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特開2023-173808水分量検知センサの劣化推定装置、劣化推定方法、劣化推定プログラム、メンテナンス時期推定装置、メンテナンス時期推定方法、及びメンテナンス時期推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173808
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】水分量検知センサの劣化推定装置、劣化推定方法、劣化推定プログラム、メンテナンス時期推定装置、メンテナンス時期推定方法、及びメンテナンス時期推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20231130BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N27/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086304
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】赤木 昂太
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AC01
2G060AE17
2G060AE27
2G060AE30
2G060AF10
2G060EA06
2G060HA06
2G060HC24
2G060HD00
(57)【要約】
【課題】本発明の目的の一つは、適切なメンテナンス時期に水分量検知センサのメンテナンスを実施することを可能にする技術を提供することにある。
【解決手段】本発明のある態様の推定装置100は、水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データと、水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データを記憶する記憶部101と、水分量検知センサを初めて使用したときから又は水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の使用データを取得する取得部102と、取得部102の取得結果と相関データとに基づいて水分量検知センサの劣化度合いを推定する劣化推定部103と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データと、前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データを記憶する記憶部と、
前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する取得部と、
前記取得部の取得結果と前記相関データとに基づいて前記水分量検知センサの劣化度合いを推定する劣化推定部と、
を備える、
劣化推定装置。
【請求項2】
前記相関データは前記使用データと前記劣化度合いと前記流体及び前記流体の性状の少なくとも一方を示す流体情報との相関関係を示し、
前記取得部は前記流体情報をさらに取得する、
請求項1に記載の劣化推定装置。
【請求項3】
前記使用環境データは前記流体の温度、流速、流量、圧力及び粘度の少なくとも1つを含む、
請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項4】
前記水分量検知センサは主機に前記流体を供給する配管に設けられ、
前記流体は潤滑油であり、
前記取得部は前記主機の運転状態を示す運転状態情報をさらに取得し、
前記相関データは前記使用データと前記劣化度合いと前記主機の運転状態との相関関係を示す、
請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項5】
前記主機は船舶において用いられる、請求項4に記載の劣化推定装置。
【請求項6】
前記使用時間は、前記任意の期間における、前記水分量検知センサが前記流体に晒された時間である暴露時間と経過時間とのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項7】
前記相関データにおける前記劣化度合いは、前記水分量検知センサに対してメンテナンスを行ったときから次にメンテナンスを行うまでのインターバル期間中の第1時点で得られた第1劣化度合いと前記インターバル期間中において前記第1時点によりも後の第2時点で得られた第2劣化度合いとの差分に基づいて定められる、
請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項8】
前記取得部は前記水分量検知センサの実際の劣化度合いを取得し、
前記推定した劣化度合いと前記取得した実際の劣化度合いとの比較に基づいて前記相関データを更新する更新部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項9】
前記推定した劣化度合いが劣化基準値を超える場合に前記水分量検知センサのメンテナンスが必要である旨を報知する報知部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項10】
前記推定した劣化度合いに基づいて前記水分量検知センサのメンテナンスが必要となる時期であるメンテナンス時期を推定するメンテンナンス時期推定部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項11】
前記メンテンナンス時期推定部は前記推定した劣化度合いとメンテナンス基準値との比較に基づいて前記メンテナンス時期を推定する、
請求項10に記載の劣化推定装置。
【請求項12】
流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、
前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサの劣化度合いを推定するステップと、
を備える、
劣化推定方法。
【請求項13】
流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、
前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサの劣化度合いを推定するステップと、
を備える、
をコンピュータに実行させるための劣化推定プログラム。
【請求項14】
流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データと、前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データを記憶する記憶部と、
