(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173750
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ノズルおよび作業機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A47L9/02 Z
A47L9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086208
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高阿田 賢一
【テーマコード(参考)】
3B061
【Fターム(参考)】
3B061AA06
3B061AA24
3B061AA35
3B061AA52
3B061AA57
(57)【要約】
【課題】ノズルや作業機の操作性をさらに向上させる。
【解決手段】ノズル4は、クリーナ本体に着脱可能であって、吸込口が設けられた底面32を備える本体部30と、本体部30によって支持されるブレード部材50と、を有する。ブレード部材50は、本体部30によって支持される基部51と、基部51が本体部30によって支持された状態で底面32よりも下方に突出する板部52と、を含む。本体部30は、基部51を収容することで基部51を支持する収容部36を備える。ブレード部材50は、収容部36に対して前後方向に揺動可能に本体部30によって支持される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーナ本体に着脱可能なノズルであって、
吸込口が設けられた底面を備える本体部と、
前記本体部によって支持されるブレード部材と、を有し、
前記ブレード部材は、前記本体部によって支持される基部と、前記基部が前記本体部によって支持された状態で前記底面よりも下方に突出する板部と、を含み、
前記本体部は、前記基部を収容することで前記基部を支持する収容部を備え、
前記ブレード部材は、前記収容部に対して前後方向に揺動可能に前記本体部によって支持される、ノズル。
【請求項2】
前記収容部は、
前記基部の前方に位置する前壁と、
前記基部の後方に位置し、前記前壁と対向する後壁と、
前記基部の上方に位置し、前記前壁と前記後壁とに跨る上壁と、
前記基部の下方に位置し、前記板部が挿通されるスリットと、を備え、
前記前壁と前記後壁との対向間隔は、前記基部の前後方向の厚みよりも大きい、請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記前壁と前記後壁との対向間隔の最小値は、前記基部の前後方向の厚みの最大値よりも0.3mm以上大きい、請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記前壁と前記後壁との少なくとも一方と前記基部との間の隙間は、前記上壁に近づくほど拡大する、請求項2に記載のノズル。
【請求項5】
前記基部の前後方向の厚みは、前記上壁に近づくほど縮小する、請求項4に記載のノズル。
【請求項6】
前記前壁と前記後壁との対向間隔は、前記上壁に近づくほど縮小する、請求項4に記載のノズル。
【請求項7】
前記収容部は、前記上壁の前後方向における中間位置に設けられた突起部をさらに備え、
前記突起部は、前記上壁と対向する前記基部の上面に当接する、請求項2に記載のノズル。
【請求項8】
複数の切欠き部が前記前壁と前記後壁との少なくとも一方に形成されている、請求項2に記載のノズル。
【請求項9】
前記基部を支持する複数の爪部が前記スリットの長手方向に沿って配置されている、請求項2に記載のノズル。
【請求項10】
前記ブレード部材は、前記吸込口を横断して当該吸込口を前後方向に二分する、請求項1に記載のノズル。
【請求項11】
前記ブレード部材よりも前方の前記吸込口の開口面積は、前記ブレード部材よりも後方の前記吸込口の開口面積よりも広い、請求項10に記載のノズル。
【請求項12】
前記本体部は、
接続管の一端に設けられている球状プラグ部を受け入れる球状ソケット部と、
前記ブレード部材の前方に配置された一対の前輪ローラと、
前記ブレード部材の後方に配置された一対の後輪ローラと、を備え、
一対の前記後輪ローラの回転中心を通る軸線を後輪ローラ軸とし、
前記球状ソケット部の中心を通り、前記後輪ローラ軸と平行な軸線をジョイント軸としたとき、
前後方向における前記後輪ローラ軸から前記ジョイント軸までの距離が、前後方向における前記後輪ローラ軸から前記本体部の背面までの距離よりも短い、請求項1に記載のノズル。
