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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173834
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20231130BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20231130BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20231130BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60C11/12 B
B60C11/12 C
B60C11/12 A
B60C9/18 N
B60C11/03 300A
B60C11/01 B
B60C11/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086342
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】国光 真弥
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC34
3D131BC35
3D131BC36
3D131BC40
3D131DA46
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB22V
3D131EB22X
3D131EB27V
3D131EB31V
3D131EB31X
3D131EB86Y
3D131EB87V
3D131EB87X
3D131EB87Y
3D131EB90X
3D131EB91Y
3D131EC12V
3D131EC12X
3D131EC15X
(57)【要約】
【課題】踏面にタイヤ軸方向へ延びる複数のサイプが形成されたショルダー陸の偏摩耗を抑制すると共に、ベルト端におけるセパレーション故障が抑制される空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、側面21において、踏面サイプ40に対してタイヤ周方向の異なる位置に設けられており、タイヤ軸方向の内側に窪んでおり、タイヤ径方向に延びている、複数の側面サイプ60であって、一対の軸方向溝26の間の間隔のうち、タイヤ周方向の中央側に位置する内側側面サイプ60a、及び内側側面サイプ60aよりも軸方向溝26側に位置する外側側面サイプ60bを含んでおり、内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の長さが外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の長さよりも短くなると共に、外側側面サイプ60bからベルト端19までの第1距離X1が8mm以上であるように構成されている、複数の側面サイプ60を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向の外端に位置しており、タイヤ周方向に延びている、トレッドと、
前記トレッドよりもタイヤ径方向の内側に位置しており、タイヤ周方向に延びている、複数のベルトであって、タイヤ軸方向の外端に位置しているベルト端を有している、前記ベルトと、
前記トレッドのタイヤ軸方向の外端に位置している、ショルダー陸であって、前記トレッドのタイヤ径方向の外端に位置している踏面、及び前記踏面よりもタイヤ軸方向の外側に位置している側面を有している、前記ショルダー陸と、
前記ショルダー陸にタイヤ周方向へ間隔をあけて設けられており、前記踏面からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて前記側面で開口している、複数の軸方向溝と、
前記ショルダー陸のタイヤ周方向に隣り合う一対の前記軸方向溝間にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられており、前記踏面からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて前記側面に対して間隔をあけた位置で終端している、複数の踏面サイプと、
前記側面において、前記踏面サイプに対してタイヤ周方向の異なる位置に設けられており、タイヤ軸方向の内側に窪んでおり、タイヤ径方向に延びている、複数の側面サイプであって、前記一対の軸方向溝間の間隔のうち、タイヤ周方向の中央側に位置する内側側面サイプ、及び前記内側側面サイプよりも前記軸方向溝側に位置する外側側面サイプを含んでおり、前記内側側面サイプのタイヤ径方向の長さが前記外側側面サイプのタイヤ径方向の長さよりも短くなると共に、前記外側側面サイプから前記ベルト端までの第1距離が8mm以上であるように構成されている、前記複数の側面サイプと
