(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173715
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】スイッチング回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/38 20070101AFI20231130BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231130BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20231130BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20231130BHJP
H03K 17/695 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H02M1/38
H02M7/48 M
H02M1/08 A
H03K17/16 L
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086160
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 秀和
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM12
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770GA02
5H770GA17
5H770HA02Y
5H770HA03X
5H770HA12X
5H770JA09X
5H770LB02
5J055AX12
5J055AX27
5J055AX56
5J055BX16
5J055CX20
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX43
5J055EY01
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5J055EY12
5J055EZ03
5J055EZ04
5J055EZ09
5J055EZ10
5J055EZ63
5J055FX04
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX21
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】 正確にデッドタイムを検出して調整する。
【解決手段】 スイッチング回路であって、第1スイッチング素子のゲートに接続された第1ゲート制御回路(25)と、第2スイッチング素子のゲートに接続された第2ゲート制御回路(26)を有し、前記第1ゲート制御回路と前記第2ゲート制御回路のうちの還流側素子を制御する還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の高電位主端子と低電位主端子の間の電圧である主電圧(Vds22)と前記還流側素子のゲート電圧(Vgs22)に基づいてデッドタイムの長さの検出を実施し、検出されたデッドタイムの長さに基づいて前記検出よりも後のデッドタイムの長さの調整を実施する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路であって、
高電位配線(12)と、
中間配線(16a)と、
低電位配線(14)と、
前記高電位配線に接続された高電位主端子と、前記中間配線に接続された低電位主端子と、ゲートを有する第1スイッチング素子(21)と、
前記中間配線に接続された高電位主端子と、前記低電位配線に接続された低電位主端子と、ゲートを有する第2スイッチング素子(22)と、
前記第1スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと、前記第1スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する第1ダイオード(23)と、
前記第2スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと、前記第2スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する第2ダイオード(24)と、
前記第1スイッチング素子の前記ゲートに接続された第1ゲート制御回路(25)と、
前記第2スイッチング素子の前記ゲートに接続された第2ゲート制御回路(26)と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子のいずれが還流側素子であるかを判定する判定回路(32)であって、前記第1ダイオードに還流電流が流れているときに前記第1スイッチング素子を前記還流側素子であると判定し、前記第2ダイオードに還流電流が流れているときに前記第2スイッチング素子が前記還流側素子であると判定する判定回路、
を有し、
前記第1ゲート制御回路と前記第2ゲート制御回路が、前記第1スイッチング素子がオンしているとともに前記第2スイッチング素子がオフしている第1期間(T1)と前記第1スイッチング素子がオフしているとともに前記第2スイッチング素子がオンしている第2期間(T2)とがデッドタイム(Td)を挟んで交互に繰り返されるように前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子を制御し、
前記第1ゲート制御回路と前記第2ゲート制御回路のうちの前記還流側素子を制御する還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記高電位主端子と前記低電位主端子の間の電圧である主電圧(Vds22)と前記還流側素子のゲート電圧(Vgs22)に基づいてデッドタイムの長さの検出を実施し、検出されたデッドタイムの長さに基づいて前記検出よりも後のデッドタイムの長さの調整を実施する、
スイッチング回路。
【請求項2】
前記第1ゲート制御回路が、前記第1スイッチング素子の前記ゲートを定電流で充放電し、
前記第2ゲート制御回路が、前記第2スイッチング素子の前記ゲートを定電流で充放電する、
請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項3】
前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子がターンオンする前のオン前デッドタイム(Td1)を調整するように構成されており、
前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧が立ち下がる第1特定タイミング(ta2)からその後に前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち上がる第2特定タイミング(ta3)までの特定期間が長いほど、前記検出よりも後のオン前デッドタイムを短くする、請求項1または2に記載のスイッチング回路。
【請求項4】
前記還流側ゲート制御回路が、
前記特定期間の長さに応じた大きさの特定電圧(Vth1)を出力する特定電圧出力回路(62a)と、
前記特定電圧の大きさに応じて、前記検出よりも後に前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち上がるタイミングを調整する特定タイミング調整回路(50)、
を有する請求項3に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
前記特定電圧出力回路が、
特定電圧出力コンデンサ(63e)と、
前記特定期間が基準値よりも短いときに前記特定電圧出力コンデンサを充電する第1ウィルソン型カレントミラー回路(63a)と、
前記特定期間が前記基準値よりも長いときに前記特定電圧出力コンデンサを放電する第2ウィルソン型カレントミラー回路(63b)、
を有し、
前記特定電圧が、前記特定電圧出力コンデンサの両端の間の電圧である、
請求項4に記載のスイッチング回路。
【請求項6】
前記特定タイミング調整回路が、オン電圧とオフ電圧の間で変化する指令信号(Ss2)の入力を受けるように構成されており、
前記特定タイミング調整回路が、
調整電圧出力コンデンサ(51e)と、
前記指令信号がオフ電圧からオン電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを充電する第1調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路(51a)と、
前記指令信号がオン電圧からオフ電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを放電する第2調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路(51b)、
を有し、
前記特定タイミング調整回路が、前記調整電圧出力コンデンサの両端の間の電圧(Vtc)が前記特定電圧よりも高くなったときに前記還流側素子の前記ゲート電圧を上昇させる信号を出力する、
請求項4に記載のスイッチング回路。
【請求項7】
前記還流側ゲート制御回路が、
前記還流側素子の前記主電圧を示す信号を遅延させた第1特定遅延信号を前記特定電圧出力回路に入力する第1特定遅延回路(58b)と、
前記還流側素子の前記ゲート電圧を示す信号を遅延させた第2特定遅延信号を前記特定電圧出力回路に入力する第2特定遅延回路(58a)、
を有し、
前記特定電圧出力回路が、前記第1特定遅延信号と前記第2特定遅延信号に基づいて前記特定電圧の大きさを調整する、
請求項4に記載のスイッチング回路。
【請求項8】
前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧が低下していない状態で前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち上がったときに、デッドタイムの長さの前記調整を中止する、請求項3に記載のスイッチング回路。
【請求項9】
前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子がターンオフした後のオフ後デッドタイム(Td2)を調整するように構成されており、
前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち下がる第1所定タイミング(ta4)からその後に前記還流側素子の前記主電圧が立ち上がる第2所定タイミング(ta1)までの所定期間が長いほど、前記検出よりも後のオフ後デッドタイムを短くする、請求項1または2に記載のスイッチング回路。
【請求項10】
前記還流側ゲート制御回路が、
前記所定期間の長さに応じた大きさの所定電圧(Vth2)を出力する所定電圧出力回路(62b)と、
前記所定電圧の大きさに応じて、前記検出よりも後に前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち下がるタイミングを調整する所定タイミング調整回路(50)、
を有する請求項9に記載のスイッチング回路。
【請求項11】
前記所定電圧出力回路が、
所定電圧出力コンデンサ(63e)と、