【請求項13】
吸気口および排気口を備えるハウジングと、
前記ハウジングに収容された駆動部と、
前記ハウジングに収容され、前記駆動部によって駆動されて前記吸気口から前記排気口に向かう空気流を発生させるファンと、
前記ハウジングの前記吸気口に接続されるノズルと、を有し、
前記ノズルは、
前記吸気口に連通する吸込口が設けられた底面を備える本体部と、
前記本体部によって支持されるブレード部材と、を有し、
前記ブレード部材は、前記本体部によって支持される基部と、前記基部が前記本体部によって支持された状態で前記底面よりも下方に突出する板部と、を含み、
前記本体部は、前記基部を収容することで前記基部を支持する収容部を備え、
前記ブレード部材は、前記収容部に対して前後方向に揺動可能に前記本体部によって支持される、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーナなどの作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、集塵作業などに用いられるクリーナが知られている。さらに、クリーナの一例として、粉塵混じりの空気から粉塵を遠心分離させるサイクロン式クリーナが知られている(特許文献1)。
【0003】
クリーナ本体には、作業内容に応じて様々なノズルが装着される。例えば、クリーナを床掃除に用いる場合には、床掃除に適したノズル(床用ノズル)がクリーナ本体に装着される。床用ノズルやその他のノズルは、クリーナ本体に直に装着される場合もあれば、延長パイプなどを介してクリーナ本体に装着される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノズルには、クリーナの吸気口と連通する吸込口と、粉塵を掻き寄せるブレードと、が設けられる場合がある。ブレードは、ノズルの移動に伴って、粉塵が落ちている面や付着している面(床面や壁面など)を摺動して粉塵を掻き寄せる。このため、ブレードによってノズルの円滑な移動が阻害され、ノズルの操作性が低下し、ひいては作業機の操作性が低下する虞があった。
【0006】
本発明の目的は、ノズルや作業機の操作性をさらに向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態のノズルは、クリーナ本体に着脱可能であって、吸込口が設けられた底面を備える本体部と、前記本体部によって支持されるブレード部材と、を有する。前記ブレード部材は、前記本体部によって支持される基部と、前記基部が前記本体部によって支持された状態で前記底面よりも下方に突出する板部と、を含む。また、前記本体部は、前記基部を収容することで前記基部を支持する収容部を備える。そして、前記ブレード部材は、前記収容部に対して前後方向に揺動可能に前記本体部によって支持される。
【0008】
一実施形態の作業機は、吸気口および排気口を備えるハウジングと、前記ハウジングに収容された駆動部と、前記ハウジングに収容され、前記駆動部によって駆動されて前記吸気口から前記排気口に向かう空気流を発生させるファンと、前記ハウジングの前記吸気口に接続されるノズルと、を有する。前記ノズルは、前記吸気口に連通する吸込口が設けられた底面を備える本体部と、前記本体部によって支持されるブレード部材と、を有する。前記ブレード部材は、前記本体部によって支持される基部と、前記基部が前記本体部によって支持された状態で前記底面よりも下方に突出する板部と、を含む。また、前記本体部は、前記基部を収容することで前記基部を支持する収容部を備える。そして、前記ブレード部材は、前記収容部に対して前後方向に揺動可能に前記本体部によって支持される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作性が向上したノズルや作業機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】ノズルを前進させているときのブレード部材を示す部分拡大断面図である。
【
図8】ノズルを後退させているときのブレード部材を示す部分拡大断面図である。
【
図9】後退させていたノズルを再び前進させたときのブレード部材を示す部分拡大断面図である。
【
図10】収容部および基部の変形例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の構成には同一の符号を用いる。また、既に説明した構成については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0012】
