IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特開2023-173749碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法
<>
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図1
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図2A
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図2B
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図2C
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図3
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図4
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図5
  • 特開-碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173749
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/04 20060101AFI20231130BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01B17/04
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086207
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】雲藤 勝義
【テーマコード(参考)】
5G331
5G352
【Fターム(参考)】
5G331AA01
5G331AA02
5G331BC06
5G331CA02
5G331DA02
5G331EA07
5G331EA15
5G352AD03
(57)【要約】
【課題】碍子連装置からの風音の発生を抑制する。
【解決手段】碍子連装置は、複数の碍子と、複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う碍子の軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、軸部材の外周を囲むように装着され、弾性体を含む弾性部材と、を備え、複数の碍子のそれぞれは、鉛直下に同心円状に設けられた複数のひだ部を有し、弾性部材は、軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、筒状部から径方向に延在し、複数のひだ部のうちの1つのひだ部と軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の碍子と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、
前記軸部材の外周を囲むように装着され、弾性体を含む弾性部材と、
を備え、
前記複数の碍子のそれぞれは、鉛直下に同心円状に設けられた複数のひだ部を有し、
前記弾性部材は、
前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、
前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、
を有する
碍子連装置。
【請求項2】
前記つば部の外周端に最も近い前記ひだ部と、前記つば部とは、所定の間隙をあけて互いに離れている
請求項1に記載の碍子連装置。
【請求項3】
前記つば部の外周端に最も近い前記ひだ部と、前記つば部との間における間隙は、1mm以上10mm以下である
請求項1または請求項2に記載の碍子連装置。
【請求項4】
前記つば部は、前記筒状部と一体として成形されている
請求項1または請求項2に記載の碍子連装置。
【請求項5】
前記つば部は、前記筒状部とは別体として構成されている
請求項1または請求項2に記載の碍子連装置。
【請求項6】
前記つば部は、当該つば部の外周端から前記筒状部内の開口まで貫通した開口を有し、
前記弾性部材は、前記つば部の前記開口を塞ぐカバー部をさらに有する
請求項1または請求項2に記載の碍子連装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の碍子連装置に用いられる
弾性部材。
【請求項8】
複数の碍子と、前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、を準備する工程と、
前記軸部材の外周を囲むように、弾性体を含む弾性部材を装着する工程と、
を備え、
前記準備する工程では、
前記複数の碍子のそれぞれとして、鉛直下側に同心円状に設けられた複数のひだ部を有する部材を準備し、
前記弾性部材を装着する工程では、
前記弾性部材として、前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、を有する部材を装着する
