4V
ロフト角 10.5°
ライ角 59°
ヘッド質量 200g
ヘッド体積 460cc
【0071】
実験例2-33で使用したゴルフクラブヘッド10は、本発明に対応するものであって、中空型のドライバーであり、各実験例で規定したパラメータを除き以下の仕様を共通としている。
ヘッド本体12の材料:チタン合金 Ti-8Al-1Mo-1V
フェース部材14の材料:チタン合金 Ti-6Al-4V
ロフト角 10.5°
ライ角 59°
ヘッド質量 200g
ヘッド体積 460cc
【0072】
(条件1:図19/実験例2-5)
条件1では、請求項3、4で規定する条件を変更する一方、請求項5-9で規定する条件を全て満たすものとして以下のように一定条件とした。なお、以下、かっこ内には請求項で規定する規定範囲(下限値および上限値)を示す。
ゴルフクラブヘッドの部分のトウヒール方向の長さがヘッド長さHLに示す割合=85%(20%以上)
ソール部側フランジ角度φ1=50.0°(30°以上70°以下)とした。
第2境界点K2とソール部側変曲点H2との長さD12=7.0mm(4mm以上20mm以下)とした。
ソール部側変曲点角度φ2=7.2度(1°以上15°以下)とした。
クラウン部側フランジ角度θ1=35.0°(15°以上50°以下)とした。
第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1との長さD10=8.6mm(4mm以上20mm以下)とした。
クラウン部側変曲点角度θ2=7.0°(0°以上15°以下)とした。
ソール部側フランジ角度φ1(=50.0°)>クラウン部側フランジ角度θ1(=35.0°)とした。
【0073】
図19を参照して条件1における実験例について説明する。
実験例1は、比較例であり、カップフェース構造であってクラウン部側フランジ部20およびソール部側フランジ22の双方を備える一方、本発明の請求項1、2、3の規定を満たさないものであり、本発明の範囲外である。
実験例2、3は請求項3の規定を満たしておらず本発明の範囲外であり、請求項4の規定の一部を満たしていない。
実験例4、5は請求項3、4の規定を満たしており、本発明の範囲内である。
したがって、本発明の範囲外である実験例1-3に比較して本発明の範囲内である実験例4、5は、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点の全てにおいて優れている。
【0074】
(条件2:図20/実験例6-10)
条件2では、請求項3の規定を以下のように満たしかつ一定の値とし、請求項4、5、8の規定を変更した。すなわち、条件2では、本発明の範囲内で請求項4、5、8の規定を変更した。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1、ソール部側フランジ22の長さΔL2を5.0mm(2.0mm以上7.0mm以下)とした。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2を1.0mm(0.7mm以上1.4mm以下)とした。
ヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とし、かつ、ヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とした。
また、請求項6、9で規定する条件は条件1と同一とした。
【0075】
図20を参照して条件2における実験例について説明する。
実験例6、7は請求項3、5、8の規定を満たす一方、請求項4の規定を満たしていない。
実験例8、9は請求項3、4、5、8の規定を満たしている。
実験例10は請求項3、4の規定を満たす一方、請求項5、8の規定を満たしていない。
【0076】
したがって、請求項3、5、8を満たし請求項4を満たさない実験例6、7に比較して、請求項3、4、5、8の規定を満たす実験例8、9は、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点の全てにおいて優れている。
また、請求項3、4の規定を満たす一方、請求項5、8の規定を満たしていない実験例10は、実験例8、9よりも効果が低いものの、実験例6、7に比較して初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点について同等以上である。
【0077】
(条件3:図21/実験例11-14)
条件3では、請求項3、4、5、6、7、8の規定を以下のように満たしかつ一定の値とし、請求項9の規定のうちソール部側フランジ角度φ1を変更し、請求項9の残りの規定は一定とした。すなわち、条件2では、本発明の範囲内で請求項9の規定のうちソール部側フランジ角度φ1を変更した。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1、ソール部側フランジ22の長さΔL2を5.0mm(2.0mm以上7.0mm以下)とした。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2を1.0mm(0.7mm以上1.4mm以下)とした。
ヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とし、かつ、ヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とした。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1=フェース部24のソール部28寄りの肉厚D2=1.5mm(1.0mm以上2.5mm以下)とした。
肉厚D1、D2がクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2よりも大であり、D1-Δd1=D2-Δd2=0.5mmとした。
ゴルフクラブヘッドの部分のトウヒール方向の長さがヘッド長さHLに占める割合=85%(20%以上)とした。
クラウン部側フランジ角度θ1=35°(15°以上50°以下)とした。
第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1とを結ぶ直線を水平面に投影した長さD10=8.6mm(4mm以上20mm以下)とした。
クラウン部側変曲点角度θ2=7.0°(0°以上15°以下)とした。
【0078】
図21を参照して条件3における実験例について説明する。
実験例11、12は請求項3-9のうち請求項9のうちソール部側フランジ角度φ1の規定を満たしていない。
実験例13、14は請求項3-9の規定を全て満たしている。
【0079】
したがって、ソール部側フランジ角度φ1の規定を満たしていない実験例11、12に比較して、ソール部側フランジ角度φ1の規定を満たす実験例13、14は、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点の全てにおいて優れている。
また、ソール部側フランジ角度φ1の規定を満たす実験例13、14のうち、ソール部側フランジ角度φ1>クラウン部側フランジ角度θ1という条件を満たさない実験例13に比較して、上記条件を満たす実験例14は高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点がより優れている。
【0080】
(条件4:図22/実験例15-20)
条件4では、条件3と同様に請求項3、4、5、6、7、8の規定を以下のように満たしかつ一定の値とし、請求項9の規定のうち第2境界点K2とソール部側変曲点H2との長さD12とソール部側変曲点角度φ2を変更し、ソール部側フランジ角度φ1を一定とした。すなわち、条件4では、本発明の範囲内で請求項9の規定のうち長さD12とソール部側変曲点角度φ2を変更した。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1、ソール部側フランジ22の長さΔL2を5.0mm(2.0mm以上7.0mm以下)とした。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2を1.0mm(0.7mm以上1.4mm以下)とした。
ヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とし、かつ、ヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とした。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1=フェース部24のソール部28寄りの肉厚D2=1.5mm(1.0mm以上2.5mm以下)とした。
肉厚D1、D2がクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2よりも大であり、D1-Δd1=D2-Δd2=0.5mmとした。
ゴルフクラブヘッドの部分のトウヒール方向の長さがヘッド長さHLに占める割合=85%(20%以上)。
クラウン部側フランジ角度θ1=35°(15°以上50°以下)とした。
第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1とを結ぶ直線を水平面に投影した長さD10=8.6mm(4mm以上20mm以下)とした。
クラウン部側変曲点角度θ2=7.0°(0°以上15°以下)とした。
【0081】
図22を参照して条件4における実験例について説明する。
実験例15、17、18は請求項3-9のうち請求項9のうち第2境界点K2とソール部側変曲点H2との長さD12またはソール部側変曲点角度φ2の規定を満たしていない。
実験例16、19、20は請求項3-9の規定を全て満たしている。
【0082】
したがって、第2境界点K2とソール部側変曲点H2との長さD12またはソール部側変曲点角度φ2の規定を満たしていない実験例15、17、18に比較して、請求項9の規定を全て満たす実験例16、19、20は、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点の全てにおいて優れている。
【0083】
(条件5:図23/実験例21-24)
条件5では、請求項3、4、5、6、7、8の規定を以下のように満たしかつ一定の値とし、請求項9の規定のうちクラウン部側フランジ角度θ1を変更し、請求項9の残りの規定は一定とした。すなわち、条件2では、本発明の範囲内で請求項9の規定のうちクラウン部側フランジ角度θ1を変更した。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1、ソール部側フランジ22の長さΔL2を5.0mm(2.0mm以上7.0mm以下)とした。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2を1.0mm(0.7mm以上1.4mm以下)とした。
ヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とし、かつ、ヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とした。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1=フェース部24のソール部28寄りの肉厚D2=1.5mm(1.0mm以上2.5mm以下)とした。
肉厚D1、D2がクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2よりも大であり、D1-Δd1=D2-Δd2=0.5mmとした。
ゴルフクラブヘッドの部分のトウヒール方向の長さがヘッド長さHLに占める割合=85%(20%以上)とした。
ソール部側フランジ角度φ1=50°(30°以上70°以下)とした。
第2境界点K2とソール部側変曲点H2とを結ぶ直線を水平面に投影した長さD12=7.0mm(4mm以上20mm以下)とした。
ソール部側変曲点角度φ2=7.2°(0°以上15°以下)とした。
【0084】
図23を参照して条件5における実験例について説明する。
実験例21、22は請求項3-9のうち請求項9のうちクラウン部側フランジ角度θ1の規定を満たしていない。
実験例23、24は請求項3-9の規定を全て満たしている。
【0085】
したがって、クラウン部側フランジ角度θ1の規定を満たしていない実験例21、22に比較して、クラウン部側フランジ角度θ1の規定を満たす実験例23、24は、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点の全てにおいて優れている。
【0086】
(条件6:図24/実験例25-30)
条件6では、条件5と同様に請求項3、4、5、6、7、8の規定を以下のように満たしかつ一定の値とし、請求項9の規定のうち第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1との長さD10とクラウン部側変曲点角度θ2を変更し、クラウン部側フランジ角度θ1を一定とした。すなわち、条件6では、本発明の範囲内で請求項9の規定のうち長さD10とクラウン部側変曲点角度θ2を変更した。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1、ソール部側フランジ22の長さΔL2を5.0mm(2.0mm以上7.0mm以下)とした。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2を1.0mm(0.7mm以上1.4mm以下)とした。
ヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とし、かつ、ヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とした。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1=フェース部24のソール部28寄りの肉厚D2=1.5mm(1.0mm以上2.5mm以下)とした。
肉厚D1、D2がクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2よりも大であり、D1-Δd1=D2-Δd2=0.5mmとした。
ゴルフクラブヘッドの部分のトウヒール方向の長さがヘッド長さHLに占める割合=85%(20%以上)。
ソール部側フランジ角度φ1=50°(30°以上70°以下)とした。
第2境界点K2とソール部側変曲点H2とを結ぶ直線を水平面に投影した長さD12=7.0mm(4mm以上20mm以下)とした。
ソール部側変曲点角度φ2=7.2°(0°以上15°以下)とした。
【0087】
図24を参照して条件6における実験例について説明する。
実験例25、27、28は請求項3-9のうち請求項9のうち第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1との長さD10またはクラウン部側変曲点角度θ2の規定を満たしていない。
実験例26、29、30は請求項3-9の規定を全て満たしている。
【0088】
したがって、第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1との長さD10またはクラウン部側変曲点角度θ2の規定を満たしていない実験例25、27、28に比較して、請求項9の規定を全て満たす実験例26、29、30は、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点の全てにおいて優れている。
【0089】
(条件7:図24/実験例31)
上述した実験例25-30がソール部側フランジ角度φ1>クラウン部側フランジ角θ1であったのに対して、図24に示すように、条件7(実験例31)ではソール部側フランジ角度φ1<クラウン部側フランジ角θ1としたものである。
