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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173698
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】給油口アダプタ
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B60K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086134
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康行
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA04
3D038CB01
3D038CC14
(57)【要約】
【課題】より容易に、かつ、より小さな力で変形が可能であり、車両の給油口パネルのパネル孔への取り付け作業を、より容易に、かつ、より短時間にすることができる給油口アダプタを提供する。
【解決手段】給油口アダプタは、変形と復元が可能な弾性部材にて形成されて、給油パイプの外周面に連続して接触して給油口部のパネル孔の内径よりも大きな外径を有するパイプシール部21と、パイプシール部に隣接する給油口部の蓋部(16)の側であってパネル孔の内周面に連続して接触するパネル嵌合部22と、パネル嵌合部から蓋部の側へと延長された筒状形状を有している筒状部23と、を有し、筒状部におけるパネル嵌合部から蓋部の側へと所定距離L1だけ離れた位置には、周方向における少なくとも一部に、連続的あるいは断続的に、パイプシール部とパネル嵌合部の外径を小さくする変形の起点となる脆弱部(23M)が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディアウタパネルの一部に設けられて燃料の給油の際に開閉される蓋部を開口した際に露出される給油口部に設けられて、前記給油口部の少なくとも一部を形成している給油口パネルと、燃料タンクへと接続されている給油パイプの燃料注入口の近傍と、の間に取り付けられている給油口アダプタであって、
前記給油パイプの前記燃料注入口は、前記給油口パネルに設けられた貫通孔であるパネル孔に挿通されて前記蓋部の側に突出しており、
前記給油口アダプタは、
変形と復元が可能な弾性部材にて形成されており、
前記給油パイプの外周面に周方向に連続するように接触しているとともに前記パネル孔の内径よりも大きな外径を有しているパイプシール部と、
前記パイプシール部に隣接する前記蓋部の側であって前記パネル孔の内周面に周方向に連続するように接触しているパネル嵌合部と、
前記パネル嵌合部から前記蓋部の側へと延長された筒状形状を有して前記パネル嵌合部から遠ざかるにしたがって外径が大きくなるように形成されている筒状部と、
を有しており、
前記筒状部における前記パネル嵌合部から前記蓋部の側へと所定距離だけ離れた位置には、周方向における少なくとも一部に、連続的あるいは断続的に、前記パイプシール部と前記パネル嵌合部の外径を小さくする変形の起点となる脆弱部が設けられている、
給油口アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の給油口アダプタであって、
前記脆弱部は、前記筒状部における前記パネル嵌合部に隣接する位置に、前記パネル嵌合部と前記パイプシール部を前記筒状部の内側へと折り込む変形と、折り込んだ前記パネル嵌合部と前記パイプシール部を前記筒状部の外側へと折り返す復元と、の少なくとも一方の起点となるように、周方向における少なくとも一部に、連続的あるいは断続的に設けられている、
給油口アダプタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給油口アダプタであって、
前記脆弱部は、前記筒状部の厚さよりも浅く設定された溝部が連続的あるいは断続的に形成されている薄肉部である、
給油口アダプタ。
【請求項4】
請求項3に記載の給油口アダプタであって、
前記溝部は、前記筒状部における少なくとも外周面に形成されている、
給油口アダプタ。
【請求項5】
請求項4に記載の給油口アダプタであって、
前記溝部は、周方向において全周にわたって、連続的あるいは断続的に形成されている、