碍子連装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、碍子連装置、弾性部材、および碍子連装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線を鉄塔に連結固定するために、複数の碍子を連結した碍子連装置が用いられる。碍子連装置を構成する複数の碍子は、例えば、第1の碍子の下部に設けられた軸部材を、第2の碍子の上部に設けられたソケット部材に嵌め合わせることで、互いに連結される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1-19724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、碍子連装置からの風音の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
複数の碍子と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、
前記軸部材の外周を囲むように装着され、弾性体を含む弾性部材と、
を備え、
前記複数の碍子のそれぞれは、鉛直下に同心円状に設けられた複数のひだ部を有し、
前記弾性部材は、
前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、
前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、
を有する
碍子連装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、碍子連装置からの風音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る碍子連装置の一部を示す概略正面図である。
図2A図2Aは、本開示の一実施形態に係る弾性部材の概略正面図である。
図2B図2Bは、本開示の一実施形態に係る弾性部材の概略側面図である。
図2C図2Cは、本開示の一実施形態に係る弾性部材の概略上面図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る碍子連装置の一部に風が吹き付けられた状態を示す模式図である。
図4図4は、本開示の一実施形態の変形例2に係る弾性部材の概略上面図である。
図5図5は、風速に対する騒音レベルを示す図である。
図6図6は、比較例に係る碍子連装置の一部に風が吹き付けられた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<発明者等が得た知見>
まず、発明者等が得た知見について説明する。
【0009】
碍子連装置に風が吹き付けられると、それぞれの碍子に対して風が当たることによって発生する振動が、軸部材およびソケット部材を通して碍子連装置全体にわたって連成し、碍子連装置から大きな風音が発生することがある。
【0010】
従来では、上述のような風音の発生を抑制するため、碍子連装置の軸部材に弾性部材を装着する技術が採用されてきた(例えば、上述の特許文献1)。
【0011】
しかしながら、上述の軸部材などを介した振動の連成による風音だけでなく、碍子連装置に吹き付けられる風流そのものを起因とした風音も発生する可能性がある。
【0012】
具体的には、図6に示したように、比較例の碍子連装置90に風が吹き付けられると、碍子910内に風(図6太線矢印)が流入する。風が流入した碍子910の複数のひだ部914内では、風の流れが各ひだ部914から剥離することで、大小様々な渦が発生する。当該渦の周波数と、碍子910の音響固有振動数とが合致すると、碍子連装置90が共振状態となる。その結果、大きな風音が発生する可能性がある。
【0013】
特に、高標高山岳地帯に用いられる碍子では、多湿の状態においても、良好な絶縁性能が担保される必要がある。このため、多湿環境下での碍子表面の有効な沿面距離を確保するため、ひだ部を深くし、外径を大きくした碍子(以下、大型碍子)が用いられる。このような大型碍子では、上述した渦が発生し易いため、大きな風音が発生し易くなる傾向がある。
【0014】
そこで、発明者は、上述の新規課題に対し鋭意検討の結果、弾性部材を改良することで、碍子内の渦の発生を抑制できる構成を見出した。
【0015】
以下で説明する本開示は、発明者が見出した上記知見に基づくものである。
【0016】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0017】
[1]本開示の一態様に係る碍子連装置は、
複数の碍子と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、
前記軸部材の外周を囲むように装着され、弾性体を含む弾性部材と、
を備え、
前記複数の碍子のそれぞれは、鉛直下に同心円状に設けられた複数のひだ部を有し、
前記弾性部材は、
前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、
前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、
を有する。
この構成によれば、碍子連装置からの風音の発生を抑制することができる。
【0018】
[2]上記[1]に記載の碍子連装置において、
前記つば部の外周端に最も近い前記ひだ部と、前記つば部とは、所定の間隙をあけて互いに離れている。
この構成によれば、軸部材から碍子を通ってソケット部材までに至る実質的な沿面距離の短縮を抑制することができる。
【0019】
[3]上記[1]または[2]に記載の碍子連装置において、
前記つば部の外周端に最も近い前記ひだ部と、前記つば部との間における間隙は、1mm以上10mm以下である。
