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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173773
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】密閉型蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/176 20210101AFI20231130BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231130BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20231130BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/16 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20231130BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20231130BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/176
H01M10/052
H01M10/0566
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/15
H01M50/16
H01M50/55 101
H01M50/553
H01M50/169
H01M50/564
H01M50/533
H01G11/80
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086249
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078EA09
5E078HA05
5E078HA13
5E078HA23
5H011AA09
5H011AA10
5H011AA17
5H011CC02
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF03
5H011FF04
5H029AJ14
5H029AJ15
5H029BJ02
5H029DJ02
5H029DJ05
5H029EJ01
5H029EJ12
5H043AA07
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043CA13
5H043DA02
5H043DA09
5H043DA20
5H043EA13
5H043EA22
5H043HA31D
5H043HA31E
5H043JA01D
5H043JA01E
(57)【要約】
【課題】樹脂蓋体と、樹脂蓋体を貫通してデバイスケースの内部から外部に延出する金属端子部材とを有し、金属端子部材に対して直接に樹脂蓋体が気密に接合された密閉型蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】デバイスケース30は、開口21bを有するケース本体21と、ケース本体21の開口21bを閉塞する蓋体11とを備える。蓋体11は、電気絶縁性の樹脂からなる樹脂蓋体11である。金属端子部材41,45は、樹脂蓋体11を貫通する態様でデバイスケース30の内部から外部に延出している。樹脂蓋体11は、金属端子部材41,45との間に他部材を介在させることなく、金属端子部材41,45の外周面42,46に対して直接に接合する態様で、金属端子部材41,45と気密に一体化して成形されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、電解液と、前記電極体及び前記電解液を収容するデバイスケースと、前記電極体に接続して前記デバイスケースの内部から外部に延出する金属端子部材と、を備える密閉型蓄電デバイスにおいて、
前記デバイスケースは、開口を有するケース本体と、前記ケース本体の前記開口を閉塞する蓋体と、を備え、
前記蓋体は、電気絶縁性の樹脂からなる樹脂蓋体であり、
前記金属端子部材は、前記樹脂蓋体を貫通する態様で前記デバイスケースの内部から外部に延出しており、