前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する取得部と、
前記取得結果と前記相関データとに基づいて前記水分量検知センサのメンテナンス時期を推定するメンテナンス推定部と、
を備える、
メンテナンス時期推定装置。
【請求項15】
流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、
前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサのメンテナンス時期を推定するステップと、
を備える、
メンテナンス時期推定方法。
【請求項16】
流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、
前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサのメンテナンス時期を推定するステップと、
をコンピュータに実行させるためのメンテナンス時期推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分量検知センサの劣化推定装置、劣化推定方法、劣化推定プログラム、メンテナンス時期推定装置、メンテナンス時期推定方法、及びメンテナンス時期推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶等に使用される主機には、主機のシリンダ、軸受、カム等の部品の摩耗などを抑制するために潤滑油などの流体が供給される。この流体が例えば空気中の水分を吸収して多くの水分を含むと、水が発生し、その発生した水により部品がさび付いたり流体の機能に影響を与えることとなる。そのため、流体の性状を監視して水の発生を抑制するために、その流体中の水分量を検知する水分量検知センサが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-337096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような水分量検知センサでは、例えばごみの付着や経時的な要因により検知性能が劣化するため、定期的に点検が実施される。しかし、水分量検知センサの劣化度合いは例えばその使用環境や使用時間に依存して個体毎に異なるため、その適切なメンテナンス時期も個体毎に異なる。そのため、特許文献1に記載のように定期的に点検を実施する場合、例えば、適切な点検時期よりも点検が遅くなることにより水分量検知センサが大きく劣化してしまい、水分量検知センサが低精度の計測を実施してしまう期間が発生してしまうおそれがある。また、例えば、適切な点検時期よりも点検が早すぎたために余計な点検の工数の発生してしまうおそれがある。
【0005】
上記を鑑み、本発明の目的は、適切なメンテナンス時期に水分量検知センサのメンテナンスを実施することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の劣化推定装置は、流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データと、前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データを記憶する記憶部と、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する取得部と、前記取得部の取得結果と前記相関データとに基づいて前記水分量検知センサの劣化度合いを推定する劣化推定部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様の劣化推定方法は、流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサの劣化度合いを推定するステップと、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様の劣化推定プログラムは、流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサの劣化度合いを推定するステップと、をコンピュータに実行させるための劣化推定プログラムである。
【0009】
本発明のさらに別の態様のメンテナンス時期推定装置は、流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データと、前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データを記憶する記憶部と、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する取得部と、前記取得結果と前記相関データとに基づいて前記水分量検知センサのメンテナンス時期を推定するメンテナンス推定部と、を備える。
【0010】
本発明のさらに別の態様のメンテナンス時期推定方法は、流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサのメンテナンス時期を推定するステップと、を備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様のメンテナンス時期推定プログラムは、流体中の水分量を検知する水分量検知センサの使用時間を示す使用時間データと前記水分量検知センサの使用環境を示す使用環境データとのうちの少なくとも1つを含む使用データを取得するステップであって、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが一度も行われていない場合には前記水分量検知センサを初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得し、前記水分量検知センサに対するメンテンナンスが既に行われている場合には前記水分量検知センサに対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の前記使用データを取得する、ステップと、前記取得結果と、前記使用データと前記水分量検知センサの劣化度合いとの相関関係を示す相関データとに基づいて前記水分量検知センサのメンテナンス時期を推定するステップと、をコンピュータに実行させるためのメンテナンス時期推定プログラムである。
