(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173747
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】遠隔操縦装置および車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
E02F9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086203
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】513121513
【氏名又は名称】角 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】角 和樹
(72)【発明者】
【氏名】富岡 遼
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA04
2D003CA10
2D003DA04
(57)【要約】
【課題】人が走行レバーを操作する際に邪魔にならない遠隔操縦装置および車両を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る遠隔操縦装置1は、車両100の動輪の回転を制御する走行レバー123を遠隔地から操作する遠隔操縦装置1であって、走行レバー123に装着される装着部材21と、一端が装着部材21に揺動可能に接続されるリンク部材22と、前記リンク部材22の他端を揺動させる揺動アーム23と、前記揺動アーム23を駆動するモータ24と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動輪の回転を制御する走行レバーを遠隔地から操作する遠隔操縦装置であって、
走行レバーに装着される装着部材と、
一端が装着部材に揺動可能に接続されるリンク部材と、
前記リンク部材の他端を揺動させる揺動アームと、
前記揺動アームを駆動するモータと、
を備える、遠隔操縦装置。
【請求項2】
前記リンク部材は、伸縮可能に形成され、且つ伸縮を抑制するダンパを有する、請求項1に記載の遠隔操縦装置。
【請求項3】
前記揺動アームの有効長さは、前記リンク部材の有効長さよりも小さい、請求項1または2に記載の遠隔操縦装置。
【請求項4】
前記モータは、出力軸が電機子回転軸と同軸である遊星歯車機構からなる減速機を有する、請求項1または2に記載の遠隔操縦装置。
【請求項5】
動輪の回転を制御する走行レバーを有するキャビンと、
前記走行レバーを操作するよう前記キャビンの床に配設される請求項1または2に記載の遠隔操縦装置と、
を備える車両。
【請求項6】
(前記揺動アームの有効長さ)<(前記走行レバーの揺動軸から前記揺動アームの揺動軸までの距離)<(前記リンク部材の有効長さ)<(前記走行レバーの揺動軸から前記装着部材に対する前記リンク部材の接続点までの距離)の関係を満たす、請求項5に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操縦装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクローラ等の走行装置を備える建設機械等の車両では、左右の動輪を独立して操作することにより、前進および後退に加えて方向転換を可能にしている。このような走行装置は、一般的に左右の動輪の速度をそれぞれ制御する一対の走行レバーを用いて制御される。具体的には、動輪の速度は、対応する走行レバーの傾斜方向および傾斜角度に応じて定められる。
【0003】
例えば災害時の危険地域当において、建設機械等の車両を遠隔地から操縦したい場合がある。係る場合に、キャビン(操縦席)に走行レバーをそれぞれ操作する一対の油圧シリンダを配設することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように走行レバーを操作する油圧シリンダを配設すると、人が操作することができない。このため、車両に人が搭乗して操縦する場合と遠隔地から操縦する場合とがある場合、その都度油圧シリンダを着脱する必要があり、煩雑である。
【0006】
このため、本発明は、人が走行レバーを操作する際に邪魔にならない遠隔操縦装置および車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る遠隔操縦装置は、車両の動輪の回転を制御する走行レバーを遠隔地から操作する遠隔操縦装置であって、走行レバーに装着される装着部材と、一端が装着部材に揺動可能に接続されるリンク部材と、前記リンク部材の他端を揺動させる揺動アームと、前記揺動アームを駆動するモータと、を備える。
【0008】
上述の遠隔操縦装置においては、前記リンク部材は、伸縮可能に形成され、且つ伸縮を抑制するダンパを有してもよい。
【0009】
上述の遠隔操縦装置においては、前記揺動アームの有効長さは、前記リンク部材の有効長さよりも小さいことが好ましい。
【0010】
上述の遠隔操縦装置においては、前記モータは、出力軸が電機子回転軸と同軸である遊星歯車機構からなる減速機を有してもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る車両は、動輪の回転を制御する走行レバーを有するキャビンと、前記走行レバーを操作するよう前記キャビンの床に配設される上述の遠隔操縦装置と、を備える。
【0012】
