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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173829
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ボールペンリフィル及びボールペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B43K7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086330
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅也
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KC03
(57)【要約】
【課題】単体でクッション機能を有するボールペンリフィル。
【解決手段】内部にインクを収容する合成樹脂製のインク収容管と、前記インク収容管の先端に直接又は継手を介して装着されるボールペンチップと、を備えたボールペンリフィルであって、前記インク収容管の後端部分が、前後方向に弾性変形可能な弾性領域として形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインクを収容する合成樹脂製のインク収容管と、
前記インク収容管の先端に直接又は継手を介して装着されるボールペンチップと、
を備えたボールペンリフィルであって、
前記インク収容管の後端部分が、前後方向に弾性変形可能な弾性領域として形成されていることを特徴とするボールペンリフィル。
【請求項2】
前記弾性領域には、周方向に沿って長手方向を有する貫通孔が複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のボールペンリフィル。
【請求項3】
前記ボールペンチップの外周面の一部には、軸心方向に厚さを減じた凹溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のボールペンリフィル。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のボールペンリフィルを備えたことを特徴とするボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンリフィル及びボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたようなノック式ボールペンでは、軸筒に収容したボールペンリフィルの後端が軸筒内部のノック機構に当接させるのが一般的である。しかし、軸筒は通常、剛性が比較的高く、また、筆記時にボールペンチップが紙面に接触した時の衝撃はノック機構を介して軸筒に伝達するため、硬い筆記感が感じられる。そこで、筆記感を向上させるために、リフィルの後端に弾性変形するリフィル栓を装着したり(特許文献2)、インクカートリッジの後端に、バネ部材を有する緩衝デバイスを装着したり(特許文献3)する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-155426号公報
【特許文献2】特開2018-94875号公報
【特許文献3】特表2009-542466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示された筆記具では、リフィルの後端にリフィル栓という別部材が装着されるため、軸筒がこのリフィルに適合した形状となるなど互換性に欠ける可能性や、使用中に尾栓の脱落が発生する可能性がある。また、特許文献3に開示された筆記具では、緩衝デバイスを含む変位部材が複雑な構造となっており、製造工数の増加の点やコスト面で必ずしも望ましいものではない。
【0005】
本開示の実施態様は、筆記具の部品点数を増やすことなく、単体でクッション機能を有するボールペンリフィル及びこれを備えたボールペンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1態様は、内部にインクを収容する合成樹脂製のインク収容管と、前記インク収容管の先端に直接又は継手を介して装着されるボールペンチップと、を備えたボールペンリフィルであって、前記インク収容管の後端部分が、前後方向に弾性変形可能な弾性領域として形成されていることを特徴とする。この構成によると、インク収容管に撓みやすい構造としての弾性領域を設けることで、従来のボールペンに対して新たな部品を設けることなしに、ボールペンリフィル単体でクッション機能を付与しつつ、柔らかい筆記感を得ることができる。
【0007】
本願の第2態様は、上記第1態様の構成に加え、前記弾性領域には、周方向に沿って長手方向を有する貫通孔が複数設けられていることを特徴とする。この貫通孔によって、弾性領域全体に脆弱性が付与されることで、弾性領域が弾性変形可能となる。
【0008】
本願の第3態様は、上記第1態様又は第2態様の構成に加え、前記ボールペンチップの外周面の一部には、軸心方向に厚さを減じた凹溝が形成されていることを特徴とする。この構成によると、インク収容管とボールペンチップが異なる材料で形成されていてもボールペンチップを外しやすい構造となり、廃棄の際に分別が容易となる。
【0009】
