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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173775
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】密閉型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20231130BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M50/119
H01M50/159
H01M50/15
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086252
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011AA13
5H011CC06
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD03
5H012EE01
5H012FF01
5H012GG01
(57)【要約】
【課題】樹脂からなる樹脂安全弁部材によって電池ケースの金属壁部に形成されているガス排出孔が封止され、且つ、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると樹脂安全弁部材が開弁する密閉型電池を提供する。
【解決手段】電池ケース30は、ガス排出孔12が形成された金属壁部15を有する。金属壁部15の外表面15bのうちガス排出孔12の開口12bを囲む環状の孔周囲面13は、ガス排出孔12の開口12bを囲む環状シール面14を含む。孔周囲面13を覆う態様でガス排出孔12を閉塞する樹脂安全弁部材18は、環状シール面14と気密に接合する環状接合部18bを有する。電池ケース30の内圧が開弁圧に達すると、環状接合部18bの破壊によって樹脂安全弁部材18が開弁する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出孔が形成された金属壁部を有する電池ケースと、
前記金属壁部の外表面のうち前記ガス排出孔の開口を囲む環状の孔周囲面を覆う態様で、前記ガス排出孔を閉塞する安全弁部材と、を備える
密閉型電池において、
前記安全弁部材は、樹脂からなる樹脂安全弁部材であり、
前記孔周囲面は、前記ガス排出孔の前記開口を囲む環状シール面を含み、
前記樹脂安全弁部材は、前記環状シール面と気密に接合する環状接合部を有し、
前記電池ケースの内圧が開弁圧に達すると、前記環状接合部の破壊によって前記樹脂安全弁部材が開弁する
密閉型電池。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉型電池であって、
前記環状シール面は、凹凸形状を有する環状粗化面であり、
前記樹脂安全弁部材は、前記環状粗化面の凹部内に前記環状接合部を形成する前記樹脂が入り込む態様で、前記環状粗化面と気密に接合している
密閉型電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の密閉型電池であって、
前記電池ケースは、
開口を有するケース本体と、
前記ケース本体の前記開口を閉塞する金属蓋体と、を備え、
前記金属蓋体が、前記金属壁部を有する
密閉型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電極体と、この電極体を収容する金属製の電池ケースと、を備える密閉型電池が開示されている。電池ケースは、開口を有する矩形箱状のケース本体と、このケース本体の開口を閉塞する金属製の蓋部材と、を備える。ケース本体と蓋部材とは、溶接により一体とされ、電池ケースを構成している。蓋部材の中央部には、安全弁が設けられている。この安全弁は、蓋部材と一体的に形成されている。
【0003】
