(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173777
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】密閉型蓄電デバイス、及び、密閉型蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/636 20210101AFI20231130BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/636
H01M50/342 101
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086255
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
【テーマコード(参考)】
5H012
5H023
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB03
5H012CC01
5H012DD05
5H012EE01
5H012FF01
5H012JJ06
5H023AA03
5H023AS03
5H023AS10
5H023BB10
5H023CC11
5H023CC27
(57)【要約】
【課題】樹脂からなる樹脂封止部材によってデバイスケースの金属壁部に形成されている注液孔が適切に封止された密閉型蓄電デバイス、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】注液孔12が形成された金属壁部15を有するデバイスケース30と、金属壁部15の外表面15b側から注液孔12を覆う態様で注液孔12を封止する封止部材18と、を備える密閉型蓄電デバイス1において、封止部材18は、樹脂からなる樹脂封止部材18であり、金属壁部15の外表面15bは、注液孔12の開口12bを囲む環状シール面13を含み、樹脂封止部材18は、環状シール面13と気密に接合する環状接合部18bを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注液孔が形成された金属壁部を有するデバイスケースと、
前記金属壁部の外表面側から前記注液孔を覆う態様で、前記注液孔を封止する封止部材と、を備える
密閉型蓄電デバイスにおいて、
前記封止部材は、樹脂からなる樹脂封止部材であり、
前記金属壁部の前記外表面は、前記注液孔の開口を囲む環状シール面を含み、
前記樹脂封止部材は、前記環状シール面と気密に接合する環状接合部を有する
密閉型蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉型蓄電デバイスであって、
前記環状シール面は、凹凸形状を有する環状粗化面であり、
前記樹脂封止部材は、前記環状粗化面の凹部内に前記環状接合部を形成する前記樹脂が入り込む態様で、前記環状粗化面と気密に接合している
密閉型蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の密閉型蓄電デバイスであって、
前記樹脂封止部材は、安全弁部材を兼ねており、
前記デバイスケースの内圧が開弁圧に達すると、前記樹脂封止部材の破壊によって、前記樹脂封止部材による前記注液孔の封止が解放される
密閉型蓄電デバイス。
【請求項4】
密閉型蓄電デバイスの製造方法において、
前記密閉型蓄電デバイスは、
注液孔が形成された金属壁部を有するデバイスケースと、
前記金属壁部の外表面側から前記注液孔を覆う態様で、前記注液孔を封止する封止部材と、を備え、
前記封止部材は、樹脂からなる樹脂封止部材であり、
前記金属壁部の前記外表面は、前記注液孔の開口を囲む環状シール面を含み、
前記樹脂封止部材は、前記環状シール面と気密に接合する環状接合部を有し、
前記密閉型蓄電デバイスの製造方法は、
前記注液孔を通じて前記デバイスケースの内部に電解液を注入する注液工程と、
前記樹脂封止部材によって、前記金属壁部の前記外表面側から前記注液孔を覆う態様で前記注液孔を封止する封止工程と、を備え、
前記封止工程は、
前記金属壁部の前記外表面側から、前記金属壁部の前記外表面のうち少なくとも前記環状シール面と前記注液孔とを覆うように、前記デバイスケースに対して溶融樹脂を塗布する塗布工程と、
前記溶融樹脂を固化させて、前記環状シール面と気密に接合する前記環状接合部を有する前記樹脂封止部材を形成する固化工程と、を備える
密閉型蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の密閉型蓄電デバイスの製造方法であって、
前記環状シール面は、凹凸形状を有する環状粗化面であり、
前記塗布工程では、
前記金属壁部の前記外表面側から、前記金属壁部の前記外表面のうち少なくとも前記環状粗化面と前記注液孔とを覆うように、前記デバイスケースに対して前記溶融樹脂を塗布したとき、前記環状粗化面上に塗布された前記溶融樹脂の一部が前記環状粗化面の凹部内に流れ込み、
前記固化工程では、
前記溶融樹脂を固化させることによって、前記環状粗化面の前記凹部内に前記環状接合部を形成する前記樹脂が入り込む態様で前記環状粗化面と気密に接合する前記樹脂封止部材が形成される