<クリーナの概要>
図1は、本発明が適用された作業機の一例であるクリーナ1の斜視図であり、
図2は、クリーナ1の断面図である。クリーナ1の用途は特に限定されないが、クリーナ1は、集塵作業に適しており、特に床掃除に適している。
【0013】
図1,
図2に示されるように、クリーナ1は、クリーナ本体2,延長パイプ3およびノズル4を有している。ノズル4は、床掃除に適した床用ノズルであって、延長パイプ3を介してクリーナ本体2に接続されている。より特定的には、延長パイプ3の一端(基端)とクリーナ本体2とが着脱可能に接続され、延長パイプ3の他端(先端)とノズル4とが着脱可能に接続されている。もっとも、ノズル4は、延長パイプ3を介さず、クリーナ本体2に直に接続することもできる。
【0014】
<クリーナ本体>
クリーナ本体2は、吸気口11,排気口12および把持部13を備えるハウジング10を有する。通常、作業者は、把持部13を掴んでクリーナ1を操作する。より特定的には、作業者は、把持部13を掴んでクリーナ1を押したり、引いたりして、ノズル4を床の上で前後に移動させる。
【0015】
ハウジング10には、駆動部を構成するモータ14a、モータ14aによって駆動されるファン14b、モータ14aを制御する制御部(制御基板)などが収容されている。ファン14bは、モータ14aの回転軸の一端に固定されており、モータ14aと一体化している。そこで、以下の説明では、モータ14aおよびファン14bを、“ファンモータ14”と総称する場合がある。
【0016】
ハウジング10には、吸気口11に連通する管状の連結部15が設けられている。延長パイプ3は、その基端が連結部15に挿入されることにより、クリーナ本体2に接続されている。この結果、延長パイプ3の先端に接続されているノズル4は、延長パイプ3を介してハウジング10の吸気口11に接続されている。別の見方をすると、ノズル4は、延長パイプ3を介してハウジング10の吸気口11と連通している。
【0017】
ハウジング10の先端側には、筒状の集じん部16が設けられている。集じん部16の内部には、粉塵混じりの空気を空気と粉塵とに分離する2つのサイクロン部が設けられている。より特定的には、第1サイクロン部17が集じん部16の中央に設けられている。また、複数の第2サイクロン部18が第1サイクロン部17の周囲に、第1サイクロン部17を取り囲むように設けられている。
【0018】
ハウジング10には、モータ14aの電源であるバッテリ(二次電池)5が装着される。把持部13の上面には、電源スイッチ(ONスイッチ/OFFスイッチ)を含む操作部13aが設けられている。
【0019】
操作部13aの電源スイッチ(ONスイッチ)が押されると、バッテリ5からモータ14aに電力が供給され、モータ14aが作動する。一方、操作部13aの電源スイッチ(OFFスイッチ)が押されると、バッテリ5からモータ14aへの電力供給が遮断され、モータ14aが停止する。
【0020】
既述のとおり、ファン14bは、モータ14aの回転軸の一端に固定されている。よって、電源スイッチ(ONスイッチ)が押され、モータ14aが作動すると、ファン14bが回転する。ファン14bが回転すると、吸気口11から排気口12に向かう空気流がハウジング10内に発生する。この結果、外部の空気がノズル4および延長パイプ3を介してハウジング10内に流入する。より特定的には、床に落ちしている粉塵などを含む空気が吸気口11を通じてハウジング10内に吸い込まれる。
【0021】
ハウジング10内に吸い込まれた粉塵混じりの空気は、第1サイクロン部17に流入し、空気と粉塵とに分離される。第1サイクロン部17には、円筒状のメッシュフィルタが設けられており、第1サイクロン部17に流入した粉塵混じりの空気は、メッシュフィルタの周囲で旋回する。この結果、遠心力によって空気と粉塵とが分離される。
【0022】
粉塵が除去された空気は、第1サイクロン部17(メッシュフィルタ)を通過して複数の第2サイクロン部18のいずれかに流入する。この空気には、第1サイクロン部17では除去しきれなかった粉塵が含まれている。第2サイクロン部18に流入した粉塵混じりの空気は、当該第2サイクロン部18の内部で旋回する。この結果、遠心力によって空気と粉塵とが分離される。
【0023】
第1サイクロン部17や第2サイクロン部18において空気から分離された粉塵は、粉塵収容部19に貯留される。一方、第1サイクロン部17や第2サイクロン部18において粉塵が除去された空気は、ハウジング10内を通過し、排気口12から外部に排気される。
