(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173710
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20231130BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20231130BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B23C5/20
B23B27/14 C
B23C5/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086152
(22)【出願日】2022-05-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】花村 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
【テーマコード(参考)】
3C022
3C046
【Fターム(参考)】
3C022HH01
3C022LL02
3C046CC06
(57)【要約】
【課題】複数の区間の切れ刃を使用可能であって、使用中の区間の切れ刃から排出された切りくずによって隣接する区間の未使用の切れ刃が傷つくことを抑制できる切削インサートを提供する。
【解決手段】上面4と周側面6とが交差する稜線10は、複数の区間AB,BC,CD,…に分割されている。複数の区間AB,BC,CD,…の各々、例えば区間ABは、副切れ刃11と、該副切れ刃11よりも長い主切れ刃13と、を一つずつ含んでいる。主切れ刃13は、副切れ刃11から遠ざかるに従って下面5から遠ざかるように角度αで傾斜している。主切れ刃13から取付け孔9へ向かうとき、上面4の起伏は、上面4と下面5とが対向する上下方向zに変化がない、又は、上面4から下面5への向きz2に下がる、ように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、該上面とは反対側の下面と、前記上面及び前記下面を繋ぐ周側面と、前記上面及び前記下面を貫通する取付け孔と、を有し、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、前記下面は、前記上面と略同一の形状に形成され、
前記上面と前記周側面とが交差する稜線は、複数の区間に分割され、該複数の区間の各々は、副切れ刃と、該副切れ刃よりも長い主切れ刃と、を一つずつ含み、
前記主切れ刃は、前記副切れ刃から遠ざかるに従って前記下面から遠ざかるように傾斜し、
前記主切れ刃から前記取付け孔へ向かうとき、前記上面の起伏は、前記上面と前記下面とが対向する上下方向に変化がない、又は、前記上面から前記下面への向きに下がる、ように構成されている、
切削インサート。
【請求項2】
上面と、該上面とは反対側の下面と、前記上面及び前記下面を繋ぐ周側面と、前記上面及び前記下面を貫通する取付け孔と、を有し、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、前記下面は、前記上面と略同一の形状に形成され、
前記上面と前記周側面とが交差する稜線は、複数の区間に分割され、該複数の区間の各々は、副切れ刃と、該副切れ刃よりも長い主切れ刃と、を一つずつ含み、
前記主切れ刃は、前記副切れ刃から遠ざかるに従って前記下面から遠ざかるように傾斜し、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸に直交する仮想平面に平行な平坦面と、該平坦面の外周に設けられ、前記仮想平面に対して第1の角度で傾斜しているすくい面と、該すくい面と前記主切れ刃との間に設けられ、前記仮想平面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度で傾斜しているランドと、を含み、
前記中心軸に沿って見た平面視において、直線状に形成された前記主切れ刃から前記取付け孔の外縁までの最短距離の長さを基準値とし、
前記主切れ刃の任意の位置で該主切れ刃に直交するように切断した任意の断面において、直線状に形成された前記ランドの輪郭を延長した仮想直線が前記平坦面に交差する仮想交点から前記主切れ刃までの距離を前記中心軸に直交する方向に沿って測定した長さを前記任意の断面の切断位置によって変化する可変値としたとき、
全ての前記可変値が前記基準値の半分よりも大きくなるように構成されている、
切削インサート。
【請求項3】
前記上面から見た平面視において、前記副切れ刃と前記主切れ刃とがなす角度は、140°以上かつ155°以下である、
請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記上面と前記下面とが対向する上下方向において、前記主切れ刃のうち前記下面に最も近い位置を最下点とし、前記下面から最も遠い位置を最上点としたとき、前記最下点と前記最上点とを通る仮想直線は、前記中心軸に直交する仮想平面に対して1°以上かつ10°以下の角度で傾斜している、
