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  • 特開-ねじ締め機 図1
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  • 特開-ねじ締め機 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173708
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20231130BHJP
   B25B 23/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B23P19/06 C
B25B23/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086148
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩田 耕一郎
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BB01
3C038BB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率良くねじを吸着保持可能かつ衝撃トルクが増大しないねじ締め機を提供する。
【解決手段】回転駆動源35の駆動を受けて回転可能に構成されたドライバビット37と、前記ドライバビット37を回転自在に内包するスクリューガイド33とを備え、前記スクリューガイド33は、負圧手段が連続するハウジング32に対して回転自在に構成されているとともに、その開口端部には、テーパ形状のパッド部を有する吸着部材34が装着され、吸着部34は、前記ドライバビット37に対して相対回転可能に構成されていることを特徴とするねじ締め機による。このねじ締め機は、吸着部材34を備えており、ねじSを効率良く吸着保持可能となる。また、吸着部材34がドライバビット37に対して回転し、吸着部材34の慣性モーメントがねじSに付加されないため、衝撃トルクの増大を防止可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじと係合する係合部を有するとともに回転駆動源の駆動を受けて回転可能に構成されたドライバビットと、 前記ドライバビットを回転自在に内包するスクリューガイドと、 前記スクリューガイドと負圧手段とを連続させるハウジングと、 前記スクリューガイドの開口端部に装着される吸着部材とを備えたねじ締め機において、 前記ハウジングが前記スクリューガイドを回転自在に保持し、 前記吸着部材が前記ドライバビットに対して相対回転可能に構成されていることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記吸着部材は、ねじとの当接部分が弾性部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項3】
前記吸着部材の中心に貫通形成される吸着口の穴径がドライバビットの外径以下の寸法に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のねじ締め機。
【請求項4】
前記吸着部材には、円環形状の嵌合部を有し、 前記スクリューガイドは、前記嵌合部と嵌合する保持溝を有していることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項5】
前記スクリューガイドは、前記ハウジングに対して軸方向の相対移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のねじ締め機。
【請求項6】
前記ドライバビットは、前記回転駆動源に対して、軸方向の相対移動可能に連結されていることを特徴とする請求項5に記載のねじ締め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじをワークに締め付けるねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじをワークに締め付けるねじ締め機として、特許文献1に開示するものが知られている。このねじ締め機は、ねじの頭部と嵌合可能なドライバビットと、このドライバビットを内包するように配置され、負圧機構に連続するスクリューガイドを備えており、このスクリューガイドの開口端部にねじを吸着保持してワークまで搬送した後にねじ締めを行うように構成されている。しかしながら、従来のねじ締め機は、スクリューガイドの間とねじとの間に空気が通過可能な隙間があったため、負圧の維持が難しく比較的強力な負圧機構が必要となり、効率が悪いという問題があった。