を備えている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1距離は、前記ベルト端から前記踏面までの第2距離の30%以上80%以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外側側面サイプは、タイヤ径方向の内端からタイヤ軸方向の内端にかけて延びている内壁を有しており、
前記内壁は、前記ベルト端を中心とした曲率半径が前記第1距離である円弧部分を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記円弧部分は、タイヤ径方向に延びる基準線に対して前記基準線からタイヤ軸方向の外側へ10度以上60度以下の範囲で延びており、
前記第1距離は、前記ベルト端から前記側面までの第3距離以下である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記外側側面サイプのタイヤ軸方向の内端の傾斜角度は、タイヤ径方向に延びる基準線に対してタイヤ軸方向の外側に向けて0度以上15度以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記側面サイプのタイヤ周方向の幅は、1.5mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トレッドのタイヤ軸方向の外端に位置するショルダー陸における摩耗抑制を目的とした空気入りタイヤが開示されている。この空気入りタイヤには、ショルダー陸のタイヤ軸方向の外端に位置している側面において、タイヤ軸方向の内側に窪んで、タイヤ径方向に延びてショルダー陸の踏面に対して間隔を空けた位置で終端している第1サイプが形成されている。また、特許文献1には、ショルダー陸のタイヤ径方向の外端に位置する踏面において、タイヤ周方向に隣り合う一対の第1サイプの間の位置に設けられて、タイヤ径方向の内側に窪んで、タイヤ軸方向に延びて側面で開口している第2サイプが形成されている構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
踏面からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて側面で開口している複数の軸方向溝が、ショルダー陸にタイヤ周方向へ間隔をあけて設けられている空気入りタイヤにおいて、上述の第2サイプが設けられている場合、周方向に隣り合う一対の軸方向溝間の中央部分に偏摩耗が生じ易い。これは、踏面に力が作用したとき、一対の軸方向溝間の間隔のうち、タイヤ周方向の外側よりも中央部分の方が、剛性が低下し易く、相対的な変位量も大きくなるためである。よって、特許文献1の空気入りタイヤには、ショルダー陸における偏摩耗対策について改善の余地がある。
【0005】
また、例えば、第1サイプのタイヤ軸方向の深さが大きい場合、トレッドよりもタイヤ径方向の内側に設けられているベルトから第1サイプまでの肉厚が小さくなるため、ベルト端近傍の剛性が低下しやすく、ベルト端にセパレーション故障が発生するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、踏面にタイヤ軸方向へ延びる複数のサイプが形成されたショルダー陸の偏摩耗を抑制すると共に、ベルト端におけるセパレーション故障が抑制される空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、本発明は、タイヤ径方向の外端に位置しており、タイヤ周方向に延びている、トレッドと、
前記トレッドよりもタイヤ径方向の内側に位置しており、タイヤ周方向に延びている、複数のベルトであって、タイヤ軸方向の外端に位置しているベルト端を有している、前記ベルトと、
前記トレッドのタイヤ軸方向の外端に位置している、ショルダー陸であって、前記トレッドのタイヤ径方向の外端に位置している踏面、及び前記踏面よりもタイヤ軸方向の外側に位置している側面を有している、前記ショルダー陸と、
前記ショルダー陸にタイヤ周方向へ間隔をあけて設けられており、前記踏面からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて前記側面で開口している、複数の軸方向溝と、
前記ショルダー陸のタイヤ周方向に隣り合う一対の前記軸方向溝間にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられており、前記踏面からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて前記側面に対して間隔をあけた位置で終端している、複数の踏面サイプと、
前記側面において、前記踏面サイプに対してタイヤ周方向の異なる位置に設けられており、タイヤ軸方向の内側に窪んでおり、タイヤ径方向に延びている、複数の側面サイプであって、前記一対の軸方向溝間の間隔のうち、タイヤ周方向の中央側に位置する内側側面サイプ、及び前記内側側面サイプよりも前記軸方向溝側に位置する外側側面サイプを含んでおり、前記内側側面サイプのタイヤ径方向の長さが前記外側側面サイプのタイヤ径方向の長さよりも短くなると共に、前記外側側面サイプから前記ベルト端までの第1距離が8mm以上であるように構成されている、前記複数の側面サイプと