前記樹脂蓋体は、前記金属端子部材との間に他部材を介在させることなく、前記金属端子部材の外周面に対して直接に接合する態様で、前記金属端子部材と気密に一体化して成形されている
密閉型蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉型蓄電デバイスであって、
前記金属端子部材の前記外周面は、前記金属端子部材の外周を一周する環状粗化面を有し、
前記樹脂蓋体は、前記金属端子部材の前記環状粗化面の凹部内に当該樹脂蓋体を形成する前記樹脂の一部が入り込む態様で、前記環状粗化面と気密に接合している
密閉型蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の密閉型蓄電デバイスであって、
前記ケース本体は、前記樹脂からなる樹脂ケース本体であり、
前記デバイスケースは、前記樹脂ケース本体と前記樹脂蓋体とが接合された樹脂デバイスケースである
密閉型蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の密閉型蓄電デバイスであって、
前記樹脂は、ポリフェニレンスルファイドまたはポリアリーレンサルファイドである
密閉型蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電極体と、電解液と、前記電極体及び前記電解液を収容する金属製のデバイスケースと、前記電極体に接続して前記デバイスケースの内部から外部に延出する金属端子部材と、を備える密閉型蓄電デバイスが開示されている。デバイスケースは、開口を有する金属ケース本体と、このケース本体の開口を閉塞する金属蓋体と、を備える。金属ケース本体と金属蓋体とは、溶接により一体とされ、デバイスケースを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-041668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属端子部材は、金属蓋体を貫通する態様で、デバイスケースの内部から外部に延出している。この金属端子部材と金属蓋体との間の電気絶縁を確保するため、金属端子部材と金属蓋体との間には、複数の電気絶縁部材を介在させている。さらに、この電気絶縁部材及び金属端子部材を金属蓋体に固定するために、金属端子部材の加締め加工を行っている。
【0005】
しかしながら、上述のような構造の密閉型蓄電デバイスは、部品点数が多く、製造工程数も多くなるため、製造時間が長くなると共に、製造コストも高くなっていた。このため、密閉型蓄電デバイスを簡易に製造するために、蓋体を電気絶縁性の樹脂からなる樹脂蓋体とすることが求められていた。蓋体を電気絶縁性の樹脂蓋体とすることによって、樹脂蓋体を貫通してデバイスケースの内部から外部に延出する金属端子部材と樹脂蓋体との間に、別途、電気絶縁部材を設ける必要がなくなるからである。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、樹脂蓋体と、樹脂蓋体を貫通してデバイスケースの内部から外部に延出する金属端子部材とを有し、金属端子部材に対して直接に樹脂蓋体が気密に接合された密閉型蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、電極体と、電解液と、前記電極体及び前記電解液を収容するデバイスケースと、前記電極体に接続して前記デバイスケースの内部から外部に延出する金属端子部材と、を備える密閉型蓄電デバイスにおいて、前記デバイスケースは、開口を有するケース本体と、前記ケース本体の前記開口を閉塞する蓋体と、を備え、前記蓋体は、電気絶縁性の樹脂からなる樹脂蓋体であり、前記金属端子部材は、前記樹脂蓋体を貫通する態様で前記デバイスケースの内部から外部に延出しており、前記樹脂蓋体は、前記金属端子部材との間に他部材を介在させることなく、前記金属端子部材の外周面に対して直接に接合する態様で、前記金属端子部材と気密に一体化して成形されている密閉型蓄電デバイスである。
【0008】
上述の密閉型蓄電デバイスは、デバイスケースが、電気絶縁性の樹脂からなる樹脂蓋体を有する。さらに、金属端子部材が、この樹脂蓋体を貫通する態様でデバイスケースの内部から外部に延出している。さらに、樹脂蓋体は、金属端子部材との間に他部材を介在させることなく、金属端子部材の外周面に対して直接に接合する態様で、金属端子部材と気密に一体化して成形されている。従って、この密閉型蓄電デバイスは、樹脂蓋体と、樹脂蓋体を貫通してデバイスケースの内部から外部に延出する金属端子部材とを有し、金属端子部材に対して直接に樹脂蓋体が気密に接合された密閉型蓄電デバイスとなる。なお、密閉型蓄電デバイスとしては、密閉型電池や密閉型キャパシタ等を挙げることができる。
