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特開2023-173801エキシマランプを備えたランプユニット、紫外線照射装置、オゾン生成装置、オゾン処理装置およびランプユニットの交換方法
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  • 特開-エキシマランプを備えたランプユニット、紫外線照射装置、オゾン生成装置、オゾン処理装置およびランプユニットの交換方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173801
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】エキシマランプを備えたランプユニット、紫外線照射装置、オゾン生成装置、オゾン処理装置およびランプユニットの交換方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/26 20060101AFI20231130BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20231130BHJP
   H01J 61/34 20060101ALI20231130BHJP
   C01B 13/10 20060101ALI20231130BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20231130BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01J61/26 N
H01J65/00 D
H01J61/34
C01B13/10 Z
A61L9/20
A61L9/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086297
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】藤森 昭芳
(72)【発明者】
【氏名】本多 友彦
【テーマコード(参考)】
4C180
4G042
5C015
5C043
【Fターム(参考)】
4C180CA06
4C180CA10
4C180DD03
4C180EA17X
4C180HH17
4G042CA03
4G042CC23
4G042CE02
5C015TT09
5C015TT14
5C043BB01
5C043DD02
5C043EC20
(57)【要約】
【課題】紫外線照射装置、オゾン生成装置などに対してエキシマランプを設置するのに際し、効果的な不純ガス、不純物などの除去や抑制を行う。
【解決手段】紫外線照射装置1000は、ジャケット管20を備え、エキシマランプ60が、不純ガス吸着剤40を一体的に設けた保持部材30に対して同軸的に接続し、保持部材30が、ジャケット管20の開口部20T側から取り外し可能に装着される。そして、エキシマランプ60の装着に合わせて不純ガス吸着剤40がジャケット管20内に設置され、ランプ交換に合わせて不純ガス吸着剤40が同時に交換される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線が照射されるランプ収容部に対し、取り外し可能に設置されるエキシマランプと、
前記ランプ収容部内の不純ガスおよび不純物のうち少なくとも不純ガスを除去可能な除去部とを備え、
前記除去部が、前記ランプ収容部からの前記エキシマランプの取り外しに応じて一体的に取り外されることを特徴とするランプユニット。
【請求項2】
前記ランプ収容部において、前記エキシマランプを保持し、前記エキシマランプと一体的に取り外される保持部材をさらに備え、
前記除去部が、前記保持部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のランプユニット。
【請求項3】
前記ランプ収容部が、前記ランプ収容部に形成された前記エキシマランプ装着用の開口部を有し、
前記保持部材が、前記エキシマランプが前記ランプ収容部に装着された状態において、前記開口部を閉じるまたは覆うことにより、前記ランプ収容部を密閉することを特徴とする請求項2に記載のランプユニット。
【請求項4】
前記除去部が、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管端部から、ランプ軸方向に沿って離れた位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のランプユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のランプユニットを備えた紫外線照射装置であって、
前記ランプ収容部が、前記エキシマランプが前記ランプ収容部に装着された状態において、密閉空間を形成することを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項6】
