(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173820
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20231130BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231130BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20231130BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231130BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20231130BHJP
H01M 8/04492 20160101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 A
H01M8/249
H01M8/04537
H01M8/04694
H01M8/04492
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086320
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】小野 大輔
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA21
5H127AB14
5H127AB17
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB48
5H127DB69
5H127DC42
5H127DC46
(57)【要約】
【課題】水つまりによる各燃料電池の劣化を抑制しつつ、二次電池の充電量の変動を抑制する。
【解決手段】燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計が負荷Loから要求される電力と等しくなるように燃料電池FCm、FCsの発電を制御し、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P1になるとともに燃料電池FCsの出力電力が出力電力P1より小さい出力電力P2になるように、燃料電池FCm、FCsの発電を制御する第1制御処理と、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P2になるとともに燃料電池FCsの出力電力が出力電力P1になるように、燃料電池FCm、FCsの発電を制御する第2制御処理とを交互に実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷及び二次電池に電力を供給する第1及び第2燃料電池と、
前記第1及び第2燃料電池の出力電力の合計が前記負荷から要求される電力と等しくなるように前記第1及び第2燃料電池の発電を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1燃料電池の出力電力が第1出力電力になるとともに前記第2燃料電池の出力電力が前記第1出力電力より小さい第2出力電力になるように、前記第1及び第2燃料電池の発電を制御する第1制御処理と、前記第1燃料電池の出力電力が前記第2出力電力になるとともに前記第2燃料電池の出力電力が前記第1出力電力になるように、前記第1及び第2燃料電池の発電を制御する第2制御処理とを交互に実行する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記第1及び第2燃料電池の出力電力の合計が前記負荷から要求される電力より小さい場合、前記第1出力電力を前記第1及び第2燃料電池の出力電力の最大値とする
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、一定期間経過毎に、前記第1及び第2制御処理を交互に実行する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記第1燃料電池において水つまりを検知すると、前記第1制御処理を実行し、前記第2燃料電池において水つまりを検知すると、前記第2制御処理を実行する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、複数の燃料電池の出力電力を調整して負荷に供給するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、燃料電池の出力電力が比較的小さく、燃料電池に供給される酸化剤ガスの単位時間あたりの流量が比較的小さい場合、酸化剤ガスによって燃料電池内に滞留する水を燃料電池の外に排出することが難しくなるため、水つまりによる燃料電池の劣化が懸念される。
【0004】
そのため、上記燃料電池システムでは、複数の燃料電池のうちの少なくとも1つの燃料電池の出力電力が比較的小さい場合、その燃料電池が劣化し易くなるおそれがある。
【0005】
そこで、他の燃料電池システムとして、各燃料電池の水つまりが解消されるように各燃料電池の出力電力を定期的に増加させるものがある。
【0006】
