(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173730
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20231130BHJP
B60W 40/068 20120101ALI20231130BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20231130BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60W30/02 310
B60W40/068
G08G1/00 J
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086179
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 義暢
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 聡宏
(72)【発明者】
【氏名】神 義幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 毅
(72)【発明者】
【氏名】草野 大志
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓海
(72)【発明者】
【氏名】三浦 駿太郎
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA16
3D241CC01
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC47A
3D241DC47B
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181EE12
5H181EE13
(57)【要約】
【課題】車両の駆動力を適切に制御する。
【解決手段】車両は、車両の駆動輪が接触している現在位置の路面である第1路面の路面状態に関する第1路面情報を検出する第1検出部と、車両の前方に位置する路面である第2路面の路面状態に関する第2路面情報を検出する第2検出部と、第1路面情報および第2路面情報のうち少なくとも一方から推定される路面摩擦係数を用いて、車両の駆動力を制御する制御部と、を備え、制御部は、第1路面情報および第2路面情報に基づいて、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定することと、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、第2路面の路面摩擦係数として、第2路面摩擦係数に替えて、第1路面情報から推定される第1路面摩擦係数を用いて、車両の駆動力を制御することと、を含む処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪が接触している現在位置の路面である第1路面の路面状態に関する第1路面情報を検出する第1検出部と、
前記車両の前方に位置する路面である第2路面の路面状態に関する第2路面情報を非接触式で検出する第2検出部と、
前記第1路面情報および前記第2路面情報のうち少なくとも一方から推定される路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、1つまたは複数のプロセッサと、プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、
前記プロセッサは、
前記第1路面情報および前記第2路面情報に基づいて、前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定することと、
前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態である場合に、前記第2路面の路面摩擦係数として、前記第2路面情報から推定される第2路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御することと、
前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、前記第2路面の路面摩擦係数として、前記第2路面摩擦係数に替えて、前記第1路面情報から推定される第1路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御することと、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態であり、かつ、前記第2路面の路面状態よりも前記第1路面の路面状態が良い状態である場合に、前記第2路面の路面摩擦係数として、前記第2路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御し、
前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態であり、かつ、前記第2路面の路面状態よりも前記第1路面の路面状態が悪い状態である場合に、前記第1路面の路面摩擦係数として、前記第1路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1検出部は、前記第1路面の路面状態として、前記第1路面のうち、前記車両の進行方向に対して左側の路面である左側第1路面の路面状態に関する左側第1路面情報、および、前記車両の進行方向に対して右側の路面である右側第1路面の路面状態に関する右側第1路面情報を検出し、
前記第2検出部は、前記第2路面の路面状態として、前記第2路面のうち、前記車両の進行方向に対して左側の路面である左側第2路面の路面状態に関する左側第2路面情報、および、前記車両の進行方向に対して右側の路面である右側第2路面の路面状態に関する右側第2路面情報を非接触式で検出し、
前記プロセッサは、
前記左側の路面および前記右側の路面それぞれの路面摩擦係数を用いて、左側の前記駆動輪および右側の前記駆動輪のそれぞれの駆動力の上限を独立的に算出して、前記車両の駆動力を制御し、
前記左側第1路面情報および前記左側第2路面情報に基づいて、前記左側第1路面の路面状態と前記左側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否か、および、前記右側第1路面情報および前記右側第2路面情報に基づいて、前記右側第1路面の路面状態と前記右側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定し、
前記左側第1路面の路面状態と前記左側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、前記左側第2路面の路面摩擦係数として、前記左側第2路面情報から推定される左側第2路面摩擦係数に替えて、前記左側第1路面情報から推定される左側第1路面摩擦係数を用いて、左側の前記駆動輪の駆動力の上限を算出し、
前記右側第1路面の路面状態と前記右側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、前記右側第2路面の路面摩擦係数として、前記右側第2路面情報から推定される右側第2路面摩擦係数に替えて、前記右側第1路面情報から推定される右側第1路面摩擦係数を用いて、右側の前記駆動輪の駆動力の上限を算出する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記車両にネットワークを介して接続された情報配信装置から、前記第2路面の路面状態に関する外部情報を受信する外部情報受信部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記第2検出部により前記第2路面情報を検出できない場合に、前記第2路面の路面状態に関する路面情報として、前記第2路面情報に替えて、前記外部情報を用いて、前記車両の駆動力を制御する、請求項1または2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両では、車両の駆動輪がスリップしないようにするために、駆動輪の駆動力を制御するものがある。例えば、特許文献1には、カメラにより撮像した車両の前方の路面の画像に基づいて、車両の前方の路面の摩擦係数を推定し、当該摩擦係数に基づいて、駆動輪の最大駆動力を算出し、当該最大駆動力以下の範囲内に収まるように、駆動輪の駆動力を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、カメラなどの非接触式のセンサによって、車両の前方の路面の摩擦係数を推定することで、車両が前方の路面を走行する前に、予め駆動力等を制御することができ、スリップを防止することができる。しかしながら、カメラなどの非接触式のセンサは、駆動輪等に設置される接触式のセンサに比べ、路面の摩擦係数を推定する精度が低い。そのため、カメラ等の非接触式のセンサによって推定された路面の摩擦係数では、適切な駆動力の上限を設定し、駆動力を適切に制御することができない虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、車両の駆動力を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る車両は、
車両の駆動輪が接触している現在位置の路面である第1路面の路面状態に関する第1路面情報を検出する第1検出部と、
前記車両の前方に位置する路面である第2路面の路面状態に関する第2路面情報を非接触式で検出する第2検出部と、
前記第1路面情報および前記第2路面情報のうち少なくとも一方から推定される路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、1つまたは複数のプロセッサと、プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、
