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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173797
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】溶接方法及び燃料ポンプの溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/042 20140101AFI20231130BHJP
   F02M 51/04 20060101ALI20231130BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231130BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20231130BHJP
【FI】
B23K26/042
F02M51/04
B23K26/21 W
B23K26/21 N
B23K26/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086290
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 拓人
(72)【発明者】
【氏名】古山 琢將
(72)【発明者】
【氏名】郡司 賢一
【テーマコード(参考)】
3G066
4E168
【Fターム(参考)】
3G066BA54
3G066CA07
3G066CE02
4E168BA21
4E168BA58
4E168CB18
(57)【要約】
【課題】溶接用レーザの光軸がレーザ照射部に対して傾斜して行われる場合でも溶融部に欠陥が発生することを抑制できる溶接方法及び燃料ポンプの溶接方法を提供する。
【解決手段】溶接方法は、第1部品を第2部品の接合面604に接触する工程と、第1部品と第2部品のレーザ照射部615に対して光軸602を傾斜させて溶接用レーザ603を照射する工程と、含んでいる。そして、レーザ照射部615は、溶接用レーザ603が照射する前に光軸602に対して左右対称な形状に形成されている
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品を第2部品の接合面に接触する工程と、
前記第1部品と前記第2部品のレーザ照射部に対して光軸を傾斜させて溶接用レーザを照射する工程と、を含み、
前記レーザ照射部は、前記溶接用レーザが照射する前に前記光軸に対して左右対称な形状に形成されている
溶接方法。
【請求項2】
前記第1部品及び前記第2部品のどちらか一方には、凹部が形成され、
前記レーザ照射部は、前記凹部により前記光軸に対する仮想垂直面に対して凸状に加工される
請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記第1部品及び前記第2部品のどちらか一方には、凸部が形成され、
前記レーザ照射部は、前記凸部により前記光軸に対する仮想垂直面に対して凹状に加工される
請求項1に記載の溶接方法。
【請求項4】
ポンプボディを機能部品に形成した接合面に接触する工程と、
前記ポンプボディと前記機能部品のレーザ照射部に対して光軸を傾斜させて溶接用レーザを照射する工程と、を含み、
前記レーザ照射部は、前記溶接用レーザが照射する前に前記光軸に対して左右対称な形状に形成されている
燃料ポンプの溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部品を環状に接合する溶接方法及び燃料ポンプの溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ポンプにおいて、2つの部品を環状に接合するため、例えば、レーザ溶接によって溶接が行われている。このような溶接する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、ポンプボディと、ポンプボディに取り付けられる機能部品と、ポンプボディに対して機能部品を固定する溶接部と、溶接部の溶接方向の先において溶接部とポンプボディと機能部品とで形成された空隙と、を備えた技術が記載されている。また、特許文献1では、溶接部の溶接方向における入口面中央と空隙を形成する出口面の中央とを結ぶ直線が、機能部品の軸方向において取付け方向に向かうにつれて機能部品の径方向外側から径方向内側に向かうように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-142930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、溶接用レーザの光軸がレーザ照射部に対して垂直に照射されている。しかしながら、接合する2つの部品の形状により、溶接用レーザの光軸がレーザ照射部に対して傾斜して行われる場合がある。そして、光軸がレーザ照射部に対して傾斜すると、溶融部は、光軸に対して左右非対称に形成される。その結果、左右非対称な溶融部内において凝固速度に変化が生じ、溶融部に微小な欠陥(クラック)が発生していた。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、溶接用レーザの光軸がレーザ照射部に対して傾斜して行われる場合でも溶融部に欠陥が発生することを抑制できる溶接方法及び燃料ポンプの溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の溶接方法は、第1部品を第2部品の接合面に接触する工程と、第1部品と第2部品のレーザ照射部に対して光軸を傾斜させて溶接用レーザを照射する工程と、含んでいる。そして、レーザ照射部は、溶接用レーザが照射する前に光軸に対して左右対称な形状に形成されている。
