(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173784
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】撮像レンズおよびそれを備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20231130BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20231130BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086269
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 滋彦
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA02
2H087LA01
2H087LA03
2H087PA04
2H087PA17
2H087PB04
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】 小型で高い解像度を有しながら、画角が広く周辺光量が高い撮像レンズおよびそれを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】 撮像レンズは、物体側より順に、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズ、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズ、絞り、正の屈折力を有する第3レンズ、および、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズが配置されたレンズ系から構成され、レンズ系は、以下の条件式を満足する。
-3<f1/f<-1.15 ・・・(1)
2.4<TTL/ImgH<5 ・・・(2)
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、fはレンズ系の焦点距離、TTLはレンズ系の全長、ImgHは、レンズ系の最大像高である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズ、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズ、絞り、正の屈折力を有する第3レンズ、および、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズが配置されたレンズ系から構成され、
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、撮像レンズ。
-3<f1/f<-1.15 ・・・(1)
2.4<TTL/ImgH<5 ・・・(2)
ただし、f1は前記第1レンズの焦点距離、fは前記レンズ系の焦点距離、TTLは前記レンズ系の全長、ImgHは、前記レンズ系の最大像高である。
【請求項2】
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、請求項1に記載の撮像レンズ。
EPT/TTL<0.3 ・・・(3)
ただし、EPTは、前記レンズ系の入射瞳位置である。
【請求項3】
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、請求項1または2に記載の撮像レンズ。
0.05<D1/f<1 ・・・(4)
ただし、D1は、前記第1レンズの中心厚である。
【請求項4】
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、請求項1または2に記載の撮像レンズ。
f/EPD<2.0 ・・・(5)
ただし、EPDは、前記レンズ系の入射瞳径である。
【請求項5】
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、請求項1または2に記載の撮像レンズ。
f2/f<40 ・・・(6)
ただし、f2は、前記第2レンズの焦点距離である。
【請求項6】
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、請求項1または2に記載の撮像レンズ。
1.5<f3/f<25 ・・・(7)
ただし、f3は、前記第3レンズの焦点距離である。
【請求項7】
請求項1または2に記載の撮像レンズを備えた、撮像装置。
【請求項8】
光を照射する光源と、
前記光源からの光が被写体で反射した反射光を、前記撮像レンズを通して受光する受光素子と、を備え、
前記光源が光を照射してから前記反射光を受光するまでの時間を計測することにより前記被写体までの距離を算出する、測距センサとして構成される、請求項7に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像レンズおよびそれを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマーフォン等の携帯通信端末に搭載される撮像装置の高性能化に代表されるように、広く電子機器に搭載される撮像装置には、より小型で解像度の高い撮像レンズが望まれている。
【0003】
また、最近では、ToF(Time Of Flight)センサ等の測距センサを搭載する電子機器が増えてきている。このような測距センサは、光源から光を照射してから被写体で反射した反射光が受光素子で受光されるまでの時間から当該被写体までの距離を計測する。このような測距センサも撮像装置の一種であり、反射光を、撮像レンズを通して受光素子に受光させている。測距センサに用いられる撮像レンズにおいては小型でFナンバーが小さく解像度の高い撮像レンズが望まれている。さらに近年では、より広い範囲を捉えるために、広い画角で周辺光量の高い撮像レンズの要望が高まっている。
【0004】