前記プロセッサは、
前記第1路面情報および前記第2路面情報に基づいて、前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定することと、
前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態である場合に、前記第2路面の路面摩擦係数として、前記第2路面情報から推定される第2路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御することと、
前記第1路面の路面状態と前記第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、前記第2路面の路面摩擦係数として、前記第2路面摩擦係数に替えて、前記第1路面情報から推定される第1路面摩擦係数を用いて、前記車両の駆動力を制御することと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の駆動力を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る車両を備えた車両制御システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る車両の制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る車両の制御を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る車両の制御部による車両制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る車両の制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
[1.第1の実施形態に係る車両と車両制御システムの全体構成]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る車両10を備えた車両制御システム1の全体構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る車両10を備えた車両制御システム1の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、車両制御システム1は、車両10と、情報配信装置20と、ネットワーク30とを含む。車両10と情報配信装置20は、ネットワーク30を介して接続される。
【0011】
車両10は、道路上を走行可能な自動車である。車両10は、例えば、走行用の駆動源としてエンジンが設けられたエンジン車両である。なお、車両10は、走行用の駆動源としてエンジンとモータとが駆動源として設けられたハイブリッド車両であってもよいし、走行用の駆動源としてモータが設けられた電気車両であってもよい。また、車両10は、自動運転機能を有する自動運転車両であってもよい。
【0012】
図1に示すように、車両10は、制御部100と、接触式検出部110と、非接触式検出部120と、外部情報検出部130と、車両駆動装置140と、を備える。また、車両10は、情報配信装置20などの外部装置と無線または有線で各種の情報を送信及び受信可能な通信部を備える。
【0013】
制御部100は、車両10の駆動力を制御する車両制御装置として機能する。制御部100は、例えば、後述する第1路面情報および第2路面情報のうち少なくとも一方から推定される路面摩擦係数μを用いて、車両10の駆動力を制御する。路面摩擦係数μは、例えば、路面の摩擦状態を表す指標である。路面情報は、例えば、路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報である。
図1に示すように、制御部100は、プロセッサ102と、プロセッサ102に接続されたメモリ104とを有する。
【0014】
プロセッサ102は、コンピュータに搭載される演算処理装置である。プロセッサ102は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成されるが、その他のマイクロプロセッサで構成されてもよい。また、プロセッサ102は、1つまたは複数のプロセッサで構成されてもよい。プロセッサ102は、メモリ104または他の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することにより、制御部100における各種の処理が実行される。
【0015】
メモリ104は、プログラムおよびその他の各種データを記憶する記憶媒体である。メモリ104は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含む。ROMは、プロセッサ102が使用するプログラム、およびプログラムを動作させるためのデータ等を記憶する不揮発性メモリである。RAMは、プロセッサ102により実行される処理に用いられる変数、演算パラメータ、演算結果等のデータを一時記憶する揮発性メモリである。ROMに記憶されたプログラムは、RAMに読み出され、CPUなどのプロセッサ102により実行される。
【0016】
接触式検出部110は、第1検出部の一例である。接触式検出部110は、接触式センサ112と、第1路面摩擦係数推定部114と、走行状況判定部116を有する。接触式センサ112は、例えば、車速センサ、2輪駆動輪または4輪駆動輪の車輪速センサ、ハンドル角センサ、ヨーレートセンサ、アクセル開度センサ、ブレーキペダルスイッチ、ブレーキ液圧センサ、操舵トルクセンサ、前後加速度センサ、および、横加速度センサ等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せであってもよい。また、接触式センサ112は、例えば、エンジントルク、エンジンの回転数またはスロットル開度等を検出するエンジンに設けられるセンサ、タービン回転数、トランスミッションギヤ比または差動制限クラッチの締結トルク等を検出するトランスミッションに設けられるセンサ、または、電動パワーステアリングによるアシスト力等を検出する電動パワーステアリングに設けられるセンサ等であってもよい。
【0017】
接触式センサ112は、例えば、第1路面の路面状態に関する第1路面情報を接触式で検出する。路面状態は、路面に関する各種の状態であり、例えば、駆動輪と路面との間の摩擦力に影響し得る状態である。路面状態は、例えば、路面が滑りやすさに関する状態である。路面状態は、例えば、路面摩擦係数μが所定の閾値以上である高μ路と、路面摩擦係数μが当該所定の閾値未満である低μ路に分けることができる。所定の閾値は、例えば、0.5である。また、これに限定されず、路面状態は、例えば、路面摩擦係数μの複数の閾値によって3つ以上の区分に分けられてもよい。また、路面状態は、例えば、乾いた路面(DRY)、濡れた路面(WET)、積雪した路面(SNOW)、凍結した路面(ICE)など、路面の種別に応じて区分されてもよい。第1路面は、車両10の駆動輪が接触している現在位置の路面である。第1路面情報は、第1路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報であり、例えば、第1路面の路面状態を反映する車両10の動作に関する情報であってもよい。例えば、第1路面情報は、車速、車輪速、ハンドル角、ヨーレート、アクセル開度、ブレーキ作動信号、ブレーキ操作量、ブレーキ液圧、前後加速度、横加速度、エンジン回転数、スロットル開度、エンジントルク、タービン回転数、トランスミッションギヤ比、差動制限クラッチの締結トルク、ドライバ操舵力、および、電動パワーステアリングによるアシスト力等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せであってもよい。
【0018】
第1路面摩擦係数推定部114は、接触式センサ112によって検出された第1路面情報から第1路面の路面摩擦係数μである第1路面摩擦係数μ1を推定する。第1路面摩擦係数推定部114は、第1路面摩擦係数μ1を、複数種類の推定方法で推定可能である。後述する走行状況判定部116により判定される走行状態は、主に、加速状態、減速状態、旋回状態の3種類であり、以下において、3種類の走行状態に応じた推定方法について説明する。
【0019】
まず、走行状態が加速状態である場合の第1路面摩擦係数μ1の推定方法について説明する。第1路面摩擦係数推定部114は、運転者により入力された要求駆動力に基づいて、発生制駆動力を演算する。その後、第1路面摩擦係数推定部114は、発生制駆動力の今回の値と、発生制駆動力の過去の値との差分値である発生制駆動力差分値を演算する。また、第1路面摩擦係数推定部114は、接触式センサ112によって検出されたエンジン回転数、スロットル開度、タービン回転数、トランスミッションギヤ比、および、ブレーキ液圧に基づいて、推定制駆動力を演算する。その後、第1路面摩擦係数推定部114は、推定制駆動力の今回の値と、推定制駆動力の過去の値との差分値である推定制駆動力差分値を演算する。そして、第1路面摩擦係数推定部114は、発生制駆動力差分値と推定制駆動力差分値により、ドライビングスティフネス係数を演算する。第1路面摩擦係数推定部114は、当該ドライビングスティフネス係数と、接触式センサ112によって検出された車速とを、特性マップに当てはめ、第1路面摩擦係数μ1を推定する。特性マップは、予め記憶されたドライビングスティフネス係数と車速と路面摩擦係数μとの関係を示すマップである。
【0020】