しかしながら、上記他の燃料電池システムでは、各燃料電池から出力される電力の合計が負荷から要求される電力よりも大きくなると、その余剰分の電力が燃料電池システム内の二次電池に供給されるため、二次電池の充電量が大きく変動し二次電池の劣化につながるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一側面に係る目的は、水つまりによる各燃料電池の劣化を抑制しつつ、二次電池の充電量の変動を抑制することが可能な燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一つの形態である燃料電池システムは、負荷及び二次電池に電力を供給する第1及び第2燃料電池と、前記第1及び第2燃料電池の出力電力の合計が前記負荷から要求される電力と等しくなるように前記第1及び第2燃料電池の発電を制御する制御部とを備える。
【0010】
前記制御部は、前記第1燃料電池の出力電力が第1出力電力になるとともに前記第2燃料電池の出力電力が前記第1出力電力より小さい第2出力電力になるように、前記第1及び第2燃料電池の発電を制御する第1制御処理と、前記第1燃料電池の出力電力が前記第2出力電力になるとともに前記第2燃料電池の出力電力が前記第1出力電力になるように、前記第1及び第2燃料電池の発電を制御する第2制御処理とを交互に実行する。
【0011】
これにより、第1出力電力が水つまりを解消することが可能な大きさである場合、第1及び第2制御処理が交互に実行されることで、第1及び第2燃料電池の水つまりを解消することができるため、水つまりによる第1及び第2燃料電池の劣化を抑制することができる。また、第1及び第2燃料電池の出力電力の合計が負荷から要求される電力と等しくなるように第1及び第2燃料電池の発電が制御されるため、二次電池の充電量の変動を抑制することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記第1及び第2燃料電池の出力電力の合計が前記負荷から要求される電力より小さい場合、前記第1出力電力を前記第1及び第2燃料電池の出力電力の最大値とするように構成してもよい。
【0013】
これにより、第1及び第2燃料電池の出力電力の合計が負荷から要求される電力より小さい場合であっても、第1出力電力が水つまりを解消することが可能な大きさになり易くなるため、第1及び第2燃料電池の水つまりを解消することができ、水つまりによる第1及び第2燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、前記制御部は、一定期間経過毎に、前記第1及び第2制御処理を交互に実行するように構成してもよい。
【0015】
また、前記制御部は、前記第1燃料電池において水つまりを検知すると、前記第1制御処理を実行し、前記第2燃料電池において水つまりを検知すると、前記第2制御処理を実行するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の燃料電池の出力電力を負荷及び二次電池に供給する燃料電池システムにおいて、水つまりによる各燃料電池の劣化を抑制しつつ、二次電池の充電量の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【
図2】実施例1における第1制御処理と第2制御処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0019】
図1は、実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0020】
図1に示す燃料電池システムFCSは、例えば、定置式発電機や非常用電源であり、燃料電池システムFCSの外部に設けられる負荷Loに電力を供給する。なお、燃料電池システムFCSは、商用電源と協働して負荷Loに電力を供給するように構成してもよい。
【0021】
また、燃料電池システムFCSは、マスタとしての燃料電池モジュールFCMmと、スレーブとしての燃料電池モジュールFCMsとを備える。
【0022】
燃料電池モジュールFCMmは、燃料電池FCm(第1燃料電池)と、水素タンクTと、インジェクタINJと、エアコンプレッサACPと、DCDCコンバータCNVと、二次電池Bと、電流センサSiと、電圧センサSvと、流量センサSfと、発電制御部PCNTmと、全体統括制御部CNT(制御部)とを備える。なお、発電制御部PCNTm、PCNTs及び全体統括制御部CNTは、マイクロコンピュータなどにより構成される。また、全体統括制御部CNTは、発電制御部PCNTmに含まれてもよい。
【0023】
燃料電池モジュールFCMsは、燃料電池FCs(第2燃料電池)と、水素タンクTと、インジェクタINJと、エアコンプレッサACPと、DCDCコンバータCNVと、流量センサSfと、発電制御部PCNTsとを備える。なお、燃料電池モジュールFCMm、FCMsにおいて、同じ構成には同じ符号を付している。
【0024】
燃料電池FCm、FCsは、複数の燃料電池セルを積層させて構成される燃料電池であり、水素ガスに含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。また、水素イオンと酸素イオンとが結合して生成される水が燃料電池FCm、FCmの水素ガスや酸化剤ガスの流路に滞留する可能性がある。この水が水素ガスや酸化剤ガスの流路に滞留すると、すなわち、水つまりが発生すると、燃料電池FCm、FCsに供給される燃料ガスや酸化剤ガスの量が低下する。すると、燃料電池FCm、FCsにおいて水素酸化反応速度や酸化還元反応速度が正常時より遅くなり、燃料電池FCm、FCsの電圧が正常時より低下する。すなわち、水つまりが発生すると、燃料電池FCm、FCsが劣化した状態になる。この水つまりに対する回復動作の一例としては、燃料電池FCm、FCsに供給される酸化剤ガスの供給量を増加させるために、燃料電池FCm、FCsの出力電力(発電電力)を増加させることが考えられる。燃料電池FCm、FCsに供給される酸化剤ガスの供給量が増加することで燃料電池FCm、FCsに溜まった水が燃料電池FCm、FCsの外に排出され、燃料電池FCm、FCsの状態が劣化状態から元の正常な状態に回復する。