【0009】
(2)さらに、前記(1)の密閉型蓄電デバイスであって、前記金属端子部材の前記外周面は、前記金属端子部材の外周を一周する環状粗化面を有し、前記樹脂蓋体は、前記金属端子部材の前記環状粗化面の凹部内に当該樹脂蓋体を形成する前記樹脂の一部が入り込む態様で、前記環状粗化面と気密に接合している密閉型蓄電デバイスとすると良い。
【0010】
上述の密閉型蓄電デバイスでは、金属端子部材の環状粗化面(すなわち、凹凸形状を有する環状粗化面)の凹部内に樹脂蓋体を形成する樹脂の一部が入り込む態様で、樹脂蓋体(詳細には、樹脂蓋体のうち金属端子部材の外周を包囲する部位)が環状粗化面と気密に接合している。換言すれば、金属端子部材の環状粗化面の凸部が、樹脂蓋体(詳細には、樹脂蓋体のうち金属端子部材の外周を包囲する部位)に食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂蓋体が環状粗化面と気密に接合している。これにより、樹脂蓋体と金属端子部材との間の気密性が高くなるので、密閉型蓄電デバイスの気密性を高めることができる。
【0011】
(3)さらに、前記(1)または(2)の密閉型蓄電デバイスであって、前記ケース本体は、前記樹脂からなる樹脂ケース本体であり、前記デバイスケースは、前記樹脂ケース本体と前記樹脂蓋体とが接合された樹脂デバイスケースである密閉型蓄電デバイスとすると良い。
【0012】
上述の密閉型蓄電デバイスでは、デバイスケースを樹脂製のデバイスケースとしているので、デバイスケースを軽量にすることが可能となる。しかも、樹脂デバイスケースを構成する樹脂蓋体と樹脂ケース本体とを、共に、電気絶縁性の樹脂製にしているので、デバイスケース内に収容する電極体とデバイスケースとの間に、両者の電気絶縁性を確保するための電気絶縁性フィルム等の電気絶縁部材を別途設ける必要がない。なお、樹脂ケース本体と樹脂蓋体との接合方法は、例えば、樹脂ケース本体の開口部に樹脂蓋体を熱溶着して、樹脂蓋体によって樹脂ケース本体の開口を気密に封止する方法を挙げることができる。
【0013】
(4)さらに、前記(1)~(3)のいずれかの密閉型蓄電デバイスであって、前記樹脂は、ポリフェニレンスルファイドまたはポリアリーレンサルファイドである密閉型蓄電デバイスとすると良い。
【0014】
上述の密閉型蓄電デバイスは、デバイスケースの樹脂蓋体を形成する樹脂として、ポリフェニレンスルファイド(以下、PPSともいう)またはポリアリーレンサルファイド(以下、PASともいう)を用いている。または、デバイスケースの樹脂蓋体を形成する樹脂、及び、樹脂ケース本体を形成する樹脂として、PPSまたはPASを用いている。PPS及びPASは、水分透過性及び電解液透過性が低く、且つ、耐電解液性も高い樹脂であり、また、射出成形に用いることが可能な樹脂でもある。このため、PPS及びPASは、デバイスケースの樹脂蓋体及び樹脂ケース本体を形成する樹脂として好適である。
【0015】
これに対し、上述の密閉型蓄電デバイスは、PPSまたはPASからなる樹脂蓋体を有する。または、PPSまたはPASからなる樹脂蓋体及び樹脂ケース本体を有する。このため、上述の密閉型蓄電デバイスは、長期間にわたって、電解液成分がデバイスケースを透過しての外部に漏出すること、及び、外部から水分がデバイスケースを透過して内部に侵入することを低減できるので、長期間にわたって安定したデバイス特性を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態にかかる密閉型蓄電デバイスの平面図(上面図)である。
図2】同密閉型蓄電デバイスの正面図である。
図3図1のB-B断面図及びD-D断面図である。
図4図3のC部拡大図及び図6のG部拡大図である。
図5】端子部材付き蓋体(インサート成形品)の平面図である。
図6図5のE-E断面図及びF-F断面図である。
図7】金属端子部材の斜視図である。
図8】金属端子部材の環状粗化面の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の密閉型蓄電デバイス1は、密閉型電池であり、詳細には、リチウムイオン二次電池である。この密閉型蓄電デバイス1は、電極体50と、電解液90と、電極体50及び電解液90を収容するデバイスケース30と、正極端子部材41と、負極端子部材45とを備える(図1図3参照)。