安全弁は、蓋部材の他の部分よりも薄く形成されると共に、その上面には溝部が形成されている。これにより、安全弁は、電池ケースの内部の内圧が所定圧力(開弁圧)に達した際に作動する。すなわち、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると、溝部が破断することによって安全弁が開弁し、電池ケースの内部のガスが外部に放出される。これにより、電池ケースの内圧が上昇し過ぎる(危険な内圧に達する)ことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-041668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の安全弁は、アルミニウム製の蓋部材と一体的に形成されている。具体的には、アルミニウム板のプレス成型によって、蓋部材を成形すると同時に安全弁を成形している。しかしながら、このようなプレス成型によって蓋部材に安全弁を形成する方法では、蓋部材を構成する金属板の厚みや材質に制約があり、多種多様な密閉型電池に対応することが難しかった。
【0006】
このため、安全弁を、電池ケースを構成する金属壁部(蓋部材など)とは別部材で形成することが求められていた。具体的には、電池ケースを、ガス排出孔が形成された金属壁部を有する電池ケースとし、安全弁を、金属壁部のうちガス排出孔の開口を囲む環状の孔周囲面を覆う態様でガス排出孔を閉塞する安全弁部材として、この安全弁部材によってガス排出孔を適切に封止することが求められていた。さらには、安全弁部材を簡易に形成するために、安全弁部材を樹脂製にすることが求められていた。すなわち、樹脂からなる樹脂安全弁部材によって電池ケースの金属壁部に形成されているガス排出孔が封止され、且つ、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると樹脂安全弁部材が開弁する密閉型電池が求められていた。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、樹脂からなる樹脂安全弁部材によって電池ケースの金属壁部に形成されているガス排出孔が封止され、且つ、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると樹脂安全弁部材が開弁する密閉型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、ガス排出孔が形成された金属壁部を有する電池ケースと、前記金属壁部の外表面のうち前記ガス排出孔の開口を囲む環状の孔周囲面を覆う態様で、前記ガス排出孔を閉塞する安全弁部材と、を備える密閉型電池において、前記安全弁部材は、樹脂からなる樹脂安全弁部材であり、前記孔周囲面は、前記ガス排出孔の前記開口を囲む環状シール面を含み、前記樹脂安全弁部材は、前記環状シール面と気密に接合する環状接合部を有し、前記電池ケースの内圧が開弁圧に達すると、前記環状接合部の破壊によって前記樹脂安全弁部材が開弁する密閉型電池である。
【0009】
上述の密閉型電池は、電池ケースの金属壁部の外表面のうちガス排出孔の開口を囲む環状の孔周囲面を覆う態様で、ガス排出孔を閉塞する安全弁部材を有する。この安全弁部材として、樹脂からなる樹脂安全弁部材を有する。この樹脂安全弁部材は、ガス排出孔の開口を囲む環状シール面(孔周囲面に含まれる部位)と気密に接合する環状接合部を有する。このような環状接合部を有することで、樹脂安全弁部材が金属壁部に対して気密に接合されると共に、ガス排出孔が樹脂安全弁部材によって封止される。
【0010】
さらに、この密閉型電池では、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると、樹脂安全弁部材の環状接合部が破壊されることによって、樹脂安全弁部材が開弁する(すなわち、樹脂安全弁部材によるガス排出孔の封止が解放される)。より具体的には、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると、電池ケースの内圧によって環状接合部に生じる応力が環状接合部の破壊強度に達し、これによって環状接合部が破壊されて、樹脂安全弁部材によるガス排出孔の封止が解放される。これにより、樹脂安全弁部材の環状接合部を金属壁部の環状シール面に気密に接合させる態様で電池ケース内を気密にしつつも、電池ケースの内圧が開弁圧に達した場合には、樹脂安全弁部材が開弁することによって電池ケース内のガスを外部に排出して、電池ケースの内圧が上昇し過ぎるのを防止することができる。
【0011】