給油口アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンクに燃料を注入するための給油口部に取り付けられている給油口アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を搭載した車両のボディアウタパネルの一部には、燃料の給油の際に開閉される蓋部である燃料リッドが設けられている。また燃料リッドを開口した際に露出される給油口部には、給油口部の少なくとも一部を形成している給油口パネルと、燃料タンクへと接続されている給油パイプの燃料注入口の近傍と、の間に給油口アダプタが取り付けられている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているフューエルフィラーリッド装置(給油口アダプタに相当)は、給油パイプを挿通する貫通孔の周囲を蛇腹状の複数の段差部としている。これにより、車両の給油開口部(給油口部に相当)に対する給油パイプの位置または角度を異にする車種であってもフューエルフィラーリッド装置を追従するように装着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-123930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフューエルフィラーリッド装置(給油口アダプタに相当)は、車両に設けられた給油口部のインナボディ(給油口パネル)の貫通孔に嵌め込まれて車体に対して固定されている。そして当該フューエルフィラーリッド装置は、自身に設けられている貫通孔である下側開口部に給油パイプが挿通されている。引用文献1に記載のフューエルフィラーリッド装置は、給油パイプを挿通する下側開口部の周囲の蛇腹状の段差部の形状が複雑となっている。
【0006】
なおフューエルフィラーリッド装置を車両の給油口パネルの貫通孔に取り付ける作業者は、取り付けの際、まずフューエルフィラーリッド装置の先端のインナ側係合部の外径が、給油口部のインナボディ(給油口パネル)の貫通孔の内径よりも小さくなるように蛇腹状の段差部を変形させる。そして作業者は、変形させているインナ側係合部をインナボディの貫通孔に差し込んだ後、変形させているインナ側係合部を復元させて取り付ける。作業者が、蛇腹状の段差部の先端のインナ側係合部を変形させる際、複雑な形状の蛇腹状の段差部を変形させる手間に加えて比較的大きな力が必要であり、取り付けの作業性があまり良くない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、より容易に、かつ、より小さな力で変形が可能であり、車両の給油口パネルのパネル孔への取り付け作業を、より容易に、かつ、より短時間にすることができる給油口アダプタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の発明は、車両のボディアウタパネルの一部に設けられて燃料の給油の際に開閉される蓋部を開口した際に露出される給油口部に設けられて、前記給油口部の少なくとも一部を形成している給油口パネルと、燃料タンクへと接続されている給油パイプの燃料注入口の近傍と、の間に取り付けられている給油口アダプタである。前記給油パイプの前記燃料注入口は、前記給油口パネルに設けられた貫通孔であるパネル孔に挿通されて前記蓋部の側に突出している。前記給油口アダプタは、変形と復元が可能な弾性部材にて形成されており、前記給油パイプの外周面に周方向に連続するように接触しているとともに前記パネル孔の内径よりも大きな外径を有しているパイプシール部と、前記パイプシール部に隣接する前記蓋部の側であって前記パネル孔の内周面に周方向に連続するように接触しているパネル嵌合部と、前記パネル嵌合部から前記蓋部の側へと延長された筒状形状を有して前記パネル嵌合部から遠ざかるにしたがって外径が大きくなるように形成されている筒状部と、を有している。そして前記筒状部における前記パネル嵌合部から前記蓋部の側へと所定距離だけ離れた位置には、周方向における少なくとも一部に、連続的あるいは断続的に、前記パイプシール部と前記パネル嵌合部の外径を小さくする変形の起点となる脆弱部が設けられている、給油口アダプタである。
【0009】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る給油口アダプタであって、前記脆弱部は、前記筒状部における前記パネル嵌合部に隣接する位置に、前記パネル嵌合部と前記パイプシール部を前記筒状部の内側へと折り込む変形と、折り込んだ前記パネル嵌合部と前記パイプシール部を前記筒状部の外側へと折り返す復元と、の少なくとも一方の起点となるように、周方向における少なくとも一部に、連続的あるいは断続的に設けられている、給油口アダプタである。
【0010】