例えば、下記特許文献1,2には、4枚構成の撮像レンズについて、広角化および小型化のための提案が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4797115号公報
【特許文献2】特許第6047701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の撮像レンズは、広い画角でコンパクトなレンズ系を提案している。しかしながら、絞りが第3レンズの後ろ側に配置されており、入射瞳位置が撮像面側に近づくため前玉径を小さくするのが難しい。また、全長を短くすると絞り以降の光線角度がきつくなり、周辺光量を確保するのも難しくなってしまう。
【0007】
特許文献2に記載の撮像レンズは、広い画角で解像度の高いレンズ系を提案している。しかしながら、特許文献1と同様に、絞りが第3レンズの後ろ側に配置されており、小型化と周辺光量を確保することの両立が難しい。また、第1レンズの屈折力が弱く前玉径の小型化が難しいといった課題が残る。
【0008】
本開示は、上記のような課題を鑑みてなされたものであり、小型で高い解像度を有しながら、画角が広く周辺光量が高い撮像レンズおよびそれを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一形態に係る撮像レンズは、物体側より順に、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズ、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズ、絞り、正の屈折力を有する第3レンズ、および、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズが配置されたレンズ系から構成され、前記レンズ系は、以下の条件式を満足するものである。
【0010】
-3<f1/f<-1.15 ・・・(1)
2.4<TTL/ImgH<5 ・・・(2)
ただし、f1は前記第1レンズの焦点距離、fは前記レンズ系の焦点距離、TTLは前記レンズ系の全長、ImgHは、最大像高である。
【0011】
本開示の他の態様に係る撮像装置は、上記構成の撮像レンズを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、小型で高い解像度を有しながら、画角が広く周辺光量が高い撮像レンズおよびそれを備えた撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズが適用される測距センサの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例1における撮像レンズの構成図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す撮像レンズの像高に対する相対光量を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本開示の実施例2における撮像レンズの構成図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す撮像レンズの像高に対する相対光量を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本開示の実施例3における撮像レンズの構成図である。
【
図10】
図10は、
図8に示す撮像レンズの像高に対する相対光量を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本開示の実施例4における撮像レンズの構成図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施例5における撮像レンズの構成図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施例6における撮像レンズの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら一実施の形態について説明する。なお、全ての図を通じて、同一のまたは対応する要素には同一の符号を付して重複する詳細な説明を省略する。以下では、本開示の撮像レンズが適用される撮像装置が測距センサを構成する態様を例示する。
【0015】
[撮像レンズが適用される測距センサの例示]
図1は、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズが適用される測距センサの概略構成を示す図である。
図1に示すように、測距センサ10は、光源20と、受光器30と、制御器40とを備えている。光源20は、例えば近赤外光を照射するレーザダイオードまたは発光ダイオードである。光源20が照射する波長は、例えば下限値が700nm、好ましくは800nmであり、上限値が1100nm、好ましくは1000nmである範囲内に設定される。光源20は、駆動部(ドライバ)21を介して制御器40に接続される。駆動部21は、制御器40からの駆動信号に応じて光源20を発光させる。
【0016】
受光器30は、後述するレンズ系2により構成される撮像レンズ1と、撮像レンズ1の撮像面IAに配設される複数の受光素子を含む撮像素子3と、を備えている。なお、
図1に示す撮像レンズ1は、
図2にとともに後述する実施例1の撮像レンズ1Aと同じものである。撮像素子3を構成する複数の受光素子は、例えばフォトダイオードを含む。例えば、撮像素子3は、CCD(Charge Coupled Device)センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等である。
【0017】
制御器40は、演算部41、入力部42、出力部43、信号送信部44、信号受信部45および記憶部46を含む。これらの各構成は、バス47を介して互いに信号伝送可能に構成される。制御器40は、CPU、メインメモリ(RAM)、ストレージ、通信インターフェイス等を含むコンピュータとして構成される。したがって、上記各構成41,42…,46は、処理回路とみなすことができる。