この構成によれば、ひだ部とつば部との接触を安定的に抑制するとともに、間隙を通した風の過剰な流入を抑制することができる。
【0020】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載の碍子連装置において、
前記つば部は、前記筒状部と一体として成形されている。
この構成によれば、弾性部材を軸部材に装着したと同時に、所定のひだ部内の空間を塞ぐように、つば部を配置することができる。
【0021】
[5]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載の碍子連装置において、
前記つば部は、前記筒状部とは別体として構成されている。
この構成によれば、つば部と筒状部とを別々の金型で成形することができ、それぞれの金型を容易に作製することができる。
【0022】
[6]上記[1]から[5]のいずれか1つに記載の碍子連装置において、
前記つば部は、当該つば部の外周端から前記筒状部内の開口まで貫通した開口を有し、
前記弾性部材は、前記つば部の前記開口を塞ぐカバー部をさらに有する。
この構成によれば、つば部の開口を通した風の過剰な流入を抑制することができる。
【0023】
[7]本開示の更に他の態様に係る弾性部材は、
上記[1]から[6]のいずれか1つに記載の碍子連装置に用いられる。
この構成によれば、碍子連装置からの風音の発生を抑制することができる。
【0024】
[8]本開示の更に他の態様に係る碍子連装置の製造方法は、
複数の碍子と、前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、を準備する工程と、
前記軸部材の外周を囲むように、弾性体を含む弾性部材を装着する工程と、
を備え、
前記準備する工程では、
前記複数の碍子のそれぞれとして、鉛直下側に同心円状に設けられた複数のひだ部を有する部材を準備し、
前記弾性部材を装着する工程では、
前記弾性部材として、前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、を有する部材を装着する。
この構成によれば、碍子連装置からの風音の発生を抑制することができる。
【0025】
<本開示の一実施形態>
(1)碍子連装置(碍子連構造)
本開示の一実施形態に係る碍子連装置10について、図1図3を参照して説明する。なお、図1および図3では、碍子100の一部が断面図となっている。また、図1および図3では、碍子連装置10のうちの一部を示している。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の碍子連装置10は、架空送電線(不図示)を鉄塔(不図示)に連結固定するよう構成され、例えば、碍子100と、軸部材(ピン部材)200と、ソケット部材(軸受部材)300と、弾性部材(キャップ部材)400と、を有している。
【0027】
[碍子]
図1に示すように、碍子100は、例えば、いわゆる直流耐霧懸垂碍子として構成されている。碍子100は、笠状(皿状、傘状)の笠部120を有している。碍子100は、笠部120の鉛直上から鉛直下に向けて広がるように配置されている。笠部120は、磁器を含んでいる。
【0028】
笠部120の中央部は、鉛直上方に突出している。笠部120の中央下部には、鉛直上に凹んだ笠内凹部122が設けられている。
【0029】
笠部120は、鉛直下に同心円状に設けられた複数のひだ部140を有している。これにより、碍子100表面の有効な沿面距離が確保されている。本実施形態のような直流耐霧懸垂碍子では、笠部120のひだ部140の深さが、標準的な碍子のひだ部の深さよりも大きくなっている。
【0030】
なお、碍子100が直流耐霧懸垂碍子として構成されている場合、碍子100の笠部120の直径は、例えば、320mmであり、ひだ部140の最大深さは、例えば、65mmである。
【0031】
碍子100は、碍子連装置10において、複数設けられている。複数の碍子100は、例えば、鉛直方向に等間隔に配置され、軸部材200がソケット部材300に嵌め合わされることにより互いに連結されている。なお、複数の碍子100は、鉛直方向に配置される懸垂型だけでなく、水平方向成分を有する方向に配置される耐張型であってもよい。
【0032】
[軸部材]
軸部材200は、複数の碍子100のそれぞれの中央下部に設けられ、笠部120から鉛直下方向に延在している。
【0033】
軸部材200の上端を含む部分は、笠部120の中央の笠内凹部122内に挿入され、例えばセメントにより固定されている。このような構造により、碍子100における規定の張力と絶縁性能とが担保されている。
【0034】
一方で、軸部材200は、例えば、下端に嵌合ボール部(不図示)を有している。嵌合ボール部は、軸部材200の軸方向の中央部よりも拡径し、球状に設けられている。
【0035】
[ソケット部材]
ソケット部材300は、複数の碍子100のそれぞれの中央上部に嵌められている。ソケット部材300は、例えば、ハット状に構成され、鉛直上から鉛直下に向けて広がっている。ソケット部材300は、例えば、セメントにより笠部120に固定されている。このような構造により、碍子100における規定の張力と絶縁性能とが担保されている。
【0036】
ソケット部材300は、隣り合う碍子100に設けられた軸部材200の嵌合ボール部が嵌め合わされる嵌合穴部320を有している。具体的には、嵌合穴部320は、ソケット部材300の中央の上端から下方に向けて開設され、ソケット部材300の中央の所定位置からソケット部材300の側方に向けて軸部材200の嵌合ボール部に倣った形状で開口している。