を備えている、空気入りタイヤを提供する。
【0008】
本発明によれば、踏面サイプに対してタイヤ周方向の異なる位置に内側側面サイプと外側側面サイプが設けられているため、タイヤ周方向の同じ位置に踏面サイプと側面サイプが設けられている場合と比較して、ショルダー陸の過度な剛性低下が抑制される。よって、踏面サイプ及び側面サイプを起点とするクラックの発生が抑制される。
【0009】
また、内側側面サイプのタイヤ径方向の長さが、外側側面サイプのタイヤ径方向の長さよりも短いため、ショルダー陸の一対の軸方向溝間の間隔のうち、タイヤ周方向の外側の剛性をタイヤ周方向の中央部分の剛性よりも低くできる。これにより、一対の軸方向溝間において、タイヤ周方向の剛性バランスを最適化できる。よって、踏面に力が作用した際のタイヤ周方向の変位量を平均化でき、タイヤ周方向の中央部分における偏摩耗が効果的に抑制される。
【0010】
さらに、外側側面サイプからベルト端までの第1距離が8mm以上であるため、外側側面サイプからベルト端までの肉厚が適切に設定されて、ベルト端近傍の剛性が確保される。よって、ベルト端のセパレーション故障が抑制される。
【0011】
また、前記第1距離は、前記ベルト端から前記踏面までの第2距離の30%以上80%以下であってもよい。
【0012】
本構成によれば、第1距離は、ベルト端から踏面までの第2距離の30%以上80%以下であるため、外側側面サイプからベルト端までの肉厚が適切に設定される。よって、ベルト端近傍の剛性が確保されて、ベルト端のセパレーション故障が抑制されると共に、側面の放熱性を向上できる。例えば、第1距離が第2距離の30%未満である場合と比較して、外側側面サイプからベルト端までの肉厚が大きくなるため、ベルト端近傍の剛性が確保される。よって、ベルト端のセパレーション故障が抑制される。また、第1距離が第2距離の30%未満である場合と比較して、外側側面サイプのタイヤ軸方向の深さが小さくなるため、砂や塵埃などが外側側面サイプ内に詰まり難い。よって、外側側面サイプが開口している状態が保たれるため、側面サイプによるタイヤ周方向の剛性バランスを最適化する効果を確実にもたらすことができる。さらに、第1距離が第2距離の80%より大きい場合と比較して、外側側面サイプからベルト端までの肉厚が小さくなるため、外側側面サイプの放熱性が確保される。よって、側面の放熱性を向上できる。
【0013】
また、前記外側側面サイプは、タイヤ径方向の内端からタイヤ軸方向の内端にかけて延びている内壁を有しており、
前記内壁は、前記ベルト端を中心とした曲率半径が前記第1距離である円弧部分を有してもよい。
【0014】
本構成によれば、外側側面サイプのタイヤ径方向の内端からタイヤ軸方向の内端にかけて形成されている内壁は、ベルト端を中心とした曲率半径が第1距離である円弧部分を有するため、外側側面サイプからベルト端までの距離が第1距離である部分の長さを広く確保できる。よって、ベルト端近傍の剛性が確保されて、ベルト端のセパレーション故障が抑制される。
【0015】
また、前記円弧部分は、タイヤ径方向に延びる基準線に対して前記基準線からタイヤ軸方向の外側へ10度以上60度以下の範囲で延びており、
前記第1距離は、前記ベルト端から前記側面までの第3距離以下であってもよい。
【0016】
本構成によれば、ベルト端から側面までの第3距離以下の第1距離を曲率半径とする円弧部分が、タイヤ径方向に延びる基準線に対して基準線からタイヤ軸方向の外側へ10度以上60度以下の範囲で延びているため、曲率半径が第3距離より小さい円弧部分の長さが適切に設定されて、外側側面サイプの放熱性が確保される。よって、上述の外側側面サイプを、第3距離が大きい空気入りタイヤに適用したとしても、側面の放熱性を向上できる。例えば、円弧部分が、タイヤ径方向に延びる基準線に対して基準線からタイヤ軸方向の外側へ60度を超える範囲で延びる場合と比較して、ベルト端近傍の剛性が確保される。よって、ベルト端のセパレーション故障が抑制される。
【0017】
前記外側側面サイプのタイヤ軸方向の内端の傾斜角度は、タイヤ径方向に延びる基準線に対してタイヤ軸方向の外側に向けて0度以上15度以下であってもよい。
【0018】
本構成によれば、外側側面サイプのタイヤ軸方向の内端の傾斜角度は、タイヤ径方向に延びる基準線に対してタイヤ軸方向の外側に向けて0度以上15度以下であるため、円弧部分の長さが適切に設定される。よって、ショルダー陸の剛性が確保されて、踏面サイプ及び側面サイプを起点とするクラックの発生が抑制されると共に、側面の放熱性を向上できる。例えば、傾斜角度が0度より小さい場合と比較して、外側側面サイプから踏面サイプまでの肉厚が大きくなるため、ショルダー陸の剛性が確保される。よって、踏面サイプ及び側面サイプを起点とするクラックの発生が抑制される。また、傾斜角度が15度より大きい場合と比較して、円弧部分の長さが大きくなるため、外側側面サイプの放熱性が確保される。よって、側面の放熱性を向上できる。
【0019】
