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特開2023-173757賃貸契約意思決定支援システム、賃貸契約意思決定支援方法及び計算サーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173757
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】賃貸契約意思決定支援システム、賃貸契約意思決定支援方法及び計算サーバ
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20120101AFI20231130BHJP
【FI】
G06Q50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086227
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 朝規
(72)【発明者】
【氏名】高田 芽衣
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC28
(57)【要約】
【課題】オフィスの再編に関して迅速かつ適切に意思決定する。
【解決手段】本発明の賃貸契約意思決定支援システムは、不動産を管理するデータ管理者が管理する物件情報、及び、前記不動産を分析するデータ分析者が前記物件情報を分析した結果である分析サマリが記憶されているデータベースサーバと、前記物件情報に基づき、前記不動産の賃借に係る経済性を算出し、前記算出した経済性に基づく新たな前記分析サマリが前記データベースサーバに記憶されたことを、前記不動産に係る賃貸契約の権限者である意思決定者に通知し、前記新たな分析サマリを前記意思決定者に提示する計算サーバと、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産を管理するデータ管理者が管理する物件情報、及び、前記不動産を分析するデータ分析者が前記物件情報を分析した結果である分析サマリが記憶されているデータベースサーバと、
前記物件情報に基づき、前記不動産の賃借に係る経済性を算出し、
前記算出した経済性に基づく新たな前記分析サマリが前記データベースサーバに記憶されたことを、前記不動産に係る賃貸契約の権限者である意思決定者に通知し、
前記新たな分析サマリを前記意思決定者に提示する計算サーバと、
を備えることを特徴とする賃貸契約意思決定支援システム。
【請求項2】
前記計算サーバは、
前記不動産の実際の賃料と当該不動産の賃料の推定値との差を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の賃貸契約意思決定支援システム。
【請求項3】
前記計算サーバは、
前記不動産の実際の賃料と当該不動産の賃料の推定値との差に対し閾値を適用することによって、前記不動産を評価すること、
を特徴とする請求項2に記載の賃貸契約意思決定支援システム。
【請求項4】
前記計算サーバは、
前記不動産の賃料の平均値及び標準偏差を算出することによって前記不動産を評価すること、
を特徴とする請求項3に記載の賃貸契約意思決定支援システム。
【請求項5】
前記計算サーバは、
前記不動産の賃借に係る経済性及び前記経済性に適用される閾値との関係を図形で提示すること、
を特徴とする請求項4に記載の賃貸契約意思決定支援システム。
【請求項6】
前記計算サーバは、
同一の前記分析サマリにおいて、複数の前記不動産を評価すること、
を特徴とする請求項5記載の賃貸契約意思決定支援システム。
【請求項7】
前記計算サーバは、
同一の前記分析サマリにおいて、賃料が他に比して高い不動産及び低い不動産を表示すること、
を特徴とする請求項6記載の賃貸契約意思決定支援システム。
【請求項8】
不動産を管理するデータ管理者が管理する物件情報、及び、前記不動産を分析するデータ分析者が前記物件情報を分析した結果である分析サマリが記憶されているデータベースサーバと通信可能な計算サーバが、
前記物件情報に基づき、前記不動産の賃借に係る経済性を算出し、
前記算出した経済性に基づく新たな前記分析サマリが前記データベースサーバに記憶されたことを、前記不動産に係る賃貸契約の権限者である意思決定者に通知し、
前記新たな分析サマリを前記意思決定者に提示すること、
を特徴とする賃貸契約意思決定支援方法。
【請求項9】
不動産を管理するデータ管理者が管理する物件情報、及び、前記不動産を分析するデータ分析者が前記物件情報を分析した結果である分析サマリが記憶されているデータベースサーバと通信可能であり、
前記物件情報に基づき、前記不動産の賃借に係る経済性を算出し、
前記算出した経済性に基づく新たな前記分析サマリが前記データベースサーバに記憶されたことを、前記不動産に係る賃貸契約の権限者である意思決定者に通知し、
前記新たな分析サマリを前記意思決定者に提示すること、
を特徴とする計算サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賃貸契約意思決定支援システム、賃貸契約意思決定支援方法及び計算サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
ICT(Information and Communication Technology)技術の発展と普及に伴って、データを蓄積し分析する技術が様々な分野において活用されている。不動産分野においてもその影響は如実に表れており、これらを組み合わせたものはReTech(不動産テック)と呼ばれている。提供されているサービスは、物件の貸し手と借り手とのマッチングを補助するサービス、統計的手法を用いた物件の賃料及び価格の推定サービス、VR(Virtual Reality)・AR(Augmented Reality)技術を用いたバーチャル空間での内見サービス等、多種多様である。