【0037】
嵌合穴部320内には、軸部材200の嵌合ボール部が入り込んだ状態で、嵌合穴部320の中央上端に嵌合ボール部が係止される。また、嵌合穴部320の中央上端部は、球面座となっている。これにより、嵌合穴部320に嵌め合わされた嵌合ボール部をフレキシブルに動かすことができる。
【0038】
また、ソケット部材300は、嵌合穴部320に貫通したピン挿入孔(不図示)を有している。ピン挿入孔内に割りピン(不図示)が挿入されることで、軸部材200の嵌合ボール部をソケット部材300に固定することができる。
【0039】
[弾性部材(キャップ)]
図1に示すように、弾性部材400は、軸部材200の外周を囲むように装着される。本実施形態の弾性部材400は、例えば、碍子100で発生した振動を吸収するとともに、碍子100内での渦の発生を抑制するよう構成されている。
【0040】
弾性部材400は、弾性体を含んでいる。具体的には、弾性部材400は、例えば、シリコーンゴムを含んでいる。これにより、碍子100で発生した振動を吸収する振動吸収効果を得ることができる。
【0041】
なお、弾性部材400は、例えば、半導電性を有している。これにより、架空送電線に高電圧が印加された際に弾性部材400を軸部材200と同電位にすることで、異常放電が発生することを抑制することができる。
【0042】
弾性部材400のタイプAデュロメータ硬度は、特に限定されるものではないが、例えば、45以上65以下であってもよい。弾性部材400の硬度を45以上とすることにより、振動抑制効果を充分に得ることができる。一方で、弾性部材400の硬度を65以下とすることにより、弾性部材400を軸部材200に容易に装着することができる。
【0043】
図1図2A図2Cに示すように、本実施形態では、弾性部材400は、例えば、筒状部410と、つば部480と、突片部440と、を有している。
【0044】
(筒状部)
筒状部410は、略円筒状に構成され、弾性部材400が軸部材200に装着された際に軸部材200の外周を囲むように構成されている。筒状部410の内径は、軸部材200の外径とほぼ等しいか、或いは若干小さくなっている。これにより、筒状部410を軸部材200に装着した際に、筒状部410を軸部材200の外周面に弾性的に密着させることができる。
【0045】
筒状部410は、筒状部410の軸方向から見て、略C字状に構成され、径方向の外側に向けて広がるように開口している。筒状部410の開口角度は、筒状部410を開いて筒状部410の中空部に軸部材200を挿入させることができるように設定されている。
【0046】
筒状部410の外周面は、例えば、蛇腹状に形成されている。これにより、弾性部材400を軸部材200に装着する際に、弾性部材400の筒状部410を容易に開くことができる。
【0047】
(つば部(襟巻部))
本実施形態では、つば部480は、例えば、ドーナツ板状に構成され、筒状部410から径方向に延在している。つば部480は、例えば、複数のひだ部140のうちの1つのひだ部140と軸部材200との間の空間の少なくとも一部を塞ぐよう構成されている。これにより、当該ひだ部140と軸部材200との間の空間における渦の発生を抑制することができる。
【0048】
本実施形態では、つば部480は、例えば、軸部材200に最も近いひだ部140から外側に向けて数えて2番目のひだ部140と、軸部材200と、の間の空間の少なくとも一部を塞ぐよう構成されている。
【0049】
ここで、軸部材200に最も近い1番目のひだ部140が、最も小さい。一方で、軸部材200に最も近い1番目のひだ部140から外側に向けて数えて2番目のひだ部140が、1番目のひだ部140よりも大きくなっている。そのため、2番目のひだ部140付近のほうが、1番目のひだ部140付近よりも渦が発生し易い。
【0050】
そこで、本実施形態では、上述のように相対的に大きい2番目のひだ部140よりも内側の空間をつば部480により塞ぐことで、当該2番目のひだ部140よりも内側における渦の発生を安定的に抑制することができる。
【0051】
本実施形態では、つば部480が所定のひだ部140付近の空間を塞ぐ一方で、つば部480の外周端に最も近いひだ部140と、つば部480とは、所定の間隙Sをあけて互いに離れている。なお、ここでいう「つば部480の外周端」とは、後述の筒状部410の軸方向から見たときのつば部480の開口480aを除く円弧部分の外周端である。
【0052】
すなわち、本実施形態では、つば部480の外周端に最も近いひだ部140よりも内側の空間が、つば部480によって完全に塞がれているのではなく、当該ひだ部140とつば部480との間に所定の間隙Sがあけられている。これにより、つば部480の外周端に最も近いひだ部140よりも軸部材200に近い領域において、碍子100の凹凸を維持することができる。その結果、碍子100全体にわたって、複数のひだ部140の凹凸に倣った沿面距離(絶縁距離)を確保することができる。
【0053】
本実施形態では、つば部480の外周端に最も近いひだ部140と、つば部480との間における間隙Sは、例えば、1mm以上10mm以下であり、或いは2mm以上5mm以下であってもよい。間隙Sを1mm以上とし、或いは2mm以上とすることで、ひだ部140とつば部480との接触を安定的に抑制することができる。一方で、間隙Sを10mm以下とし、或いはは5mm以下とすることで、間隙Sを通した風の過剰な流入を抑制することができる。
【0054】