上述の車両は、(前記揺動アームの有効長さ)<(前記走行レバーの揺動軸から前記揺動アームの揺動軸までの距離)<(前記リンク部材の有効長さ)<(前記走行レバーの揺動軸から前記装着部材に対する前記リンク部材の接続点までの距離)の関係を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、人が走行レバーを操作する際に邪魔にならない遠隔操縦装置および車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両を簡略化して示す側面図である。
【
図2】
図1の遠隔操縦装置を詳細に示す斜視図である。
【
図5】
図2の遠隔操縦装置のダンパの構造を示す断面図である。
【
図6】
図2の遠隔操縦装置の駆動機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両100を簡略化して示す側面図である。
【0016】
本実施形態の車両100は、走行装置110と、走行装置110の上に配設される本体120と、本体120に基端部が接続される作業アーム130と、を備える建設機械である。建設機械は、時として、崩落のおそれがある傾斜地、倒壊のおそれがある建築物等での作業が要求されるため、万一の場合に人的被害が生じないよう、操縦者が搭乗することなく遠隔地から操縦できるようにすることが望まれる場合がある。
【0017】
走行装置110は、左右独立して駆動される一対のクローラ111を有する油圧ショベルである。クローラ111は、回転駆動される動輪112と、動輪によって駆動される無端状の走行ベルト113とをそれぞれ含む。本体120は、操縦者が搭乗するキャビン(操縦席)121と、走行装置110および作業アーム130の動力源となる圧油を生成する油圧システムおよび作業アームと釣り合うカウンタウエイトを含む機構部122と、を有する。作業アーム130は、先端にバケット131を有する。つまり、本実施形態の車両100は、油圧ショベルである。
【0018】
キャビン121には、左右の動輪112の回転を独立して制御する一対の走行レバー123が設けられる。本実施形態の走行レバー123は、上端のグリップ124を手で把持して前後に揺動させることができるよう、キャビンの床面近傍で枢支され、揺動範囲中央の中立位置に復帰するよう付勢されている。車両100は、走行レバー123の傾斜方向と同じ方向に、走行レバー123の傾斜角度に応じた速度で、対応する動輪112を回転させるよう構成される。また、図示する走行レバー123は、基端部近傍にフットペダル125を有し、人が足で操作することも可能とされている。
【0019】
また、キャビン121には、走行レバー123を遠隔地から操作するための遠隔操縦装置1が配設されている。遠隔操縦装置1は、それ自体が本発明に係る遠隔操縦装置の一実施形態である。
図2は遠隔操縦装置1をキャビンの右前方から見た様子を詳細に示す斜視図であり、
図3は遠隔操縦装置1の正面図、
図4は遠隔操縦装置1の側面図である。
【0020】
遠隔操縦装置1は、キャビンの床面に固定されるベース板10と、ベース板10の上に保持され、左右の走行レバー123を駆動する一対の駆動部20とを備える。
【0021】
ベース板10は、十分な強度を有する鋼板等からなり、キャビンの床面に積層するよう取り付けられる。ベース板10は、駆動部20の要部を保持するための補強部材であり、キャビンの床に駆動部20を直接取り付けられる場合には省略可能である。また、ベース板10は、左側の駆動部20を保持する部分と、右側の駆動部20を保持する部分とに分割して形成されてもよい。
【0022】
一対の駆動部20は、走行レバー123に装着される装着部材21と、一端が装着部材21に揺動可能に接続されるリンク部材22と、リンク部材22の他端を揺動させる揺動アーム23と、揺動アーム23を駆動するモータ24と、をそれぞれ備える。
【0023】
装着部材21は、本実施形態では、走行レバー123を挟み込んで締結される固定部211と、固定部211から左右方向外側に延出し、先端部にリンク部材22が揺動可能に連結され2段軸状の連結部212と、を有する構成とされている。固定部211は、走行レバー123に形成される穴に挿入される軸またはボルトを含んでもよく、溶接により走行レバー123に固定されてもよい。連結部212は、リンク部材22が走行レバー123と干渉することを避けるためにリンク部材22の接続点を側方にオフセットするよう設けられているが、走行レバー123の形状、キャビンの前方のスペース等によっては、オフセットを形成しない構成であってもよく、リンク部材22の先端の構造によっては軸以外の構成とされてもよく、固定部211と一体不可分に形成されてもよい。
【0024】
リンク部材22は、一端が装着部材21に揺動可能に接続され、他端が揺動アーム23に揺動可能に接続される。リンク部材22は、伸縮可能に形成され、且つ伸縮を抑制するダンパ221を有することが好ましい。リンク部材22がこのようにダンパ221を有することによって、人が走行レバー123を急峻に操作した場合に、駆動部20の各部に衝撃が加わることを防止でき、各所の軸受等の寿命短縮を防止できる。ダンパ221としては、例えば金属バネ、ゴム等の弾性体により、リンク部材22の長さの変化を抑制し、軸方向の応力を熱に変換して散逸させる構成とされ得る。ダンパ221のばね定数の下限としては、遠隔操縦装置1により走行レバー123を操作する際に遅れが生じないようにするために50N/mmが好ましい。一方、ダンパ221のばね定数の上限としては、走行レバー123の急峻な操作による衝撃を緩和するために、1000N/mmが好ましい。つまり、ダンパ221は、衝撃を緩和するものであって、通常の操作においては実質的にリンク部材22の長さを変化させないものとされることが好ましい。
