(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173781
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】情報提供システム、情報提供方法、および、情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20231130BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20231130BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231130BHJP
【FI】
G01C21/36
G01C21/26 C
G01C21/26 P
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086261
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】518236513
【氏名又は名称】connectome.design株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 弥来
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
【テーマコード(参考)】
2F129
5L049
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129BB03
2F129DD38
2F129EE43
2F129FF12
2F129FF20
2F129FF60
2F129FF69
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】ユーザの嗜好や行動に基づいて、再生する音を選択する。
【解決手段】音により情報を提供する情報提供システムは、ユーザがいるユーザ位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、1以上の音群情報を記憶する記憶部であって、1以上の音群情報のそれぞれは、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、範囲情報と対応づけられそれぞれ音を表す複数の音情報と、を含む、記憶部と、位置取得部が取得した位置情報に基づいて、音群情報を参照して、位置情報が表す位置を含む範囲を表す範囲情報と対応づけられた1以上の音情報の音を再生する音再生部と、を備える。音再生部は、過去に位置取得部が取得した位置情報に基づくユーザの行動とユーザの嗜好との少なくとも一方を用いて、位置情報が表す位置を含む範囲を表す範囲情報に対応付けられている複数の音情報のうちの1以上の音情報を選択し、選択した音情報の音を再生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音により情報を提供する情報提供システムであって、
ユーザがいるユーザ位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、
1以上の音群情報を記憶する記憶部であって、前記1以上の音群情報のそれぞれは、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられそれぞれ音を表す複数の音情報と、を含む、前記記憶部と、
前記位置取得部が取得した前記位置情報に基づいて、前記音群情報を参照して、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音情報の前記音を再生する音再生部と、を備え、
前記音再生部は、過去に前記位置取得部が取得した前記位置情報に基づく前記ユーザの行動と前記ユーザの嗜好との少なくとも一方を用いて、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報に対応付けられている前記複数の音情報のうちの1以上の前記音情報を選択し、選択した前記音情報の前記音を再生する、再生処理を実行することができ、
前記嗜好は、前記ユーザによって入力される情報と、前記音再生部によって前記音再生部が過去に再生した態様に基づいて推定される情報との少なくとも一方に基づいて定められる、情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提供システムであって、