本願の第4態様のボールペンは、上記第1態様から第3態様までのいずれかの構成のボールペンリフィルを備えている。この構成により、ボールペンリフィル単体でクッション機能を付与しつつ、柔らかい筆記感を得ることができるボールペンが得られる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施態様は上記のように構成されているので、インク収容管自体が弾性変形を容易とするため、別部材等を用いることなく、クッション性を付与できるボールペンリフィル及びこれを備えたボールペンの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施態様のボールペンリフィルの正面図(A)及び側面図(B)である。
図2図1のボールペンリフィルの後方斜視図(A)及び後端部分の拡大図(B)である。
図3図1(B)のIIIa-IIIa断面図(A)及び図1(A)のIIIb-IIIb断面図(B)である。
図4図1のボールペンリフィルに用いられるインク収容管の正面図(A)、側面図(B)、底面図(C)及び平面図(D)である。
図5図4のインク収容管の前方斜視図(A)及び後方斜視図(B)である。
図6図4(A)のVIa-VIa断面図(A)及び図4(A)のVIb-VIb断面図(B)である。
図7図1のボールペンリフィルに用いられるボールペンチップの正面図(A)及び図7(A)のVII-VII断面図(B)である。
図8図7のボールペンチップの前方斜視図(A)及び後方斜視図(B)である。
図9図1のボールペンリフィルを収容したボールペンの正面図(A)及び側面図(B)である。
図10図9(A)のX-X断面図である。
図11】ボールペンリフィルを廃棄する際、ボールペンチップの取り外し操作の例を正面図(A)及び要部の拡大断面図(B)で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本開示で前後に言及する際には、ボールペンにおいてボールペンチップが位置する側を前方又は先端側とし、その反対側を後方又は後端側としている。また、各図において共通して表示されている符号は、各図の説明において特に言及されていなくても同一の構成を示す。
【0013】
図1は、本実施形態のボールペンリフィル40の外形を正面図(A)及び側面図(B)で示している。また、図2は、図1のボールペンリフィルを後方斜視図(A)及び後端部分の拡大図(B)で示している。本実施形態のボールペンリフィル40においては、インク収容管50の先端に継手70を介してボールペンチップ60が装着されている。インク収容管50は、ポリプロピレンなどの合成樹脂製であることが好ましい。また、インク収容管50の後端部分に、周方向に沿って長手方向を有する貫通孔52が複数設けられていることで、前後方向に弾性変形可能な弾性領域51として形成されている。
【0014】
継手70は、ポリプロピレンなどの合成樹脂製であることが好ましい。この継手70は、先端側に位置し略筒状の小径部71と、後端側に位置しより大径な略筒状の大径部73と、これらの間に介在するフランジ部72とで構成されている。継手70の大径部73は、インク収容管50の前端部に圧入されている。この状態で、継手70のフランジ部72はインク収容管50の先端に当接している。一方、継手70の小径部71の内周面には、ステンレス鋼などの金属素材により形成されたボールペンチップ60の後端部64(図7及び図8参照)が圧入されている。
【0015】
図1(B)のIIIa-IIIa断面図である図3(A)及び図1(A)のIIIb-IIIb断面図である図3(B)に示すように、インク収容管50には、インク53が収容される。
【0016】
インク収容管50に収容されるインク53は、少なくとも着色剤と、特定のセルロースと、気泡抑制剤と、水とを含有せしめることにより、筆記の衝撃、振動による気泡発生を抑制し、カスレを防ぐことができる。具体的には、着色剤と、発酵セルロースと、アスコルビン酸又はその誘導体、若しくはシステイン又はその誘導体、若しくは重合度2~20のN-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマーから選ばれる少なくとも1種と、水とを含有する。
【0017】
着色剤としては、無機系顔料、有機系顔料及び水溶性染料が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの着色剤の含有量は、インクの描線濃度に応じて適宜増減することができ、インクの全量に対して、0.1~40質量%程度とすることが好ましい。
【0018】
無機系顔料としては、たとえば、カーボンブラックや、金属粉等が挙げられる。また、有機系顔料としては、たとえば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。具体的には、フタロシアニンブルー(C.I.74160)、フタロシアニングリーン(C.I.74260)、ハンザイエロー3G(C.I.11670)、ジスアゾイエローGR(C.I.21100)、パーマネントレッド4R(C.I.12335)、ブリリアントカーミン6B(C.I.15850)、キナクリドンレッド(C.I.46500)などが挙げられる。また、スチレンやアクリル樹脂の粒子から構成されているプラスチックピグメントも有機系顔料として使用できる。さらに、粒子内部に空隙のある中空樹脂粒子は白色顔料として、または、発色性、分散性に優れる後述する塩基性染料で染色した樹脂粒子(擬似顔料)等も使用できる。
【0019】
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料のいずれも用いることができる。
【0020】
直接染料としては、たとえば、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同71、同86、同106、同119などが挙げられる。
【0021】