【0003】
一方で、働き方改革や新型コロナウイルス感染症によってテレワークが普及し、従業員の働き方が変わりつつある。このため多くのオフィスを保有もしくは賃借する企業は、新しい働き方への適応やコストダウンのためにオフィスを再編する必要がある。しかし、企業が多数の物件を賃借・管理する場合、物件に付随する立地や契約面積に代表される情報も多くなり、迅速に意思決定をすることが難しい。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特許文献1がある。特許文献1には、複数の物件情報から、物件の最寄駅を基準とした最寄駅軸、物件の町名を基準とした町名軸、物件の町丁目を基準とした町丁目軸を含む立地に関する要素軸別に相場指標を算出する軸別相場指標算出部と、査定対象となる物件における物件条件を取得し、前記物件条件に対応する前記各軸の相場指標を用いて、軸別の推定価格を算定し、最高値の推定価格を最終推定価格として選定する推定価格算定部と、を備える不動産査定支援システムが記載されている(請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-111162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に代表される土地や不動産等の物件の賃料及び価格を算定する手法では、あくまでも物件に付随する立地や契約面積に代表される情報から賃料及び価格を推定することが目的となっている。特許文献1は、推定された値をオフィスの借り換え等に用いた場合、どのように意思決定をすべきなのかを示してはいない。
前記の通り、企業は賃借によって複数の物件を事業拠点として有している。また管理する物件数に比例して物件に付随する情報は多くなる。このような状況において、推定された賃料までも考慮に入れてオフィスの再編について議論することは、却って考慮すべき情報が増えてしまっていることから、より多くの時間を費やす場合がある。そこで本発明は、オフィスの再編に関して迅速かつ適切に意思決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の賃貸契約意思決定支援システムは、不動産を管理するデータ管理者が管理する物件情報、及び、前記不動産を分析するデータ分析者が前記物件情報を分析した結果である分析サマリが記憶されているデータベースサーバと、前記物件情報に基づき、前記不動産の賃借に係る経済性を算出し、前記算出した経済性に基づく新たな前記分析サマリが前記データベースサーバに記憶されたことを、前記不動産に係る賃貸契約の権限者である意思決定者に通知し、前記新たな分析サマリを前記意思決定者に提示する計算サーバと、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、顧客企業の管理する物件に関する分析コストを低減することが可能であるだけでなく、データの分析者、管理者、意思決定者を一つのシステムで結びつけることで、オフィスの再編に関して迅速かつ適切な意思決定を実現できる。前記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の賃貸契約意思決定支援システムによるソリューションコンセプトを示す図である。
図2】本実施例の賃貸契約意思決定支援システムと顧客企業との関係を示す図である。
図3】本実施例のWebサーバ等の物理的な構成を示すブロック図である。
図4】本実施例の賃貸契約の意思決定支援システムの論理的な構成を示すブロック図である。
図5】本実施例の物件情報の構成例を示す図である。
図6】本実施例の分析サマリの構成例を示す図である。
図7】本実施例の通知先情報の構成例を示す図である。
図8】本実施例の賃貸契約意思決定支援システムによる処理のシーケンス図である。
図9】本実施例の分析・可視化処理のフローチャートである。
図10】本実施例の閾値算出処理のフローチャートである。
図11】本実施例の分析サマリ保存処理のフローチャートである。
図12】本実施例の他の情報を結合された物件情報の例を示す図である。
図13】本実施例の散布図の例を示す図である。
図14】本実施例の分析サマリの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、賃貸契約意思決定支援システムによるソリューションコンセプトを示す図である。本実施例の賃貸契約意思決定支援システム100は、前記した課題を解決するために、以下の手順で処理を実行する。なお、賃貸契約意思決定支援方法は、後記する計算サーバ500が処理を行う方法である。
【0011】
(1)顧客企業(賃借主体)のデータ管理者が自社の事業拠点に関するデータを、Webサーバ(ウエブサーバ)400を介してデータベースサーバ600にアップロードする。データの管理をデータベースサーバ600上で一元化することによって管理の手間を削減できるとともに、共通のフォーマットでデータを管理することで顧客企業のデータ分析者が容易にデータを分析する事ができる。
(2)データベースサーバ600にアップロードされたデータを、顧客企業のデータ分析者がWebサーバ400を介して計算サーバ500上で分析する。これによってデータ分析者は、データ分析を行うための開発環境を整備する必要がなくなり、自身の仕事量を低減できる。
【0012】
(3)データ分析者の判断の下で、事業拠点に関する分析内容は、予めテンプレートが用意された分析サマリとしてデータベースサーバ600に保存される。これによりデータ分析者は分析内容に関して資料を作成する必要がなくなり、自身の仕事量を低減できる。