【0025】
水素タンクTは、水素ガスの貯蔵容器である。水素タンクTに貯蔵された水素ガスはインジェクタINJを介して燃料電池FCm、FCsに供給される。
【0026】
インジェクタINJは、発電制御部PCNTm、PCNTsにより動作が制御され、燃料電池FCm、FCsに供給される水素ガスの圧力が一定になるように水素ガスの流量を調整する。
【0027】
エアコンプレッサACPは、発電制御部PCNTm、PCNTsにより動作が制御され、燃料電池モジュールFCMm、FCMsの周囲に存在する酸化剤ガスを圧縮し燃料電池FCm、FCsに供給する。
【0028】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCm、FCsの後段に接続され、燃料電池FCm、FCsから出力される電圧を所定の電圧に変換する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力は、負荷Loの他に、インジェクタINJやエアコンプレッサACPなどの内部負荷及び二次電池Bに供給される。
【0029】
二次電池Bは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続されている。各DCDCコンバータCNVから出力される電力の合計値と、内部負荷に供給される電力との差に相当する供給電力が、負荷Loから要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうちの要求電力に相当する電力が負荷Loに供給されるとともに残りの電力が二次電池Bに供給される。各DCDCコンバータCNVから二次電池Bに電力が供給されると、二次電池Bが充電され二次電池Bの充電量が増加する。また、各DCDCコンバータCNVから出力される電力の合計値と、内部負荷に供給される電力との差に相当する供給電力が、負荷Loから要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに足りない分の電力が二次電池Bから負荷Loに供給される。二次電池Bから負荷Loに電力が供給されると、二次電池Bが放電され二次電池Bの充電量が減少する。なお、充電量とは、二次電池Bの充電率[%](二次電池Bの満充電容量に対する残容量の割合)、または、二次電池Bに電流が流れていないときの二次電池Bの開回路電圧[V]、または、二次電池Bに電流が流れているときの二次電池Bの閉回路電圧[V]、または、二次電池Bに流れる電流の積算値[Ah]などとする。
【0030】
電流センサSiは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、二次電池Bに流れる電流を検出する。電流センサSiにより検出された電流は発電制御部PCNTm、PCNTsに送られる。
【0031】
電圧センサSvは、分圧抵抗などにより構成され、二次電池Bの電圧を検出する。電圧センサSvにより検出された電圧は発電制御部PCNTm、PCNTsに送られる。
【0032】
流量センサSfは、燃料電池FCm、FCsに供給される酸化剤ガスの流量を検出する。流量センサSfにより検出された流量は発電制御部PCNTm、PCNTsに送られる。
【0033】
発電制御部PCNTmは、燃料電池FCmの出力電力が、全体統括制御部CNTから送信される目標発電電力に追従するように、内部負荷の動作を制御することで燃料電池FCmの発電を制御する。また、発電制御部PCNTsは、燃料電池FCsの出力電力が、全体統括制御部CNTから送信される目標発電電力に追従するように、内部負荷の動作を制御することで燃料電池FCsの発電を制御する。
【0034】
全体統括制御部CNTは、通常発電制御時、二次電池Bの充電量が小さくなるほど、燃料電池FCm、FCsにそれぞれ対応する目標発電電力を段階的に大きくし、二次電池Bの充電量が大きくなるほど、燃料電池FCm、FCsにそれぞれ対応する目標発電電力を段階的に小さくする。
【0035】
また、全体統括制御部CNTは、燃料電池システムFCSから負荷Loに一定電力を継続して供給する一定電力供給時、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計が負荷Loから要求される電力と等しくなるように、燃料電池FCm、FCsにそれぞれ対応する目標発電電力を求め、その求めた各目標発電電力を発電制御部PCNTm、PCNTsに送信する。これにより、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計が負荷Loから要求される電力と等しくなるように燃料電池FCm、FCsの発電が制御されるため、二次電池Bの充電量の変動を抑制することができる。
【0036】
また、全体統括制御部CNTは、一定電力供給時、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P1(第1出力電力)になるとともに燃料電池FCsの出力電力が出力電力P2(第2出力電力)になるように各目標発電電力を求める第1制御処理と、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P2になるとともに燃料電池FCsの出力電力が出力電力P1になるように各目標発電電力を求める第2制御処理とを交互に実行する。なお、出力電力P2は、出力電力P1より小さいものとする。これにより、出力電力P1が水つまりを解消することが可能な大きさである場合、第1及び第2制御処理が交互に実行されることで、燃料電池FCm、FCsの水つまりを解消することができるため、水つまりによる燃料電池FCm、FCsの劣化を抑制することができる。