前記除去部が、前記ランプ収容部において、不純ガスとしての酸素の濃度を、0.001~10%の範囲となるように低減することを特徴とする請求項5に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記除去部が、有機系の酸素吸着材によって構成されることを特徴とする請求項6に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記ランプ収容部が、前記エキシマランプを同軸的に配置するジャケット管として構成されることを特徴とする請求項5に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記ランプ収容部が、紫外線照射窓を形成した装置ケーシングとして構成されることを特徴とする請求項5に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載のランプユニットを備えた紫外線処理装置であって、
前記ランプ収容部が、紫外線照射対象である流体の流入口および流出口を有し、
前記除去部が、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管よりも上流側に設けられ、前記流体の流路に露出して、空気である前記流体から酸素を除去することを特徴とする紫外線処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれかに記載のランプユニットを備えたオゾン生成装置であって、
前記ランプ収容部が、紫外線照射対象である流体の流入口および流出口を有し、
前記除去部が、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管よりも上流側に設けられ、前記流体の流路に露出して、空気である前記流体から水分を不純物として除去することを特徴とするオゾン生成装置。
【請求項12】
請求項1乃至4のいずれかに記載のランプユニットを備えたオゾン処理装置であって、
前記ランプ収容部が、紫外線照射対象である流体の流入口および流出口を有し、
前記除去部が、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管よりも下流側に設けられ、前記流体の流路に露出して、空気である前記流体に対する紫外線照射によって発生するオゾンを、不純ガスとして除去することを特徴とするオゾン処理装置。
【請求項13】
紫外線が照射されるランプ収容部に対するエキシマランプの装着および交換方法であって、
不純ガスおよび不純物のうち少なくとも不純ガスを前記ランプ収容部内から除去する除去部を、前記ランプ収容部で露出するように、前記エキシマランプ又は前記エキシマランプの保持部材に一体的に取り付け、
前記エキシマランプを前記ランプ収容部に装着し、
ランプ交換時、前記エキシマランプを、前記除去部とともに前記ランプ収容部から取り外すことを特徴とするエキシマランプの装着および交換方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプを備えた紫外線照射装置、紫外線処理装置、オゾン生成装置、オゾン処理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプは、紫外線照射装置の光源として、また、除菌処理、脱臭処理などを行う紫外線処理装置、紫外線照射方式のオゾン生成装置の光源として、利用されている。エキシマランプでは、希ガスなどが含まれる放電空間に対して高周波電圧(数kV)を印加することにより放電が形成され、エキシマ光が紫外線として放射される。
【0003】
エキシマランプの製造工程(封止工程)の加熱などに起因して、発光管などに吸着したガス(以下、不純ガスという)が再放出される。このような不純ガスを除去するため、不純ガスを吸着する部材(ゲッターなど)が設けられる。例えば、エキシマランプの放電管(発光管)と、放電管を覆う外管との間に、バリウム、ジルコニウムなどを吸着するゲッターが設けられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5074248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線照射装置、オゾン生成装置などでは、エキシマランプの経年劣化や不具合などによって、ランプ交換が必要となる場合が生じる。また、エキシマランプの設置されるジャケット管や容器内に不純ガスや不純物が残留することで、放電管の透過率低下や劣化を招く恐れがある。
【0006】