【0018】
入力部42は、外部からの制御信号を受け付ける。例えば、測距センサ10がスマートフォン等の通信端末に搭載される場合、通信端末における上位のプロセッサからの測距開始信号を制御信号として受け付ける。信号送信部44は、入力部42が制御信号を受信した場合に、光源20を点灯させるための駆動信号を出力する。受光器30は、光源20から照射された光が被写体で反射した反射光を受光(撮像)する。撮像素子3(受光素子)は、撮像レンズ1を通して受光した反射光を電気信号(撮像信号)に変換し、制御器40に送信する。信号受信部45は、受光器30からの撮像信号を受信する。
【0019】
演算部41は、光源20が照射する光が照射してから撮像素子3において受光されるまでの時間を計測し、その時間および光速から測距センサ10と被写体との間の距離を算出し、測距データを生成する。演算部41は、撮像素子3を構成する受光素子(画素)ごとに当該距離を算出することにより、測距データを画像データとして出力することができる。出力部43は、演算部41で算出された測距データを外部に出力する。例えば、上記のように測距センサ10が通信端末に搭載される場合、通信端末における上位のプロセッサに測距データを出力する。
【0020】
[撮像レンズの概要]
本実施の形態における撮像レンズ1は、物体側から順に、第1レンズL1、第2レンズL2、絞りSTO、第3レンズL3および第4レンズL4が配置されたレンズ系2により構成される。
図1において、レンズ系2の各レンズ面は、物体側から順にS1,…,S4,S6,…,S9と表されている。例えば、レンズ面S1は、第1レンズL1の物体側のレンズ面を意味し、レンズ面S2は、第1レンズL1の像側のレンズ面を意味する。
【0021】
なお、
図1に示す撮像レンズ1において、第1レンズL1の像側のレンズ面S2は、凹面であり、第2レンズL2の物体側のレンズ面S3は、凸面であり、第4レンズL4の像側のレンズ面S9は、凸面である。また、第4レンズL4と撮像面IA(撮像素子3)との間には、近赤外光を透過させるためのバンドパスフィルタ4が設けられている。なお、バンドパスフィルタ4はなくてもよい。また、バンドパスフィルタ4の位置に撮像素子3を保護するためのシールガラス等の光学部材が配置されてもよい。
【0022】
上記レンズ系2が備える構成により、負の屈折力を有する第1レンズL1で大きく曲げられた軸外光線の角度を第2レンズL2以降の正のレンズによって緩やかな角度で撮像面IAへと導くことができる。また、絞りSTOの位置を第2レンズL2と第3レンズL3との間に配置することによって、前玉径の小型化を計りながらも、軸外光線のカット量を最小限に抑えることができるため、周辺光量を確保し易くなる。
【0023】
本実施の形態において、レンズ系2は、以下の条件式(1)および(2)を満足する。
-3<f1/f<-1.15 ・・・(1)
2.4<TTL/ImgH<5 ・・・(2)
ただし、f1は第1レンズL1の焦点距離、fはレンズ系2の焦点距離、TTLはレンズ系2の全長、ImgHは、レンズ系2の最大像高である。
【0024】
条件式(1)は第1レンズL1の焦点距離f1とレンズ系2の焦点距離fとの関係を規定している。条件式(1)の下限を超えると、第1レンズL1の負の屈折力が弱くなり、短い全長で広い画角を確保するのが難しくなってしまう。一方、条件式(1)の上限を超えると、第1レンズの屈折力が強くなりすぎて、軸外収差の補正が難しくなり、良好な解像性能が得られなくなる。なお、条件式(1)の上限値は-1.3が好ましく、条件式(1)の下限値は-2.4が好ましい。
【0025】
条件式(2)はレンズ系2における全長TTLと最大像高ImgHとの関係を規定している。条件式(2)を満足することにより、小型でありながら収差が良好に補正された光学系を実現することができる。
【0026】
本実施の形態において、レンズ系2は、さらに、以下の条件式(3)を満足し得る。
EPT/TTL<0.3 ・・・(3)
ただし、EPTは、レンズ系2の入射瞳位置である。
【0027】
条件式(3)はレンズ系2における全長TTLと入射瞳位置EPTとの関係を規定している。広画角のレンズ系2において入射瞳位置EPTを物体側に近づけることで、第1レンズL1を通過する軸外光束の光線高を小さくすることができる。一方、条件式(3)の上限を超えると、入射瞳位置EPTが像面側に寄りすぎるため、前玉径を小さくすることが難しくなる。なお、入射瞳位置EPTは、第1レンズL1における物体側の面頂からの距離で定義される。
【0028】
本実施の形態において、レンズ系2は、さらに、以下の条件式(4)を満足し得る。
0.05<D1/f<1 ・・・(4)
ただし、D1は、第1レンズL1の中心厚である。
【0029】
条件式(4)は第1レンズL1における中心厚D1と焦点距離L1との関係を規定している。条件式(4)の上限を超えると、第1レンズL1の体積が大きくなり軽量化が難しくなるとともに、前玉径の小型化も難しくなる。一方、条件式(4)の下限を超えると、第1レンズL1の中心厚が薄くなりすぎるために、変形や衝撃による割れなどの可能性が高くなってしまう。条件式(4)を満足することにより、第1レンズL1の軽量化および小型化を実現しつつ、変形や衝撃による割れを防止することができる。なお、条件式(4)の上限値は0.5が好ましく、条件式(4)の下限値は0.1が好ましい。
【0030】
本実施の形態において、レンズ系2は、さらに、以下の条件式(5)を満足し得る。
f/EPD<2.0 ・・・(5)
ただし、EPDは、レンズ系2の入射瞳径である。
【0031】
条件式(5)はレンズ系2における焦点距離fと入射瞳径EPDとの関係を規定しており、いわゆるFナンバーを規定した条件式になっている。条件式(5)を満足することにより、小型で高精細化された撮像素子に対しても、短い露光時間で必要な光量を確保することができる。
【0032】