次に、走行状態が減速状態である場合の第1路面摩擦係数μ1の推定方法について説明する。第1路面摩擦係数推定部114は、接触式センサ112によって検出された車輪速により、前輪車輪速と、後輪車輪速を演算し、後輪車輪速を車体速として設定する。そして、第1路面摩擦係数推定部114は、当該車体速を微分処理し、車体減速度を演算する。その後、一定の条件を満たした場合に、第1路面摩擦係数推定部114は、車体速と、前輪車輪速と、後輪車輪速に基づいて、前後輪すべり率差を演算し、当該前後輪すべり率差と、車体減速度とを、判定マップに当てはめ、路面摩擦係数瞬間値μMを推定する。判定マップは、予め記憶された前後輪すべり率差と、車体減速度と、路面摩擦係数μとの関係を示すマップである。その後、第1路面摩擦係数推定部114は、接触式センサ112によって検出されたブレーキ作動信号がONで、かつ、車体減速度が第1閾値(例えば、0.5m/s2)以上の状態が、一定時間継続しているかを判定する。そして、当該状態が一定時間継続している場合、第1路面摩擦係数推定部114は、路面摩擦係数瞬間値μMがμMH(例えば、1.0)以上で、かつ、車体減速度が第2閾値(例えば、2.0m/s2)以上である場合、或いは、路面摩擦係数瞬間値μMがμMM(例えば、0.75)以上で、かつ、車体減速度が第3閾値(例えば、1.3m/s2)以上である場合、或いは、路面摩擦係数瞬間値μMがμML(例えば、0.3)以上で、かつ、車体減速度が第4閾値(例えば、0.5m/s2)以上である場合には、第1路面摩擦係数μ1を路面摩擦係数瞬間値μMで更新する。
【0021】
最後に、走行状態が旋回状態である場合の第1路面摩擦係数μ1の推定方法について説明する。まず、第1路面摩擦係数推定部114は、エンジントルク、エンジン回転数、主変速ギヤ比、タービン回転数、差動制限クラッチの締結トルク、ヨーレート、横加速度に基づいて、前輪摩擦円利用率を演算する。次に、第1路面摩擦係数推定部114は、ハンドル角と、ドライバ操舵力と、電動パワーステアリングによるアシスト力に基づいて、推定ラック推力を演算する。また、第1路面摩擦係数推定部114は、前輪すべり角に基づいて、基準ラック推力を演算する。なお、前輪すべり角は、ハンドル角と、ヨーレートと、車速から演算される。そして、第1路面摩擦係数推定部114は、推定ラック推力と、基準ラック推力に基づいて、ラック推力偏差を演算する。その後、第1路面摩擦係数推定部114は、ラック推力偏差と、最大値判定閾値とを比較し、ラック推力偏差が最大値判定閾値以上の場合、前輪摩擦円利用率を第1路面摩擦係数μ1として設定する。また、ラック推力偏差が最大値判定閾値より小さい場合、第1路面摩擦係数推定部114は、車速と、前輪すべり角を用いて、復帰速度マップを参照し、復帰速度で路面摩擦係数を復帰させていきながら第1路面摩擦係数μ1を演算する。復帰速度マップは、車速と前輪すべり角に基づいて路面摩擦係数μを予め定めた設定値に復帰させる復帰速度を予め設定しておいたマップである。
【0022】
以上説明したように、第1路面摩擦係数推定部114は、例えば、後述する走行状況判定部116により車両10が加速状態であると判定した場合に、加速状態に応じた推定方法を用いて、第1路面摩擦係数μ1を推定する。なお、車両10が減速状態または旋回状態である場合も同様である。
【0023】
走行状況判定部116は、接触式センサ112によって検出された第1路面情報から、車両10の走行状態を判定する。走行状況判定部116は、例えば、接触式センサ112によって検出された車両10の加速度が所定値以上である場合に、車両10が加速状態であると判定する。なお、これに限定されず、例えば、接触式センサ112が車両10の加速度を検出した際に、走行状況判定部116は、車両10が加速状態であると判定してもよい。また、走行状況判定部116は、例えば、接触式センサ112によって検出されたブレーキ操作量が所定値以上である場合に、車両10が減速状態であると判定する。なお、これに限定されず、例えば、接触式センサ112がブレーキ操作量を検出した際に、走行状況判定部116は、車両10が減速状態であると判定してもよい。また、走行状況判定部116は、例えば、接触式センサ112によって検出されたハンドル角が所定値以上である場合に、車両10が旋回状態であると判定する。なお、これに限定されず、例えば、接触式センサ112がハンドル角を検出した際に、走行状況判定部116は、車両10が旋回状態であると判定してもよい。
【0024】
以上のようにして、接触式検出部110は、第1路面情報を接触式で検出し、検出した第1路面情報を用いて、第1路面摩擦係数μ1を推定する。
【0025】
非接触式検出部120は、第2検出部の一例である。非接触式検出部120は、非接触式センサ122と、第2路面摩擦係数推定部124を有する。非接触式センサ122は、例えば、車両10の前方を撮像するカメラ、外気温センサ、路面温度センサ、近赤外線センサ、および、レーザ光センサ等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せであってもよい。非接触式センサ122は、例えば、第2路面の路面状態に関する第2路面情報を非接触式で検出する。第2路面は、車両10の現在位置から所定距離だけ前方に位置する路面であり、例えば、約100m先の路面である。第2路面情報は、第2路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報であり、例えば、第2路面の路面状態を反映する第2路面の状態に関する情報であってもよい。例えば、第2路面情報は、車両10の前方の画像、外気温、路面温度、路面凹凸、路面の水分量、および、車両10の前方の路面の粗さ等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せであってもよい。
【0026】
第2路面摩擦係数推定部124は、非接触式センサ122によって検出された第2路面情報から、第2路面の路面摩擦係数μである第2路面摩擦係数μ2を推定する。具体的には、第2路面摩擦係数推定部124は、例えば、非接触式センサ122によって検出された路面温度と、路面凹凸と、路面の水分量とを、路面状態マップに当てはめ、第2路面の路面状態が、「DRY」、「WET」、「SNOW」、「ICE」のうちいずれであるかを判定する。また、これに限定されず、第2路面摩擦係数推定部124は、例えば、第2路面の路面状態として、高μ路、低μ路、舗装路、未舗装路、アスファルト、コンクリートのうちいずれであるかを判定してもよい。路面状態マップは、予め記憶された、路面温度、路面凹凸、および、路面の水分量に応じて、路面状態である「DRY」、「WET」、「SNOW」、「ICE」を対応付けたマップである。そして、第2路面摩擦係数推定部124は、例えば、路面状態が「DRY」である場合、第2路面摩擦係数μ2を0.65~1.0の範囲内の値に推定し、路面状態が「WET」である場合、第2路面摩擦係数μ2を0.45~0.7の範囲内の値に推定する。また、第2路面摩擦係数推定部124は、路面状態が「SNOW」である場合、第2路面摩擦係数μ2を0.25~0.6の範囲内の値に推定し、路面状態が「ICE」である場合、第2路面摩擦係数μ2を0.05~0.3の範囲内の値に推定する。第2路面摩擦係数推定部124は、例えば、上記の路面状態ごとに定められた路面摩擦係数μの範囲のうち、路面摩擦係数μの範囲の中央値を第2路面摩擦係数μ2とする。しかし、これに限定されず、第2路面摩擦係数推定部124は、例えば、路面摩擦係数μの範囲の上限値または下限値を第2路面摩擦係数μ2としてもよい。また、第2路面摩擦係数推定部124は、例えば、路面状態に起因するパラメータ(路面凹凸、水膜厚、雪の密度、雪の含水率、路面温度等)に応じて、路面状態ごとの範囲内のいずれかの値に推定してもよい。
【0027】
以上のようにして、非接触式検出部120は、第2路面情報を非接触式で検出し、検出した第2路面情報を用いて、第2路面摩擦係数μ2を推定する。
【0028】
外部情報検出部130は、外部情報受信部132と、第3路面摩擦係数推定部134を有する。外部情報受信部132は、上記の通信部の一例であり、情報配信装置20とネットワーク30を介して接続される。外部情報受信部132は、例えば、情報配信装置20から、第3路面の路面状態に関する外部情報を受信する。第3路面は、車両10の現在位置から所定距離だけ前方に位置する路面であり、例えば車両10の現在地から約100mから数km先の路面である。第3路面は、第2路面を含んでもよい。この場合、第3路面の路面状態に関する外部情報は、第2路面の路面状態に関する外部情報を含んでいてもよい。外部情報は、第3路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報であり、例えば、第3路面の路面状態を反映する第3路面の状態に関する情報であってもよい。例えば、外部情報は、道路画像、外気温、路面温度、路面凹凸、路面の水分量、路面の粗さ等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せであってもよい。また、外部情報は、例えば、道路交通情報、道路凍結情報、気象情報、または、他車両のスリップ情報等であってもよい。上述した外部情報受信部132により受信した各種の外部情報は、例えば、情報配信装置20によって検出位置および検出時刻と関連付けられて、外部情報受信部132に送信されてもよい。
【0029】
第3路面摩擦係数推定部134は、外部情報受信部132によって受信された第3路面情報から、第3路面の路面摩擦係数μである第3路面摩擦係数μ3を推定する。なお、具体的な推定方法としては、第3路面摩擦係数推定部134は、第2路面摩擦係数推定部124と同様の推定方法によって、第3路面摩擦係数μ3を推定する。また、これに限定されず、第3路面摩擦係数推定部134は、例えば、外部情報受信部132が受信した道路交通情報、道路凍結情報、気象情報、および、他車両のスリップ情報等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せにより、直接、路面状態を検出してもよい。