【0018】
このうち、デバイスケース30は、電気絶縁性の樹脂からなるハードケースであり、直方体箱状をなしている。このデバイスケース30は、樹脂デバイスケースであり、角形有底筒状をなす樹脂ケース本体21と、樹脂ケース本体21の開口21bを閉塞する矩形平板状の樹脂蓋体11とを備える(図1図3参照)。樹脂蓋体11及び樹脂ケース本体21は、いずれも、電気絶縁性の樹脂、具体的には、PPS(ポリフェニレンスルファイド)からなる。
【0019】
電極体50は、正極板60と、負極板70と、正極板60と負極板70との間に介在するセパレータ80と、を有する。より具体的には、電極体50は、複数枚の正極板60と、複数枚の負極板70と、複数枚のセパレータ80とを備え、正極板60と負極板70とがセパレータ80を介して、積層方向DLに交互に積層された積層電極体である(図3参照)。なお、電極体50の内部には、電解液90が含まれている。デバイスケース30の内部の底面側にも、電解液90が収容されている。電極体50のうち正極板60は、デバイスケース30の内部において、正極集電タブ(図示なし)を通じて正極端子部材41に接続されている。また、負極板70は、デバイスケース30の内部において、負極集電タブ(図示なし)を通じて負極端子部材45に接続されている。
【0020】
正極端子部材41は、金属端子部材であり、デバイスケース30の内部において、正極集電タブ(図示なし)を通じて電極体50の正極板60に接続している。この正極端子部材41は、樹脂蓋体11をその厚み方向に貫通する態様で、デバイスケース30の内部から外部に延出している(図3参照)。また、負極端子部材45は、金属端子部材であり、デバイスケース30の内部において、負極集電タブ(図示なし)を通じて電極体50の負極板70に接続している。この負極端子部材45は、樹脂蓋体11をその厚み方向に貫通する態様で、デバイスケース30の内部から外部に延出している(図3参照)。
【0021】
樹脂蓋体11は、正極端子部材41との間及び負極端子部材45との間に、他部材を介在させることなく、正極端子部材41の外周面42及び負極端子部材45の外周面46に対して、直接に且つ気密に接合する態様で、正極端子部材41及び負極端子部材45と気密に一体化して成形されている(図3及び図4参照)。従って、密閉型蓄電デバイス1は、樹脂蓋体11と、樹脂蓋体11を貫通してデバイスケース30の内部から外部に延出する金属端子部材(具体的には、正極端子部材41及び負極端子部材45)とを有し、金属端子部材に対して直接に樹脂蓋体11が気密に接合された密閉型蓄電デバイス1となっている。
【0022】
なお、正極端子部材41の外周面42は、第1側面42bと第2側面42cと第3側面42dと第4側面42eとによって構成されている(図7参照)。また、負極端子部材45の外周面46は、第1側面46bと第2側面46cと第3側面46dと第4側面46eとによって構成されている(図7参照)。従って、樹脂蓋体11は、正極端子部材41の第1側面42bと第2側面42cと第3側面42dと第4側面42eとに対して、直接に且つ気密に接合すると共に、負極端子部材45の第1側面46bと第2側面46cと第3側面46dと第4側面46eとに対して、直接に且つ気密に接合している。
【0023】
特に、本実施形態の密閉型蓄電デバイス1では、正極端子部材41の外周面42は、正極端子部材41の外周を一周する環状粗化面44を有している(図7参照)。この環状粗化面44は、凹凸形状を有する環状の粗化面である(図4及び図8参照)。そして、樹脂蓋体11は、正極端子部材41の環状粗化面44の凹部44b内に、当該樹脂蓋体11を形成する樹脂の一部11b(具体的には、樹脂蓋体11のうち正極端子部材41の環状粗化面44を包囲する部位11c)が入り込む態様で、環状粗化面44の全周にわたって環状粗化面44と気密に接合している(図4参照)。換言すれば、正極端子部材41の環状粗化面44の凸部44cが、樹脂蓋体11(詳細には、樹脂蓋体11のうち正極端子部材41の環状粗化面44を包囲する部位11c)に食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂蓋体11が環状粗化面44と気密に接合している。これにより、樹脂蓋体11と正極端子部材41との間の気密性が高くなるので、密閉型蓄電デバイス1の気密性を高めることができる。