前記所定期間が水準値よりも短いときに前記所定電圧出力コンデンサを充電する第1ウィルソン型カレントミラー回路(63a)と、
前記所定期間が前記水準値よりも長いときに前記所定電圧出力コンデンサを放電する第2ウィルソン型カレントミラー回路(63b)、
を有し、
前記所定電圧が、前記所定電圧出力コンデンサの両端の間の電圧である、
請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項12】
前記所定タイミング調整回路が、オン電圧とオフ電圧の間で変化する指令信号(Ss2)の入力を受けるように構成されており、
前記所定タイミング調整回路が、
調整電圧出力コンデンサ(51e)と、
前記指令信号がオフ電圧からオン電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを充電する第1調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路(51a)と、
前記指令信号がオン電圧からオフ電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを放電する第2調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路(51b)、
を有し、
前記所定タイミング調整回路が、前記調整電圧出力コンデンサの両端の間の電圧(Vtc)が前記所定電圧よりも低くなったときに前記還流側素子の前記ゲート電圧を低下させる信号を出力する、
請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項13】
前記還流側ゲート制御回路が、
前記還流側素子の前記主電圧を示す信号を遅延させた第1所定遅延信号を前記所定電圧出力回路に入力する第1所定遅延回路(58c)と、
前記還流側素子の前記ゲート電圧を示す信号を遅延させた第2所定遅延信号を前記所定電圧出力回路に入力する第2所定遅延回路(58d)、
を有し、
前記所定電圧出力回路が、前記第1所定遅延信号と前記第2所定遅延信号に基づいて前記所定電圧の大きさを調整する、
請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項14】
前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記ゲート電圧が低下していない状態で前記還流側素子の前記主電圧が立ち上がったときに、デッドタイムの長さの前記調整を中止する、請求項9に記載のスイッチング回路。
【請求項15】
前記第1ゲート制御回路と前記第2ゲート制御回路のうちの前記還流側ゲート制御回路では無い方が駆動側ゲート制御回路であり、
前記第1ゲート制御回路が、自身が前記還流側ゲート制御回路である場合に、自身が前記駆動側ゲート制御回路である場合よりも、前記第1スイッチング素子のゲート電流を大きくし、
前記第2ゲート制御回路が、自身が前記還流側ゲート制御回路である場合に、自身が前記駆動側ゲート制御回路である場合よりも、前記第2スイッチング素子のゲート電流を大きくする、
請求項1または2に記載のスイッチング回路。
【請求項16】
前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧を検出する主電圧検出回路(42)を有しており、
前記主電圧検出回路が、
2つのコンデンサ(47、48)の直列回路であって前記主電圧が印加される直列回路と、
前記2つのコンデンサの接続点の電圧を出力する出力配線(46)、
を有する、
請求項1または2に記載のスイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング回路に関する。
【0002】
特許文献1には、高電位配線と低電位配線の間に直列に接続された第1スイッチング素子と第2スイッチング素子を有するスイッチング回路が開示されている。第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の接続点に出力配線が接続されている。また、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子のそれぞれに対して並列に、還流用ダイオードが接続されている。第1スイッチング素子と第2スイッチング素子は、交互にオンするように構成されている。また、第1スイッチング素子がオンする期間と第2スイッチング素子がオンする期間の間には、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の両方がオフするデッドタイムが設けられる。デッドタイムが設けられていることで、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の両方がオンして高電位配線と低電位配線の間が短絡することが防止される。
【0003】
特許文献1のスイッチング回路は、デッドタイム調整回路を有する。デッドタイム調整回路は、第1スイッチング素子のゲート信号に基づいて第1スイッチング素子のオン/オフ状態を検出するとともに第2スイッチング素子のゲート信号に基づいて第2スイッチング素子のオン/オフ状態を検出すことで、デッドタイムを検出する。デッドタイム調整回路は、検出したデッドタイムに基づいてデッドタイムを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のデッドタイム調整回路は、第1スイッチング素子のゲート信号と第2スイッチング素子のゲート信号とを検出する。第1スイッチング素子のゲート信号の基準電圧と第2スイッチング素子のゲート信号の基準電圧は大きく異なるので、このデッドタイム調整回路では、絶縁素子を介して第1スイッチング素子側の回路と第2スイッチング素子側の回路の間で信号の送受信を行う必要がある。絶縁素子を介した信号の送受信では遅延が生じるため、デッドタイムを正確に検出することがでず、デッドタイムを正確に調整することができない。したがって、本明細書では、正確にデッドタイムを検出して調整できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するスイッチング回路は、高電位配線と、中間配線と、低電位配線と、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、第1ダイオードと、第2ダイオードと、第1ゲート制御回路と、第2ゲート制御回路と、判定回路を有する。前記第1スイッチング素子は、前記高電位配線に接続された高電位主端子と、前記中間配線に接続された低電位主端子と、ゲートを有する。前記第2スイッチング素子は、前記中間配線に接続された高電位主端子と、前記低電位配線に接続された低電位主端子と、ゲートを有する。前記第1ダイオードは、前記第1スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと、前記第1スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する。前記第2ダイオードは、前記第2スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと、前記第2スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する。前記第1ゲート制御回路は、前記第1スイッチング素子の前記ゲートに接続されている。前記第2ゲート制御回路は、前記第2スイッチング素子の前記ゲートに接続されている。前記判定回路は、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子のいずれが還流側素子であるかを判定する。前記判定回路は、前記第1ダイオードに還流電流が流れているときに前記第1スイッチング素子を前記還流側素子であると判定し、前記第2ダイオードに還流電流が流れているときに前記第2スイッチング素子が前記還流側素子であると判定する。前記第1ゲート制御回路と前記第2ゲート制御回路が、前記第1スイッチング素子がオンしているとともに前記第2スイッチング素子がオフしている第1期間と前記第1スイッチング素子がオフしているとともに前記第2スイッチング素子がオンしている第2期間とがデッドタイムを挟んで交互に繰り返されるように前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子を制御する。前記第1ゲート制御回路と前記第2ゲート制御回路のうちの前記還流側素子を制御する還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記高電位主端子と前記低電位主端子の間の電圧である主電圧と前記還流側素子のゲート電圧に基づいてデッドタイムの長さの検出を実施し、検出されたデッドタイムの長さに基づいて前記検出よりも後のデッドタイムの長さの調整を実施する。
【0007】
なお、上記のデッドタイムは、還流側素子がターンオンする前のオン前デッドタイムであってもよいし、還流側素子がターンオフした後のオフ後デッドタイムであってもよいし、これら両方であってもよい。
【0008】
このスイッチング回路では、還流側ゲート制御回路が、還流側素子の主電圧とゲート電圧に基づいてデッドタイムの長さを検出する。還流側素子の主電圧によって、駆動側素子(すなわち、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子のうちの還流側素子では無い方のスイッチング素子)がオンしているかオフしているかを検出することができる。また還流側素子のゲート電圧によって、還流側素子がオンしているかオフしているかを検出することができる。したがって、還流側ゲート制御回路は、デッドタイムの長さを検出することができる。すなわち、還流側ゲート制御回路は、還流側素子の主電圧とゲート電圧によってデッドタイムの長さを検出することができる。このため、基準電圧が異なる駆動側素子の回路と還流側素子の回路の間で信号を送受信することなく、還流側ゲート制御回路がデッドタイムの長さを検出する。このため、還流側ゲート制御回路は、デッドタイムの検出のための信号を絶縁素子を介して送受信する必要がなく、正確にデッドタイムの長さを検出できる。還流側ゲート制御回路は、デッドタイムの長さの検出を実施すると、その検出後のデッドタイムの長さの調節を実施する。還流側ゲート制御回路は、正確にデッドタイムを検出できるので、検出後のデッドタイムの長さを正確に調節できる。したがって、デッドタイムが必要以上に長くなることを防止でき、スイッチング回路の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ゲート電圧とドレイン電圧の変化を示すグラフ。
【
図3】出力電流が流出方向の場合におけるスイッチング回路の動作を示す図。
【
図4】出力電流が流入方向の場合におけるスイッチング回路の動作を示す図。
【
図9】
図8のゲート駆動回路によって制御されるゲート電圧を示すグラフ。
【
図11】
図10のゲート駆動回路によって制御されるゲート電圧を示すグラフ。
【
図14】比較電圧とデッドタイムの長さの関係を示すグラフ。
【
図17】整流側素子用の信号Ss2、調整電圧Vtc、及び、ゲート駆動信号Saを示すグラフ。
【
図18】制御単位期間Tc1、Tc2における各値の変化を示すグラフ。
【