したがって、紫外線照射装置、オゾン生成装置などに対してエキシマランプを設置するのに際し、効果的な不純ガス、不純物などの除去や抑制が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様であるランプユニットは、紫外線が照射されるランプ収容部に対し、取り外し可能に設置されるエキシマランプと、前記ランプ収容部内の不純ガスおよび不純物のうち少なくとも不純ガスを除去可能な除去部とを備える。ランプユニットは、例えば、紫外線照射装置、UV殺菌装置などの紫外線処理装置、オゾン生成装置、オゾナイザ―などのオゾン処理装置に適用可能であり、エキシマランプは、装置内に設けられたランプ収容部に対し、取り外し可能に設置することができる。除去部は、不純ガスなどを吸収、吸着、抽出するように構成することができ、不純ガスなどを完全に除去する構成だけでなく、上記装置やエキシマランプなどへの影響が抑制される範囲で除去する構成も含まれる。例えば、除去部は、吸着剤、フィルタなどによって構成される。
【0008】
本発明の前記吸収部は、前記エキシマランプの前記ランプ収容部からの取り外しに応じて、一体的に取り外される。ここでの「一体的に取り外される」とは、エキシマランプとともにランプ収容部から取り外される構成であればよく、除去部がエキシマランプに装着された構成、あるいは、エキシマランプと接続する部材などに除去部が装着された構成などが含まれる。例えば除去部は、ランプ収容部内において露出するように、エキシマランプやエキシマランプと接続する部材などに設けることが可能である。
【0009】
ランプユニットは、ランプ収容部において、前記エキシマランプを保持し、前記エキシマランプと一体的に取り外される保持部材を備える構成にすることが可能である。この場合、除去部は、前記保持部材に設けることができる。保持部材の形状、構造に関しては、上記装置の構成に応じて様々であり、例えば、エキシマランプを片持ち支持する構成にすることができる。除去部の配置位置に関しても様々であり、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管端部から、ランプ軸方向に沿って離れた位置に設けることが可能である。
【0010】
ランプ収容部の構成は、上述した装置構成に従ってその形状、構造は様々である。例えば、ランプ収容部は、前記ランプ収容部に形成された前記エキシマランプ装着用の開口部を形成することが可能である。この場合、保持部材は、前記エキシマランプが前記ランプ収容部に装着された状態において、前記開口部を閉じるまたは覆うことにより、前記ランプ収容部を密閉するように構成することができる。ここで、「密閉」とは、真空状態などを維持する密閉性や放電空間を形成する密閉性だけでなく、不純ガスなどが再度混入することが抑えられる範囲程度の密閉性や、ランプ収容部内のガス濃度(例えば、酸素濃度)が変化しない密閉性なども含まれる。
【0011】
本発明の一態様である紫外線照射装置は、上記ランプユニットを備え、ランプ収容部が、前記エキシマランプが前記ランプ収容部に装着された状態において、密閉空間を形成する。例えばランプ収容部は、前記エキシマランプを同軸的に配置するジャケット管として構成することが可能である。また、ランプ収容部は、紫外線照射窓を形成した装置ケーシングとして構成することが可能である。
【0012】
除去部は、前記ランプ収容部において、不純ガスとしての酸素の濃度を、0.001~10%の範囲となるように低減することが可能である。例えば、除去部は、有機系の酸素吸着材として構成することが可能である。
【0013】
本発明の一態様である紫外線処理装置は、上記ランプユニットを備え、ランプ収容部が、紫外線照射対象である流体の流入口および流出口を有し、除去部が、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管よりも上流側に設けられ、前記流体の流路に露出して、空気である前記流体から酸素を除去する。
【0014】
本発明の一態様であるオゾン生成装置は、上記ランプユニットを備え、前記ランプ収容部が、紫外線照射対象である流体の流入口および流出口を有し、前記除去部が、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管よりも上流側に設けられ、前記流体の流路に露出して、空気である前記流体から水分を不純物として除去する。
【0015】
本発明の一態様であるオゾン処理装置は、上記ランプユニットを備え、ランプ収容部が、紫外線照射対象である流体の流入口および流出口を有し、前記除去部が、前記ランプ収容部において、前記エキシマランプの放電管よりも下流側に設けられ、前記流体の流路に露出して、空気である前記流体に対する紫外線照射によって発生するオゾンを、不純ガスとして除去する。
【0016】
本発明の一態様であるエキシマランプの装着および交換方法は、上述した紫外線照射装置などにおいて紫外線が照射されるランプ収容部に対するエキシマランプの装着および交換方法であって、不純ガスおよび不純物のうち少なくとも不純ガスを前記ランプ収容部内から除去する除去部を、前記ランプ収容部で露出するように、前記エキシマランプ又は前記エキシマランプの保持部材に一体的に取り付け、前記エキシマランプを前記ランプ収容部に装着し、ランプ交換時、前記エキシマランプを、前記除去部とともに前記ランプ収容部から取り外す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、紫外線照射装置、オゾン生成装置などに対してエキシマランプを設置するのに際し、効果的な不純ガス、不純物などの除去や抑制を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態である紫外線照射装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