前記範囲情報に対応づけられている前記複数の音情報は、詳細音情報と、前記詳細音情報よりも前記詳細音情報の前記音が表す対象についての情報量が少ない簡易音情報と、を含み、
前記音再生部は、前記再生処理において、前記嗜好と前記対象とが合致する場合、前記詳細音情報を選択する、情報提供システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報提供システムであって、
前記範囲情報に対応づけられている前記複数の音情報は、詳細音情報と、前記詳細音情報よりも前記詳細音情報の前記音が表す対象についての情報量が少ない簡易音情報とを含み、
前記音再生部は、前記再生処理において、過去に前記再生処理が実行された前記音群情報に含まれる前記範囲情報が表す前記範囲に再度前記ユーザが進入した場合は、前記簡易音情報を選択する、情報提供システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の情報提供システムであって、
前記音群情報は、それぞれ前記音情報と対応づけられ、前記音情報の前記音が表す対象の分類を示す分類情報を含み、
前記嗜好は前記分類毎に好きな度合いを示す嗜好度を含み、
前記音再生部は、前記再生処理において、前記複数の音情報のうち、前記嗜好度が予め定められた閾値以上である前記分類を示す前記分類情報に対応づけられた、前記音情報を選択する、情報提供システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報提供システムであって、
前記音再生部は、前記ユーザが前記再生処理を中断した場合、前記再生処理を中断しない場合よりも、前記再生処理が実行された前記音情報に対応づけられた前記分類情報が示す前記分類の前記嗜好度を小さい値に定める、情報提供システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の情報提供システムであって、更に、
前記ユーザの頭部に装着される音声再生装置を備え、
前記音群情報は、それぞれ前記音情報と対応づけられ、前記音情報の前記音の発生源である音源の位置を示す音源情報を含み、
前記音再生部は、前記再生処理において、前記ユーザ位置と前記音源の位置とに応じて前記音情報に立体音響処理を施した音を前記音声再生装置で再生する、情報提供システム。
【請求項7】
ユーザにより携帯されるコンピュータが、音により情報を提供する情報提供方法であって、
前記ユーザがいるユーザ位置を示す位置情報を取得する位置取得工程と、
地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられそれぞれ音を表す複数の音情報と、を含む、音群情報を準備する情報準備工程と、
前記位置取得工程で取得した前記位置情報に基づいて、前記音群情報を参照して、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音情報の前記音を再生する音再生工程と、を含み、
前記音再生工程は、過去に前記位置取得工程で取得した前記位置情報に基づく前記ユーザの行動と前記ユーザの嗜好との少なくともいずれか一方を用いて、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報に対応付けられている前記複数の音情報のうちの1以上の前記音情報を選択し、選択した前記音情報の前記音を再生する、再生処理を実行する工程であり、
前記嗜好は、前記ユーザによって入力される情報と、前記音再生工程において過去に再生した態様に基づいて推定される情報との少なくとも一方に基づいて定められる、情報提供方法。
【請求項8】
音により情報を提供する情報提供プログラムであって、
ユーザがいるユーザ位置を示す位置情報を取得する位置取得機能と、
地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられそれぞれ音を表す複数の音情報と、を含む、音群情報を取得する情報取得機能と、
取得した前記位置情報に基づいて、前記音群情報を参照して、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音情報の前記音を再生する音再生機能と、をコンピュータに実現させ、