【0030】
以上のようにして、外部情報検出部130は、情報配信装置20から外部情報を受信し、受信した外部情報を用いて、第3路面摩擦係数μ3を推定する。
【0031】
車両駆動装置140は、車両10の駆動輪を駆動するモータまたはエンジン等である。車両駆動装置140は、制御部100と接続されている。車両駆動装置140は、例えば、制御部100からの信号によって、駆動輪を駆動させる。
【0032】
情報配信装置20は、車両10にネットワーク30を介して接続され、外部情報を車両10に送信する。情報配信装置20は、例えば、情報収集端末により取得された外部情報を、車両10に送信する。情報配信装置20は、例えば、道路情報提供システム、気象情報配信システム等である。また、これに限定されず、情報配信装置20は、例えば、路面の各地に配置され、一定の路面の区間を走行する車両に対して、外部情報を配信する装置であってもよい。情報収集端末は、例えば、路面の各地に配置されたカメラまたは気象観測装置等である。また、これに限定されず、情報収集端末は、例えば、路面性状測定車、除雪車、または、他の一般車両でもよい。また、情報収集端末は、路面の各地に配置され、路面状態を検出するための検出装置であり、例えば、路面温度センサ、近赤外線センサ、または、レーザ光センサ等であってもよい。情報配信装置20は、例えば、道路交通情報、道路凍結情報、および、気象情報等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せを、車両10に配信する。また、情報配信装置20は、例えば、路面性状測定車、除雪車または他の一般車両により検出された路面の路面状態に関する情報を車両10に配信してもよいし、路面の各地に配置された各種のセンサにより検出した情報を車両10に配信してもよい。
【0033】
[2.第1の実施形態に係る車両の制御部の機能構成]
次に、
図2を参照して、第1の実施形態に係る車両10の制御部100の機能構成について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る車両10の制御部100の機能構成の一例を示すブロック図である。また、第1の実施形態に係る車両10の制御部100の機能構成を説明するにあたり、必要に応じて、
図3を用いて説明をする。
図3は、第1の実施形態に係る車両10の制御を説明する図である。
図3では、第1路面の路面状態と、第2路面の路面状態との組み合わせについて、4つのパターンを示しており、それぞれのパターンにおいて、制御部100がどのように制御処理をするかを説明する。なお、4つのパターンは、(A)同一種類の路面状態(高μ路-高μ路)、(B)同一種類の路面状態(低μ路-低μ路)、(C)異なる種類の路面状態(高μ路-低μ路)、(D)異なる種類の路面状態(低μ路-高μ路)である。なお、4つのパターンにおいて、「-」より先が第1路面の路面状態、「-」より後が第2路面の路面状態を示す。
【0034】
まず、
図2に示すように、制御部100は、情報取得部300と、路面状態判定部302と、路面摩擦係数設定部304と、上限駆動力設定部306と、駆動力制御部308と、を含む。
【0035】
情報取得部300は、路面情報を取得する。情報取得部300は、例えば、接触式検出部110によって検出された第1路面情報と第1路面摩擦係数μ1を取得する。また、情報取得部300は、例えば、非接触式検出部120によって検出された第2路面情報と、第2路面の路面状態を表す情報と、第2路面摩擦係数μ2を取得する。また、情報取得部300は、例えば、非接触式検出部120により第2路面情報を検出できない場合に、外部情報検出部130によって受信した外部情報と、第3路面の路面状態を表す情報と、第3路面摩擦係数μ3を取得する。
【0036】
例えば、車両10の前方の道路が大きくカーブしている場合、車両10の前方の道路が緩くカーブ湾曲しており、かつ、その湾曲した道路の内側に障害物が存在する場合、または、車両10が交差点を曲がる場合などには、車両10の前方を見渡すことができない。例えば、非接触式センサ122であるカメラまたはレーザなどは、直線状の前方道路を撮像または測定できるが、カーブした前方道路の先を撮像または測定できない。この場合、非接触式検出部120により、前方道路の第2路面情報を検出することができなくなる。
【0037】
また、例えば、車両10が高速走行している場合、制御部100が、第2路面情報から第2路面摩擦係数μ2を推定し、車両10の駆動力を制御する前に、車両10が第2路面に到達する虞がある。そのため、車両10は、車両10の約100m以上先に位置する路面に関する路面情報を取得する必要がある。しかし、非接触式センサ122であるカメラまたはレーザなどは、車両10の約100m以上先に位置する路面に関する路面情報を検出できない。
【0038】
このように、非接触式検出部120により第2路面情報を検出できない場合に、情報取得部300は、第2路面の路面状態に関する路面情報として、第2路面情報に替えて、外部情報を取得し、用いる。
【0039】
路面状態判定部302は、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態(以下、「2つの路面状態」という場合がある。)が同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。路面状態判定部302は、例えば、2つの路面状態の両方が高μ路である場合、もしくは2つの路面状態の両方が低μ路である場合に、同一の種類の路面状態であると判定する。また、これに限定されず、例えば、路面状態判定部302は、2つの路面状態の両方が「DRY」、「WET」、「SNOW」、「ICE」のいずれか1つの路面状態である場合に、同一の種類の路面状態であると判定する。また、例えば、路面状態について、「DRY」または「WET」の場合が高μ路であると分類し、「SNOW」または「ICE」の場合が低μ路であると分類してもよい。この場合、路面状態判定部302は、2つの路面状態の両方が「DRY」または「WET」である場合、同一の種類の路面状態であると判定してもよい。なお、2つの路面状態の両方が「SNOW」または「ICE」である場合も、同様に同一の種類の路面状態であると判定してもよい。また、路面状態判定部302は、例えば、2つの路面状態のうち一方の路面状態が高μ路であり、他方の路面状態が「DRY」である場合に、同一の種類の路面状態であると判定してもよい。なお、一方の路面状態と他方の路面状態との組合せが、高μ路と「WET」である場合、または、低μ路と「SNOW」である場合、または、低μ路と「ICE」である場合も、上記と同様に、双方の路面状態が同一の種類の路面状態であると判定してもよい。
【0040】
路面状態判定部302は、例えば、第1路面摩擦係数μ1および第2路面摩擦係数μ2に基づいて、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。
【0041】
例えば、路面状態判定部302は、接触式検出部110により検出された第1路面摩擦係数μ1が所定の閾値以上であるか否かを判定し、第1路面の路面状態が高μ路か低μ路かを判定する。なお、第2路面の路面状態も、同様に、第2路面摩擦係数μ2により判定される。その後、
図3(A)に示すように、第1路面の路面状態および第2路面の路面状態の両方が高μ路である場合、もしくは
図3(B)に示すように低μ路である場合、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態であると判定する。一方、
図3(C)に示すように、第1路面の路面状態が高μ路であり、かつ、第2路面の路面状態が低μ路である場合、もしくは、
図3(D)に示すように、第1路面の路面状態が低μ路であり、かつ、第2路面の路面状態が高μ路である場合、がある。これらの場合、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態が異なる種類の路面状態であると判定する。
【0042】
また、路面状態判定部302は、例えば、第1路面摩擦係数μ1および、非接触式検出部120により判定された第2路面の路面状態に基づいて、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定してもよい。具体的には、上述の通り、路面状態判定部302は、第1路面摩擦係数μ1に基づいて、第1路面の路面状態を判定する。そして、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態と、非接触式検出部120により判定された第2路面の路面状態、例えば、「DRY」、「WET」、「SNOW」、「ICE」のいずれかの状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。例えば、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態が高μ路であり、第2路面の路面状態が「DRY」である場合に、同一の種類の路面状態であると判定する。
【0043】
以上のようにして、路面状態判定部302は、第1路面情報および第2路面情報に基づいて、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。なお、非接触式検出部120により第2路面情報を検出できない場合、路面状態判定部302は、第1路面情報および外部情報に基づいて、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。また、この場合の具体的な判定方法は、上述した第1路面摩擦係数μ1および第2路面摩擦係数μ2に基づいた場合、および、第1路面摩擦係数μ1、および、非接触式検出部120により判定された第2路面の路面状態に基づいた場合と同様である。