図2】第2の実施形態である紫外線照射装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
図3】第3の実施形態である紫外線処理装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
図4】第4の実施形態であるオゾン生成装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
図5】第5の実施形態であるオゾン処理装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態である紫外線照射装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
【0021】
紫外線照射装置1000は、エキシマランプ60を含むランプユニット10と、ランプユニット10を収容するジャケット管20を備え、ランプユニット10の周囲の紫外線照射対象(空気などを含む)に対し、紫外線を照射する。ジャケット管20は、ランプ収容部として、また、紫外線照射容器として機能し、紫外線を透過する。
【0022】
ジャケット管20は、ここでは断面が略円状であり、先端部が半球状の砲弾型で後端部に開口部20Tが形成されている。エキシマランプ60は、保持部材30によってジャケット管20内に同軸的に配置されている。エキシマランプ60は、ジャケット管20に対し、取り外しおよび交換可能に装着されている。
【0023】
エキシマランプ60は、断面が略円状の筒状放電管(発光管)62と、略円柱状の誘電体64とを備える。放電管62は、石英ガラスなどの誘電性材料から成り、紫外線を透過する。誘電体64は、ランプ径方向に沿った幅を有し、帯状に延びる箔状電極(以下、内側電極という)66を被覆する。なお、箔状電極66を誘電体64内に埋設するように構成してもよい。
【0024】
誘電体64は、放電管62に対して同軸的に配置されている。また、誘電体64は、放電管62の一方の端部と部分的に溶着し、ランプ軸Cに沿って放電管62から突出している。放電管62の外表面には、電極(以下、外側電極という)68が配設されている。外側電極68は、ここでは、導電性の金属から成る線状の電極部を放電管62の外表面に沿って巻き付けて配設した構成であり、ランプ軸Cに沿って螺旋状に巻きつけられている。
【0025】
内側電極66の端部に接続される給電線69は、外部に設置された電源部(図示せず)と接続し、電力が給電線69を介してエキシマランプ60に供給される。高周波(例えば、数kHz~数十MHzの範囲)の高電圧(例えば、数kV~十数kVの範囲)が内側電極66、外側電極68に印加されることにより、紫外線(エキシマ光)が放電空間S1から放射される。ここでは、200nm以下(例えば172nm)の波長をピーク波長とする紫外線が放電管62から放射されるように、希ガスまたは希ガスを含む混合ガスが放電空間S1に封入されている。
【0026】
保持部材30は、エキシマランプ60の誘電体64を保持することによって、エキシマランプ60を片持ち支持している。エキシマランプ60は、保持部材30に対して取り外し可能なように、保持部材30に形成された中空部分に装着されている。保持部材30は、ここでは口金型の構造を採用し、ジャケット管20側に一体的に設けた保持部材(図示せず)に嵌め入れ、例えばネジ止めなどで把持(螺合)することで固定される。
【0027】
このように、保持部材30は、ジャケット管20に対して取り外し可能に嵌合し、ジャケット管20の開口部20Tを閉塞する。これにより、ジャケット管20とエキシマランプ60との間に形成される空間(以下、容器内空間という)S2が、密閉空間として形成される。保持部材30は、紫外線や容器内空間に封入(生成)されるガスに耐性がある絶縁性の素材から成り、例えばテフロン(登録商標)などの素材によって構成することができる。
【0028】
容器内空間S2には、不純ガス吸着剤40が設けられている。不純ガス吸着剤40は、容器内空間S2に露出し、ジャケット管20内の不純ガスを吸着して除去する。不純ガス吸着剤40は、ここでは酸素吸着剤として構成されている。例えば、ビタミンなどの有機系物質が酸化することによって酸素を吸着する有機系酸素吸着剤を、不純ガス吸着剤40として使用することが可能である。
【0029】
不純ガス吸着剤40は、保持部材30の表面に設置され、一体的に取り付けられている。不純ガス吸着剤40は、容器内空間S2に露出する一方、エキシマランプ60の放電管62の端部からジャケット管20の開口部20T側へランプ軸Cに沿って所定距離離れた位置にあり、エキシマランプ60の径方向に沿った紫外線照射領域から外れている。そのため、不純ガス吸着剤40は、実質的に紫外線照射領域を遮らない位置に配置されている。