なお、条件7(実験例31)では、請求項3、4、5、6、7、8、9の全ての規定を以下のように満たしている。
クラウン部側フランジ20の長さΔL1、ソール部側フランジ22の長さΔL2を5.0mm(2.0mm以上7.0mm以下)とした。
クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2を1.0mm(0.7mm以上1.4mm以下)とした。
ヘッド本体12のクラウン部46の部分の肉厚dcとクラウン部側フランジ20の部分の肉厚dcfとの平均値Δdcと、クラウン部側フランジ20の平均肉厚Δd1との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とし、かつ、ヘッド本体12のソール部28の部分の肉厚dsとソール部側フランジ22の部分の肉厚dsfとの平均値Δdsと、ソール部側フランジ22の平均肉厚Δd2との差(差の絶対値)を0mm(0.3mm以下)とした。
フェース部24のクラウン部26寄りの端部の肉厚D1=フェース部24のソール部28寄りの肉厚D2=1.5mm(1.0mm以上2.5mm以下)とした。
肉厚D1、D2がクラウン部側フランジの平均肉厚Δd1、ソール部側フランジの平均肉厚Δd2よりも大であり、D1-Δd1=D2-Δd2=0.5mmとした。
ゴルフクラブヘッドの部分のトウヒール方向の長さがヘッド長さHLに占める割合=85%(20%以上)とした。
クラウン部側フランジ角度θ1=50°(15°以上50°以下)とした。
第1境界点K1とクラウン部側変曲点H1とを結ぶ直線を水平面に投影した長さD10=8.6mm(4mm以上20mm以下)とした。
クラウン部側変曲点角度θ2=7.0°(0°以上15°以下)とした。
ソール部側フランジ角度φ1=35°(30°以上70°以下)とした。
第2境界点K2とソール部側変曲点H2とを結ぶ直線を水平面に投影した長さD12=7.0mm(4mm以上20mm以下)とした。
ソール部側変曲点角度φ2=7.2°(0°以上15°以下)とした。
【0090】
図24に示すように、ソール部側フランジ角度φ1<クラウン部側フランジ角θ1とした実験例31は、請求項3、4、5、6、7、8、9の全ての規定を満たし、かつ、ソール部側フランジ角度φ1>クラウン部側フランジ角θ1とした実験例26、29、30に比較して、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点の全てにおいて効果が若干低下しているものの、実験例1に比較して各評価が優れている。
【0091】
(条件8:図25/実験例32、33)
条件8は、請求項3、4、5、6、7、8、9で規定する条件を全て満たすものであり、それら各請求項で規定する各数値を、上述した条件1~条件7に比較してより好適なものとした。
したがって、条件8の実験例32、33は全て請求項3の規定範囲内であり、本発明の範囲内である。
図25に示すように、実験例32、33は、初速、高初速エリア、飛距離、耐久性、合計点が、請求項3、4、5、6、7、8、9で規定する条件を全て満たす他の実験例16、19、20、26、29、30を上回っている。
【0092】
なお、本発明は、中空部を有するドライバー、中空部を有するフェアウェイウッド、中空部を有するユーテリティなどの様々な中空部を有するゴルフクラブヘッドに適用されることは無論のことである。
さらに、本発明は、このようなゴルフクラブヘッドを備えるゴルフクラブに適用される。
【符号の説明】
【0093】
10 ゴルフクラブヘッド
12 ヘッド本体
14 フェース部材
16 開口
18 本体板部
20 クラウン部側フランジ
2002 前縁
2004 後縁
22 ソール部側フランジ
2202 前縁
2204 後縁
24 フェース部
24A フェース面
24B フェース裏面
26 クラウン部
26A クラウン面
26B クラウン裏面
2602 ヘッド本体のクラウン部の前縁
28 ソール部
28A ソール面
28B ソール裏面
2802 ヘッド本体のソール部の前縁
30 サイド部
32 フェースバック
34 中空部
36 トウ
38 ヒール
40 ホーゼル
42 リーディングエッジ
44A 第1ビード部
44B 第2ビード部
100 シャフト
Pc 中心点
Pfc フェース中心基準断面
Pf フェース基準断面
HP 水平面
G0 重心点
FG フェース面上重心点
I 輪郭線
ΔL1 クラウン部側フランジの長さ
Δd1 クラウン部側フランジの平均肉厚
ΔL2 ソール部側フランジの長さ
Δd2 ソール部側フランジの平均肉厚
dc ヘッド本体のクラウン部の部分の肉厚
dcf クラウン部側フランジの部分の肉厚
Δdc 肉厚dcと肉厚dcfとの平均値
ds ヘッド本体のソール部の部分の肉厚
dsf ソール部側フランジの部分の肉厚
Δds 肉厚dsと肉厚dsfとの平均値
D1 フェース部のクラウン部寄りの端部の肉厚
D2 フェース部のソール部寄りの端部の肉厚
D10、D12 長さ
RA、RB 曲率半径
K1 第1境界点
K2 第2境界点
H1 クラウン部側変曲点
H2 ソール部側変曲点
θ1 クラウン部側フランジ角度
θ2 クラウン部側変曲点角度
φ1 ソール部側フランジ角度
φ2 ソール部側変曲点角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25