密閉型蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型蓄電デバイス、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、注液孔が形成された金属壁部を有するデバイスケースと、注液孔を封止する封止部材と、を備える密閉型蓄電デバイスが開示されている。封止部材は、金属からなる金属封止部材である。従って、特許文献1の密閉型蓄電デバイスでは、金属壁部に形成されている注液孔を、金属封止部材によって封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1のように、金属壁部に形成されている注液孔を金属封止部材によって封止する構造の密閉型蓄電デバイスは、例えば、以下のように製造される。具体的には、注液工程において、注液孔を通じてデバイスケースの内部に電解液を注入する。その後、封止工程において、金属封止部材によって、金属壁部の外表面側から注液孔を覆う態様で注液孔を封止する。より具体的には、封止工程では、注液孔を金属封止部材によって閉塞した状態で、金属壁部の外表面側から、金属壁部の外表面のうち注液孔の周囲部と金属封止部材との境界及びその近傍にレーザビームを照射する態様のレーザ溶接によって、金属壁部に対して金属封止部材を全周溶接する。これにより、金属封止部材によって注液孔を封止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、デバイスケースの金属壁部に対して金属封止部材を溶接することで注液孔を封止する構造では、溶接不良が生じることによって注液孔を適切に封止できないことがあった。このため、デバイスケースの金属壁部に形成されている注液孔を、樹脂からなる樹脂封止部材によって封止する構造が検討されている。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、樹脂からなる樹脂封止部材によってデバイスケースの金属壁部に形成されている注液孔が適切に封止された密閉型蓄電デバイス、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、注液孔が形成された金属壁部を有するデバイスケースと、前記金属壁部の外表面側から前記注液孔を覆う態様で、前記注液孔を封止する封止部材と、を備える密閉型蓄電デバイスにおいて、前記封止部材は、樹脂からなる樹脂封止部材であり、前記金属壁部の前記外表面は、前記注液孔の開口を囲む環状シール面を含み、前記樹脂封止部材は、前記環状シール面と気密に接合する環状接合部を有する密閉型蓄電デバイスである。
【0008】
上述の密閉型蓄電デバイスは、樹脂からなる樹脂封止部材によって、金属壁部の外表面側から注液孔を覆う態様で、デバイスケースの金属壁部に形成されている注液孔が封止されている。この樹脂封止部材は、「金属壁部の外表面のうち注液孔の開口を囲む環状シール面」と気密に接合する環状接合部を有する。このような環状接合部を有することで、樹脂封止部材が金属壁部に対して気密に接合されると共に、注液孔が樹脂封止部材によって封止される。従って、上述の密閉型蓄電デバイスは、樹脂封止部材によってデバイスケースの金属壁部に形成されている注液孔が適切に封止された密閉型蓄電デバイスである。
【0009】
(2)さらに、前記(1)の密閉型蓄電デバイスであって、前記環状シール面は、凹凸形状を有する環状粗化面であり、前記樹脂封止部材は、前記環状粗化面の凹部内に前記環状接合部を形成する前記樹脂が入り込む態様で、前記環状粗化面と気密に接合している密閉型蓄電デバイスとすると良い。
【0010】
この密閉型蓄電デバイスでは、金属壁部の環状粗化面の凹部内に環状接合部を形成する樹脂が入り込む態様で、樹脂封止部材の環状接合部が環状粗化面と気密に接合している。換言すれば、金属壁部の環状粗化面の凸部が、樹脂封止部材の環状接合部に食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂封止部材の環状接合部が環状粗化面と気密に接合している。このため、樹脂封止部材の環状接合部と金属壁部の環状粗化面との間の気密性が高くなるので、密閉型蓄電デバイスの気密性を高めることができる。
【0011】
(3)さらに、前記(1)または(2)の密閉型蓄電デバイスであって、前記樹脂封止部材は、安全弁部材を兼ねており、前記デバイスケースの内圧が開弁圧に達すると、前記樹脂封止部材の破壊によって、前記樹脂封止部材による前記注液孔の封止が解放される密閉型蓄電デバイスとすると良い。
【0012】
この密閉型蓄電デバイスでは、樹脂封止部材が安全弁部材を兼ねている。このため、デバイスケースに、別途ガス排出孔を設けていなくても、さらに、このガス排出孔を封止する安全弁部材を別途設けていなくても、デバイスケースの内圧が開弁圧に達した場合には、樹脂封止部材が破壊される(例えば、樹脂封止部材が開裂する)ことによって、注液孔を通じて電池ケース内のガスを外部に排出して、デバイスケースの内圧が上昇し過ぎるのを防止することができる。
【0013】