【0030】
上述したように、保持部材30と一体的に接続するエキシマランプ60は、ジャケット管20に対して着脱自在であり、必要に応じて交換される。エキシマランプ60を片持ち支持する保持部材30を、ジャケット管20に一体的に設けた保持部材(図示せず)からネジ止めなどによる固定(螺合)の解除によって取り外すと、エキシマランプ60および不純ガス吸着剤40も、同時にジャケット管20から取り外される。そして、同じ構成である新しいエキシマランプ60が、ジャケット管20に装着される。ランプ交換時、ジャケット管20の内部は大気解放される。
【0031】
不純ガス吸着剤40は、ランプ交換直後に酸素を吸着し、容器内空間S2の酸素濃度は、速やかに所定の濃度範囲となる。ここでは、不純ガス吸着剤40が、酸素を完全に除去せず、容器内空間S2の酸素濃度を0.001~10%の範囲に収まるように機能する。好ましくは、0.001~1.0%の範囲に収まるように不純ガス吸着剤40を構成するのがよい。
【0032】
大気解放によるランプ交換後、紫外線照射装置1000によって紫外線照射することに伴い、容器内空間S2に残留する大気に含まれる酸素が存在することによってオゾンが発生する。これにより、ランプ交換後においてジャケット管20内に残留する不純ガス、不純物が、オゾンによって分解除去される。その一方で、不純ガス吸着剤40によって酸素濃度が上記範囲に収まっているため、高濃度のオゾンが発生せず、かつ酸素による紫外線の減衰も抑制される。
【0033】
不純ガス吸着剤40が有機系の酸素吸着剤によって構成されているため、その一部がジャケット管20内に漏出しても、鉄系の酸素吸着剤とは異なり、高周波高電圧によって異常放電が生じることがない。また、高温状態となって有機分子が発生、飛散しても、オゾンによって分解除去することができる。したがって、不純ガス吸着剤40をジャケット管20内に設置することによって不具合が生じることを防止することができる。
【0034】
このように本実施形態の紫外線照射装置1000によれば、エキシマランプ60が、不純ガス吸着剤40を一体的に設けた保持部材30に対して同軸的に接続し、保持部材30が、ジャケット管20の開口部20T側から取り外し可能に装着される。そして、エキシマランプ60の装着に合わせて不純ガス吸着剤40がジャケット管20内に設置され、ランプ交換に合わせて不純ガス吸着剤40が同時に交換される。
【0035】
ランプ交換と同時に不純ガス吸着剤40が交換されるため、ランプ交換時に不純ガス吸着剤40は十分な性能を備えており、ランプ交換に合わせて確実に不純ガスを除去することができる。特に、大気解放によりジャケット管20内に残存する酸素の濃度がランプ交換直後に上記所定範囲となることで、紫外線照射によって発生するオゾン濃度が抑えられるとともに、ジャケット管20内に混入した不純物をオゾンが分解除去するに十分なオゾン濃度となる。
【0036】
そのため、オゾンによるジャケット管20、放電管62の透過率の低下、保持部材30へのダメージなど、紫外線照射装置1000を構成する部材に対し、オゾンに起因する劣化がなく、ランプ交換作業時にジャケット管20内に混入した不純物が分解除去される。すなわち、ランプ交換後の点灯直後よりジャケット管20内をランプにとって好適な状態とすることができる。
【0037】
不純ガス吸着剤40は、エキシマランプ60からランプ軸Cに沿って所定距離離れるととともに、放電管62から延出する誘電体64から径方向に沿って所定距離離れており、紫外線照射領域から実質的に外れた位置に設置されている。そのため、エキシマランプ60から放射される紫外線が不純ガス吸着剤40によって遮られることがなく、また、不純ガス吸着剤40が紫外線照射によって影響される(例えば劣化や変質する)のを防ぐことができる。
【0038】
エキシマランプ60が保持部材30によって片持ち支持される一方、保持部材30がジャケット管20の形状、サイズに合わせた口金構造であって、ジャケット管20に対して着脱自在に装着可能な構成となっている。そのため、保持部材30をジャケット管20に対して取り外し、交換する作業に伴って、エキシマランプ60および不純ガス吸着剤40が同時に取り外し、交換されることになり、交換作業が容易となる。
【0039】
特に、ジャケット管20とエキシマランプ60との隙間が狭い場合、エキシマランプ60と同軸的に接続する保持部材30をジャケット管20の開口部20Tの位置に合わせながらランプ交換作業を行うことによって、エキシマランプ60がジャケット管20に接触するなどのランプ損傷を防ぐことができる。
【0040】
エキシマランプ60が保持部材30によって片持ち支持される構造であるため、ランプ交換作業が容易、かつジャケット管20の開口部が小さくなる。ジャケット管20内に残存する酸素の濃度は0.001~10%の範囲であればよいが、片持ち支持構造によって、ランプ交換作業時において不純物が混入し難くなり、酸素濃度の上限を1.0%以下にまで減少させることができる。その結果、酸素による紫外線の減衰をほぼ生じさせずに不純ガスと不純物とを分解除去することが可能になる。