本実施の形態において、レンズ系2は、さらに、以下の条件式(6)を満足し得る。
f2/f<40 ・・・(6)
ただし、f2は、第2レンズL2の焦点距離である。
【0033】
条件式(6)は第2レンズL2の焦点距離f2とレンズ系2の焦点距離fとの関係を規定している。条件式(6)の上限を超えると、大口径化と全長短縮に必要な正の屈折力に対して、第2レンズL2の屈折力が弱くなり、第3レンズL3および第4レンズL4の屈折力を強くする必要が生じる。そのため、実際に生産される第3レンズL3および第4レンズL4の偏芯誤差による性能劣化が大きくなってしまう。これに対して、条件式(6)を満足することにより、大口径化を実現しながら、全長短縮に必要な正の屈折力を効果的に分割して、偏芯誤差を抑えることができる。なお、条件式(6)の上限値は25が好ましい。
【0034】
本実施の形態において、レンズ系2は、さらに、以下の条件式(7)を満足し得る。
1.5<f3/f<25 ・・・(7)
ただし、f3は、第3レンズL3の焦点距離である。
【0035】
条件式(7)は第3レンズL3の焦点距離f3とレンズ系2の焦点距離fとの関係を規定している。条件式(7)を満足することにより、大口径化を実現しつつ全長短縮に必要な正の屈折力を効果的に第3レンズL3に割り当てることができる。また、第3レンズL3で発生する収差量を抑え、偏芯誤差による性能劣化を抑制することが可能となる。
【0036】
[実施例]
以下、本開示の撮像レンズ1の実施例を示す。各実施例に使用するパラメータは、以下の通りである。レンズデータ、及びレンズ系の諸元データの表において、角度の単位としては「度」を用い、長さの単位としては「mm」を用いる。また、焦点距離の計算波長は940nmである。
f:レンズ系2の焦点距離
Fno:Fナンバー(=f/Epd)
ω:半画角
ImgH:最大像高
TTL:レンズ系2の光学全長(第1レンズL1の物体側のレンズ面S1から撮像面IAまでの光軸上の距離)
i:レンズ面番号(i=1,…,4,6,…,9)
Ri:i番目のレンズ面における曲率半径
Dik:i番目のレンズ面Siとk=i+1番目のレンズ面Skと間の中心間隔
nd:レンズ材料のd線に対する屈折率
vd:レンズ材料のアッベ数
なお、レンズ面番号における5(STO)の表記は、レンズ面S4とレンズ面S6との間に絞り面STOが位置することを示す。また、バンドパスフィルタ4の物体側面の面番号を10とし、像側面の面番号を11としている。曲率半径における「inf」は当該面が平面であることを示す。
【0037】
また、各実施例においてすべてのレンズ面Siが非球面形状を有する。ここで、非球面形状は、面頂点の接平面からの光軸方向の距離(サグ量)をX、光軸からの高さをHとして、Rを曲率半径、Kを円錐定数、Amを第m次の非球面係数としたとき、次式で表される。
X=(H2/R)/[1+{1-(1+K)H2/R2}1/2]+ΣAm・Hm
【0038】
したがって、以下では、上記非球面式におけるAmの値を示し、非球面形状を特定している。非球面データの表において、非球面係数の数値の「E±n」(n:自然数)は10を底とする指数表現である。すなわち、「E±n」は、「×10±n」を意味している。
【0039】
[実施例1]
図2は、本開示の実施例1における撮像レンズ1Aの構成図である。また、
図3は、
図2に示す撮像レンズ1Aの波長940nmにおける収差図である。また、
図4は、
図2に示す撮像レンズ1Aの像高に対する相対光量を示すグラフである。相対光量は、撮像面IAにおける光軸位置の光量を100%としたときの像高位置における光量の割合を示している。
【0040】
実施例1の撮像レンズ1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズL1、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2、開口絞りSTO、物体側に凹面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズL3、および、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズL4が配置されたレンズ系2から構成されている。
【0041】
表1は、実施例1の撮像レンズ1Aのレンズデータを示す。
【0042】
【0043】
また、実施例1における円錐定数Kおよび非球面係数Amは、以下の表2および表3に示される。
【0044】
【0045】
【0046】
また、実施例1における撮像レンズ1Aの焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、最大像高ImgH、光学全長TTLは、以下の表4に示される。
【0047】
【0048】
[実施例2]
図5は、本開示の実施例2における撮像レンズ1Bの構成図である。また、
図6は、
図5に示す撮像レンズ1Bの収差図である。また、
図7は、
図5に示す撮像レンズ1Bの像高に対する相対光量を示すグラフである。相対光量は、撮像面IAにおける光軸位置の光量を100%としたときの像高位置における光量の割合を示している。
【0049】
実施例2の撮像レンズ1Bは、物体側から順に、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズL1、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2、開口絞りSTO、物体側に凹面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズL3、および、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズL4が配置されたレンズ系2から構成されている。
【0050】
表5は、実施例2の撮像レンズ1Bのレンズデータを示す。
【0051】
【0052】
また、実施例2における円錐定数Kおよび非球面係数Amは、以下の表6および表7に示される。
【0053】
【0054】
【0055】