以上説明したように、上述の密閉型電池は、樹脂からなる樹脂安全弁部材によって電池ケースの金属壁部に形成されているガス排出孔が封止され、且つ、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると樹脂安全弁部材が開弁する密閉型電池である。
【0012】
(2)さらに、前記(1)の密閉型電池であって、前記環状シール面は、凹凸形状を有する環状粗化面であり、前記樹脂安全弁部材は、前記環状粗化面の凹部内に前記環状接合部を形成する前記樹脂が入り込む態様で、前記環状粗化面と気密に接合している密閉型電池とすると良い。
【0013】
上述の密閉型電池では、金属壁部の環状粗化面の凹部内に環状接合部を形成する樹脂が入り込む態様で、樹脂安全弁部材の環状接合部が環状粗化面と気密に接合している。換言すれば、金属壁部の環状粗化面の凸部が、樹脂安全弁部材の環状接合部に食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂安全弁部材の環状接合部が環状粗化面と気密に接合している。このため、樹脂安全弁部材の環状接合部と金属壁部の環状粗化面との間の気密性が高くなるので、密閉型電池の気密性を高めることができる。
【0014】
(3)さらに、前記(1)または(2)の密閉型電池であって、前記電池ケースは、開口を有するケース本体と、前記ケース本体の前記開口を閉塞する金属蓋体と、を備え、前記金属蓋体が、前記金属壁部を有する密閉型電池とすると良い。
【0015】
上述の密閉型電池では、金属蓋体が金属壁部を有する。すなわち、電池ケースのうち、ケース本体の開口を閉塞する金属蓋体に、ガス排出孔が形成されており、金属蓋体の外表面のうちガス排出孔の開口を囲む部位が、環状シール面となっている。従って、上述の密閉型電池は、樹脂安全弁部材の環状接合部が金属蓋体の環状シール面と気密に接合する態様で、樹脂安全弁が金属蓋体に設けられた密閉型電池である。
【0016】
(4)さらに、(3)の密閉型電池であって、前記金属蓋体と前記樹脂安全弁部材とが、インサート成形によって一体成形されている密閉型電池とするのが好ましい。
【0017】
上述の密閉型電池では、金属蓋体と樹脂安全弁部材とが、インサート成形によって一体成形されている。すなわち、金属蓋体をインサート部品として、樹脂の射出成形によって樹脂安全弁部材を成形することで、金属蓋体と樹脂安全弁部材とが一体成形されている。換言すれば、金属蓋体と樹脂安全弁部材とは、金属蓋体に樹脂安全弁部材が一体成形されたインサート成形品を構成している。このように、インサート成形によって金属蓋体と樹脂安全弁部材とが一体成形されたインサート成形品を用いることで、樹脂安全弁部材によって金属蓋体に形成されているガス排出孔が封止された密閉型電池を、容易に且つ適切に製造することができる。
【0018】
(5)さらに、前記(1)~(4)のいずれかの密閉型電池であって、前記環状接合部は、当該環状接合部の周方向一部であって、平面視で、当該環状接合部の幅寸法が他の部位よりも小さい最小幅接合部を有し、前記電池ケースの内圧が開弁圧に達すると、前記最小幅接合部が破壊することによって、前記樹脂安全弁部材が開弁する密閉型電池とするのが好ましい。
【0019】
樹脂安全弁部材の環状接合部は、その幅寸法が小さいほど破壊され易くなる。ここで、環状接合部の幅寸法とは、平面視で環状接合部の内周と外周との間の距離をいう。このため、幅寸法が他の部位よりも小さい最小幅接合部を周方向一部に有する環状接合部では、最小幅接合部が、環状接合部内で最も破壊され易い部位となる。従って、環状接合部の周方向一部に最小幅接合部を設けることで、電池ケースの内圧が開弁圧に達したときの開弁位置(環状接合部が破壊される位置)を、最小幅接合部に定めることができる。このため、開弁圧を精度良く設定することができる。従って、上述の密閉型電池は、開弁圧が精度良く設定された密閉型電池となる。
【0020】
(6)さらに、前記(1)~(4)のいずれかの密閉型電池であって、前記環状接合部は、平面視で、楕円環状、または、長円環状を有する密閉型電池とすると良い。
【0021】