つば部480の上述の要件を満たすため、平面視でのつば部480の直径は、例えば、130mm以上150mm以下であり、或いは145mm程度であってもよい。
【0055】
本実施形態では、つば部480は、例えば、筒状部410の軸方向から見て、筒状部410と同様に略C字状に構成されている。つば部480は、例えば、当該つば部480の外周端から筒状部410内の開口まで貫通した開口480aを有している。つば部480の開口480aは、筒状部410の開口に沿って径方向の外側に向けて広がるように開口している。これにより、弾性部材400がつば部480を有する状態であっても、弾性部材400の開口480aを開いて筒状部410の中空部に軸部材200を挿入させることができる。
【0056】
本実施形態では、つば部480の厚さは、例えば、1mm以上5mm以下であり、或いは1.5mm以上3mm以下であってもよい。つば部480の厚さを1mm以上とし、或いは1.5mm以上とすることで、経年劣化に起因したつば部480の減肉が発生しても、つば部480の剛性を維持することができる。一方で、つば部480の厚さを5mm以下とし、或いは3mm以下とすることで、弾性部材400が過剰に硬くなることを抑制することができる。これにより、弾性部材400の装着を容易に行うことができる。
【0057】
本実施形態では、つば部480は、例えば、筒状部410と一体として成形されている。これにより、弾性部材400を軸部材200に装着したと同時に、所定のつば部480内の空間を塞ぐように、つば部480を配置することができる。
【0058】
(突片部)
突片部440は、筒状部410の下側に設けられ、ソケット部材300の嵌合穴部320の開口形状に倣った形状を有している。これにより、弾性部材400が軸部材200に装着された際に、ソケット部材300の嵌合穴部320の側方開口を突片部440により覆うことができる。
【0059】
突片部440の先端には、薄板状のスカート(ヒレ部)450が設けられていてもよい。スカート450は、弾性部材400を正面から見て、突片部440の先端の楕円形状に沿うように設けられている。これにより、スカート450を変形させて、嵌合穴部320と突片部440の先端との間における隙間を塞ぐことができる。
【0060】
突片部440には、水を通過させる水抜孔448が設けられていてもよい。これにより、ソケット部材300のピン挿入孔340または軸部材200から浸入した雨水がソケット部材300の嵌合穴部320内の空洞に溜まることを抑制することができる。
【0061】
(2)碍子連装置の製造方法
次に、図1を参照し、本実施形態の碍子連装置10の製造方法について説明する。なお、碍子連装置10の製造方法は、碍子連装置10の風音抑制方法、または弾性部材400の取り付け方法と考えることもできる。
【0062】
(ステップ1:碍子連準備工程(碍子連連結工程))
まず、碍子100と軸部材200とソケット部材300とが連結された状態で、例えば、碍子製造メーカなどから提供される。
【0063】
次に、図1に示すように、第1の碍子100の中央下部に設けられた軸部材200の嵌合ボール部を、第2の碍子100の上部に設けられたソケット部材300の嵌合穴部320に嵌め合わせることで、複数の碍子100を互いに連結させる。このとき、ソケット部材300のピン挿入孔340内に割りピン600を挿入することで、軸部材200の嵌合ボール部をソケット部材300から抜けないように固定する。
【0064】
次に、連結された複数の碍子100の上端を鉄塔(不図示)に碍子連結用の金具により連結し、複数の碍子100の下端に架空送電線(不図示)を繋いだ金具と連結する。
【0065】
(ステップ2:弾性部材装着工程)
碍子連準備工程が完了したら、図1に示すように、軸部材200の外周を囲むように、弾性部材400を軸部材200に装着する。
【0066】
本実施形態では、弾性部材400として、筒状部410と、つば部480と、突片部440と、を有する部材を軸部材200に装着する。
【0067】
具体的には、弾性部材400における筒状部410の開口及びつば部480の開口480aを開いて筒状部410を軸部材200に被せ、筒状部410を、軸部材200の外周を囲むように軸部材200に嵌め合わせる。
【0068】
このとき、筒状部410から径方向に延在したつば部480により、複数のひだ部140のうちの1つのひだ部140と軸部材200との間の空間の少なくとも一部を塞ぐ。当該つば部480を配置する際には、つば部480の外周端に最も近いひだ部140と、つば部480との間に、間隙Sを形成しておく。
【0069】
このとき、弾性部材400の突片部440を、ソケット部材300の嵌合穴部320の開口形状に沿うように嵌合穴部320に嵌め合わせる。これにより、弾性部材400の突片部440により、ソケット部材300の嵌合穴部320の側方開口を覆う。
【0070】
このようにして、複数の碍子100のうちの一対の碍子100を連結する軸部材200のそれぞれに弾性部材400を装着する。
【0071】
以上により、本実施形態の碍子連装置10が製造される。
【0072】
(3)本実施形態のまとめ
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0073】
(a)本実施形態では、弾性部材400における筒状部410から径方向に延在したつば部480が、複数のひだ部140のうちの1つのひだ部140と軸部材200との間の空間の少なくとも一部を塞いでいる。
【0074】