【0008】
また、燃料ポンプの溶接方法は、上述した溶接方法が用いられる。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の溶接方法及び燃料ポンプの溶接方法によれば、溶接用レーザの光軸がレーザ照射部に対して傾斜して行われる場合でも溶融部に欠陥が発生することを抑制できる。
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る高圧燃料ポンプの縦断面図(その1)である。
図2】本発明の一実施形態に係る高圧燃料ポンプの上方から見た水平方向断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る高圧燃料ポンプの縦断面図(その2)である。
図4】本発明の一実施例に係る高圧燃料ポンプの電磁吸入弁機構について、吸入弁の駆動方向に平行な断面を示す拡大断面図であり、吸入弁が開弁した状態を示す断面図である。
図5】従来のポンプボディと電磁弁機構ハウジングの接合部を拡大した断面図である。
図6図5に示す接合部をレーザ溶接した場合の溶接部の断面図である。
図7】本発明の一実施例に係る溶接方法におけるポンプボディと電磁弁機構ハウジングの接合部を拡大した断面図である。
図8図7に示す接合部をレーザ溶接した場合の溶接部の断面図である。
図9】本発明の第二実施例に係る溶接方法におけるポンプボディと電磁弁機構ハウジングの接合部を拡大した断面図である。
図10図9に示す接合部をレーザ溶接した場合の溶接部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.高圧燃料ポンプの一実施形態
以下、本発明の一実施形態に係る高圧燃料ポンプについて図1から図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
[高圧燃料ポンプ]
次に、高圧燃料ポンプ100の構成について、図1図4を用いて説明する。
図1は、高圧燃料ポンプ100の水平方向に直交する断面で見た縦断面図(その1)である。図2は、高圧燃料ポンプ100の垂直方向に直交する断面で見た水平方向断面図である。図3は、高圧燃料ポンプ100の水平方向に直交する断面で見た縦断面図(その2)である。図4は、本発明の一実施例に係る高圧燃料ポンプの電磁吸入弁機構について、吸入弁の駆動方向に平行な断面を示す拡大断面図であり、吸入弁が開弁した状態を示す断面図である。
【0013】
図1から図4に示すように、高圧燃料ポンプ100は、ポンプボディ1と、プランジャ2と、吐出弁機構8と、圧力脈動低減機構9と、吸入ジョイント51と、カム機構93と、リリーフ弁機構200と、電磁吸入弁機構300と、を備えている。
【0014】
図1から図4に示すように、本実施例の高圧ポンプはポンプボディ1に設けられた取付けフランジ1eを用い内燃機関のシリンダヘッド90の平面に密着し、図示しない複数のボルトで固定される。シリンダヘッド90とポンプボディ1との間には、シールのためにOリング61がポンプボディ1に嵌め込まれる。これにより、エンジンオイルが外部に漏れるのを防止する。
【0015】
ポンプボディ1には、プランジャ2の往復運動をガイドするためのシリンダ6が取り付けられている。また、ポンプボディ1には、燃料をポンプボディ1に形成された加圧室入口流路1aを介して加圧室11に供給するための電磁吸入弁機構300と、加圧室11から吐出通路12bに吐出した燃料の逆流を防止するための吐出弁機構8と、が設けられている。吐出弁機構8を通過した燃料は、吐出ジョイント12cによりエンジン側部品に供給される。
【0016】
シリンダ6は、その外周側において、ポンプボディ1に圧入とかしめにより固定される。シリンダ6の円筒状をなす圧入部の表面により、ポンプボディ1との隙間から加圧した燃料が低圧側に漏れないようシールしている。シリンダ6は、その上端面を軸方向にポンプボディ1の平面に接触させることで、ポンプボディ1とシリンダ6との円筒状の圧入部のシールに加え、二重のシール構造を構成する。
【0017】
プランジャ2の下端には、内燃機関のカムシャフトに取り付けられたカム機構93の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット92が設けられている。プランジャ2は、リテーナ15を介してばね4にてタペット92に圧着されている。これによりカム機構93の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に往復運動させることができる。
【0018】