【0044】
また、路面状態判定部302は、例えば、第1路面情報および第2路面情報に基づいて、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が良い状態であるか否かを判定する。路面状態が良い状態は、例えば、路面摩擦係数μが高い状態である。例えば、
図3(C)に示すように、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態が高μ路であり、第2路面の路面状態が低μ路である場合、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が良い状態であると判定する。また、
図3(D)に示すように、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態が低μ路であり、第2路面の路面状態が高μ路である場合、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が悪い状態であると判定する。
【0045】
図2に戻り、路面摩擦係数設定部304は、路面に対応する路面摩擦係数μを設定する。路面摩擦係数設定部304は、例えば、第1路面に対して、第1路面摩擦係数μ1を設定する。また、路面摩擦係数設定部304は、例えば、第2路面に対して、第2路面摩擦係数μ2を設定する。また、路面摩擦係数設定部304は、非接触式検出部120により第2路面情報を検出できない場合、第2路面に対して、第3路面摩擦係数μ3を設定する。
【0046】
また、路面摩擦係数設定部304は、例えば、路面状態判定部302による判定結果に基づいて、各路面に対応する路面摩擦係数μをそれぞれ設定する。
【0047】
例えば、
図3(A)および
図3(B)に示すように、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態であると判定された場合に、路面摩擦係数設定部304は、第1路面の路面摩擦係数μを、第1路面情報から推定された第1路面摩擦係数μ1に設定するとともに、第2路面の路面摩擦係数μも、当該第1路面摩擦係数μ1に設定する。このように、路面摩擦係数設定部304は、第2路面に対する路面摩擦係数μを、第2路面摩擦係数μ2に替えて第1路面摩擦係数μ1に設定する。なお、第2路面に対して、第3路面摩擦係数μ3が設定されている場合も同様である。
【0048】
一方、例えば、
図3(C)および
図3(D)に示すように、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態が異なる種類の路面状態であると判定された場合に、路面摩擦係数設定部304は、第1路面の路面摩擦係数μを、第1路面情報から推定された第1路面摩擦係数μ1に設定するとともに、第2路面の路面摩擦係数μを、第2路面情報から推定された第2路面摩擦係数μ2に設定する。このように、
図3(C)および
図3(D)の場合は、第2路面に対する路面摩擦係数μを、第2路面摩擦係数μ2から第1路面摩擦係数μ1に替えずに、当該第2路面摩擦係数μ2をそのまま用いる。
【0049】
図2に戻り、上限駆動力設定部306は、路面摩擦係数μを用いて、車両10の駆動力の上限(以下、「上限駆動力」という。)を算出し、車両10の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した上限駆動力に設定する。上限駆動力設定部306は、例えば、第2路面に対して設定されている路面摩擦係数μを用いて、上限駆動力を算出する。
【0050】
例えば、上限駆動力設定部306は、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、第2路面の路面摩擦係数μとして、第2路面摩擦係数μ2に替えて、第1路面摩擦係数μ1を用いて、車両10の上限駆動力を算出する。例えば、
図3(A)および
図3(B)に示すように、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態であると判定された場合に、第2路面に対する路面摩擦係数μは、第1路面摩擦係数μ1に設定されている。そのため、
図3(A)および
図3(B)の場合、上限駆動力設定部306は、第2路面に対して設定されている第1路面摩擦係数μ1に基づいて、車両10の上限駆動力を算出する。
【0051】
一方、例えば、上限駆動力設定部306は、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態である場合に、第2路面の路面摩擦係数μとして、第2路面摩擦係数μ2を用いて、車両10の上限駆動力を算出する。例えば、
図3(C)および
図3(D)に示すように、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態が異なる種類の路面状態であると判定された場合に、第2路面に対する路面摩擦係数μは、第2路面摩擦係数μ2に設定されている。そして、
図3(C)の場合、上限駆動力設定部306は、低μ路である第2路面に対して設定されている第2路面摩擦係数μ2に基づいて、車両10の上限駆動力を算出する。なお、詳しくは後述するが、
図3(D)の場合、上限駆動力設定部306は、低μ路である第1路面に対して設定されている第1路面摩擦係数μ1に基づいて、車両10の上限駆動力を算出する。
【0052】
また、上限駆動力設定部306は、例えば、路面状態判定部302による判定結果に応じて、第1路面に対して設定されている路面摩擦係数μを用いて、車両10の駆動力の上限を算出してもよい。
【0053】
例えば、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態であり、かつ、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が悪い状態である場合に、上限駆動力設定部306は、第1路面の路面摩擦係数μとして、第1路面摩擦係数μ1を用いて、車両10の上限駆動力を算出する。例えば、
図3(C)および
図3(D)に示すように、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態である場合、路面摩擦係数設定部304は、第1路面に対して、第1路面摩擦係数μ1を設定している。そして、同様の場合、路面摩擦係数設定部304は、第2路面に対して、第2路面摩擦係数μ2を設定している。この状況において、
図3(D)に示すように、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が悪い状態である場合に、上限駆動力設定部306は、より悪い路面状態の第1路面に対して設定されている第1路面摩擦係数μ1を用いて、上限駆動力を算出する。
【0054】
一方、例えば、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態であり、かつ、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が良い状態である場合に、上限駆動力設定部306は、第2路面の路面摩擦係数μとして、第2路面摩擦係数μ2を用いて、車両10の上限駆動力を算出する。例えば、
図3(C)に示すように、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が良い状態である場合に、上限駆動力設定部306は、より悪い路面状態の第2路面に対して設定されている第2路面摩擦係数μ2を用いて、上限駆動力を算出する。
【0055】
図2に戻り、駆動力制御部308は、車両10の駆動力を制御する。駆動力制御部308は、例えば、上限駆動力設定部306によって設定された上限駆動力に基づいて、車両10の駆動力を制御する。例えば、駆動力制御部308は、運転者のアクセル操作等により入力された駆動力が、上限駆動力を超える場合、実際の駆動力を、当該上限駆動力以下に制御し、車両駆動装置140に送信する。
【0056】
また、駆動力制御部308は、例えば、路面状態判定部302による判定結果に応じて、車両10の駆動力を制御する。例えば、
図3(C)示すように、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態であり、かつ、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が悪い状態である場合、駆動力制御部308は、車両10の速度を減速させる。具体的には、第1路面が高μ路であり、第2路面が低μ路である場合、現在走行中の路面(第1路面)よりも、車両10の前方の路面(第2路面)の方が、路面摩擦係数μが低くなる。そのため、駆動力制御部308は、前方の路面に突入する前に予め車両10の速度を第2路面の路面摩擦係数μに対応させた速度に減速させる。このように、車両10の前方の路面状態が悪化する場合に、事前に車両10の速度を減速させることで、車両10が、前方の路面に突入した際に、スリップを防止し、より安全に車両10を走行させることができる。
【0057】
[3.第1の実施形態に係る車両の制御部の処理フロー]
次に、
図4を参照して、第1の実施形態に係る車両10の制御部100による処理フローについて説明する。
図4は、第1の実施形態に係る制御部100による車両制御処理を示すフローチャートである。
【0058】
図4に示すように、まず、情報取得部300は、接触式検出部110から各種情報を取得する(ステップS100)。具体的には、情報取得部300は、接触式検出部110から、第1路面情報と第1路面摩擦係数μ1を取得する。次いで、路面摩擦係数設定部304は、第1路面の路面摩擦係数μを、第1路面摩擦係数μ1に設定する。
【0059】
その後、情報取得部300は、非接触式検出部120により第2路面情報を検出可能であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0060】