【0012】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、適切なメンテナンス時期に水分量検知センサのメンテナンスを実施することを可能にする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る水分量検知センサの劣化推定システムを例示する。
図2】第1実施形態に係る水分量検知センサの劣化推定システムを概略的に例示するブロック図である。
図3】第1実施形態の推定装置の機能ブロック図である。
図4】第1実施形態の推定装置の処理を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態の変形例の推定装置の機能ブロック図である。
図6】第2実施形態の推定装置の機能ブロック図である。
図7】第2実施形態の推定装置の処理を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態の推定装置の機能ブロック図である。
図9】第3実施形態の推定装置の処理を示すフローチャートである。
図10】第4実施形態の推定装置の機能ブロック図である。
図11】第4実施形態の推定装置の処理を示すフローチャートである。
図12】第5実施形態の推定装置の処理を示すフローチャートである。
図13】第6実施形態の推定装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0017】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る水分量検知センサ25の劣化推定システム1を例示する。図2は、第1実施形態に係る水分量検知センサ25の劣化推定システム1を概略的に例示するブロック図である。劣化推定システム1は、陸上に設置された管理センタ10と、海上を運航する船舶20と、を含む。第1実施形態では、管理センタ10は、水分量検知センサ25の劣化度合いを推定する推定装置100を含む。管理センタ10及び船舶20は、通信装置11及び21を介して互いに通信可能に構成される。例えば、船舶20は、水分量検知センサ25の劣化度合いを推定するための各種情報を通信装置11及び21を介して管理センタ10に送信することができる。例えば、管理センタ10は、船舶から受信した各種情報に基づいて推定装置100によって推定された劣化度合いを通信装置11及び21を介して船舶20に送信することができる。本実施形態の推定装置100は、劣化推定装置の一例である。
【0018】
船舶20は、主機70と、主機70に潤滑油を供給する潤滑油配管75と、を備える。主機70は、例えば、原動機としての船舶用ディーゼルエンジンである。主機70によってシャフト(不図示)を駆動してプロペラ(不図示)を回転させることにより、船舶20の推進力が得られる。また、主機70は、図示しないが、シリンダ71の内部に沿って往復運動するピストン、ピストンの往復運動に伴ってシャフトを回転させるためのクランク軸、クランクシャフト、クランク軸とクランクシャフトとに接続される連接棒等を備える。主機70は、ピストンが配置されるシリンダ71と、クランクシャフトとクランクシャフトに接続される連接棒とが配置されるクランク室72と、を備える。主機70においては、クランク室72に、これらを潤滑するための潤滑油が潤滑油ポンプ76の動力により供給される。
【0019】
潤滑油配管75は、クランク室72に潤滑油を供給する潤滑油供給配管73と、クランク室72の下部に設けられた潤滑油溜まり(不図示)に溜まった潤滑油を流通する潤滑油戻り配管74と、を備える。潤滑油は、潤滑油配管75を循環して長時間にわたり再利用される。潤滑油配管75には、潤滑油を貯蔵したオイルタンク77からの潤滑油を注油するための注油器78が設けられる。主機70はその回転数が大きいほど多くの潤滑油を必要とするため、注油器78は主機70の回転数に比例した量の潤滑油を潤滑油配管75に供給する。
【0020】
水分量検知センサ25は、潤滑油配管75に設けられ、潤滑油配管75を流通する潤滑油中の水分量(水分活性値)を検知する。本実施形態では、水分量検知センサ25は、例えば、静電容量式の水分量検知センサ25を使用することができ、油と水の誘電率が大きく異なることから油と水の混合比率によって潤滑油の誘電率が変化することを利用して、測定した誘電率に基づいて潤滑油中の水分量を連続的に求める。しかし、静電容量式に限定されず、他の方式の水分量検知センサ25が用いられてもよい。
【0021】
流速センサ26は、潤滑油配管75に設けられ、潤滑油配管75を流通する潤滑油の流速を検知する。
【0022】
図3は、第1実施形態の推定装置100の機能ブロック図である。第1実施形態の推定装置100は、記憶部101と、取得部102と、劣化推定部103と、出力部104と、相関データ作成部105と、を備える。以下の各図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0023】
取得部102は、使用データを取得する。例えば、取得部102は、水分量検知センサ25に対してメンテンナンスが一度も行われていない場合には水分量検知センサ25を初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の使用データを取得し、水分量検知センサ25に対してメンテンナンスが既に行われている場合には水分量検知センサ25に対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の使用データを取得する。本実施形態の使用データは、水分量検知センサ25の使用時間を示す使用時間データと水分量検知センサ25の使用環境を示す使用環境データとを含む。本実施形態の使用時間データは、水分量検知センサ25が潤滑油に晒された時間である暴露時間を含む。本実施形態の使用環境データは、潤滑油の流速を含み、この流速を時系列的な分布により示す。
【0024】
また、本実施形態の取得部102は、船舶20から通信装置11及び21を介して流速センサ26の検知した潤滑油の流速と水分量検知センサ25の検知結果とを順次取得する。
【0025】
劣化推定部103は、取得部102の取得結果(本実施形態では使用データ)と相関データとに基づいて水分量検知センサ25の劣化度合い(以下、「劣化度合い」という場合がある)を推定する。劣化度合いを推定手法については後述する。
【0026】
出力部104は、推定した劣化度合いを出力する。
【0027】
相関データ作成部105は、使用データと劣化度合いとの相関関係を示す相関データを作成する。相関データの作成手法等については後述する。
【0028】
記憶部101は、各種処理を実行するためのプログラム等を記憶している。記憶部101には、取得部102が順次取得した水分量検知センサ25及び流速センサ26の検知結果などの各種データが順次蓄積される。記憶部101は、上記相関データを記憶している。記憶部101は、水分量検知センサ25に対してメンテナンスを行った日時を記憶している。
