IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

<>
  • 特開-内燃機関の制御装置 図1
  • 特開-内燃機関の制御装置 図2
  • 特開-内燃機関の制御装置 図3
  • 特開-内燃機関の制御装置 図4
  • 特開-内燃機関の制御装置 図5
  • 特開-内燃機関の制御装置 図6A
  • 特開-内燃機関の制御装置 図6B
  • 特開-内燃機関の制御装置 図7
  • 特開-内燃機関の制御装置 図8
  • 特開-内燃機関の制御装置 図9
  • 特開-内燃機関の制御装置 図10A
  • 特開-内燃機関の制御装置 図10B
  • 特開-内燃機関の制御装置 図11
  • 特開-内燃機関の制御装置 図12
  • 特開-内燃機関の制御装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173800
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02D45/00 368Z
F02D45/00 364A
F02D45/00 358
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086295
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】南波 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】島田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】助川 義寛
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA01
3G384AA03
3G384BA52
3G384BA56
3G384DA33
3G384EA07
3G384FA14Z
3G384FA61Z
(57)【要約】
【課題】筒内圧センサの検出結果を用いなくても、内燃機関の燃料流量を推定可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の制御装置(1)は、内燃機関と接続された電動機から電流情報を取得する電流情報取得部(11)と、電流情報取得部(11)から取得した電流情報を基に、内燃機関の燃料流量を推定する燃料流量推定部(15)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関と接続された電動機から電流情報を取得する電流情報取得部と、
前記電流情報取得部から取得した前記電流情報を基に、前記内燃機関の燃料流量を推定する燃料流量推定部と、
を備える
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記内燃機関のトルク成分を演算するトルク成分演算部と、
前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算し、トルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係を学習することで学習モデルを生成する燃料流量学習部と、
を備え、
前記燃料流量推定部は、前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算した演算結果、かつ、前記学習モデルにおけるトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係に基づき、前記内燃機関の燃料流量を推定する
内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記燃料流量推定部は、推定した前記内燃機関の燃料流量が予め設定した燃料流量の正常と燃料流量の異常とを分ける閾値を超えた場合に、前記内燃機関の燃焼状態を異常と判定する
内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記内燃機関のトルク成分を演算するトルク成分演算部と、
前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度を演算し、トルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係を学習することで学習モデルを生成する燃料流量学習部と、
を備え、
前記燃料流量推定部は、前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度を演算した演算結果、かつ、前記学習モデルにおけるトルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係と、に基づき、運転中の前記内燃機関の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定する
内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記燃料流量推定部は、推定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つが予め設定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つの正常と異常とを分ける閾値を超えた場合に、前記内燃機関の燃焼状態を異常と判定する
内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関を燃焼させる燃料は、レギュラーガソリン又はハイオクタンガソリン、軽油、食廃油、水素又はバイオマス燃料である
内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記電動機は、前記内燃機関と同じ速度で回転して電磁誘導によって回生電力を生成する3相を有する交流モータであり、
前記電動機と前記電動機により生成された回生電力が供給される電力系統との間を2相以上の数で電流を伝達する2以上の電線それぞれから前記電流情報を検出する電流センサが設けられ、
前記電流情報取得部は、前記電流センサが検出する前記電流情報を用いて、前記内燃機関の電気角及び機械角の少なくとも1つを演算する
内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせるカムトリガ信号と各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号とを発するカムセンサを有し、
前記電流情報取得部は、前記カムセンサの第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせる時及び各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号時に発するカムトリガ信号と、前記電流情報から得られる交流電流値の振幅データ数と、をカウントして前記内燃機関の各気筒の上死点を0度とした機械角を求める
内燃機関の制御装置。
【請求項9】
請求項7に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記電流情報取得部は、前記電流情報に基づいて、前記内燃機関と回転速度が同期する前記電動機の極数から電気角を求める
内燃機関の制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記電動機は、前記内燃機関と同じ速度で回転して電磁誘導によって回生電力を生成する3相を有する交流モータであり、
前記電動機と前記電動機により生成された回生電力が供給される電力系統との間を2相以上の数で電流を伝達する2以上の電線それぞれから前記電流情報を検出する電流センサが設けられ、
前記電流情報取得部は、前記電流センサが検出する前記電流情報を用いて、前記内燃機関の電気角及び機械角の少なくとも1つを演算し、
前記内燃機関には、前記内燃機関に供給される燃料流量を計測する燃料流量計が取り付けられ、
前記電流情報取得部から取得した前記電流情報を前記内燃機関の気筒別の角度同期電流情報に変換し、前記電流情報で得られたピーク特性を角度同期することによって、前記内燃機関のトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算するトルク成分演算部と、
前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算し、トルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと前記燃料流量計から取得した燃料流量との相関関係を学習することで学習モデルを生成する燃料流量学習部と、
を備える