図19】デッドタイムTd1、Td2が長い場合の比較電圧Vth1、Vth2の調整処理を示すグラフ。
【
図20】デッドタイムTd1、Td2が短い場合の比較電圧Vth1、Vth2の調整処理を示すグラフ。
【
図21】比較電圧Vth1、Vth2が高い場合のデッドタイムTd1、Td2の調整処理を示すグラフ。
【
図22】比較電圧Vth1、Vth2が低い場合のデッドタイムTd1、Td2の調整処理を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記のスイッチング回路は、前記第1ゲート制御回路が、前記第1スイッチング素子の前記ゲートを定電流で充放電し、前記第2ゲート制御回路が、前記第2スイッチング素子の前記ゲートを定電流で充放電してもよい。
【0011】
この構成によれば、スイッチング回路の動作状態によるデッドタイムの変動を抑制することができ、より正確にデッドタイムを調整することができる。
【0012】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子がターンオンする前のオン前デッドタイムを調整するように構成されていてもよい。前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧が立ち下がる第1特定タイミングからその後に前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち上がる第2特定タイミングまでの特定期間が長いほど、前記検出よりも後のオン前デッドタイムを短くしてもよい。
【0013】
この構成によれば、前記特定期間がオン前デッドタイムに相当し、オン前デッドタイムを正確に検出できる。したがって、検出後にオン前デッドタイムを正確に調整できる。
【0014】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記特定期間の長さに応じた大きさの特定電圧を出力する特定電圧出力回路と、前記特定電圧の大きさに応じて前記検出よりも後に前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち上がるタイミングを調整する特定タイミング調整回路、を有していてもよい。
【0015】
上記のスイッチング回路では、前記特定電圧出力回路が、特定電圧出力コンデンサと、前記特定期間が基準値よりも短いときに前記特定電圧出力コンデンサを充電する第1ウィルソン型カレントミラー回路と、前記特定期間が前記基準値よりも長いときに前記特定電圧出力コンデンサを放電する第2ウィルソン型カレントミラー回路、を有していてもよい。前記特定電圧が、前記特定電圧出力コンデンサの両端の間の電圧であってもよい。
【0016】
この構成によれば、特定期間の長さに対して線形に変化するように特定電圧を出力できる。
【0017】
上記のスイッチング回路では、前記特定タイミング調整回路が、オン電圧とオフ電圧の間で変化する指令信号の入力を受けるように構成されていてもよい。前記特定タイミング調整回路が、調整電圧出力コンデンサと、前記指令信号がオフ電圧からオン電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを充電する第1調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路と、前記指令信号がオン電圧からオフ電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを放電する第2調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路を有していてもよい。前記特定タイミング調整回路が、前記調整電圧出力コンデンサの両端の間の電圧が前記特定電圧よりも高くなったときに前記還流側素子の前記ゲート電圧を上昇させる信号を出力してもよい。
【0018】
なお、オン電圧は還流側素子をオンさせることを指令する電圧であり、オフ電圧は還流側素子をオフさせることを指令する電圧である。この構成によれば、調整電圧の波形を傾斜角度がほぼ一定の台形波形とすることができ、還流側素子のゲート電圧を上昇させる信号を出力するタイミングを正確に制御することができる。
【0019】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧を示す信号を遅延させた第1特定遅延信号を前記特定電圧出力回路に入力する第1特定遅延回路と、前記還流側素子の前記ゲート電圧を示す信号を遅延させた第2特定遅延信号を前記特定電圧出力回路に入力する第2特定遅延回路、を有してもよい。前記特定電圧出力回路が、前記第1特定遅延信号と前記第2特定遅延信号に基づいて前記特定電圧の大きさを調整してもよい。
【0020】
この構成によれば、特定電圧出力回路がノイズの影響を受け難くなる。
【0021】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧が低下していない状態で前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち上がったときに、デッドタイムの長さの前記調整を中止してもよい。
【0022】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子がターンオフした後のオフ後デッドタイムを調整するように構成されていてもよい。前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち下がる第1所定タイミングからその後に前記還流側素子の前記主電圧が立ち上がる第2所定タイミングまでの所定期間が長いほど、前記検出よりも後のオフ後デッドタイムを短くしてもよい。
【0023】
この構成によれば、前記所定期間がオフ後デッドタイムに相当し、オフ後デッドタイムを正確に検出できる。したがって、検出後にオフ後デッドタイムを正確に調整できる。
【0024】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記所定期間の長さに応じた大きさの所定電圧を出力する所定電圧出力回路と、前記所定電圧の大きさに応じて、前記検出よりも後に前記還流側素子の前記ゲート電圧が立ち下がるタイミングを調整する所定タイミング調整回路、を有していてもよい。
【0025】
上記のスイッチング回路では、前記所定電圧出力回路が、所定電圧出力コンデンサと、前記所定期間が水準値よりも短いときに前記所定電圧出力コンデンサを充電する第1ウィルソン型カレントミラー回路と、前記所定期間が前記水準値よりも長いときに前記所定電圧出力コンデンサを放電する第2ウィルソン型カレントミラー回路、を有してもよい。前記所定電圧が、前記所定電圧出力コンデンサの両端の間の電圧であってもよい。
【0026】
この構成によれば、所定期間の長さに対して線形に変化するように所定電圧を出力できる。
【0027】
上記のスイッチング回路では、前記所定タイミング調整回路が、オン電圧とオフ電圧の間で変化する指令信号の入力を受けるように構成されていてもよい。前記所定タイミング調整回路が、調整電圧出力コンデンサと、前記指令信号がオフ電圧からオン電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを充電する第1調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路と、前記指令信号がオン電圧からオフ電圧に切り換わったタイミングから前記調整電圧出力コンデンサを放電する第2調整電圧用ウィルソン型カレントミラー回路を有していてもおい。前記所定タイミング調整回路が、前記調整電圧出力コンデンサの両端の間の電圧が前記所定電圧よりも低くなったときに前記還流側素子の前記ゲート電圧を低下させる信号を出力してもよい。
【0028】
なお、オン電圧は還流側素子をオンさせることを指令する電圧であり、オフ電圧は還流側素子をオフさせることを指令する電圧である。この構成によれば、調整電圧の波形を傾斜角度がほぼ一定の台形波形とすることができ、還流側素子のゲート電圧を低下させる信号を出力するタイミングを正確に制御することができる。
【0029】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧を示す信号を遅延させた第1所定遅延信号を前記所定電圧出力回路に入力する第1所定遅延回路と、前記還流側素子の前記ゲート電圧を示す信号を遅延させた第2所定遅延信号を前記所定電圧出力回路に入力する第2所定遅延回路、を有していてもよい。前記所定電圧出力回路が、前記第1所定遅延信号と前記第2所定遅延信号に基づいて前記所定電圧の大きさを調整してもよい。
【0030】
この構成によれば、所定電圧出力回路がノイズの影響を受け難くなる。
【0031】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記ゲート電圧が低下していない状態で前記還流側素子の前記主電圧が立ち上がったときに、デッドタイムの長さの前記調整を中止してもよい。
【0032】
上記のスイッチング回路では、前記第1ゲート制御回路と前記第2ゲート制御回路のうちの前記還流側ゲート制御回路では無い方が駆動側ゲート制御回路であってもよい。前記第1ゲート制御回路が、自身が前記還流側ゲート制御回路である場合に、自身が前記駆動側ゲート制御回路である場合よりも、前記第1スイッチング素子のゲート電流を大きくしてもよい。前記第2ゲート制御回路が、自身が前記還流側ゲート制御回路である場合に、自身が前記駆動側ゲート制御回路である場合よりも、前記第2スイッチング素子のゲート電流を大きくしてもよい。
【0033】
この構成によれば、還流側素子を高速でスイッチングさせることができ、より適切にデッドタイムを調整できる。
【0034】
上記のスイッチング回路では、前記還流側ゲート制御回路が、前記還流側素子の前記主電圧を検出する主電圧検出回路を有していてもよい。前記主電圧検出回路が、2つのコンデンサの直列回路であって前記主電圧が印加される直列回路と、前記2つのコンデンサの接続点の電圧を出力する出力配線、を有していてもよい。
【実施例0035】
図1に示すインバータ10は、車両に搭載されている。また、車両には、バッテリ80とモータ82が搭載されている。モータ82は、三相モータである。モータ82は、車両の駆動輪を駆動させて、車両を走行させる。インバータ10は、高電位配線12、低電位配線14、及び、3つの中間配線16a~16cを有している。高電位配線12は、バッテリ80の正極に接続されている。低電位配線14は、バッテリ80の負極に接続されている。したがって、高電位配線12と低電位配線14の間にバッテリ80の出力電圧(すなわち、直流電圧)が印加される。中間配線16a~16cは、モータ82に接続されている。インバータ10は、バッテリ80によって高電位配線12と低電位配線14の間に供給される直流電力を三相交流電力に変換し、三相交流電力を中間配線16a~16cに出力する。インバータ10によって出力された三相交流電力は、中間配線16a~16cを介してモータ82に供給される。
【0036】