【0024】
より特定的には、第2サイクロン部18を通過した空気は、ファンモータ14に吸い込まれる。ファンモータ14に吸い込まれた空気は、当該ファンモータ14の背後に排気され、その後、ハウジング10内を通過して排気口12から外部に流出する。
【0025】
上記のように、吸気口11を通じてハウジング10内に吸い込まれた空気は、第1サイクロン部17,第2サイクロン部18,ファンモータ14などを経由して排気口12に至る。別の見方をすると、ハウジング10内には、吸気口11と第1サイクロン部17の流入口とを連通させる流路が設けられている。また、ハウジング10内には、第1サイクロン部17の流出口と第2サイクロン部18の流入口とを連通させる流路や、第2サイクロン部18の流出口とファンモータ14の流入口とを連通させる流路が設けられている。
【0026】
上記流路には、1つ以上のフィルタを設けることができる。本実施形態では、第2サイクロン部18の流出口とファンモータ14の流入口とを連通させる流路にフィルタ室が設けられている。さらに、フィルタ室内には2つのフィルタ部材が収容されている。より特定的には、内側フィルタ部材と、当該内側フィルタ部材を取り囲む外側フィルタ部材と、がフィルタ室に収容されている。
【0027】
第2サイクロン部18を通過した空気は、外側フィルタ部材,内側フィルタ部材をこの順で通過した後にファンモータ14に流入する。なお、内側フィルタ部材や外側フィルタ部材は、特定のフィルタ部材に限定されない。例えば、内側フィルタ部材には、不織布からなるHEPAフィルタが用いられ、外側フィルタ部材には、ポリウレタンなどの樹脂からなるスポンジが用いられる。
【0028】
<ノズル>
次に、ノズル4の詳細について説明する。
図3はノズル4の平面図であり、
図4はノズル4の底面図であり、
図5はノズル4の下方斜視図である。また、
図6はノズル4の断面図である。なお、
図6に示されている断面は、
図4中のA-A線に沿う断面である。
【0029】
ノズル4は、本体部30,接続管40およびブレード部材50を有し、クリーナ本体2に着脱可能である。既述のとおり、ノズル4は、例えば、延長パイプ3を介してクリーナ本体2に装着される。
【0030】
<本体部および接続管>
図6に最も明確に示されるように、本体部30と接続管40とは、フレキシブルジョイントを介して相対回転可能に連結され、一体化している。本体部30の長手方向中央には、球状ソケット部31が形成されている。一方、接続管40の長手方向一端には、球状プラグ部41が形成されており、接続管40の長手方向他端には、挿入部42が設けられている。
【0031】
接続管40の球状プラグ部41は、本体部30の球状ソケット部31に嵌め込まれ、回転自在に保持されている。別の見方をすると、本体部30の球状ソケット部31は、接続管40の球状プラグ部41を受け入れ、当該球状プラグ部41を回転自在に保持している。
【0032】
<ローラ>
図4,
図5に示されるように、本体部30の底面32には、一対の前輪ローラ34a,34bと、一対の後輪ローラ35a,35bと、が設けられている。前輪ローラ34a,34bは、本体部30の底面32の前方に配置されている。より特定的には、前輪ローラ34a,34bは、底面前方の左右両側に配置されている。それぞれの前輪ローラ34a,34bの車軸は、同軸上に配置され、本体部30によって回転自在に保持されている。
【0033】
後輪ローラ35a,35bは、本体部30の底面32の後方に配置されている。より特定的には、後輪ローラ35a,35bは、底面後方の左右両側に配置されている。それぞれの後輪ローラ35a,35bの車軸は、同軸上に配置され、本体部30によって回転自在に保持されている。
【0034】
前輪ローラ34a,34bの回転中心を通る軸線(=前輪ローラ34a,34bの車軸の中心軸)と、後輪ローラ35a,35bの回転中心を通る軸線(=後輪ローラ35a,35bの車軸の中心軸)と、は平行である。但し、後輪ローラ35a,35bの間隔は、前輪ローラ34a,34bの間隔よりも狭い。
【0035】
ここで、前輪ローラ34a,34bの回転中心を通る軸線を“前輪ローラ軸LF”とし、後輪ローラ35a,35bの回転中心を通る軸線を“後輪ローラ軸LR”とし、球状ソケット部31の中心Oを通り、前輪ローラ軸LFおよび後輪ローラ軸LRと平行な軸線を“ジョイント軸LJ”としたとき、前後方向における後輪ローラ軸LRからジョイント軸LJまで距離d1は、前後方向における後輪ローラ軸LRから本体部30の背面30rまでの距離d2よりも短い(d1<d2)。