前記音再生機能は、過去に前記位置取得機能が取得した前記位置情報に基づく前記ユーザの行動と前記ユーザの嗜好との少なくともいずれか一方を用いて、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報に対応付けられている前記複数の音情報のうちの1以上の前記音情報を選択し、選択した前記音情報の前記音を再生する、再生処理を実行する機能であり、
前記嗜好は、前記ユーザによって入力される情報と、前記再生処理において過去に再生した態様に基づいて推定される情報との少なくとも一方に基づいて定められる、情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報提供システム、情報提供方法、および、情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの位置情報に基づいて、対応する音声を再生して情報を提供する技術が知られている。特許文献1には、ユーザの嗜好や行動に基づいて、対応する音声を再生するか否かを決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの嗜好や行動に基づいて、再生する音を変更したいという要望があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の形態によれば音による情報を提供する情報提供システムが提供される。この情報提供システムは、ユーザがいるユーザ位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、1以上の音群情報を記憶する記憶部であって、前記1以上の音群情報のそれぞれは、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられそれぞれ音を表す複数の音情報と、を含む、前記記憶部と、前記位置取得部が取得した前記位置情報に基づいて、前記音群情報を参照して、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音情報の前記音を再生する音再生部と、を備える。前記音再生部は、過去に前記位置取得部が取得した前記位置情報に基づく前記ユーザの行動と前記ユーザの嗜好との少なくとも一方を用いて、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報に対応付けられている前記複数の音情報のうちの1以上の前記音情報を選択し、選択した前記音情報の前記音を再生する、再生処理を実行することができる。前記嗜好は、前記ユーザによって入力される情報と、前記音再生部によって前記音再生部が過去に再生した態様に基づいて推定される情報との少なくとも一方に基づいて定められる。
この情報供給システムによれば、ユーザの位置情報に対応する複数の音情報のうち、ユーザの嗜好や行動に基づいて、再生する音を選択できる。
(2)上記形態の情報提供システムにおいて、前記範囲情報に対応づけられている前記複数の音情報は、詳細音情報と、前記詳細音情報よりも前記詳細音情報の前記音が表す対象についての情報量が少ない簡易音情報と、を含み、前記音再生部は、前記再生処理において、前記嗜好と前記対象とが合致する場合、前記詳細音情報を選択してもよい。
このような形態によれば、嗜好に基づいて再生する音を選択できる。
(3)上記形態の情報提供システムにおいて、前記範囲情報に対応づけられている前記複数の音情報は、詳細音情報と前記詳細音情報よりも前記詳細音情報の前記音が表す対象についての情報量が少ない簡易音情報とを含み、前記音再生部は、前記再生処理において、過去に前記再生処理が実行された前記音群情報に含まれる前記範囲情報が表す前記範囲に再度前記ユーザが進入した場合は、前記簡易音情報を選択してもよい。
このような形態によれば、一度再生された説明を重複して再生することを抑制できる。
(4)上記形態の情報提供システムにおいて、前記音群情報は、それぞれ前記音情報と対応づけられ、前記音情報の前記音が表す対象の分類を示す分類情報を含み、前記嗜好は前記分類毎に好きな度合いを示す嗜好度を含み、前記音再生部は、前記再生処理において、前記複数の音情報のうち、前記嗜好度が予め定められた閾値以上である前記分類を示す前記分類情報に対応づけられた、前記音情報を選択してもよい。
このような形態によれば、ユーザの嗜好に合致する分類の音を再生することができる。
(5)上記形態の情報提供システムにおいて、前記音再生部は、前記ユーザが前記再生処理を中断した場合、前記再生処理を中断しない場合よりも、前記再生処理が実行された前記音情報に対応づけられた前記分類情報が示す前記分類の前記嗜好度を小さい値に定めてもよい。