次に、第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る給油口アダプタであって、前記脆弱部は、前記筒状部の厚さよりも浅く設定された溝部が連続的あるいは断続的に形成されている薄肉部である、給油口アダプタである。
【0011】
次に、第4の発明は、上記第3の発明に係る給油口アダプタであって、前記溝部は、前記筒状部における少なくとも外周面に形成されている、給油口アダプタである。
【0012】
次に、第5の発明は、上記第4の発明に係る給油口アダプタであって、前記溝部は、周方向において全周にわたって、連続的あるいは断続的に形成されている、給油口アダプタである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、給油口アダプタを給油口パネルのパネル孔に取り付ける際に変形させるパイプシール部とパネル嵌合部と筒状部において、筒状部は複雑な蛇腹形状ではなくシンプルな筒状形状であり、容易な変形の起点となる脆弱部が設けられている。これにより、より小さな力で変形が可能であり、車両の給油口パネルのパネル孔への取り付け作業を、より容易に、かつ、より短時間にすることができる。
【0014】
第2の発明によれば、筒状部におけるパネル嵌合部に隣接する位置に脆弱部が設けられているので、パネル嵌合部とパイプシール部を筒状部の内側へと容易に折り込むことができる。そして筒状部の内側へと折り込まれたパネル嵌合部とパイプシール部は、折り込む前のパネル嵌合部の外径よりも小さくなる。パネル孔への取り付けの際は、折り込み部をパネル孔に接触させて、筒状部の内側へ折り込んでいるパネル嵌合部とパイプシール部を、筒状部の外側へと折り返して復元させるだけでよい。脆弱部が適切な位置に設けられているので、より小さな力で変形と復元が可能であり、車両の給油口パネルのパネル孔への取り付け作業を、より容易に、かつ、より短時間にすることができる。
【0015】
第3の発明によれば、シンプルかつ容易に脆弱部を実現することができる。
【0016】
第4の発明によれば、パイプシール部とパネル嵌合部の外径を小さくする変形をさせる際、筒状部の少なくとも外周面に溝が形成されているので、より小さな力で比較的容易に変形させることができる。
【0017】
第5の発明によれば、変形の起点となる溝部が、周方向の一部でなく全周にわたって連続的あるいは断続的に形成されているので、より変形させやすく、車両の給油口パネルのパネル孔への取り付け作業を、より容易に、かつ、より短時間にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両の給油口部と、当該給油口部に組み付けられる給油口アダプタと給油パイプを示した分解斜視図であり、給油口部、給油口アダプタ、給油パイプ、の外観の例を説明する図である。
図2】第1の実施の形態の給油口アダプタの正面図である。
図3図2に示す給油口アダプタをIII方向から見た給油口アダプタの平面図である。
図4】第1の実施の形態の給油口アダプタの斜視図であり、給油口アダプタの外観と脆弱部の位置の例を説明する図である。
図5】第1の実施の形態の給油口アダプタと、給油パイプとを車両の給油口部に取り付けた状態における断面図であって、給油口アダプタについては図2に示す給油口アダプタ(蓋部を閉じた状態の給油口アダプタ)のV-V断面図である。
図6】第1の実施の形態の給油口アダプタを給油口部に取り付ける際の工程[1]である変形工程の例を説明する図である。
図7】第1の実施の形態の給油口アダプタを給油口部に取り付ける際の工程[2]である差し込み工程、及び工程[3]である復元工程の例を説明する図である。
図8】第1の実施の形態の給油口アダプタを給油口部に取り付ける際の工程[4]であるCリング組み付け工程の例を説明する図である。
図9】第1の実施の形態の給油口アダプタを給油口部に取り付ける際の工程[5]である給油パイプ差し込み工程、工程[6]であるパッキン取り付け工程、工程[7]であるフューエルキャップ取り付け工程、及び工程[8]であるカバー取り付け工程の例を説明する図である。
図10】第2の実施の形態の給油口アダプタの斜視図であり、給油口アダプタの外観と脆弱部の位置の例を説明する図である。
図11】第2の実施の形態の給油口アダプタを給油口部に取り付ける際の工程[1a]である変形工程の例を説明する図である。
図12】第2の実施の形態の給油口アダプタを給油口部に取り付ける際の工程[2a]である差し込み工程、及び工程[3a]である復元工程の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお図中に「前」「後」「左」「右」「上」「下」の記載がある場合、「前」「後」は本発明の給油口アダプタを有する車両の前後方向を示し、「左」「右」は当該車両の左右方向を示し、「上」「下」は当該車両の上下方向を示している。以下、車両の給油口部に取り付けられる給油口アダプタにおける、第1の実施の形態の給油口アダプタ20、第2の実施の形態の給油口アダプタ20B、について構造と組み付け手順の例について説明する。