また、前記側面サイプのタイヤ周方向の幅は、1.5mm以下であってもよい。
【0020】
本構成によれば、側面サイプのタイヤ周方向の幅は、1.5mm以下であるため、側面サイプのタイヤ周方向の幅が1.5mmより大きい場合と比較して、ショルダー陸の過度な剛性低下が抑制される。よって、側面サイプを起点とするクラックの発生が抑制される。
【発明の効果】
【0021】
したがって、本発明に係る空気入りタイヤによれば、踏面にタイヤ軸方向へ延びる複数のサイプが形成されたショルダー陸の偏摩耗を抑制すると共に、ベルト端におけるセパレーション故障が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2図1の空気入りタイヤのトレッドをタイヤ周方向に展開した展開図である。
図3図2のIII部分の拡大図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図2の空気入りタイヤの外側ショルダーブロックと側面をタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に展開した展開図である。
図6図4の第1距離に対するひずみエネルギー密度の関係を示すグラフである。
図7】他の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という)1の子午線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、ライトトラック用、又はトラックバス用のゴム製のタイヤとして構成されている。本実施形態において、タイヤ赤道へ向かう方向をタイヤ軸方向の内側と呼称して、タイヤ赤道から離れる方向をタイヤ軸方向の外側と呼称する。
【0025】
[タイヤの構造]
タイヤ1は、図1における左右方向で示すタイヤ軸方向に延びているトレッド11、トレッド11の両端から図1における上下方向で示すタイヤ径方向の内側にそれぞれ延びている一対のサイドウォール12、及び一対のサイドウォール12のタイヤ径方向の内端にそれぞれ配置されている一対のビード13を備える。
【0026】
トレッド11は、タイヤ1の軸心周りに円筒状に延びるように、図1における裏表方向で示すタイヤ周方向に延びている。
【0027】
ビード13は、それぞれ、タイヤ径方向の内側に配置されているビードコア14、及びビードコア14よりタイヤ径方向の外側に配置されているビードフィラー15を備える。ビードコア14は、リング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー15は、リング状であり、トレッド11とサイドウォール12を構成するゴムよりも硬質のゴムからなる。また、ビードフィラー15は、ビードコア14から、タイヤ径方向の外側へ向けてタイヤ軸方向の外側へ傾斜した方向に延びている。
【0028】
タイヤ1は、トレッド11のタイヤ径方向の内端、サイドウォール12のタイヤ軸方向の内端、及びビード13のタイヤ軸方向の内端にかけて延びているインナーライナ16を備える。このインナーライナ16の外側には、一対のビード13間にトロイダル状に掛け渡されたカーカス17が積層されている。
【0029】
カーカス17は、タイヤ軸方向の外側へ向けてタイヤ径方向の外側へ傾斜した方向にビードコア14の周りで折り返されて、巻き掛けられている。
【0030】
トレッド11とカーカス17との間には、タイヤ周方向に延びるベルト層18が配置されている。
【0031】
ベルト層18は、タイヤ径方向に積層されている複数のベルトプライを有する。本実施形態において、ベルト層18は、2つのベルトプライ、すなわち、タイヤ径方向の内側の第1ベルトプライ18aと、タイヤ径方向の外側の第2ベルトプライ18bを有する。
【0032】
第1ベルトプライ18aのタイヤ軸方向の長さは、第2ベルトプライ18bのタイヤ軸方向の長さよりも長い。本実施形態では、第1ベルトプライ18aのタイヤ軸方向の外端に、本発明に係るベルト層18の最もタイヤ軸方向の外側に位置するベルト端19が構成されている。
【0033】
[トレッド]
図1に示すように、トレッド11は、タイヤ径方向の外端に配置されており、転動時に接地する接地面である踏面20と、踏面20のタイヤ軸方向の外端から、タイヤ軸方向の外側に向けてタイヤ径方向の内側へ傾斜した方向に延びている側面21とを有する。また、トレッド11には、複数の主溝22が、タイヤ軸方向に間隔をあけて、タイヤ周方向に延びている。本実施形態において、複数の主溝22のうち、タイヤ赤道に配置されている1つを中央主溝22aと呼称して、中央主溝22aよりもタイヤ軸方向の外側に配置されている2つをそれぞれ外側主溝22bと呼称する。
【0034】
図2は、図1のタイヤ1のトレッド11をタイヤ周方向に展開した展開図である。トレッド11には、1つの中央主溝22aと一対の外側主溝22bによって、タイヤ周方向に延びる複数の陸23が区画されている。本実施形態では、4列の陸23が区画されているが、主溝22の数と陸23の数は必要に応じて変更が可能である。
【0035】