楕円環状または長円環状の環状接合部では、電池ケースの内圧上昇によって樹脂安全弁部材に押圧力が作用したとき、環状接合部の外周を形成する楕円または長円の短軸上に位置する部位(短軸上部位とする)に応力が集中する。従って、当該環状接合部のうち短軸上部位は、他の部位に比べて破壊され易い部位となる。従って、環状接合部の形状を、平面視で楕円環状または長円環状とすることで、電池ケースの内圧が開弁圧に達したときの開弁位置(環状接合部が破壊される位置)を、短軸上部位に定めることができる。このため、開弁圧を精度良く設定することができる。従って、上述の密閉型電池は、開弁圧が精度良く設定された密閉型電池となる。なお、長円とは、2本の平行な直線と、両直線の一方端を繋ぐ円弧と、他方端を繋ぐ円弧とからなる図形である。
【0022】
(7)また、前記(5)の密閉型電池であって、前記環状接合部は、平面視で、楕円環状、または、長円環状を有し、当該環状接合部の外周を形成する楕円または長円の短軸上に、前記最小幅接合部を有する密閉型電池とすると良い。
【0023】
楕円環状または長円環状の環状接合部において、電池ケースの内圧上昇によって樹脂安全弁部材に押圧力が作用したときに応力が集中する短軸上に、最小幅接合部を設けることで、電池ケースの内圧が開弁圧に達したときの開弁位置(環状接合部が破壊される位置)を、最小幅接合部に定めることができる。このため、開弁圧を精度良く設定することができる。従って、上述の密閉型電池は、開弁圧が精度良く設定された密閉型電池となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態にかかる密閉型電池の平面図(上面図)である。
図2】同密閉型電池の正面図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4図3のC部拡大図及び図6のG部拡大図である。
図5】安全弁付き蓋体(インサート成形品)の平面図である。
図6図5のD-D断面図である。
図7】金属蓋体の平面図である。
図8図7のE-E断面図である。
図9図8のF部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の密閉型電池1は、リチウムイオン二次電池であり、電池ケース30と、電池ケース30内に収容された電極体50と、正極端子41と、負極端子42とを備える(図1図3参照)。電池ケース30は、金属からなるハードケースであり、直方体箱状をなしている。この電池ケース30は、角形有底筒状をなす金属製のケース本体21と、ケース本体21の開口21bを閉塞する矩形平板状の金属蓋体11とを備える(図1図3参照)。金属蓋体11は、ガス排出孔12が形成された金属壁部15を有する。金属壁部15は、金属蓋体11の一部である。
【0026】
金属蓋体11には、2つの矩形筒状の貫通孔16,17が形成されている(図5及び図7参照)。貫通孔16には正極端子41が挿通されており、貫通孔17には負極端子42が挿通されている(図1及び図2参照)。なお、金属蓋体11の貫通孔16の内周面と正極端子41の外周面との間、及び、金属蓋体11の貫通孔17の内周面と負極端子42の外周面との間には、筒状の絶縁部材(図示省略)が介在している。さらに、金属蓋体11(詳細には金属壁部15)には、当該金属蓋体11を厚み方向に貫通する円筒形状のガス排出孔12が形成されている(図3参照)。
【0027】
電極体50は、正極板60と、負極板70と、正極板60と負極板70との間に介在するセパレータ80と、を有する。より具体的には、電極体50は、複数枚の正極板60と、複数枚の負極板70と、複数枚のセパレータ80とを備え、正極板60と負極板70とがセパレータ80を介して、積層方向DLに交互に積層された積層電極体である(図3参照)。なお、電極体50の内部には、図示しない電解液が含まれている。電池ケース30の内部の底面側にも、図示しない電解液が収容されている。電極体50のうち正極板60は、正極集電タブ(図示なし)を通じて正極端子41に接続されている。また、負極板70は、負極集電タブ(図示なし)を通じて負極端子42に接続されている。
【0028】