このような形態によれば、ユーザが最後まで音を聞いた場合に、途中で聞くのを止めた場合よりも嗜好度を高く設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】情報提供処理の一例を示したフローチャートである。
【
図3】音再生処理の一例を示したフローチャートである。
【
図5】範囲情報の表す範囲の一例を示した図である。
【
図6】第2実施形態におけるユーザの移動を示した図である。
【
図7】第3実施形態におけるユーザの移動を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態に係る情報提供システム100の構成を示す図である。情報提供システム100は、ユーザの位置に応じて、案内や説明を行う情報を音声によりユーザに提供する。本実施形態において、情報提供システム100が、観光地を回るユーザに、観光スポットに関する情報を提供する例を説明する。情報提供システム100は、処理装置110と、サーバ120と、音声再生装置130とを含む。
【0009】
サーバ120は、記憶部20を有する。記憶部20は、複数の音群情報を記憶している。音群情報は、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、範囲情報と対応づけられ音を表す複数の音情報と、を含む情報である。本実施形態において、音群情報は、音情報と対応づけられた分類情報を含む。分類情報は、対応づけられた音情報の音が表す対象の分類を示す情報である。例えば、音情報が名古屋城の解説音声である場合、音情報の音が表す対象は「名古屋城」であり、この音情報に対応づけられた分類情報が示す分類は「城」である。
【0010】
音声再生装置130は、処理装置110から受信した信号が表す音を出力する携帯型の装置である。本実施形態において、音声再生装置130は、ユーザの頭部に装着される装置であり、イヤホンである。ユーザは、音声再生装置130を耳に装着して、観光地を回るものとする。
【0011】
処理装置110は、位置取得部10と音再生部30と嗜好取得部40とを備える。処理装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウエア回路で実現してもよい。本実施形態においては、処理装置110は、ユーザが保有するスマートフォンである。処理装置110には、ユーザに観光地に関する情報を提供するためのアプリケーションソフトウェアがインストールされているものとする。ユーザは、アプリケーションソフトウェアを実行することにより、情報提供システム100から観光地に関する情報の提供を受けることができる。ユーザは、処理装置110を持ち歩いて、観光地を回るものとする。
【0012】
位置取得部10は、現在のユーザの位置であるユーザ位置を示す位置情報を取得する。位置取得部10は、例えば、GPS(Global Positioning System)などの汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))が検出した位置情報を取得する。本実施形態において、位置取得部10は、処理装置110が備えるGPSアンテナ(図示せず)から位置情報を取得する。
【0013】
音再生部30は、位置情報が表す位置を含む範囲を表す1個の範囲情報に対応付けられている複数の音情報のうちの選択した1個以上の音情報のそれぞれの音を再生する、音再生処理を実行することができる。音再生部30は、音再生処理において、ユーザの行動と嗜好との少なくともいずれか一方を用いて、音情報を選択する。音情報の選択方法の詳細については後述する。本実施形態において、音再生部30は、位置取得部10が取得した位置情報が表すユーザ位置を含む範囲を表す範囲情報が1以上存在する場合に、いずれか1つの範囲情報について音再生処理を実行する。
【0014】
嗜好取得部40は、ユーザの嗜好を示す嗜好情報を取得する。本実施形態において、嗜好取得部40は、処理装置110が備える入力部によってユーザが入力した嗜好情報を取得する。また、嗜好取得部40は、サーバ120からユーザの嗜好情報を取得しても良い。
【0015】
図2は、情報提供処理の一例を示したフローチャートである。情報提供処理は、情報提供システム100が音によりユーザに情報を提供する処理である。この処理は情報提供システム100の動作中、繰り返し実行される処理である。まず、位置取得部10は、ステップS100において位置情報を取得する。この工程を「位置取得工程」ともいう。
【0016】