酸性染料としては、たとえば、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドエロー7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同87、同92、同94、同115、同129、同131、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドバイオレット18、同17、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同103、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27などが挙げられる。
【0022】
食用染料としては、その大部分が直接染料又は酸性染料に含まれるが、含まれないものの例としては、C.I.フードエロー3が挙げられる。
【0023】
塩基性染料としては、たとえば、C.I.ベーシックエロー1、同2、同21、C.I.ベーシックオレンジ2、同14、同32、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同14、C.I.ベーシックブラウン12、ベーシックブラック2、同8などが挙げられる。
【0024】
また、塩基性染料で染色した樹脂粒子としては、アクリロニトリル系共重合体の樹脂粒子を塩基性蛍光染料で染色した蛍光顔料などが挙げられる。具体的な商品名として、シンロイヒカラーSFシリーズ(シンロイヒ株式会社)、NKW及びNKPシリーズ(日本蛍光化学株式会社)などが挙げられる。
【0025】
また、インク53への添加物として、発酵セルロースを添加することとしてもよい。発酵セルロースは、水に不溶性であり、インク組成物中では三次元網目構造を形成する。発酵セルロースは、増粘多糖類と異なり、低粘度でべとつきが少なく、種々のインクの共存成分、温度、pHなどにおいて安定して使用することができる。植物由来の一般的なセルロース繊維の繊維径に比べて非常に微細な繊維径を有するものである。また、発酵セルロースを構成する多糖類の化学構造は、基本的に、β1-4結合したグルコースによる直鎖状の高分子多糖類である。具体的な商品名としては、たとえば、サンアーティストH-PN、サンアーティストH-PGなどが挙げられる。
【0026】
この発酵セルロースの含有量は、インク53の全量に対して、0.05~1質量%に調整することが望ましい。この発酵セルロースの含有量が0.05質量%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、1質量%超過では、インク53としての性能は変わらないが、コスト面で好ましくない。また、発酵セルロースとともに、他の多糖類、たとえば、キサンタンガム、サクシノグリカン、ウェランガム、ダイユータンガムなどの多糖類をインク53へ添加してもよい。これらの多糖類の含有量は、インク53の全量に対して、0.05~0.5質量%とすることが望ましい。
【0027】
また、インク53への添加物である気泡抑制剤として、アスコルビン酸又はその誘導体、システイン又はその誘導体、重合度2~20のN-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマーから選ばれる少なくとも1種を用いることとしてもよい。アスコルビン酸又はその誘導体としては、たとえば、L-アスコルビン酸、及びその塩、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸のリン酸アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、L-アスコルビン酸2-グルコシド、L-アスコルビン酸-2リン酸-6パルミチン酸などが挙げられる。システイン及びその誘導体としては、たとえば、(L-)システイン、N-アセチル-L-システイン、(L-)システイン塩酸塩、(L-)システインエチルエステル塩酸塩、(L-)システインメチルエステル塩酸塩などが挙げられる。N-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマーは、-〔CNO〕-の直鎖重合物(重合度n=2~20の数)である。
【0028】
このN-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマーとしては、その重合度(n)はインク粘度等の点から、2~20のものが用いられ、好ましくは、2~10、さらに好ましくは2~6ものを用いることが望ましく、また、重合度の異なるオリゴマーを2種以上併用してもよい。なお、N-ビニル-2-ピロリドンのモノマーでは、気泡抑制能を発現し難く、また、オリゴマーの重合度が20を越えると、気泡抑制能を有するものの、粘度が高くなるため、インク53の吐出性が乏しくなる等、筆記性能に悪影響を与えることとなり、好ましくない。
【0029】
これらの気泡抑制剤として用いられる物質の含有量は、インク53の全量に対して、0.1~10質量%とすることが望ましい。これらの気泡抑制剤の含有量が0.1質量%未満であると、気泡抑制効果を発揮することができず、一方、10質量%超過では、インク53の経時安定性が低下する場合があり、好ましくない。
【0030】
インク53の残部として、溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)、またインクに通常用いられる各成分、たとえば、水溶性有機溶剤、分散剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤、防菌剤又はpH調整剤などを本発明の効果を損なわない範囲で、適宜含有することができる。
【0031】