さらに、密閉型電池1は、金属蓋体11の外表面11b(詳細には、金属壁部15の外表面15b)のうちガス排出孔12の開口12bを囲む円環状の孔周囲面13を覆う態様で、ガス排出孔12を閉塞する樹脂安全弁部材18を備える(図1図3参照)。樹脂安全弁部材18は、円板状をなし、ガス排出孔12の内部に位置する円板状の第1部位18cと、第1部位18cよりも径大で金属蓋体11の孔周囲面13に接触する円板状の第2部位18dとを有する(図3参照)。樹脂安全弁部材18は、電解液の透過性が低い樹脂によって形成するのが好ましく、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PAS(ポリアリーレンサルファイド)、オレフィン樹脂、またはフッ素樹脂によって形成するのが好ましい。本実施形態では、PPSによって樹脂安全弁部材18を形成している。
【0029】
金属蓋体11の孔周囲面13は、ガス排出孔12の開口12bを囲む円環状の環状シール面14を含む(図7図9参照)。また、樹脂安全弁部材18の第2部位18dは、この環状シール面14と気密に接合する環状接合部18bを有する(図3及び図4参照)。なお、環状接合部18bは、平面視円環状をなしている。このような環状接合部18bを有することで、樹脂安全弁部材18が金属蓋体11(詳細には金属壁部15)に対して気密に接合されると共に、ガス排出孔12が樹脂安全弁部材18によって封止される。なお、樹脂安全弁部材18の第1部位18cとガス排出孔12を形成する内周面12cとの間は、気密に接合されておらず、ガスが進入可能な状態となっている。
【0030】
特に、本実施形態では、金属蓋体11(詳細には金属壁部15)の環状シール面14は、凹凸形状を有する環状粗化面14である(図8及び図9参照)。この環状粗化面14は、平面視円環状をなしている(図7参照)。そして、樹脂安全弁部材18は、環状粗化面14の凹部14b内に、環状接合部18bを形成する樹脂が入り込む態様で、環状粗化面14と気密に接合している(図4参照)。換言すれば、金属壁部15の環状粗化面14の凸部14cが、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bに食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bが環状粗化面14と気密に接合している。このため、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bと金属壁部15の環状粗化面14との間の気密性が高くなるので、密閉型電池1の気密性を高めることができる。
【0031】
なお、環状粗化面14は、金属蓋体11の外表面11bの孔周囲面13に対して、公知の表面粗化処理を行うことによって形成することができる。表面粗化処理としては、例えば、レーザ表面処理、サンドブラスト処理、陽極酸化処理などを挙げることができる。このうち、レーザ表面処理としては、例えば、特開2022-28587号公報に開示されているレーザ表面処理を挙げることができる。なお、本実施形態では、レーザ表面処理によって、金属蓋体11の孔周囲面13を環状粗化面14にしている。
【0032】
また、金属蓋体11と樹脂安全弁部材18とは、インサート成形によって一体成形されている。具体的には、金属蓋体11と樹脂安全弁部材18とは、インサート成形によって金属蓋体11に樹脂安全弁部材18が一体成形された安全弁付き蓋体10(インサート成形品)を構成している(図5及び図6参照)。この安全弁付き蓋体10は、以下のようにして作製される。具体的には、まず、環状粗化面14を有する金属蓋体11(図7図9参照)を用意する。次いで、この金属蓋体11をインサート部品として、樹脂の射出成形によって樹脂安全弁部材18を成形することで、金属蓋体11と樹脂安全弁部材18とが一体成形された安全弁付き蓋体10(インサート成形品、図5及び図6参照)が作製される。
【0033】
このように、インサート成形によって金属蓋体11と樹脂安全弁部材18とが一体成形された安全弁付き蓋体10を用いることで、樹脂安全弁部材18によって金属蓋体11に形成されているガス排出孔12が封止された密閉型電池1を、容易に且つ適切に製造することができる。なお、樹脂安全弁部材18を成形するために射出された樹脂の一部(環状接合部18bになる樹脂)が、金属蓋体11の環状粗化面14の凹部14b内に入り込むことで、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bが金属蓋体11の環状粗化面14と気密に接合する(図4参照)。
【0034】