(4)Webサーバ400を介して顧客企業の意思決定者が、データベースサーバ600に保存された分析サマリを閲覧する。分析サマリ上に、物件に関するデータ、分析結果、及び、データ分析者のコメントが記載されているため、意思決定者は、他の情報を参照することなく、事業拠点の移転や集約に関して意思決定できる。また、データ分析者が異なる場合でも同一フォーマットで分析サマリが表示されるため、意思決定者は、分析サマリを比較しやすい。
【0013】
このように、本実施例の賃貸契約意思決定支援システムは、数多く存在する顧客企業の事業拠点の中から、経済的又は非経済的な物件を半自動的にフィルタリングし、理解しやすい分析サマリにまとめて表示する。このことによって、本実施例の賃貸契約意思決定支援システムは、合理的かつ納得感のある移転方針を顧客企業のデータ分析者が、移転に関する意思決定者に提供することを可能にする。
【0014】
図2は、本実施例の賃貸契約意思決定支援システムと顧客企業との関係を示す図である。本実施例の賃貸契約意思決定支援システム100は、顧客企業のデータ分析者、データ管理者及び意思決定者がそれぞれ使用する端末装置300とネットワーク200を介して接続されている。
【0015】
賃貸契約意思決定支援システム100は、顧客企業のデータ分析者、データ管理者及び意思決定者らから端末装置300を介して要求された内容に応じて、後記する賃貸契約意思決定支援システムのための演算処理を実行する。そして、賃貸契約意思決定支援システム100は、意思決定に必要となる分析結果や後記する分析サマリを顧客企業のデータ分析者、データ管理者及び意思決定者らに提示する。
【0016】
また、賃貸契約意思決定支援システム100は、顧客企業のデータ管理者が賃貸契約意思決定支援システム100に入力した企業財務情報、物件情報、及び、顧客企業のデータ分析者が入力した分析サマリの保存を行う。そして、賃貸契約意思決定支援システム100は、顧客企業のデータ分析者、データ管理者及び意思決定者らから端末装置300を介して要求された内容に応じて、保存された各情報を変更、削除する。
【0017】
端末装置300は、顧客企業のデータ分析者、データ管理者及び意思決定者が使用する計算機であり、賃貸契約意思決定支援システムのための演算処理の条件の入力を受け付け、演算処理の結果を表示する。
【0018】
図3は、本実施例のWebサーバ400等の物理的な構成を示すブロック図である。端末装置300、計算サーバ500及びデータベースサーバ600も同じ構成を有する。
【0019】
(Webサーバ)
本実施例のWebサーバ400は、プロセッサ(CPU、Central Processing Unit))1、メモリ2、補助記憶装置3及び通信インターフェース(I/F)4を有する計算機によって構成される。Webサーバ400は、入力インターフェース(I/F)5及び出力インターフェース(I/F)6を有してもよい。
【0020】
プロセッサ1は、メモリ2に格納されたプログラムを実行する演算装置であり、プログラムとしてのサマリ読取部401、サイト描画部402、変更通知部403、応答部404(図4参照)を構成する。プロセッサ1が、各種プログラムを実行することによって、Webサーバ400の各機能部(例えば、サマリ読取部401等)による機能が実現される。なお、プロセッサ1がプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウエア)が実行してもよい。
【0021】
メモリ2は、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)及び揮発性の記憶素子であるRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS、Basic Input Output System)等を格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサ1が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0022】
補助記憶装置3は、例えば、磁気記憶装置(HDD、Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ(SSD、Solid state drive)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、サマリ読取部401、サイト描画部402、変更通知部403、応答部404(図4参照)を記憶する。
【0023】
通信インターフェース(I/F)4は、所定のプロトコルに従って、他の装置(例えば、端末装置300)との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
入力インターフェース(I/F)5は、キーボード7やマウス8等の入力装置を介してオペレータからの入力を受けるインターフェースである。
出力インターフェース6は、ディスプレイ装置9やプリンタ(図示せず)等の出力装置を介してプログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力するインターフェースである。なお、賃貸契約意思決定支援システム100にネットワーク200を介して接続された端末装置300が入力装置及び出力装置を提供してもよい。
【0024】
プロセッサ1が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリ等)又はネットワーク200を介して賃貸契約意思決定支援システム100に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置3に格納される。このため、賃貸契約意思決定支援システム100は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0025】
(計算サーバ及びデータベースサーバ)
以上では、Webサーバ400の物理的な構成を説明したが、計算サーバ500及びデータベースサーバ600の物理的構成も同様である。