このような構成により、図3に示すように、つば部480の外周端に最も近いひだ部140よりも内側の空間への風(図3太線矢印)の流入を抑制することができ、当該ひだ部140よりも内側の空間における渦の発生を抑制することができる。これにより、たとえ碍子100内の他の部分で渦が発生したとしても、過大な渦、または複雑な渦の発生を抑制することができる。
【0075】
その結果、本実施形態では、碍子100内の渦に起因した大きな風音の発生を抑制することが可能となる。
【0076】
(b)本実施形態では、つば部480の外周端に最も近いひだ部140と、つば部140との間に、所定の間隙Sが設けられている。
【0077】
ここで、つば部480の外周端がひだ部140に接触している場合について考える。この場合、つば部480が、接触したひだ部140よりも内側の空間を完全に塞いでいるため、つば部480が接触したひだ部140よりも軸部材200に近い領域において、碍子100の凹凸が、つば部480によって平滑化される。また、弾性部材400が半導電性を有するため、半導電性のつば部480がひだ部140と接触した位置から軸部材200までの部分が、軸部材200と等電位となる。このため、軸部材200から碍子100を通ってソケット部材300までに至る実質的な沿面距離が短くなる。その結果、碍子連装置10全体としての絶縁性が低下するおそれがある。
【0078】
これに対し、本実施形態では、ひだ部140とつば部140とが、所定の間隙Sをあけて互いに離れていることで、つば部480の外周端に最も近いひだ部140よりも軸部材200に近い領域において、碍子100の凹凸を維持することができる。また、半導電性のつば部480がひだ部140と接触することを抑制することで、つば部480の外周端よりも軸部材200に近い領域における碍子100の絶縁性を維持することができる。これにより、軸部材200から碍子100を通ってソケット部材300までに至る実質的な沿面距離の短縮を抑制することができる。その結果、碍子連装置10全体としての絶縁性の低下を抑制することが可能となる。
【0079】
(c)本実施形態では、つば部480は、筒状部410と一体として成形されている。これにより、弾性部材400を軸部材200に装着したと同時に、所定のひだ部140内の空間を塞ぐように、つば部480を配置することができる。
【0080】
さらに、碍子100内に風が流入したとしても、筒状部410からのつば部480の外れを抑制することができ、つば部480のみの落下を抑制することができる。これにより、つば部480がひだ部140内の空間を塞いだ状態を安定的に維持することができる。
【0081】
(4)本実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0082】
[変形例1]
上述の実施形態では、弾性部材400のつば部480が筒状部410と一体として成形されている場合について説明したが、以下の変形例1のように、つば部480の構成を変更してもよい。
【0083】
変形例1では、弾性部材400のつば部480、例えば、筒状部410とは別体として構成されている。つば部480は、例えば、筒状部410の中心軸に直交する方向に沿って筒状部410の外周に設けられた溝部(不図示)内に嵌め合わされるように構成されている。
【0084】
変形例1の弾性部材装着工程では、例えば、つば部480を筒状部410の外周に設けられた溝部内に予め嵌め合わせた状態で、筒状部410の開口を開いて、筒状部410を軸部材200に装着させる。或いは、筒状部410を軸部材200に装着させた後に、つば部480を、筒状部410の外周に設けられた溝部内に嵌め合わせてもよい。
【0085】
(変形例1のまとめ)
変形例1によれば、弾性部材400のつば部480が、筒状部410とは別体として構成されていることで、弾性部材400を容易に成形することができる。
【0086】
ここで、上述の実施形態では、つば部480が筒状部410と一体として成形されているため、弾性部材400の形状が複雑であるため、金型の作製が困難となる可能性がある。
【0087】
上述の実施形態では、特に、つば部480が薄く且つ広いため、金型内のつば部480の成形部分の全体にわたって充分な樹脂が行き渡らず、つば部480の成形性が低下する可能性がある。
【0088】
上述の実施形態では、筒状部410の外周に一体としてつば部480が設けられているため、弾性部材400の剛性が高くなる可能性がある。この場合、弾性部材装着工程において、筒状部410の開口を開いて、筒状部410を軸部材200に装着させることが困難となる。
【0089】
これに対し、本変形例1では、弾性部材400のつば部480が筒状部410とは別体として構成されていることで、つば部480と筒状部410とを別々の金型で成形することができる。これにより、それぞれの金型を容易に作製することができる。
【0090】
本変形例1では、上述のように別々の金型を作製することで、つば部480用の金型を単純な形状とすることができる。これにより、つば部480用の金型内の全体に亘って充分な樹脂を行き渡らせることができる。その結果、つば部480の成形性の低下を抑制することができる。
【0091】
本変形例1では、つば部480が筒状部410とは別体として構成されていることで、つば部480が無い状態で、筒状部410の開口を開いて、容易に筒状部410を軸部材200に装着させることができる。その後、つば部480を筒状部410の外周に装着させることができる。このように、軸部材200に対して弾性部材400を容易に装着することが可能となる。
【0092】
[変形例2]
