(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173751
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20231130BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F16K31/06 305Z
H01F7/16 R
H01F7/16 D
H01F7/16 H
H01F7/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086209
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘紀
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA05
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD02
3H106EE04
3H106GA30
3H106GC02
3H106JJ02
5E048AA09
5E048AB01
5E048AD01
(57)【要約】
【課題】新たな部材を追加することなく固定鉄心の一端面と可動鉄心の一端との面接触を規制することで、コイルへの通電オフ時に可動鉄心を固定鉄心から離れ易くし、良好な応答性を得ること。
【解決手段】電磁弁1は、コイル2と、外側にコイル2が配置される固定鉄心3と、固定鉄心3と同軸上で往復動可能に対向する可動鉄心4と、固定鉄心3と同軸上に配置され、可動鉄心4の外周を囲繞する円筒ヨーク5とを備え、可動鉄心4を往復動させるために、コイル2の発生する磁力により固定鉄心3が可動鉄心4を軸方向へ吸引するように構成される。可動鉄心4は一端4aを有し、固定鉄心3は可動鉄心4の一端4aに対向する一端面3aを有する。電磁弁1は、可動鉄心4の一端4aと固定鉄心3の一端面3aとの当接を制限するための当接制限手段を更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により磁力を発生するコイルと、
外側に前記コイルが配置される固定鉄心と、
前記固定鉄心と同軸上で往復動可能に対向する可動鉄心と、
前記固定鉄心と同軸上に配置され、前記可動鉄心の外周を囲繞するように配置される円筒状のヨークと
を備え、前記可動鉄心を往復動させるために、前記コイルの発生する磁力により前記固定鉄心が前記可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成される電磁弁において、
前記可動鉄心は、その軸方向に一端を有し、
前記固定鉄心は、その軸方向に前記可動鉄心の前記一端に対向する一端面を有し、
前記可動鉄心の前記一端と前記固定鉄心の前記一端面との当接を制限するための当接制限手段を備えた
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁において、
前記固定鉄心と前記ヨークとの間には、直接的な磁束結合を阻害する非磁性材より形成されるリング部材が設けられ、
前記可動鉄心は、その一端に対応して外径が小さい小外径部と前記外径が大きい大外径部を含み、
前記当接制限手段は、前記リング部材の最小内径が、前記可動鉄心の前記大外径部の外径より小さく前記小外径部の外径より大きいことである
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁弁において、
前記固定鉄心は、前記一端面に対応する一端部に内径が前記一端面の外縁の径より大きい大内径部を含み、
前記可動鉄心の前記一端は、前記固定鉄心の前記大内径部の内径より小さく前記一端面の前記外縁の径より大きい外径を有し、
前記当接制限手段は、前記固定鉄心の前記一端面の外縁と前記大内径部との間に設けられ、前記可動鉄心の前記一端へ向かって前記固定鉄心の内径が拡大する拡径内面である
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
請求項3に記載の電磁弁において、
前記拡径内面は、テーパ形状を有する
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁弁において、
前記可動鉄心は、その軸方向において前記一端の反対側に他端を含み、前記他端に対応して外径が小さい小外径部と前記外径が大きい大外径部を含み、
前記ヨークは、前記可動鉄心の前記他端に対応してその内径が小さい小内径部と前記内径が大きい大内径部を含み、
前記当接制限手段は、前記可動鉄心の前記大外径部が、前記ヨークの前記小内径部の内径より大きくかつ前記大内径部の内径より小さい外径を有することである