【0036】
d1<d2の関係が成立している本実施形態では、d1≧d 2の関係が成立している他の実施形態と比較して、後輪ローラ軸LRがジョイント軸LJに近づく。このため、作業者が接続管40を床Fに押し付けるような力を加えたときに、後輪ローラ35a,35bを支点としてノズル4の前方が持ち上がりやすくなる。すると、吸込み力によってノズル4が床Fに吸い付き、移動抵抗が大きくなることが抑制される。
【0037】
<ブレード部材>
ブレード部材50は、ゴム製であって、本体部30によって揺動可能に支持されている。
図6に示されるように、ブレード部材50は、一体成形された基部51および板部52を含む。
【0038】
ブレード部材50の基部51は、柱状または棒状であって、略台形の断面形状を有する。別の見方をすると、基部51の前後方向の厚みは、上方に向かって次第に縮小している。
【0039】
ブレード部材50の板部52は、平板状であって、基部51の底面51bから下方に向かって突出している。また、板部52は、下方に向かって次第に肉薄になっている。
【0040】
基部51は、本体部30が備える収容部36に収容されている。板部52は、基部51が収容部36によって支持された状態(基部51が収容部36に収容された状態)で、本体部30の底面32よりも下方に突出する。基部51が収容部36によって支持されているブレード部材50は、収容部36に対して前後方向に揺動可能である。ブレード部材50の揺動については、後に改めて説明する。
【0041】
<収容部>
既述のとおり、本体部30は、ブレード部材50の基部51を収容して支持する収容部36を備えている。
図4,
図5に示されるように、収容部36は、本体部30の長手方向に延びる溝であって、ブレード部材50の基部51を収容可能な寸法および形状を有する。
【0042】
本体部30の底面32には、接続管40に連通する略長方形の吸込口33が設けられている。収容部36は、吸込口33の内側に設けられており、本体部30の長手方向に延びている。別の見方をすると、収容部36は、吸込口33を横断している。この結果、基部51が収容部36に収容されたブレード部材50は、吸込口33を横断して当該吸込口33を前後方向に二分している。これにより、吸込口33は、ノズル4の前進時にブレード部材50の前方に掻き寄せられる粉塵と、ノズル4の後退時にブレード部材50の後方に掻き寄せられる粉塵と、の両方を効果的に吸い込むことが可能となる。
【0043】
以下の説明では、ブレード部材50よりも前方に位置している吸込口33の一部を“前方領域”と呼び、ブレード部材50よりも後方に位置している吸込口33の他の一部を“後方領域”と呼んで区別する場合がある。
【0044】
なお、収容部36は、吸込口33の前後方向中央よりも後方寄りに位置している。よって、ブレード部材50も、吸込口33の前後方向中央よりも後方寄りに位置している。つまり、ブレード部材50は、吸込口33を二分しているが、二等分してはいない。この結果、ブレード部材50よりも前方の吸込口33の開口面積(前方領域の面積)が、ブレード部材50よりも後方の吸込口33の開口面積(後方領域の面積)よりも広くなり、後方に掻き寄せられる粉塵よりも、前方に掻き寄せられる粉塵を吸い込む吸込力が大きくなり、ノズル4の前進時における吸込み性能が充分確保される。尚、一例として、前方領域の面積は741mm2(吸込口33全体の開口面積の83%)であり、後方領域の面積は151mm2(吸込口33全体の開口面積の17%)である。もっとも、前方領域の面積を全体の50%以上100%未満とすれば、前述の効果を得ることができる。
【0045】
再び
図6を参照する。収容部36は、互いに対向する前壁36fおよび後壁36rと、前壁36fと後壁36rとに跨る上壁36uと、上壁36uと対向するスリット36sと、を備えている。
【0046】
収容部36の前壁36fは、ブレード部材50の基部51が収容部36に収容されると、当該基部51の前方に位置し、当該基部51の前面51fと対向する。収容部36の後壁36rは、ブレード部材50の基部51が収容部36に収容されると、当該基部51の後方に位置し、当該基部51の背面51rと対向する。収容部36の上壁36uは、ブレード部材50の基部51が収容部36に収容されると、当該基部51の上方に位置し、当該基部51の上面51uと対向する。
【0047】
別の見方をすると、ブレード部材50の基部51は、前面51fが前壁36fと対向し、背面51rが後壁36rと対向し、上面51uが上壁36uと対向した状態で、収容部36に収容されている。