請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記上面は、前記中心軸について六回対称又は五回対称に形成されている、
請求項4に記載の切削インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
正面フライス等の転削工具において、工具本体に装着した状態で側面視における主切れ刃の傾斜角(以降「見かけの軸方向傾斜角」と呼ぶ)を大きくすると切れ味が向上する。見かけの軸方向傾斜角が大きくなるように、転削工具用の切削インサートの主切れ刃は、副切れ刃から遠ざかるに従い下面に近づく右下がりの形状又は下面に平行な形状になることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
片面仕様の切削インサートであって取付け孔の中心軸に対して傾斜した側面を有するものであれば、工具本体に切削インサートを取り付けるとき、側面の逃げ角の範囲内で見かけの軸方向傾斜角が大きくなるように上面を傾斜させることができる。そのような切削インサートでは、主切れ刃が右上がりになる形状も散見される(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0004】
一方、両面仕様の切削インサートは、側面が取付け孔の中心軸に対して平行であるため、見かけの軸方向傾斜角が大きくなるように転削工具の軸方向に対して上面を傾斜させると、副切れ刃の逃げ面が被削材に干渉する。見かけの軸方向傾斜角を大きくしたい場合、両面仕様の切削インサートでは、主切れ刃が右上がりになる形状はほとんど見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-128816号公報
【特許文献2】特開2009-202324号公報
【特許文献3】特開2011-121131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
主切れ刃の形状が右下がりであると、使用中の区間の切れ刃から排出された切りくずが右隣にある他の区間の切れ刃に接触しやすい(
図9参照)。右隣の区間に使用済みの切れ刃ではなく未使用の切れ刃があると、切りくずで未使用の切れ刃が傷ついてしまう。使用前に切れ刃が損傷していると、その切れ刃が使用されずに経済性が損なわれる。
【0007】
そこで、本発明は、複数の区間の切れ刃を使用可能であって、使用中の区間の切れ刃から排出された切りくずによって隣接する区間の未使用の切れ刃が傷つくことを抑制できる切削インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る切削インサートは、上面と、該上面とは反対側の下面と、上面及び下面を繋ぐ周側面と、上面及び下面を貫通する取付け孔と、を有している。上面は、上面の中心と下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、下面は、上面と略同一の形状に形成されている。上面と周側面とが交差する稜線は、複数の区間に分割され、該複数の区間の各々は、副切れ刃と、副切れ刃よりも長い主切れ刃と、を一つずつ含んでいる。主切れ刃は、副切れ刃から遠ざかるに従って下面から遠ざかるように傾斜している。主切れ刃から取付け孔へ向かうとき、上面の起伏は、上面と下面とが対向する上下方向に変化がない、又は、上面から下面への向きに下がる、ように構成されている。
【0009】
本発明の他の一態様に係る切削インサートは、上面と、該上面とは反対側の下面と、上面及び下面を繋ぐ周側面と、上面及び下面を貫通する取付け孔と、を有している。上面は、上面の中心と下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、下面は、上面と略同一の形状に形成されている。上面と周側面とが交差する稜線は、複数の区間に分割され、該複数の区間の各々は、副切れ刃と、該副切れ刃よりも長い主切れ刃と、を一つずつ含んでいる。主切れ刃は、副切れ刃から遠ざかるに従って下面から遠ざかるように傾斜している。上面は、上面の中心と下面の中心とを通る中心軸に直交する仮想平面に平行な平坦面と、該平坦面の外周に設けられ、仮想平面に対して第1の角度で傾斜しているすくい面と、該すくい面と主切れ刃との間に設けられ、仮想平面に対して第1の角度よりも小さい第2の角度で傾斜しているランドと、を含んでいる。中心軸に沿って見た平面視において、直線状に形成された主切れ刃から取付け孔の外縁までの最短距離の長さを基準値とする。主切れ刃の任意の位置で該主切れ刃に直交するように切断した任意の断面において、直線状に形成されたランドの輪郭を延長した仮想直線が平坦面に交差する仮想交点から主切れ刃までの距離を中心軸に直交する方向に沿って測定した長さを任意の断面の切断位置によって変化する可変値とする。全ての可変値が基準値の半分よりも大きくなるように構成されている。
【0010】