ことを特徴とする電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、コイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成した電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「リニアソレノイド」が知られている。このリニアソレノイドは、ハウジングを備え、そのハウジング内には、コイルと、コイルが外側に配置された固定コア(固定鉄心)と、コイルに対する通電作用下に固定鉄心に吸引され、円柱状をなす可動コア(可動鉄心)と、可動鉄心の外周面を囲繞する円筒状ヨークとが設けられる。ここで、固定鉄心には、可動鉄心が臨む凹部が形成される。この凹部に連続する孔部内には、非磁性材料からなり、可動鉄心の一方の変位を規制する第1ストッパ部材が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のリニアソレノイドでは、第1ストッパ部材により可動鉄心の変位が規制されるので、固定鉄心と可動鉄心が直に接触することがなく、コイルへの通電オフ時に可動鉄心が固定鉄心から離れ易くはなる。しかしながら、このリニアソレノイドでは、第1ストッパ部材を追加しているので、その分だけ部品コストや製造コストが増加してしまう。ここで、第1ストッパ部材を省略することも考えられるが、単に第1ストッパ部材を省略しただけでは、固定鉄心の一端面に可動鉄心の一端が面接触すると、コイルへの通電オフ時に可動鉄心が固定鉄心から離れ難くなってしまう。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、新たな部材を追加することなく、固定鉄心の一端面と可動鉄心の一端との面接触を規制することで、コイルへの通電オフ時に可動鉄心を固定鉄心から離れ易くし、良好な応答性を得ることを可能とした電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、通電により磁力を発生するコイルと、外側にコイルが配置される固定鉄心と、固定鉄心と同軸上で往復動可能に対向する可動鉄心と、固定鉄心と同軸上に配置され、可動鉄心の外周を囲繞するように配置される円筒状のヨークとを備え、可動鉄心を往復動させるために、コイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成される電磁弁において、可動鉄心は、その軸方向に一端を有し、固定鉄心は、その軸方向に可動鉄心の一端に対向する一端面を有し、可動鉄心の一端と固定鉄心の一端面との当接を制限するための当接制限手段を備えたことを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、電磁弁において、外側にコイルが配置される固定鉄心に対し可動鉄心が同軸上で往復動可能に対向する。また、円筒状のヨークが、可動鉄心の外周を囲繞するように、固定鉄心と同軸上に配置される。そして、電磁弁は、可動鉄心を往復動させるために、コイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成される。ここで、可動鉄心の一端と固定鉄心の一端面は、軸方向において対向するが、固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引しても、当接制限手段により、可動鉄心の一端と固定鉄心の一端面との当接が制限される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、固定鉄心とヨークとの間には、直接的な磁束結合を阻害する非磁性材より形成されるリング部材が設けられ、可動鉄心は、その一端に対応して外径が小さい小外径部と外径が大きい大外径部を含み、当接制限手段は、リング部材の最小内径が、可動鉄心の大外径部の外径より小さく小外径部の外径より大きいことであることを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、当接制限手段は、固定鉄心とヨークとの間に設けられる非磁性のリング部材の最小内径が、可動鉄心の大外径部の外径より小さく小外径部の外径より大きいことである。これにより、可動鉄心の小外径部と大外径部との間に段差面が形成される。従って、可動鉄心が固定鉄心へ向け移動するとき、その段差面が非磁性のリング部材に当接することで可動鉄心の移動が規制される。