(4)本発明の他の態様は、密閉型蓄電デバイスの製造方法において、前記密閉型蓄電デバイスは、注液孔が形成された金属壁部を有するデバイスケースと、前記金属壁部の外表面側から前記注液孔を覆う態様で、前記注液孔を封止する封止部材と、を備え、前記封止部材は、樹脂からなる樹脂封止部材であり、前記金属壁部の前記外表面は、前記注液孔の開口を囲む環状シール面を含み、前記樹脂封止部材は、前記環状シール面と気密に接合する環状接合部を有し、前記密閉型蓄電デバイスの製造方法は、前記注液孔を通じて前記デバイスケースの内部に電解液を注入する注液工程と、前記樹脂封止部材によって、前記金属壁部の前記外表面側から前記注液孔を覆う態様で前記注液孔を封止する封止工程と、を備え、前記封止工程は、前記金属壁部の前記外表面側から、前記金属壁部の前記外表面のうち少なくとも前記環状シール面と前記注液孔とを覆うように、前記デバイスケースに対して溶融樹脂を塗布する塗布工程と、前記溶融樹脂を固化させて、前記環状シール面と気密に接合する前記環状接合部を有する前記樹脂封止部材を形成する固化工程と、を備える密閉型蓄電デバイスの製造方法である。
【0014】
上述の製造方法では、塗布工程及び固化工程を行うことで、樹脂からなる樹脂封止部材によって、デバイスケースの金属壁部に形成されている注液孔が適切に封止された密閉型蓄電デバイスを製造することができる。より具体的には、樹脂封止部材として、「金属壁部の外表面のうち注液孔の開口を囲む環状シール面」と気密に接合する環状接合部を有する樹脂封止部材を形成することができる。このような環状接合部を有する樹脂封止部材を形成することで、樹脂封止部材が金属壁部に対して気密に接合されると共に、注液孔が樹脂封止部材によって封止される。このような注液孔の封止構造を有する密閉型蓄電デバイスは、注液孔が適切に封止された密閉型蓄電デバイスとなる。
【0015】
なお、塗布工程において溶融樹脂を塗布する方法としては、例えば、ホットメルトダイやカーテンコートを挙げることができる。ここで、ホットメルトダイとは、ダイコータによって溶融樹脂を膜状に塗布する方法である。また、カーテンコートとは、フローコータ(カーテンコータ)によって溶融樹脂を膜状に塗布する方法である。
【0016】
また、環状シール面が、凹凸形状を有する環状粗化面である場合は、塗布工程において環状粗化面に塗布した溶融樹脂の一部が環状粗化面の凹部内に流れ込み、固化工程において溶融樹脂を固化させることで、環状粗化面の凹部内に環状接合部を形成する樹脂が入り込む態様で環状粗化面と気密に接合する樹脂封止部材が形成される。
【0017】
(5)さらに、前記(4)の密閉型蓄電デバイスの製造方法であって、前記環状シール面は、凹凸形状を有する環状粗化面であり、前記塗布工程では、前記金属壁部の前記外表面側から、前記金属壁部の前記外表面のうち少なくとも前記環状粗化面と前記注液孔とを覆うように、前記デバイスケースに対して前記溶融樹脂を塗布したとき、前記環状粗化面上に塗布された前記溶融樹脂の一部が前記環状粗化面の凹部内に流れ込み、前記固化工程では、前記溶融樹脂を固化させることによって、前記環状粗化面の前記凹部内に前記環状接合部を形成する前記樹脂が入り込む態様で前記環状粗化面と気密に接合する前記樹脂封止部材が形成される密閉型蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0018】
上述の製造方法では、樹脂封止部材として、金属壁部の環状粗化面の凹部内に環状接合部を形成する樹脂が入り込む態様で、樹脂封止部材の環状接合部が環状粗化面と気密に接合する樹脂封止部材を形成することができる。換言すれば、金属壁部の環状粗化面の凸部が、樹脂封止部材の環状接合部に食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂封止部材の環状接合部が環状粗化面と気密に接合する樹脂封止部材を形成することができる。このため、樹脂封止部材の環状接合部と金属壁部の環状粗化面との間の気密性が高くなるので、密閉型蓄電デバイスの気密性を高めることができる。
【0019】
(6)また、(1)~(3)のいずれかの密閉型蓄電デバイスの製造方法であって、前記注液孔を通じて前記デバイスケースの内部に電解液を注入する注液工程と、前記樹脂封止部材によって、前記金属壁部の外表面側から前記注液孔を覆う態様で前記注液孔を封止する封止工程と、を備え、前記封止工程は、前記金属壁部の前記外表面側から、前記金属壁部の前記外表面のうち少なくとも前記環状シール面と前記注液孔とを覆うように、前記デバイスケースに対して前記溶融樹脂を塗布する塗布工程と、前記溶融樹脂を固化させて、前記環状シール面と気密に接合する前記環状接合部を有する前記樹脂封止部材を形成する固化工程と、を備える密閉型蓄電デバイスの製造方法が好ましい。
【0020】