見かけの軸方向傾斜角は、転削工具の側面から見た主切れ刃の傾斜角、ラジアルレーキ、切込み角の三要素で決定される。切削インサートにおいて主切れ刃が右上がりに傾斜していても負の角度のラジアルレーキを負の向きに大きくすることで見かけの軸方向傾斜角が正の角度になるようにバランスをとることができる。これらの態様は、上面及び下面が略同一の形状に形成されている両面仕様において、主切れ刃が副切れ刃から遠ざかるに従って下面から遠ざかるように傾斜している右上がりの形状であり、かつ上面が被削材との間に隙間を確保しやすい形状に構成されている点で共通している。前者は、上面の中心に近づくほど、上面の起伏が下がることはあっても上がることがないため、中心に向かうほど上面の高さが低くなる。上面の隆起がないため、被削材との間に隙間を確保しやすい。後者は、上面に隆起があると小さくなる性質の可変値が、主切れ刃の低切込み側であっても高切込み側であっても基準値の半分を超えている。上面の隆起が小さいため、被削材との間に隙間を確保しやすい。これらの態様によれば、ラジアルレーキをより負の向きにしても上面と被削材との間に切りくずを噛み込みにくい形状であるため、右上がりの主切れ刃を採用して使用中の区間の切れ刃から排出された切りくずによって隣接する区間の未使用の切れ刃が傷つくことを抑制できる。
【0011】
上記態様において、上面から見た平面視において、副切れ刃と主切れ刃とがなす角度は、140°以上かつ155°以下であってもよい。
【0012】
この態様によれば、切込み角が一般的な45°よりも小さい25°以上かつ40°以下になる。主切れ刃が右上がりに傾斜していても切込み角を小さくして見かけの軸方向傾斜角が正の角度になるようにバランスをとることができる。
【0013】
上記態様において、上面と下面とが対向する上下方向において、主切れ刃のうち下面に最も近い位置を最下点とし、下面から最も遠い位置を最上点としたとき、最下点と最上点とを通る第2の仮想直線は、上面の中心と下面の中心とを通る中心軸に直交する仮想平面に対して1°以上かつ10°以下の角度で傾斜していてもよい。
【0014】
この態様によれば、主切れ刃の傾斜が1°以上であるため、主切れ刃から排出される切りくずに十分な角度をつけて右隣の区間の切れ刃から遠ざけることができる。主切れ刃の傾斜が大きくなるほど被削材に対して高切込み側から先に切削が始まる。この態様によれば、主切れ刃の傾斜が10°以下であるため、高切込み側において主切れ刃に過大な負荷がかかることを抑制できる。
【0015】
上記態様において、上面は、中心軸について六回対称又は五回対称に形成されていてもよい。
【0016】
この態様によれば、両面に多数の切れ刃を有する経済性に優れた切削インサートにおいて本発明の優れた効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の区間の切れ刃を使用可能であって、使用中の区間の切れ刃から排出された切りくずによって隣接する区間の未使用の切れ刃が傷つくことを抑制できる切削インサートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の切削インサートが取り付けられた転削工具の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された転削工具を上面が直線に近似される方向から見た側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された転削工具を副切れ刃側から見た正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の切削インサートの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された切削インサートを第1側面側から見た側面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された切削インサートを上面側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、
図6中のVII-VII線に沿う低切込み側の断面図である。
【
図8】
図8は、
図6中のVIII-VIII線に沿う主切れ刃の中央の断面図である。
【
図9】
図8は、
図5中のIX-IX線に沿う高切込み側の断面図である。
【
図10】
図10は、主切れ刃から排出される切りくずについて本発明の切削インサートと従来の切削インサートとを比較して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。本発明の一実施形態の切削インサート3は、
図5に示すように、上面4と下面5とが同じ形状の両面仕様であって、主切れ刃13が低切込み側から高切込み側へ向かうに従い下面5から遠ざかるように右上がりに傾斜していることが特徴の一つである。切りくずが右下ではなく右上に排出されるため、
図10に示すように、右隣の区間の切れ刃が傷つくことを抑制できる。
【0020】
上面4及び下面5がおおむね平坦な場合、見かけの軸方向傾斜角jは、工具本体2に装着した状態で切削インサート3の上面4が直線に近似される方向から見た主切れ刃13の傾斜角i(
図2に示す)、ラジアルレーキk(
図3に示す)、切込み角(180°-β)(