【0048】
ブレード部材50の板部52は、基部51が上記状態で収容部36に収容されると、スリット36sに挿通され、スリット36sを通じて収容部36から突出する。この結果、板部52は、本体部30の底面32よりも下方に突出し、床面に接触可能となる。すると、ノズル4が前後に移動する際、板部52の先端は、床面に接触しながら前後に移動する。
【0049】
収容部36は、基部51の断面形状に倣う断面形状を有している。より特定的には、収容部36の内部空間は、基部51の断面形状に倣う形状を有している。言い換えると、収容部36は、略台形の断面形状を有している。別の見方をすると、基部51を挟んで対向する収容部36の前壁36fと後壁36rとの対向間隔Sは、上壁36uに近づくほど縮小する。言い換えると、収容部36の前壁36fおよび後壁36rは、上壁36uに近づくに連れて互いに近接するように傾斜している。
【0050】
なお、収容部36と同じく略台形の断面形状を有する基部51の前後方向の厚みは、収容部36の上壁36uに近づくほど縮小する。
【0051】
もっとも、前壁36fと後壁36rとの対向間隔Sは、基部51の前後方向の厚みTよりも大きい。より特定的には、前壁36fと後壁36rとの対向間隔Sの最小値は、基部51の前後方向の厚みTの最大値よりも3.0mm以上大きい。つまり、収容部36と基部51との間にはクリアランスが確保されている。
【0052】
より特定的には、基部51が収容部36の前後方向中央に位置しているとき、収容部36の前壁36fと基部51の前面51fとの間には隙間があり、収容部36の後壁36rと基部51の背面51rとの間にも隙間がある。この結果、基部51は、収容部36内で前後に移動可能である。
【0053】
なお、本実施形態では、収容部36の前壁36fおよび後壁36rの傾斜角度は、基部51の前面51fおよび背面51rの傾斜角度よりも僅かに緩やかである。よって、上記隙間は、収容部36の上壁36uに近づくほど拡大する。
【0054】
収容部36の上壁36uには、断面形状が略三角形の突起部37が設けられている。突起部37は、前後方向において上壁36uの中間位置に設けられており、上壁36uの全長または略全長に亘って延びている。
【0055】
突起部37は、ブレード部材50の基部51の上面51uに当接する。少なくとも、板部52が床面に押し付けられることによって基部51が押し上げられると、突起部37の先端が基部51の上面51uに当接する。つまり、本体部30(収容部36)と基部51とが線接触する。この結果、収容部36内で前後に移動可能な基部51を含むブレード部材50は、突起部37と基部51との接点を支点として前後に揺動可能となる。
【0056】
もっとも、突起部37は、ブレード部材50を前後に揺動可能とするために必須ではない。言い換えれば、基部51が前後に移動可能に支持されているブレード部材50は、突起部37が設けられていなくとも前後に揺動可能である。但し、本実施形態では、突起部37によって収容部36と基部51との接触面積が低減されており、ブレード部材50が揺動し易くなっている。
【0057】
<切欠き部および爪部>
図4,
図5に示されるように、収容部36の前壁36fと後壁36rとの少なくとも一方に複数の切欠き部38が形成されている。より特定的には、前壁36fおよび後壁36rの双方に、複数の切欠き部38が形成されている。前壁36fに形成されている切欠き部38と後壁36rに形成されている切欠き部38とは、前後方向において互いに対向している。
【0058】
さらに、前壁36fおよび後壁36rに、それぞれ複数の爪部39が形成されている。より特定的には、前壁36fに形成されている切欠き部38の一側または両側に爪部39が形成されている。また、後壁36rに形成されている切欠き部38の一側または両側にも爪部39が形成されている。爪部39は前壁36fに等間隔で7個設けられ、後壁36rにも等間隔で7個設けられている。
【0059】
切欠き部38と同様に、前壁36fの切欠き部38の側方に形成されている爪部39と、後壁36rの切欠き部38の側方に形成されている爪部39とは、前後方向において互いに対向している。
【0060】
より特定的には、前壁36fに形成されている爪部39は、後壁36rに向かって突出しており、後壁36rに形成されている爪部39は、前壁36fに向かって突出している。さらに、前壁36fに形成されている爪部39と、後壁36rに形成されている爪部39とは、スリット36sの長手方向に沿って配置され、スリット36sを介して互いに対向している。