【0037】
なお、全体統括制御部CNTは、一定電力供給時、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計が負荷Loから要求される電力より小さい場合に、出力電力P1を燃料電池FCm、FCsの出力電力の最大値とするように構成してもよい。これにより、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計が負荷Loから要求される電力より小さい場合であっても、出力電力P1が水つまりを解消することが可能な大きさになり易くなるため、燃料電池FCm、FCsの水つまりを解消することができ、水つまりによる燃料電池FCm、FCsの劣化を抑制することができる。
【0038】
<実施例1>
実施例1における全体統括制御部CNTは、一定電力供給時、一定期間T1経過毎に、第1制御処理と第2制御処理とを交互に実行する。なお、全体統括制御部CNTは、タイマなどを用いて、一定期間T1を計測する。
【0039】
図2は、実施例1における第1制御処理と第2制御処理を説明するための図である。なお、
図2(a)は、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計を示し、
図2(b)は、二次電池Bの充電量を示し、
図2(c)は、燃料電池FCmの出力電力を示し、
図2(d)は、燃料電池FCmへの酸化剤ガスの流量を示し、
図2(e)は、燃料電池FCsの出力電力を示し、
図2(f)は、燃料電池FCsへの酸化剤ガスの流量を示している。また、燃料電池FCm、FCsの出力電力が出力電力P1である場合に燃料電池FCm、FCsに供給される酸化剤ガスの流量を流量F1とする。また、燃料電池FCm、FCsの出力電力が出力電力P2である場合に燃料電池FCm、FCsに供給される酸化剤ガスの流量を流量F2とする。また、出力電力P1>出力電力P2とし、流量F1>流量F2とする。また、流量閾値Fthは、燃料電池FCm、FCsに水つまりが発生していないときに燃料電池FCm、FCsに供給される酸化剤ガスの流量とする。
【0040】
全体統括制御部CNTは、時刻t0から時刻t1までの一定期間T1において、第1制御処理を実行し、時刻t1から時刻t2までの一定期間T1において、第2制御処理を実行し、時刻t2から時刻t3までの一定期間T1において、再び、第1制御処理を実行している。すなわち、全体統括制御部CNTは、一定期間T1経過毎に、第1制御処理と第2制御処理とを交互に実行している。
【0041】
そのため、時刻t0から時刻t1までの一定期間T1や時刻t2から時刻t3までの一定期間T1において、燃料電池FCmの出力電力は出力電力P1になり、燃料電池FCsの出力電力は出力電力P2になり、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計は出力電力P(=出力電力P1+出力電力P2)となっている。
【0042】
また、時刻t1から時刻t2までの一定期間T1において、燃料電池FCmの出力電力は出力電力P2になり、燃料電池FCsの出力電力は出力電力P1になり、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計は出力電力P(=出力電力P1+出力電力P2)となっている。
【0043】
すなわち、時刻t0から時刻t3までの期間において、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計は常に一定であり、燃料電池FCm、FCsの出力電力の合計である出力電力Pは負荷Loから要求される電力と等しい。そのため、時刻t0から時刻t3までの期間において、二次電池Bは充放電が行われず、二次電池Bの充電量は変動しない。
【0044】
また、時刻t0から時刻t1までの一定期間T1や時刻t2から時刻t3までの一定期間T1において、燃料電池FCmに供給される酸化剤ガスの流量は流量閾値Fthより大きい流量F2になる。また、時刻t1から時刻t2までの一定期間T1において、燃料電池FCsに供給される酸化剤ガスの流量は流量閾値Fthより大きい流量F2になる。そのため、時刻t0から時刻t3までの期間において、燃料電池FCm、FCsに水つまりが発生しない。
【0045】
<実施例2>
実施例2における全体統括制御部CNTは、一定電力供給時、燃料電池FCmにおいて水つまりを検知すると、第1制御処理を実行し、燃料電池FCsにおいて水つまりを検知すると、第2制御処理を実行する。
【0046】
例えば、全体統括制御部CNTは、燃料電池FCmの電圧または燃料電池FCmの燃料電池セルの電圧が電圧閾値Vth以下である状態が一定期間T2継続すると、燃料電池FCmにおいて水つまりが発生したと検知し、燃料電池FCsの電圧または燃料電池FCsの燃料電池セルの電圧が電圧閾値Vth以下である状態が一定期間T2継続すると、燃料電池FCsにおいて水つまりが発生したと検知する。また、全体統括制御部CNTは、燃料電池FCmの電圧または燃料電池FCmの燃料電池セルの電圧が電圧閾値Vthより大きい状態が一定期間T3継続すると、燃料電池FCmにおいて水つまりが解消したと検知し、燃料電池FCsの電圧または燃料電池FCsの燃料電池セルの電圧が電圧閾値Vthより大きい状態が一定期間T3継続すると、燃料電池FCsにおいて水つまりが解消したと検知する。なお、電圧閾値Vthは、燃料電池FCm、FCsに水つまりが発生したときの燃料電池FCm、FCsの電圧または燃料電池FCm、FCsの燃料電池セルの電圧とする。また、一定期間T2と一定期間T3は、同じ期間でもよいし、異なる期間でもよい。