【0020】
●[第1の実施の形態(図1図9)]
まず図1図9を用いて、第1の実施の形態の給油口アダプタ20について説明する。
【0021】
●[車両の給油口部10、給油口アダプタ20、給油パイプ30等の外観(図1)]
図1は、車両の給油口部10と、当該給油口部10に組み付けられる前の給油口アダプタ20と給油パイプ30を示した分解斜視図である。給油口部10は、車両のボディアウタパネルBPの一部に設けられて、燃料の給油の際に開閉される給油口蓋部16(いわゆる燃料リッドであり、蓋部に相当)を開口した場合に露出される。そして給油口部10は、アダプタ取付面11、給油口アウタパネル12A、パネル孔13等を有している。
【0022】
アダプタ取付面11は、図1及び図5に示すように、給油口アダプタ20のフランジ部25が取り付けられる面であり、薄板状の金属で形成されたボディアウタパネルBPの一部が凹状とされて形成されている。給油口アウタパネル12Aは、図1及び図5に示すように、アダプタ取付面11よりも奥に配置されている薄板状の金属で形成されたパネルである。なお図5に示すように、給油口アウタパネル12Aの裏側には給油口インナパネル12Bが取り付けられている。そして図1に示すように、給油口アウタパネル12A(及び給油口インナパネル12B(図5参照))には、貫通孔であるパネル孔13が形成されている。当該パネル孔13に、給油口アダプタ20が取り付けられて給油パイプ30が挿通される(図5参照)。
【0023】
給油パイプ30は、下端が燃料タンク(図示省略)に接続されたパイプである。図5に示すように、給油パイプ30の上端の燃料注入口34は、給油口アウタパネル12A(給油口パネルに相当)に設けられた貫通孔であるパネル孔13に挿通されて給油口蓋部16の側に突出するように配置される。
【0024】
給油口アダプタ20は、変形と復元が可能な弾性部材で形成されており、例えばゴムのような弾性力を有する樹脂にて形成されている。給油口アダプタ20は、アダプタ蓋部26、フランジ部25、給油口凹部24、筒状部23、パネル嵌合部22、パイプシール部21等を有している。なおアダプタ蓋部26には車両のボディと同色とされた給油口カバー15が取り付けられており、アダプタ蓋部26と給油口カバー15とが一体とされて給油口蓋部16(いわゆる燃料リッドであり、蓋部に相当)が構成されている。給油口アダプタ20は、パネル嵌合部22がパネル孔13に嵌め込まれ、フランジ部25がアダプタ取付面11に取り付けられる。
【0025】
●[給油口アダプタ20の構造(図2図4)と、給油口部10に給油口アダプタ20と給油パイプ30を取り付けた状態(図5)]
図3に示すように、給油口アダプタ20は、アダプタアウタ部28と、アダプタインナ部27とが樹脂の2色成形の一体成形品とされている。アダプタインナ部27は、アダプタアウタ部28よりも弾性力が大きな弾性部材とされている。またアダプタアウタ部28の内側空間とアダプタインナ部27の内側空間は連通されており、図2に示すように、アダプタアウタ部28の側の開口部からアダプタインナ部27の側の開口部であるパイプ挿通孔21Zまで連通している。
【0026】
アダプタアウタ部28は、図3に示すように、フランジ部25と給油口凹部24とを有している。フランジ部25は、上述したように、図1に示すアダプタ取付面11を覆うように配置されてアダプタ取付面11に取り付けられる。給油口凹部24は、図1に示す給油口蓋部16を開口した際に露出される凹状の空間を形成しており、図5に示すように、給油パイプ30の先端の燃料注入口34、及び燃料注入口34に取り付けられたフューエルキャップ33等を収容している。また給油口凹部24は、図3及び図4に示すように、アダプタ蓋部26のヒンジ部26Aを収容するヒンジ収容部24Aと、アダプタ蓋部26のストライカ26Bを収容するストライカ収容部24Bとを有している。なお図4では筒状部23においてリップ部23L(図3参照)の記載を省略している。
【0027】
アダプタインナ部27は、図3に示すように、パイプシール部21とパネル嵌合部22と筒状部23とを有している。パイプシール部21は、図5に示すように、給油パイプ30の外周面に周方向に連続するように接触しているとともにパネル孔13の内径よりも大きな外径を有している。そしてパイプシール部21の内周面における最大内径となる個所には、図5に示すように、抜け防止用のCリング31が取り付けられている。なおパイプシール部21には、図4に示すように水抜き孔21Yが設けられている。