インバータ10は、3つのスイッチング回路20を有する。各スイッチング回路20は、高電位配線12と、低電位配線14に接続されている。また、各スイッチング回路20は、対応する中間配線16に接続されている。すなわち、スイッチング回路20aは中間配線16aに接続されており、スイッチング回路20bは中間配線16bに接続されており、スイッチング回路20cは中間配線16cに接続されている。各スイッチング回路20は、スイッチング素子21とスイッチング素子22を有している。スイッチング素子21、22は、FET(すなわち、field effect transistor)である。但し、スイッチング素子21、22が、IGBT(すなわち、insulated gate bipolar transistor)であってもよい。スイッチング素子21のドレインは、高電位配線12に接続されている。スイッチング素子21のソースは、対応する中間配線16に接続されている。スイッチング素子22のドレインは、対応する中間配線16に接続されている。スイッチング素子22のソースは、低電位配線14に接続されている。各スイッチング回路20は、ダイオード23、24を有している。ダイオード23、24は、スイッチング素子21、22のボディダイオードであってもよいし、ダイオード23、24とは別に設けられたダイオードであってもよい。ダイオード23は、スイッチング素子21に対して並列に接続されている。ダイオード23のアノードはスイッチング素子21のソースに接続されている。ダイオード23のカソードはスイッチング素子21のドレインに接続されている。ダイオード24は、スイッチング素子22に対して並列に接続されている。ダイオード24のアノードはスイッチング素子22のソースに接続されている。ダイオード24のカソードはスイッチング素子22のドレインに接続されている。各スイッチング回路20は、ゲート制御回路25、26を有している。ゲート制御回路25は、スイッチング素子21のゲートG21に接続されている。ゲート制御回路25は、スイッチング素子21のゲート電圧Vgs21を制御することで、スイッチング素子21をスイッチングさせる。ゲート制御回路26は、スイッチング素子22のゲートG22に接続されている。ゲート制御回路26は、スイッチング素子22のゲート電圧Vgs22を制御することで、スイッチング素子22をスイッチングさせる。インバータ10は、インバータコントローラ84を有している。インバータコントローラ84は、各スイッチング回路20に、スイッチング素子21、22のスイッチングタイミングの指令信号を入力する。各スイッチング回路20のゲート制御回路25、26は、インバータコントローラ84から入力される指令信号に基づいて、スイッチング素子21、22をスイッチングさせる。各スイッチング回路20の各スイッチング素子21、22がスイッチングすることで、中間配線16a~16cに流れる出力電流Iout1~Iout3の向きと大きさが変化する。その結果、中間配線16a~16cに三相交流電力が出力される。なお、スイッチング回路20a~20cの構造及び動作は互いに等しいので、以下ではスイッチング回路20aの構造及び動作について説明する。
【0037】
図2は、スイッチング回路20aのスイッチング素子21、22のゲート電圧Vgs21、Vgs22を示している。なお、ゲート電圧Vgs21は、スイッチング素子21のゲートG21のソースに対する電位であり、ゲート電圧Vgs22は、スイッチング素子22のゲートG22のソースに対する電位である。
図2に示すように、ゲート電圧Vgs21、Vgs22は高電圧と低電圧の間で変化する。ゲート電圧Vgs21が高電圧のときにスイッチング素子21がオンし、ゲート電圧Vgs21が低電圧のときにスイッチング素子21がオフする。また、ゲート電圧Vgs22が高電圧のときにスイッチング素子22がオンし、ゲート電圧Vgs22が低電圧のときにスイッチング素子22がオフする。
図2に示すように、ゲート制御回路25、26は、スイッチング素子21がオンしているとともにスイッチング素子22がオフしている期間T1、スイッチング素子21、22が共にオフしているデッドタイムTd1、スイッチング素子22がオンしているとともにスイッチング素子21がオフしている期間T2、及び、スイッチング素子21、22が共にオフしているデッドタイムTd2がこの順序で繰り返されるようにゲート電圧Vgs21、Vgs22を制御する。すなわち、ゲート制御回路25、26は、期間T1と期間T2がデッドタイムを挟んで交互に繰り返されるように、スイッチング素子21、22を制御する。
【0038】
次に、スイッチング回路20a内を流れる電流の経路について説明する。スイッチング回路20a内の電流経路は、
図1に示す出力電流Iout1(すなわち、中間配線16aに流れる電流)の向きに応じて異なる。
【0039】
図3は、出力電流Iout1の向きが流出方向(すなわち、スイッチング回路20aからモータ82に向かう方向)である場合の電流経路を示している。
図3(a)が期間T1、
図3(b)がデッドタイムTd1、
図3(c)が期間T2、
図3(d)がデッドタイムTd2を示している。また、
図2のグラフAは、出力電流Iout1の向きが流出方向の場合のスイッチング素子21、22のドレイン電圧Vds21、Vds22を示している。なお、ドレイン電圧Vds21は、スイッチング素子21のドレインのソースに対する電位であり、ドレイン電圧Vds22は、スイッチング素子22のドレインのソースに対する電位である。
【0040】
図3(a)に示すように、期間T1では、スイッチング素子21がオンしているとともにスイッチング素子22がオフしているので、スイッチング素子21を通って高電位配線12から中間配線16aへ電流Iが流れる。この状態では、中間配線16aの電位は高電位配線12の電位と略等しい。したがって、
図2のグラフAに示すように、期間T1では、ドレイン電圧Vds21が低電圧となり、ドレイン電圧Vds21が高電圧となる。次に、デッドタイムTd1(すなわち、
図3(b))でスイッチング素子21がオフする。すると、スイッチング素子21で電流が停止する。すると、モータ82のインダクタンスLによって生じる誘導電圧によって中間配線16aの電位が低下し、ダイオード24がオンする。このため、ダイオード24を通って低電位配線14から中間配線16aへ電流I(すなわち、還流電流)が流れる。この状態では、中間配線16aの電位は低電位配線14の電位と略等しい。したがって、
図2のグラフAに示すように、デッドタイムTd1では、ドレイン電圧Vds21が高電圧となり、ドレイン電圧Vds22が低電圧となる。次に、期間T2(すなわち、
図3(c))でスイッチング素子22がオンする。すると、ダイオード24とスイッチング素子22の並列回路を通って低電位配線14から中間配線16aへ電流Iが流れるようになる。すなわち、スイッチング素子22がオンすると、電流Iの流れる経路がダイオード24とスイッチング素子22に分岐する。言い換えると、スイッチング素子22がオンしても、電流Iが低電位配線14から中間配線16aへ流れる状態は変化せず、中間配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、
図2のグラフAに示すように、期間T2では、ドレイン電圧Vds21が高電圧となり、ドレイン電圧Vds22が低電圧となる。次に、デッドタイムTd2(すなわち、
図3(d))でスイッチング素子22がオフする。すると、スイッチング素子22で電流が停止する。この状態では、ダイオード24を通って低電位配線14から中間配線16aへ電流Iが流れる。言い換えると、スイッチング素子22がオフしても、電流Iが低電位配線14から中間配線16aへ流れる状態は変化せず、中間配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、
図2のグラフAに示すように、デッドタイムTd2では、ドレイン電圧Vds21が高電圧となり、ドレイン電圧Vds22が低電圧となる。次に、スイッチング素子21がオンして再び期間T1(すなわち、
図3(a))となる。このように、出力電流Iout1の向きが流出方向の場合には、
図3(a)~(d)のように電流経路が変化し、
図2のグラフAのようにドレイン電圧Vds21、Vds22が変化する。
【0041】
図4は、出力電流Iout1の向きが流入方向(すなわち、モータ82からスイッチング回路20aに向かう方向)である場合の電流経路の変化態様を示している。
図4(a)が期間T1、
図4(b)がデッドタイムTd1、
図4(c)が期間T2、
図4(d)がデッドタイムTd2を示している。また、
図2のグラフBは、出力電流Iout1の向きが流入方向の場合のドレイン電圧Vds21、Vds22を示している。
【0042】
図4(c)に示すように、期間T2では、スイッチング素子22がオンしているとともにスイッチング素子21がオフしているので、スイッチング素子22を通って中間配線16aから低電位配線14へ電流Iが流れる。この状態では、中間配線16aの電位は低電位配線14の電位と略等しい。したがって、
図2のグラフBに示すように、期間T2では、ドレイン電圧Vds21が高電圧となり、ドレイン電圧Vds22が低電圧となる。次に、デッドタイムTd2(すなわち、
図4(d))でスイッチング素子22がオフする。すると、スイッチング素子22で電流が停止する。すると、モータ82のインダクタンスLによって生じる誘導電圧によって中間配線16aの電位が上昇し、ダイオード23がオンする。このため、ダイオード23を通って中間配線16aから高電位配線12へ電流I(すなわち、還流電流)が流れる。この状態では、中間配線16aの電位は高電位配線12の電位と略等しい。したがって、
図2のグラフBに示すように、デッドタイムTd2では、ドレイン電圧Vds21が低電圧となり、ドレイン電圧Vds22が高電圧となる。次に、期間T1(すなわち、
図4(a))でスイッチング素子21がオンする。すると、ダイオード23とスイッチング素子21の並列回路を通って中間配線16aから高電位配線12へ電流Iが流れるようになる。すなわち、スイッチング素子21がオンすると、電流Iの流れる経路がダイオード23とスイッチング素子21に分岐する。言い換えると、スイッチング素子21がオンしても、電流Iが中間配線16aから高電位配線12へ流れる状態は変化せず、中間配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、
図2のグラフBに示すように、期間T1では、ドレイン電圧Vds21が低電圧となり、ドレイン電圧Vds22が高電圧となる。次に、デッドタイムTd1(すなわち、
図4(b))でスイッチング素子21がオフする。すると、スイッチング素子21で電流が停止する。この状態では、ダイオード23を通って中間配線16aから高電位配線12へ電流Iが流れる。言い換えると、スイッチング素子21がオフしても、電流Iが中間配線16aから高電位配線12へ流れる状態は変化せず、中間配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、
図2のグラフBに示すように、デッドタイムTd1では、ドレイン電圧Vds21が低電圧となり、ドレイン電圧Vds22が高電圧となる。次に、スイッチング素子22がオンして再び期間T2(すなわち、
図4(c))となる。このように、出力電流Iout1の向きが流入方向の場合には、
図4(a)~(d)のように電流経路が変化し、
図2のグラフBのようにドレイン電圧Vds21、Vds22が変化する。
【0043】