【0029】
ここで、水分量検知センサ25のメンテナンスについて説明する。ここでの「水分量検知センサ25のメンテナンス」とは、水分量検知センサ25の校正作業と、水分量検知センサ25の調整作業及び交換作業の少なくとも1つと、を実施することをいう。水分量検知センサ25の校正作業とは、水分量検知センサ25の性能を確認する作業をいう。具体的には、水分量検知センサ25の校正作業とは、例えば、メンテナンス対象の水分量検知センサ25を高温槽中の基準の試料に基準となる水分量検知センサ(以下、基準センサという)とともに晒したときの基準センサとメンテナンス対象の水分量検知センサ25との各検知結果(水分量データ)を比較して、その乖離度合い(例えば差分や割合)が所定の基準範囲内であるか確認する作業をいう。水分量検知センサ25の調整作業とは、水分量検知センサ25の性能を仕様通りにする作業をいう。具体的には、水分量検知センサ25の調整作業とは、例えば、上記検知結果の乖離度合いが所定の基準範囲内ではない場合に基準範囲内となるように、メンテナンス対象の水分量検知センサ25において水分量検知用に設定されている各種データ(例えば、測定した誘電率を水分量に換算する換算係数など)を変更する作業や、水分量検知センサ25を洗浄及び加熱等してゴミや固着した油中成分等を取り除く作業を含む。水分量検知センサ25の交換作業とは、水分量検知センサ25の故障など、調整作業ではセンサを仕様通りにできない場合に水分量検知センサ25自体を交換する作業をいう。なお、上記検知結果の乖離度合いが所定の基準範囲内である場合には、例えば、水分量検知センサ25の調整作業や交換作業を実施せずにその水分量検知センサ25がそのまま潤滑油配管75に設置されて使用される。
【0030】
以下、相関データの作成手法について説明する。本実施形態の相関データは、暴露時間と劣化度合いとの相関関係を示す暴露時間-劣化相関データと、潤滑油の流速分布と劣化度合いの相関関係を示す流速分布-劣化相関データとを含む。
【0031】
本実施形態では、推定装置100は、メンテナンス毎に、調整作業の前後に校正作業を実施して調整作業の直前及び直後の劣化度合いをメンテナンス対象の水分量検知センサ25の識別番号と共に作業員の作業端末(不図示)から事前に取得し、記憶部101に識別番号と関連付けて記憶部101に蓄積している。推定装置100は、メンテナンス毎に、メンテナンスの日時を記憶部101に記憶させる。推定装置100は、水分量検知センサ25毎に、複数回分の調整作業の直前及び直後の劣化度合いを蓄積した後に、蓄積した劣化度合いに基づいて調整作業直後の劣化度合いとその次の調整作業直前の劣化度合いの差分を算出し、この差分をその調整作業直後と次の調整作業直前の間に得られた暴露時間及び流速とそれぞれ関連付けて蓄積する。これにより、水分量検知センサ25に対してメンテナンスを行ったときから次にメンテナンスを行うまでのインターバル期間中に進行する水分量検知センサ25の劣化をその際の使用データとともに確認することが可能となる。
【0032】
相関データ作成部105は、このようにして得られた劣化度合いの差分とその調整作業直後と次の調整作業直前の間に得られた暴露時間及び流速にそれぞれ基づいて、暴露時間-劣化相関データと流速分布-劣化相関データとを作成する。例えば、相関データ作成部105は、メンテナンス毎に流速分布及び劣化度合いのデータを蓄積することにより、複数パターンの流速分布と各流速分布における劣化度合いとを関連付けたデータを作成する。相関データ作成部105は、作成した複数パターンの上記関連付けたデータを所定の統合アルゴリズムを用いて統合することにより、統合した流速分布及び劣化度合いが関連付けられた流速分布-劣化相関データを作成し、水分量検知センサ25の識別番号に関連付けて記憶部101に記憶させる。暴露時間-劣化相関データも同様にして水分量検知センサ25毎に作成される。なお、所定の統合アルゴリズムは公知のアリゴリズムを使用できる。暴露時間(使用時間データ)-劣化相関データと流速分布(使用環境データ)-劣化相関データとを分けることにより、水分量検知センサ25の経時劣化と使用環境による劣化とを切り分けて判断することが可能となる。
【0033】
図4は、第1実施形態の推定装置100の処理S100を示すフローチャートである。処理S100は、所定の時間間隔(例えば、数ミリ秒)で実行される。なお、本実施形態では、推定装置100は、船舶20から水分量検知センサ25の識別番号に関連付けられて送信された使用環境データ(本実施形態では潤滑油の流速)を順次受信して、記憶部101に順次蓄積しているものとする。以下では、特に言及する場合を除き、水分量検知センサ25に対して既にメンテナンスが行われているものとして説明する。
【0034】
ステップS101で、取得部102は、劣化診断指示を受け付けたか否かを判断する。例えば、本実施形態の劣化診断指示は、船舶20から定期的に送信される(一か月毎など)。これに限定されず、劣化診断指示は、船舶20に設けられたPCなどの入力装置(不図示)からのユーザ入力に基づいて船舶20から供給されてもよいし、管理センタ10に設けられたPCなどの入力装置(不図示)からのユーザ入力に基づいて供給されてもよい。劣化診断指示は、例えば、水分量検知センサ25の識別番号を含む。劣化診断指示を受け付けた場合(ステップS101のY)、処理S100はステップS102に進む。劣化診断指示を受け付けていない場合(ステップS101のN)、処理S100は終了する。
【0035】
ステップS102で、取得部102は、受け付けた劣化診断指示に含まれる識別番号によって特定される水分量検知センサ25に対して最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの期間中の使用データを取得する。ここでの使用データにおける使用時間データ(暴露時間)は、例えば、記憶部101に記憶されたメンテナンスの日時等に基づいて、記憶部101から最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの期間中の水分量検知センサ25の検知結果を読み出し、検知した水分量が所定の範囲内にある合計時間を求めることにより取得される。この所定の範囲は、例えば、水分量検知センサ25が潤滑油中に暴露されたときに想定される水分量の範囲とすることができる。ここでの使用データにおける使用環境データ(潤滑油の流速)は、記憶部101に蓄積された上記対象期間中の潤滑油の流速を記憶部101から読み出すことにより取得される。
【0036】