図6に示す)の三要素で決定される。切削インサート3の主切れ刃13が右上がりに傾斜していると、主切れ刃13の傾斜角iが小さくなる。切削インサート3が取り付けられた転削工具1は、見かけの軸方向傾斜角jが正の角度になるように、負の角度のラジアルレーキkをより負の向きにし、かつ切込み角(180°-β)を小さくしてバランスをとっている。
【0021】
負の角度のラジアルレーキkを更に負の向きに大きくすると、切削インサート3の上面4と被削材との間に切りくずを噛み込みやすくなる。本発明の一実施形態の切削インサート3は、
図4、
図7乃至
図9に示すように、上面4に凸部となるボス面等がないため、上面4と被削材との間に十分な隙間を確保できる。そのため、ラジアルレーキkをより負の向きにしても切りくずを排出しやすい。以下、図面を参照して各構成について詳しく説明する。
【0022】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態の切削インサート3が取り付けられた転削工具1の一例を示す側面図である。
図3は、
図1に示された転削工具1を副切れ刃11側から見た正面図である。
図1乃至
図3に示すように、転削工具1は、例えば正面フライス工具であり、円盤状に形成された工具本体2と、工具本体2の外周部に取り付けられた交換可能な複数の切削インサート3と、を備えている。
【0023】
図1に示された見かけの軸方向傾斜角jの定義について説明する。上面4に平行で全ての副切れ刃11と交差する仮想平面をs(
図5に示す)とする。仮想平面s上に投影した副切れ刃11を延長した仮想線と仮想平面s上に投影した主切れ刃13を延長した仮想線との仮想交点をt(
図6に示す)とする。仮想交点tを通り転削工具1の回転軸AXに直交する仮想直線をu(
図2に示す)とする。見かけの軸方向傾斜角jは、回転軸AXと仮想交点tとが重なるように仮想直線uに沿って見たときの主切れ刃13と転削工具の回転軸AXとがなす角度j(
図1に示す)である。
【0024】
工具本体2に装着した状態で切削インサート3の上面4が直線に近似される方向から見た主切れ刃13の傾斜角i(
図2に示す)は、-14°以上かつ-6°以下の負の角度になっている。図示した例では、-10°になっている。転削工具1は、傾斜角iが小さくても見かけの軸方向傾斜角jが正の角度になるように負の角度のラジアルレーキk(
図3に示す)をより負の向きにし、かつ切込み角(180°-β)(
図6に示す)を小さくしてバランスをとっている。ラジアルレーキkは、-30°以上かつ-10°以下の負の角度が好ましい。図示した例では、ラジアルレーキkが-15°である。切込み角(180°-β)は、25°以上かつ40°以下が好ましい。図示した例では、切込み角(180°-β)が30°である。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態の切削インサート3の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、切削インサート3は、上面4と、該上面4とは反対側の下面5と、上面4及び下面5を繋ぐ周側面6と、上面4及び下面5を貫通する取付け孔9と、を有している。取付け孔9の中心軸は、上面4の中心と下面5の中心とを通る切削インサート3の中心軸Oと一致している。
【0026】
以下の説明において、中心軸Oの軸方向に平行な方向を上下方向zと呼ぶ。上下方向zにおいて、上面4と下面5とは互いに対向している。下面5から見て上面4側を上側z1と呼び、上面4から見て下面5側を下側と呼ぶ。さらに、中心軸Oに直交する方向を切削インサート3の径方向rと呼び、中心軸Oを中心とした円周に沿う方向を切削インサート3の周方向θと呼ぶ。
【0027】
切削インサート3は、上面4と下面5とを反転して使用可能な両面仕様の切削インサートであり、下面5は、上面4と略同一の形状に形成されている。転削工具1において下面5が固定されるように工具本体2に取り付けてもよいし、上面4が固定されるように工具本体2に取り付けてもよい。そのため、代表して上面4について詳しく説明し、下面5については重複する説明を省略する。
【0028】
上面4は、中心軸Oについて回転対称に形成されている。好ましくは、六回対称又は五回対称に形成されている。上面4の輪郭は、複数の第1コーナA,B,C,…を有する略多角形に形成されている。図示した例では、上面4が中心軸Oについて六回対称(60°対称)であり、略正六角形(
図6参照)に形成されている。切削インサート3は、両面に多数の切れ刃11~13を有しているため経済性に優れている。
【0029】
上面4と周側面6とが交差する稜線10は、複数の第1コーナA,B,C,…の各々と一対一で対応する複数の区間(多角形の辺)AB,BC,CD,…に分割されている。複数の区間AB,BC,CD,…の各々には、副切れ刃11とコーナ切れ刃12と主切れ刃13とが一つずつ形成されている。複数の区間AB,BC,CD,…の各々が、一組の切れ刃11~13を含み、一組の切れ刃11~13が副切れ刃11とコーナ切れ刃12と主切れ刃13とを一つずつ含むと言い換えてもよい。
【0030】