(7)あるいは、前記(1)~(3)のいずれかの密閉型蓄電デバイスの製造方法であって、前記注液孔を通じて前記デバイスケースの内部に電解液を注入する注液工程と、前記樹脂封止部材によって、前記金属壁部の外表面側から前記注液孔を覆う態様で前記注液孔を封止する封止工程と、を備え、前記封止工程は、前記金属壁部の前記外表面側から、前記金属壁部の前記外表面のうち少なくとも前記環状シール面と前記注液孔とを覆うように、前記デバイスケースに樹脂フィルムを配置する配置工程と、前記樹脂フィルムのうち少なくとも前記環状シール面上に位置する部位を溶融させて溶融樹脂とする溶融工程と、前記溶融樹脂を固化させて、前記環状シール面と気密に接合する前記環状接合部を有する前記樹脂封止部材を形成する固化工程と、を備える密閉型蓄電デバイスの製造方法が好ましい。
【0021】
(6)及び(7)の製造方法によれば、樹脂封止部材によって、デバイスケースの金属壁部に形成されている注液孔が適切に封止された密閉型蓄電デバイスを製造することができる。より具体的には、樹脂封止部材として、金属壁部の外表面に形成されている注液孔の開口を囲む環状シール面と気密に接合する環状接合部を有する樹脂封止部材を形成することができる。このような環状接合部を有する樹脂封止部材を形成することで、樹脂封止部材が金属壁部に対して気密に接合されると共に、注液孔が樹脂封止部材によって封止される。このような注液孔の封止構造を有する密閉型蓄電デバイスは、注液孔が適切に封止された密閉型蓄電デバイスとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態にかかる密閉型蓄電デバイスの平面図(上面図)である。
【
図5】実施形態にかかる密閉型蓄電デバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態にかかる封止工程の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態にかかる表面粗化工程の説明図である。
【
図10】実施形態にかかる塗布工程の説明図である。
【
図14】変形形態にかかる塗布工程の説明図である。
【
図15】同塗布工程の他の説明図であり、
図14のG-G部分断面図である。
【
図16】変形形態にかかる環状粗化面の平面図である。
【
図17】変形形態にかかる封止工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の密閉型蓄電デバイス1は、密閉型電池であり、詳細には、リチウムイオン二次電池である。この密閉型蓄電デバイス1は、デバイスケース30と、デバイスケース30の内部に収容された電極体50と、正極端子部材41と、負極端子部材42とを備える(
図1~
図3参照)。デバイスケース30は、金属からなるハードケースであり、直方体箱状をなしている。このデバイスケース30は、角形有底筒状をなす金属製のケース本体21と、ケース本体21の開口21bを閉塞する矩形平板状の金属蓋体11とを備える(
図1~
図3参照)。金属蓋体11は、注液孔12が形成された金属壁部15を有する。金属壁部15は、金属蓋体11の一部である。
【0024】
金属蓋体11には、2つの矩形筒状の貫通孔(第1貫通孔と第2貫通孔とする、図示省略)が形成されている。第1貫通孔には正極端子部材41が挿通されており、第2貫通孔には負極端子部材42が挿通されている(
図1及び
図2参照)。なお、金属蓋体11の第1貫通孔の内周面と正極端子部材41の外周面との間、及び、金属蓋体11の第2貫通孔の内周面と負極端子部材42の外周面との間には、筒状の絶縁部材(図示省略)が介在している。さらに、金属蓋体11(詳細には金属壁部15)には、当該金属蓋体11を厚み方向に貫通する円筒形状の注液孔12が形成されている(
図1及び
図3参照)。
【0025】
電極体50は、正極板60と、負極板70と、正極板60と負極板70との間に介在するセパレータ80と、を有する。より具体的には、電極体50は、複数枚の正極板60と、複数枚の負極板70と、複数枚のセパレータ80とを備え、正極板60と負極板70とがセパレータ80を介して、積層方向DLに交互に積層された積層電極体である(
図3参照)。なお、電極体50の内部には、電解液90が含まれている。デバイスケース30の内部の底面側にも、電解液90が収容されている。電極体50のうち正極板60は、正極集電タブ(図示なし)を通じて正極端子部材41に接続されている。また、負極板70は、負極集電タブ(図示なし)を通じて負極端子部材42に接続されている。
【0026】
さらに、密閉型蓄電デバイス1は、注液孔12を封止する樹脂封止部材18を備える(
図1~
図3参照)。この樹脂封止部材18は、金属蓋体11の外表面11b(詳細には、金属壁部15の外表面15b)側から注液孔12を覆う(換言すれば、注液孔12を閉塞する)態様で、注液孔12を封止している。樹脂封止部材18は、樹脂からなり、円板形状をなしている。樹脂封止部材18は、電解液90の透過性が低く、且つ、耐電解液性(電解液90に対する耐性)が高い樹脂によって形成するのが好ましく、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PAS(ポリアリーレンサルファイド)、オレフィン樹脂、またはフッ素樹脂によって形成するのが好ましい。
【0027】
金属蓋体11の外表面11b(詳細には、金属壁部15の外表面15b)は、注液孔12の開口12bを囲む円環状の環状シール面13を含む(
図3及び