以上に説明したように、デッドタイムTd1、Td2においては、ダイオードに還流電流が流れる。出力電流Iout1の向きが流出方向の場合(すなわち、
図3の場合)には、スイッチング素子22がオンするときに、還流電流がダイオード24とスイッチング素子22に分岐して流れる。また、出力電流Iout1の向きが流入方向の場合(すなわち、
図4の場合)には、スイッチング素子21がオンするときに、還流電流がダイオード23とスイッチング素子21に分岐して流れる。このように、還流電流が流れているダイオードに対して並列に接続されているスイッチング素子をオンすると、ダイオードとスイッチング素子に還流電流が分岐して流れ、ダイオードのみに還流が流れるとき(すなわち、デッドタイム)よりも還流電流によって生じる損失が低減される。したがって、デッドタイムを短縮すれば、スイッチング回路20aで生じる損失を低減することができる。
【0044】
以下では、期間T1、デッドタイムTd1、期間T2、及び、デッドタイムTd2からなる期間全体を、制御単位期間という。また、以下では、制御単位期間中に還流電流が流れるダイオードに対して並列に接続されているスイッチング素子を、還流側素子という。また、以下では、スイッチング素子21とスイッチング素子22のうちで還流側素子ではない方のスイッチング素子を、駆動側素子という。出力電流Iout1の向きが流出方向の場合(すなわち、
図3の場合)には、スイッチング素子21が駆動側素子であり、スイッチング素子22が還流側素子である。また、出力電流Iout1の向きが流入方向の場合(すなわち、
図4の場合)には、スイッチング素子22が駆動側素子であり、スイッチング素子21が還流側素子である。また、以下では、還流側素子を制御するゲート制御回路を還流側ゲート制御回路といい、駆動側素子を制御するゲート制御回路を駆動側ゲート制御回路という。
【0045】
図5は、スイッチング回路20aの詳細を示している。なお、
図5において、ゲート制御回路25内のグランド電位はスイッチング素子21のソース電位であり、ゲート制御回路26内のグランド電位はスイッチング素子22のソース電位である。
【0046】
図5に示すように、スイッチング回路20aは、電流センサ30と判定回路32を有している。電流センサ30は、中間配線16aに流れる出力電流Iout1を検出する。判定回路32は、電流センサ30によって検出される出力電流Iout1の向きに基づいて、スイッチング素子21、22のいずれが還流側素子であっていずれが駆動側素子であるかを示す信号Skを出力する。判定回路32は、出力電流Iout1の向きが流出方向の場合にはスイッチング素子22が還流側素子であると判定し、出力電流Iout1の向きが流入方向の場合にはスイッチング素子21が還流側素子であると判定する。判定回路32が出力する信号Skは、絶縁素子86を介してゲート制御回路25、26に入力される。
【0047】
図5に示すように、スイッチング回路20aは、主電圧検出回路41、42を有している。主電圧検出回路41は、スイッチング素子21のドレイン電圧Vds21を検出する。主電圧検出回路41は、ドレイン電圧Vds21を示す信号Sds21をゲート制御回路25に入力する。主電圧検出回路42は、スイッチング素子22のドレイン電圧Vds22を検出する。主電圧検出回路42は、ドレイン電圧Vds22を示す信号Sds22をゲート制御回路26に入力する。
【0048】
主電圧検出回路41、42は、スイッチング素子のドレイン電圧を検出できればどのような回路であってもよい。
図6、7は、主電圧検出回路41、42の一例を示している。
【0049】
図6の主電圧検出回路は、ダイオード43、抵抗44、ツェナーダイオード45を有している。ダイオード43のカソードは、スイッチング素子21(または22)のドレインに接続されている。ダイオード43のアノードは、抵抗44の一端に接続されている。抵抗44の他端は、ツェナーダイオード45のカソードに接続されている。ツェナーダイオード45のアノードは、グランドに接続されている。抵抗44とツェナーダイオード45の接続部に、信号出力配線46が接続されている。信号出力配線46には、ドレイン電圧Vdsに比例するとともにドレイン電圧Vdsよりも遥かに小さい電圧である信号Sdsが出力される。
【0050】
図7の主電圧検出回路は、コンデンサ47、48を有している。コンデンサ47の一端は、スイッチング素子21(または22)のドレインに接続されている。コンデンサ47の他端は、コンデンサ48の一端に接続されている。コンデンサ48の他端は、グランドに接続されている。コンデンサ47とコンデンサ48の接続部に、信号出力配線46が接続されている。信号出力配線46には、ドレイン電圧Vdsに比例するとともにドレイン電圧Vdsよりも遥かに小さい電圧である信号Sdsが出力される。
【0051】
図6、7のいずれの主電圧検出回路でも、ドレイン電圧Vdsに比例する信号Sdsを好適に出力することができる。但し、
図6の主電圧検出回路では、ツェナーダイオード45が有する寄生容量と抵抗44によって構成される直列回路の影響によってドレイン電圧Vdsの変化に対して信号Sdsの変化がわずかに遅延する場合がある。他方、
図7の主電圧検出回路では、
図6の主電圧検出回路よりも、信号Sdsがドレイン電圧Vdsに対して遅延し難い。
【0052】
図5に示すように、インバータコントローラ84から絶縁素子86を介してゲート制御回路25に、スイッチング素子21のスイッチングタイミングを指令する指令信号Ss1が入力される。
図18に示すように、指令信号Ss1は、高電圧と低電圧の間で変化するパルス信号である。指令信号Ss1の高電圧はスイッチング素子21をオンさせることを指令する電圧(すなわち、オン電圧)であり、指令信号Ss1の低電圧はスイッチング素子21をオフさせることを指令する電圧(すなわち、オフ電圧)である。また、インバータコントローラ84から絶縁素子86を介してゲート制御回路26に、スイッチング素子22のスイッチングタイミングを指令する指令信号Ss2が入力される。
図18に示すように、指令信号Ss2は、高電圧と低電圧の間で変化するパルス信号である。指令信号Ss2の高電圧はスイッチング素子22をオンさせることを指令する電圧(すなわち、オン電圧)であり、指令信号Ss2の低電圧はスイッチング素子22をオフさせることを指令する電圧(すなわち、オフ電圧)である。インバータコントローラ84は、スイッチング素子21、22がデッドタイムを挟んで交互にオンするように指令信号Ss1、Ss2を生成する。
【0053】
上述したように、ゲート制御回路25には、信号Sds21、Ss1、Skが入力される。ゲート制御回路25は、信号Sds21、Ss1、Skに基づいてゲート電圧Vgs21を制御する。また、ゲート制御回路26には、信号Sds22、Ss2、Skが入力される。ゲート制御回路26は、信号Sds22、Ss2、Skに基づいてゲート電圧Vgs22を制御する。
【0054】
図5に示すように、ゲート制御回路26は、ゲート駆動信号出力回路50、ゲート駆動回路52、ゲート電圧判定回路54、ドレイン電圧判定回路56、遅延回路58a~58d、フェーズコンパレータ60a、60b、比較電圧出力回路62a、62b、比較電圧保持回路64a、64b、及び、セレクタ回路66を有している。
【0055】
ゲート駆動信号出力回路50には、指令信号Ss2が入力される。ゲート駆動信号出力回路50は、指令信号Ss2に基づいてゲート駆動信号Saを出力する。
図17に示すように、ゲート駆動信号Saは、指令信号Ss2と同様に、高電圧と低電圧の間で変化するパルス信号である。ゲート駆動信号出力回路50は、スイッチング素子22が駆動側素子である場合には、指令信号Ss2と同じ波形の信号をゲート駆動信号Saとして出力する。ゲート駆動信号出力回路50は、スイッチング素子22が還流側素子である場合には、指令信号Ss2から立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングを変更したパルス信号をゲート駆動信号Saとして出力する。
【0056】
ゲート駆動回路52には、ゲート駆動信号Saが入力される。ゲート駆動回路52は、ゲート駆動信号Saに応じてゲート電圧Vgs22を制御する。
図8は、ゲート駆動回路52の一例を示している。
図8に示すように、ゲート駆動回路52は、配線52v、定電流源52a、スイッチング素子52b、スイッチング素子52c、及び、定電流源52dを有している。配線52vには、電圧Vin1が印加されている。電圧Vin1は、スイッチング素子22のゲート閾値よりも高い電圧である。定電流源52aとスイッチング素子52bは、配線52vとゲートG22の間に直列に接続されている。スイッチング素子52cと定電流源52dは、ゲートG22とグランドの間に直列に接続されている。スイッチング素子52bとスイッチング素子52cのゲートには、ゲート駆動信号Sa(より詳細には、ゲート駆動信号Saを反転した信号)が入力される。ゲート駆動信号Saが高電位のときにスイッチング素子52bがオンするとともにスイッチング素子52cがオフする。この状態では、定電流源52aとスイッチング素子52bを介して配線52vからゲートG22へゲート電流が流れ、ゲートG22が充電される。例えば、
図9のグラフAは、
図8のゲート駆動回路52によって制御されるゲート電圧Vgs22を示している。タイミングtx1でゲート駆動信号Saが低電位から高電位に上昇すると、スイッチング素子52bがオンする。すると、タイミングtx1の後にゲートG22が充電され、ゲート電圧Vgs22が上昇する。このとき、定電流源52aによってゲート電流が定電流に制御されるので、ゲート電圧Vgs22は一定の傾きで上昇する。ゲート電圧Vgs22は、ミラー電圧Vmrに達するとミラー電圧Vmrで一定値で推移し、その後、電圧Vin1まで上昇する。スイッチング素子22は、ゲート電圧Vgs22がミラー電圧Vmrから上昇するタイミングtx2においてオンする。また、ゲート駆動信号Saが低電位のときにスイッチング素子52bがオフするとともにスイッチング素子52cがオンする。この状態では、スイッチング素子52cと定電流源52dを介してゲートG22からグランドへゲート電流が流れ、ゲートG22が放電される。例えば、
図9のタイミングtx3でゲート駆動信号Saが高電位から低電位に低下すると、スイッチング素子52cがオンする。すると、タイミングtx3の後にゲートG22が放電され、ゲート電圧Vgs22が低下する。このとき、定電流源52dによってゲート電流が定電流に制御されるので、ゲート電圧Vgs22は一定の傾きで低下する。ゲート電圧Vgs22は、ミラー電圧Vmrまで低下するとミラー電圧Vmrで一定値で推移し、その後、0Vまで低下する。スイッチング素子22は、ゲート電圧Vgs22がミラー電圧Vmrから低下するタイミングtx4においてオフする。
【0057】
また、ミラー電圧Vmrは、スイッチング素子22に流れている電流(すなわち、ドレインからソースに流れる電流)に応じて変化する。例えば、
図9のグラフBは、スイッチング素子22に流れている電流が小さい場合におけるゲート電圧Vgs22の変化を示している。スイッチング素子22に流れている電流が小さい場合には、グラフBに示すように、ミラー電圧Vmrが低くなる。ミラー電圧Vmrの変化に応じて、スイッチング素子がオン、オフするタイミングtx2、tx4も変化する。
【0058】
なお、
図8の回路に代えて、
図10の回路をゲート駆動回路52として使用することもできる。