内燃機関の制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記燃料流量推定部は、前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算した演算結果、かつ、前記学習モデルにおけるトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係と、に基づき、運転中の前記内燃機関の燃料流量を推定し、運転中の前記内燃機関の燃料流量が予め設定した燃料流量の正常と燃料流量の異常とを分ける閾値を超えた場合に、運転中の前記内燃機関の燃焼状態を異常と判定し、
運転中の前記内燃機関の燃焼状態が異常である場合に、燃焼状態の異常を通知する通知部を備える
内燃機関の制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記燃料流量推定部が燃料流量を推定する運転中の前記内燃機関では、前記内燃機関に供給される燃料流量を計測する燃料流量計が取り外されている
内燃機関の制御装置。
【請求項13】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記電動機は、前記内燃機関と同じ速度で回転して電磁誘導によって回生電力を生成する3相を有する交流モータであり、
前記電動機と前記電動機により生成された回生電力が供給される電力系統との間を2相以上の数で電流を伝達する2以上の電線それぞれから前記電流情報を検出する電流センサが設けられ、
前記電流情報取得部は、前記電流センサが検出する前記電流情報を用いて、前記内燃機関の電気角及び機械角の少なくとも1つを演算し、
前記内燃機関には、前記内燃機関に供給される主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを計測する燃料流量計が取り付けられ、
前記電流情報取得部から取得した前記電流情報を前記内燃機関の気筒別の角度同期電流情報に変換し、前記電流情報で得られたピーク特性を角度同期することによって、前記内燃機関のトルクピーク及びトルクピーク角度を演算するトルク成分演算部と、
前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度を演算し、トルクピークとトルクピーク角度と前記燃料流量計から取得した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係を学習することで学習モデルを生成する燃料流量学習部と、
を備える
内燃機関の制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記燃料流量推定部は、前記内燃機関における前記電流情報を用いて、前記トルク成分演算部により演算された前記内燃機関のトルク成分から前記内燃機関の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度を演算した演算結果、かつ、前記学習モデルにおけるトルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係と、に基づき、運転中の前記内燃機関の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定し、運転中の前記内燃機関の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つが予め設定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つの正常と異常とを分ける閾値を超えた場合に、運転中の前記内燃機関の燃焼状態を異常と判定し、
運転中の前記内燃機関の燃焼状態が異常である場合に、燃焼状態の異常を通知する通知部を備える
内燃機関の制御装置。
【請求項15】
請求項14に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記燃料流量推定部が主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定する運転中の前記内燃機関では、前記内燃機関に供給される主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを計測する燃料流量計が取り外されている
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用内燃機関では、内燃機関を制御する内燃機関の制御装置は、内燃機関の燃焼状態を適切に保つため、各部に取り付けたセンサ情報を基に燃焼状態を推定する。それと同時に、内燃機関に制御指令を発してアクチュエータを動作させるエンジンコントロールユニットは、操作者のアクセル開度指令に対して、アクチュエータの制御パラメータを決定する。
【0003】
発電用の定置型内燃機関では、内燃機関と発電用モータとが連結されており、内燃機関で発生させた回転トルクを発電用モータによって電力に変換し、電力系統へ供給する。
【0004】
どちらの内燃機関においても、内燃機関の燃焼状態を適切に保つことで、破損及び異常振動を回避できる。その他にも、特に直接電力系統に連係している定置型内燃機関においては、燃焼状態を詳細にモニタリングし、電力系統への電源供給バラツキを最小限に抑える制御ができる。
【0005】
燃焼状態のモニタリング手法としては、一般的に失火が発生した場合の検知手段として失火センサ、異常燃焼が発生した場合の検知手段としてノッキングセンサ、及び、内燃機関の各気筒の筒内圧力を計測する筒内圧センサが用いられる。
【0006】
特に筒内圧センサを用いたモニタリング手法では、内燃機関の各気筒の筒内圧力を測定できるため、異常燃焼を検知できる。その他にも、筒内圧センサを用いたモニタリング手法では、内燃機関の機械的な計算式を用いれば、筒内圧力から内燃機関のトルクを算出することも可能である。このため、特に直接電力系統に連係している定置型内燃機関においては、電力系統への電源供給バラツキを最小限に抑える制御を実施する際に、筒内圧センサの搭載が必須となっている。
【0007】
例えば、特許文献1の要約書には、「水素を燃料とする内燃機関におけるバックファイアの発生を良好に抑止」する目的が記載されている。そして、解決手段として、「各気筒筒内圧及びクランクアングルに基づき、各気筒におけるプレイグニッションのバックファイアの発生の有無を検知し、プレイグニッションの発生が検知された各気筒に対しては、燃焼速度を上昇させるための制御を行い、バックファイアの発生が検知された各気筒に対しては、筒内温度を低下させるための制御を行う。」が記載されている。
【0008】
また、同文献の請求項1には、「各気筒の吸気バルブよりも上流側の吸気経路から各気筒に水素燃料が供給される内燃機関の制御装置において、前記内燃機関のクランクアングルを検出するクランクアングル検出手段と、前記内燃機関の各気筒に設けられた筒内圧センサと、各筒内圧センサにより検出される筒内圧と前記クランクアングル検出手段により検出されるクランクアングルとに基づき、気筒毎に異常燃焼検知処理を行うことによって、各気筒におけるプレイグニッションの発生の有無とバックファイアの発生の有無とを検知する異常燃焼検知手段」が記載されている。
【0009】
すなわち、特許文献1によれば、各筒内圧センサとクランクアングルセンサとを用いることで、気筒毎の異常燃焼検知が可能であり、検知情報に基づいて、内燃機関における異常燃焼発生を良好に抑止する内燃機関の制御装置が提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-130473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の筒内圧センサは、非常に高価である。このため、筒内圧センサを各気筒に取り付けると、相応の高価なシステムとなり、コストがかかる。
【0012】
その上、筒内圧センサを既存のシステムに搭載すると、内燃機関を一度解体した後、エンジンヘッド部分に穴を空けて筒内圧センサを挿入する必要がある。このため、筒内圧センサが搭載されていない内燃機関に、特許文献1のシステムを搭載するのは実質困難である。
【0013】
本発明は、筒内圧センサの検出結果を用いなくても、内燃機関の燃料流量を推定可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様による内燃機関の制御装置は、前記内燃機関と接続された電動機から電流情報を取得する電流情報取得部と、前記電流情報取得部から取得した前記電流情報を基に、前記内燃機関の燃料流量を推定する燃料流量推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、筒内圧センサの検出結果を用いなくても、内燃機関の燃料流量を推定可能な内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る燃料流量を学習中のエンジンシステムを示す構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係る燃料流量を推定中のエンジンシステムを示す構成図である。