【0047】
または、例えば、全体統括制御部CNTは、燃料電池FCmに供給される酸化剤ガスの流量が流量閾値Fth以下である状態が一定期間T4継続すると、燃料電池FCmにおいて水つまりが発生したと検知し、燃料電池FCsに供給される酸化剤ガスの流量が流量閾値Fth以下である状態が一定期間T4継続すると、燃料電池FCsにおいて水つまりが発生したと検知する。また、全体統括制御部CNTは、燃料電池FCmに供給される酸化剤ガスの流量が流量閾値Fthより大きい状態が一定期間T5継続すると、燃料電池FCmにおいて水つまりが解消したと検知し、燃料電池FCsに供給される酸化剤ガスの流量が流量閾値Fthより大きい状態が一定期間T5継続すると、燃料電池FCsにおいて水つまりが解消したと検知する。なお、流量閾値Fthは、燃料電池FCm、FCsに水つまりが発生したときに燃料電池FCm、FCsに供給されていた酸化剤ガスの流量とする。また、一定期間T4と一定期間T5は、同じ期間でもよいし、異なる期間でもよい。
【0048】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0049】
<変形例>
燃料電池システムFCSに備えられるスレーブとしての燃料電池モジュールの数は2つ以上でもよい。
【0050】
ここで、燃料電池システムFCSにマスタとしての燃料電池モジュールFCMmと、スレーブとしての2つの燃料電池モジュールFCMs1、FCMs2とが備えられ、燃料電池モジュールFCMs1に燃料電池FCs1と、発電制御部PCNTs1とが備えられ、燃料電池モジュールFCMs2に燃料電池FCs2と、発電制御部PCNTs2とが備えられている場合を想定する。
【0051】
この場合、全体統括制御部CNTは、一定電力供給時、燃料電池FCm、FCs1、FCs2の出力電力の合計が負荷Loから要求される電力と等しくなるように、燃料電池FCm、FCs1、FCs2にそれぞれ対応する目標発電電力を求め、その求めた各目標発電電力を発電制御部PCNTm、PCNTs1、PCNTs2に送信する。
【0052】
また、全体統括制御部CNTは、一定電力供給時、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P1になるとともに燃料電池FCs1の出力電力が出力電力P2になるとともに燃料電池FCs2の出力電力が出力電力P3になるように各目標発電電力を求める第1制御処理と、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P2になるとともに燃料電池FCs1の出力電力が出力電力P1になるとともに燃料電池FCs2の出力電力が出力電力P3になるように各目標発電電力を求める第2制御処理と、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P3になるとともに燃料電池FCs1の出力電力が出力電力P2になるとともに燃料電池FCs2の出力電力が出力電力P1になるように各目標発電電力を求める第3制御処理とを順次繰り返し実行する。なお、出力電力P1は、出力電力P2、P3より大きいものとし、出力電力P2、P3は互いに同じ値でも異なる値でもよい。また、第1制御処理において、燃料電池FCs1の出力電力が出力電力P3になるとともに燃料電池FCs2の出力電力が出力電力P2になるように各目標発電電力を求めてもよい。また、第2制御処理において、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P3になるとともに燃料電池FCs2の出力電力が出力電力P2になるように各目標発電電力を求めてもよい。また、第3制御処理において、燃料電池FCmの出力電力が出力電力P2になるとともに燃料電池FCs1の出力電力が出力電力P3になるように各目標発電電力を求めてもよい。
【0053】
このように構成しても、出力電力P1が水つまりを解消することが可能な大きさである場合、第1~第3制御処理が順次繰り返し実行されることで、燃料電池FCm、FCs1、FCs2の水つまりを解消することができるため、水つまりによる燃料電池FCm、FCs1、FCs2の劣化を抑制することができる。また、燃料電池FCm、FCs1、FCs2の出力電力の合計が負荷Loから要求される電力と等しくなるように燃料電池FCm、FCs1、FCs2の発電が制御されるため、二次電池Bの充電量の変動を抑制することができる。
【0054】
なお、燃料電池システムFCSにスレーブとしての燃料電池モジュールを3つ以上備える場合についても、燃料電池システムFCSにスレーブとしての燃料電池モジュールを2つ備える場合と同様に各燃料電池の出力電力を協調させるための制御処理を順次繰り返し実施することで適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
FCS 燃料電池システム
FCMm、FCMs 燃料電池モジュール
PCNT 発電制御部
CNT 全体統括制御部
Lo 負荷
FC 燃料電池
T 水素タンク
INJ インジェクタ
ACP エアコンプレッサ
CNV DCDCコンバータ
B 二次電池
Si 電流センサ
Sv 電圧センサ