【0028】
パネル嵌合部22は、図3及び図5に示すようにパイプシール部21に隣接する給油口蓋部16(蓋部に相当)の側であってパネル孔13の内周面であるパネル孔内周面13M(図1参照)に周方向に連続するように接触して給油口パネル(給油口アウタパネル12Aと給油口インナパネル12B)のパネル孔13に嵌め込まれている。
【0029】
筒状部23は、図3及び図5に示すように、パネル嵌合部22から給油口蓋部16(蓋部に相当)の側へと延長された筒状形状を有してパネル嵌合部22から遠ざかるにしたがって外径が大きくなるように形成されている。また筒状部23におけるパネル嵌合部22の近傍には、図3及び図5に示すように、周方向に連続するようにリップ部23Lが設けられている。
【0030】
また図3に示すように、筒状部23におけるパネル嵌合部22から給油口蓋部16(蓋部に相当)の側へと所定距離L1だけ離れた位置には、周方向における少なくとも一部に、連続的あるいは断続的に溝部23M(脆弱部に相当)が形成されている。本実施の形態では、周方向において全周にわたって連続的な溝部23Mが形成されている例、かつ、筒状部23の外周面に溝部23Mが形成されている例、を説明する。溝部23Mは、図5に示すように、筒状部23の厚さよりも浅く設定されて、薄肉部を形成している。
【0031】
●[給油口部10への給油口アダプタ20等の取り付け手順(図6図9)]
次に図6図9を用いて、上述した構造を有する給油口アダプタ20を、図1に示す給油口部10のパネル孔13に取り付ける手順である工程[1]~工程[8]の例を説明する。
【0032】
図6に示すように、工程[1]である変形工程にて、作業者は、給油口アダプタ20のパイプシール部21とパネル嵌合部22の外径を、パネル孔13(図1参照)の内径よりも小さくなるように手で押さえて変形させる。このとき、溝部23M(脆弱部に相当)が変形の起点となり、作業者は、比較的小さな力で容易に変形させることができる。溝部23Mを変形の起点とするために、筒状部23の少なくとも外周面に溝部23Mが設けられていると、より好ましい。
【0033】
次に図7に示すように、工程[2]である差し込み工程にて、作業者は、変形させているパイプシール部21とパネル嵌合部22をパネル孔13に差し込む。そして工程[3]である復元工程にて、作業者は、変形させている手を離し、パイプシール部21とパネル嵌合部22の形状を復元させる(外径を復元させる)。これにより、パネル孔13にパネル嵌合部22が嵌め込まれる。
【0034】
次に図8に示すように、工程[4]であるCリング組み付け工程にて、作業者は、治具等を用いて、Cリング31の外径が小さくなるように変形させてパイプシール部21の内周面にCリング31を組み付ける。組み付けられたCリング31は外径が大きくなるように復元し、パイプシール部21がパネル孔13から抜けないようになる。
【0035】
次に図9に示すように、工程[5]である給油パイプ差し込み工程にて、作業者は、車両内側から給油パイプ30を、給油口アダプタ20のパイプ挿通孔21Z(図2図4参照)に差し込む。そして工程[6]であるパッキン取り付け工程にて、作業者は、差し込んだ給油パイプ30の先端の燃料注入口34の外周に環状のパッキン32を取り付ける。そして工程[7]であるフューエルキャップ取り付け工程にて、作業者は、給油パイプ30の先端の燃料注入口34にフューエルキャップ33を取り付ける。そして工程[8]であるカバー取り付け工程にて、作業者は、アダプタ蓋部26の上面に給油口カバー15を取り付ける。
【0036】
第1の実施の形態の給油口アダプタ20は、溝部23Mが変形の起点となり、作業者が工程[1](変形工程)、工程[2](差し込み工程)の際に、より小さな力で変形、及び変形状態の維持をすることができる。したがって、車両の給油口パネルへの給油口アダプタ20の取り付け作業を、より容易に、かつ、より短時間にすることができる。
【0037】
●[第2の実施の形態(図10図12)]
次に図10図12を用いて、第2の実施の形態の給油口アダプタ20Bについて説明する。
【0038】
●[給油口アダプタ20Bの構造(図10)]
図10に示すように第2の実施の形態の給油口アダプタ20Bは、図4に示す第1の実施の形態の給油口アダプタ20に対して、変形と復元の少なくとも一方の起点となる溝部23Mの位置が、筒状部23におけるパネル嵌合部22に隣接する位置である点が異なる。なお、その他の構造については第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。また、図10では筒状部23においてリップ部23L(図11図12参照)の記載を省略している。