図3図3は、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置を示す機能ブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電流情報を用いた気筒判別方法を示す説明図である。
図5図5は、第1実施形態に係るトルク成分の演算方法を示す説明図である。
図6A図6Aは、第1実施形態に係るトルクピークと燃料流量との相関関係を示す説明図である。
図6B図6Bは、第1実施形態に係るトルクピーク角度と燃料流量との相関関係を示す説明図である。
図7図7は、第1実施形態に係る燃料流量の推定方法を示す説明図である。
図8図8は、第1実施形態に係る燃料流量の学習処理を示すフローチャート図である。
図9図9は、第1実施形態に係る燃料流量の推定処理を示すフローチャート図である。
図10A図10Aは、第2実施形態に係るトルクピークと主燃料流量との相関関係を示す説明図である。
図10B図10Bは、第2実施形態に係るトルクピーク角度と主燃料流量との相関関係を示す説明図である。
図11図11は、第2実施形態に係る主燃料流量の推定方法を示す説明図である。
図12図12は、第2実施形態に係る副燃料流量の学習処理を示すフローチャート図である。
図13図13は、第2実施形態に係る副燃料流量の推定処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係る内燃機関の制御装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。実施形態では、内燃機関を定置型の4気筒エンジンとして、電動機の対象を同期モータとして、説明している。しかし、内燃機関の制御装置は、それに限定されるものではなく、内燃機関であれば、気筒数や直列又はV型等の気筒配置等によることなく適用できる。また、電動機であれば、誘導モータ、永久磁石モータ等のモータ種類によることなく適用できる。また、以下の説明において使用する各図面において、共通する各装置、各機器には同一の符号を付しており、既に説明した各装置、機器および動作の説明を省略する場合がある。
【0018】
<第1実施形態>
[エンジンシステム100]
図1は、第1実施形態に係る燃料流量を学習中のエンジンシステム100を示す構成図である。図2は、第1実施形態に係る燃料流量を推定中のエンジンシステム100を示す構成図である。
【0019】
図1及び図2には、内燃機関2の制御装置1と、その制御対象である内燃機関2と、電動機3と、を含むエンジンシステム100が示されている。エンジンシステム100には、電源4と、コントロールユニット5と、電流センサ6と、が設けられている。
【0020】
ここに例示する内燃機関2は、4つの気筒を有する4気筒エンジンである。内燃機関2は、コントロールユニット5の制御指令に対して、アクチュエータを動作させて、所望の燃焼トルクを発生させる。内燃機関2を燃焼させる燃料は、レギュラーガソリン又はハイオクタンガソリン、軽油、食廃油、水素又はバイオマス燃料である。
【0021】
内燃機関2は、第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせるカムトリガ信号と各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号とを発するカムセンサ7を有する。
【0022】
図1に示されるように、燃料流量を学習する内燃機関2には、内燃機関2に供給される燃料流量を計測する燃料流量計8が取り付けられている。図2に示されるように、燃料流量を推定する運転中の内燃機関2では、内燃機関2に供給される燃料流量を計測する燃料流量計8が取り外されている。
【0023】
例示する電動機3は、三相交流同期モータであり、内燃機関の回転速度と同じ速度で回転して、電磁誘導により回生電力を生成する。すなわち、電動機3は、内燃機関2と同じ速度で回転して電磁誘導によって回生電力を生成する3相を有する交流モータである。
【0024】
電源4は、電力会社が供給する電力系統を示し、電動機3によって生成した電力を電力系統に供給することができる。ここで、電源4は、電力会社の電力系統として説明しているが、構成としての蓄電池としてもよいし、コンデンサとしてもよい。
【0025】
コントロールユニット5は、内燃機関2に制御指令を発してアクチュエータを動作させる。
【0026】
電流センサ6は、電動機3の電流情報Iを取得する。電動機3の電流情報Iを取得する際に、クランプ型の電流センサを用いる方法とロゴスキー型の電流センサを用いる方法とがある。電動機3から取得する電流情報Iは、最低でも2相を取得する必要がある。つまり、電流センサ6は、電動機3と電動機3により生成された回生電力が供給される電力系統との間を2相以上の数で電流を伝達する2以上の電線それぞれから電流情報Iを検出する。
【0027】
ここで、電流センサ6が電流情報Iの2相を取得する場合には、3相目の電流情報Iは、1相目と2相目との電流情報Iを足し合わせた際にゼロとなる交流電流の特徴を活用して求める。
【0028】
[内燃機関2の制御装置1]
図3は、第1実施形態に係る内燃機関2の制御装置1を示す機能ブロック図である。図3に示されるように、内燃機関2の制御装置1は、電流情報取得部11と、トルク成分演算部12と、燃料流量学習部13と、燃料流量推定部15と、を備える。
【0029】
内燃機関2の制御装置1は、メモリ14と、表示部16と、報知部17と、を有する。メモリ14は、半導体メモリ等の記憶装置である。表示部16及び報知部17は、操作者等に情報を通知する通知部である。
【0030】
内燃機関2の制御装置1は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置、及び、通信装置等のハードウェアを備えたコンピュータである。内燃機関2の制御装置1は、補助記憶装置に記録されたデータを参照しながら、演算装置によって主記憶装置にロードされたプログラムを実行することで、上記の各機能を実現する。
【0031】
以下では、内燃機関2の制御装置1の周知技術を適宜省略しながら、電流情報取得部11、トルク成分演算部12、燃料流量学習部13及び燃料流量推定部15の詳細を説明する。
【0032】
[電流情報取得部11]
電流情報取得部11は、内燃機関2と接続された電動機3から電流情報Iを取得する。電流情報取得部11は、電流センサ6から電流情報Iを取得する。電流センサ6から取得される電流情報Iは、少なくとも3相(U相、V相、W相)交流モータの中から少なくとも2相分の電流情報Iを取得できることが望ましい。電流情報取得部11が例えばU相、V相の2相分の電流情報Iを取得した場合には、W相の電流情報Iは、(式1)から求める。
【0033】
【数1】
【0034】
(式1)のIu、Iv、IwはそれぞれU相、V相、W相の各電線から取得した電流情報Iを示す。
【0035】
電流情報Iを用いた気筒判別方法が図4を用いて例示されている。図4は、第1実施形態に係る電流情報Iを用いた気筒判別方法を示す説明図である。図4の上段図は、電流情報取得部11によって取得した電流値の1相分を抜き出したデータを示す。図4の中段図は、内燃機関2のカムシャフト部分に取り付けられているカムセンサ電圧の履歴を示している。図4の下段図は、タイミング上のデータ数を示している。
【0036】
電流情報Iは、例示として四極モータの電流情報を示している。電気角2周期が機械角180度に相当する。このため、各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号のカムセンサ電圧の立ち上がりが電気角2周期と同期する。
【0037】
ここで、カムセンサ7は、機械角180度ごとに1回各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号が発生するセンサである。かつ、カムセンサ7は、第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせる時にカムトリガ信号が発生するセンサである。
【0038】
ここでは、図4に示されるように、気筒判別のために第一気筒が判別できるように、第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせる時に、カムトリガ信号が2本立つカムセンサ7が例示されている。
【0039】