【0061】
ブレード部材50の基部51は、互いに対向している任意の一組の切欠き部38の間から収容部36内(前壁36fと後壁36rとの間)に差し込まれる。それぞれの爪部39は、収容部36内(前壁36fと後壁36rとの間)に差し込まれた基部51の底面51bの下方に突出し、基部51を支持する(
図6参照)。
【0062】
<ブレード部材の動作>
次にブレード部材50の動作について詳細に説明する。既述のとおり、ブレード部材50は、本体部30により、収容部36に対して前後方向に揺動可能に支持されている。この結果、ブレード部材50は、ノズル4の前後方向への移動に伴って前後方向に揺動する。
【0063】
図7は、ノズル4を前進させているときのブレード部材50を示す部分拡大断面図である。
図8は、ノズル4を後退させているときのブレード部材50を示す部分拡大断面図である。
図9は、後退させていたノズル4を再び前進させたときのブレード部材50を示す部分拡大断面図である。つまり、ブレード部材50は、
図7,
図8(a),
図8(b),
図8(c),
図9(a),
図9(b)に示されている動作をこの順で繰り返す。
【0064】
説明の便宜上、
図7に示されているブレード部材50を基準としてブレード部材50の一連の動作を説明する。
【0065】
押されていたクリーナ1が引かれると、それまで前進していたノズル4が後退を始める。すると、ブレード部材50は、
図7→
図8(a)→
図8(b)→
図8(c)の順で動作する。より特定的には、ノズル4が後退すると、板部52と床Fとの摩擦により、ブレード部材50に反時計回りの回転力が作用する。すると、ブレード部材50の基部51が突起部37との接点を支点として収容部36内で反時計回りに回転する。この結果、
図7に示されるように前傾していたブレード部材50は、
図8(a)に示される状態を経て
図8(b)に示されるように直立し、その後、
図8(c)に示されるように後傾する。
【0066】
一方、引かれていたクリーナ1が押されると、それまで後退していたノズル4が前進を始める。すると、ブレード部材50は、
図8(c)→
図9(a)→
図9(b)→
図7の順で動作する。より特定的には、ノズル4が前進すると、板部52と床Fとの摩擦により、ブレード部材50に時計回りの回転力が作用する。すると、ブレード部材50の基部51が突起部37との接点を支点として収容部36内で時計回りに回転する。この結果、
図8(c)に示されるように後傾していたブレード部材50は、
図9(a)に示される状態を経て
図9(b)に示されるように直立し、その後、
図7に示されるように前傾する。
【0067】
このように、ブレード部材50は、ノズル4の移動方向の転換に伴って、収容部36に対して前傾した状態と、収容部36に対して後傾した状態とに交互に変化する。つまり、ブレード部材50は、ノズル4の移動方向の変化に追従して揺動する。この結果、ノズル4の移動抵抗が低減され、ノズル4の移動方向の転換やその後の移動が円滑に行われる。つまり、ノズル4の操作性が向上し、ひいてはクリーナ1の操作性が向上する。
【0068】
なお、ノズル4が前進しているとき、ブレード部材50は、床Fに落ちている粉塵を前方に押し動かす。ブレード部材50によって前方に押し動かされた粉塵は、吸込口33の前方領域から本体部30内に吸い込まれ、接続管40を通って延長パイプ3に流入する。
【0069】
一方、ノズル4が後退しているとき、ブレード部材50は、床Fに落ちている粉塵を後方に押し動かす。ブレード部材50によって後方に押し動かされた粉塵は、吸込口33の後方領域から本体部30内に吸い込まれ、接続管40を通って延長パイプ3に流入する。
【0070】
つまり、ノズル4が前進しているときだけなく、後退しているときにも粉塵の吸込みが行われる。別の見方をすると、クリーナ1を押しているときだでなく、引いているときにも粉塵の吸込みが行われる。
【0071】
なお、
図5,
図6に示されるように、本体部30の底面後部には、前方から後方に向かって次第にせり上がる傾斜が付けられている。また、本体部30の底面後部には、端面が上記のように傾斜している複数のリブ60が形成されている。床Fがフローリングなどの平坦な床である場合には、前輪ローラ34a,34bと後輪ローラ35a,35bとが床Fに均等に接し、底面32は床Fと平行になる。一方、床Fが毛足の長い絨毯等が敷かれた柔らかい床である場合には、作業者が接続管40を床Fに押し付ける力により後輪ローラ35a,35bが床Fに食い込む。すると、複数のリブ60の傾斜した端面が床Fと接触し、かつ、ノズル4の前方が持ち上がるように、ノズル4全体が傾く。このようにノズル4が傾いた状態になると、吸込口33が床Fから離間し、ノズル4が床Fに吸い付く力が抑制され、ノズル4の移動抵抗が低減される。また、ノズル4が傾いた状態で床Fと接触する箇所を複数のリブ60としたため、床Fとの接触面積が減少し、ノズル4の移動抵抗がさらに低減される。