上述の実施形態では、弾性部材400のつば部480の開口480aが空いた状態のままにされる場合について説明したが、以下の変形例2のように、弾性部材400の構成を変更してもよい。
【0093】
図4に示すように、変形例2では、弾性部材400は、例えば、つば部480の開口480aを塞ぐカバー部490をさらに有している。
【0094】
カバー部490は、例えば、つば部480とは別体として、つば部480に対して着脱可能に構成されている。具体的には、カバー部490は、例えば、ホック492を有している。ホック492により、別体としてのカバー部490をつば部480に掛かり止めることができる。
【0095】
なお、カバー部490は、つば部480の鉛直上に取り付けてもよいし、或いは、つば部480の鉛直下に取り付けてもよい。
【0096】
変形例2の弾性部材装着工程では、例えば、弾性部材400における筒状部410の開口及びつば部480の開口480aを開いて、筒状部410を軸部材200に装着させる。次に、カバー部490によりつば部480の開口480aを塞ぐ。このとき、ホック492により、別体としてのカバー部490をつば部480に掛かり止める。
【0097】
(変形例2のまとめ)
変形例2によれば、弾性部材400が、つば部480の開口480aを塞ぐカバー部490をさらに有していることで、つば部480の開口480aを通した風の過剰な流入を抑制することができる。
【0098】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0099】
上述の実施形態では、碍子100が直流耐霧懸垂碍子である場合について説明したが、碍子100は、交流用大型碍子であってもよい。交流用大型碍子においても、風速発生頻度が高い場合、碍子連装置から風音が発生し易い傾向にある。したがって、上述の実施形態の碍子連装置10は、碍子100が交流用大型碍子である場合に適用することも有効である。
【0100】
上述の実施形態では、つば部480は、筒状部410の軸方向から見て、筒状部410の開口に沿って径方向の外側に向けて広がるように開口している場合について説明したが、本開示は、この場合に限られない。つば部480は、例えば、筒状部410の軸方向から見て、筒状部410の径方向に沿って延在するスリット状の開口部を有していてもよい。これにより、つば部480の開口面積を小さくすることができる。その結果、つば部480の外周端に最も近いひだ部140と軸部材200との間の空間を、上述の実施形態よりも安定的に塞ぐことができる。
【0101】
上述の実施形態では、つば部480が、軸部材200に最も近いひだ部140から外側に向けて数えて2番目のひだ部140と、軸部材200と、の間の空間の少なくとも一部を塞ぐよう構成されている場合について説明したが、本開示は、この場合に限られない。つば部480は、2番目のひだ部140以外のひだ部140と軸部材200との間の空間の少なくとも一部を塞ぐよう構成されていてもよい。或いは、つば部480は、最外周のひだ部140と軸部材200との間の空間の少なくとも一部を塞ぐよう構成されていてもよい。
【実施例0102】
次に、本開示に係る実施例を説明する。これらの実施例は本開示の一例であって、本開示はこれらの実施例により限定されない。
【0103】
(1)碍子連装置サンプルの製造
以下に示す2つの碍子連装置サンプルを製造した。なお、それぞれの碍子連装置サンプルにおいて同一の碍子を使用した。使用した碍子は、課電破壊荷重(引張強度)が210kNである直流耐霧懸垂碍子とし、碍子個数は12個とし、碍子連の張力は30kNとした。
【0104】
(サンプルA)
弾性部材:上述の実施形態のもの(図1
筒状部の外径:39mm
筒状部の径方向の厚さ:10mm
つば部の直径:145mm
(軸部材から碍子の2番目のひだ部までの空間を塞いだ。)
つば部の厚さ:2mm
つば部の外周端に最も近いひだ部と、つば部との間における間隙:2mm
タイプAデュロメータ硬度:55
なお、つば部は、筒状部と一体として成形した。
【0105】
(サンプルB)
弾性部材:従来のもの(図6
つば部を有しない点を除いて、サンプルAと同様とした。
【0106】
(2)評価
所定の風洞装置を用い、サンプルAおよびBのそれぞれにおいて、以下の条件で風音を評価した。
(条件)
吹出口形状:幅0.6m×高さ2m
吹出方法:0~40m/sの風を徐々に増速させ、その間の時間を一定の120秒とした。
取得データ:0.1秒でサンプリング×120秒=1200点で測定
風向に対する碍子連装置の傾斜角度:105°
なお、サンプルBにおいて傾斜角度105°のときに騒音レベルが最大となることを確認済みである。
【0107】
(3)結果
図5を参照し、サンプルAおよびBにおける風音測定結果について説明する。
【0108】
(サンプルB)
図5において点線で示したように、つば部を有しない従来弾性部材を用いたサンプルBでは、風速10m/s付近、15m/s付近、26~37m/s付近のそれぞれにおいて、騒音レベルのピークが発生していた。サンプルBでは、各風速での騒音レベルのピークの卓越量が大きく、バックグラウンドレベルからの卓越量は、20dB超であった。
【0109】
サンプルBでは、碍子の複数のひだ部で、様々な渦が発生していた。このため、碍子連装置が共振状態となり、大きな風音が発生したと考えられる。
【0110】
(サンプルA)