このように、同期モータを採用する場合には、通常、内燃機関2の回転速度と電動機3の回転速度とが同期する。このため、誘導モータのようなすべりが発生することもない。つまり、本実施形態では、内燃機関2の制御において、カムセンサ7が気筒判別のための手段として用いられる。
【0040】
なお、同期モータの電流情報Iの特性を生かして、カムセンサ信号を使わず、電動機3の極数から求めた電気角から気筒判別することも可能である。
【0041】
電流情報取得部11は、カムセンサ7の第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせる時及び各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号時に発するカムトリガ信号と、電流情報Iから得られる交流電流値の振幅データ数と、をカウントして内燃機関2の各気筒の上死点を0度とした機械角を求める。
【0042】
具体的には、気筒判別時の電流情報Iのデータ数をカウントして、(式2)を用いて各気筒の上死点を0度とした機械角を求めることができる。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、L1は、あるカムトリガ信号と次のカムトリガ信号までのデータ数を表している。Lt1は、求めたい機械角θ1までのカムトリガ信号からの電流情報Iのデータ数を表している。L2は、あるトリガ信号から次々気筒のカムトリガ信号までのデータ数である。Lt2は、求めたい機械角θ2までのカムトリガ信号からのデータ数を表している。
【0045】
なお、電流情報取得部11は、電流情報Iに基づいて、内燃機関2と回転速度が同期する電動機3の極数から電気角を求めることもできる。
【0046】
以上のように、電流情報取得部11は、電流センサ6が検出する電流情報Iを用いて、内燃機関2の電気角及び機械角の少なくとも1つを演算する。
【0047】
[トルク成分演算部12]
トルク成分演算部12は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、内燃機関2のトルク成分を演算する。すなわち、トルク成分演算部12は、電流情報取得部11から取得した電流情報Iを同時に演算した内燃機関2の電気角及び機械角の少なくとも1つを考慮して内燃機関2の気筒別の角度同期電流情報に変換し、電流情報Iで得られたピーク特性を角度同期することによって、内燃機関2のトルクピーク並びにトルクピーク角度の少なくとも1つを演算する。
【0048】
具体的には、トルク成分演算部12は、3相分の電流情報Iを用いて、電動機3にかかるトルク成分を演算する。トルク成分は、(式3)のIqで求める。
【0049】
【数3】
【0050】
これにより、電流情報Iを気筒別の角度同期電流情報へ変換して、電流情報Iによって得られたピーク特性を角度同期することが可能となっている。
【0051】
トルク成分演算部12によって演算したトルク成分の波形を図5に例示して説明する。図5は、第1実施形態に係るトルク成分の演算方法を示す説明図である。
【0052】
トルク成分演算部12によって演算したトルク成分は、例えば図5のような波形になる。この波形は、(式3)で得られたトルク成分が電動機3側にて検出されたトルク成分のため、内燃機関2のトルク成分として、正負が反転する事実に則っている。図5に示すデータは、各気筒の燃焼前にピストンを上死点に押し上げる必要があるためにトルクが負の値を示すが、気筒燃焼後では、トルクが正の値として電動機3へ仕事を行うためこれらの値を示す。
【0053】
ここで、第一気筒の燃焼後のトルクピークは、例えば図5に示すP点が選択される。内燃機関2にて燃焼トルクが発生後に、フライホイールの慣性の影響を受けて電動機3に動力が伝えられる。
【0054】
また、P点のトルクピークが検出されたクランク角度をトルクピーク角度θPと定義する。ここで、トルクピークPの平均をPa、トルクピーク角度θPの平均をトルクピーク角度θPaと定義する。ここでの平均とは、サイクル平均を意味し、例えば100サイクルの平均を取得して得られている。
【0055】
[燃料流量学習部13]
燃料流量学習部13は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度を演算する。燃料流量学習部13は、トルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量計8から取得した燃料流量との相関関係を学習することで学習モデルを生成する。
【0056】
次に、燃料流量の学習方法を説明する。図6Aは、第1実施形態に係るトルクピークと燃料流量との相関関係を示す説明図である。具体的には、図6Aは、ある気筒でのトルクピークPの平均Paと平均燃料流量Faとを示している。平均燃料流量Faは,学習時のみ燃料流量計8を設置して取得してもよいし、内燃機関2に搭載されている燃料タンクのメモリ線から取得してもよい。
【0057】
図6Bは、第1実施形態に係るトルクピーク角度と燃料流量との相関関係を示す説明図である。図6Bは、ある気筒でのトルクピーク角度平均θPaと平均燃料流量Faを示している。
【0058】
内燃機関2は、電力系統の要求電力量から燃料流量Fを決定して制御しており、トルクピークPaとトルクピーク角度平均θPaと、は平均燃料流量Faとそれぞれ異なる比例関係を示す。この比例関係は、発明者の鋭意研究から分かっている。
【0059】
例えば、内燃機関2の運転トルク条件の指令値が変更されると、それに伴いコントロールユニット5の燃料流量制御指令値が変更される。これにより、トルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaとは、相関関係を有しながら値が変動する。つまり、運転トルク条件に紐づけたトルクピークPの値を学習することによって、内燃機関2の燃料流量を推定することが可能となる。
【0060】
ここでのトルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaとの学習としては、以下の学習を指す。まず、運転トルク条件の指令値に紐づけたトルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaとのどちらか少なくとも一方が燃料流量との比例関係として関数化される。次に、関数化した比例関係が燃料流量学習モデルMBとして学習される。
【0061】
[燃料流量推定部15]
燃料流量推定部15は、電流情報取得部11から取得した電流情報Iを基に、内燃機関2の燃料流量を推定する。
【0062】
詳しくは、燃料流量推定部15は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算した演算結果、かつ、燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係に基づき、運転中の内燃機関2の燃料流量を推定する。
【0063】
図7は、第1実施形態に係る燃料流量の推定方法を示す説明図である。図7は、トルクピーク平均Pa又はトルクピーク角度平均θPaから推定した平均燃料流量推定値F’aを時系列ごとにプロットした図である。
【0064】
燃料流量推定部15は、燃料流量学習部13によって燃料流量学習モデルMBから平均燃料流量推定値F’aと上限閾値F’amaxと下限閾値F’aminとを出力する。上限閾値F’amaxと下限閾値F’aminとは、予め設定した内燃機関2の燃料流量の正常と燃料流量の異常とを分ける値である。上限閾値F’amaxと下限閾値F’aminとは、例えば、学習時に収集したデータに基づき決定される。
【0065】
つまり、燃料流量推定部15は、推定した内燃機関2の燃料流量が予め設定した燃料流量の正常と燃料流量の異常とを分ける閾値を超えた場合に、運転中の内燃機関2の燃焼状態を異常と判定する。
【0066】
ここで、平均燃料流量推定値F’aが上限閾値F’amaxを上回っている場合や、平均燃料流量推定値F’aが下限閾値F’aminより下回っている場合には、表示部16にて燃料流量の異常である状態を表示する。また同時に、報知部17にて文字、音声、光等で操作者に燃料流量の異常であることの報知を実施する。
【0067】
表示部16では、燃料流量推定部15によって推定した燃料流量状態のリアルタイムな時系列データを表示し、操作者が燃焼状態の監視を確認できるようにする。
【0068】
表示部16は、内燃機関2の制御装置1と物理的に接続してあってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)のように無線で接続してあってもよい。
【0069】
報知部17は、燃料流量推定部15によって燃料流量が異常と判定された場合に、操作者や監視者に燃焼状態の異常状態を報知する。報知部17は、ブザーで報知する音響装置や視覚で報知する点滅装置が考えられる。