ステップS103で、劣化推定部103は、使用データと記憶部101に記憶された相関データに基づいて、水分量検知センサ25の劣化度合いを推定する。本実施形態の劣化推定部103は、例えば、識別番号によって特定される水分量検知センサ25の流速分布-劣化相関データを記憶部101から読み出し、その流速分布-劣化相関データにおける流速分布とステップS102で取得した流速分布を画像認識により比較し、これらが近似している度合いを示す近似度を算出する。劣化推定部103は、例えば、所定の近似度算出アルゴリズムに基づいて、算出した近似度が大きいほど最も近似度が大きいパターンの流速分布に関連付けられた劣化度合いに近づけるように、メンテナンス対象の水分量検知センサ25の劣化度合いを算出する。また、本実施形態の劣化推定部103は、例えば、識別番号に基づいて読み出した暴露時間-劣化相関データにおける暴露時間とステップS102で取得した暴露時間との近似度を求め、その近似度に基づいて劣化度合いを求める。劣化推定部103は、例えば、所定の近似度算出アルゴリズムに基づいて、その暴露時間の差分が小さいほど、最も差分が小さいパターンの暴露時間に関連付けられた劣化度合いに近づけるように、メンテナンス対象の水分量検知センサ25の劣化度合いを算出する。劣化推定部103は、例えば、流速分布-劣化相関データ及び暴露時間分布-劣化相関データをそれぞれ用いて算出した劣化度合いの平均値をメンテナンス対象の水分量検知センサ25の劣化度合いとして推定する。なお、画像認識によるデータの近似度の算出方法や近似度算出アルゴリズムとしては公知の方法やアルゴリズムが用いられる。
【0037】
ステップS104で、出力部104は、推定した水分量検知センサ25の劣化度合いを出力する。本実施形態では、例えば、出力部104は、管理センタ10に設けられたパーソナルコンピュータ(PC)や表示装置12に推定結果を送信したり、通信装置11を介して作業員の作業端末、船舶20に設けられたPCや表示装置22に推定結果を送信する。これにより、水分量検知センサ25の劣化度合いが表示装置12及び22や作業端末等の表示画面に提示され、水分量検知センサ25のメンテナンスの検討に活用することが可能となる。例えば、作業員は、水分量検知センサ25のメンテナンス時期などを提案することが可能となる。
【0038】
ステップS104の後、処理S100は終了する。
【0039】
ここで、船舶20の主機70においては、油圧制御装置、ポンプ、エンジン、ピストン、軸受、弁などに潤滑油が使用される。これらの機器に使用される潤滑油は循環して再利用されるが、潤滑油を長時間にわたり再利用することで、潤滑油中に空気中の水分が吸収されて蓄積される。それにより潤滑油が多くの水分を含むと水が発生し、その発生した水により部品がさび付いたり流体の機能に影響を与えることとなる。この水の発生を抑制するために、潤滑油の性能を維持することは機器の耐久性を維持する上で重要である。そのため、その潤滑油の性状を監視するために、その潤滑油中の水分量を検知する水分量検知センサ25が用いられる。
【0040】
従来、水分量検知センサ25においては、例えばごみの付着や経時的な要因により検知性能が劣化するため、定期的に点検が実施される。しかしながら、水分量検知センサ25の劣化はその使用時間や使用環境に依存するため、センサ個体毎に適切なメンテナンス時期は異なる。
【0041】
水分量検知センサ25の使用時間や使用環境によらずに定期的にメンテナンスを実施する従来の手法では、メンテナンス時期が遅くなることにより水分量検知センサ25が大きく劣化してしまい、水分量検知センサ25が低精度の計測を実施してしまう期間が発生してしまうおそれがある。また、例えば、適切な点検時期よりも点検が早すぎたために余計な点検の工数の発生してしまうおそれもある。特に、船舶20において水分量検知センサ25のメンテナンスが実施されるタイミングは、船舶20が港に停泊するタイミングに限定される。船舶20では、通常長期間にわたって航海を行うため、水分量検知センサ25のメンテナンスが適切なタイミングで実施されないことは、時に重大なトラブルを引き起こす。
【0042】
本実施形態では、使用データは、水分量検知センサ25の使用時間を示す使用時間データと水分量検知センサ25の使用環境を示す使用環境データとを含み、劣化推定部103は取得部102の取得結果(使用データなど)と相関データとに基づいて水分量検知センサ25の劣化度合いを推定する。本構成によると、水分量検知センサ25の使用時間及び使用環境に応じて推定された劣化度合いに基づいて、適切な時期で水分量検知センサ25のメンテナンスを実施することが可能となる。
【0043】
以下、変形例について説明する。
【0044】
処理S100は、所定の時間間隔で実行されたが、これに限定されず、例えば、処理S100の実行を指示するユーザ入力を入力装置(不図示)を介して受けることにより実行されてもよい。以下で説明する処理S200~S600も同様である。
【0045】
実施形態では、水分量検知センサ25は潤滑油配管75に設けられたが、これに限定されず、例えば、オイルタンク77に設けられてもよい。
【0046】
実施形態では、推定装置100は管理センタ10に設けられたが、船舶20に設けられてもよい。
【0047】
実施形態では、使用データは、使用時間データ及び使用環境データを含んだが、これに限定されず、これらの少なくとも1つを含めばよい。
【0048】
実施形態では、現在の時点までの期間中の使用データが取得されたが、これに限定されず、現在の時点以前の時点までの任意の期間中の使用データが取得されてもよい。
【0049】
実施形態では、使用時間データは、暴露時間を含んだが、これに限定されず、例えば、上記任意の期間における、暴露時間と経過時間とのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0050】
実施形態では、水分量検知センサ25に対して既にメンテナンスが行われているものとして説明されたが、水分量検知センサ25に対してメンテンナンスが一度も行われていない場合には水分量検知センサ25を初めて使用したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の使用データが取得される。例えば、記憶部101にメンテナンスの日時が記憶されていない場合に、水分量検知センサ25を起動したときから現在の時点までの間のうちの任意の期間中の水分量検知センサ25の検知結果を読み出し、この検知結果に基づいて使用データが取得されればよい。
【0051】