続いて、音再生部30は、ステップS110において、ステップS100で取得した位置情報に基づいて、記憶部20に記憶された複数の音群情報を参照して、音を再生する。この工程を「音再生工程」ともいう。なお、処理装置110は、ユーザ位置周辺の位置を含む範囲を表す範囲情報を含む音群情報を予め記憶部20から取得して、処理装置110の記憶領域に記憶してもよい。この工程を「情報準備工程」ともいう。
【0017】
図3は、音再生処理の一例を示したフローチャートである。音再生処理は、
図2に示すステップS110において、音再生部30が音を再生する一連の処理である。まず、ステップS200において、音再生部30は、ユーザ位置が記憶部20に記憶された音群情報のいずれかの音群情報が含む範囲情報が表す範囲に含まれるか否かを判定する。音再生部30は、ユーザ位置がいずれかの範囲に含まれる場合、ステップS210の処理に進む。一方、音再生部30は、ユーザ位置がいずれの範囲にも含まれない場合、音再生処理を終了する。
【0018】
ステップS210において、音再生部30は、ユーザ位置を含む1個の範囲情報に対応付けられている複数の音情報のうち、ユーザの行動と嗜好との少なくともいずれか一方を用いて1個以上の音情報を選択する。本実施形態において、音再生部30は、ユーザによって入力される情報に基づいてユーザの嗜好を定める。より具体的には、嗜好取得部40が取得した嗜好情報に基づいて、ユーザの嗜好を定める。本実施形態において、嗜好情報は、ユーザが興味のある対象を示す情報であり、寺に興味があることを示している。例えば、ある範囲情報に対応づけられている複数の音情報が、詳細音情報と詳細音情報よりも詳細音情報の音が表す対象についての情報量が少ない簡易音情報とを含む場合において、音再生部30は、嗜好と音情報の表す音の対象とが合致する場合、詳細音情報を選択する。本実施形態において、嗜好と対象とが合致するとは、嗜好情報が示すユーザが興味のある対象と、音情報の表す音の対象と、が同じであることである。
【0019】
ステップS220において、音再生部30は、ステップS210で選択した1個以上の音情報の音を再生する。ステップS210において複数の音情報を選択した場合、音再生部30は、複数の音情報のそれぞれの音を同時に再生するのではなく、複数の音情報のそれぞれの音を順に再生する。ステップS210とS220処理を併せて「再生処理」ともいう。なお、音再生部30は、再生していた音情報に対応づけられている範囲情報が表す範囲にユーザ位置が含まれなくなった場合、その音情報の再生を停止してもよい。
【0020】
図4は、音群情報の一例を示した図である。第1音群情報Di1が含む範囲情報は範囲A1を表し、音S1を表す音情報と、音S2を表す音情報とを含む。音S1は、詳細な解説音声である。音S2は、音S1よりも音S2が表す対象の情報量が少ない簡易な解説音声である。すなわち、音S1を表す音情報は詳細音情報であり、音S2を表す音情報は簡易音情報である。音S1および音S2が表す対象は、いずれも寺と神社の建築物と変遷についての解説音声である。すなわち、音S1を表す音情報と、音S2を表す音情報と、に対応づけられたそれぞれの分類情報は、建築と歴史を表す。
【0021】
第2音群情報Di2が含む範囲情報は範囲A2を表し、音S3を表す音情報と、音S4を表す音情報と、音S5を表す音情報と、音S6を表す音情報とを含む。音S3は、建築の解説音声である。音S4は、歴史の解説音声である。音S5は、植物の解説音声である。音S6は、人物の解説音声である。すなわち、音S3を表す音情報に対応づけられた分類情報は、建築を表し、音S4を表す音情報に対応づけられた分類情報は、歴史を表し、音S5を表す音情報に対応づけられた分類情報は、植物を表し、音S6を表す音情報に対応づけられた分類情報は、人物を表す。
【0022】
図5は、範囲情報の表す範囲の一例を示した図である。範囲A1は、範囲A2を含む範囲である。以下では、
図5に示す矢印D1に沿ってユーザが移動する場合を例として、情報提供処理を説明する。ユーザは、地点P1から地点P2へと移動する。地点P1は、ユーザ位置が記憶部20に記憶された音群情報のいずれの音群情報が含む範囲情報にも含まれない位置である。地点P2は、範囲A1に含まれる位置である。
【0023】
音再生部30は、ユーザが範囲A1内に進入した場合に、音S1を再生する。ユーザは範囲A2内に進入しないため、音再生部30は、第2音群情報Di2については再生処理を実行しない。
【0024】