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、固定鉄心は、一端面に対応する一端部に内径が一端面の外縁の径より大きい大内径部を含み、前記可動鉄心の前記一端は、前記固定鉄心の前記大内径部の内径より小さく前記一端面の外縁の径より大きい外径を有し、当接制限手段は、固定鉄心の一端面の外縁と大内径部との間に設けられ、可動鉄心の一端へ向かって固定鉄心の内径が拡大する拡径内面であることを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、当接制限手段は、固定鉄心の一端面の外縁と大内径部との間に設けられ、可動鉄心の一端へ向かって固定鉄心の内径が拡大する拡径内面である。従って、可動鉄心が固定鉄心へ向け移動するとき、可動鉄心の一端が固定鉄心の拡径内面に当接することで可動鉄心の移動が規制される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、拡径内面は、テーパ形状を有することを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、テーパ形状を有する拡径内面の形成が比較的簡易となる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、可動鉄心は、その軸方向において一端の反対側に他端を含み、他端に対応して外径が小さい小外径部と外径が大きい大外径部を含み、ヨークは、可動鉄心の他端に対応して内径が小さい小内径部と内径が大きい大内径部を含み、当接制限手段は、可動鉄心の大外径部が、ヨークの小内径部の内径より大きくかつ大内径部の内径より小さい外径を有することであることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、当接制限手段は、可動鉄心の一端の反対側の他端に対応し、小外径部より外径が大きい大外径部が、ヨークの小内径部の内径より大きくかつ大内径部の内径より小さい外径を有することである。これにより、可動鉄心の小外径部と大外径部との間に段差面が形成され、ヨークの小内径部と大内径部との間にも段差面が形成される。従って、可動鉄心が固定鉄心へ向け移動するとき、可動鉄心の他端の対応部位において、その段差面がヨークの段差面に当接することで可動鉄心の移動が規制される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の技術によれば、新たな部材を追加することなく、固定鉄心の一端面と可動鉄心の一端との面接触を規制することができ、コイルへの通電オフ時に可動鉄心を固定鉄心から離れ易くすることができ、可動鉄心につき良好な応答性を得ることができる。
【0017】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、可動鉄心がリング部材に当接しても両者の間で磁力作用は無く、可動鉄心の良好な応答性を向上させることができる。
【0018】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、可動鉄心の一端が固定鉄心の拡径内面に当接しても両者が線接触となるので、可動鉄心の良好な応答性を確保することができる。
【0019】
請求項4に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、固定鉄心の製造コストを低減することができる。
【0020】
請求項5に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、可動鉄心の一端と固定鉄心の一端面との間に当接制限手段を設ける必要がないので、可動鉄心の一端と固定鉄心の一端面との最近接距離を、磁力の特性を生かして最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】第1実施形態に係り、
図1の電磁弁につき、リング部材の近傍を拡大して示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係り、
図1の電磁弁につき、弁座の近傍を拡大して示す断面図。
【
図5】第2実施形態に係り、
図4の電磁弁につき、リング部材の近傍を拡大して示す断面図。
【
図6】第2実施形態に係り、
図4の電磁弁につき、弁座の近傍を拡大して示す断面図。
【
図8】第3実施形態に係り、
図7の電磁弁につき、リング部材の近傍を拡大して示す断面図。
【
図9】第3実施形態に係り、
図7の電磁弁につき、弁座の近傍を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、電磁弁を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[電磁弁の構成について]