【0070】
表示部16及び報知部17は、運転中の内燃機関2の燃焼状態が異常である場合に、燃焼状態の異常を通知する通知部である。
【0071】
[学習処理]
ここで、図8のフローチャート図を用いて、内燃機関2の制御装置1での学習処理の詳細を説明する。図8は、第1実施形態に係る燃料流量の学習処理を示すフローチャート図である。なお、この学習処理は、一定時間経過毎に実施してもよいし、操作者からの指令に応じて実施してもよい。ここで、学習処理中の内燃機関には、内燃機関2に供給される燃料流量を計測する燃料流量計8が取り付けられている。
【0072】
ステップS801では、電流情報取得部11が電流情報Iを取得する。ステップS801の処理の後、処理がステップS802に進む。
【0073】
ステップS802では、トルク成分演算部12がステップS801で取得した電流情報Iからトルク成分を演算する。ステップS802の処理の後、処理がステップS803に進む。
【0074】
ステップS803では、内燃機関2に取り付けられた燃料流量計8が平均燃料流量Faを取得する。なお、平均燃料流量Faの取得は、内燃機関2に取り付けられた燃料流量計8を用いてもよいし、燃料タンクのメモリを測定者が読んでもよい。ステップS803で平均燃料流量Faを求めた後、処理がステップS804に進む。
【0075】
ステップS804では、燃料流量学習部13がステップS802で取得したトルク成分(Pa、θPa)とステップS803で取得した平均燃料流量Faとから燃料流量学習モデルMBを生成する。燃料流量学習モデルMBは、メモリ14内に記憶される。ステップS804の処理の後、学習処理が終了する。
【0076】
[推定処理]
ここで、図9のフローチャート図を用いて、内燃機関2の制御装置1での推定処理の詳細を説明する。図9は、第1実施形態に係る燃料流量の推定処理を示すフローチャート図である。なお、この推定処理は、一定時間経過毎に実施してもよいし、操作者からの指令に応じて実施してもよい。ここで、燃料流量推定部15が燃料流量を推定する運転中の内燃機関2では、内燃機関2に供給される燃料流量を計測する燃料流量計8が取り外されている。
【0077】
ステップS901では、電流情報取得部11が電流情報Iを取得する。ステップS901の処理の後、処理がステップS902に進む。
【0078】
ステップS902では、トルク成分演算部12がステップS901で取得した電流情報Iからトルク成分を演算する。ステップS902の処理の後、処理がステップS903に進む。
【0079】
ステップS903では、燃料流量推定部15がメモリ14内からステップS902で演算したトルク成分に紐づいた燃料流量学習モデルMBを読み込む。ステップS903の処理の後、処理がステップS904に進む。
【0080】
ステップS904では、燃料流量推定部15がステップS903で読み込んだ燃料流量学習モデルMBから運転中の内燃機関2の燃料流量を推定する。ステップS904の処理の後、処理がステップS905に進む。
【0081】
ステップS905では、燃料流量推定部15によって燃料流量が予め設定した閾値を超えて燃料流量の異常があって燃焼状態の異常があるか否か判定する。燃料流量推定部15によって燃料流量が予め設定した閾値を超えて燃焼状態の異常が判定された場合に、処理がステップS906に進む。また、燃料流量推定部15によって燃料流量が予め設定した閾値を超えずに燃焼状態の異常が判定されなかった場合に、燃焼状態が正常であるとして推定処理が終了する。
【0082】
ステップSS906では、燃料流量推定部15によって燃焼状態の異常が発生している旨を操作者に伝えるため、燃焼状態の異常を表示部16に表示又は報知部17に報知をし、推定処理が終了する。
【0083】
なお、燃料の補給や燃料の継ぎ足し等があった場合には、推定処理から学習処理に一旦戻る。
【0084】
<<本実施形態の効果>>
燃料流量推定部15は、燃料流量学習部13がメモリ14に保存した燃料流量学習モデルMBを利用し、電流情報取得部11が得た電流情報Iから燃料流量を推定する。
【0085】
本実施形態によれば、電流情報Iから燃料流量を推定する燃料流量学習モデルMBにより、例えば内燃機関2の制御装置1内にノックセンサや筒内圧センサが無い又は故障した場合でも、効果的に操作者に対して燃焼状態の異常を伝えることが可能となる。
【0086】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の内燃機関2の制御装置1について説明する。なお、第1実施形態との共通点は、重複説明を省略する。第2実施形態では,燃料として、2種類以上の燃料を使用する場合について説明する。例えば、主燃料に軽油を導入し、副燃料に水素を導入した場合を想定する。
【0087】
ここで、学習中の内燃機関2には、内燃機関2に供給される主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを計測する燃料流量計8が取り付けられている。主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定する運転中の内燃機関2では、内燃機関2に供給される主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを計測する燃料流量計が取り外されている。ここでは、燃料流量計8は、主燃料流量を計測する。燃料流量計8は、主燃料流量又は副燃料流量のどちらか一方を計測できればよい。
【0088】
[燃料流量学習部13]
燃料流量学習部13は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピークとトルクピーク角度とを演算する。燃料流量学習部13は、トルクピークとトルクピーク角度と燃料流量計8から取得した主燃料流量との相関関係を学習することで燃料流量学習モデルMBを生成する。
【0089】
図10Aは、第2実施形態に係るトルクピークと主燃料流量との相関関係を示す説明図である。図10Aは、ある気筒でのトルクピークPの平均Paと平均主燃料流量Fa1を示している。
【0090】
平均主燃料流量Fa1は、学習時のみ燃料流量計8を設置して取得する。なお、平均主燃料流量Fa1は、内燃機関2に搭載されている燃料タンクのメモリ線から取得してもよい。
【0091】
ここで、図10Aの実線を挟んだ2つの破線は、主燃料と副燃料とを併用した場合のトルクピーク平均Paの範囲を示している。トルクピーク平均Paの範囲は、平均副燃料流量Fa2の導入量によってトルクピークが異なってくるため所定の幅を有する。これは、主燃料と副燃料との配合比が異なる混焼によって、燃焼エネルギが変動するためである。
【0092】
図10Bは、第2実施形態に係るトルクピーク角度と主燃料流量との相関関係を示す説明図である。図10Bは、ある気筒でのトルクピーク角度平均θPaと平均主燃料流量Fa1とを示している。
【0093】
平均主燃料流量Fa1は、学習時のみ燃料流量計8を設置して取得する。なお、平均主燃料流量Fa1は、内燃機関2に搭載されている燃料タンクのメモリ線から取得してもよい。
【0094】
ここで、図10Bの実線を挟んだ2つの破線は、主燃料と副燃料とを併用した場合のトルクピーク角度平均θPaの範囲を示している。トルクピーク角度平均θPaの範囲は、平均副燃料流量Fa2の導入量によってトルクピーク角度平均θPaが異なってくるため所定の幅を有する。これは、主燃料と副燃料との配合比が異なる混焼によって、燃焼エネルギが変動するためである。
【0095】
内燃機関2は、電力系統の要求電力量から主燃料流量及び副燃料流量を決定して制御している。トルクピークPa及びトルクピーク角度平均θPaは、平均主燃料流量Fa1と平均副燃料流量Fa2との配合量によって変動することが発明者の鋭意研究から分かっている。
【0096】
例えば、内燃機関2の運転トルク条件の指令値を変更すると、それに伴いコントロールユニット5内にて主燃料流量と副燃料流量との配合量がマップ参照により導出される。そして、燃料流量制御指令値が変更され、トルクピーク平均Pa及びトルクピーク角度平均θPaは、相関関係をもって値が変動する。
【0097】
つまり、運転トルク条件に紐づけたトルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaとのどちらか少なくとも一方の値を学習することによって、平均主燃料流量Fa1又は平均副燃料流量Fa2のどちらか一方を取得できれば、内燃機関2の主燃料流量又は副燃料流量を推定することが可能となる。
【0098】