これに対し、図5において太い実線で示したように、つば部を有する弾性部材を用いたサンプルAでは、風速10m/s付近、15m/s付近、27~36m/s付近のそれぞれにおける騒音レベルのピークの卓越量が、サンプルBの卓越量よりも小さくなっていた。さらに、サンプルAでは、風速15m/s付近、27~36m/s付近のそれぞれにおいて、騒音レベルのピーク幅(ピークの風速範囲)がサンプルBのピーク幅よりも狭くなっていた。
【0111】
サンプルAの風速15m/s付近でのピークの面積SA1は、サンプルBの風速15m/s付近でのピークの面積SB1に対して87%減少していた。SB1-SA1で求められる差は、16.7dBであった。
【0112】
サンプルAの風速27~36m/s付近でのピークの面積SA2は、サンプルBの風速27~36m/sでのピークの面積SB2に対して76%減少していた。SB2-SA2で求められる差は、13.7dBであった。
【0113】
なお、ここでいう、風速に対する騒音レベルのグラフにおける「ピークの面積」は、ピークを含む風速の所定の範囲にわたって、バックグラウンドレベルからの卓越量を積分した値である。
【0114】
サンプルAでは、弾性部材がつば部を有していることで、当該つば部の外周端に最も近いひだ部よりも内側の空間への風の流入を抑制することができ、当該ひだ部よりも内側の空間における渦の発生を抑制することができた。その結果、サンプルAでは、10dB以上の風音低減効果を得ることができたことを確認した。
【0115】
<付記>
以下、本開示の態様を付記する。
【0116】
(付記1)
複数の碍子と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、
前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、
前記軸部材の外周を囲むように装着され、弾性体を含む弾性部材と、
を備え、
前記複数の碍子のそれぞれは、鉛直下に同心円状に設けられた複数のひだ部を有し、
前記弾性部材は、
前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、
前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、
を有する
碍子連装置。
【0117】
(付記2)
前記つば部の外周端に最も近い前記ひだ部と、前記つば部とは、所定の間隙をあけて互いに離れている
付記1に記載の碍子連装置。
【0118】
(付記3)
前記つば部の外周端に最も近い前記ひだ部と、前記つば部との間における間隙は、1mm以上10mm以下である
付記1または付記2に記載の碍子連装置。
【0119】
(付記4)
前記つば部は、前記軸部材に最も近いひだ部から外側に向けて数えて2番目のひだ部と、前記軸部材と、の間の空間の少なくとも一部を塞ぐよう構成されている
付記1から付記3のいずれか1つに記載の碍子連装置。
【0120】
(付記5)
前記つば部の厚さは、1mm以上5mm以下である
付記1から付記4のいずれか1つに記載の碍子連装置。
【0121】
(付記6)
前記つば部は、前記筒状部と一体として成形されている
付記1から付記5のいずれか1つに記載の碍子連装置。
【0122】
(付記7)
前記つば部は、前記筒状部とは別体として構成されている
付記1から付記5のいずれか1つに記載の碍子連装置。
【0123】
(付記8)
前記つば部は、当該つば部の外周端から前記筒状部内の開口まで貫通した開口を有し、
前記弾性部材は、前記つば部の前記開口を塞ぐカバー部をさらに有する
付記1から付記7のいずれか1つに記載の碍子連装置。
【0124】
(付記9)
付記から付記8のいずれか1つに記載の碍子連装置に用いられる
弾性部材。
【0125】
(付記10)
複数の碍子と、前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、を備え、前記複数の碍子のそれぞれは、鉛直下に同心円状に設けられた複数のひだ部を有する碍子連装置に用いられ、前記軸部材の外周を囲むように装着され、弾性体を含む弾性部材であって、
前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、
前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、
を有する
弾性部材。
【0126】
(付記11)
複数の碍子と、前記複数の碍子のそれぞれの中央下部に設けられる軸部材と、前記複数の碍子のそれぞれの中央上部に嵌められ、隣り合う前記碍子の前記軸部材が嵌め合わされるソケット部材と、を準備する工程と、
前記軸部材の外周を囲むように、弾性体を含む弾性部材を装着する工程と、
を備え、
前記準備する工程では、
前記複数の碍子のそれぞれとして、鉛直下側に同心円状に設けられた複数のひだ部を有する部材を準備し、
前記弾性部材を装着する工程では、
前記弾性部材として、前記軸部材の外周を囲むように構成された筒状部と、前記筒状部から径方向に延在し、前記複数のひだ部のうちの1つのひだ部と前記軸部材との間の空間の少なくとも一部を塞ぐつば部と、を有する部材を装着する
碍子連装置の製造方法。
【符号の説明】
【0127】
10 碍子連装置
100 碍子
120 笠部
122 笠内凹部
140 ひだ部
200 軸部材
300 ソケット部材
320 嵌合穴部
340 ピン挿入孔
400 弾性部材
410 筒状部
440 突片部
448 水抜孔
450 スカート
480 つば部
490 カバー部
492 ホック
600 割りピン
90 比較例の碍子連装置
910 碍子
914 ひだ部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6