その結果、非接触式検出部120により第2路面情報を検出可能であると判定した場合(ステップS102におけるYES)、情報取得部300は、非接触式検出部120から各種情報を取得する(ステップS104)。具体的には、情報取得部300は、非接触式検出部120から、第2路面情報と、第2路面の路面状態を表す情報と、第2路面摩擦係数μ2を取得する。次いで、路面摩擦係数設定部304は、第2路面の路面摩擦係数μを、第2路面摩擦係数μ2に設定する。
【0061】
一方、非接触式検出部120により第2路面情報を検出可能でないと判定した場合(ステップS102におけるNO)、情報取得部300は、外部情報検出部130から各種情報を取得する(ステップS106)。具体的には、情報取得部300は、外部情報検出部130から、外部情報と、第3路面の路面状態を表す情報と、第3路面摩擦係数μ3を取得する。次いで、路面摩擦係数設定部304は、第2路面の路面摩擦係数μを、第3路面摩擦係数μ3に設定する。
【0062】
上記ステップS104において、非接触式検出部120から各種情報を取得した後、もしくは、上記ステップS106において、外部情報検出部130から各種情報を取得した後、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0063】
その結果、第1路面と第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であると判定した場合(ステップS108におけるYES)、路面摩擦係数設定部304は、第2路面の路面摩擦係数μを、第2路面摩擦係数μ2に替えて、第1路面摩擦係数μ1に設定する(ステップS110)。
【0064】
その後、上限駆動力設定部306は、第2路面の路面摩擦係数μに基づいて、車両10の上限駆動力を算出し、車両10の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した上限駆動力に設定する(ステップS112)。
【0065】
一方、ステップS108において同一の種類の路面状態でないと判定した場合(ステップS108におけるNO)、路面状態判定部302は、第1路面の路面状態は、第2路面の路面状態よりも悪い状態であるか否かを判定する(ステップS114)。
【0066】
その結果、第1路面の路面状態は、第2路面の路面状態よりも良い状態であると判定した場合(ステップS114におけるNO)、駆動力制御部308は、第2路面摩擦係数μ2に応じた減速分だけ、車両10の走行速度を減速させ(ステップS116)、ステップS112に処理を移す。
【0067】
一方、ステップS114において、第1路面は第2路面よりも路面状態が悪い状態であると判定した場合(ステップS114におけるYES)、上限駆動力設定部306は、第1路面の路面摩擦係数μに基づいて、上限駆動力を算出する。次いで、上限駆動力設定部306は、車両10の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した上限駆動力に設定する(ステップS118)。
【0068】
上記ステップS112において上限駆動力が設定された後、もしくは、上記ステップS118において上限駆動力が設定された後に、駆動力制御部308は、設定された上限駆動力に基づいて、車両10の駆動力を制御し(ステップS120)、車両制御処理を終了する。
【0069】
以上のように、第1の実施形態によれば、第1路面の路面状態と、第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態である場合に、第1路面と第2路面の路面摩擦係数μとしてともに、接触式検出部110により得られた第1路面摩擦係数μ1を用いて、車両10の駆動力を制御する。このように、第1路面と第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態である場合に、推定精度が悪い第2路面摩擦係数μ2に替えて、推定精度の高い第1路面摩擦係数μ1を用いる。これにより、より適切な上限駆動力を設定して、車両10の駆動力を適切に制御することができ、スリップ等の走行不具合を抑制できる。
【0070】
また、第1の実施形態によれば、第1路面の路面状態と、第2路面の路面状態が異なる種類の路面状態である場合に、第2路面の路面摩擦係数μとして、非接触式検出部120により得られた第2路面摩擦係数μ2を用いて、車両10の駆動力を制御する。これにより、異なる種類の路面状態の路面摩擦係数μを用いて、車両10の駆動力を制御することを防ぎ、スリップ等の走行不具合を抑制できる
【0071】
また、第1の実施形態によれば、第1路面と第2路面の路面状態が異なる種類の路面状態であり、かつ、第2路面の路面状態よりも第1路面の路面状態が悪い状態である場合、第1路面の路面状態を表す第1路面摩擦係数μ1を用いて、車両10の駆動力を制御する。これにより、現在走行中の第1路面の路面摩擦係数μが低い状態であるにも関わらず、高い第2路面摩擦係数μ2の数値で駆動力を制御することを防止できる。したがって、適切な上限駆動力を設定して、車両10の駆動力を適切に制御することができ、現在走行中の路面においてスリップ等を防止することができる。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、非接触式検出部120により第2路面の第2路面情報を検出できない場合、外部情報検出部130により、情報配信装置20から外部情報を受信する。そして、当該外部情報を用いて、車両10の前方の第3路面の路面状態を推定する。これにより、非接触式検出部120により第2路面の第2路面情報を検出できない場合でも、車両10の前方の路面状態に応じて車両10を好適に制御することができ、車両10の駆動力を安定的かつ適切に制御することができる。
【0073】
[4.第2の実施形態に係る車両の制御部の機能構成]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両10を備えた車両制御システム1について詳細に説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、主に第1の実施形態と相違する点について以下に説明し、第2の実施形態と同様の構成および機能等については、その詳細説明を省略する。
【0074】
第1の実施形態に係る車両10では、第1路面と第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態であるかを判定し、車両10の駆動力を制御した。第2の実施形態に係る車両10では、さらに、第1路面および第2路面がスプリット路面である場合に、左右の路面それぞれの第1路面および第2路面の路面状態について、同一の種類の路面状態であるかを判定し、車両10の駆動力を制御する。スプリット路面は、車両10の進行方向に対して左右の路面の路面状態が異なる種類の路面である。
【0075】
まず、第2の実施形態に係る車両10は、上記第1の実施形態に係る車両10の構成要素と同様に、制御部100と、接触式検出部110と、非接触式検出部120と、外部情報検出部130と、車両駆動装置140と、を備える。
【0076】
制御部100は、例えば、左側の路面および右側の路面それぞれの路面摩擦係数μを用いて、左側の駆動輪および右側の駆動輪のそれぞれの上限駆動力を独立的に算出して、車両10の駆動力を制御する。左側の路面の路面摩擦係数μは、例えば、後述する左側第1路面情報および左側第2路面情報のうち少なくとも一方から推定される路面摩擦係数μである。また、右側の路面の路面摩擦係数μは、例えば、後述する右側第1路面情報および右側第1路面情報のうち少なくとも一方から推定される路面摩擦係数μである。
【0077】
制御部100は、例えば、後述する左側第1路面摩擦係数μ1Lまたは左側第2路面摩擦係数μ2Lを用いて、左側の駆動輪の上限駆動力を算出し、左側の駆動輪の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した上限駆動力に設定する。また、制御部100は、例えば、後述する右側第1路面摩擦係数μ1Rまたは右側第2路面摩擦係数μ2Rを用いて、右側の駆動輪の上限駆動力を算出し、右側の駆動輪の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した上限駆動力に設定する。そして、制御部100は、例えば、設定された左右の駆動輪の上限駆動力に基づいて、車両10の駆動力を制御する。
【0078】
接触式検出部110は、第1路面の路面状態として、第1路面のうち、左側第1路面情報および右側第1路面情報を接触式で検出する。左側第1路面情報は、第1路面のうち、車両10の進行方向に対して左側の路面である左側第1路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報である。例えば、左側第1路面情報は、左側第1路面の路面状態を反映する車両10の動作に関する情報であってもよい。また、右側第1路面情報は、第1路面のうち、車両10の進行方向に対して右側の路面である右側第1路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報である。例えば、右側第1路面情報は、右側第1路面の路面状態を反映する車両10の動作に関する情報であってもよい。例えば、左側第1路面情報および右側第1路面情報は、車速、車輪速、ハンドル角、ヨーレート、アクセル開度、ブレーキ作動信号、ブレーキ操作量、ブレーキ液圧、前後加速度、横加速度、エンジン回転数、スロットル開度、エンジントルク、タービン回転数、トランスミッションギヤ比、差動制限クラッチの締結トルク、ドライバ操舵力、および、電動パワーステアリングによるアシスト力等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せであってもよい。