詳しく説明すると、区間ABは、該区間ABに対応する第1コーナAに隣接して形成された副切れ刃11と、対応する第1コーナAとは反対側から副切れ刃11に隣接して形成されたコーナ切れ刃12と、コーナ切れ刃12に隣接して形成され、かつ第1コーナAに隣接する他の第1コーナBに向かって延在する主切れ刃13と、を含んでいる。区間ABは、副切れ刃11とは反対側すなわち高切込み側から主切れ刃13に隣接し、右隣の第1コーナBと主切れ刃13との間を連結する連結部14を更に含んでいてもよい。
【0031】
主切れ刃13は、切れ刃11、12,13のうちで最も長く、副切れ刃11及びコーナ切れ刃12よりも長く形成されている。コーナ切れ刃12は、上面4側から見て円弧状に湾曲している。副切れ刃11は、コーナ切れ刃12を挟んで主切れ刃13とは反対側に位置している。副切れ刃11は、加工底面の粗さを小さくする役割をもつ切れ刃であってさらい刃とも呼ばれる。副切れ刃11は、工具本体2に切削インサート3が装着された状態で、転削工具1の回転軸AXに略直交する向きに配置される。主切れ刃13は、工具本体2に切削インサート3が装着された状態で、副切れ刃11よりも転削工具1の回転軸AXから遠い外側に配置される。
【0032】
以下の説明において「第1コーナA,B,C,…」を単に「コーナA,B,C,…」と呼ぶことがある。「コーナ切れ刃12」を「第2コーナ12」と呼ぶことがある。「区間に対応する第1コーナ」の隣の「他の第1コーナ」を「右隣の第1コーナ」と呼ぶことがある。「区間に対応する第1コーナ」を当該区間の「始点」と呼び、「対応する第1コーナ」の隣の「他の第1コーナ」を当該区間の「終点」と呼ぶことがある。
【0033】
区間ABと同様に、区間BC,CD,DE,…の各々は、該区間BC,CD,DE,…に対応する第1コーナB,C,D,…に隣接して形成された副切れ刃11と、対応する第1コーナB,C,D,…とは反対側から副切れ刃11に隣接して形成されたコーナ切れ刃12と、該コーナ切れ刃12に隣接して形成され、かつ右隣の第1コーナC,D,F,…に向かって延在する主切れ刃13と、主切れ刃13の右端と右隣の第1コーナC,D,F,…との間を連結する連結部14と、を含んでいる。区間AB,BC,CD,…の各々に形成された副切れ刃11、コーナ切れ刃12、主切れ刃13、連結部14は、この順で切削インサート3の周方向θに反時計回りに並んでいる。
【0034】
上面4は、切削インサート3の中心軸Oに直交する仮想平面V(
図5に示す)に平行な平坦面43と、該平坦面43の外周に設けられたすくい面42と、該すくい面と主切れ刃との間に設けられたランド41と、を含んでいる。ランド41を第1すくい面と呼び、すくい面42を第2すくい面と呼んでもよい。仮想平面Vを仮想の水平面と呼んでもよい。
【0035】
上面4と下面5との間を繋ぐ周側面6は、切削インサート3の中心軸Oに平行に形成されている。つまり、切削インサート3は、副切れ刃11及び主切れ刃13の逃げ角が0°に形成されているネガティブタイプの切削インサートである。周側面6は、複数の区間AB,BC,CD,…の各々と一対一で対応する複数の側面61,62,63,…に分割されている。図示した例では、周側面6が、第1乃至第6側面61~66に分割されている。
【0036】
各々の側面(例えば第1側面61)は、副切れ刃11に臨む該副切れ刃11の逃げ面611と、主切れ刃13に臨む該主切れ刃13の逃げ面612と、を含んでいる。切削インサート3の周方向θにおいて、副切れ刃11の逃げ面611と主切れ刃13の逃げ面612とが一つずつ交互に並んでいる。図示した例では、逃げ面611,612の各々が、曲面ではなく平面に形成されている。連結部14は、主切れ刃13の逃げ面612と同じ平面上に位置していてもよいし、異なる平面上に位置していてもよい。
【0037】
図5は、
図4に示された切削インサートを第1側面61側から見た側面図である。
図5に示すように、各々の区間(例えば、区間AB)において、当該区間に形成された主切れ刃13は、当該区間に形成された副切れ刃11から遠ざかるに従って下面5から遠ざかるように右上がりに傾斜している。上下方向zにおいて、主切れ刃13のうち下面5に最も近い位置を最下点131とし、下面5から最も遠い位置を最上点132とする。
【0038】
最下点131と最上点132とを通る仮想直線wが、中心軸Oに直交する仮想平面xyに対して傾斜している角度をαとする。角度αは、1°以上かつ10°以下であることが好ましい。角度αが1°以上であれば、主切れ刃13から排出される切りくずに十分な角度をつけて右隣にある第1コーナ(図示した例では第1コーナB)から遠ざけることができる。角度αが10°以下であれば、副切れ刃11から遠い高切込み側において主切れ刃13に過大な負荷がかかることを抑制できる。
【0039】
図6は、
図4に示された切削インサート3を中心軸Oに沿って上面4側から見た平面図である。図示した例では、副切れ刃11及び主切れ刃13の各々が平面視で直線状になるように形成されている。平面視において、副切れ刃11と主切れ刃13とがなす角度(内角)βは、140°以上かつ155°以下が好ましい。切込み角(180°-β)が一般的な45°よりも小さい25°以上かつ40°以下になるため、主切れ刃13が側面視において右上がりに傾斜していても見かけの軸方向傾斜角jが正の角度になるようにバランスをとることができる。