【0025】
本実施形態において、ダンパ221は、
図5に図示するように、先端部が階段状に縮径したシャフト本体2211と、シャフト本体2211の先端部に嵌装される複数の皿ばね2212および複数の皿ばね2212を挟み込む2つのワッシャ2213と、シャフト本体2211の先端に接続されるシャフトエンド2214と、皿ばね2212およびワッシャ2213を受け入れる小径部およびシャフトエンド2214を受け入れる大径部を有する貫通孔が形成されたホルダ本体2215と、ホルダ本体2215に取り付けられ、シャフト本体2211を受け入れる貫通孔が形成されたホルダキャップ2216と、ホルダ本体2215に取り付けられ、他の部材との接続構造に供される接続プレート2217と、を備える。ダンパ221において、皿ばね2212は向きが交互に逆になるよう並べられ、軸方向に圧縮され得、弾性変形および互いの摩擦により軸方向の応力を吸収する。
【0026】
揺動アーム23は、左右方向の軸を中心とする揺動によりリンク部材22の他端を移動させるよう配設され得る。揺動アーム23は、リンク部材22が連結される先端側を車両の前方に配置する位置を中心に揺動するよう配設されることが好ましい。これにより、モータ24を走行レバー123の近くに配置して、駆動部20が占有するスペースを小さくできるので、キャビンの前方の空間が比較的小さい場合であっても、遠隔操縦装置1を配設することが可能となる。また、駆動部20が占有するスペースを小さくするために、揺動アーム23の有効長さ(軸間距離)は、リンク部材22の有効長さよりも小さいことが好ましい。
【0027】
モータ24は、揺動アーム23を揺動させるよう配設される。モータ24としては、揺動アーム23の角度を制御できるよう、例えばステッピングモータ等を用いることができ、フィードバック制御されるサーボモータであってもよい。また、モータ24は、揺動アーム23の揺動角度を精密に制御できるよう、減速機241を有することが好ましい。減速機241は、人が走行レバー123を操作することを可能にするために、停止時には揺動アーム23により出力軸を回転させられるような構成、具体例として揺動アーム23が取り付けられる出力軸が電機子回転軸と同軸である遊星歯車機構とされることが好ましい。遊星歯車機構のように、減速機241を構成する各歯車にその回転軸周りに比較的均等に力が作用する構成とすることによって、減速比を大きくしても、出力軸を回転させることによって比較的スムーズに電機子を回転させられる。
【0028】
駆動部20は、
図6に示すように、走行レバー123を含めて4節リンク機構を構成し、揺動アーム23の揺動角度に応じてリンク部材22を傾斜させられる。この4節リンク機構において、走行レバー123の揺動軸と揺動アーム23の揺動軸(モータ24の出力軸)との間は、ベース板10および車両の構造体を介して接続され、ジョイントの位置が固定された1つの節と解釈される。この固定された節の有効長さ(走行レバー123の揺動軸から揺動アーム23の揺動軸までの距離)をA、揺動アーム23が構成する節の有効長さをB、リンク部材22が構成する節の有効長さをC、走行レバー123が構成する節の有効長さをDとすると、駆動部20の専有スペースを小さくするために、B<A<C<Dの関係を満たすことが好ましい。
【0029】
走行レバー123の揺動軸から装着部材21に対するリンク部材22の接続点までの距離としては、例えば200mm以上300mm以下とすることができる。これにより、フットペダル125およびフットペダル125を操作する人の足を避けて装着部材21を取り付けることができる。走行レバー123の揺動軸から揺動アーム23の揺動軸(モータ24の出力軸)までの距離としては、例えば100mm以上200mm以下とすることができる。これにより、モータ24を走行レバー123と干渉しないように配置できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例として、本発明に係る車両は、建設機械に限定されず例えば戦車等の他の種類の車両であってもよい。また、本発明に係る車両は、クローラ以外の例えばゴムタイヤ等が装着される動輪を駆動するものであってもよい。
【0031】
本発明に係る遠隔操縦装置において、リンク部材はダンパを有していなくてもよい。また、本発明に係る遠隔操縦装置においてモータは減速機を有しないダイレクトドライブモータであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 遠隔操縦装置
10 ベース板
20 駆動部
21 装着部材
211 固定部
212 連結部
22 リンク部材
221 ダンパ
2211 ホルダ本体
2212 ホルダキャップ
2213 シャフト本体
2214 シャフトエンド
2215 ワッシャ
2216 さらばね
2217 接続プレート
23 揺動アーム
24 モータ
241 減速機
100 車両
110 走行装置
111 クローラ
112 動輪
113 走行ベルト
120 本体
121 キャビン
122 機構部
123 走行レバー
124 グリップ
125 フットペダル
130 作業アーム
131 バケット