図1に、この実施形態の電磁弁1を断面図により示す。この電磁弁1は、通電により磁力を発生するコイル2と、外側にコイル2が配置される略筒状の固定鉄心3と、その固定鉄心3と同軸上で往復動可能に対向する略筒状の可動鉄心4と、固定鉄心3と同軸上に配置され、可動鉄心4の外周を囲繞するように配置される円筒状のヨーク(円筒ヨーク)5とを備える。コイル2は、樹脂製のケーシング6により覆われ、そのケーシング6の外側が磁性材より形成される外郭ヨーク7により覆われる。ケーシング6の一部には、給電用のコネクタ8が設けられる。
【0024】
円筒ヨーク5は、その軸方向に伸びるボア5aを有する。円筒ヨーク5の下端部には、弁体として機能する可動鉄心4の下端部と対向する位置にて可動鉄心4が着座可能な弁座9が配置される。弁座9は、弁孔9aを有し、非磁性材より形成される。可動鉄心4は磁性材より形成され、その軸方向に一端4a(
図1の上端)を有すると共に、中孔4bと中孔4bから弁座9へ向けて貫通する先孔4cを有する。固定鉄心3は、磁性材より形成され、その軸方向に可動鉄心4の一端4aに対向する一端面3a(
図1の下側)を有すると共に、その軸方向に伸びる中孔3bを有する。固定鉄心3と円筒ヨーク5との間には、直接的な磁束結合を阻害する非磁性材より形成されるリング部材10が設けられる。可動鉄心4の上端部と固定鉄心3の下端部との間には、可動鉄心4を弁座9に着座する方向(閉弁方向)へ付勢するスプリング11が設けられる。この電磁弁1は、コイル2への通電時に、各部材3,4,5,7の間で、
図1に破線で示すように磁気回路16が形成される。
【0025】
この電磁弁1は、可動鉄心4を往復動させるために、コイル2の発生する磁力により固定鉄心3が可動鉄心4を軸方向へ吸引するように構成される。すなわち、電磁弁1を開弁させるときは、コイル2の発生する磁力により固定鉄心3が可動鉄心4をスプリング11の付勢力に抗して軸方向へ吸引する。これにより、弁体として機能する可動鉄心4が弁座9から離間(開弁)し、弁孔9aが開放される。この開弁状態では、弁孔9aと、可動鉄心4の中孔4b及び固定鉄心3の中孔3bが互いに連通し、その流路を流体が流れる。電磁弁1を閉弁させるときは、コイル2の磁力発生を停止し、固定鉄心3による可動鉄心4の吸引を停止する。これにより、スプリング11の付勢力により可動鉄心4が弁座9に着座(閉弁)し、弁孔9aが閉塞する。この電磁弁1は、固定鉄心3に対し可動鉄心4を往復動させる点でリニアソレノイドを構成する。
【0026】
図2に、
図1の電磁弁1につき、リング部材10の近傍を拡大した断面図により示す。
図3に、
図1の電磁弁1につき、弁座9の近傍を拡大した断面図により示す。この実施形態では、
図1、
図2に示すように、可動鉄心4は、その一端4aに対応して外径が小さい小外径部4dと外径が大きい大外径部4eを含む。また、リング部材10は、断面凸形状をなし、内径が小さい小内径部10aと内径が大きい大内径部10bとを含み、この小内径部10aと大内径部10bとの間が段差になっている。円筒ヨーク5の上端部と固定鉄心3の一端面3aに対応する下端部は、この段差に組み込まれている。ここで、円筒ヨーク5の外径とリング部材10の外径は同じであるが、円筒ヨーク5のボア5aの内径は、リング部材10の最小内径Dsよりも大きくなっている。これにより、円筒ヨーク5の厚みが、リング部材10の厚みよりも小さくなっている。
【0027】
この実施形態では、
図1、
図3に示すように、弁座9には、その外周近傍に、上方へ伸びる非磁性のスリーブ9bが一体に形成される。このスリーブ9bは、円筒ヨーク5の下端部を非磁性にするために円筒ヨーク5とは別体に形成される。この実施形態で、弁座9のスリーブ9bは、円筒ヨーク5の下端部の内側に組み合わされる。そして、この実施形態では、スリーブ9bの内周が、円筒ヨーク5の内周よりも可動鉄心4の側へ若干張り出しており、可動鉄心4の外周がスリーブ9bにて摺動自在に支持される。
【0028】
この実施形態では、厳密には、可動鉄心4の外周は、リング部材10の小内径部10aと弁座9のスリーブ9bの内周とに接しているだけで、円筒ヨーク5のボア5aの内周には接していない。すなわち、可動鉄心4の外周と円筒ヨーク5のボア5aの内周との間には、微細な隙間が形成されている。
【0029】
[当接制限手段について]
この実施形態の電磁弁1は、固定鉄心3の一端面3aに可動鉄心4の一端4aが面接触すると、コイル2への通電オフ時に可動鉄心4が固定鉄心3から離れ難くなり、可動鉄心4の応答性が悪くなるおそれがある。そこで、この実施形態の電磁弁1は、固定鉄心3の一端面3aと可動鉄心4の一端4aとの当接を制限するための当接制限手段を備える。この実施形態で、当接制限手段は、固定鉄心3、可動鉄心4及び円筒ヨーク7の諸形状を設定することで構成される。
【0030】