また、プランジャ2には、シールホルダ7が取り付けられている。シールホルダ7の内周下端部には、プランジャシール13が保持されている。プランジャシール13は、シリンダ6の図中下方部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されている。これにより、プランジャ2が摺動したとき、副室7aの燃料をシールし、内燃機関内部へ流入するのを防ぐ。同時にプランジャシール13は、内燃機関内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプボディ1の内部に流入するのを防止する。
【0019】
図2に示すように、ポンプボディ1には吸入ジョイント51が取り付けられている。吸入ジョイント51は、車両の燃料タンクからの燃料を供給する低圧配管に接続されており、燃料はここから高圧ポンプ内部に供給される。ポンプボディ1に構成される燃料通路の入口部には、ポンプボディ1に圧入された吸入フィルタが設けられ、吸入フィルタ52は燃料タンク20から低圧燃料吸入口10aまでの間に存在する異物が高圧ポンプ内に流入することを防ぐ。
【0020】
なお、図2においては吸入ジョイント51がポンプボディ1の側面に設けられているが、本発明はこれに限定される訳でなく、吸入ジョイント51がダンパカバー14の上面に設けられた高圧ポンプにも適用可能である。
【0021】
吸入ジョイント51の低圧燃料吸入口10aから流入した燃料はポンプボディ1の内部に形成された低圧流路を通って、ダンパ上部10b、ダンパ下部10cに形成されるダンパ室に流れる。ダンパ室はポンプボディ1に取り付けられたダンパカバー14により覆われることで形成される。ダンパ室の圧力脈動低減機構9により圧力脈動が低減した燃料は吸入通路10dを介して電磁吸入弁機構300の吸入ポート31bに至る。
【0022】
加圧室11の出口に設けられた吐出弁機構8は、吐出弁シート8a、吐出弁シート8aと接離する吐出弁8b、吐出弁8bを吐出弁シート8aに向かって付勢する吐出弁ばね8c、吐出弁プラグ8d、吐出弁8bのストローク(移動距離)を決める吐出弁ストッパ8eから構成される。吐出弁プラグ8dとポンプボディ1とは溶接部407と圧入部405とにより接合され、この接合部は燃料が流れる内側空間と外部とを遮断している。
【0023】
加圧室11の燃料圧力と吐出弁室12aの燃料圧力とに差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、吐出弁室12aの燃料圧力よりも大きくなった時に初めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに逆らって開弁する。そして、加圧室11内の高圧燃料は吐出弁室12a、吐出通路12b、燃料吐出口12を経てコモンレールへと吐出される。
【0024】
吐出弁8bは開弁した際、吐出弁ストッパ8eと接触し、ストロークが制限される。したがって、吐出弁8bのストロークは吐出弁ストッパ8eによって適切に決定される。これによりストロークが大きすぎて、吐出弁8bの閉じ遅れにより、吐出弁室12aへ高圧吐出された燃料が、再び加圧室11内に逆流してしまうのを防止でき、高圧ポンプの効率低下が抑制できる。また、吐出弁8bが開弁および閉弁運動を繰り返す時に、吐出弁8bがストローク方向にのみ運動するように、吐出弁ストッパ8eの外周面にて吐出弁8bをガイドしている。以上のようにすることで、吐出弁機構8は燃料の流通方向を制限する逆止弁となる。
【0025】
以上に説明したように、加圧室11は、ポンプボディ1、電磁吸入弁機構300、プランジャ2、シリンダ6、吐出弁機構8にて構成される。なお、本実施例の構成では、リリーフ弁機構200も加圧室11の構成要素となる。
【0026】
カム機構93の回転により、プランジャ2がカム機構93の方向に移動して吸入行程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し、加圧室11内の燃料圧力が低下する。この行程で加圧室11内の燃料圧力が吸入通路10dの圧力よりも低くなると、吸入弁30は開弁状態にある。
【0027】
プランジャ2が吸入行程を終了した後、プランジャ2が上昇運動に転じ圧縮行程に移る。ここで電磁コイル43は無通電状態を維持したままであり磁気付勢力は作用しない。ロッド付勢ばね40は、無通電状態において吸入弁30を開弁維持するのに必要十分な付勢力を有するよう設定されている。本実施例ではいわゆるノーマルオープン式の高圧ポンプを示しているが、本発明はこれに限定される訳ではなく、ノーマルクローズ式の高圧ポンプにも適用可能である。
【0028】
加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度、加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入弁30の開口部を通して吸入通路10dへと戻されるので、加圧室11の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称する。
【0029】
次に、電磁吸入弁機構300について図4を用いて説明する。
図4に示すように、電磁吸入弁機構300は、電磁コイル43への通電により、磁性コア(固定コア)39、可動コア36及びロッド35に続いて配置される吸入弁30を可動させることで、燃料を吸入し、加圧室11に送る機構のことを指す。以下に電磁吸入弁機構300の機能について詳述する。