【0003】
上記課題を解決するために特許文献2に開示のねじ締め機が創成されている。このねじ締め機は、スクリューガイドの先端に下端がテーパ形状に構成された吸着部を備えており、この吸着部がねじの頭部により閉鎖されるため、空気が通過する隙間が生じず、効率よくねじを吸着することが可能であった。また、前記吸着部は、ドライバビットに係合して一体に回転可能に構成されており、吸着部とねじとの間で摩擦が生じず、ねじに傷が付きにくい等の利点も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-178231号広報
【特許文献2】特開2021-154463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のねじ締め機は、上述のように吸着部とドライバビットとが係合しているため、ねじがワークに着座して回転停止した瞬間、当該ねじには、ドライバビットの慣性モーメントと吸着部が有する慣性モーメントの両方が付加される。しかも、吸着部は、ドライバビットより外径が大きく、慣性モーメントもドライバビットより大きくなりやすい。つまり、特許文献2に記載のねじ締め機は、吸着部とドライバビットとが係合しているため、ねじが着座した瞬間、慣性モーメントに起因して発生する締付けトルク(以下、衝撃トルクという)が増大し易い。結果、衝撃トルクが増大し、適正値な締付けトルクを超過するため、ねじやワークの破損を引き起こすという問題があった。逆に慣性モーメントを小さくするために回転速度を遅くすると、ねじ締めにかかる時間が長くなり作業効率が低下するという問題も生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、ねじを効率良く吸着保持可能かつ着座時に発生する衝撃トルクが増大しないように構成されたねじ締め機の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、ねじと係合する係合部を有するとともに回転駆動源の駆動を受けて回転可能に構成されたドライバビットと、前記ドライバビットを回転自在に内包するスクリューガイドと、前記スクリューガイドと負圧手段とを連続させるハウジングと、前記スクリューガイドの開口端部に装着される吸着部材とを備えたねじ締め機において、前記ハウジングが前記スクリューガイドを回転自在に保持し、前記吸着部材が前記ドライバビットに対して相対回転可能に構成されていることを特徴とする。なお、前記吸着部材は、ねじとの当接部分が弾性部材で構成されていることが好ましい。また、前記吸着部材の中心に貫通形成される吸着口の穴径がドライバビットの外径以下の寸法に設定されていることが好ましい。さらに、前記吸着部材には、円環形状の嵌合部を有し、前記スクリューガイドは、前記嵌合部と嵌合する保持溝を有していることが好ましい。また、前記スクリューガイドは、前記ハウジングに対して軸方向の相対移動可能に構成されていることが好ましい。さらに、前記ドライバビットは、前記回転駆動源に対して、軸方向の相対移動可能に連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、回転自在に構成されたスクリューガイドの先端に吸着部材を備えているため、ねじと吸着部材との間に隙間が生じ難く密着性が向上する。これにより、スクリューガイドやハウジング内の負圧を保持しやすい。これにより、効率良くねじを吸着保持可能等の利点がある。また、吸着部材がドライバビットに対して回転可能に構成されており、ねじが着座した際、吸着部材およびスクリューガイドがドライバビットおよびねじに対して回転するため、ねじに慣性モーメントがほとんど伝達されない。これにより、衝撃トルクが増大せず、高精度にねじ締め可能等の利点もある。なお、前記吸着部材がねじとの当接部分が弾性部材で構成されているため、吸着部材がねじに対して相対回転した際にねじの表面に摩擦痕が発生しない等の利点もある。また、前記吸着部材の中心に貫通形成される吸着口の穴径がドライバビットの外径以下の寸法に設定されているため、吸着部材とドライバビットとの間でも摩擦が生じる。このため、ねじ締め時、吸着部材がドライバビットおよびねじとともに回転することが可能となり、ねじとの当接部分の摩耗が抑制される等の利点がある。さらに、前記吸着部材とスクリューガイドとが円環形状の嵌合部と保持穴とで嵌合しており、吸着部材がスクリューガイドと回転方向にずれることが可能であるため、より衝撃トルクを低減させることが可能になる等の利点もある。また、前記スクリューガイドおよびドライバビットがハウジングおよび回転駆動源に対して軸方向に相対移動可能に構成されているため、ねじがワーク接触した瞬間の衝撃を和らげることが可能等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るねじ締め機を示す側面図である。