以上で説明した本実施形態の情報供給システムによれば、音再生部30は、ユーザの位置情報に対応する複数の音情報のうち、ユーザの嗜好や行動に基づいて、再生する音を選択できる。
【0025】
B.第2実施形態:
第2実施形態は、再生処理において、音再生部30が、ユーザの行動を用いて音情報を選択する点が、第1実施形態と異なる。第2実施形態の情報提供システム100の構成は、第1実施形態の情報提供システム100の構成と同一であるため、情報提供システム100の構成の説明は省略する。
【0026】
本実施形態において、音再生部30は、過去に位置取得部10が取得した位置情報に基づくユーザの行動を用いて音情報を選択する。例えば、ある範囲情報に対応づけられている複数の音情報が、詳細音情報と簡易音情報とを含む場合において、音再生部30は、過去に再生処理が実行された音群情報に含まれる範囲情報が表す範囲に再度ユーザが進入した場合は、簡易音情報を選択する。また、音再生部30は、過去に一度も再生処理が実行されていない音群情報に含まれる範囲情報が表す範囲にユーザが進入した場合は、詳細音情報を選択する。本実施形態において、過去に位置取得部10が取得した位置情報や、過去に再生処理が実行された音群情報に含まれる範囲情報は、処理装置110の記憶領域に記憶されている。
【0027】
図6は、第2実施形態におけるユーザの移動を示した図である。以下では、
図6に示す矢印D2に沿ってユーザが移動する場合を例として、情報提供処理を説明する。ユーザは、地点P3から地点P2へと移動する。地点P3は、ユーザ位置が記憶部20に記憶された音群情報のいずれの音群情報が含む範囲情報にも含まれない位置である。
【0028】
まず、音再生部30は、ユーザが範囲A1内に進入した場合に、音S1を再生する。この場合、初めてユーザが範囲A1内に進入するため、詳細音情報について再生する。続いて、音再生部30は、ユーザが範囲A1の外に出た場合に、音S1の再生を停止する。または、ユーザが範囲A1の外に出る前に音S1の再生が終了している。続いて、音再生部30は、ユーザが範囲A1内に再度進入した場合に、音S2を再生する。この場合、ユーザが範囲A1内に進入するのは2度目であるため、簡易音情報について再生する。また、ユーザは範囲A2内に進入しないため、音再生部30は、第2音群情報Di2については再生処理を実行しない。
【0029】
以上で説明した第2実施形態の情報供給システムによれば、音再生部30は、一度再生された説明を重複して再生することを抑制できる。
【0030】
C.第3実施形態:
第3実施形態は、再生処理において、音再生部30が、嗜好度が予め定められた閾値以上である分類を示す分類情報に対応づけられた、音情報を選択する点が、第1実施形態と異なる。嗜好度は分類毎に好きな度合いを示す値である。第3実施形態の情報提供システム100の構成は、第1実施形態の情報提供システム100の構成と同一であるため、情報提供システム100の構成の説明は省略する。
【0031】
嗜好度は、嗜好に含まれる情報である。嗜好度は大きい程、ユーザが好きな度合いが高いことを示す。本実施形態において、嗜好度は、音再生部30によって、音再生部30が過去に再生した態様に基づいて推定される情報に基づいてユーザ毎に定められ、処理装置110の記憶領域に記憶されている。例えば、音再生部30は、次の式(1)によって嗜好度を定める。
【0032】
Pd=Σ(Cr×Pr)…(1)
ここでPdは嗜好度であり、Crはある音情報の音において音が表す対象の嗜好度を求める分類の占める割合である。Crは、例えば、分類情報に含まれている。Prはある音情報の音を聞いた度合いである。本実施形態において、Prは、ある音情報の音を聞いた割合であり、再生処理において選択された音情報の音について、最後まで全部再生した場合に100%とし、全く再生しなかった場合に0%とする。
【0033】
式(1)によって嗜好度を定めることにより、音再生部30は、例えば、ユーザが再生処理を中断した場合、再生処理を中断しない場合よりも、再生処理が実行された音情報に対応づけられた分類情報が示す分類の嗜好度を小さい値に定める。本実施形態において、建築の嗜好度は、30%であり、歴史の嗜好度は、40%であり、植物の嗜好度は、70%であり、人物の嗜好度は、50%である。
【0034】
本実施形態において、音再生部30は、嗜好度が50%以上である分類を示す分類情報に対応づけられた、音情報を選択する。音再生部30は、複数の音情報を選択した場合、嗜好度が高いものから順に再生する。また、音再生部30は、範囲情報に対応づけられている複数の音情報が全て、嗜好度が50%未満の分類を示す分類情報に対応づけられている音情報である場合、簡易音情報を選択する。