図8参照)。また、樹脂封止部材18は、この環状シール面13と気密に接合する環状接合部18bを有する(
図3及び
図4参照)。なお、環状接合部18bは、平面視円環状をなしている。このような環状接合部18bを有することで、樹脂封止部材18が金属蓋体11(詳細には金属壁部15)に対して気密に接合されると共に、注液孔12が樹脂封止部材18によって封止される。従って、密閉型蓄電デバイス1は、樹脂封止部材18によってデバイスケース30の金属壁部15に形成されている注液孔12が適切に封止された密閉型蓄電デバイス1であるといえる。
【0028】
特に、本実施形態では、金属蓋体11(詳細には金属壁部15)の環状シール面13は、凹凸形状を有する環状粗化面14である(
図4参照)。この環状粗化面14は、平面視円環状をなしている(
図8参照)。そして、樹脂封止部材18は、環状粗化面14の凹部14b内に、環状接合部18bを形成する樹脂が入り込む態様で、環状粗化面14と気密に接合している(
図4参照)。換言すれば、金属壁部15の環状粗化面14の凸部14cが、樹脂封止部材18の環状接合部18bに食い込むことによるアンカー効果によって、樹脂封止部材18の環状接合部18bが環状粗化面14と気密に接合している。このため、樹脂封止部材18の環状接合部18bと金属壁部15の環状粗化面14との間の気密性が高くなるので、密閉型蓄電デバイス1の気密性を高めることができる。
【0029】
なお、環状粗化面14は、金属蓋体11の外表面11bの孔周囲面16に対して、公知の表面粗化処理を行うことによって形成することができる。なお、孔周囲面16は、金属蓋体11の外表面11b(詳細には金属壁部15の外表面15b)のうち、注液孔12の開口12bの周囲に位置する部位である。表面粗化処理としては、例えば、レーザ表面処理、サンドブラスト処理、陽極酸化処理などを挙げることができる。このうち、レーザ表面処理としては、例えば、特開2022-28587号公報に開示されているレーザ表面処理を挙げることができる。なお、本実施形態では、後述するように、レーザ表面処理によって、金属蓋体11の孔周囲面16を環状粗化面14にしている。
【0030】
また、本実施形態の密閉型蓄電デバイス1では、樹脂封止部材18が安全弁部材を兼ねている。すなわち、樹脂封止部材18が、デバイスケース30の内圧が上昇し過ぎるのを防止する安全弁部材としても機能する。このため、デバイスケース30の内圧が開弁圧(解放圧)に達すると、樹脂封止部材18が破壊されることによって、樹脂封止部材18による注液孔12の封止が解放される。これにより、デバイスケース30の内部のガスが、注液孔12を通じてデバイスケース30の外部に排出されて、デバイスケース30の内圧が上昇し過ぎるのを防止することができる。
【0031】
より具体的には、デバイスケース30の内部でガスが発生することによってデバイスケース30の内圧が上昇すると、樹脂封止部材18の下面18gに対する押圧力が大きくなり、樹脂封止部材18に生じる応力が大きくなる。そして、デバイスケース30の内圧が開弁圧(解放圧)に達すると、樹脂封止部材18に生じる応力が樹脂封止部材18の破壊強度に達し、これによって樹脂封止部材18が破壊されて(例えば、開裂して)、樹脂封止部材18に通気孔が形成されて、注液孔12の封止が解放される。これにより、デバイスケース30の内部のガスが、注液孔12(詳細には、樹脂封止部材18に形成された通気孔)を通じてデバイスケース30の外部に排出されるので、デバイスケース30の内圧が上昇し過ぎるのを防止することができる。
【0032】
このように、樹脂封止部材18を安全弁部材としても使用することで、デバイスケース30に、別途ガス排出口を設ける必要がなく、さらに、このガス排出口を封止する安全弁部材を別途設ける必要がない。
【0033】
次に、本実施形態の密閉型蓄電デバイス1の製造方法について説明する。
図5は、実施形態にかかる密閉型蓄電デバイス1の製造方法の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS1(組み付け工程)において、密閉型蓄電デバイス1の構成部品を組み付けて、組み付け構造体1A(
図7参照)を作製する。
【0034】
具体的には、複数枚の正極板60と、複数枚の負極板70と、複数枚のセパレータ80とを用いて、正極板60と負極板70とがセパレータ80を介して積層方向DLに交互に積層された電極体50を作製する(
図3参照)。また、注液孔12が形成された金属蓋体11を用意し、この金属蓋体11に、正極端子部材41と負極端子部材42を組み付ける(
図1及び
図3参照)。
【0035】
その後、金属蓋体11に組み付けられた正極端子部材41と電極体50に含まれる正極板60とを、正極集電タブ(図示なし)を介して接続する。さらに、金属蓋体11に組み付けられた負極端子部材45と電極体50に含まれる負極板70とを、負極集電タブ(図示なし)を介して接続する。これにより、金属蓋体11と電極体50とが、正極端子部材41及び負極端子部材45を介して一体になる。
【0036】