【0072】
本実施形態では、上記のような底面32の形状に関する工夫と可動式のブレード部材50との相乗効果により、ノズル4の操作性のさらなる向上が図られている。このため、移動抵抗が大きい床の上であってもノズル4を円滑に移動させることができる。
【0073】
また、本体部30の外周面には、軟質プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニル)からなるダンパ61が設けられている。よって、ノズル4を家具や壁などに誤ってぶつけてしまっても、家具などが傷付く虞がない。
【0074】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本体部30の収容部36やブレード部材50の基部51の形状は適宜変更することができる。
図10(a),(b),(c)に、収容部36や基部51の異なる幾つかの変形例を示す。
【0075】
図10(a)に示されている収容部36は台形である一方、基部51は長方形である。より特定的には、収容部36の前壁36fおよび後壁36rは、傾斜している一方、基部51の前面51fおよび背面51rは傾斜していない。
【0076】
図10(b)に示されている収容部36は台形である一方、基部51は長方形である。この点において、
図10(b)に示されている収容部36および基部51は、
図10(a)に示されている収容部36および基部51と同様である。
【0077】
しかし、
図10(b)に示されている収容部36の上面36uには、突起部37が設けられていない。一方、
図10(b)に示されている基部51の上面51uには、突起部37に相当する突起部53が設けられている。
【0078】
図10(c)に示されている収容部36は台形であり、基部51も台形である。この点において、
図10(c)に示されている収容部36および基部51は、上記実施形態における収容部36および基部51と同様である。
【0079】
しかし、
図10(c)に示されている収容部36には、突起部37が設けられていない。一方、
図10(c)に示されている基部51には、突起部37に相当する突起部53が設けられている。
【0080】
さらに、図示はされていないが、ブレード部材50の基部51の断面形状は長方形である一方、収容部36の断面形状が逆台形である実施形態もある。また、収容部36の断面形状は長方形である一方、ブレード部材50の基部51の断面形状が台形である実施形態もある。
【0081】
クリーナ1の集じん方式はサイクロン式に限られない。別の見方をすると、ノズル4は、サイクロン式以外の集じん方式が採用されているクリーナ本体に着脱することができる。
【0082】
クリーナ本体2の電源はバッテリ(二次電池)に限られず、商用電源であってもよく、バッテリおよび商用電源の両方であってもよい。クリーナ本体2の運転モードは1つに限られない。例えば、クリーナ本体2は、作業者のボタン操作によって切り替えられる“強”,“標準”,“弱”の3つの運転モードを備えていてもよい。この場合、“強”,“標準”,“弱”の順で吸込み力が弱くなる。
【符号の説明】
【0083】
1…クリーナ、2…クリーナ本体、3…延長パイプ、4…ノズル、5…バッテリ(二次電池)、10…ハウジング、11…吸気口、12…排気口、13…把持部
13a…操作部、14…ファンモータ、14a…モータ、14b…ファン、15…連結部、16…集じん部、17…第1サイクロン部、18…第2サイクロン部、19…粉塵収容部、30…本体部、30r…背面、31…球状ソケット部、32…底面、33…吸込口、34a,34b…前輪ローラ、35a,35b…後輪ローラ、36…収容部、36f…前壁、36r…後壁、36s…スリット、36u…上壁、37…突起部、38…切欠き部、39…爪部、40…接続管、41…球状プラグ部、42…挿入部、50…ブレード部材、51…基部、51b…底面、51f…前面、51r…背面、51u…上面、52…板部、53…突起部、60…リブ、61…ダンパ、d1,d2…距離、F…床、LF…前輪ローラ軸、LJ…ジョイント軸、LR…後輪ローラ軸、S…対向間隔