【0030】
無通電状態では、強力なロッド付勢ばね40によって、吸入弁30が開弁方向に稼働するためにノーマルオープン式となっているが、ECUからの制御信号が電磁吸入弁機構300に印加されると、電磁コイル43には端子46を介して電流が流れる。電磁コイル43に電流が流れることにより、磁性コア39は磁気吸引力を生じる。
【0031】
これに伴い、磁気吸引面Sにおいて可動コア36が磁性コア39の磁気吸引力により閉弁方向に引き寄せられる。可動コア36と吸入弁30との間には、可動コア36を係止するフランジ部35aを備えたロッド35が配置される。磁性コア39は電磁コイル43が配置された電磁コイル室を覆う蓋部材44を保持する部材を兼ねる。すなわち、磁性コア39は蓋保持部材を兼ねる。ロッド付勢ばね40は、磁性コア39の蓋部材44を保持する部分により覆われている。
【0032】
ロッド35は、フランジ部35aを有している。フランジ部35aが可動コア36を係止することで、可動コア36が磁性コア39側に移動する際に、可動コア36とともにロッド35が移動することが可能となる。よって、ロッド35は、可動コア36に磁気吸引力が働いたときに閉弁方向に移動することができる。可動コア36と吸入弁30との間には、可動コアを閉弁方向に付勢する閉弁付勢ばね41と、ロッド35を開閉弁方向にガイドするロッドガイド部材37と、が配置される。ロッドガイド部材37は閉弁付勢ばね41のばね座37bを構成する。また、ロッドガイド部材37には、燃料通路37aが設けられており、可動コア36が配置された空間への燃料の流入出を可能にしている。
【0033】
可動コア36、閉弁付勢ばね41及びロッド35等は、ポンプボディ1に固定された電磁吸入弁機構ハウジング38に内包されている。電磁吸入弁機構ハウジング38と、ポンプボディ1は、レーザ溶接により接合される。溶接方法の詳細については、後述する。
【0034】
また、磁性コア39、ロッド付勢ばね40、電磁コイル43及びロッドガイド部材37等は、電磁吸入弁機構ハウジング38に保持されている。なお、ロッドガイド部材37は、電磁吸入弁機構ハウジング38に対して、磁性コア39及び電磁コイル43とは反対側に取り付けられており、吸入弁30、吸入弁付勢ばね33及びストッパ32を内包しており、電磁吸入弁機構ハウジング38の一部を構成する。
【0035】
ロッド35の磁性コア39とは反対側には、吸入弁30、吸入弁付勢ばね33及びストッパ32を備える。吸入弁30には、加圧室11側に突出して吸入弁付勢ばね33によりガイドされるガイド部30bが形成される。吸入弁30は、ロッド35の移動に伴って弁体ストローク30eの隙間の分だけ開弁方向(弁座31aから離れる方向)に移動することにより開弁状態となり、吸入通路10dから加圧室11に燃料が供給される。ガイド部30bは、電磁吸入弁機構300のハウジング(ロッドガイド部材37)内部に圧入されて固定されたストッパ32に衝突することにより動きを停止する。なお、ロッド35と吸入弁30とは、別体で独立した構造をとっている。
【0036】
なお、吸入弁30は吸入側に配置された弁座部材31の弁座31aに接触することで加圧室11への流路を閉じ、また弁座31aから離れることで加圧室11への流路を開くように構成される。
【0037】
上述したように、磁気付勢力がロッド付勢ばね40の付勢力に打ち勝ってロッド35が吸入弁30から離れる方向に移動する。よって、吸入弁付勢ばね33による付勢力と燃料が、吸入通路10dに流れ込むことによる流体力により吸入弁30が閉弁する。閉弁後、加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇し、燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して高圧燃料の吐出が行われ、高圧燃料がコモンレールへと供給される。この行程を吐出行程と称する。
【0038】
すなわち、プランジャ2の圧縮行程(下始点から上始点までの間の上昇行程)は、戻し行程と吐出行程とからなる。そして、電磁吸入弁機構300の電磁コイル43への通電タイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。電磁コイル43へ通電するタイミングを早くすれば、圧縮行程中の、戻し行程の割合が小さく、吐出行程の割合が大きくなる。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が少なくなり、コモンレールへ高圧吐出される燃料は多くなる。一方、通電するタイミングを遅くすれば圧縮行程中の、戻し行程の割合が大きく、吐出行程の割合が小さくなる。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が多くなり、コモンレールへ高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイル43への通電タイミングは、ECUからの指令によって制御される。
【0039】
以上のように電磁コイル43への通電タイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。