【0040】
図7乃至
図9は、
図6中のVII-VII線、VIII-VIII線、IX-IX線のそれぞれに沿う断面図である。詳しく述べると、
図8は、副切れ刃11と連結部14とから等距離にある主切れ刃13の中央の位置で主切れ刃13に直交するように切削インサート3を切断した断面図である。
図7は、中央よりも副切れ刃11に近い低切込み側の位置で主切れ刃13に直交するように切削インサート3を切断した断面図である。
図9は、中央よりも副切れ刃11から遠い高切込み側の位置で主切れ刃13に直交するように切削インサート3を切断した断面図である。
【0041】
図7乃至
図9に示すように、ランド41の断面は、輪郭が直線状になるように形成されている。同様に、すくい面42の断面は、輪郭が直線状になるように形成されている。
図7に示すように、すくい面42は、中心軸Oに直交する仮想平面xyに対して第1の角度θ1で傾斜している。ランド41は、仮想平面xyに対して第1の角度θ1よりも小さい第2の角度θ2で傾斜している。
【0042】
図5及び
図8に示すように、主切れ刃13から取付け孔9へ向かうとき、上面4の起伏は、ランド41及びすくい面42において上面4から下面5への向きに下がり続け、平坦面43において上下方向zに変化がない。つまり、切削インサート3の径方向rに沿って中心軸Oに近づくとき、上面4の起伏が下がることはあっても上がることがない。中心に向かうほど上面4の高さが低くなる。
【0043】
なお、本発明において平坦面43は厳密な平坦面に限定されず、切りくずの排出性に影響がない程度で微細な凹凸があってもよい。
図5に示した例では、平坦面43に「1」から「6」のアラビア数字と、該数字の間を区切る丸印とが刻印されている。例えば、微細な凹部で形成された刻印に入るとき上下方向zにおいて上面4の高さが僅かに下がり、刻印から出るとき上下方向zにおいて下がった分だけ僅かに上がってもよい。そのような態様は発明の主旨に影響するものではなく、当然に本発明の範囲に含まれる。
【0044】
上面4の起伏について更に詳しく説明する。
図7乃至
図9に示すように、ランド41の輪郭を延長した仮想直線v1,v2,v3,…が平坦面43に交差する仮想交点をP1,P2,P3,…とし、各々の断面図で仮想交点P1,P2,P3,…から主切れ刃13までの距離を中心軸Oに直交する方向に沿う方向、すなわち
図6中のVII-VII線、VIII-VIII線、IX-IX線に沿う方向であって、かつ中心軸Oに直交する方向で測定した長さをL1,L2,L3,…とする。
【0045】
主切れ刃13の位置は、低切込み側(
図7参照)、中央部(
図8参照)、高切込み側(
図9参照)の順に徐々に高くなり、平坦面43から遠ざかる。そのため、
図7乃至
図9において、L1<L2<L3の関係になっている。長さL1,L2,L3,…は、任意の断面の切断位置によって変化する可変値である。
【0046】
可変値L1,L2,L3,…は、上面4に隆起があると小さくなる性質を有している。
図6に示された主切れ刃13から取付け孔9の外縁までの平面視における最短距離の長さL0を基準値としたとき、切削インサート3は、上面4の隆起が小さい形状であるため、全ての可変値L1,L2,L3,…が基準値L0の半分よりも大きくなる。図示した例では、(L1>L0×0.5)かつ(L2>L0×0.5)かつ(L3>L0×0.5)になる。
【0047】
以上のように構成された本発明の一実施形態の切削インサート3は、
図5を参照して説明したように、主切れ刃13が低切込み側から高切込み側へ向かうに従い下面5から遠ざかるように右上がりに傾斜している。
図10に示すように、従来の切削インサートは、主切れ刃が右下がりに傾斜していたため、切りくずが右下に排出されて隣接する区間の切れ刃を傷つけるおそれがあった。これに対し、本発明の切削インサート3は、切りくずが右上に排出されるため、隣接する区間の切れ刃が未使用であっても、該区間の切れ刃が傷つくことを抑制できる。
【0048】
さらに、この切削インサート3は、
図5及び
図7乃至
図9を参照して説明したように、上面に4の隆起が小さいため、上面4と被削材との間に隙間を確保しやすい。上面4と被削材との間に切りくずを噛み込みにくいため、負の角度のラジアルレーキkをより負の向きにできる。副切れ刃11と主切れ刃13とがなす角度βが140°以上かつ155°以下であるため、切削インサート3が取り付けられた転削工具1において、切込み角(180°-β)が一般的な45°よりも小さい25°以上かつ40°以下になる。
【0049】
図2及び
図5を参照して説明したように、主切れ刃13が右上がりに傾斜していると、転削工具1の側面から見た主切れ刃13の傾斜角iが小さくなるが、この切削インサート3によれば、