【0024】
さらに、負極端子部材45の外周面46も、負極端子部材45の外周を一周する環状粗化面48を有している(図7参照)。この環状粗化面48は、凹凸形状を有する環状の粗化面である(図4及び図8参照)。そして、樹脂蓋体11は、負極端子部材45の環状粗化面48の凹部48b内に、当該樹脂蓋体11を形成する樹脂の一部11b(具体的には、樹脂蓋体11のうち負極端子部材45の環状粗化面48を包囲する部位11d)が入り込む態様で、環状粗化面48の全周にわたって環状粗化面48と気密に接合している(図4参照)。換言すれば、負極端子部材45の環状粗化面48の凸部48cが、樹脂蓋体11(詳細には、樹脂蓋体11のうち負極端子部材45の環状粗化面48を包囲する部位11d)に食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂蓋体11が環状粗化面48と気密に接合している。これにより、樹脂蓋体11と負極端子部材45との間の気密性が高くなるので、密閉型蓄電デバイス1の気密性を高めることができる。
【0025】
なお、環状粗化面44は、正極端子部材41の外周面42に対して、公知の表面粗化処理を行うことによって形成することができる。表面粗化処理としては、例えば、レーザ表面処理、サンドブラスト処理、陽極酸化処理などを挙げることができる。このうち、レーザ表面処理としては、例えば、特開2022-28587号公報に開示されているレーザ表面処理を挙げることができる。なお、本実施形態では、レーザ表面処理によって、正極端子部材41の外周面42の一部(樹脂蓋体11と接触する環状部)を環状粗化面44にしている。なお、負極端子部材45の環状粗化面48についても、正極端子部材41の環状粗化面44と同様に形成することができる。
【0026】
また、正極端子部材41と負極端子部材45と樹脂蓋体11とは、インサート成形によって一体成形されている。具体的には、正極端子部材41と負極端子部材45と樹脂蓋体11とは、インサート成形によって樹脂蓋体11に正極端子部材41と負極端子部材45が一体成形された端子部材付き蓋体10(インサート成形品)を構成している(図5及び図6参照)。
【0027】
この端子部材付き蓋体10は、以下のようにして作製される。具体的には、まず、環状粗化面44を有する正極端子部材41、及び、環状粗化面48を有する負極端子部材45を用意する(図7及び図8参照)。次いで、用意した正極端子部材41及び負極端子部材45をインサート部品として、樹脂の射出成形によって樹脂蓋体11を成形することで、正極端子部材41と負極端子部材45と樹脂蓋体11とが一体成形された端子部材付き蓋体10(インサート成形品、図5及び図6参照)を作製する。
【0028】
このように、インサート成形によって正極端子部材41と負極端子部材45と樹脂蓋体11とが一体成形された端子部材付き蓋体10を作製することで、樹脂蓋体11を貫通してデバイスケース30の内部から外部に延出する金属端子部材(具体的には、正極端子部材41及び負極端子部材45)に対して直接に樹脂蓋体11が気密に接合された密閉型蓄電デバイス1を、容易に且つ適切に製造することができる。
【0029】
なお、樹脂蓋体11を成形するために射出された樹脂の一部11b(具体的には、正極端子部材41の環状粗化面44を包囲する部位11cと負極端子部材45の環状粗化面48を包囲する部位11d)が、正極端子部材41の環状粗化面44の凹部44b内、及び、負極端子部材45の環状粗化面48の凹部48b内に入り込むことで、樹脂蓋体11が環状粗化面44及び環状粗化面48と気密に接合する(図4参照)。
【0030】
さらに、密閉型蓄電デバイス1では、デバイスケース30を樹脂からなる樹脂デバイスケースとしているので、デバイスケース30が軽量になる。しかも、デバイスケース30を構成する樹脂蓋体11と樹脂ケース本体21とを、共に、電気絶縁性の樹脂製(具体的には、PPS製)にしているので、デバイスケース30内に収容する電極体50とデバイスケース30との間に、両者の電気絶縁性を確保するための電気絶縁性フィルム等の電気絶縁部材を別途設ける必要がない。
【0031】