次に、金属蓋体11と一体にされた電極体50を、ケース本体21の内部に収容すると共に、金属蓋体11によってケース本体21の開口21bを閉塞する。この状態で、金属蓋体11とケース本体21とを全周溶接する。これにより、ケース本体21と金属蓋体11とが接合されて、デバイスケース30になると共に、組み付け構造体1Aが作製される(
図7参照)。なお、この時点では、注液孔12は、樹脂封止部材18によって封止されておらず、開放されている。
【0037】
次に、ステップS2(注液工程)において、
図7に示すように、組み付け構造体1Aの金属蓋体11の注液孔12を通じて、デバイスケース30の内部に電解液90を注入する。これにより、電極体50の内部に電解液90を含浸させると共に、デバイスケース30の内部の底面側に電解液90を収容させる。なお、本実施形態では、電解液90として、有機溶媒(例えば、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート)と、LiPF
6とを有する非水電解液を用いている。
【0038】
次に、ステップS3(表面粗化工程)において、レーザ表面処理によって、金属蓋体11の孔周囲面16を環状粗化面14にする(
図8参照)。なお、孔周囲面16は、金属蓋体11の外表面11b(詳細には金属壁部15の外表面15b)のうち、注液孔12の開口12bの周囲に位置する部位である。
【0039】
具体的には、
図8に示すように、公知のレーザ装置110によって、金属蓋体11の孔周囲面16にレーザビームLBを照射して、孔周囲面16を粗化する。レーザビームLBは、注液孔12の開口12bの外周に沿って、円を描くように照射される。より具体的には、複数の同心円を描くように、金属蓋体11の孔周囲面16のうち注液孔12の開口12bに近い部位から順に、レーザビームLBを照射してゆく。これにより、金属蓋体11の外表面11b(詳細には、金属壁部15の外表面15b)に、注液孔12の開口12bを囲む円環状の環状シール面13として、凹凸形状の環状粗化面14を形成することができる(
図9参照)。
【0040】
次に、ステップS4(封止工程)において、樹脂封止部材18によって注液孔12を封止する。換言すれば、注液孔12を封止する樹脂封止部材18を形成する。
図6は、実施形態にかかるステップS4(封止工程)の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS4(封止工程)は、ステップS41(塗布工程)とステップS42(固化工程)とを備える。
【0041】
具体的には、まず、ステップS41(塗布工程)において、金属蓋体11の外表面11b(詳細には、金属壁部15の外表面15b)側から、環状シール面13である環状粗化面14と注液孔12の開口12bとを覆うように、デバイスケース30に対して溶融樹脂MRを塗布する(
図10及び
図11参照)。なお、溶融樹脂MRは、樹脂封止部材18を形成するための樹脂を溶融させたものである。また、
図10は、塗布工程を行っているときの様子を、平面図(上面図)として示した図である。また、
図11は、塗布工程を行っているときの様子を、側面視部分断面図として示した図であり、
図10のE-E部分断面図に相当する。
【0042】
本実施形態のステップS41(塗布工程)は、
図10及び
図11に示すように、加熱部131を有する加熱装置130(例えば、赤外線ヒータ)と、ノズル121を有するダイコータ120とを用いて行われる。具体的には、加熱装置130の加熱部131によって環状粗化面14を加熱しつつ、加熱した環状粗化面14と注液孔12の開口12bとを覆うように、ダイコータ120によって溶融樹脂MRを膜状に塗布してゆく。
【0043】
より具体的には、金属蓋体11の外表面11b(詳細には、金属壁部15の外表面15b)の上方に配置した加熱装置130を、注液孔12の中心軸CLを回転中心軸として、注液孔12の開口12bの外周円(換言すれば、環状粗化面14の内周)に沿って周方向に移動させてゆく(
図10及び
図11参照)。これにより、加熱装置130の加熱部131によって、環状粗化面14を周方向に順次加熱してゆく。なお、加熱装置130の移動による加熱は、加熱装置130の加熱部131が環状粗化面14の上を1周した時点(すなわち、注液孔12の中心軸CLを回転中心軸として加熱装置130が1回転した時点)で終了する。また、本実施形態の塗布工程では、加熱装置130による加熱によって、環状粗化面14の温度を100℃以上にしている。
【0044】
さらに、このように移動する加熱装置130に追従するように、金属蓋体11の外表面11b(詳細には、金属壁部15の外表面15b)の上方に配置したダイコータ120を、ノズル121の吐出口122から溶融樹脂MRを吐出させつつ、注液孔12の中心軸CLを回転中心軸として、注液孔12の開口12bの外周円(換言すれば、環状粗化面14の内周)に沿って周方向に移動させてゆく(
図10及び
図11参照)。これにより、加熱装置130によって加熱された環状粗化面14と注液孔12の開口12bとを覆うように、ダイコータ120によって溶融樹脂MRを膜状に塗布することができる。このとき、
図12に示すように、環状粗化面14の上に塗布された溶融樹脂MRの一部は、環状粗化面14の凹部14b内に流れ込む。
【0045】