【0039】
●[給油口部10への給油口アダプタ20B等の取り付け手順(図11図12)]
次に図11図12を用いて、上述した構造を有する給油口アダプタ20Bを、図1に示す給油口部10のパネル孔13に取り付ける手順の工程の例を説明する。
【0040】
図11に示すように、工程[1a]である変形工程にて、作業者は、給油口アダプタ20Bのパイプシール部21とパネル嵌合部22を、筒状部23の内側へと折り込むように変形させる。このとき、パネル嵌合部22に隣接する位置の溝部23M(脆弱部に相当)が変形の起点となり、作業者は、比較的小さな力で変形させることができる。また、変形後に作業者が手を離しても変形状態が維持されているので便利である。溝部23Mを変形の起点とするために、筒状部23の少なくとも外周面に溝部23Mが設けられていると、より好ましい。
【0041】
次に図12に示すように、工程[2a]である差し込み工程にて、作業者は、給油口アダプタ20Bを給油口部10(図1参照)に差し込み、給油口アダプタ20Bの変形個所及びリップ部23Lがパネル孔13(図1参照)の周囲に接触するように給油口アダプタ20Bを位置決めする。そして工程[3a]である復元工程にて、作業者は、パネル嵌合部22とパイプシール部21を、筒状部23の外側へと折り返して復元させる。これにより、パネル孔13にパネル嵌合部22が嵌め込まれる。
【0042】
以降の工程は、図8を用いて説明した工程[4](Cリング組み付け工程)、図9を用いて説明した工程[5](給油パイプ差し込み工程)、工程[6](パッキン取り付け工程)、工程[7](フューエルキャップ取り付け工程)、工程[8](カバー取り付け工程)と同じであるので説明を省略する。
【0043】
第2の実施の形態の給油口アダプタ20Bも、第1の実施の形態と同様、溝部23Mが変形の起点となり、作業者が工程[1a](変形工程)の際に、より小さな力で変形が可能であり、工程[2a](差し込み工程)の際には変形状態の維持には特に力を必要としない。したがって、車両の給油口パネルへの給油口アダプタ20Bの取り付け作業を、より容易に、かつ、より短時間にすることができる。また変形後は特に力を加えなくても変形状態が維持されるので、工程[1a](変形工程)を、給油口アダプタの取り付け作業場所とは異なる場所、及び異なる時間で行い、変形状態の給油口アダプタを取り付け作業場所へと搬送して取り付けるようにすることもできる。例えば、給油口アダプタの製造工場で変形させ、変形させたまま給油口アダプタの取り付け工場に搬送して復元させて取り付けることができるので、取り付け作業者は変形が不要となるので便利である。
【0044】
●[その他]
本発明の、給油口アダプタ20、20Bは、本実施の形態で説明した構成、外観、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0045】
本実施の形態の説明では、周方向において全周にわたって連続的に設けた溝部23Mにて脆弱部を形成したが、全周にわたって断続的に設けた溝部であってもよい。また周方向において全周にわたって溝部23Mを設けた例を説明したが、周方向における少なくとも一部に、連続的あるいは断続的に溝部23Mを設けるようにしてもよい。また脆弱部は、溝部でなくてもよく、例えば異なる材質などにて周囲に対して脆弱な構造であればよい。
【0046】
また本実施の形態の説明では、溝部23Mを筒状部23の外周面のみに設けた例を説明したが、溝部を筒状部23の内周面のみに設けるようにしてもよいし、溝部を筒状部23の外周面と内周面に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 給油口部
11 アダプタ取付面
12A 給油口アウタパネル
12B 給油口インナパネル
13 パネル孔
13M パネル孔内周面
15 給油口カバー
16 給油口蓋部(蓋部)
20、20B 給油口アダプタ
21 パイプシール部
21Y 水抜き孔
21Z パイプ挿通孔
22 パネル嵌合部
23 筒状部
23L リップ部
23M 溝部(脆弱部)
24 給油口凹部
24A ヒンジ収容部
24B ストライカ収容部
25 フランジ部
26 アダプタ蓋部
26A ヒンジ部
26B ストライカ
27 アダプタインナ部
28 アダプタアウタ部
30 給油パイプ
31 Cリング
32 パッキン
33 フューエルキャップ
34 燃料注入口
BP ボディアウタパネル
L1 所定距離
図1
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図12