この実施形態では、リング部材10の小内径部10aに対応する最小内径Dsが、可動鉄心4の大外径部4eの外径より小さく、小外径部4dの外径より大きくなっており、このことが当接制限手段となっている。これにより、可動鉄心4の小外径部4dと大外径部4eとの間に段差面4fが形成される。この実施形態では、可動鉄心4の小外径部4dがリング部材10の小内径部10aにて摺動自在に支持される。
【0031】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、電磁弁1において、外側にコイル2が配置される固定鉄心3に対し可動鉄心4が同軸上で往復動可能に対向する。また、円筒ヨーク5が、可動鉄心4の外周を囲繞するように、固定鉄心3と同軸上に配置される。そして、電磁弁1は、可動鉄心4を往復動させるために、コイル2の発生する磁力により固定鉄心3が可動鉄心4を軸方向へ吸引するように構成される。ここで、可動鉄心4の一端4aと固定鉄心3の一端面3aは、軸方向において対向するが、固定鉄心3が可動鉄心4を軸方向へ吸引しても、当接制限手段により、可動鉄心4の一端4aと固定鉄心3の一端面3aとの当接が制限される。このため、特に新たな部材を追加することなく、固定鉄心3の一端面3aと可動鉄心4の一端4aとの面接触を規制することができ、コイル2への通電オフ時に可動鉄心4を固定鉄心3から離れ易くすることができ、可動鉄心4につき良好な応答性を得ることができる。
【0032】
この実施形態の構成によれば、当接制限手段は、固定鉄心3と円筒ヨーク5との間に設けられる非磁性のリング部材10の最小内径Dsが、可動鉄心4の大外径部4eの外径より小さく小外径部4dの外径より大きいことである。これにより、可動鉄心4の小外径部4dと大外径部4eとの間に段差面4fが形成される。従って、可動鉄心4が固定鉄心3へ向け移動するとき、その段差面4fが非磁性のリング部材10に当接することで可動鉄心4の移動が規制される。このため、可動鉄心4がリング部材10に当接しても両者4,10の間で磁力作用は無く、可動鉄心4の良好な応答性を向上させることができる。
【0033】
<第2実施形態>
次に、電磁弁を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0034】
[当接制限手段について]
この実施形態では、当接制限手段の構成の点で第1実施形態と異なる。
図4に、この実施形態の電磁弁1を断面図により示す。
図5に、
図4の電磁弁1につき、リング部材10の近傍を拡大した断面図により示す。
図6に、
図4の電磁弁1につき、弁座9の近傍を拡大した断面図により示す。
図4~
図6に示すように、この実施形態では、主として、リング部材10の近傍の構成が、第1実施形態と異なる。ここで、円筒ヨーク5の外径とリング部材10の外径が同じに、円筒ヨーク5のボア5aの内径とリング部材10の最小内径Dsがほぼ同じになっている。これにより、円筒ヨーク5の厚みが、リング部材10の厚みとほぼ同じになっている。
【0035】
この実施形態では、固定鉄心3は、その一端面3aに対応する一端部に、内径が一端面3aの外縁の径より大きい大内径部3cを含む。ここで、一端面3aの「外縁」とは、
図5に示す平坦な一端面3aの外側(
図5において右側)の縁を意味する。また、可動鉄心4の一端4aは、固定鉄心3の大内径部3cの内径より小さく一端面3aの外縁の径より大きい外径を有する。そして、固定鉄心3の一端面3aの外縁と大内径部3cとの間には、可動鉄心4の一端4aへ向かって固定鉄心3の内径が拡大する拡径内面3dが設けられ、このことが当接制限手段となっている。この実施形態で、拡径内面3dは、テーパ形状を有する。そして、可動鉄心4の移動に伴い、その一端4aが拡径内面3dに当接可能となっている。この実施形態では、可動鉄心4の大外径部4eがリング部材10の小内径部10aにて摺動自在に支持される。
【0036】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、第1実施形態と異なり、当接制限手段は、固定鉄心3の一端面3aの外縁と大内径部3cとの間に設けられ、可動鉄心の一端4aへ向かって固定鉄心3の内径が拡大する拡径内面3dである。従って、可動鉄心4が固定鉄心3へ向け移動するとき、可動鉄心4の一端4aが固定鉄心3の拡径内面3dに当接することで可動鉄心4の移動が規制される。このため、可動鉄心4の一端4aが固定鉄心3の拡径内面3dに当接しても両者4a,3dが線接触となるので、可動鉄心4の良好な応答性を確保することができる。
【0037】
この実施形態の構成によれば、テーパ形状を有する拡径内面3dの形成が比較的簡易となる。このため、固定鉄心3の製造コストを低減することができる。
【0038】