ただし、データベースサーバ600の補助記憶装置3は、物件情報601、分析サマリ602、通知先情報603、企業財務情報604(図4参照)を記憶する。
計算サーバ500の補助記憶装置3は、計算サーバ500のプロセッサ1が実行するプログラム(物件情報読取部501他、図4参照)を記憶する。計算サーバ500のプロセッサ1は、当該プログラムを実行するに際し、データベースサーバ600の補助記憶装置3から、物件情報601、分析サマリ602、通知先情報603及び企業財務情報604を読み出す。
【0026】
すなわち、Webサーバ400、計算サーバ500及びデータベースサーバ600のそれぞれにおいて、プログラムは、補助記憶装置3から読み出されて、メモリ2にロードされて、プロセッサ1によって実行されることによって、賃貸契約意思決定支援システムの各機能を実現する。
【0027】
賃貸契約意思決定支援システム100は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。意思決定支援システム100は、クラウド上に構成されてもよいし、オンプレミス(自社保有)として特定の計算機(ハードウェア)上に構成されてもよい。
【0028】
図4は、本実施例の賃貸契約意思決定支援システム100の論理的な構成を示すブロック図である。契約意思決定支援システム100は、Webサーバ400、計算サーバ500及びデータベースサーバ600を有する。
【0029】
Webサーバ400は、サマリ読取部401、サイト描画部402、変更通知部403、及び、応答部404を有する。
【0030】
サマリ読取部401は、参照したい分析サマリ602に関する入力を受け、データベースサーバ600から同サーバに保存されている分析サマリ602を読み取る。
サイト描画部402は、サマリ読取部401によって読み取られた分析サマリ602を結果画面に表示するための表示データを生成する(図12図13参照)。
【0031】
変更通知部403は、顧客企業のデータ分析者及びデータ管理者によってデータベースサーバ600の分析サマリ602が変更された場合に、通知先情報603に記録されているメールアドレスを参照して、顧客企業の意思決定者に電子メールで通知する。なお、変更通知部403は、電子メールに限らず他の連絡方法(例えば、SMS(Short Message Service)、Line等のSNS(Social Networking Service))で通知してもよい。
【0032】
応答部404は、端末装置300からの入力を受け、入力内容に従ってサマリ読取部401を実行するほか、必要に応じて計算サーバ500及びデータベースサーバ600と通信部700(図示せず)を介して通信し、各サーバに搭載されている機能を実行する。
【0033】
計算サーバ500は、物件情報読取部501、変数選択部502、推定部503、指標算出部504、閾値算出部505、表・グラフ描画部506及び結果提示・送信・コメント記入部507を有する。また、各部は、図8のように処理を行い、データの読み込みから推定、散布図の描画、分析サマリ602の作成・保存を実行する。
【0034】
物件情報読取部501は、データベースサーバ600と通信部700を介して通信し、応答部404が端末装置300から受け取った推定の対象となり得る「物件ID」(図5参照)をもとに当該物件IDに関連付けられた情報だけを物件情報601から抽出し、読み取る。
【0035】
変数選択部502は、物件情報読取部501が読み取った物件情報601に記載されている列から、推定部503が回帰分析の目的変数とする列のみを選択する。変数選択部502は、応答部404が端末装置300から受け取った入力情報に基づき、当該選択を実行するが、「月額賃料[円]」を必ず選択するものとする。変数選択部502は、物件情報読取部501が読み取った物件情報601から、変数選択部502が選択しなかった列を削除する。また、変数選択部502は、任意の列に対して対数変換等の数理的な変換を施してもよい。
【0036】
推定部503は、変数選択部502が処理(選択)した物件情報601の列「月額賃料[円]」を目的変数とし、その他の列を説明変数として回帰分析を実行し、月額賃料の推定値を求める。推定部503が実行する回帰分析は、統計学の回帰分析でも、機械学習やディープラーニングでもよい。
【0037】
指標算出部504は、変数選択部502が処理した物件情報601の列「月額賃料[円]」と推定部503が推定した月額賃料を用いて決定係数を算出する。決定係数とは、例えば、変数選択部502が処理した物件情報601の列における「月額賃料[円]」を推定部503が推定した月額賃料で除算した値である。換言すれば、決定係数は、実際に提示されている賃料(実績値)を推定値(理論値)で除算した値である。
【0038】
また、指標算出部504は、算出された決定係数の値を端末装置300に提示し、推定をやり直すか否かを顧客企業のデータ分析者に問う。その他にも、指標算出部504は、各々の物件に対して「月額賃料[円]」と推定部503によって推定された月額賃料の差を「契約面積[m2]」によって除算し、「単位面積当たりの賃料偏差[円/m2]」を算出する。指標算出部504は、データ分析者が分析する対象として、決定係数以外の指標を算出してもよい。
【0039】
閾値算出部505は、閾値の算出処理(図9のステップS807他)を実行し、変数選択部502が処理した物件情報601の列「契約面積[m2]」及び指標算出部504が算出した「単位面積当たりの賃料偏差」のそれぞれについて閾値を算出する。閾値算出部505は、それぞれの平均及び標準偏差を使用して閾値を算出してもよいし、それ以外の方法で閾値を算出してもよい。以降では、主として、平均及び標準偏差を使用する場合を説明する。閾値算出部505は、「単位面積当たりの賃料偏差」の平均及び標準偏差を算出するだけでなく、実際の月額賃料そのものの平均及び標準偏差を算出してもよい。