図10A及び図10Bに示されるように、運転トルク条件に紐づけたトルクピーク平均Paと平均主燃料流量Fa1又は平均副燃料流量Fa2のどちらか一方の推定値と、トルクピーク角度平均θPaと平均主燃料流量Fa1又は平均副燃料流量Fa2のどちらか一方の推定値と、は、それぞれ異なる比例関係を有する。このため、トルクピーク平均Pa及びトルクピーク角度平均θPaの双方についての比例関係を考慮することで、内燃機関2の主燃料流量又は副燃料流量をより精度良く推定できる。
【0099】
ここでのトルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaとの学習とは、以下の学習を指す。まず、運転トルク条件の指令値に紐づけたトルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaとのどちらか少なくとも一方が主燃料流量又は副燃料流量燃料流量との比例関係として関数化される。次に、関数化した比例関係が燃料流量学習モデルMBとして学習される。
【0100】
[燃料流量推定部15]
燃料流量推定部15は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピークとトルクピーク角度とを演算した演算結果、かつ、燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量との相関関係に基づき、運転中の内燃機関2の副燃料流量を推定する。
【0101】
図11は、第2実施形態に係る主燃料流量の推定方法を示す説明図である。図11は、トルクピーク平均Pとトルクピーク角度平均θPaと平均主燃料流量Fa1とにおける平均副燃料流量Fa2のマップを示している。
【0102】
平均主燃料流量Fa1と平均副燃料流量Fa2との配合量により、トルクピーク平均Pとトルクピーク角度平均θPとが図11のヒートマップのように変化することが分かっている。ヒートマップは、濃淡で示しており、濃い程平均副燃料流量Fa2が多いことを示している。これによれば、トルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaと平均主燃料流量Fa1との関係性の学習により、平均副燃料流量Fa2を導出することが可能になる。
【0103】
また、燃料流量推定部15は、推定した副燃料流量が予め設定した燃料流量の正常と燃料流量の異常とを分ける閾値を超えた場合に、運転中の内燃機関2の燃焼状態を異常と判定する。
【0104】
[学習処理]
ここで、図12のフローチャート図を用いて、内燃機関2の制御装置1での学習処理の詳細を説明する。図12は、第2実施形態に係る燃料流量の学習処理を示すフローチャート図である。なお、この学習処理は、一定時間経過毎に実施してもよいし、操作者からの指令に応じて実施してもよい。ここで、学習処理中の内燃機関2には、内燃機関2に供給される主燃料流量を計測する燃料流量計8が取り付けられている。
【0105】
ステップS1201では、電流情報取得部11が電流情報Iを取得する。ステップS1201の処理の後、処理がステップS1202に進む。
【0106】
ステップS1202では、トルク成分演算部12がステップS1201で取得した電流情報Iからトルク成分としてトルクピーク平均Paとトルクピーク角度平均θPaとを演算する。ステップS1202の処理の後、処理がステップS1203に進む。
【0107】
ステップS1203では、内燃機関2に取り付けられた燃料流量計8が平均主燃料流量Fa1を取得する。なお、平均主燃料流量Fa1の取得は、内燃機関2に取り付けられた燃料流量計を用いてもよいし、燃料タンクのメモリを測定者が読んでもよい。ステップS1203で平均主燃料流量Fa1を求めた後、処理がステップS1204に進む。
【0108】
ステップS1204では、燃料流量学習部13がステップS1202で取得したトルク成分としてトルクピーク平均Pa及びトルクピーク角度平均θPaとステップS1203で取得した平均主燃料流量Fa1とから燃料流量学習モデルMB(関数化されたトルクピーク平均Pa、トルクピーク角度平均θPa及び平均副燃料流量Fa2の比例関係)を生成する。
【0109】
なお、図10A及び図10Bに示されるように、運転トルク条件に紐づけたトルクピーク平均Paと平均主燃料流量Fa1の推定値とから平均副燃料流量Fa2が推定できる。また、トルクピーク角度平均θPaと平均主燃料流量Fa1推定値とから平均副燃料流量Fa2が推定できる。このため、トルクピーク平均Pa及びトルクピーク角度平均θPaの双方についての比例関係を考慮することで、平均主燃料流量Fa1の推定値が分かれば内燃機関2の平均副燃料流量Fa2が推定することができる。
【0110】
そして、燃料流量学習モデルMBは、メモリ14内に記憶される。ステップS1204の処理の後、学習処理が終了する。
【0111】
[推定処理]
ここで、図13のフローチャート図を用いて、内燃機関2の制御装置1での推定処理の詳細を説明する。図13は、第2実施形態に係る燃料流量の推定処理を示すフローチャート図である。なお、この推定処理は、一定時間経過毎に実施してもよいし、操作者からの指令に応じて実施してもよい。ここで、燃料流量推定部15が燃料流量を推定する運転中の内燃機関2では、内燃機関2に供給される主燃料流量を計測する燃料流量計8が取り外されている。
【0112】
ステップS1301では、電流情報取得部11が電流情報Iを取得する。ステップS1301の処理の後、処理がステップS1302に進む。
【0113】
ステップS1302では、トルク成分演算部12がステップS1301で取得した電流情報Iからトルク成分としてトルクピーク平均Pa及びトルクピーク角度平均θPaを演算する。ステップS1302の処理の後、処理がステップS1303に進む。
【0114】
ステップS1303では、燃料流量推定部15がメモリ14内からステップS1302で演算したトルク成分に紐づいた燃料流量学習モデルMB(関数化されたトルクピーク平均Pa、トルクピーク角度平均θPa及び平均副燃料流量Fa2の比例関係)を読み込む。ステップS1303の処理の後、処理がステップS1304に進む。
【0115】
ステップS1304では、燃料流量推定部15がステップS1303で読み込んだ燃料流量学習モデルMB(関数化されたトルクピーク平均Pa、トルクピーク角度平均θPa及び平均副燃料流量Fa2の比例関係)から運転中の内燃機関2の平均副燃料流量Fa2を推定する。つまり、ステップS1304では、トルクピーク平均Pa及びトルクピーク角度平均θPaから平均主燃料流量Fa1を推定し、燃料流量学習モデルMBを用いてトルクピーク平均Pa又はトルクピーク角度平均θPaの少なくとも1つと平均主燃料流量Fa1とから平均副燃料流量Fa2を推定する。ステップS1304の処理の後、処理がステップS1305に進む。
【0116】
ステップS1305では、燃料流量推定部15によって平均副燃料流量Fa2が予め設定した閾値を超えて燃料流量の異常があって燃焼状態の異常があるか否か判定する。燃料流量推定部15によって平均副燃料流量Fa2が予め設定した閾値を超えて燃焼状態の異常がされた場合に、処理がステップS1306に進む。また、燃料流量推定部15によって平均副燃料流量Fa2が予め設定した閾値を超えずに燃焼状態の異常が判定されなかった場合に、燃焼状態が正常であるとして推定処理が終了する。
【0117】
ステップS1306では、燃料流量推定部15によって燃焼状態の異常が発生している旨を操作者に伝えるため、燃焼状態の異常を表示部16に表示又は報知部17に報知をし、推定処理が終了する。
【0118】
なお、主燃料又は副燃料の少なくとも一方の補給や主燃料又は副燃料の少なくとも一方の継ぎ足し等があった場合には、推定処理から学習処理に一旦戻る。
【0119】
本実施形態では、学習処理にて平均主燃料流量Fa1の燃料流量学習モデルMBが学習され、推定処理にて平均副燃料流量Fa2が推定されている。しかし、これに限られない。例えば、学習処理にて平均副燃料流量Fa2の燃料流量学習モデルMBが学習され、推定処理にて平均主燃料流量Fa1が推定されてもよい。また、学習処理にて平均主燃料流量Fa1又は平均副燃料流量Fa2のどちらか一方の燃料流量学習モデルMBが学習され、推定処理にて平均主燃料流量Fa1及び平均副燃料流量Fa2の双方が推定されてもよい。
【0120】
<<本実施形態の効果>>
燃料流量推定部15は、燃料流量学習部13がメモリ14に保存した燃料流量学習モデルMBを利用して、電流情報取得部11が得た電流情報Iから燃焼状態を推定する。
【0121】
本実施形態によれば、電流情報Iから燃焼状態を推定する燃料流量学習モデルMBにより、例えば内燃機関2の制御装置1内にノックセンサや筒内圧センサ及び燃料流量センサが無い又は故障した場合でも、効果的に操作者に対して燃焼状態の異常を伝えることが可能となる。
【0122】
また、水素を予混合気として導入し、軽油を主燃焼として噴射するような異種燃料を混焼するディーゼルエンジンを想定した場合に、筒内圧センサを用いないので燃焼変動の原因特定がし易い。
【0123】