図10の回路には、定電流源が設けられていない。また、
図10の回路では、ゲートG22に繋がる配線に抵抗52eが設けられている。スイッチング素子52bがオンすると、スイッチング素子52bと抵抗52eを介して配線52vからゲートG22にゲート電流が流れ、ゲートG22が充電される。スイッチング素子52cがオンすると、抵抗52eとスイッチング素子52cを介してゲートG22からグランドへゲート電流が流れ、ゲートG22が放電される。この回路では、ゲート電流が定電流にはならず、ゲート電圧Vg22に応じて変化する。
【0059】
図11は、
図10のゲート駆動回路によって制御されるゲート電圧Vgs22を示している。
図11のグラフAは高電流時を示しており、グラフBは低電流時を示している。
図10のゲート駆動回路が定電流源を有さないので、
図11ではゲート電圧Vgs22が曲線状に上昇、低下する。このため、
図11では、高電流時(すなわち、グラフA)と低電流時(すなわち、グラフB)とでスイッチング素子22がオンするタイミングtx2のずれが
図9よりも大きくなる。また、
図11では、高電流時(すなわち、グラフA)と低電流時(すなわち、グラフB)とでスイッチング素子22がオフするタイミングtx4のずれが
図9よりも大きくなる。このように、ゲート電流を定電流制御しない場合には、ミラー電圧Vmrの変化によってスイッチング素子22のオン、オフのタイミングにばらつきが生じ易くなる。
図8のようにゲート電流を定電流制御できる回路をゲート駆動回路52として用いると、スイッチング素子21、22のスイッチングタイミングをより正確に制御でき、デッドタイムをより正確に調整できる。
【0060】
なお、
図9、11以外の図では、ミラー電圧の図示を省略している。
【0061】
ゲート電圧判定回路54は、ゲート電圧Vgs22と参照電圧Vref1とを比較し、これらのいずれが大きいかを示すパルス信号である信号Sr1を出力する。すなわち、信号Sr1は、ゲート電圧Vgs22の立ち上がり時に立ち上がり、ゲート電圧Vgs22の立ち下がり時に立ち下がるパルス信号である。
【0062】
ドレイン電圧判定回路56は、信号Sds22(すなわち、ドレイン電圧Vds22に比例する電圧)を参照電圧Vref2と比較し、これらのいずれが大きいかを示すパルス信号である信号Sr2を出力する。すなわち、信号Sr2は、ドレイン電圧Vds22の立ち上がり時に立ち上がり、ドレイン電圧Vds22の立ち下がり時に立ち下がるパルス信号である。
【0063】
遅延回路58a~58dは、入力された信号を遅延させて出力する回路である。遅延回路58a、58dには信号Sr1が入力され、遅延回路58b、58cには信号Sr2が入力される。
図12は、遅延回路58a~58dの一例を示している。
図12の遅延回路では、信号Sr1(またはSr2)が抵抗59aとコンデンサ59bの直列回路に印加されてコンデンサ59bが充電される。したがって、コンデンサ59bの両端間の電圧Vcの波形は、信号Sr1(またはSr2)がなまった波形となる。電圧Vcは、コンパレータ59eの非反転入力端子に入力される。また、コンパレータ59の反転入力端子には、電圧Vin2を抵抗59cと抵抗59dで分圧することで生成された参照電圧Vref3が入力される。コンパレータ59eは、電圧Vcと参照電圧Vref3のいずれが大きいかを示す信号を出力する。コンパレータ59eの出力信号は、信号Sr1(またはSr2)を所定時間遅延させたパルス信号となる。なお、遅延回路58a~58dの回路定数はそれぞれ異なっており、このため、遅延回路58a~58dが信号を遅延させる遅延時間はそれぞれ異なっている。
【0064】
遅延回路58aは、信号Sr1を遅延させた信号Sr1d1を出力する。遅延回路58bは、信号Sr2を遅延させた信号Sr2d1を出力する。遅延回路58bが信号Sr2を遅延させる遅延時間は、遅延回路58aが信号Sr1を遅延させる遅延時間よりも長い。信号Sr1d1と信号Sr2d1は、フェーズコンパレータ60aに入力される。遅延回路58cは、信号Sr2を遅延させた信号Sr2d2を出力する。遅延回路58dは、信号Sr1を遅延させた信号Sr1d2を出力する。遅延回路58dが信号Sr1を遅延させる遅延時間は、遅延回路58cが信号Sr2を遅延させる遅延時間よりも長い。信号Sr2d2と信号Sr1d2は、フェーズコンパレータ60bに入力される。
【0065】
フェーズコンパレータ60aは、信号Sr2d1の立ち下がりタイミング(すなわち、ドレイン電圧Vds22の立ち下がりタイミングを遅延させたタイミング)を示す信号Sddと、信号Sr1d1の立ち上がりタイミング(すなわち、ゲート電圧Vgs22の立ち上がりタイミングを遅延させたタイミング)を示す信号Sgiを出力する。
図2のグラフAから明らかなように、スイッチング素子22が還流側素子の場合には、ドレイン電圧Vds22の立ち下がりタイミングはデッドタイムTd1の開始タイミングであり、ゲート電圧Vgs22の立ち上がりタイミングはデッドタイムTd1の終了タイミングである。したがって、信号Sddと信号Sgiは、デッドタイムTd1の長さを示す信号である。
【0066】
フェーズコンパレータ60aは、信号Sr1d2の立ち下がりタイミング(すなわち、ゲート電圧Vgs22の立ち下がりタイミングを遅延させたタイミング)を示す信号Sgdと、信号Sr2d2の立ち上がりタイミング(すなわち、ドレイン電圧Vds22の立ち上がりタイミングを遅延させたタイミング)を示す信号Sdiを出力する。
図2のグラフAから明らかなように、スイッチング素子22が還流側素子の場合には、ゲート電圧Vgs22の立ち下がりタイミングはデッドタイムTd2の開始タイミングであり、ドレイン電圧Vds22の立ち上がりタイミングはデッドタイムTd2の終了タイミングである。したがって、信号Sgdと信号Sdiは、デッドタイムTd2の長さを示す信号である。
【0067】
比較電圧出力回路62a、62bは、入力される2つの信号のタイミングのずれに応じた大きさの電圧を出力する回路である。比較電圧出力回路62aは、信号Sddと信号Sgiを受信するタイミングのずれに応じた大きさの比較電圧Vth1を出力する。信号Sddと信号Sgiを受信するタイミングのずれはデッドタイムTd1の長さに応じたずれとなるので、比較電圧出力回路62aはデッドタイムTd1の長さに応じた大きさの比較電圧Vth1を出力する。比較電圧出力回路62bは、信号Sgdと信号Sdiを受信するタイミングのずれに応じた大きさの比較電圧Vth2を出力する。信号Sgdと信号Sdiを受信するタイミングのずれはデッドタイムTd2の長さに応じたずれとなるので、比較電圧出力回路62bはデッドタイムTd2の長さに応じた大きさの比較電圧Vth2を出力する。
【0068】
図13は、比較電圧出力回路62a、62bの一例を示している。
図13の比較電圧出力回路は、カレントミラー回路63aと、カレントミラー回路63bと、スイッチング素子63cと、スイッチング素子63dと、コンデンサ63eを有している。カレントミラー回路63a、63bは、ウィルソン型カレントミラー回路である。カレントミラー回路63aはコンデンサ63eを充電するための定電流回路であり、カレントミラー回路63bはコンデンサ63eを放電するための定電流回路である。スイッチング素子63cのゲートに信号Sgi(またはSdi)が入力され、スイッチング素子63dのゲートに信号Sdd(またはSgd)が入力される。
【0069】
図13の回路が比較電圧出力回路62aの場合、比較電圧出力回路62aに信号Sddが信号Sgiよりも先に入力されると、カレントミラー回路63bが動作し、コンデンサ63eが放電される。その後、比較電圧出力回路62aに信号Sgiが入力されると、カレントミラー回路63aが動作し、コンデンサ63eの放電が停止する。また、比較電圧出力回路62aに信号Sgiが信号Sddよりも先に入力されると、カレントミラー回路63aが動作し、コンデンサ63eが充電される。その後、比較電圧出力回路62aに信号Sddが入力されると、カレントミラー回路63bが動作し、コンデンサ63eの充電が停止する。したがって、比較電圧出力回路62aは、デッドタイムTd1が長いほど低い比較電圧Vth1を出力する。
図14は、デッドタイムTd1と比較電圧Vth1の関係を示している。
図14に示すように、
図13の回路によれば、デッドタイムTd1と比較電圧Vth1が線形の関係となるように、比較電圧Vth1を出力することができる。これは、カレントミラー回路63a、63bが正確に定電流制御を行うためである。
図13の回路が比較電圧出力回路62bの場合も、
図14に示すように、デッドタイムTd2と比較電圧Vth2が線形の関係となるように、比較電圧Vth2を出力することができる。すなわち、比較電圧出力回路62bは、デッドタイムTd2が長いほど低い比較電圧Vth2を出力する。
【0070】
なお、比較電圧出力回路62a、62bを、
図13の回路に代えて、
図15に示す回路により構成してもよい。
図15に示す回路でも、デッドタイムTd1、Td2が長いほど低い比較電圧Vth1、Vth2を出力することができる。
【0071】
比較電圧保持回路64aには、比較電圧出力回路62aから比較電圧Vth1が入力される。比較電圧保持回路64aは、比較電圧出力回路62aが出力する比較電圧Vth1が固定されると、その比較電圧Vth1を出力電圧として保持する。比較電圧保持回路64aが比較電圧Vth1を保持する。比較電圧保持回路64bには、比較電圧出力回路62bから比較電圧Vth2が入力される。比較電圧保持回路64bは、比較電圧出力回路62bが出力する比較電圧Vth2が固定されると、その比較電圧Vth2を出力電圧として保持する。
【0072】
セレクタ回路66には、比較電圧保持回路64a、64bから比較電圧Vth1、Vth2が入力される。また、セレクタ回路66には、判定回路32から信号Skが入力される。セレクタ回路66は、信号Skに応じて動作を変更する。セレクタ回路66は、信号Skによってスイッチング素子22が還流側素子であることが示されている場合には、比較電圧Vth1、Vth2をゲート駆動信号出力回路50に入力する。セレクタ回路66は、信号Skによってスイッチング素子22が駆動側素子であることが示されている場合には、比較電圧Vth1、Vth2をゲート駆動信号出力回路50に入力しない。
【0073】
上述したように、ゲート駆動信号出力回路50は、指令信号Ss2とセレクタ回路66から入力される信号に応じて、ゲート駆動信号Saを出力する。ゲート駆動信号出力回路50は、セレクタ回路66から比較電圧Vth1、Vth2の入力を受けていない場合(すなわち、スイッチング素子22が駆動側素子の場合)には、指令信号Ss2と同じ波形の信号をゲート駆動信号Saとして出力する。
【0074】
ゲート駆動信号出力回路50は、調整電圧出力回路51を有している。ゲート駆動信号出力回路50は、セレクタ回路66から比較電圧Vth1、Vth2の入力を受けている場合(すなわち、スイッチング素子22が還流側素子の場合)には、調整電圧出力回路51の出力電圧と比較電圧Vth1、Vth2を比較して、ゲート駆動信号Saを生成する。ゲート駆動信号出力回路50は、比較電圧Vth1が高いほどデッドタイムTd1が長くなり、比較電圧Vth2が高いほどデッドタイムTd2が長くなるように、ゲート駆動信号Saを出力する。
【0075】
図16は、調整電圧出力回路51の一例を示している。