【0040】
閾値算出部505は、「契約面積[m2]」の値が「平均-係数×標準偏差」以下であれば「狭い」を、「平均+係数×標準偏差」以上であれば「広い」を、これら以外であれば「平均的」を、物件情報601の物件IDのそれぞれに結合し、表形式で出力する(図6参照)。ここでの係数は、標準偏差に対して乗算される所定の定数であり、前記した決定係数とは別の概念である。
【0041】
同様に、閾値算出部505は、「単位面積当たりの賃料偏差」の値が「平均-係数×標準偏差」以下であれば「割安」を、「平均+係数×標準偏差」以上であれば「割高」を、これら以外であれば「平均的」を、物件情報601の物件IDのそれぞれに結合し、表形式で出力する(図6参照)。閾値算出部505は、出力されたグラフ・表を分析サマリ602として一時的に保存する。
【0042】
なお、閾値算出部505は、「契約面積[m2]」の標準偏差に対して乗算される定数として、2つの係数を適用して、「かなり狭い、やや狭い、平均的、やや広い、かなり広い」のような5段階評価をしてもよい。同様に、閾値算出部505は、「単位面積当たりの賃料偏差」の標準偏差に対して乗算される定数として、2つの係数を適用して、「かなり割安、やや割安、平均的、やや割高、かなり割高」のような5段階評価をしてもよい。
さらに、閾値算出部505は、係数を3つ以上にして顧客企業のデータ分析者が事前に設定した任意の評価基準を用いてもよい。また、閾値算出部505に入力される値は、「契約面積[m2]」と「単位面積当たりの賃料偏差」だけでなく、物件情報601に記載された他の値であってもよい。なお、“不動産を評価する”とは、ある不動産の特徴を他の不動産との比較において表現することである。
【0043】
表・グラフ描画部506は、指標算出部504が各物件について算出している「単位面積当たりの賃料偏差」を、変数選択部502が処理した物件情報601に、物件IDに基づいて結合する(図5図12参照)。表・グラフ描画部506は、その他にも、変数選択部502が処理した物件情報601の「契約面積[m2]」を横軸に、指標算出部504が算出した「単位面積当たりの推定偏差」を縦軸に取ることで物件の散布図(図13参照)を描画する。表・グラフ描画部506は、結合された物件情報601を顧客企業のデータ分析者の端末装置300に出力する。
【0044】
表・グラフ描画部506は、図13に示すように、閾値算出部505が算出した閾値を散布図に重畳して表示する(縦横の破線)。このとき、表・グラフ描画部506は、閾値を表す直線の太さ、色や種類を変えて表示してもよい。また、表・グラフ描画部506は、図13に示す画面に、横軸の値を切り替えるための操作領域(タブ)を設けるとよい。
【0045】
また、表・グラフ描画部506は、表示された散布図に対する操作を、端末装置300を介して受け付けることができ、散布図上のマーカー(●)に対する選択を受け付けることで任意の物件に関する物件情報601を参照できる。さらに、表・グラフ描画部506は、各物件の分析に含める必要のない物件を散布図から除外し、改めて散布図を描画することができる。
【0046】
結果提示・送信・コメント記入部507は、表・グラフ描画部506がデータベースサーバ600に一時的に保存しているグラフと表を端末装置300に分析サマリ602として提示する(図14参照)。
【0047】
図14で示すように、分析サマリ602は、散布図、分析全体へのコメント、分析対象となった物件一覧、複数の物件へのコメント、特に、割高(賃料が他に比して高い)と考えられる物件へのコメント、割安(賃料が他に比して低い)と考えられる物件へのコメントを同一画面上に表示する。分析サマリ602には、分析を行った日付と分析を担当した者の名称が記載される。
【0048】
また、顧客企業のデータ分析者が内容を保存するための操作領域(ボタン)を設けることが好ましい。さらに、端末装置300から分析サマリ602に記載されている散布図を操作することができ、任意物件のマーカーの色、形及び大きさを変更できるほか、横軸の値を切り替えるための操作領域(タブ)を設けることが好ましい。
【0049】
分析サマリ602で、分析対象となった物件一覧から、物件に関する分析の結果を表形式で参照することができる。図14に記載されている内容に限らず、分析サマリ602(図6参照)に記載されている情報を表形式で表示できることが好ましい。また、提示された内容について顧客企業のデータ分析者が分析サマリ602の保存を行う場合は、分析サマリ602の保存処理(図11参照)を実行し、分析サマリ602をデータベースサーバ600に保存する。
【0050】
データベースサーバ600は、物件情報601、分析サマリ602、通知先情報603及び企業財務情報604を格納する。
物件情報601は、顧客企業が管理している物件の属性に関する情報であり、その詳細は図5を参照して説明する。
分析サマリ602は、結果提示・送信・コメント記入部507が保存した分析結果とその内容に対するコメントの情報であり、その詳細は図14を参照して説明する。
通知先情報603は、変更通知部403が顧客企業の意思決定者に対して通知を行う際の連絡先に関する情報であり、その詳細は図7を参照して説明する。
企業財務情報604は、顧客企業の資産、収益、キャッシュフロー等の状態を示す任意の情報である。
【0051】
図5は、本実施例の物件情報601の構成例を示す図である。物件情報601は、顧客企業の管理する物件に関する情報を記録し、顧客企業ごとに設けられる。また物件情報601は、物件ID、物件名称、月額賃料[円]、共益費[円]、契約面積[m2]、契約開始日、契約終了日、建築年及び最寄り駅までの距離[m]のデータを含む。
【0052】
拠点IDは、顧客企業の事業拠点を一意に識別する識別情報である。
物件名称は、顧客企業の事業拠点に与えられた呼称である。