【0035】
図7は、第3実施形態におけるユーザの移動を示した図である。以下では、
図7に示す矢印D3に沿ってユーザが移動する場合を例として、情報提供処理を説明する。ユーザは、地点P3から地点P4へと移動する。地点P4は、寺を示す位置であり、範囲A1と範囲A2とに含まれる位置である。
【0036】
まず、音再生部30は、ユーザが範囲A1内に進入した場合に、音S2を再生する。続いて、ユーザが範囲A2内に進入した場合に、音S2の再生を停止し、音S5と音S6とを再生する。すなわち、音再生部30は、先に進入していた範囲A1の範囲情報について再生処理を停止し、後に進入した範囲A2の範囲情報について再生処理を優先している。
【0037】
以上で説明した第3実施形態の情報供給システムによれば、ユーザの嗜好に合致する分類の音を再生することができる。また、音再生部30は、ユーザが最後まで音を聞いた場合に、途中で聞くのを止めた場合よりも嗜好度を高く設定できる。
【0038】
D.他の実施形態:
(D1)上述した実施形態において、音群情報は、サーバ120に記憶されている。これに限らず、音群情報は処理装置110に記憶されていてもよい。すなわち、処理装置110が記憶部20を備えていてもよい。
【0039】
(D2)上述した実施形態において、音声再生装置130が音再生部30を備えていてもよい。また、音声再生装置130が位置取得部10を備えていてもよい。
【0040】
(D3)上述した実施形態において、範囲情報は、高さ方向の情報を持っていてもよい。この場合、位置取得部10は、位置情報として、例えば、高度センサからユーザの位置を取得する。
【0041】
(D4)上述した実施形態において、音再生部30は、再生処理が実行されている範囲情報が表す範囲からユーザが出た時点から予め定められた時間内に、再度その範囲情報が表す範囲内に進入した場合は、その範囲情報について再生処理を実行しないようにしてもよい。このような態様とすれば、例えば、ある範囲の境界周辺を移動している場合に、何度もその範囲を表す範囲情報に対応づけられた音情報の音が再生されることを抑制できる。
【0042】
(D5)上述した実施形態において、音再生部30は、再生処理が実行されている範囲情報が表す範囲からユーザが出た時点から予め定められた時間内は、その範囲情報について再生処理を継続してもよい。このような態様とすれば、例えば、ある範囲の境界周辺を移動している場合であっても、その範囲を表す範囲情報に対応づけられた音情報の音の再生が途切れずに、継続的に聞くことができる。
【0043】
(D6)上述した実施形態において、嗜好と対象とが合致するとは、嗜好情報が示すユーザが興味のある対象と音情報の表す音の対象とが同じであることである。これに限らず、嗜好と対象とが合致するとは、嗜好情報が示すユーザが興味のある対象の分類と、音情報の表す音の対象の分類と、が同じであることでもよい。
【0044】
(D7)上述した実施形態において、音再生部30は、ユーザの行動や嗜好を用いて、いずれの音情報も選択せず、再生処理を実行しなくてもよい。例えば、音再生部30は、過去に再生処理が2回以上実行された音群情報に含まれる範囲情報が表す範囲にユーザが進入した場合や、複数の音情報が全て、嗜好度が閾値未満の分類を示す分類情報に対応づけられている音情報である場合において、いずれの音情報も選択せず、再生処理を実行しなくてもよい。
【0045】
(D8)上述した実施形態において、音再生部30は、ユーザ位置と音源とに応じて音情報に立体音響処理を施した音を音声再生装置130に出力してもよい。この場合、音群情報は、それぞれ音情報と対応づけられ、音情報の音の発生源である音源の位置を示す音源情報を含む。また、位置取得部10は、ユーザの顔が向いている方向である顔方向を示す顔方向情報を取得してもよい。音再生部30は、例えば、真北を0度として、ユーザ位置と音源との2点間の方位角を演算し、2点間の方位角と顔方向との相対角度に応じて立体音響を生成する。このような形態によれば、情報提供システム100は、ユーザに臨場感を感じさせながら、情報をユーザに提供することができる。
【0046】