また、実施例2における撮像レンズ1Bの焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、最大像高ImgH、光学全長TTLは、以下の表8に示される。
【0056】
【0057】
[実施例3]
図8は、本開示の実施例3における撮像レンズ1Cの構成図である。また、
図9は、
図8に示す撮像レンズ1Cの収差図である。また、
図10は、
図8に示す撮像レンズ1Cの像高に対する相対光量を示すグラフである。相対光量は、撮像面IAにおける光軸位置の光量を100%としたときの像高位置における光量の割合を示している。
【0058】
実施例3の撮像レンズ1Cは、物体側から順に、物体側に凹面を向け、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズL1、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2、開口絞りSTO、物体側に凹面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズL3、および、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズL4が配置されたレンズ系2から構成されている。
【0059】
表9は、実施例3の撮像レンズ1Cのレンズデータを示す。
【0060】
【0061】
また、実施例3における円錐定数Kおよび非球面係数Amは、以下の表10および表11に示される。
【0062】
【0063】
【0064】
また、実施例3における撮像レンズ1Cの焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、最大像高ImgH、光学全長TTLは、以下の表12に示される。
【0065】
【0066】
[実施例4]
図11は、本開示の実施例4における撮像レンズ1Dの構成図である。また、
図12は、
図11に示す撮像レンズ1Dの収差図である。また、
図13は、
図11に示す撮像レンズ1Dの像高に対する相対光量を示すグラフである。相対光量は、撮像面IAにおける光軸位置の光量を100%としたときの像高位置における光量の割合を示している。
【0067】
実施例4の撮像レンズ1Dは、物体側から順に、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズL1、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2、開口絞りSTO、物体側に凹面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズL3、および、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズL4が配置されたレンズ系2から構成されている。
【0068】
表13は、実施例4の撮像レンズ1Dのレンズデータを示す。
【0069】
【0070】
また、実施例4における円錐定数Kおよび非球面係数Amは、以下の表14および表15に示される。
【0071】
【0072】
【0073】
また、実施例4における撮像レンズ1Dの焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、最大像高ImgH、光学全長TTLは、以下の表16に示される。
【0074】
【0075】
[実施例5]
図14は、本開示の実施例5における撮像レンズ1Eの構成図である。また、
図15は、
図14に示す撮像レンズ1Eの波長940nmにおける収差図である。また、
図16は、
図14に示す撮像レンズ1Eの像高に対する相対光量を示すグラフである。相対光量は、撮像面IAにおける光軸位置の光量を100%としたときの像高位置における光量の割合を示している。
【0076】
実施例5の撮像レンズ1Eは、物体側から順に、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズL1、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2、開口絞りSTO、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズL3、および、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズL4が配置されたレンズ系2から構成されている。
【0077】
表17は、実施例5の撮像レンズ1Eのレンズデータを示す。
【0078】
【0079】
また、実施例5における円錐定数Kおよび非球面係数Amは、以下の表18および表19に示される。
【0080】
【0081】
【0082】
また、実施例5における撮像レンズ1Eの焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、最大像高ImgH、光学全長TTLは、以下の表20に示される。
【0083】
【0084】
[実施例6]
図17は、本開示の実施例1における撮像レンズ1Fの構成図である。また、
図18は、
図17に示す撮像レンズ1Fの波長940nmにおける収差図である。また、
図19は、
図17に示す撮像レンズ1Fの像高に対する相対光量を示すグラフである。相対光量は、撮像面IAにおける光軸位置の光量を100%としたときの像高位置における光量の割合を示している。
【0085】
実施例6の撮像レンズ1Fは、物体側から順に、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズL1、物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2、開口絞りSTO、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズL3、および、物体側に凸面を向け、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズL4が配置されたレンズ系2から構成されている。