<第3実施形態>
次に、電磁弁を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
[当接制限手段について]
この実施形態では、当接制限手段の構成の点で前記各実施形態と異なる。
図7に、この実施形態の電磁弁1を断面図により示す。
図8に、
図7の電磁弁1につき、リング部材10の近傍を拡大した断面図により示す。
図9に、
図7の電磁弁1につき、弁座9の近傍を拡大した断面図により示す。
図7~
図9に示すように、この実施形態では、主として、リング部材10の近傍及び弁座9の近傍の構成が、第2実施形態と異なる。ここで、固定鉄心3の一端面3aは平坦面をなすが、その一端面3aの外縁と大内径部3cとの間には、第2実施形態の拡径内面3dは設けられていない。また、円筒ヨーク5の外径とリング部材10の外径とが同じに、円筒ヨーク5のボア5aの内径とリング部材10の最小内径Dsとがほぼ同じになっている。これにより、円筒ヨーク5の厚みが、リング部材10の厚みとほぼ同じになっている。また、この実施形態では、弁座9のスリーブ9bの厚みが、第2実施形態のスリーブ9bの厚みよりも小さくなっている。これにより、円筒ヨーク5のボア5aの端縁とスリーブ9bとの間に円筒ヨーク5の段差面5dが露出している。
【0040】
この実施形態では、可動鉄心4は、その軸方向において一端4aの反対側に他端4gを含み、その他端4gに対応して外径が小さい小外径部4hと外径が大きい大外径部4iを含む。また、円筒ヨーク5は、可動鉄心4の他端4gに対応して内径が小さい小内径部5bと内径が大きい大内径部5cを含む。そして、可動鉄心4の大外径部4iが、円筒ヨーク5の小内径部5bの内径より大きくかつ大内径部5cの内径より小さい外径を有し、このことが当接制限手段となっている。これにより、可動鉄心4の小外径部4hと大外径部4iとの間に段差面4jが形成され、円筒ヨーク5の小内径部5bと大内径部5cとの間にも段差面5dが形成される。この実施形態では、可動鉄心4の段差面4jはテーパ形状を有し、円筒ヨーク5の段差面5dは平坦形状となっている。この実施形態では、可動鉄心4の大外径部4iがスリーブ9bの内周にて摺動自在に支持される。
【0041】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、前記各実施形態とは異なり次のような作用及び効果を有する。すなわち、この実施形態で、当接制限手段は、可動鉄心4の一端4aの反対側の他端4gに対応し、小外径部4hより外径が大きい大外径部4iが、円筒ヨーク5の小内径部5bの内径より大きくかつ大内径部5cの内径より小さい外径を有することである。これにより、可動鉄心4の小外径部4hと大外径部4iとの間に段差面4jが形成され、円筒ヨーク5の小内径部5bと大内径部5cとの間にも段差面5dが形成される。従って、可動鉄心4が固定鉄心3へ向け移動するとき、可動鉄心4の他端4gの対応部位において、その段差面4jが円筒ヨーク5の段差面5dに当接することで可動鉄心4の移動が規制される。このため、可動鉄心4の一端4aと固定鉄心3の一端面3aとの間に当接制限手段を設ける必要がないので、可動鉄心4の一端4aと固定鉄心3の一端面3aとの最近接距離を、磁力の特性を生かして最適化することができる。
【0042】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0043】
(1)前記第2実施形態では、固定鉄心3の拡径内面3dをテーパ形状に形成したが、この拡径内面を湾曲形状に形成することもできる。
【0044】
(2)前記第3実施形態では、可動鉄心4の段差面4jをテーパ形状に、円筒ヨーク5の段差面5dを平坦形状に形成したが、可動鉄心の段差面を平坦形状に、円筒ヨークの段差面をテーパ形状に形成したり、可動鉄心の段差面と円筒ヨークの段差面をそれぞれ平坦形状に形成したりすることもできる。
【0045】
(3)前記各実施形態では、電磁弁1に、弁体として機能する可動鉄心4に対応した弁座9を設けたが、この弁座を持たない電磁弁に具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この開示技術は、流体流量を制御するために使用されるリニアソレノイドタイプの電磁弁に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 電磁弁
2 コイル
3 固定鉄心
3a 一端面
3c 大内径部
3d 拡径内面
4 可動鉄心
4a 一端
4d 小外径部
4e 大外径部
4g 他端
4h 小外径部
4i 大外径部
5 円筒ヨーク
5b 小内径部
5c 大内径部
10 リング部材
10a 小内径部
Ds 最小内径(リング部材の)