【0041】
また、エキシマランプ60が保持部材30に対し同軸的な片持ち支持構造となっているため、エキシマランプ60のみ交換、あるいは不純ガス吸着剤40のみ必要に応じて交換することも可能となる。
【0042】
次に、図2を用いて第2の実施形態である紫外線照射装置について説明する。第2の実施形態では、紫外線照射装置のケーシングに対し、エキシマランプが取り外し可能に装着される。
【0043】
図2は、第2の実施形態である紫外線照射装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。紫外線照射装置1000’は、ランプ収容部として構成されるケーシング120を備え、エキシマランプ60を含むランプユニット100が、ケーシング120に対して着脱可能に装着されている。エキシマランプ60から放射された紫外線は、紫外線照射窓120Sを介して紫外線照射対象物に照射される。
【0044】
ケーシング120は、ここでは断面略円状であって、保持部材130も開口部120Tもケーシング120に合わせた形状になっている。ランプユニット100をケーシング120に装着させることにより、ケーシング120の容器内空間S2が密閉空間として形成される。ケーシング120を断面矩形状にすることも可能であり、この場合、保持部材130の形状はケーシング120の形状に合わせず、開口部120Tの形状に合わせて形成すればよい。保持部材130は、第1の実施形態と同様の口金型の構造となっている。不純ガス吸着剤140は、酸素を吸着するとともに、酸素以外の不純ガスも吸着することが可能である。
【0045】
第2の実施形態では、ランプ交換時、大気解放後に窒素ガスによるガス置換が行われ、ケーシング120内がパージされる。このとき、残留する大気や窒素ガスに含まれる不純ガスは、不純ガス吸着剤140によって吸収され、ケーシング120内から除去される。なお、窒素ガス以外の不活性ガスによって、ケーシング120内をパージするように構成してもよい。この場合、不純ガス吸着剤140は、残留する大気や不活性ガスに含まれる不純ガスを吸着するように構成すればよい。
【0046】
第1、第2の実施形態では、ジャケット管、ケーシングの開口部側に不純ガス吸着剤を設けた構成であるが、その反対側(先端側)に不純ガス吸着剤を設けるようにしてもよい。この場合、エキシマランプ先端側に不純ガス吸着剤の設置用部材を取り付ける構成などにすることができる。
【0047】
次に、図3を用いて、第3の実施形態である紫外線処理装置について説明する。第3の実施形態では、紫外線照射対象となるガスなどをケーシング内に通過させ、ケーシング内で紫外線照射による除菌処理などを行う。
【0048】
図3は、第3の実施形態である紫外線処理装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
【0049】
紫外線処理装置2000では、ランプ収容部として構成されるケーシング220に対し、エキシマランプ60を備えたランプユニット200が着脱自在に装着されている。ケーシング220には、開口部220T側に流入口230B、その反対側(先端側)に流出口230Aが形成されている。紫外線照射対象である空気が、流入口230Bから流入し、容器内空間S2を通って流出口230Aから流出する。
【0050】
保持部材230には、不純ガスを吸着するとともに不純物を除去可能なフィルタ240が、一体的に設けられている。ケーシング220内において上流側に設けられたフィルタ240は、紫外線照射対象である空気が通過するとき、酸素を含む不純ガスを吸着するとともに、埃や粉塵などの不純物を吸着するように構成されている。
【0051】
ここでのフィルタ240は、環状であって保持部材230とケーシング220との間を埋めるように保持部材230およびケーシング220と接している。そのため、流入した空気はフィルタ240を通過してエキシマランプ60の周囲を流れるように構成されている。フィルタ240は、保持部材230に対して取り外し可能なように一体的に取り付けられている。
【0052】
第3の実施形態では、200nm以上のピーク波長を有する紫外線を照射するように、希ガスまたは希ガスを含む混合ガスが、エキシマランプ60の放電空間S1に封入されている。エキシマランプ60の周囲を通過する空気に対して上記紫外線を照射することにより、除菌処理が施される。除菌処理された空気が紫外線処理装置2000外部へ流出することにより、空気を浄化することができる。
【0053】
このように第3の実施形態では、空気の流路が形成された紫外線処理装置2000に対し、ランプユニット200が着脱自在に装着されている。これにより、エキシマランプ60の交換とフィルタ240の交換を同時に行うことができる。また、フィルタ240のみを交換してランプユニット200をケーシング220に再度装着させることもできる。なお、空気以外のガスあるいは液体を紫外線照射対象として構成してもよい。
【0054】