図2】本発明に係るねじ締め機の構造を示す要部拡大一部断面側面図である。
図3】本発明に係るねじ締め機の構造を示す要部拡大一部断面側面図であり、(a)は、図2のA部拡大図であり、(b)は、(a)のB-B線断面図である。
図4】本発明に係るねじ締め機の他の実施形態を示す要部拡大断面側面図である。
図5図4から次の状態に移行した状態を示す要部拡大断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において10は、ワーク(図示せず)に締結部品の一例であるねじSを締結するねじ締め機である。このねじ締め機10は、移動手段の一例である多関節ロボット20とこの多関節ロボット20の駆動を受けて水平移動および昇降移動するドライバユニット30と、移動手段およびドライバユニット30の駆動を制御する制御部40とを有している。
【0010】
前記多関節ロボット20は、複数個の腕部21と、これら腕部21を接続する複数個の関節部22とを備えている。この多関節ロボット20の関節部22には、腕部21を揺動させる揺動駆動源および腕部21を回転させる回転駆動源が設けられており、これらの駆動は、前記制御部40により制御されている。このため、駆動時、ドライバユニット30を任意の位置かつ任意の向きに搬送可能となる。
【0011】
前記ドライバユニット30は、図2に示すように記多関節ロボット20の先端に連結される連結プレート31を有しており、この連結プレート31には、中空筒状のハウジング32が固定されている。このハウジング32は、その下端にガイドホルダ321を備えており、このガイドホルダ321には、ボールベアリング322を介して略中空円筒形状のスクリューガイド33が回転自在に保持されている。このスクリューガイド33は、その下端開口端部付近の内壁に円環形状の保持溝331が形成されており、この保持溝331には、中心に吸着口341が貫通した略円環形状の吸着部材34が嵌合している。また、前記ハウジング32には、負圧手段に連続するホース継手323が装着されているとともに、このホース継手323およびスクリューガイド33との連通部分以外から空気が侵入しないようパッキン等のシール材324a,324bによって隙間が気密に密閉されている。これら構造により、負圧手段が駆動すると前記ハウジング32およびスクリューガイド33の内部が負圧となり、スクリューガイド33の下端開口部から吸気可能となる。
【0012】
前記吸着部材34は、図3の(a)に示すように前記保持溝331に嵌合する円環部342と、この円環部342の先端側に連続するテーパ形状のパッド部343とから構成されている。この吸着部材34は、パッド部343がスクリューガイド33から突出するよう配されており、当該パッド部343は、その外径が前記スクリューガイド33の外径とほぼ同径に構成されている。この吸着部材34は、少なくともパッド部343が樹脂等の弾性部材で構成されており、ねじSを吸着保持した際、当接しているねじSの頭部形状に従い変形可能に構成されている。なお、本実施形態において、前記吸着部材34は、一般にVリングやVパッキン等の名称で呼ばれる回転軸用ゴムシールであり、全体がゴムから構成されている。
【0013】
また、前記ハウジング32上には、回転駆動源の一例であるACサーボモータ35(以下、締結モータ35という)がその出力軸351をハウジング32内に挿入するよう固定されている。この締結モータ35の出力軸351には、一体に回転可能な軸継手36が連結されており、当該軸継手36には、ドライバビット37がピン361によって吊下されている。このドライバビット37は、軸継手36と一体に回転可能に嵌合しており、その先端には、ねじSの駆動穴と嵌合可能な係合部371が形成されている。また、ドライバビット37は、係合部371が前記吸着部材34の吸着口341に内接するよう、係合部371の直径が前記吸着部材34の吸着口341の穴径と同径または若干大きく設定されている。また、係合部371の谷部372は、図3の(a)および図3の(b)に示すようにその上端が前記パッド部343の上面より上側になるよう設計されており、当該谷部372と吸着口341との隙間が通気経路として作用するように構成されている。
【0014】
なお、前記多関節ロボット20および締結モータ35は、制御部40に接続されており、当該制御部40によってその駆動を制御されている。また制御部40には、所定のねじ待機位置までねじSを供給するねじ供給装置や前記負圧手段等の外部装置も接続されており、これら外部装置の駆動も制御可能に構成されている。
【0015】