図1に示された見かけの軸方向傾斜角jが正の角度になるように負の角度のラジアルレーキkをより負の向きにし、かつ切込み角(180°-β)を小さくしてバランスをとることができる。両面に多数の切れ刃を有する経済性に優れた切削インサート3において、右上がりの主切れ刃13を採用できるため、使用中の区間(例えば、区間AB)の主切れ刃13等から排出された切りくずによって隣接する未使用の区間(例えば、区間BC)の切れ刃11~13が傷つくことを抑制できる。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。例えば、転削工具1の回転方向が逆転で使用される切削インサートに本発明を適用してもよい。その場合、対応する第1コーナに隣接する他の第1コーナは、対応する第1コーナの右隣ではなく左隣の第1コーナになる。
【符号の説明】
【0051】
1…転削工具、2…工具本体、3…切削インサート、4…上面、5…下面、6…周側面、9…取付け孔、10…稜線、11…副切れ刃、12…コーナ切れ刃(第2コーナ)、13…主切れ刃、14…連結部、41…ランド(第1すくい面)、42…すくい面(第2すくい面)、43…平坦面、61,62,63,…側面、131…最下点、132…最上点、611…副切れ刃の逃げ面、612…主切れ刃の逃げ面、A~F…第1コーナ、AB~FA…区間、AX…転削工具の回転軸、i…転削工具の側面から見た傾斜角、j…見かけの軸方向傾斜角、k…ラジアルレーキ、L0…基準値、L1,L2,L3…可変値、O…中心軸、P1,P2,P3…交点、r…径方向、s…副切れ刃と交差する仮想平面、t…副切れ刃の延長線と主切れ刃の延長線とが交差する仮想交点、u…仮想交点を通り中心軸に直交する仮想直線、v1,v2,v3,…ランドの輪郭を延長した仮想直線(第1の仮想直線)、w…最下点と最上点とを通る仮想直線(第2の仮想直線)、xy…仮想平面、z…上下方向(切削インサートの軸方向)、z1…上向き、z2…下向き、α…主切れ刃の傾斜角、β…副切れ刃と主切れ刃とに挟まれた内角、γ…第1の角度、δ…第2の角度、θ…周方向。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、該上面とは反対側の下面と、前記上面及び前記下面を繋ぐ周側面と、前記上面及び前記下面を貫通する取付け孔と、を有し、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、前記下面は、前記上面と略同一の形状に形成され、
前記上面と前記周側面とが交差する稜線は、複数の区間に分割され、該複数の区間の各々は、副切れ刃と、該副切れ刃よりも長い主切れ刃と、を一つずつ含み、
前記中心軸を中心とした円周に沿う周方向において、前記副切れ刃及び前記主切れ刃は、この順で反時計回りに並べられ、
前記主切れ刃は、前記副切れ刃から遠ざかるに従って前記下面から遠ざかるように右上がりに傾斜し、
前記中心軸に直交する径方向に沿って前記中心軸に近づくとき、前記上面の起伏は、前記上面から前記下面への向きに下がることはあっても上がることがなく、前記上面の中心に向かうほど前記上面の高さが低くなるように構成されている、
切削インサート。
【請求項2】
上面と、該上面とは反対側の下面と、前記上面及び前記下面を繋ぐ周側面と、前記上面及び前記下面を貫通する取付け孔と、を有し、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、前記下面は、前記上面と略同一の形状に形成され、
前記上面と前記周側面とが交差する稜線は、複数の区間に分割され、該複数の区間の各々は、副切れ刃と、該副切れ刃よりも長い主切れ刃と、を一つずつ含み、
中心軸を中心とした円周に沿う周方向において、前記副切れ刃及び前記主切れ刃は、この順で反時計回りに並べられ、
前記主切れ刃は、前記副切れ刃から遠ざかるに従って前記下面から遠ざかるように右上がりに傾斜し、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸に直交する仮想平面に平行な平坦面と、該平坦面の外周に設けられ、前記仮想平面に対して第1の角度で傾斜しているすくい面と、該すくい面と前記主切れ刃との間に設けられ、前記仮想平面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度で傾斜しているランドと、を含み、
前記中心軸に沿って見た平面視において、直線状に形成された前記主切れ刃から前記取付け孔の外縁までの最短距離の長さを基準値とし、
前記主切れ刃の任意の位置で該主切れ刃に直交するように切断した任意の断面において、直線状に形成された前記ランドの輪郭を延長した仮想直線が前記平坦面に交差する仮想交点から前記主切れ刃までの距離を前記中心軸に直交する方向に沿って測定した長さを前記任意の断面の切断位置によって変化する可変値としたとき、
全ての前記可変値が前記基準値の半分よりも大きくなるように構成されている、
切削インサート。
【請求項3】
前記上面から見た平面視において、前記副切れ刃と前記主切れ刃とがなす角度は、140°以上かつ155°以下である、
請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記上面と前記下面とが対向する上下方向において、前記主切れ刃のうち前記下面に最も近い位置を最下点とし、前記下面から最も遠い位置を最上点としたとき、前記最下点と前記最上点とを通る仮想直線は、前記中心軸に直交する仮想平面に対して1°以上かつ10°以下の角度で傾斜している、