月額賃料[円]は、当該物件毎の月額賃料である。
共益費[円]は、当該物件毎の月額共益費である。
契約面積[m2]は当該物件毎の契約面積である。
【0053】
契約開始日は、賃貸契約を締結した日であり、西暦で年月日の全てを記載する。
契約終了日は、賃貸契約が満了する日であり、西暦で年月日の全てを記載する。
建築年は、当該物件毎の竣工年であり、西暦で年を記載する。
最寄り駅までの距離[m]は、当該物件毎の当該物件から最寄り駅までの距離である。
なお、物件情報601は、前記の他に住所、郵便番号のデータを含んでもよい。
【0054】
月額賃料、共益費、契約面積、建築年及び最寄り駅までの距離は、前記したように物件情報を構成するが、顧客企業の収益性に影響を及ぼすという意味で、不動産の賃貸に係る経済性(経済性の情報)の一例でもある。不動産の賃貸に係る経済性は、この他にも、保証金、地方税率、建物構造(火災保険料)、自治会費、従業員通勤費等を含む。
【0055】
図6は、本実施例の分析サマリ602の構成例を示す図である。分析サマリ602は、分析結果に関する情報を記録し、顧客企業の分析結果ごとに設けられる。また分析サマリ602は、分析ID、散布図データ、表データ、分析全体に対するコメント、割高物件に対するコメント、割安物件に対するコメントのデータを含む。
【0056】
分析IDは、分析サマリ602を一意に識別する識別情報である。
散布図データは、散布図を描くための情報を記録する。散布図データは縦軸名、横軸名、物件ID、縦軸の値、横軸の値のデータを含む。
縦軸名は、描画する散布図の縦軸の名称を表す。
横軸名は、描画する散布図の横軸の名称を表す。
物件IDは、顧客企業の事業拠点を一意に識別する識別情報である。
縦軸の値は、描画される当該物件毎の縦軸の値を表す。
横軸の値は、描画される当該物件毎の横軸の値を表す。
【0057】
表データは、表を描くための情報を記載する。表データは、物件ID、物件名称、月額賃料[円]、推定値との偏差[円]、単位面積当たりの賃料偏差[円/m2]、契約面積に対する評価、月額賃料に対する評価のデータを含む。
【0058】
物件IDは、顧客企業の事業拠点を一意に識別する識別情報である。
物件名称は、顧客企業の事業拠点に与えられた呼称である。
月額賃料[円]は、当該物件毎の月額賃料である。
推定値との偏差[円]は、当該物件毎の月額賃料と月額賃料の推定値との差である。
単位面積当たりの賃料偏差[円/m2]は、当該物件毎の月額賃料と月額賃料の推定値との差を契約面積で除算したものである。
契約面積に対する評価は、閾値算出部505によって当該物件毎に結合される「狭い、平均的、広い」や「かなり狭い、やや狭い、平均的、やや広い、かなり広い」という評価を表す。
月額賃料に対する評価は、閾値算出部505によって当該物件毎に結合される「かなり割安、やや割安、平均的、やや割高、かなり割高」という評価を表す。
【0059】
分析全体に対するコメントは、顧客企業のデータ分析者が、分析内容全体に関して考察した文章である。
割高物件に対するコメントは、顧客企業のデータ分析者が、割高であると考えられる物件に対して考察した文章である。
割安物件に対するコメントは、顧客企業のデータ分析者が、割安であると考えられる物件に対して考察した文章である。
【0060】
図7は、本実施例の通知先情報603の構成例を示す図である。通知先情報603は、顧客企業の意思決定者の連絡先に関する情報を記録し、顧客企業ごとに設けられる。また通知先情報603は、ユーザID、メールアドレス、氏名のデータを含む。ユーザIDは、顧客企業の意思決定者を一意に識別する識別情報である。なお、通知先情報603は、前記の他にSNSのアカウント、電話番号等のデータを含んでもよい。
【0061】
図8は、本実施例の賃貸契約意思決定支援システムによる処理のシーケンス図である。
ステップS701において、顧客企業のデータ管理者の端末装置300は、データ管理者が物件情報601を入力するのを受け付ける。賃貸契約意思決定支援システム100は、入力された物件情報601を記録する。
ステップS702において、顧客企業のデータ分析者の端末装置300は、データ分析者が物件情報601の分析のための操作を行うのを受け付ける。このとき、賃貸契約意思決定支援システム100は、入力された物件情報601を用いて分析を実行する。
【0062】
ステップS703において、賃貸契約意思決定支援システム100は、分析結果を顧客企業のデータ分析者の端末装置300に提供する。
ステップS704において、顧客企業のデータ分析者が分析サマリ602を保存する場合、データ分析者の端末装置300は、その旨の操作を受け付ける。賃貸契約意思決定支援システム100は、分析サマリ602を保存する。ここでは、ある分析サマリ602が保存されたとして説明を続ける。
【0063】
ステップS705において、賃貸契約意思決定支援システム100は、分析サマリ602が保存された旨を、顧客企業の意思決定者の端末装置300に通知する。
ステップS706において、顧客企業の意思決定者の端末装置300は、賃貸契約意思決定支援システム100に対し、保存されている分析サマリ602の提示を要求する。
ステップS707において、意思決定支援システム100は、要求された分析サマリ602を顧客企業の意思決定者の端末装置300に提供する。
【0064】
図8から明らかなように、オフィスビルを含む複数の不動産を利用(賃借)する顧客企業には、不動産に関する情報を管理するデータ管理者、不動産に関する統計的な分析を行うデータ管理者、及び、不動産の賃貸契約を賃借者の立場で締結・解約する権限を有する意思決定者が属する。そして、賃貸契約意思決定支援システム100は、これらの者を相互に結び付ける。
【0065】
図9は、計算サーバ500が実行する本実施例の分析・可視化処理のフローチャートである。
【0066】
ステップS800において、物件情報読取部501は、収集された物件情報601を読み取る。