実施形態では、使用環境データは、潤滑油の流速を含んだが、これに限定されず、潤滑油の温度、流速、流量、圧力及び粘度の少なくとも1つを含んでもよい。この場合、例えば、潤滑油の温度は潤滑油配管75に温度センサを設けることにより取得され、潤滑油の流量は流速センサ26の検知結果に基づいて取得され、潤滑油の圧力(油圧)は潤滑油配管75に圧力センサを設けることにより取得され、潤滑油の粘度は潤滑油配管75に粘度センサを設けることにより取得される。例えば、使用環境データが潤滑油の温度、流速、流量、圧力及び粘度を含む場合、潤滑油の温度、流速、流量、圧力及び粘度のそれぞれについて劣化度合いとの相関データが作成されればよい。
【0052】
実施形態では、相関データにおける劣化度合いは、調整作業直後に得られた劣化度合いと次のメンテナンスにおける調整作業直前に得られた劣化度合いとの差分に基づいて定められたが、これに限定されない。例えば、相関データにおける劣化度合いは、水分量検知センサ25に対してメンテナンスを行ったときから次にメンテナンスを行うまでのインターバル期間中の第1時点で得られた第1劣化度合いとインターバル期間中において第1時点によりも後の第2時点で得られた第2劣化度合いとの差分に基づいて定められてもよい。
【0053】
実施形態では、使用環境データは、例えば流速等の時系列的な分布により定められたが、これに限定されない。例えば、流速等の累積値等を用いて定められてもよい。
【0054】
実施形態では、水分量検知センサ25は、主機70の潤滑油中の水分量を検知するものとしたが、これに限定されない。例えば、水分量検知センサ25は、発電所のタービン油、自動車のブレーキ油、油圧機器の潤滑油、製鉄所の圧延油、船舶用燃料油、食用油中の水分量を検知するものであってもよいし、気体中の水分量を検知するものであってもよい。したがって、水分量検知センサ25は、流体中の水分量を検知するものであればよい。
【0055】
実施形態では、分布を画像認識してその近似度を求めたが、これに限定されない。例えば、分布の形状を関数化し、取得した使用データの関数と相関データの関数との近似度に基づいて劣化度合いが推定されてもよいし、他の手法が用いられてもよい。
【0056】
本実施形態の相関データは、例えば、使用データを少なくとも入力データの1つとし、劣化度合いを出力データとして機械学習された学習モデルであってもよい。機械学習手法としては、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク(ディープラーニングを含む)、ランダムフォレスト等、公知の機械学習手法が用いられる。
【0057】
図5は、第1実施形態の変形例の推定装置100の機能ブロック図である。推定装置100は、相関データを更新する更新部106を備えてもよい。この場合、取得部102は、例えば、メンテナンスにおける校正結果を作業員の作業端末(不図示)から水分量検知センサ25の実際の劣化度合いとして取得し、更新部106は推定した劣化度合いと取得した実際の劣化度合いとに基づいて相関データを更新する。例えば、更新部106は、推定した劣化度合いと取得した実際の劣化度合いとの差分が小さくなるように、相関データにおける流速等の分布やこれに関連付けられる劣化度合いを修正すればよい。
【0058】
実施形態では、推定装置100に相関データ作成部105を設けたが、これに限定されず、推定装置100の外部に設けられた外部装置に相関データ作成部105を設け、推定装置100はこの外部装置によって作成された相関データを受け取り、記憶部101に記憶させてもよい。
【0059】
第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0060】
図6は、第2実施形態の推定装置100の機能ブロック図である。図6に示すように、第2実施形態の推定装置100は、出力部104の代わりに報知部107を備える。報知部107は、推定した劣化度合いが劣化基準値を超える場合に水分量検知センサ25のメンテナンスが必要である旨を報知する。
【0061】
図7は、第2実施形態の推定装置100の処理S200を示すフローチャートである。図7のステップS201~S203は、特に言及する点を除いて図4のステップS101~S103と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0062】
ステップS201~S203を経て、ステップS204で、劣化推定部103は、推定した劣化度合いが劣化基準値以上であるか否かを判断する。この劣化基準値は、例えば、校正作業において用いられる上述の所定の基準範囲に基づいて適宜設定される。劣化度合いが劣化基準値以上である場合(ステップS204のY)、処理S200はステップS205に進む。劣化度合いが劣化基準値以上ではない場合(ステップS204のN)、処理S200は終了する。
【0063】
ステップS205で、報知部107は、水分量検知センサ25のメンテナンスが必要である旨を報知する。なお、ここでの「水分量検知センサ25のメンテナンスが必要である旨」は、例えば、「水分量検知センサ25のメンテナンスがすぐに必要である」などのメンテナンスが必要となった時点でその旨を報知するものや、「メンテナンスが数か月後に必要である」などのメンテナンスが必要であることを前もって報知するものであってもよい。本実施形態では、例えば、報知部107は、管理センタ10や船舶20に設けられたPCや表示装置12及び22、作業員の作業端末に上記メンテナンスが必要である旨を表示させる。これにより、水分量検知センサ25のメンテナンスの検討に活用することが可能となる。例えば、作業員は、水分量検知センサ25のメンテナンス時期などを提案することが可能となる。なお、上記メンテナンスが必要である旨と共に、劣化度合いが表示されてもよい。
【0064】
ステップS205の後、処理S200は終了する。
【0065】
第2実施形態によると、水分量検知センサ25の適切なメンテナンス時期を把握することが可能となる。
【0066】
第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0067】
図8は、第3実施形態の推定装置100の機能ブロック図である。第3実施形態の推定装置100は、メンテナンス時期推定部108を備える。メンテナンス時期推定部108は、推定した劣化度合いに基づいて、水分量検知センサ25のメンテナンスが必要となる時期であるメンテナンス時期を推定する。
【0068】
図9は、第3実施形態の推定装置100の処理S300を示すフローチャートである。
【0069】