図15の調整電圧出力回路51は、カレントミラー回路51aと、カレントミラー回路51bと、スイッチング素子51cと、スイッチング素子51dと、コンデンサ51eを有している。カレントミラー回路51a、51bは、ウィルソン型カレントミラー回路である。カレントミラー回路51aはコンデンサ51eを充電するための定電流回路であり、カレントミラー回路51bはコンデンサ51eを放電するための定電流回路である。スイッチング素子51cのゲートとスイッチング素子51dのゲートに指令信号Ss2が印加される。
図17は、調整電圧出力回路51が出力する調整電圧Vtcを示している。タイミングty1で指令信号Ss2が低電圧から高電圧に切り換わると、スイッチング素子51cがオフし、スイッチング素子51dがオンする。したがって、タイミングty1以降に、カレントミラー回路51aによってコンデンサ51eが充電され、調整電圧Vtcが一定の傾きで上昇する。調整電圧Vtcは、電圧Vin1まで上昇する。その後、タイミングty2で指令信号Ss2が高電圧から低電圧に切り替わると、スイッチング素子51cがオンし、スイッチング素子51dがオフする。したがって、タイミングty2以降にカレントミラー回路51bによってコンデンサ51eが放電され、調整電圧Vtcが一定の傾きで低下する。調整電圧Vtcは、0Vまで低下する。このように、調整電圧出力回路51は、方形波形の指令信号Ss2を、台形波形の調整電圧Vtcに変換する。
【0076】
ゲート駆動信号出力回路50は、調整電圧出力回路51の調整電圧Vtcを、比較電圧Vth1、Vth2と比較する。
図17に示すように、ゲート駆動信号出力回路50は、調整電圧Vtcが比較電圧Vth1よりも低い値から比較電圧Vth1よりも高い値に上昇したタイミングtz1に、ゲート駆動信号Saを低電位から高電位に切り換える。また、ゲート駆動信号出力回路50は、調整電圧Vtcが比較電圧Vth2よりも高い値から比較電圧Vth2よりも低い値に低下したタイミングtz2に、ゲート駆動信号Saを高電位から低電位に切り換える。従って、ゲート駆動信号Saは、指令信号Ss2の立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングを変更したパルス信号となる。
【0077】
ゲート制御回路25は、ゲート制御回路26と同様に、ゲート駆動信号出力回路50、ゲート駆動回路52、ゲート電圧判定回路54、ドレイン電圧判定回路56、遅延回路58a~58d、フェーズコンパレータ60a、60b、比較電圧出力回路62a、62b、比較電圧保持回路64a、64b、セレクタ回路66を有している。ゲート制御回路25のゲート駆動信号出力回路50は、指令信号Ss1に基づいてゲート駆動信号Saを出力する。ゲート制御回路25のゲート駆動信号出力回路50は、スイッチング素子21が駆動側素子の場合には指令信号Ss1と同じ波形のゲート駆動信号Saを出力し、スイッチング素子21が還流側素子の場合には指令信号Ss1の立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングを変更した信号をゲート駆動信号Saとして出力する。ゲート制御回路25のゲート駆動回路52は、ゲート駆動信号Saに基づいてゲート電圧Vgs21を制御する。ゲート制御回路25のゲート電圧判定回路54は、ゲート電圧Vgs21を参照電圧Vref1と比較する。ゲート制御回路25のドレイン電圧判定回路56は、信号Sds21を参照電圧Vref2と比較する。ゲート制御回路25の遅延回路58a~58dは、ゲート電圧判定回路54が出力する信号Sr1とドレイン電圧判定回路56が出力する信号Sr2を遅延させた信号Sr1d1、Sr2d1、Sr1d2、Sr2d2を出力する。ゲート制御回路25のフェーズコンパレータ60aと比較電圧出力回路62aは、信号Sr1d1と信号Sr2d1に基づいて比較電圧Vth1を出力する。ゲート制御回路25のフェーズコンパレータ60bと比較電圧出力回路62bは、信号Sr1d2と信号Sr2d2に基づいて比較電圧Vth2を出力する。ゲート制御回路25の比較電圧保持回路64a、64bは、比較電圧Vth1、Vth2を保持する。ゲート制御回路25のセレクタ回路66は、スイッチング素子21が還流側素子の場合に比較電圧Vth1、Vth2をゲート制御回路26に入力し、スイッチング素子21が駆動側素子の場合に比較電圧Vth1、Vth2をゲート制御回路26に入力しない。ゲート制御回路25のゲート駆動信号出力回路50は、スイッチング素子21が還流側素子の場合に、調整電圧出力回路51の出力電圧(すなわち、台形波形の出力電圧)と比較電圧Vth1、Vth2を比較することで、指令信号Ss1の立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングを変更したパルス信号を、ゲート駆動信号Saとして出力する。
【0078】
次に、ゲート制御回路25、26がデッドタイムを調整する処理について説明する。なお、スイッチング素子21が還流側素子の場合のゲート制御回路25の動作はスイッチング素子22が還流側素子の場合のゲート制御回路26の動作と等しく、スイッチング素子21が還流側素子の場合のゲート制御回路26の動作はスイッチング素子22が還流側素子の場合のゲート制御回路25の動作と等しい。したがって、以下では、スイッチング素子22が還流側素子の場合のゲート制御回路25、26の動作について説明する。すなわち、ゲート制御回路25が駆動側ゲート制御回路であってゲート制御回路26が還流側ゲート制御回路である場合の動作について、以下に説明する。
【0079】
駆動側制御回路であるゲート制御回路25は、指令信号Ss1と同じ波形のゲート駆動信号Saを出力してゲート電圧Vgs21を制御する。したがって、ゲート電圧Vgs21は、指令信号Ss1の立ち上がりと略同時に立ち上がり、指令信号Ss1の立ち下がりと略同時に立ち下がる。還流側制御回路であるゲート制御回路26は、デッドタイムTd1、Td2の長さを検出し、検出されたデッドタイムTd1、Td2の長さに応じてその後のデッドタイムTd1、Td2の長さを調節する。以下に、ゲート制御回路26(すなわち、還流側ゲート制御回路)の動作について説明する。
【0080】
図18は、スイッチング素子22が還流側素子の場合における各値の変化を示している。なお、以下では、デッドタイムTd1の開始タイミングをタイミングta2といい、デッドタイムTd1の終了タイミングをタイミングta3といい、デッドタイムTd2の開始タイミングをタイミングta3といい、デッドタイムTd2の終了タイミングをタイミングta4という。タイミングta2はドレイン電圧Vds22の立ち下がりタイミングと等しく、タイミングta3はゲート電圧Vgs22の立ち上がりタイミングと等しく、タイミングta4はゲート電圧Vgs22の立ち下がりタイミングと等しく、タイミングta1はドレイン電圧Vds22の立ち上がりタイミングと等しい。インバータコントローラ84は、指令信号Ss1が高電位となる期間T1と指令信号Ss2が高電位となる期間T2が、指令信号Ss1、Ss2が共に低電位となる期間を挟んで交互に訪れるように指令信号Ss1と指令信号Ss2を出力する。上述したように、ゲート電圧Vgs21は、指令信号Ss1の立ち上がりと略同時に立ち上がり、指令信号Ss1の立ち下がりと略同時に立ち下がる。ゲート電圧Vgs22の立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングは、ゲート制御回路26によって調整される。
【0081】
タイミングta1でスイッチング素子21(すなわち、駆動側素子)がオンすると、ドレイン電圧Vds21が低下するとともにドレイン電圧Vds22が上昇する。タイミングta2にスイッチング素子21(すなわち、駆動側素子)がオフすると、ドレイン電圧Vds21が上昇するとともにドレイン電圧Vds22が低下する。タイミングta3でスイッチング素子22(すなわち、還流側素子)がオンすると、ドレイン電圧Vds21、Vds22はほとんど変化しない。タイミングta4でスイッチング素子22(すなわち、還流側素子)がオフすると、ドレイン電圧Vds21、Vds22はほとんど変化しない。ゲート制御回路26は、制御単位期間Tc1においてデッドタイムTd1、Td2の長さを検出し、検出したデッドタイムTd1、Td2の長さに応じて次の制御単位期間Tc2のデッドタイムTd1、Td2の長さを調節する。以下に、
図18の場合のゲート制御回路26の動作について詳細に説明する。
【0082】
図19は、制御単位期間Tc1におけるゲート制御回路26内の各信号を示している。
図19に示すように、ゲート電圧判定回路54が出力する信号Sr1は、ゲート電圧Vgs22の立ち上がり時に立ち上がり、ゲート電圧Vgs22の立ち下がり時に立ち下がる。すなわち、信号Sr1は、ゲート電圧Vgs22と略同じ波形となる。また、ドレイン電圧判定回路56が出力する信号Sr2は、ドレイン電圧Vds22の立ち上がり時に立ち上がり、ドレイン電圧Vds22の立ち下がり時に立ち下がる。すなわち、信号Sr2は、ドレイン電圧Vds22と略同じ波形となる。また、遅延回路58a~58dが出力する信号Sr1d1、Sr2d1、Sr1d2、Sr2d2は、信号Sr1、Sr2を遅延させた信号である。信号Sr1d1の遅延時間d1は、信号Sr2d1の遅延時間d2よりも短い。
図19に示すデッドタイムTdx1は、信号Sr2d1の立ち下がりから信号Sr1d1の立ち上がりの間の疑似的なデッドタイムである。疑似的なデッドタイムTdx1は、実際のデッドタイムTd1から遅延時間d2を減算するとともに遅延時間d1を加算した値(すなわち、Tdx1=Td1-d2+d1)である。疑似的なデッドタイムTdx1は、実際のデッドタイムTd1よりも短い。なお、
図19では、信号Sr2d1の立ち下がりの後に信号Sr1d1の立ち上がりが生じており、疑似的なデッドタイムTdx1の長さが正の値である。しかしながら、これらの順序が逆になり、疑似的なデッドタイムTdx1の長さが負の値となる場合もある。また、信号Sr2d2の遅延時間d4は、信号Sr1d2の遅延時間d3よりも短い。
図19に示すデッドタイムTdx2は、信号Sr1d2の立ち下がりと信号Sr2d2の立ち上がりの間の疑似的なデッドタイムである。疑似的なデッドタイムTdx2は、実際のデッドタイムTd2から遅延時間d3を減算するとともに遅延時間d4を加算した値(すなわち、Tdx2=Td2-d3+d4)である。疑似的なデッドタイムTdx2は、実際のデッドタイムTd2よりも短い。なお、
図19では、信号Sr1d2の立ち下がりの後に信号Sr2d2の立ち上がりが生じており、疑似的なデッドタイムTdx2の長さが正の値である。しかしながら、これらの順序が逆になり、疑似的なデッドタイムTdx2の長さが負の値となる場合もある。疑似的なデッドタイムTdx1が正の値の場合には、フェーズコンパレータ60aと比較電圧出力回路62aは、デッドタイムTdx1の間に比較電圧Vth1を低下させる。また、疑似的なデッドタイムTdx2が正の値の場合には、フェーズコンパレータ60bと比較電圧出力回路62bは、デッドタイムTdx2の間に比較電圧Vth2を低下させる。
【0083】
また、