【0040】
図2に示すように、リリーフ弁機構200は、リリーフバルブカバー201、ボール弁202、リリーフバルブ押え203、ばね204、及びばねホルダ205で構成される。リリーフ弁機構200は、コモンレールやその先の部材に何らかの問題が生じ、異常に高圧になった場合にのみ作動するよう構成された弁である。そして、リリーフ弁機構200は、コモンレールやその先の部材内の圧力が高くなった場合にのみ開弁し、燃料を加圧室11に戻すという役割を持つ。そのため、リリーフ弁機構200は、非常に強力なばね204を有している。
【0041】
低圧燃料室10(図1参照)には高圧ポンプ内で発生した圧力脈動が燃料配管へ波及するのを低減させる圧力脈動低減機構9が設置されている。また、圧力脈動低減機構9の上下にはそれぞれ、間隔を持ってダンパ上部10b、ダンパ下部10cが設けられている。
【0042】
一度加圧室11に流入した燃料が、容量制御のため再び開弁状態の吸入弁30を通して吸入通路10dへと戻される場合、吸入通路10dへ戻された燃料により低圧燃料室10には圧力脈動が発生する。しかし、低圧燃料室10に設けた圧力脈動低減機構9は、波板状の円盤型金属板2枚をその外周で張り合わせ、内部にアルゴンのような不活性ガスを注入した金属ダイアフラムダンパで形成されており、圧力脈動はこの金属ダンパが膨張・収縮することで吸収低減される。9aは金属ダンパをポンプボディ1の内周部に固定する
ための取付け金具であり、燃料通路上に設置されるため、ダンパとの支持部を全周では無く、一部とし取付け金具9aの表裏に流体が自由に行き来できるようにしている。
【0043】
プランジャ2は、大径部2aと小径部2bとを有し、プランジャ2の往復運動によって副室7aの体積は増減する。副室7aは燃料通路10e(図3参照)により低圧燃料室10と連通している。プランジャ2の下降時は、副室7aから低圧燃料室10へ、上昇時は、低圧燃料室10から副室7aへと燃料の流れが発生する。これにより、ポンプの吸入行程もしくは、戻し行程におけるポンプ内外への燃料流量を低減することができ、高圧ポンプ内部で発生する圧力脈動を低減する機能を有している。
【0044】
1-2.ポンプボディと機能部品の溶接方法
次に、図6から図8を参照して、ポンプボディ1と機能部品の溶接方法について説明する。なお、以下の説明では、機能部品のとして電磁吸入弁機構ハウジング38を適用した例について説明する。まず、図5及び図6を参照して従来の溶接方法について説明する。
図5及び図6は、従来の溶接方法における接合部(溶接部)を拡大した断面図である。
【0045】
図5及び図6に示すように、第1部品を示すポンプボディ611と、第2部品を示す電磁吸入弁機構ハウジング38の2部品は、レーザ接合により接合される。まず、ポンプボディ611を、電磁吸入弁機構ハウジング38の接合面604に接触させる。そして、溶接用レーザ603を接合面604に照射し、接合面604を溶接する。このとき、溶接用レーザ603の光軸602は、ポンプボディ611のレーザ照射部605を含むワーク表面に対して、傾斜している。光軸602のワーク表面に対する傾斜角度は、例えば、65度に設定される。そのため、光軸602は、接合面604に対して平行ではない。
【0046】
溶接用レーザ603が照射されることで、ポンプボディ611と電磁吸入弁機構ハウジング38には、図6に示す溶融部607が形成される。図6に示すように、溶融部607は、レーザ照射側のネイルヘッド部607aと、ウェル部607bとを有している。ウェル部607bは、ネイルヘッド部607aから下側、すなわちレーザ照射部605から離れるにつれて徐々に幅が狭くなっている。
【0047】
なお、溶接用レーザ603がレーザ照射部605に対して傾斜した角度で照射されるため、ネイルヘッド部607aが光軸602に対して左右非対称の形状となる。ネイルヘッド部607aが左右非対称となるため、ネイルヘッド部607aでの左右で凝固速度が異なる。左右で凝固速度が異なるため、ネイルヘッド部607aの左右で引張力が発生し、ネイルヘッド部607aの内部には、微小な欠陥(クラック)608が発生する。その結果、従来の溶接方法では、この欠陥608により溶融部607の強度が低下していた。
【0048】
次に、本発明の溶接方法について図7及び図8を参照して説明する。
図7及び図8は、本発明の溶接方法における接合部(溶接部)を拡大した断面図である。
【0049】
図7に示すように、第1部品を示すポンプボディ1における第2部品を示す電磁吸入弁機構ハウジング38の接合面604と接触する箇所の近傍には、凹部616が形成されている。そのため、ポンプボディ1におけるレーザ照射部615は、凹部616により、光軸602に対する仮想垂直面618に対して略三角形の凸状に加工される。すなわち、レーザ照射部615は、光軸602に対して左右対称な凸部となる。
【0050】
このレーザ照射部615に溶接用レーザ603を照射すると、図8に示すような溶融部617が形成される。このような工程によりポンプボディ1と電磁吸入弁機構ハウジング38が接合される。
【0051】