(D9)上述した第2実施形態において、音再生部30は、先に進入していた範囲A1の範囲情報について再生処理を停止し、後に進入した範囲A2の範囲情報について再生処理を優先している。この代わりに、音再生部30は、先に進入していた範囲A1の範囲情報について再生処理を継続し、後に進入した範囲A2の範囲情報について再生処理を実行しなくてもよい。すなわち、再生処理が実行されている第1範囲情報が表す第1範囲に含まれる位置であって第2範囲に含まれない位置から、第2範囲に含まれる位置に、ユーザが進入した場合、第2範囲情報について再生処理を実行せず、第1範囲情報について再生処理を継続する。このような態様とすれば、先に進入していた範囲の範囲情報に対応する音情報の出力が継続される。そのため、再生されていた音が途中で切れてしまうことを抑制できる。また、情報提供システム100は、先に進入していた範囲の範囲情報の再生処理と、後に進入した範囲の範囲情報の再生処理とのいずれを優先して実行するかを、ユーザが選択できるような構成を備えていてもよい。例えば、処理装置110は、ユーザが選択できる選択部を備える。
【0047】
(D10)上述した第2実施形態において、音再生部30は、過去に再生処理が実行された音群情報に含まれる範囲情報が表す範囲A1に再度ユーザが進入した場合は、簡易音情報を選択している。これに限らず、音再生部30は、ユーザが範囲A1に進入して予め定められた期間経過した後に、再度範囲Aに進入した場合には詳細音情報を選択するようにしてもよい。この期間は、例えば、1日や1週間であり、ユーザが期間の長さを選択して設定してもよい。
【0048】
(D11)上述した第2実施形態において、音群情報Di1、Di2は、分類情報を含んでいる。これに限らず、音群情報Di1、Di2は、分類情報を含んでいなくてもよい。
【0049】
(D12)上述した第3実施形態において、嗜好度は、音再生部30によって、音再生部30が過去に再生した態様に基づいて推定される情報に基づいて定められている。これに限らず、嗜好度は、ユーザによって直接入力されてもよい。この場合、嗜好取得部40が、嗜好度を含む嗜好情報を取得する。
【0050】
(D13)上述した第3実施形態において、音再生部30は、嗜好度が予め定められた閾値以上である分類を示す分類情報に対応付けられた音情報を選択している。これに限らず、音再生部30は、ユーザ位置を含む1個の範囲情報に対応付けられている複数の分類情報の各分類のユーザの嗜好度が全体的に低い場合には閾値を下げてもよい。嗜好度が全体的に低い場合とは、例えば、ユーザ位置を含む1個の範囲情報に対応付けられている複数の分類情報の各分類のユーザの嗜好度が予め定められた値より小さい場合や、ユーザ位置を含む1個の範囲情報に対応付けられている複数の音情報のうち、嗜好度が閾値以上である音情報の数が予め定められた値より小さい場合である。また、音再生部30は、嗜好度が閾値未満の場合には、簡易音情報を選択し、嗜好度が閾値以上の場合には、詳細音情報を選択してもよい。
【0051】
(D14)上述した第3実施形態において、音再生部30は、音再生部30が過去に再生した態様に基づいて推定される情報として、音情報の音を聞いた割合を用いて嗜好度を定めている。これに限らず、音再生部30が過去に再生した態様に基づいて推定される情報は、再生処理が実行された範囲情報の範囲にユーザが滞在した時間やユーザの移動速度を用いてもよい。この場合、音再生部30は、例えば、ユーザが滞在した時間が長い場合、滞在した時間が短い場合よりも、再生処理が実行された音情報に対応づけられた分類情報が示す分類の嗜好度を大きい値に定めてもよく、また、ユーザの移動速度が遅い場合、移動速度が速い場合よりも、再生処理が実行された音情報に対応づけられた分類情報が示す分類の嗜好度を大きい値に定めてもよい。また、音再生部30が過去に再生した態様に基づいて推定される情報は、再生処理が実行された日時でもよい。この場合、音再生部30は、例えば、ユーザが再生処理を現在に近い過去に実行した場合、再生処理を現在より遠い過去に実行した場合よりも、再生処理が実行された音情報に対応づけられた分類情報が示す分類の嗜好度を大きい値に定める。
【0052】
(D15)上述した第3実施形態において、ある音情報の音を聞いた度合を示すPrは、ある音情報の音を聞いた割合である。これに限らず、Prは、ある音情報の音を聞いた割合から重み付けのための変数を減算した値でもよく、重み付けのための変数を乗算した値でもよい。
【0053】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…位置取得部、20…記憶部、30…音再生部、40…嗜好取得部、100…情報提供システム、110…処理装置、120…サーバ、130…音声再生装置