水溶性有機溶剤としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを、単独又はこれらの2以上の混合物として使用することができる。これらの水溶性有機溶剤の含有量は、インク53の全量に対して、5~40質量%とすることが望ましい。
【0032】
インク53の着色剤として顔料を用いた場合には、分散剤を使用することが好ましい。この分散剤は、顔料表面に吸着して、水との親和性を向上させ、水中に顔料を安定に分散させる作用をするものであり、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又は水溶性樹脂が用いられる。水溶性樹脂としては、水溶性高分子を用いることが望ましい。
【0033】
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどを用いることができる。
【0034】
pH調整剤としては、アンモニア、尿素、モノエタノーアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンや、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなとの炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水和物などを用いることができる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などを用いることができる。
【0035】
また、用いるインク組成物のpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、さらに好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0036】
また、インク収容管50には、図3(A)及び図3(B)に示すように、インク53の逆流を防止するために、インク53の後端にインク追従体54が収容されている。インク追従体54は、インク収容管50の内部でインク53の後端と接触し、インク53の消費に追従して前進する。インク追従体54はインク53とは相溶性がなく、かつ、インク53に対して比重が小さい物質であり、油成分が主成分となっている。
【0037】
インク追従体54に用いる油成分としては、水に不溶又は難溶である、たとえば、ポリブデン、鉱油、シリコーンオイル等が挙げられる。また、インク追従体54には、微粒子シリカ、リンエステルのカルシウム塩、熱可塑性エラストマー等の増粘剤を配合することもできる。これらの増粘剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。その他必要に応じて、たとえば、粘土増粘剤若しくは金属石鹸などの増粘助剤、界面活性剤などの追従性向上剤、又は酸化防止剤等を配合することができる。
【0038】
インク追従体54は、インク収容管50の内部に占める直径と長さとの比が1:1~1:10であり、かつ、粘度値が1000~10000mPa・sであることが好ましい。上記粘度値は、測定温度25℃において、E型回転粘度計による剪断速度200sec-1における粘度をいう。また、インク追従性及びインクの漏れ出し防止の点から、上記直径は1.5~5.0mm、及び、上記長さは3~30mmとすることが好ましい。
【0039】
図4はインク収容管50を正面図(A)、側面図(B)、底面図(C)及び平面図(D)で示すものであり、図5図4のインク収容管50を前方斜視図(A)及び後方斜視図(B)で示すものである。また、図6は、図5(A)のVIa-VIa断面図(A)及び図6(A)のVIb-VIb断面図(B)である。インク収容管50は、図6(A)に示すように、たとえばポリプロピレンなどの樹脂材料を利用して、前端部から後端部に向かって同一の肉厚によりストレートな筒状に形成されている。
【0040】
インク収容管50の後端部分には、周方向に向かって長手方向を有する矩形の貫通孔52が複数形成されている。具体的には、軸心に対して対向する複数(図面では、図4(B)に示すように2個)の貫通孔52が、前後に複数列(図面では3列)にわたり配置され、これらの複数の貫通孔により弾性領域51が形成されている。この弾性領域51は、貫通孔52の存在で前後方向の脆弱性が増すことで、ボールペンリフィル40に前後方向の力がかかったときに、弾性変形しやすくなっている。なお、貫通孔52は矩形に限られず、前後方向に弾性変形できれば、円形又は楕円形など、他の形状としてもよい。また、貫通孔52の代わりに、肉厚を減じた構造を設けることとしてもよい。
【0041】
図7は、ボールペンチップ60の正面図(A)及び図7(A)のVII-VII断面図(B)である。また、図8は、図7のボールペンチップ60の前方斜視図(A)及び後方斜視図(B)である。ボールペンチップ60は、ステンレス鋼のような金属材料で形成されることが望ましい。ボールペンチップ60は、略円筒形状の中間部62と、中間部62の先端側でテーパ状に成形された先端部61と、中間部62の後端側で外径を減じた後端部64とを有している。先端部61の先端には筆記ボール67が装着されている。筆記ボール67は、超硬合金のような金属材料で形成されることが望ましい。
【0042】
そして、図7(B)に示すように、ボールペンチップ60の内部空間66には、スプリング68が内蔵されている。また、後端部64の一部は内方に塑性変形しており、これにより内方に突出した内方突起65が形成されている。この内方突起65により、スプリング68の後端が係止されている。一方、スプリング68の先端部分は、真っ直ぐな棒状に形成されており、これを押し棒69と称する。この押し棒69は筆記ボール67の後端に当接しており、スプリング68の付勢力で筆記ボール67を前方に押圧している。
【0043】