さらに、密閉型電池1では、電池ケース30の内圧が開弁圧に達すると、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bが破壊されることによって、樹脂安全弁部材18が開弁する(すなわち、樹脂安全弁部材18によるガス排出孔12の封止が解放される)。より具体的には、電池ケース30の内部でガスが発生することによって電池ケース30の内圧が上昇すると、樹脂安全弁部材18の下面18fを押し上げようとする力が大きくなり、環状接合部18bに生じる応力が大きくなる(図3参照)。そして、電池ケース30の内圧が開弁圧に達すると、環状接合部18bに生じる応力が環状接合部18bの破壊強度に達し、これによって環状接合部18bが破壊されて、樹脂安全弁部材18によるガス排出孔12の封止が解放される。例えば、環状接合部18bの周方向一部が破断することによって、環状接合部18bにガス排出路が形成される。これにより、電池ケース30の内部のガスが、ガス排出孔12を通じて電池ケース30の外部に排出されるので、電池ケース30の内圧が上昇し過ぎるのを防止することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の密閉型電池1は、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bを金属蓋体11(詳細には金属壁部15)の環状シール面14に気密に接合させる態様で電池ケース30の内部を気密にしつつも、電池ケース30の内圧が開弁圧に達した場合には、樹脂安全弁部材18が開弁することによって電池ケース30内のガスを外部に排出して、電池ケース30の内圧が上昇し過ぎるのを防止することができる。従って、密閉型電池1は、樹脂からなる樹脂安全弁部材18によって電池ケース30の金属壁部15に形成されているガス排出孔12が封止され、且つ、電池ケース30の内圧が開弁圧に達すると樹脂安全弁部材18が開弁する密閉型電池である。
【0036】
また、本実施形態では、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bの最小幅寸法Wによって、樹脂安全弁部材18の開弁圧を定めている。ここで、環状接合部18bの幅寸法とは、平面視での環状接合部18bの内周と外周との間の距離であり、「シール長」と呼ぶことができる。また、環状接合部18bの最小幅寸法Wとは、平面視での環状接合部18bの内周と外周との間の最短距離であり(図3及び図5参照)、「最小シール長」と呼ぶことができる。なお、本実施形態では、環状接合部18bは平面視円環形状で、環状接合部18bの内周と外周とは同心円であるため、環状接合部18bの幅寸法は一定であり、環状接合部18bの幅寸法が最小幅寸法Wである。
【0037】
また、樹脂安全弁部材18の開弁圧は、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bの破壊により、樹脂安全弁部材18によるガス排出孔12の封止が解放されるときの、電池ケース30の内圧である。従って、環状接合部18bの最小幅寸法Wを大きくするほど、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bの破壊によるガス排出孔12の封止解放が生じ難くなり、開弁圧の値が大きくなる。
【0038】
【表1】
【0039】
表1は、環状接合部18bの最小幅寸法W(mm)と開弁圧(MPa)との対応表である。表1に示すように、例えば、環状接合部18bの最小幅寸法Wを0.5mmとした密閉型電池1では、開弁圧を1.4MPaに定めることができる。また、環状接合部18bの最小幅寸法Wを0.9mmとした密閉型電池1では、開弁圧を3.0MPaに定めることができる。このように、樹脂安全弁部材18の環状接合部18bの最小幅寸法Wによって、樹脂安全弁部材18の開弁圧を定めることができる。
【0040】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0041】