<<従来技術との相違点の効果>>
(A)
内燃機関2の制御装置1は、内燃機関2と接続された電動機3から電流情報Iを取得する電流情報取得部11を備える。内燃機関2の制御装置1は、電流情報取得部11から取得した電流情報Iを基に、内燃機関2の燃料流量を推定する燃料流量推定部15を備える。
【0124】
この構成によれば、筒内圧センサの検出結果を用いなくても、内燃機関2の燃料流量を推定可能な内燃機関2の制御装置1を提供することができる。ここで、内燃機関2の制御装置1は、筒内圧センサが搭載されていない既存のシステムや筒内圧センサが故障した内燃機関2のシステムを制御対象とする場合がある。その場合でも、内燃機関2の燃料流量を推定することで、内燃機関2の燃焼変動を抑制しつつ電力系統への安定的な電力を供給する安価なシステムを構築することができる。
【0125】
(B)
内燃機関2の制御装置1は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、内燃機関2のトルク成分を演算するトルク成分演算部12を備える。内燃機関2の制御装置1は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算し、トルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係を学習することで燃料流量学習モデルMBを生成する燃料流量学習部13を備える。燃料流量推定部15は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算した演算結果、かつ、燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係に基づき、内燃機関2の燃料流量を推定する。
【0126】
この構成によれば、燃料流量学習部13によって学習されたトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係に基づき、内燃機関2の燃料流量を推定することができる。
【0127】
(C)
燃料流量推定部15は、推定した内燃機関2の燃料流量が予め設定した燃料流量の正常と燃料流量の異常とを分ける閾値を超えた場合に、内燃機関2の燃焼状態を異常と判定する。
【0128】
この構成によれば、推定された内燃機関2の燃料流量によって、内燃機関2の燃焼状態を適切に制御することができる。
【0129】
(D)
内燃機関2の制御装置1は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、内燃機関2のトルク成分を演算するトルク成分演算部12を備える。内燃機関2の制御装置1は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピークとトルクピーク角度とを演算し、トルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係を学習することで燃料流量学習モデルMBを生成する燃料流量学習部13を備える。燃料流量推定部15は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピークとトルクピーク角度とを演算した演算結果、かつ、燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係に基づき、内燃機関の副燃料流量を推定する。
【0130】
この構成によれば、燃料流量学習部13によって学習されたトルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係に基づき、内燃機関2の副燃料流量を推定することができる。
【0131】
(E)
燃料流量推定部15は、推定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つが予め設定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つの正常と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つの異常とを分ける閾値を超えた場合に、内燃機関2の燃焼状態を異常と判定する。
【0132】
この構成によれば、燃料流量推定部15が燃料流量学習部13にて推定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つの燃料流量学習モデルMBを用いて内燃機関2の運転中の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定することができる。そして、燃料流量推定部15が推定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つが予め設定した閾値を超えた場合に、内燃機関2の燃焼状態を異常と判定することができる。このように、運転中の内燃機関2の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定し、内燃機関2の燃焼状態を適切に制御することができる。
【0133】
(F)
内燃機関2を燃焼させる燃料は、レギュラーガソリン又はハイオクタンガソリン、軽油、食廃油、水素又はバイオマス燃料である。
【0134】
この構成では、高価な筒内圧センサの情報を用いることなく、種々の燃料を用いる内燃機関2を適切に制御できる。
【0135】
(G)
電動機3は、内燃機関2と同じ速度で回転して電磁誘導によって回生電力を生成する3相を有する交流モータである。電動機3と電動機3により生成された回生電力が供給される電力系統との間を2相以上の数で電流を伝達する2以上の電線それぞれから電流情報を検出する電流センサ6が設けられている。電流情報取得部11は、電流センサ6が検出する電流情報Iを用いて、内燃機関2の電気角及び機械角の少なくとも1つを演算する。
【0136】
この構成では、内燃機関2から駆動を受ける電動機3から取得した電流情報Iを用いて、内燃機関2の燃料流量を推定できる。これにより、高価な筒内圧センサの情報を用いることなく、運転中の内燃機関2の燃料流量を推定し、内燃機関2を適切に制御することができる。したがって、内燃機関2の燃料流量を推定することで、内燃機関2の燃焼変動を抑制しつつ電力系統への安定的な電力を供給する安価なシステムを構築することができる。
【0137】
(H)
内燃機関2は、第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせるカムトリガ信号と各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号とを発するカムセンサ7を有する。電流情報取得部11は、カムセンサ7の第一気筒の気筒燃焼区間の始まりを知らせる時及び各気筒燃焼区間を知らせるカムトリガ信号時に発するカムトリガ信号と、電流情報Iから得られる交流電流値の振幅データ数と、をカウントして内燃機関2の各気筒の上死点を0度とした機械角を求める。
【0138】
この構成では、電動機3の電流情報Iを用いて演算される内燃機関2の機械角を基に、運転中の内燃機関2の燃料流量を推定できる。これにより、高価な筒内圧センサの情報を用いることなく、内燃機関2を適切に制御できる。したがって、内燃機関2の燃料流量を推定することで、内燃機関2の燃焼変動を抑制しつつ電力系統への安定的な電力を供給する安価なシステムを構築することができる。
【0139】
(I)
電流情報取得部11は、電流情報Iに基づいて、内燃機関2と回転速度が同期する電動機3の極数から電気角を求める。
【0140】
この構成では、電動機3の電流情報Iを用いて演算される内燃機関2の電気角を基に、運転中の内燃機関2の各気筒の燃料流量を推定できる。これにより、高価な筒内圧センサの情報を用いることなく、内燃機関2を適切に制御できる。したがって、内燃機関2の燃料流量を推定することで、内燃機関2の燃焼変動を抑制しつつ電力系統への安定的な電力を供給する安価なシステムを構築することができる。
【0141】
(J)
電動機3は、内燃機関2と同じ速度で回転して電磁誘導によって回生電力を生成する3相を有する交流モータである。電動機3と電動機3により生成された回生電力が供給される電力系統との間を2相以上の数で電流を伝達する2以上の電線それぞれから電流情報Iを検出する電流センサ6が設けられている。電流情報取得部11は、電流センサ6が検出する電流情報Iを用いて、内燃機関2の電気角及び機械角の少なくとも1つを演算する。内燃機関2には、内燃機関2に供給される燃料流量を計測する燃料流量計8が取り付けられている。内燃機関2の制御装置1は、電流情報取得部11から取得した電流情報Iを内燃機関2の気筒別の角度同期電流情報に変換し、電流情報Iで得られたピーク特性を角度同期することによって、内燃機関2のトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算するトルク成分演算部12を備える。内燃機関2の制御装置は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算し、トルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量計8から取得した燃料流量との相関関係を学習することで燃料流量学習モデルMBを生成する燃料流量学習部13を備える。