また、ボールペンチップ60の外周面の一部、具体的には中間部62の中央部付近は、外周面に沿って、軸心方向に厚さを減じた薄肉部分が一周しており、これが凹溝63となっている。この凹溝63は、ボールペンチップ60の表面から軸心方向に凹むように形成されている。凹溝の深さ及び前後方向の長さはいずれも均等となるように形成されている。また、凹溝63の先端縁63aは軸心方向に対して直角となっている(図7(B)参照)。
【0044】
ボールペンチップ60の後端部64は、先述のとおり、継手70の小径部71の内部空間に圧入される(図3(A)及び図3(B)参照)。なお、ボールペンリフィル40に継手70を設けない場合、ボールペンチップ60の後端部64は、インク収容管50の先端に直接圧入される。
【0045】
図9は、図1のボールペンリフィル40を収容したボールペン1を正面図(A)及び側面図(B)にて示す。また、図10は、図9(A)のX-X断面図である。ボールペン1の軸筒10の先端には先細に形成された口金20が装着されている。すなわち、口金20の後端側の内周面には雌ネジ21が形成されており、これが軸筒10の先端に形成されている雄ネジ11と螺合している(図10参照)。軸筒10及び口金20は、ポリカーボネート又はABSのような比較的硬質の合成樹脂材料で形成することが望ましい。なお、口金20は金属材料で形成されることとしてもよい。
【0046】
一方、軸筒10の後端側には、クリップ12を一体に成形したクリップ支持筒13が装着されている。さらに、軸筒10の前端部側の外周面には、エラストマーによる滑り止めが形成され、これが軸筒10の把持部14となっている。
【0047】
図10に示すように、ボールペンリフィル40は、ボールペン1の軸筒10の内部に収容される。また、軸筒10の後端からはノック棒30が突出している。このノック棒30の押圧を繰り返すことで、口金20の先端から、ボールペンリフィル40先端のボールペンチップ60が出没する。すなわち、本実施形態のボールペン1は、いわゆるノック式ボールペンである。
【0048】
図10に示すように、ボールペンリフィル40の後端は、ノック棒30と連接する回転子32と接している。回転子32は、軸筒10の内周面に形成された図示しないカム溝とともに、ボールペンリフィル40の前後方向の出没に関与するノック機構の一部を構成している。一方、口金20とボールペンリフィル40の継手70との間には、ノックスプリング31が介装されている。このノックスプリング31により、ボールペンリフィル40は軸筒内において後方に付勢されている。これにより、ノックスプリング31は、ボールペンリフィル40を介して回転子32及びノック棒30に対しても、後方への付勢力を与えている。
【0049】
上記構成により、ノックスプリング31の付勢力に抗してノック棒30を押圧する操作を繰り返すことにより、口金20の先端からのボールペンチップ60の出没が繰り返される。ここで、図10に示すように、口金20の先端からボールペンチップ60が突出した状態で筆記が行われるとき、ボールペンチップ60が筆記面から受ける圧力は、インク収容管50及び回転子32を介して軸筒10へ伝わることになる。このとき、インク収容管50の後端部分には弾性領域51が形成されているため、この圧力によりこの弾性領域51が前後方向に圧縮される。これにより、ボールペンリフィル40によりクッション効果が付与され、ボールペン1に柔らかい筆記感がもたらされる。
【0050】
図11(A)は、ボールペンリフィル40を廃棄する際、ボールペンチップ60を取り外す操作の例を示し、図11(B)はその要部を拡大断面図で示している。すなわち、口金20の先端開口にボールペンチップ60の先端を挿入して、口金20の後部を軸心方向に対して若干傾けることにより、口金20の先端段差22(図11(B)参照)が、ボールペンチップ60の凹溝63の先端縁63a(図7(B)参照)に係止する。この状態で口金20を引っ張ることで、ボールペンチップ60をインク収容管50から引き抜くことができる。
【0051】
ここで、先述のとおり、凹溝63の先端縁63aが軸心方向に対して直角となっている(図7(B)参照)ことで、この凹溝63にボールペン1の口金20やその他工具の先端部の一部を係止させやすくなっている。これにより、ボールペンチップ60を、インク収容管50から引き抜くのが容易となっている。
【0052】
以上、本実施形態に係るボールペンリフィル40及びボールペン1によると、たとえば樹脂素材により形成されたインク収容管50から金属素材により形成されたボールペンチップ60を容易に引き抜くことができるので、ボールペンリフィル40の素材ごとの分別廃棄が容易になる。これにより、環境への影響に配慮したボールペンリフィル40及びボールペン1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ボールペンリフィル及びこれを使用するボールペンに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 ボールペン
10 軸筒 11 雄ネジ 12 クリップ
13 クリップ支持筒 14 把持部
20 口金 21 雌ネジ 22 先端段差
30 ノック棒 31 ノックスプリング 32 回転子
40 ボールペンリフィル
50 インク収容管 51 弾性領域 52 貫通孔
53 インク 54 インク追従体
60 ボールペンチップ 61 先端部 62 中間部
63 凹溝 63a 先端縁 64 後端部
65 内方突起 66 内部空間 67 筆記ボール
68 スプリング 69 押し棒
70 継手 71 小径部 72 フランジ部
73 大径部
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11