次に上記のように構成されたねじ締め機10の作用を説明する。 起動信号が入力されると、制御部40は、外部のねじ供給装置を駆動させて所定のねじ待機位置までねじSを供給する。ねじSがねじ待機位置に供給されると、制御部40は、前記多関節ロボット20を駆動させて、ドライバユニット30をねじ待機位置の上方に移動させる。ドライバユニット30がねじ待機位置上に達すると、制御部40は、前記締結モータ35を駆動してドライバビット37を低速で回転させるとともに前記吸着部材34がねじSに当接する高さまでドライバユニット30を下降させる。これにより、吸着部材34およびドライバビット37の下端がねじSに当接した際、ドライバビット37の係合部371がねじSの駆動穴に嵌合する。制御部40は、前記ドライバビット37の回転開始と同時またはドライバビ
ット37がねじSと嵌合した後に前記負圧手段を駆動させてねじSを吸着保持する。この時、前記パッド部343が弾性部材で構成され、ねじSの頭部に従い変形することで頭部とパッド部343とが密着して空気が通過可能な隙間が生じない。これにより、負圧を維持し易くなり、比較的弱い力の負圧機構であってもねじSを十分強力に吸着保持することが可能で作業効率が向上する。
【0016】
上述のようにねじSを吸着保持した後、制御部40は、前記締結モータ35を停止させるとともに前記多関節ロボット20を駆動させてドライバユニット30をワーク上に移動させる。ドライバユニット30がワーク上に達すると制御部40は、前記締結モータ35および移動機構を駆動させて、ドライバビット37を高速かつ低トルクで回転させるとともにドライバユニット30をワークに向けて下降させる。これにより、ねじSがワークに締結される。この時、スクリューガイド33がガイドホルダ321に対して回転可能に構成されているため、吸着部材34とドライバビット37およびねじSとの間で発生する摩擦力を受けて前記吸着部材34およびスクリューガイド33がドライバビット37およびねじSとともに回転可能となる。これにより、吸着部材34の摩耗が抑制される。また、ねじSと吸着部材34との間に隙間ができず空気の侵入が防止されるため、スクリューガイド33内の負圧を維持できる。結果、ねじSが吸着部材34から脱落することを防止する。
【0017】
上述のようなねじ締め動作時、ねじSは、ワークに着座すると回転が停止する。しかしながらドライバビット37やスクリューガイド33等はねじSが着座する直前まで前述のように高速かつ低トルクで回転しているため、回転方向の慣性モーメントを保有しており、即座に停止することができない。このため、停止状態のねじSには、ドライバビット37を介して締め付け方向の慣性モーメントが付加される。この時、吸着部材34とドライバビット37とが係合しておらず、相対回転可能に構成されているため、パッド部343がねじSおよびドライバビット37に対して滑り、ねじSにパッド部343やスクリューガイド33の慣性モーメントがほとんど伝達されない。これにより、ドライバビット37より外径が大きく、大きい慣性モーメントを有するスクリューガイド33や吸着部材34の慣性モーメントがほとんどねじSに伝達されない。このため、着座した瞬間のねじSに付加される慣性モーメントに起因する締付けトルク(以下、衝撃トルクという)が増大することがなく、当該衝撃トルクが適正な締付けトルクを超過するのを防止できる。結果、衝撃トルクによって、正確なねじ締めが阻害されたり、ねじSやワークが破損されたりすることがない。同時に、衝撃トルクが大きくなり難いため、ねじSが着座する直前あるいは着座するまでドライバビット37を高速回転させることが可能でサイクルタイムが短縮される等の利点もある。また、吸着部材34が樹脂等のねじSよりも柔らかい物質から構成されているため、吸着部材34がねじSに対して相対回転した際、当該吸着部材34と擦れてもねじSの頭部表面に傷が生じることがない。
【0018】
なお、上記ねじの着座時、吸着部材34は、その円環部342がスクリューガイド33の内壁に形成された円環形状の保持溝331に嵌合する構造であるため、スクリューガイド33に対して相対回転することも可能となっている。このため、吸着部材34は、普段スクリューガイド33と一体に回転するものの想定外に大きな力が働いてスクリューガイド33が過度に回転しようとした際にスクリューガイド33の回転運動から離脱することができる。結果、万一スクリューガイド33が過度な回転してもその回転による衝撃トルクがねじSに伝達されることがなく当該ねじSやワーク等の破損を防止する。
【0019】
上述のようにねじSが着座後、制御部40は、ドライバビット37を低速かつ高トルクで回転させて適正な締付けトルクでねじSを締付ける。この時、前述のように衝撃トルクが適正な締付けトルクを超過していないため、ねじSを適正な締付けトルクで締付け可能となる。その後、制御部40は、多関節ロボット20を駆動させて、ドライバユニット30を当初待機位置まで搬送させる。