なお、ノズル121の吐出口122の幅寸法W1、及び、ノズル121の吐出口122から吐出される溶融樹脂MRの幅寸法W2は、形成される円板形状の溶融樹脂膜18A(
図13参照)の半径と同等である。後述するように、溶融樹脂膜18Aは、固化することによって樹脂封止部材18になる。また、ノズル121の吐出口122が、その幅方向の一方端122bを注液孔12の中心軸CLの位置に一致させつつ、注液孔12の中心軸CLを回転中心軸として回転移動するように、ダイコータ120が回転移動する。従って、ノズル121の吐出口122から吐出された溶融樹脂MRによって形成される膜は、平面視で、注液孔12の中心軸CLの位置を中心とした扇形状となり、ダイコータ120の回転移動が進むにしたがって、扇形状の膜の中心角が大きくなってゆく。
【0046】
従って、ダイコータ120のノズル121が、環状粗化面14の内周に沿って1周する(すなわち、注液孔12の中心軸CLを回転中心軸としてダイコータ120が1回転する)ことによって、環状粗化面14と注液孔12の開口12bとを覆う円板形状の溶融樹脂膜18Aが形成される(
図13参照)。このため、ダイコータ120の移動による溶融樹脂MRの塗布は、ダイコータ120のノズル121が環状粗化面14の内周に沿って1周した時点(すなわち、注液孔12の中心軸CLを回転中心軸としてダイコータ120が1回転した時点)で終了する。なお、
図13は、塗布工程を終了した時点において、デバイスケース30の上方から、溶融樹脂膜18A及びデバイスケース30を平面視した図である。
【0047】
次いで、ステップS42(固化工程)において、溶融樹脂MRからなる溶融樹脂膜18Aを固化させることで、樹脂封止部材18を形成する。なお、本実施形態では、自然冷却によって溶融樹脂膜18Aを固化させている。これにより、「金属壁部15の外表面15bのうち注液孔12の開口12bを囲む環状シール面13」と気密に接合する環状接合部18bを有する、円板形状の樹脂封止部材18が形成される(
図1及び
図3参照)。これにより、樹脂からなる樹脂封止部材18によって、デバイスケース30の金属壁部15に形成されている注液孔12が適切に封止された密閉型蓄電デバイス1が製造される。
【0048】
特に、本実施形態では、環状シール面13が、凹凸形状を有する環状粗化面14となっている。このため、ステップS41(塗布工程)では、
図12に示すように、環状粗化面14の上に塗布された溶融樹脂MRの一部が環状粗化面14の凹部14b内に流れ込む。これにより、ステップS42(固化工程)において溶融樹脂MRを固化させることで、
図4に示すように、環状粗化面14の凹部14b内に環状接合部18bを形成する樹脂の一部が入り込む態様で、環状接合部18bが環状粗化面14と気密に接合する樹脂封止部材18が形成される。このため、樹脂封止部材18の環状接合部18bと金属壁部15の環状粗化面14との間の気密性が高くなるので、密閉型蓄電デバイス1の気密性を高めることができる。
【0049】
ところで、ステップS2(注液工程)において、金属蓋体11の注液孔12を通じてデバイスケース30の内部に電解液90を注入したとき、金属蓋体11の外表面11bのうち注液孔12の開口12bの周囲に位置する部位(すなわち孔周囲面16)に、電解液90が付着することがある。従って、仮に、表面粗化工程の後に注液工程を行う場合は、注液工程を行ったときに環状粗化面14に電解液90が付着し、その後、環状粗化面14に電解液90が付着した状態で封止工程を行うことになる場合がある。この場合は、金属蓋体11の環状粗化面14と樹脂封止部材18の環状接合部18bとの間に電解液90の成分が介在する態様になり得る。このような態様は、好ましい態様とはいえない。
【0050】
これに対し、本実施形態では、封止工程(ステップS4)の前で、且つ、注液工程(ステップS2)の後に、レーザ表面処理による表面粗化工程(ステップS3)を行っている。これにより、ステップS2(注液工程)において、金属蓋体11の孔周囲面16に電解液90が付着した場合でも、ステップS3(表面粗化工程)において、金属蓋体11の孔周囲面16(環状粗化面14にする部位)にレーザビームLBを照射することによって、孔周囲面16に付着している電解液90を蒸発させて除去することができる。これにより、電解液90が付着していない環状粗化面14を形成することができる。このため、本実施形態では、環状粗化面14に電解液90が付着していない状態で封止工程を行うことができるので、金属蓋体11の環状粗化面14と樹脂封止部材18の環状接合部18bとの間に電解液90が介在することを防止できる。
【0051】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0052】
例えば、実施形態の塗布工程では、金属蓋体11の外表面11bの上方に配置したダイコータ120を、ノズル121の吐出口122から溶融樹脂MRを吐出させつつ、注液孔12の中心軸CLを回転中心軸として、注液孔12の開口12bの外周円に沿って周方向に移動させてゆくことで、円板状の溶融樹脂膜18Aを形成した。
【0053】