ステップS801において、変数選択部502は、物件情報601に記載された列のうち、以降の分析で利用するものを顧客企業のデータ分析者が選択するのを受け付ける。
ステップS802において、推定部503は、選択された変数(物件情報601の列)を用いて物件の月額賃料を推定する。
【0067】
ステップS803において、指標算出部504は、推定部503が算出した値の実際の賃料に対する当てはまりの良さを示す評価指標(決定係数)を算出し提示する。推定された月額賃料に実際の月額賃料が完全に一致する場合、決定係数は、「1.0」となる。
ステップS804において、指標算出部504は、各々の物件に対して月額賃料と推定された月額賃料の差を求める。
ステップS805において、指標算出部504は、推定された月額賃料の差を契約面積によって除算し、単位面積当たりの賃料偏差を算出する。
【0068】
ステップS806において、指標算出部504は、算出された指標(単位面積当たりの賃料偏差)を顧客企業のデータ分析者に提示する。このとき、顧客企業のデータ分析者は、指標算出部504によって提示された指標をもとに、推定値(推定された月額賃料)が妥当であるかを判断する。指標算出部504は、判断の結果を受け付ける。指標算出部504は、判断の結果が「妥当である」である場合(ステップS806“Yes”)、ステップS807に進み、それ以外の場合(ステップS806“Nо”)、ステップS801に戻る。
【0069】
ステップS807において、閾値算出部505は、閾値の算出を行う。ステップS807の詳細を、図10の説明として後記する。
ステップS808において、表・グラフ描画部506は、以上の手続きによって算出された値をもとに表の作成および散布図の描画を行い、顧客企業のデータ分析者の端末装置300に表と散布図を提示する。散布図には、閾値が表示されている(図13の破線)。
【0070】
ステップS809において、顧客企業のデータ分析者は、提示された散布図をもとに分析に含める必要のない物件があるか否かを判断する。表・グラフ描画部506は、判断の結果を受け付ける。表・グラフ描画部506は、判断の結果が「ある」である場合(ステップS809“Yes”)、ステップS810に進み、それ以外の場合(ステップS809“Nо”)、ステップS811に進む。
【0071】
ステップS810において、表・グラフ描画部506は、データ分析者が任意の物件を選択する(除外する)のを受け付ける。その後、ステップS808に戻る。
ステップS811において、結果提示・送信・コメント記入部507は、分析結果を分析サマリ602としてデータ分析者の端末装置300に提示する。
【0072】
ステップS812において、顧客企業のデータ分析者は、以上の分析結果を分析サマリ602として保存するか否かを判断する。結果提示・送信・コメント記入部507は、判断の結果を受け付ける。結果提示・送信・コメント記入部507は、判断の結果が「保存する」である場合(ステップS812“Yes”)、ステップS813に進み、それ以外の場合(ステップS812“Nо”)、分析・可視化処理を終了する。
ステップS813において、結果提示・送信・コメント記入部507は、分析サマリ602をデータベースサーバ600に保存する。ステップS813の詳細を、図11の説明として後記する。その後、分析・可視化処理を終了する。
【0073】
図10は、計算サーバ500の閾値算出部505が実行する本実施例の閾値算出処理のフローチャートであり、図9のステップS807の詳細である。
ステップS900において、顧客企業のデータ分析者は、入力された値(例えば月額賃料)の平均と標準偏差を閾値として利用するか否かを判断する。閾値算出部505は、判断の結果を受け付ける。閾値算出部505は、判断の結果が「利用する」である場合(ステップS900“Yes”)、ステップS901に進み、それ以外の場合(ステップS900“Nо”)、ステップS908に進む。
【0074】
ステップS901において、閾値算出部505は、平均から標準偏差の何倍離れているかを決定する係数をデータ分析者が設定するのを受け付ける。複数個のペアで閾値を求めるために、係数の個数は2つ以上であってもよい。ここでの係数は、例えば「平均±1×標準偏差」及び「平均±2×標準偏差」における「1」及び「2」であり、その個数は、「2」である。
【0075】
ステップS902において、顧客企業のデータ分析者は、入力された値を対数変換するか否かを判断する。閾値算出部505は、判断の結果を受け付ける。閾値算出部505は、判断の結果が「対数変換する」である場合(ステップS902“Yes”)、ステップS903に進み、それ以外の場合(ステップS902“Nо”)、ステップS904に進む。
【0076】
ステップS903において、閾値算出部505は、入力された値を対数変換する。
ステップS904において、閾値算出部505は、平均と標準偏差を算出する。このとき、閾値算出部505は、月額賃料そのものの平均と標準偏差を算出する場合もあり、対数変換された月額賃料の平均と標準偏差を算出する場合もある。
ステップS905において、閾値算出部505は、設定された係数をもとに「平均値±係数×標準偏差」を計算することで閾値をペア(平均値の両側)で算出する。
【0077】
ステップS906において、閾値算出部505は、入力された値を対数変換したか否かを判断する。閾値算出部505は、対数変換した場合(ステップS906“Yes”)、ステップS907に進み、それ以外の場合(ステップS906“Nо”)、閾値算出処理を終了する。
ステップS907において、算出された閾値を逆対数変換する。その後、閾値算出処理を終了する。入力された値(例えば月額賃料)が対数変換されていれば、それに基づいて算出された閾値も対数変換されているからである。
【0078】