【0020】
上述のように吸着部材34は、ねじSおよびドライバビット37並びにスクリューガイド33との間で生じる摩擦によってこれらを一体に回転させているため、長期間使用することと徐々に摩耗していく。この時、吸着部材34がスクリューガイド33の保持溝331に嵌合している構造であるため、容易に吸着部材34のみを交換できる。また、一般的な部品であるVリングを吸着部材34として用いることで安価に交換可能となる。
【0021】
また、ねじ締め機10は、ドライバビット37の外径が吸着部材34の吸着口341の穴径とほぼ同じ寸法に構成されており、係合部371の谷部372が通気経路として作用しているため、頭部の外径が吸着口341の穴径以上に構成されているねじSであれば、スクリューガイド33や吸着部材34を交換することなく吸着保持することが可能となる。このため、交換作業が不要となり、作業効率が向上する。さらに、上述のようにスクリューガイド33の外径より大きい頭部外径を有するねじSも吸着可能であるため、ねじSの頭部が入る場所であれば、ねじSが着座するまで吸着保持しながら締結可能となる。このため、特許文献1にしめすような従来のねじ締め機のように、ねじSの外径より大きなスクリューガイド33では、進入できない狭い袋穴等であってもねじを吸着保持して締結可能となる。なお、特許文献1にしめすようなねじ締め機の場合、空気が勢いよく流れることができなければ、ねじSを吸着保持できないため、仮に袋穴内にスクリューガイド33が進入できても袋穴内では吸引の勢いが弱まりねじSが脱落することが多かった。しかしながら、本件ねじ締め機は、吸着部材34が密閉されており、空気が流れる必要がないため、袋穴等であってもねじSを脱落させることなく締結可能である。しかも、ねじSが脱落しないため、再度ビットとねじSとを嵌合させる動作も必要無く、サイクルタイムを短い時間で安定させることができる。
【0022】
また、上記締結動作時、制御部40は、ねじSとワークとが螺合している途中に前記負圧手段を停止させてスクリューガイド33内の負圧を解除しても良い。この場合、ねじSを締結開始時、ねじSを吸着保持してその姿勢を安定させることができる一方、ねじSの着座時、吸着部材34とねじSとの密着が解除されるため、吸着部材34が容易に滑ることが可能となる。これにより、衝撃トルクをさらに弱くすることが可能となり、より高精度なねじ締めが可能となる。また、上述のようにスクリューガイド33の下端開口部がねじSに閉鎖されている状態で負圧手段を停止させているため、スクリューガイド33の下端開口部からワーク表面に蓄積された埃やねじ込み時に生じた切り粉等を吸引することがない。よって、当該埃や切り粉等によってスクリューガイド33や、ハウジング32の内部が埃等により汚染されることを防止できる。
【0023】
以下、本発明の他の実施形態であるドライバユニット30′を図4および図5に基づいて説明する。 このドライバユニット30′は、図4に示すように前記ガイドホルダ321′がハウジング32に対して昇降自在に構成されており、このガイドホルダ321′およびハウジング32の間には、ガイドホルダ321′をハウジング32から離反する方向に付勢する付勢ばね325が内包されている。また、前記軸継手36には、上下方向に延びる長穴が形成されており、この長穴には、前記ピン361が嵌合している。このためドライバビット37は、長穴の長さ相当分昇降移動可能になるとともに、軸継手36内に封入されるクッションばね362によって常時下方に付勢されている。このように構成されたねじ締め機11は、図5に示すように付勢ばね324およびクッションばね362が撓むことにより、ねじSがワークに当接した瞬間に生じる衝撃を吸収可能となり、当該衝撃によるねじS山やワークの破損を防止可能となる。
【0024】
なお、本発明に係るねじ締め機10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、移動機構は、図1に示すような多関節のロボットアームに限定されず、水平方向に往復可能な直進機構および上下方向に駆動する昇降機構からなる直交ロボット等、どのような機構であってもよい。また、ドライバビット37の係合部371は、吸着口341との間に通気可能な隙間ができれば、十字形状に限定されず、六角形状やヘックスローブ形状等、その他の非円形形状であっても何ら問題ない。
【符号の説明】
【0025】
10 … ねじ締め機 30 … ドライバユニット 32 … ハウジング 321… ガイドホルダ 33 … スクリューガイド 331… 保持溝 34 … 吸着部材 341… 吸着口 342… 円環部 343… パッド部 35 … 締結モータ 37 … ドライバビット 371… 係合部 S … ねじ
図1
図2
図3
図4
図5