しかしながら、ダイコータとして、ノズル321の吐出口322の幅寸法W3が、注液孔12の直径よりも大きいダイコータ320を用いて、矩形板状の溶融樹脂膜218Aを形成するようにしても良い。そして、この溶融樹脂膜218Aを固化して、矩形板状の樹脂封止部材218を形成するようにしても良い(
図14~
図17参照)。以下に、この製造方法を、変形形態にかかる製造方法として具体的に説明する。
【0054】
まず、塗布工程について説明する。具体的には、まず、ダイコータ320の吐出口322の幅方向DWが電極体50の積層方向DLに直交し、且つ、吐出口322が下方を向く姿勢(
図14及び
図15参照)で、ダイコータ320を金属蓋体11の外表面11bの上方に配置する。但し、ダイコータ320の吐出口322が、平面視で、注液孔12の開口12bに対して積層方向DLの一方側(
図14及び
図15において左側)に隣り合って位置し、且つ、吐出口322の幅方向中心と注液孔12の中心軸CLとが、平面視で積層方向DLに離間するように、ダイコータ320を配置する。このとき、ダイコータ320の吐出口322は、環状粗化面214の上方であって環状粗化面214と対向する位置に配置される。なお、本変形形態の環状粗化面214は、
図16に示すように、注液孔12の開口12bを囲む環状であって、平面視で、内周が円形(具体的には、注液孔12の開口12bの外周に沿った円形)で外周が四角形である環状をなしている。
【0055】
次いで、ノズル321の吐出口322から溶融樹脂MRを吐出させつつ、このダイコータ320を、積層方向DLの他方側(
図14及び
図15において右側)へ移動させてゆく。そして、ノズル321の吐出口322が、注液孔12の開口12bの上方を通過した後、吐出口322からの溶融樹脂MRの吐出を停止する。これにより、溶融樹脂MRを、金属壁部15の外表面15bのうち環状粗化面214に塗布すると共に、注液孔12の上に架け渡して、注液孔12を覆うように溶融樹脂MRを膜状に塗布することができる。すなわち、環状粗化面214と注液孔12の開口12bとを覆うように、ダイコータ120によって溶融樹脂MRを膜状に塗布することで、矩形板状の溶融樹脂膜218Aを形成する(
図17参照)。このとき、
図12に示すように、環状粗化面214の上に塗布された溶融樹脂MRの一部は、環状粗化面214の凹部214b内に流れ込む。なお、ダイコータ320による溶融樹脂MRの塗布に先だって、図示しない加熱装置によって、環状粗化面214を加熱するのが好ましい。
【0056】
次いで、固化工程において、溶融樹脂MRからなる溶融樹脂膜218Aを固化して、矩形板状の樹脂封止部材218を形成する(
図17参照)。これにより、「金属壁部15の外表面15bのうち注液孔12の開口12bを囲む環状粗化面214」と気密に接合する環状接合部218bを有する、矩形板状の樹脂封止部材218が形成される。
【0057】
また、実施形態では、金属蓋体11の外表面11b側から、環状粗化面14と注液孔12の開口12bとを覆うようにデバイスケース30に対して溶融樹脂MRを塗布し、塗布した溶融樹脂MRを固化させることによって、注液孔12を封止する樹脂封止部材18を形成した。しかしながら、以下に説明するように、予め用意した樹脂フィルムを、金属蓋体11の外表面11bに溶着して、樹脂フィルムからなる樹脂封止部材を形成するようにしても良い。
【0058】
具体的には、まず、配置工程において、金属壁部15の外表面15b側から、金属壁部15の外表面15bのうち少なくとも環状シール面13である環状粗化面14と注液孔12とを覆うように、デバイスケース30の上に樹脂フィルムを配置する。次いで、溶融工程において、前記樹脂フィルムのうち環状粗化面14の上に位置する部位を溶融させて溶融樹脂とする。このとき、環状粗化面14の上に位置する溶融樹脂の一部が環状粗化面14の凹部14b内に流れ込む。次いで、固化工程において、この溶融樹脂を固化させることで、環状粗化面14と気密に接合する環状接合部が形成されると共に、注液孔12を封止する樹脂封止部材が形成される。より具体的には、環状粗化面14の凹部14b内に環状接合部を形成する樹脂の一部が入り込む態様で、環状接合部が環状粗化面14と気密に接合する樹脂封止部材が形成される。この製造方法では、封止工程は、配置工程と溶融工程と固化工程とを備える。
【0059】
また、実施形態では、金属蓋体11の金属壁部15に注液孔12が形成され、この注液孔12を封止する樹脂封止部材18を備える密閉型蓄電デバイス1を示した。しかしながら、本発明には、ケース本体21の金属壁部に注液孔が形成され、この注液孔を封止する樹脂封止部材を備える密閉型蓄電デバイスも含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 密閉型蓄電デバイス
11 金属蓋体
11b 金属蓋体の外表面
12 注液孔
12b 注液孔の開口
13 環状シール面
14,214 環状粗化面
14b,214b 凹部
15 金属壁部
15b 金属壁部の外表面
18,218 樹脂封止部材(封止部材)
18A,218A 溶融樹脂膜
18b,218b 環状接合部
21 ケース本体
30 デバイスケース
50 電極体
90 電解液
MR 溶融樹脂
S2 注液工程
S4 封止工程
S41 塗布工程
S42 固化工程