【0086】
表21は、実施例6の撮像レンズ1Fのレンズデータを示す。
【0087】
【0088】
また、実施例6における円錐定数Kおよび非球面係数Amは、以下の表22および表23に示される。
【0089】
【0090】
【0091】
また、実施例6における撮像レンズ1Fの焦点距離f、FナンバーFno、半画角ω、最大像高ImgH、光学全長TTLは、以下の表24に示される。
【0092】
【0093】
表25は、上記実施例1から実施例6のレンズ系における条件式(1)から(7)の対応値を示す。表26および表27は、条件式(1)から(7)に関連する各数値を示す。表25に示すように、何れの実施例においても、すべての条件式(1)から(7)を満足している。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
また、各実施例の諸収差図(
図3,6,9,12,15,18,19)に示す通り、半画角35度以上の広い画角を有するにもかかわらず、透過光量を確保し、収差が良好に補正されたレンズ系2を実現できている。また、各実施例の撮像レンズの像高に対する周辺光量のグラフ(
図4,7,10,13,16,19)に示す通り、広い画角を有するにもかかわらず、像高が高い位置における光量(周辺光量)を光軸位置の光量の50%近くまで確保することができている。
【0098】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、各実施の形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本開示は、実施の形態によって限定されることはなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【0099】
[本開示のまとめ]
以下の項目のそれぞれは、本開示の好ましい実施の形態の開示である。
【0100】
[項目1]
物体側より順に、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズ、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズ、絞り、正の屈折力を有する第3レンズ、および、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズが配置されたレンズ系から構成され、
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、撮像レンズ。
-3<f1/f<-1.15 ・・・(1)
2.4<TTL/ImgH<5 ・・・(2)
ただし、f1は前記第1レンズの焦点距離、fは前記レンズ系の焦点距離、TTLは前記レンズ系の全長、ImgHは、前記レンズ系の最大像高である。
【0101】
[項目2]
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、項目1に記載の撮像レンズ。
EPT/TTL<0.3 ・・・(3)
ただし、EPTは、前記レンズ系の入射瞳位置である。
【0102】
[項目3]
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、項目1または2に記載の撮像レンズ。
0.05<D1/f<1 ・・・(4)
ただし、D1は、前記第1レンズの中心厚である。
【0103】
[項目4]
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、項目1から3の何れか1つに記載の撮像レンズ。
f/EPD<2.0 ・・・(5)
ただし、EPDは、前記レンズ系の入射瞳径である。
【0104】
[項目5]
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、項目1から4の何れか1つに記載の撮像レンズ。
f2/f<40 ・・・(6)
ただし、f2は、前記第2レンズの焦点距離である。
【0105】
[項目6]
前記レンズ系は、以下の条件式を満足する、項目1から5の何れか1つに記載の撮像レンズ。
1.5<f3/f<25 ・・・(7)
ただし、f3は、前記第3レンズの焦点距離である。
【0106】
[項目7]
項目1から6の何れか1つに記載の撮像レンズを備えた、撮像装置。
【0107】
[項目8]
光を照射する光源と、
前記光源からの光が被写体で反射した反射光を、前記撮像レンズを通して受光する受光素子と、を備え、
前記光源が光を照射してから前記反射光を受光するまでの時間を計測することにより前記被写体までの距離を算出する、測距センサとして構成される、項目7に記載の撮像装置。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示は、小型で高い解像度を有しながら、画角が広く周辺光量が高い撮像レンズおよびそれを備えた撮像装置を提供するために有用である。本開示の撮像レンズが適用される撮像装置は、上記実施の形態で例示した測距センサに限られない。例えば、可視光を結像させる撮影用のカメラにも適用され得る。また、本開示の撮像レンズが適用される測距センサは、例えば、近赤外光等の単一波長の光または可視光を照射する光源の反射光を受光させる測距センサである。本開示の撮影レンズが搭載された測距センサは、例えば、背景ぼかし、オートフォーカス等の撮影用カメラにおける撮影補助機能、自動掃除機、自動車等の自動運転技術、顔認証技術、AR空間実現技術等を提供するために有用である。
【符号の説明】
【0109】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F 撮像レンズ
2 レンズ系
3 撮像素子(受光素子)
10 測距センサ(撮像装置)
20 光源
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
STO 絞り