【0142】
この構成によれば、燃料流量学習部13が電流情報取得部11から取得した電流情報I及び燃料流量計8から取得した燃料流量を基に、内燃機関2の燃料流量を学習することができる。したがって、筒内圧センサの検出結果を用いなくても、内燃機関2の燃料流量を推定可能な内燃機関2の制御装置1を提供することができる。ここで、内燃機関2の制御装置1は、筒内圧センサが搭載されていない既存のシステムや筒内圧センサが故障した内燃機関2のシステムを制御対象とする場合がある。その場合でも、内燃機関2の燃料流量を推定することで、内燃機関2の燃焼変動を抑制しつつ電力系統への安定的な電力を供給する安価なシステムを構築することができる。
【0143】
(K)
燃料流量推定部15は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つを演算した演算結果、かつ、燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係に基づき、運転中の内燃機関2の燃料流量を推定し、運転中の内燃機関2の燃料流量が予め設定した燃料流量の正常と燃料流量の異常とを分ける閾値を超えた場合に、運転中の内燃機関2の燃焼状態を異常と判定する。内燃機関2の制御装置1は、運転中の内燃機関2の燃焼状態が異常である場合に、燃焼状態の異常を通知する表示部16及び報知部17を備える。
【0144】
この構成によれば、燃料流量推定部15が電流情報Iを用いて演算した内燃機関2のトルク成分と、燃料流量学習部13にて学習した燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピーク及びトルクピーク角度の少なくとも1つと燃料流量との相関関係と、を用いて運転中の内燃機関2の燃料流量を推定することができる。そして、燃料流量推定部15が推定した燃料流量が予め設定した閾値を超えた場合に、運転中の内燃機関2の燃焼状態を異常と判定することができる。このように、内燃機関2の燃料流量を推定し、内燃機関2の燃焼状態を適切に制御することができる。
【0145】
(L)
燃料流量推定部15が燃料流量を推定する運転中の内燃機関2では、内燃機関2に供給される燃料流量を計測する燃料流量計8が取り外されている。
【0146】
この構成によれば、運転中の内燃機関2では必要の無い燃料流量計8が取り外され、単純なシステムを構築することができる。
【0147】
(M)
電動機3は、内燃機関2と同じ速度で回転して電磁誘導によって回生電力を生成する3相を有する交流モータである。電動機3と電動機3により生成された回生電力が供給される電力系統との間を2相以上の数で電流を伝達する2以上の電線それぞれから電流情報Iを検出する電流センサ6が設けられている。電流情報取得部11は、電流センサ6が検出する電流情報Iを用いて、内燃機関2の電気角及び機械角の少なくとも1つを演算する。内燃機関2には、内燃機関2に供給される主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを計測する燃料流量計8が取り付けられている。内燃機関2の制御装置1は、電流情報取得部11から取得した電流情報Iを内燃機関2の気筒別の角度同期電流情報に変換し、電流情報Iで得られたピーク特性を角度同期することによって、内燃機関2のトルクピークとトルクピーク角度とを演算するトルク成分演算部12を備える。内燃機関2の制御装置は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピークとトルクピーク角度とを演算し、トルクピークとトルクピーク角度と燃料流量計8から取得した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係を学習することで燃料流量学習モデルMBを生成する燃料流量学習部13を備える。
【0148】
この構成によれば、燃料流量学習部13が電流情報取得部11から取得した電流情報I及び燃料流量計8から取得した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを基に、内燃機関2の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを学習することができる。したがって、筒内圧センサの検出結果を用いなくても、内燃機関2の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定可能な内燃機関2の制御装置1を提供することができる。ここで、内燃機関2の制御装置1は、筒内圧センサが搭載されていない既存のシステムや筒内圧センサが故障した内燃機関2のシステムを制御対象とする場合がある。その場合でも、内燃機関2の燃料流量を推定することで、内燃機関2の燃焼変動を抑制しつつ電力系統への安定的な電力を供給する安価なシステムを構築することができる。
【0149】
(N)
燃料流量推定部15は、内燃機関2における電流情報Iを用いて、トルク成分演算部12により演算された内燃機関2のトルク成分から内燃機関2の各気筒燃焼後でのトルクピークとトルクピーク角度とを演算した演算結果、かつ、燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係に基づき、運転中の内燃機関2の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定する。燃料流量推定部15は、運転中の内燃機関2の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つが予め設定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つが正常か異常かを分ける閾値を超えた場合に、運転中の内燃機関2の燃焼状態を異常と判定する。内燃機関2の制御装置1は、運転中の内燃機関2の燃焼状態が異常である場合に、運転中の内燃機関2の燃焼状態が異常を通知する表示部16及び報知部17を備える。
【0150】
この構成によれば、燃料流量推定部15が電流情報Iを用いて演算した内燃機関の2トルク成分、かつ、燃料流量学習部13にて学習した燃料流量学習モデルMBにおけるトルクピークとトルクピーク角度と主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つとの相関関係を用いて運転中の内燃機関2の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定することができる。そして、燃料流量推定部15が推定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つが予め設定した主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つの正常と異常とを分ける閾値を超えた場合に、運転中の内燃機関2の燃焼状態を異常と判定することができる。このように、内燃機関2の主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定し、内燃機関2の燃焼状態を適切に制御することができる。
【0151】
(O)
燃料流量推定部15が主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを推定する運転中の内燃機関2では、内燃機関2に供給される主燃料流量及び副燃料流量の少なくとも1つを計測する燃料流量計8が取り外されている。
【0152】
この構成によれば、運転中の内燃機関2では必要の無い燃料流量計8が取り外され、単純なシステムを構築することができる。
【0153】
以上、実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0154】
1…内燃機関の制御装置、2…内燃機関、3…電動機、4…電源、5…コントロールユニット、6…電流センサ、7…カムセンサ、8…燃料流量計、11…電流情報取得部、12…トルク成分演算部、13…燃料流量学習部、14…メモリ、15…燃料流量推定部、16…表示部、17…報知部、100…エンジンシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13