ステップS301で、取得部102は、メンテナンス時期診断指示を取得したかどうかを判断する。メンテナンス時期診断指示は、水分量検知センサ25の識別番号を含む。図9のステップS301は、劣化診断指示とメンテナンス時期診断指示とが異なる点を除き、図4のステップS101と基本的に同様であるため、その説明を省略する。図9のステップS302及びS303も同様に、特に言及する点を除いて図4のステップS102及びS103と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
ステップS302及びS303を経て、ステップS304で、メンテナンス時期推定部108は、推定した劣化度合いとメンテナンス基準値との比較に基づいてメンテナンス時期を推定する。例えば、メンテナンス時期推定部108は、推定した劣化度合いがメンテナンス基準値を超えない場合、メンテナンス基準値に対する劣化度合いの差分((メンテナンス基準値)-(劣化度合い))が大きいほど、より後の時点をメンテナンス時期として推定し、上記差分が小さいほど、現在の時点により近い時点をメンテナンス時期として推定する。また、例えば、メンテナンス時期推定部108は、劣化度合いがメンテナンス基準値を超える場合、現在の時点や数日後など、可能な限り早い時点をメンテナンス時期として推定する。
【0071】
ステップS305で、出力部104は、推定したメンテナンス時期を出力する。本実施形態では、例えば、出力部104は、管理センタ10や船舶20に設けられたPCや表示装置12及び22、作業員の作業端末にメンテナンス時期を表示させる。これにより、水分量検知センサ25のメンテナンス計画の立案に活用することが可能となる。例えば、作業員は、メンテナンス時期が表示されることにより、水分量検知センサ25のメンテナンスのスケジュール調整を行い易くなる。なお、上記メンテナンス時期と共に、劣化度合いが表示されてもよい。ステップS305の後、処理S300は終了する。
【0072】
第3実施形態では、メンテナンス時期推定部108は、劣化度合いに基づいてメンテナンス時期を推定する。本構成によると、適切な時期に水分量検知センサ25のメンテナンスを実施することが可能となる。
【0073】
第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態の図面および説明では、第3実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第3実施形態と重複する説明を適宜省略し、第3実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0074】
図10は、第4実施形態に係る推定装置100の機能ブロック図である。第4実施形態に係る推定装置100は、劣化推定部103を有さず、メンテナンス時期推定部108が使用データに基づいてメンテナンス時期を推定する。
【0075】
本実施形態の相関データは、使用データとメンテナンス時期との相関関係を示す相関データを記憶している。本実施形態では、使用データとして使用環境データの流速を用いる場合を例に、相関データについて説明する。本実施形態の推定装置100は、例えば、水分量検知センサ25の校正作業を行う毎に、その校正結果に基づいて作業員や管理者によって推奨される水分量検知センサ25のメンテナンス時期を、最後に調整作業を行ったときから校正作業を行う時点までの流速分布と関連付けて記憶部101に蓄積しておく。相関データ作成部105は、このようにして得られた複数パターンのメンテナンス時期とその流速分布とを関連付けたデータを統合することにより、流速分布-メンテナンス時期相関データを作成する。
【0076】
図11は、第4実施形態に係る推定装置100の処理S400を示すフローチャートである。図11のステップS401、S402、及びS404は、特に言及する点を除いて図9のステップS301、S302、及びS304と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
ステップS401及びS402を経て、ステップS403で、メンテナンス時期推定部108は、使用データ及び相関データに基づいて、メンテナンス時期を推定する。ステップS403では、ステップS103と同様に、使用データの近似度を求め、求めた近似度の大きさに基づいてメンテナンス時期が推定される。
【0078】
ステップS404の後、処理S400は終了する。
【0079】
第4実施形態では、メンテナンス時期推定部108は、使用データに基づいてメンテナンス時期を推定する。本構成によると、適切な時期に水分量検知センサ25のメンテナンスを実施することが可能となる。
【0080】
第5実施形態
以下、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0081】
主機70に使用する潤滑油の性状は、その種類毎に異なる。そのため、使用する潤滑油によっては、例えば、泡が発生しやすく粘度が大きいためにゴミが溜まりやすい潤滑油、特定の物質の有無や特定の物質を多く含有することにより物質の固着が発生しやすい潤滑油もある。すなわち、使用する潤滑油毎やその含有物質毎に、水分量検知センサ25の劣化のしやすさが異なる場合がある。
【0082】
本実施形態では、相関データは、使用データと劣化度合いと潤滑油を示す潤滑油情報との相関関係を示す。本実施形態の推定部は、取得部102の取得結果(使用データ及び潤滑油情報)と相関データとに基づいて、劣化度合いを推定する。本構成によると、潤滑油毎に相関データを作成することにより、潤滑油と水分量検知センサ25の劣化との相関性(例えば、潤滑油Xを使用する場合は劣化の進行が早いなど)を導き出すことができる。そのため、使用する潤滑油毎の水分量検知センサ25の劣化のしやすさを反映することができるため、より精度良く劣化度合いを推定することが可能となる。その結果、より適切にメンテナンス時期を提案することが可能となる。
【0083】
潤滑油情報は、例えば、潤滑油の製品番号や製品名など潤滑油を識別するための潤滑油識別情報を含む。潤滑油情報は、例えば潤滑油をオイルタンク77に貯蔵する際に、水分量検知センサ25の識別番号と関連付けられて記憶部101に事前に記憶される。本実施形態の潤滑油情報は、流体情報の一例である。
【0084】
本実施形態の相関データにおいては、使用データと劣化度合いと潤滑油情報とが関連付けられる。例えば、本実施形態の推定装置100は、複数の異なる潤滑油をそれぞれ主機70に用いた場合の劣化度合い及び使用データを事前に取得して、使用した水分量検知センサ25の識別番号及び使用した潤滑油の潤滑油情報と関連付けて記憶部101に蓄積しておく。相関データ作成部105は、例えば、使用した水分量検知センサ25及び潤滑油と、その使用データと劣化度合いとを関連付けることにより、第1実施形態等と同様の手法により相関データを作成し、記憶部101に記憶させる。
【0085】