例えば、実施形態では、安全弁付き蓋体10として、インサート成形によって金属蓋体11に樹脂安全弁部材18が一体成形された安全弁付き蓋体10を用いた。しかしながら、金属蓋体11に樹脂フィルムからなる樹脂安全弁部材を溶着した安全弁付き蓋体を用いるようにしても良い。この安全弁付き蓋体は、以下のようにして作製することができる。具体的には、まず、環状粗化面14を有する金属蓋体11(図7図9参照)を用意する。また、樹脂フィルムからなる樹脂安全弁部材を用意する。次いで、金属蓋体11を200℃に加熱し、さらに、樹脂安全弁部材のうち環状粗化面14に接触する面を加熱により軟化または溶融させた状態で、樹脂安全弁部材を金属蓋体11の環状粗化面14に溶着する。このとき、樹脂安全弁部材を形成する樹脂の一部(環状接合部になる樹脂)が、金属蓋体11の環状粗化面14の凹部14b内に入り込むことで、樹脂安全弁部材の環状接合部が金属蓋体11の環状粗化面14と気密に接合する。
【0042】
また、実施形態では、環状接合部18bの形状を平面視円環状として、環状接合部18bの幅寸法を一定とした。しかしながら、環状接合部を、当該環状接合部の周方向一部であって、平面視で、当該環状接合部の幅寸法が他の部位よりも小さい最小幅接合部を有する形状としても良い。この環状接合部では、最小幅接合部の幅寸法が、当該環状接合部における最小幅寸法Wとなる。従って、この環状接合部を有する密閉型電池では、電池ケースの内圧が開弁圧に達すると、最小幅接合部が破壊することによって、樹脂安全弁部材が開弁する。最小幅接合部が、環状接合部内で最も破壊され易い部位となるからである。このように、環状接合部の周方向一部に最小幅接合部を設けることで、電池ケースの内圧が開弁圧に達したときの開弁位置(環状接合部が破壊される位置)を、最小幅接合部に定めることができる。このため、開弁圧を精度良く設定することができる。従って、この環状接合部を有する密閉型電池は、開弁圧が精度良く設定された密閉型電池となる。
【0043】
また、実施形態では、環状接合部18bの形状を平面視円環状としたが、平面視楕円環状、または、平面視長円環状としても良い。この場合、ガス排出孔の形状及び環状粗化面の形状も、環状接合部の形状と同等の平面視楕円環状、または、平面視長円環状にすると良い。平面視楕円環状または平面視長円環状の環状接合部では、電池ケースの内圧上昇によって樹脂安全弁部材に押圧力が作用したとき、環状接合部の外周を形成する楕円または長円の短軸上に位置する部位(短軸上部位とする)に応力が集中する。従って、当該環状接合部のうち短軸上部位は、他の部位に比べて破壊され易い部位となる。従って、環状接合部の形状を、平面視で楕円環状または長円環状とすることで、電池ケースの内圧が開弁圧に達したときの開弁位置(環状接合部が破壊される位置)を、短軸上部位に定めることができる。このため、開弁圧を精度良く設定することができる。従って、この環状接合部を有する密閉型電池は、開弁圧が精度良く設定された密閉型電池となる。なお、長円とは、2本の平行な直線と、両直線の一方端を繋ぐ円弧と、他方端を繋ぐ円弧とからなる図形である。
【0044】
また、環状接合部を、平面視楕円環状、または、平面視長円環状であって、当該環状接合部の外周を形成する楕円または長円の短軸上に、前記最小幅接合部を有する形状としても良い。平面視楕円環状または平面視長円環状の環状接合部において、電池ケースの内圧上昇によって樹脂安全弁部材に押圧力が作用したときに応力が集中する短軸上に、最小幅接合部を設けることで、電池ケースの内圧が開弁圧に達したときの開弁位置(環状接合部が破壊される位置)を、最小幅接合部に定めることができる。このため、開弁圧を精度良く設定することができる。従って、この環状接合部を有する密閉型電池は、開弁圧が精度良く設定された密閉型電池となる。
【0045】
また、実施形態では、金属蓋体11の金属壁部15にガス排出孔12が形成され、このガス排出孔12を閉塞する樹脂安全弁部材18を備える密閉型電池1を示した。しかしながら、本発明には、ケース本体21の金属壁部にガス排出孔が形成され、このガス排出孔を閉塞する樹脂安全弁部材を備える密閉型電池も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 密閉型電池
11 金属蓋体
11b 金属蓋体の外表面
12 ガス排出孔
12b ガス排出孔の開口
13 孔周囲面
14 環状粗化面(環状シール面)
14b 凹部
15 金属壁部
15b 金属壁部の外表面
18 樹脂安全弁部材(安全弁部材)
18b 環状接合部
21 ケース本体
30 電池ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9