【0079】
接触式検出部110は、上述した走行状態が減速状態である場合の第1路面摩擦係数μ1の推定方法を用いて、左側第1路面摩擦係数μ1Lおよび右側第1路面摩擦係数μ1Rを推定することができる。接触式検出部110は、例えば、2輪駆動輪の車輪速センサ等から、左側第1路面情報および右側第1路面情報を検出する。例えば、接触式検出部110は、2輪駆動輪の車輪速センサ等から、左側前輪車輪速、右側前輪車輪速、左側後輪車輪速、および、右側後輪車輪速を検出する。そして、接触式検出部110は、例えば、左側前輪車輪速および左側後輪車輪速に基づいて、左側第1路面摩擦係数μ1Lを推定し、右側前輪車輪速および右側後輪車輪速に基づいて、右側第1路面摩擦係数μ1Rを推定する。なお、接触式検出部110は、例えば、4輪駆動輪の車輪速センサから、左側第1路面情報および右側第1路面情報を検出してもよい。
【0080】
非接触式検出部120は、第2路面の路面状態として、第2路面のうち、左側第2路面情報および右側第2路面情報を非接触式で検出する。左側第2路面情報は、第2路面のうち、車両10の進行方向に対して左側の路面である左側第2路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報である。例えば、左側第2路面情報は、左側第2路面の路面状態を反映する左側第2路面の状態に関する情報であってもよい。右側第2路面情報は、第2路面のうち、車両10の進行方向に対して右側の路面である右側第2路面の路面状態に直接的または間接的に関連する情報である。例えば、右側第2路面情報は、右側第2路面の路面状態を反映する右側第2路面の状態に関する情報であってもよい。例えば、左側第2路面情報および右側第2路面情報は、車両10の前方の画像、外気温、路面温度、路面凹凸、路面の水分量、および、車両10の前方の路面の粗さ等のうち少なくとも1つまたは複数の組合せであってもよい。
【0081】
非接触式検出部120は、例えば、車両10の前方を撮像するカメラ、路面温度センサ、近赤外線センサ、または、レーザ光センサ等を用いて、左側第2路面および右側第2路面の2か所から、左側第2路面情報および右側第2路面情報を検出する。車両10の前方を撮像するカメラ、路面温度センサ、近赤外線センサ、または、レーザ光センサのうち、いずれか1つのセンサによって、左側第2路面および右側第2路面を走査(スキャン)する。なお、走査するセンサは1つに限定されず、例えば、同一種類のセンサを複数、または、異なる種類のセンサを複数使用してもよい。また、非接触式検出部120は、検出した左側第2路面情報および右側第2路面情報に基づいて、左側第2路面および右側第2路面の路面状態が「DRY」、「WET」、「SNOW」、「ICE」のうちいずれであるかを判定する。そして、非接触式検出部120は、当該路面の状態に応じた左側第2路面摩擦係数μ2Lと右側第2路面摩擦係数μ2Rを推定する。
【0082】
次に、第2の実施形態に係る制御部100は、上記第1の実施形態に係る制御部100の構成要素と同様に、情報取得部300と、路面状態判定部302と、路面摩擦係数設定部304と、上限駆動力設定部306と、駆動力制御部308と、を含む。
【0083】
ここで、第2の実施形態に係る車両10の制御部100の機能構成を説明するにあたり、必要に応じて、
図5を用いて説明する。
図5は、第2の実施形態に係る車両10の制御を説明する図である。
図5では、左側第1路面、左側第2路面、右側第1路面、右側第2路面の路面状態の組み合わせについて、4つのパターンを示しており、それぞれのパターンにおいて、制御部100がどのように制御処理するかを説明する。なお、4つのパターンは、(a)右側が同一の種類の路面状態(高μ路-高μ路)、左側が同一の種類の路面状態(低μ路-低μ路)、(b)右側が同一の種類の路面状態(低μ路-低μ路)、左側が異なる種類の路面状態(高μ路-低μ路)である。また、4つのパターンは、(c)右側が異なる種類の路面状態(低μ路-高μ路)、左側が同一の種類の路面状態(高μ路-高μ路)、(d)右側が異なる種類の路面状態(高μ路-低μ路)、左側が異なる種類の路面状態(低μ路-高μ路)である。なお、4つのパターンにおいて、「-」より先が第1路面の路面状態、「-」より後が第2路面の路面状態を示す。また、
図5の説明において、右側は、車両進行方向右側のことであり、左側は、車両進行方向左側のことである。
【0084】
情報取得部300は、例えば、接触式検出部110によって検出された左側第1路面情報、右側第1路面情報、左側第1路面摩擦係数μ1L、および、右側第1路面摩擦係数μ1Rを取得する。また、情報取得部300は、例えば、非接触式検出部120よって検出された左側第2路面情報、右側第2路面情報、左側第2路面の路面状態を表す情報、右側第2路面の路面状態を表す情報、左側第2路面摩擦係数μ2L、および、右側第2路面摩擦係数μ2Rを取得する。
【0085】
路面状態判定部302は、例えば、左側第1路面摩擦係数μ1Lおよび左側第2路面摩擦係数μ2Lに基づいて、左側第1路面の路面状態と左側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。また、路面状態判定部302は、例えば、右側第1路面摩擦係数μ1Rおよび右側第2路面摩擦係数μ2Rに基づいて、右側第1路面の路面状態と右側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。
【0086】
例えば、路面状態判定部302は、左側第1路面摩擦係数μ1Lが所定の閾値以上であるか否かを判定し、左側第1路面の路面状態が高μ路か低μ路かを判定する。なお、同様に、路面状態判定部302は、左側第2路面摩擦係数μ2L、右側第1路面摩擦係数μ1R、または、右側第2路面摩擦係数μ2Rに基づいて、左側第2路面、右側第1路面、または、右側第2路面の路面状態が、高μ路か低μ路かを判定する。その後、路面状態判定部302は、左側第1路面と左側第2路面とが同一の種類の路面状態であるか否か、および、右側第1路面と右側第2路面とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。例えば、路面状態判定部302は、
図5(a)の両側路面、
図5(b)の右側路面、
図5(c)の左側路面に示す場合、同一の種類の路面状態であると判定する。また、路面状態判定部302は、
図5(b)の左側路面、
図5(c)の右側路面、
図5(d)の両側路面に示す場合、異なる種類の路面状態であると判定する。
【0087】
以上のようにして、路面状態判定部302は、左側第1路面情報および左側第2路面情報に基づいて、左側第1路面の路面状態と左側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。また、路面状態判定部302は、右側第1路面情報および右側第2路面情報に基づいて、右側第1路面の路面状態と右側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態であるか否かを判定する。
【0088】
また、路面状態判定部302は、例えば、左側第2路面の路面状態よりも左側第1路面の路面状態が良い状態であるか否か、および、右側第2路面の路面状態よりも右側第1路面の路面状態が良い状態であるか否かを判定する。路面状態判定部302は、例えば、
図5(b)の左側路面に示すように、左側第1路面の路面状態が高μ路であり、左側第2路面の路面状態が低μ路である場合、左側第2路面の路面状態よりも左側第1路面の路面状態が良い状態であると判定する。また、路面状態判定部302は、例えば、
図5(d)の右側路面に示すように、右側第1路面の路面状態が高μ路であり、右側第2路面の路面状態が低μ路である場合、右側第2路面の路面状態よりも右側第1路面の路面状態が良い状態であると判定する。また、路面状態判定部302は、例えば、
図5(d)の左側路面に示すように、左側第1路面の路面状態が低μ路であり、左側第2路面の路面状態が高μ路である場合、左側第2路面の路面状態よりも左側第1路面の路面状態が悪い状態であると判定する。また、路面状態判定部302は、例えば、
図5(c)の右側路面に示すように、右側第1路面の路面状態が低μ路であり、右側第2路面の路面状態が高μ路である場合、右側第2路面の路面状態よりも右側第1路面の路面状態が悪い状態であると判定する。
【0089】
次に、路面摩擦係数設定部304は、例えば、左側第1路面に対して、左側第1路面摩擦係数μ1Lを設定し、右側第1路面に対して、右側第1路面摩擦係数μ1Rを設定する。また、路面摩擦係数設定部304は、例えば、左側第2路面に対して、左側第2路面摩擦係数μ2Lを設定し、右側第2路面に対して、右側第2路面摩擦係数μ2Rを設定する。
【0090】
また、路面摩擦係数設定部304は、例えば、
図5(a)の左側路面、および、
図5(c)の左側路面に示す場合、左側第1路面の路面摩擦係数μを、左側第1路面情報から推定された左側第1路面摩擦係数μ1Lに設定する。これとともに、路面摩擦係数設定部304は、例えば、左側第2路面の路面摩擦係数μも、当該左側第1路面摩擦係数μ1Lに設定する。このように、路面摩擦係数設定部304は、例えば、左側第1路面と左側第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態であると判定された場合、左側第2路面に対する路面摩擦係数μを、左側第2路面摩擦係数μ2Lに替えて左側第1路面摩擦係数μ1Lに設定する。また、路面摩擦係数設定部304は、例えば、
図5(a)の右側路面、および、