ステップS908において、閾値算出部505は、出力する閾値の個数をデータ分析者が設定するのを受け付ける。
ステップS909において、データ分析者は、閾値として分位点を利用するか否かを判断する。閾値算出部505は、判断の結果を受け付ける。閾値算出部505は、判断の結果が「利用する」である場合(ステップS909“Yes”)、ステップS910に進み、それ以外の場合(ステップS909“Nо”)、ステップS911に進む。
【0079】
ステップS910において、閾値算出部505は、データ分析者が、区切りとなる分位点を1又は複数個設定するのを受け付ける。このとき閾値算出部505は、0から1までの数直線上においてデータ分析者が0より大きく1より小さい分位点をマウス等で指定するのを受け付けてもよい。閾値算出部505は、個々の分位点が示すパーセンタイル値を算出する。その後、閾値算出処理を終了する。
ステップS911において、閾値算出部505は、ステップS908において受け付けた個数の任意の閾値をデータ分析者が手動入力するのを受け付ける。その後、閾値算出処理を終了する。
【0080】
図11は、計算サーバ500の結果提示・送信・コメント記入部507が実行する本実施例の分析サマリ保存処理のフローチャートであり、図9のステップS813の詳細である。
【0081】
ステップS1000において、顧客企業のデータ分析者は、結果提示・送信・コメント記入部507が提示した分析サマリ602に対してコメントを記載するか否かを判断する。結果提示・送信・コメント記入部507は、判断の結果を受け付ける。結果提示・送信・コメント記入部507は、判断の結果が「記載する」である場合(ステップS1000“Yes”)、ステップS1001に進み、それ以外の場合(ステップS1000“Nо”)、ステップS1002に進む。
【0082】
ステップS1001において、結果提示・送信・コメント記入部507は、顧客企業のデータ分析者が分析サマリ602に対してコメントを記載するのを受け付ける。
ステップS1002において、顧客企業のデータ分析者は、分析サマリ602を保存する際に、その旨を顧客企業の意思決定者に通知するか否かを判断する。結果提示・送信・コメント記入部507は、判断の結果を受け付ける。結果提示・送信・コメント記入部507は、判断の結果が「通知する」である場合(ステップS1002“Yes”)、ステップS1003に進み、それ以外の場合(ステップS1002“Nо”)、ステップS1004に進む。
【0083】
ステップS1003において、結果提示・送信・コメント記入部507は、データ分析者が通知先情報603(図7)から通知先としてのユーザIDを選択するのを受け付ける。
ステップS1004において、結果提示・送信・コメント記入部507は、分析サマリ602を識別する分析IDを、提示された分析サマリ602に付与する。
ステップS1005において、第1に、結果提示・送信・コメント記入部507は、分析サマリ602をデータベースサーバ600に保存する。
第2に、結果提示・送信・コメント記入部507は、ステップS1003を経由した場合、分析サマリ602が保存された旨を意思決定者に通知する。さらに、意思決定者からの要求があった場合、結果提示・送信・コメント記入部507は、分析サマリ602を意思決定者の端末装置300に提示する。Webサーバ400の変更通知部403が第2の処理を実行してもよい。その後、分析サマリ保存処理を終了する。
【0084】
以上に説明したように、本発明の実施例の賃貸契約意思決定支援システムは、以下の(1)、(2)及び(3)を備える。
【0085】
(1)顧客企業の事業拠点に関するデータを定量的に分析し、相対的に割安もしくは割高な物件を多数の物件の中から抽出し、顧客企業の意思決定者にとって分かりやすい分析サマリ602として出力する計算サーバ500
(2)分析の前後で発生するデータを一挙に格納し、サーバ間のデータのやり取りをスムーズに行うことを可能にするデータベースサーバ600
(3)保存された分析サマリ602を任意の端末装置300に表示することができるWebサーバ400
【0086】
したがって、賃貸契約意思決定支援システムは、事業拠点の移転に関して意思決定にかかる時間を短縮した上で、顧客企業の意思決定者にとって納得感のある移転を、顧客企業のデータ分析者が提案することを可能にする。
【0087】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。また、前記した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウエアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウエアで実現してもよい。
【0088】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。賃貸契約意思決定支援システムを構成する各サーバが、単一の計算機内に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 プロセッサ
2 メモリ
3 補助記憶装置
4 通信インターフェース(I/F)
5 入力インターフェース(I/F)
6 出力インターフェース(I/F)
100 賃貸契約意思決定支援システム
200 ネットワーク
300 端末装置
400 Webサーバ(ウエブサーバ)
401 サマリ読取部
402 サイト描画部
403 変更通知部
404 応答部
500 計算サーバ
501 物件情報読取部
502 変数選択部
503 推定部
504 指標算出部
505 閾値算出部
506 表・グラフ描画部
507 結果提示・送信・コメント記入部
600 データベースサーバ
601 物件情報
602 分析サマリ
603 通知先情報
604 企業財務情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14