請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記上面は、前記中心軸について六回対称又は五回対称に形成されている、
請求項4に記載の切削インサート。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、該上面とは反対側の下面と、前記上面及び前記下面を繋ぐ周側面と、前記上面及び前記下面を貫通する取付け孔と、を有し、前記上面と前記下面とが略同一の形状に形成されることにより前記上面と前記下面とを反転して使用可能な両面仕様の切削インサートであって、
前記上面及び前記下面の各々は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、
前記上面と前記周側面とが交差する稜線は、複数のコーナの各々と一対一で対応する複数の区間に分割され、
前記複数の区間の各々は、当該区間に対応するコーナに隣接して形成された副切れ刃と、前記対応するコーナとは反対側から前記副切れ刃に隣接して形成されたコーナ切れ刃と、前記副切れ刃及び前記コーナ切れ刃よりも長い主切れ刃であって、前記コーナ切れ刃に隣接して形成され、かつ前記対応するコーナに隣接する他のコーナに向かって延在する前記主切れ刃と、該主切れ刃に隣接して形成され、かつ前記他のコーナと前記主切れ刃との間を連結する連結部と、を一つずつ含み、
前記中心軸を中心とした円周に沿う周方向において、前記副切れ刃及び前記主切れ刃は、この順で反時計回りに並べられ、
前記主切れ刃は、前記副切れ刃から遠ざかるに従って前記下面から遠ざかるように右上がりに傾斜し、
前記中心軸に直交する径方向に沿って前記中心軸に近づくとき、前記上面の起伏は、前記上面から前記下面への向きに下がることはあっても上がることがなく、前記上面の中心に向かうほど前記上面の高さが低くなるように構成されている、
切削インサート。
【請求項2】
上面と、該上面とは反対側の下面と、前記上面及び前記下面を繋ぐ周側面と、前記上面及び前記下面を貫通する取付け孔と、を有し、前記上面と前記下面とが略同一の形状に形成されることにより前記上面と前記下面とを反転して使用可能な両面仕様の切削インサートであって、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸について回転対称に形成され、
前記上面と前記周側面とが交差する稜線は、複数のコーナの各々と一対一で対応する複数の区間に分割され、
前記複数の区間の各々は、当該区間に対応するコーナに隣接して形成された副切れ刃と、前記対応するコーナとは反対側から前記副切れ刃に隣接して形成されたコーナ切れ刃と、前記副切れ刃及び前記コーナ切れ刃よりも長い主切れ刃であって、前記コーナ切れ刃に隣接して形成され、かつ前記対応するコーナに隣接する他のコーナに向かって延在する前記主切れ刃と、該主切れ刃に隣接して形成され、かつ前記他のコーナと前記主切れ刃との間を連結する連結部と、を一つずつ含み、
中心軸を中心とした円周に沿う周方向において、前記副切れ刃及び前記主切れ刃は、この順で反時計回りに並べられ、
前記主切れ刃は、前記副切れ刃から遠ざかるに従って前記下面から遠ざかるように右上がりに傾斜し、
前記上面は、前記上面の中心と前記下面の中心とを通る中心軸に直交する仮想平面に平行な平坦面と、該平坦面の外周に設けられ、前記仮想平面に対して第1の角度で傾斜しているすくい面と、該すくい面と前記主切れ刃との間に設けられ、前記仮想平面に対して前記第1の角度よりも小さい第2の角度で傾斜しているランドと、を含み、
前記中心軸に沿って見た平面視において、直線状に形成された前記主切れ刃から前記取付け孔の外縁までの最短距離の長さを基準値とし、
前記主切れ刃の任意の位置で該主切れ刃に直交するように切断した任意の断面において、直線状に形成された前記ランドの輪郭を延長した仮想直線が前記平坦面に交差する仮想交点から前記主切れ刃までの距離を前記中心軸に直交する方向に沿って測定した長さを前記任意の断面の切断位置によって変化する可変値としたとき、
全ての前記可変値が前記基準値の半分よりも大きくなるように構成されている、
切削インサート。
【請求項3】
前記上面から見た平面視において、前記副切れ刃と前記主切れ刃とがなす角度は、140°以上かつ155°以下である、
請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記上面と前記下面とが対向する上下方向において、前記主切れ刃のうち前記下面に最も近い位置を最下点とし、前記下面から最も遠い位置を最上点としたとき、前記最下点と前記最上点とを通る仮想直線は、前記中心軸に直交する仮想平面に対して1°以上かつ10°以下の角度で傾斜している、
請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記上面は、前記中心軸について六回対称又は五回対称に形成されている、
請求項4に記載の切削インサート。