なお、デバイスケース30は、以下に説明するように、樹脂ケース本体21と樹脂蓋体11とを熱溶着によって接合することで形成される。具体的には、まず、端子部材付き蓋体10と電極体50とを用意し、端子部材付き蓋体10の正極端子部材41と電極体50の正極板60とを、正極集電タブ(図示なし)を介して接続すると共に、端子部材付き蓋体10の負極端子部材45と電極体50の負極板70とを、負極集電タブ(図示なし)を介して接続する。これにより、端子部材付き蓋体10に電極体50が接続される。
【0032】
そして、端子部材付き蓋体10を構成する樹脂蓋体11のうち樹脂ケース本体21と接合する接合部11fを、加熱により軟化または溶融させると共に、樹脂ケース本体21のうち樹脂蓋体11と接合する接合部21fを、加熱により軟化または溶融させる。なお、樹脂蓋体11の接合部11fは、樹脂蓋体11のうち裏面12側の周縁部分であり、樹脂ケース本体21の接合部21fは、樹脂ケース本体21のうち開口21b側の環状端部である(図3参照)。
【0033】
樹脂蓋体11の接合部11f及び樹脂ケース本体21の接合部21fを軟化または溶融させた状態で、端子部材付き蓋体10に接続された電極体50を、樹脂ケース本体21の内部に収容すると共に、樹脂蓋体11の接合部11fと樹脂ケース本体21の接合部21fとを接触させる態様で、端子部材付き蓋体10構成する樹脂蓋体11によって樹脂ケース本体21の開口21bを閉塞する。これにより、樹脂蓋体11の接合部11fと樹脂ケース本体21の接合部21fとが接合されて、樹脂蓋体11によって樹脂ケース本体21の開口21bが気密に封止されたデバイスケース30が形成される。
【0034】
さらに、密閉型蓄電デバイス1は、デバイスケース30の樹脂蓋体11を形成する樹脂及び樹脂ケース本体21を形成する樹脂として、PPSを用いている。PPSは、水分透過性及び電解液90の透過性が低く、且つ、電解液90への耐性も高い樹脂であり、また、射出成形に用いることが可能な樹脂でもある。このため、PPSは、デバイスケース30の樹脂蓋体11及び樹脂ケース本体21を成形する樹脂として好適である。
【0035】
これに対し、本実施形態の密閉型蓄電デバイス1は、前述のように、PPSからなる樹脂蓋体11及び樹脂ケース本体21を有する。このため、密閉型蓄電デバイス1は、長期間にわたって、デバイスケース30内の電解液90の成分が、デバイスケース30の壁部を透過してデバイスケース30の外部に漏出することを低減できる。さらには、長期間にわたって、デバイスケース30の外部から水分が、デバイスケース30の壁部を透過してデバイスケース30の内部に侵入することを低減できる。従って、密閉型蓄電デバイス1は、長期間にわたって安定したデバイス特性(具体的には、電池特性)を発揮することが可能となる。
【0036】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0037】
例えば、実施形態では、電極体50として、正極板60と負極板70とがセパレータ80を介して積層方向DLに交互に積層された積層電極体を示した。しかしながら、本発明の密閉型蓄電デバイスの電極体は、積層電極体に限らず、いずれの形態の電極体であっても良い。例えば、電極体として、正極板60と負極板70とこれらの間に介在するセパレータ80とを捲回した捲回電極体を用いるようにしても良い。
【0038】
また、実施形態では、樹脂蓋体及び樹脂ケース本体として、PPSからなる樹脂蓋体11及び樹脂ケース本体21を示した。しかしながら、樹脂蓋体及び樹脂ケース本体として、PAS(ポリアリーレンサルファイド)からなる樹脂蓋体及び樹脂ケース本体を用いるようにしても良い。PASは、水分透過性及び電解液90の透過性が低く、且つ、電解液90への耐性も高い樹脂であるため、PASからなる樹脂蓋体及び樹脂ケース本体を用いることで、長期間にわたって安定したデバイス特性を発揮することが可能となる。また、オレフィン樹脂、または、フッ素樹脂からなる樹脂蓋体及び樹脂ケース本体を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 密閉型蓄電デバイス
10 端子部材付き蓋体
11 樹脂蓋体(蓋体)
21 樹脂ケース本体(ケース本体)
21b 開口
30 デバイスケース(樹脂デバイスケース)
41 正極端子部材(金属端子部材)
42,46 外周面
44,48 環状粗化面
44b,48b 凹部
45 負極端子部材(金属端子部材)
50 電極体
90 電解液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8