図5(b)の右側路面に示す場合、右側第1路面の路面摩擦係数μを、右側第1路面情報から推定された右側第1路面摩擦係数μ1Rに設定する。これとともに、路面摩擦係数設定部304は、例えば、右側第2路面の路面摩擦係数μも、当該右側第1路面摩擦係数μ1Rに設定する。このように、路面摩擦係数設定部304は、例えば、右側第1路面と右側第2路面の路面状態が同一の種類の路面状態であると判定された場合、右側第2路面に対する路面摩擦係数μを、右側第2路面摩擦係数μ2Rに替えて右側第1路面摩擦係数μ1Rに設定する。
【0091】
一方、路面摩擦係数設定部304は、例えば、
図5(b)の左側路面、および、
図5(d)の左側路面に示す場合、左側第1路面の路面摩擦係数μを、左側第1路面情報から推定された左側第1路面摩擦係数μ1Lに設定する。これとともに、路面摩擦係数設定部304は、例えば、左側第2路面の路面摩擦係数μを、左側第2路面情報から推定された左側第2路面摩擦係数μ2Lに設定する。このように、路面摩擦係数設定部304は、例えば、左側第1路面と左側第2路面の路面状態が異なる種類の路面状態であると判定された場合、左側第2路面に対する路面摩擦係数μを、左側第2路面摩擦係数μ2Lから左側第1路面摩擦係数μ1Lに替えずに、当該左側第2路面摩擦係数μ2Lをそのまま用いる。また、路面摩擦係数設定部304は、例えば、
図5(c)の右側路面、および、
図5(d)の右側路面に示す場合、右側第1路面の路面摩擦係数μを、右側第1路面情報から推定された右側第1路面摩擦係数μ1Rに設定する。これとともに、路面摩擦係数設定部304は、例えば、右側第2路面の路面摩擦係数μを、右側第2路面情報から推定された右側第2路面摩擦係数μ2Rに設定する。このように、路面摩擦係数設定部304は、例えば、右側第1路面と右側第2路面の路面状態が異なる種類の路面状態であると判定された場合、右側第2路面に対する路面摩擦係数μを、右側第2路面摩擦係数μ2Rから右側第1路面摩擦係数μ1Rに替えずに、当該右側第2路面摩擦係数μ2Rをそのまま用いる。
【0092】
上限駆動力設定部306は、例えば、左側第2路面に対して設定されている路面摩擦係数μを用いて、左側の駆動輪の上限駆動力を算出し、右側第2路面に対して設定されている路面摩擦係数μを用いて、右側の駆動輪の上限駆動力を算出する。そして、上限駆動力設定部306は、例えば、左側の駆動輪の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した左側の駆動輪の上限駆動力に設定し、右側の駆動輪の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した右側の駆動輪の上限駆動力に設定する。
【0093】
また、上限駆動力設定部306は、例えば、
図5(d)の左側路面に示す場合、左側第1路面に対して設定されている路面摩擦係数μを用いて、左側の駆動輪の上限駆動力を算出する。そして、上限駆動力設定部306は、例えば、左側の駆動輪の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、当該算出した左側の駆動輪の上限駆動力に設定する。このように、上限駆動力設定部306は、例えば、左側第2路面の路面状態よりも左側第1路面の路面状態が悪い状態であると判定された場合、より悪い路面状態の左側第1路面に対して設定されている左側第1路面摩擦係数μ1Lを用いて、左側の駆動輪の上限駆動力を算出する。また、上限駆動力設定部306は、例えば、
図5(c)の右側路面に示す場合、右側第1路面に対して設定されている路面摩擦係数μを用いて、右側の駆動輪の上限駆動力を算出する。そして、上限駆動力設定部306は、例えば、右側の駆動輪の駆動力の制御に用いる上限駆動力を、算出した右側の駆動輪の上限駆動力に設定する。このように、上限駆動力設定部306は、例えば、右側第2路面の路面状態よりも右側第1路面の路面状態が悪い状態であると判定された場合、より悪い路面状態の右側第1路面に対して設定されている右側第1路面摩擦係数μ1Rを用いて、右側の駆動輪の上限駆動力を算出する。
【0094】
駆動力制御部308は、例えば、上限駆動力設定部306によって設定された左側の駆動輪および右側の駆動輪の上限駆動力に基づいて、車両10の全体の駆動力を制御する。駆動力制御部308は、例えば、左側の駆動輪の上限駆動力と、右側の駆動輪の上限駆動力のうち、いずれか低い方の上限駆動力を、車両10の全体の上限駆動力として、車両10を制御する。また、これに限定されず、駆動力制御部308は、例えば、入力された駆動力が、左側の駆動輪の上限駆動力と、右側の駆動輪の上限駆動力のうち、いずれか低い方の上限駆動力を超える場合、左右の駆動輪の駆動力を異ならせ、車両10の全体の駆動力を制御してもよい。例えば、この場合、駆動力制御部308は、上限駆動力を超えた側の駆動輪の駆動力を上限駆動力までとし、入力された駆動力と、当該上限駆動力の差分を、他方の駆動輪の駆動力に追加し、車両10の全体の駆動力を制御してもよい。
【0095】
このように、第2の実施形態に係る制御部100は、左側第1路面の路面状態と左側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、左側第2路面の路面摩擦係数μとして、左側第2路面摩擦係数μ2Lに替えて、左側第1路面摩擦係数μ1Lを用いて、左側の駆動輪の上限駆動力を算出する。また、第2の実施形態に係る制御部100は、右側第1路面の路面状態と右側第2路面の路面状態とが同一の種類の路面状態である場合に、右側第2路面の路面摩擦係数μとして、右側第2路面摩擦係数μ2Rに替えて、右側第1路面摩擦係数μ1Rを用いて、右側の駆動輪の上限駆動力を算出する。
【0096】
また、第2の実施形態に係る制御部100は、左側第1路面の路面状態と左側第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態である場合に、左側第2路面の路面摩擦係数μとして、左側第2路面摩擦係数μ2Lを用いて、左側の駆動輪の上限駆動力を算出する。また、第2の実施形態に係る制御部100は、右側第1路面の路面状態と右側第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態である場合に、右側第2路面の路面摩擦係数μとして、右側第2路面摩擦係数μ2Rを用いて、右側の駆動輪の上限駆動力を算出する。
【0097】
また、第2の実施形態に係る制御部100は、左側第1路面の路面状態と左側第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態であり、かつ、左側第2路面の路面状態よりも左側第1路面の路面状態が悪い状態である場合に、左側第1路面の路面摩擦係数μとして、左側第1路面摩擦係数μ1Lを用いて、左側の駆動輪の上限駆動力を算出する。また、第2の実施形態に係る制御部100は、右側第1路面の路面状態と右側第2路面の路面状態とが異なる種類の路面状態であり、かつ、右側第2路面の路面状態よりも右側第1路面の路面状態が悪い状態である場合に、右側第1路面の路面摩擦係数μとして、右側第1路面摩擦係数μ1Rを用いて、右側の駆動輪の上限駆動力を算出する。
【0098】
以上のように、第2の実施形態によれば、第1路面と第2路面の路面状態が左右で異なるスプリット路面である場合に、左右それぞれの路面状態について、同一の種類の路面状態であるかを判定する。これにより、左右で路面状態が異なる場合であっても、路面状態が同一であるか否かを適切に判定することができる。
【0099】
また、第2の実施形態によれば、左右それぞれにおいて、第1路面と第2路面の路面状態を判定し、その結果に応じて、異なる路面摩擦係数μを適用し、左右の駆動輪それぞれの上限駆動力を設定する。これにより、スプリット路面において、左右の駆動輪の上限駆動力を正確に算出することができ、車両10の駆動力をより最適に制御することができる。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
例えば、上記実施形態では、第1路面摩擦係数推定部114と、第2路面摩擦係数推定部124と、第3路面摩擦係数推定部134は、それぞれ接触式検出部110と、非接触式検出部120と、外部情報検出部130に含まれる例について説明したが、かかる例に限定されない。第1路面摩擦係数推定部114、第2路面摩擦係数推定部124、および、第3路面摩擦係数推定部134は、例えば、制御部100に含まれてもよい。
【0102】
なお、上述した実施形態による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの組合せのうちいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部または外部に設けられる非一時的な記憶媒体(non-transitory media)に予め格納される。そして、プログラムは、例えば、非一時的な記憶媒体(例えば、ROM)から一時的な記憶媒体(例えば、RAM)に読み出され、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0103】
また、上述した実施形態によれば、上記制御部100の各機能の処理を実行するためのプログラムを提供することができる。さらに、当該プログラムが格納された、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体を提供することもできる。非一時的な記録媒体は、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のディスク型記録媒体であってもよいし、または、フラッシュメモリ、USBメモリ等の半導体メモリであってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 車両制御システム
10 車両
20 情報配信装置
30 ネットワーク
100 制御部
102 プロセッサ
104 メモリ
110 接触式検出部(第1検出部)
120 非接触式検出部(第2検出部)
132 外部情報受信部