図20は、疑似的なデッドタイムTdx1、Tdx2が負の場合を示している。疑似的なデッドタイムTdx1が負の値の場合には、フェーズコンパレータ60aと比較電圧出力回路62aは、デッドタイムTdx1の間に比較電圧Vth1を上昇させる。また、疑似的なデッドタイムTdx2が負の値の場合には、フェーズコンパレータ60bと比較電圧出力回路62bは、デッドタイムTdx2の間に比較電圧Vth2を上昇させる。
【0084】
以上に説明したように、比較電圧出力回路62aは、疑似的なデッドタイムTdx1が0より小さいとき(すなわち、Td1<d2-d1のとき)にカレントミラー回路63aでコンデンサ63eを充電して比較電圧Vth1を上昇させ、疑似的なデッドタイムTdx1が0より大きいとき(すなわち、Td1>d2-d1のとき)にカレントミラー回路63aでコンデンサ63eを放電して比較電圧Vth1を低下させる。同様に、比較電圧出力回路62bは、疑似的なデッドタイムTdx2が0より小さいとき(すなわち、Td2<d3-d4のとき)にカレントミラー回路63aでコンデンサ63eを充電して比較電圧Vth2を上昇させ、疑似的なデッドタイムTdx2が0より大きいとき(すなわち、Td2>d3-d4のとき)にカレントミラー回路63bでコンデンサ63eを放電して比較電圧Vth2を低下させる。すなわち、疑似的なデッドタイムTdx1、Tdx2が正の場合にはVth1、Vth2が増加するように調整され、疑似的なデッドタイムTdx1、Tdx2が負の場合にはVth1、Vth2が減少するように調整される。したがって、比較電圧Vth1、Vth2は、デッドタイムTd1、Td2が長いほど低くなり、デッドタイムTd1、Td2が短いほど高くなる。なお、疑似的なデッドタイムTdx1と疑似的なデッドタイムTdx2の一方が正の値で他方が負の値となる場合もある。この場合でも、比較電圧Vth1と比較電圧Vth2は独立して調整される。
【0085】
比較電圧出力回路が出力する比較電圧Vth1、Vth2が固定されると、その直後のタイミングthにおいて、比較電圧保持回路64a、64bが、比較電圧Vth1、Vth2をホールドする。すると、その後に比較電圧出力回路62a、62bが出力する比較電圧Vth1、Vth2が変動しても、比較電圧保持回路64a、64bが出力する比較電圧Vth1、Vth2は変動しない。このため、タイミングthの後に、比較電圧出力回路62a、62bは次の制御単位期間Tc2におけるデッドタイムTd1、Td2に基づいて新たな比較電圧Vth1、Vth2を出力することが可能となる。また、比較電圧保持回路64a、64bは、タイミングthから次のタイミングthまで出力電圧を保持し、次のタイミングthにおいて出力電圧を更新する。
【0086】
比較電圧保持回路64a、64bが比較電圧Vth1、Vth2を出力すると、セレクタ回路66が比較電圧Vth1、Vth2をゲート駆動信号出力回路50に入力する。すると、ゲート駆動信号出力回路50は、指令信号Ss2と比較電圧Vth1、Vth2に基づいてゲート駆動信号Saを生成する。
図21は、制御単位期間Tc1におけるデッドタイムTd1、Td2が短い場合(すなわち、比較電圧Vth1、Vth2が高い場合)において、次の制御単位期間Tc2でデッドタイムTd1、Td2を調整する処理を示している。上述したように、駆動側素子(すなわち、スイッチング素子21)を制御するゲート制御回路25は、指令信号Ss1をそのままゲート駆動信号として出力するので、ゲート電圧Vgs21は指令信号Ss1と略同じ波形となる。他方、還流側素子(すなわち、スイッチング素子22)を制御するゲート制御回路26では、上述したように、調整電圧出力回路51が、インバータコントローラ84から入力される指令信号Ss2に基づいて台形波形の調整電圧Vtcを生成する。ゲート駆動信号出力回路50は、調整電圧Vtcが比較電圧Vth1を超えたタイミングto1でゲート駆動信号Saが立ち上がり、調整電圧Vtcが比較電圧Vth2を下回ったタイミングto2でゲート駆動信号Saが立ち下がるようにゲート駆動信号Saを出力する。したがって、ゲート電圧Vgs22は、タイミングto1と略一致するタイミングで立ち上がり、タイミングto2と略一致するタイミングで立ち下がる。このため、ゲート電圧Vgs22は、指令信号Ss2の立ち上がりタイミングに対して遅延時間dd1だけ遅れて立ち上がり、指令信号Ss2の立ち下がりタイミングに対して遅延時間dd2だけ遅れて立ち下がる。これによって、デッドタイムTd1、Td2の長さが調整される。また、
図22は、前回の制御単位期間Tc1におけるデッドタイムTd1、Td2が長い場合(すなわち、比較電圧Vth1、Vth2が低い場合)において、次の制御単位期間Tc2でデッドタイムTd1、Td2を調整する処理を示している。この場合も、ゲート電圧Vgs22は、指令信号Ss2の立ち上がりタイミングに対して遅延時間dd1だけ遅れて立ち上がり、指令信号Ss2の立ち下がりタイミングに対して遅延時間dd2だけ遅れて立ち下がる。これによって、デッドタイムTd1、Td2の長さが調整される。
図21、22に示すように、比較電圧Vth1が高い場合には、比較電圧Vth1が低い場合よりも、遅延時間dd1が長くなり、デッドタイムTd1が長くなる。したがって、前回の制御単位期間Tc1におけるデッドタイムTd1が短い場合には、前回の制御単位期間Tc1におけるデッドタイムTd1が長い場合よりも、制御単位期間Tc2におけるデッドタイムTd1が長くなるようにデッドタイムTd1が調整される。また、
図21、22に示すように、比較電圧Vth2が高い場合には、比較電圧Vth2が低い場合よりも、遅延時間dd2が短くなり、デッドタイムTd2が長くなる。したがって、前回の制御単位期間Tc1におけるデッドタイムTd2が短い場合には、前回の制御単位期間Tc1におけるデッドタイムTd2が長い場合よりも、制御単位期間Tc2におけるデッドタイムTd2が長くなるようにデッドタイムTd2が調整される。
【0087】
以上に説明したように、ゲート制御回路26は、前回のデッドタイムTd1、Td2が長い場合には次回のデッドタイムTd1、Td2が短くなるように調整し、前回のデッドタイムTd1、Td2が短い場合には次回のデッドタイムTd1、Td2が長くなるように調整する。ゲート制御回路26は、この処理を制御単位期間毎に繰り返すことで、各デッドタイムTd1、Td2を最適な長さに調整する。これにより、デッドタイムTd1、Td2が必要以上に長くなることが抑制され、スイッチング回路20aで生じる損失が抑制される。
【0088】
また、ゲート制御回路26は、スイッチング素子22のドレイン電圧Vds22とゲート電圧Vgs22に基づいてデッドタイムTd1、Td2を検出する。基準電圧が等しい回路(すなわち、スイッチング素子22、ゲート制御回路26、及び、主電圧検出回路42)の内部でデッドタイムTd1、Td2を検出できるので、絶縁素子を介することなくデッドタイムを検出するための信号の送受信を行うことができる。したがって、信号の遅延の影響をほとんど受けずにデッドタイムTd1、Td2を正確に検出できる。
【0089】
また、ゲート制御回路26は、デッドタイムTd1、Td2の検出にスイッチング素子21の特性値を使用しない。また、ゲート制御回路26は、スイッチング素子22のスイッチングタイミングを変更することでデッドタイムTd1、Td2を調整する。このように、デッドタイムの調整処理を、基準電圧が等しい回路(すなわち、スイッチング素子22、ゲート制御回路26、及び、主電圧検出回路42)の内部で完結させることができる。このため、デッドタイムの調整のために基準電圧が異なるゲート制御回路26とゲート制御回路25の間で通信を行う必要がない。これにより、絶縁素子の増加を抑制でき、スイッチング回路20aの小型化が可能となる。
【0090】
また、比較電圧出力回路62a、62bは、ウィルソン型カレントミラー回路によって比較電圧Vth1、Vth2がデッドタイムTd1、Td2の長さに対して線形の関係となるように比較電圧Vth1、Vth2を出力する。また、調整電圧出力回路51は、ウィルソン型カレントミラー回路によって傾斜部分が直線状である台形波形を調整電圧Vtcとして出力する。このように、比較電圧Vth1、Vth2及び調整電圧Vtcを線形の形状で出力することで、デッドタイムをより正確に調整することができる。
【0091】
また、ゲート電圧判定回路54が出力する信号Sr1とドレイン電圧判定回路56が出力する信号Sr2にノイズが重畳する場合がある。しかしながら、信号Sr1、Sr2が遅延回路58a~58dを通過すると、ノイズが除去される。遅延回路58a~58dを通過後の信号をフェーズコンパレータ60a、60bに入力することで、ノイズによる誤検出を防止することができる。
【0092】
また、ゲート制御回路26は、疑似的なデッドタイムTdx1、Tdx2のいずれかが負の値であってその絶対値が上限値を超えた場合には、デッドタイムの調整処理を中止する。疑似的なデッドタイムTdx1が負の値であってその絶対値が上限値を超えることは、スイッチング素子21がオフするよりも前にスイッチング素子22がオンしていることを意味し、デッドタイムTd1が存在しないことを意味する。また、疑似的なデッドタイムTdx2が負の値であってその絶対値が上限値を超えることは、スイッチング素子22がオフするよりも前にスイッチング素子21がオンしていることを意味し、デッドタイムTd2が存在しないことを意味する。これらの場合、デッドタイムの調整処理が何らかの理由で適切に行われておらず、高電位配線12と低電位配線14の間で短絡が生じている。したがって、この場合には、ゲート制御回路26はデッドタイムの調整処理を中止し、短絡を防止する。
【0093】
なお、上記の説明では、スイッチング素子22が還流側素子であり、スイッチング素子21が駆動側素子の場合について説明した。スイッチング素子21が還流側素子であり、スイッチング素子22が駆動側素子の場合には、ゲート制御回路25がデッドタイムの検出とデッドタイムの調整を上記の説明と同様にして行う。この場合、ゲート制御回路26は、指令信号Ss2をそのままゲート駆動信号Saとして出力する。
この構成によれば、還流側素子のゲート電圧をより高速で変化させることが可能となり、デッドタイムTd1、Td2をより正確に制御することが可能となる。また、上述したように、還流側素子のゲート電圧を変化させる場合には、ドレイン電圧Vds21、Vds22がほとんど変化しない。したがって、還流側素子のゲート電圧を高速で変化させても、ノイズはほとんど発生しない。また、駆動側素子のゲート電圧を変化させる場合には、ゲート電圧を低速で変化させることができ、ノイズの発生を抑制できる。このように、実施例2の構成によれば、ノイズの発生を抑制しながら、デッドタイムTd1、Td2をより正確に制御することが可能となる。
なお、上記の実施例1、2では、判定回路32が、中間配線16aに流れる出力電流Iout1の向きに基づいて、スイッチング素子21、22のいずれが還流側素子であるかを判定した。しかしながら、ダイオード23に還流電流が流れているときにスイッチング素子21を還流側素子として判定し、ダイオード24に還流電流が流れているときにスイッチング素子22を還流側素子として判定できれば、判定回路32はどのような構成であってもよい。例えば、判定回路32が、ダイオード23、24に流れる電流を検出し、その検出結果に基づいてスイッチング素子21、22のいずれが還流側素子であるかを判定してもよい。
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。