上述したように、レーザ照射部615が光軸602に対して左右対称形状であるため、形成された溶融部617のネイルヘッド部617aも光軸602に左右対称に近づけることができる。これにより、ネイルヘッド部617aが凝固する際の凝固速度を光軸602に対して左右でほぼ同じにすることができる。その結果、ネイルヘッド部617aが凝固する際に生じる引張力を軽減でき、ネイルヘッド部617a内に欠陥が発生することを抑制できる。
【0052】
また、従来のネイルヘッド部607aと比較し、ネイルヘッド部617aは、仮想垂直面618から略三角形の凸状に盛り上がった部分の体積が増加する。これにより、表ビード側の凝固面の引けを減らすことができる。また、溶融部617が盛り上がることで、溶融部617の表面を圧縮応力により凝固割れに対して一段と有利にすることができる。
【0053】
2.第2の実施の形態例
次に、図9及び図10を参照して第2の実施の形態例にかかる溶接方法について説明する。
図9及び図10は、第2の実施の形態例にかかる溶接方法における接合部(溶接部)を拡大した断面図である。なお、第1の実施の形態例にかかる溶接方法と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図9に示すように、ポンプボディ621における電磁吸入弁機構ハウジング38の接合面604と接触する箇所の近傍には、凸部626が形成されている。そのため、ポンプボディ621におけるレーザ照射部625は、凸部626により、光軸602に対する仮想垂直面628に対して略三角形の凹部に加工される。すなわち、レーザ照射部625は、光軸602に対して左右対称な凹部となる。
【0055】
このレーザ照射部625に溶接用レーザ603を照射すると、図10に示すような溶融部627が形成される。上述したように、レーザ照射部625が光軸602に対して左右対称形状であるため、形成された溶融部627のネイルヘッド部627aも光軸602に左右対称に近づけることができる。これにより、ネイルヘッド部627aが凝固する際の凝固速度を光軸602に対して左右でほぼ同じにすることができる。その結果、ネイルヘッド部627aが凝固する際に生じる引張力を軽減でき、ネイルヘッド部627a内に欠陥が発生することを抑制できる。
【0056】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる溶接方法と同様であるため、それらの説明は省略する。この第2の実施の形態例にかかる溶接方法によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる溶接方法と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
なお、第1の実施の形態例におけるネイルヘッド部617aの表面は、第2の実施の形態例にかかるネイルヘッド部627aの表面と比較して、凸状に盛り上がっている。これにより、第1の実施の形態例にかかる溶接方法によれば、溶融部617の表面の圧縮応力を高めることがで、凝固割れに対して一段と有利にすることができる。
【0058】
以上、本発明の溶接方法の実施形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の溶接方法は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。また、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0059】
上述した実施の形態例では、機能部品として、電磁吸入弁機構ハウジング38を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。ポンプハウジングと接合する機能部品としては、吐出ジョイント12cや吸入ジョイント51等その他各種の部品の機能部品を適用してもよい。
【0060】
また、溶接方法として燃料ポンプにおけるポンプボディと機能部品の接合に適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、燃料ポンプ以外のモータやインバーターにおける2部品の接合にも適用できるものである。
【0061】
また、第1部品を示すポンプボディ1、621側に凹部616や凸部626を形成する例を説明したが、これに限定されるものではない。第2部品を示す電磁吸入弁機構ハウジング側を加工し、レーザ照射部を光軸に対して左右対称にしてもよい。
【0062】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1、612、621…ポンプボディ(第1部品)、 2…プランジャ、 6…シリンダ、 8…吐出弁機構、 9…圧力脈動低減機構、 10…低圧燃料室、 11…加圧室、 12…燃料吐出口、 38…電磁吸入弁機構ハウジング(機能部品、第2部品)、 51…吸入ジョイント、 100…高圧燃料ポンプ、 200…リリーフ弁機構、 300…電磁吸入弁機構、 602…光軸、 603…溶接用レーザ、 604…接合面、 615、625…レーザ照射部、 616…凹部、 617、627…溶融部、 617a、627a…ネイルヘッド部、 618、628…仮想垂直面、 626…凸部
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10