次に、図4を用いて、第4の実施形態であるオゾン生成装置について説明する。第4の実施形態では、ケーシング内を通過する空気に対して紫外線照射することにより、オゾンを生成するオゾン生成装置として構成される。
【0055】
図4は、第4の実施形態であるオゾン生成装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
【0056】
オゾン生成装置3000では、ランプ収容部として構成されるケーシング320に対し、エキシマランプ60を備えたランプユニット300が着脱自在に装着されている。第3の実施形態と同様、ケーシング320には、開口部320T側に空気の流入口330B、その反対側(先端側)に空気の流出口330Aが形成されている。
【0057】
ケーシング320内においてエキシマランプ60よりも上流側に設けられたフィルタ340は、第3の実施形態と同様に環状であって、保持部材330とケーシング320との間を埋めるように、保持部材330に対して取り外し可能に取り付けられている。エキシマランプ60は、第1の実施形態と同様、200nm以下のピーク波長を有する紫外線を放射する。
【0058】
フィルタ340は、ケーシング320内に流入する空気に含まれる不純ガスや不純物を吸着し、また、除湿することによって、フィルタ340を通過する空気を浄化する。例えばフィルタ340は、シリカゲルなどの除湿効果のある材料で構成することが可能である。
【0059】
浄化された空気がエキシマランプ60周囲を通過するのに伴い、紫外線照射によってオゾンが生成される。オゾンを含むガスは、流出口330Aから流出し、除菌、消臭処理などに利用される。
【0060】
このように第4の実施形態では、オゾン生成装置3000に対し、ランプユニット300が着脱自在に装着されている。これにより、エキシマランプ60の交換とフィルタ340の交換を同時に行うことができる。また、フィルタ340のみを交換してランプユニット300をケーシング320に再度装着させることもできる。
【0061】
次に、図5を用いて、第5の実施形態であるオゾン処理装置について説明する。第5の実施形態では、ケーシング内を通過する空気に対して紫外線照射することによって、紫外線による除菌処理とともにオゾンによる除菌処理を行うオゾン処理装置(紫外線およびオゾン処理装置とみなすこともできる)として構成される。
【0062】
図5は、第5の実施形態であるオゾン処理装置のランプ側面側から見た概略的断面図である。
【0063】
オゾン処理装置4000では、ランプ収容部として構成されるケーシング420に対し、エキシマランプ60を備えたランプユニット400が着脱自在に装着されている。第4の実施形態とは異なり、ケーシング420には、開口部420T側に空気の流出口430B、その反対側(先端側)に空気の流入口430Aが形成されている。
【0064】
ケーシング420内においてエキシマランプ60よりも下流側に設けられたフィルタ440は、第3の実施形態と同様に環状であって、保持部材430とケーシング420との間を埋めるように、保持部材430に対して取り外し可能に取り付けられている。第4の実施形態と同様、200nm以下のピーク波長を有する紫外線がエキシマランプ60から放射される。
【0065】
流入口430Aから流入した空気に対して紫外線が照射されることにより、除菌処理が施されるとともに、空気に対する紫外線照射によってオゾンが生成される。その結果、エキシマランプ60周囲を通過する空気に対し、オゾンによる除菌処理が施される。
【0066】
フィルタ440は、生成されたオゾンを含むガスが通過するときにオゾンを吸着する。その結果、オゾン除去されたガスが、ケーシング420の流出口430Bから流出する。フィルタ440は、例えば活性炭など、オゾン吸着可能な素材によって構成すればよい。なお、第4の実施形態のように、エキシマランプ60よりも上流側に除湿フィルタなどのフィルタを設け、空気を浄化してもよい。
【0067】
このように第5の実施形態では、オゾン処理装置4000に対し、ランプユニット400が着脱自在に装着されている。これにより、エキシマランプ60の交換とフィルタ440の交換を同時に行うことができる。また、フィルタ440のみを交換してランプユニット400をケーシング420に再度装着させることもできる。
【0068】
不純ガス吸着剤、フィルタ以外の構成(例えばゲッターなど)によって、不純ガス、不純物を除去するようにしてもよい。また、ジャケット管、ケーシングに対し、エキシマランプ全体を収容する構成に限定されず、少なくとも一部が収容される構成にしてもよい。この場合、ランプ交換、装着時において、不純ガス吸着剤、フィルタなどが容器内空間に露出するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0069】
10 ランプユニット
30 保持部材
40 不純ガス吸着剤
60 エキシマランプ
1000 紫外線照射装置
2000 紫外線処理装置
3000 オゾン生成装置
4000 オゾン処理装置
図1
図2
図3
図4
図5