図12は、第5実施形態に係る推定装置100の処理S500を示すフローチャートである。図12のステップS501及びS504は、特に言及する点を除いて図4のステップS101及びS104と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0086】
ステップS502で、取得部102は、使用データとともに、識別番号に関連付けられた潤滑油情報を取得する。
【0087】
ステップS503で、劣化推定部103は、使用データ、潤滑油情報(本実施形態では潤滑油識別情報)、及び相関データに基づいて、劣化度合いを推定する。本実施形態の劣化推定部103は、取得した潤滑油識別情報によって特定される潤滑油に関連付けられた相関データを記憶部101から読み出し、取得した使用データ及び読み出した相関データに基づいて劣化度合いを推定する。
【0088】
ステップS504の後、処理S500は終了する。
【0089】
潤滑油情報は、潤滑油識別情報と潤滑油の性状を示す潤滑油性状情報(流体性状情報)との少なくとも1つを含んでもよい。潤滑油性状情報における性状は、例えば、潤滑油の密度、色相(ASTM)、引火点、酸価、動粘度、粘度指数、流動点、泡立ち度/泡安定度、塩基価、SAE粘度番号、耐摩耗性、耐荷重能、比誘電率、誘電正接、抵抗値、体積抵抗率、含有物質、潤滑油の単位重量当たりの各含有物質の含有量等によって示される。したがって、潤滑油情報(流体情報)は潤滑油(流体)及び潤滑油(流体)の性状を示す、といえる。
【0090】
潤滑油情報が潤滑油性状情報を含む場合、例えば、潤滑油性状情報における上述の潤滑油の密度や色相等の潤滑油の性状を示す項目毎に、相関データが作成されてもよい。これにより、使用する潤滑油の様々な性状に応じた水分量検知センサ25の劣化のしやすさを反映することができるため、より精度良く劣化度合いを推定することが可能となる。その結果、より適切にメンテナンス時期を提案することが可能となる。
【0091】
また、例えば、潤滑油情報が潤滑油性状情報として潤滑油の含有物質を含む場合、個々の含有物質毎に相関データが作成されてもよい。これにより、潤滑油中の含有物質と水分量検知センサ25の劣化の相関性(例えば、潤滑油が物質Aを含有する場合は劣化の進行が早いなど)を導き出すことができ、データの蓄積により劣化度合いの推定精度を向上させることができる。
【0092】
第6実施形態
以下、本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0093】
例えば、主機70の負荷が大きいほど、主機70に供給される潤滑油の量が多くなるとともに、主機70の温度も上昇しやすくなるため、潤滑油の流速、流量、温度等も大きくなる。このように潤滑油の使用環境は、主機70の負荷や回転数などの運転状態に大きく作用される。
【0094】
本実施形態では、相関データは、使用データと劣化度合いと主機70の運転状態との相関関係を示す。本構成によると、主機70の運転状態にさらに基づいて劣化度合いを推定することにより、より精度良く劣化度合いを推定することが可能となる。その結果、より適切にメンテナンス時期を提案することが可能となる。
【0095】
本実施形態の相関データにおいては、使用データと劣化度合いと主機70の運転状態とが関連付けられる。例えば、本実施形態の相関データ作成部105は、調整作業直後の劣化度合いとその次の調整作業直前の劣化度合いの差分と、これと同じ期間中に得られた使用データ(流速分布等)及び運転状態情報(回転数分布等)をそれぞれ関連付けたデータを作成する。第1実施形態と同様に、この関連付けたデータを複数パターン作成し、これらを統合することにより、流速分布-回転数分布-劣化相関データを作成し、記憶部101に記憶させる。
【0096】
図13は、第6実施形態に係る推定装置100の処理S600を示すフローチャートである。図13のステップS601及びS604は、特に言及する点を除いて図4のステップS101及びS104と基本的に同様であるため、その説明を省略する。本実施形態では、主機70の運転状態を示す運転状態情報(例えば、主機70の回転数など)は、主機70の制御装置(不図示)から通信装置11及び12を介して推定装置100に順次供給され、記憶部101に蓄積されているものとする。
【0097】
ステップS601を経て、ステップS602で、取得部102は、使用データとともに、船舶20の主機70の運転状態を示す運転状態情報を取得する。取得部102は、例えば、最後にメンテナンスを行ったときから現在の時点までの期間中の主機70の回転数を運転状態情報として記憶部101から読み出すことにより運転状態情報を取得する。
【0098】
ステップS603で、劣化推定部103は、使用データ、運転状態情報、及び相関データに基づいて、劣化度合いを推定する。本実施形態の劣化推定部103は、識別番号によって特定される水分量検知センサ25の流速分布-回転数分布-劣化相関データを記憶部101から読み出し、取得した使用データ及び読み出した相関データに基づいて劣化度合いを推定する。
【0099】
ステップS604の後、処理S600は終了する。
【0100】
主機70の運転状態の例として、主機70の回転数を挙げたが、これに限定されない。主機70の運転状態は、例えば、主機70の回転数、負荷、トルク、出力、燃料噴射量等の少なくとも1つを含んでもよい。
【0101】
第6実施形態では、主機70は船舶20で用いられるものとしたが、これに限定されず、例えば自動車など船舶20とは異なるものに用いられるものであってもよい。
【0102】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0103】
上述した各実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0104】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0105】
10 管理センタ、 11 通信装置、 12 表示装置、 20 船舶、 21 通信装置、 22 表示装置、 25 水分量検知センサ、 26 流速センサ、 70 主機、 71 シリンダ 72、 クランク室、 73 潤滑油供給配管、 74 潤滑油戻り配管、 75 潤滑油配管、 76 潤滑油ポンプ、 77 オイルタンク、 78 注油器、 100 推定装置、 101 記憶部、 102 取得部、 103 劣化推定部、 104 出力部、 105 相関データ作成部、 106 更新部、 107 報知部、 108 メンテナンス時期推定部。
図1
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図13