複数の陸23のうち、中央主溝22aと2つの外側主溝22bのそれぞれとの間に位置する2つをそれぞれセンター陸23aと呼称して、2つの外側主溝22bのそれぞれよりもタイヤ軸方向の外側に位置する2つをそれぞれショルダー陸23bと呼称する。
【0036】
図3は、図2のIII部分の拡大図であり、ショルダー陸23bの周辺を拡大して示している。ショルダー陸23bには、周方向溝24が、ショルダー陸23bの幅の中央を通りタイヤ周方向に延びている。ショルダー陸23bは、それぞれ、周方向溝24によって区画されており、側面21と隣り合うショルダー陸外側列25aと、外側主溝22bと隣り合うショルダー陸内側列25bとを有する。
【0037】
ショルダー陸23bには、それぞれ、タイヤ軸方向に延びる複数の軸方向溝26が、タイヤ周方向に間隔をあけて、タイヤ軸方向に延びている。
【0038】
複数の軸方向溝26のうち、ショルダー陸外側列25aに配置されている軸方向溝26をそれぞれ外側軸方向溝26aと呼称して、ショルダー陸内側列25bに配置されている軸方向溝26をそれぞれ内側軸方向溝26bと呼称する。
【0039】
外側軸方向溝26aのタイヤ軸方向の内端は、それぞれ、周方向溝24に連通している。外側軸方向溝26aのタイヤ軸方向の外端は、それぞれ、側面21で開口しており、タイヤ軸方向の外側へ開放されている。
【0040】
内側軸方向溝26bのタイヤ軸方向の内端は、それぞれ、外側主溝22bに連通している。内側軸方向溝26bのタイヤ軸方向の外端は、それぞれ、周方向溝24に連通している。
【0041】
外側主溝22bの溝幅W1は、周方向溝24の溝幅W2よりも大きい。軸方向溝26の溝幅W3は、外側主溝22bの溝幅W1よりも小さい一方、周方向溝24の溝幅W2よりも大きい。
【0042】
図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図であり、後述する踏面サイプ40と側面サイプ60を通る子午線方向断面図である。外側主溝22bの深さD1は、周方向溝24の深さD2よりも大きい。軸方向溝26の深さD3は、外側主溝22bの深さD1よりも小さい一方、周方向溝24の深さD2と同じである。本実施形態では、周方向溝24の深さD2と軸方向溝26の深さD3は、同じであるが、外側主溝22bの深さD1よりも小さければ、異なっていてもよい。
【0043】
センター陸23aは、それぞれ、センター陸23aのタイヤ径方向の内側に位置しているセンターリブ27と、センターリブ27のタイヤ径方向の外側に位置している複数のセンターブロック28とを有する。ショルダー陸23bは、それぞれ、ショルダー陸23bのタイヤ径方向の内側に位置しているショルダーリブ29と、ショルダーリブ29のタイヤ径方向の外側に位置している複数のショルダーブロック30とを有する。
【0044】
複数のショルダーブロック30のうち、ショルダー陸外側列25aに配置されているショルダーブロック30をそれぞれ外側ショルダーブロック30aと呼称して、ショルダー陸内側列25bに配置されているショルダーブロック30をそれぞれ内側ショルダーブロック30bと呼称する。
【0045】
ショルダー陸23bにおいて、ショルダーリブ29は、側面21及び外側主溝22bによってタイヤ軸方向に区画されている。ショルダー陸外側列25aにおいて、外側ショルダーブロック30aは、側面21、周方向溝24、及びタイヤ周方向に隣り合う一対の外側軸方向溝26aによって区画されている。ショルダー陸内側列25bにおいて、内側ショルダーブロック30bは、周方向溝24、外側主溝22b、及びタイヤ周方向に隣り合う一対の内側軸方向溝26bによって区画されている。
【0046】
図3に示すように、ショルダー陸外側列25aの外側軸方向溝26aの位置と、ショルダー陸内側列25bの内側軸方向溝26bの位置とは、タイヤ周方向に異なっている。これにより、外側ショルダーブロック30aの位置と内側ショルダーブロック30bの位置も、タイヤ周方向に異なっている。
【0047】
本実施形態では、ショルダーブロック30の形状は、タイヤ径方向の外側から見て四角形状であるが、必要に応じて変更可能である。例えば、周方向溝24は、タイヤ周方向に対して直線状に形成されているが、タイヤ周方向に沿ってタイヤ軸方向にジグザグ状に形成されてもよい。また、軸方向溝26は、タイヤ軸方向に沿って直線状に形成されているが、タイヤ軸方向に延びる直線に対して傾斜させてもよく、さらにタイヤ軸方向に沿ってタイヤ周方向にジグザグ状に形成されてもよい。
【0048】
[踏面サイプ]
図3に示すように、それぞれのショルダーブロック30の踏面20には、複数の踏面サイプ40が形成されている。この複数の踏面サイプ40は、ショルダーブロック30のタイヤ周方向に隣り合う一対の軸方向溝26の間にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられており、踏面20からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて側面21に対して間隔をあけた位置で終端している。本実施形態では、それぞれの踏面サイプ40は、タイヤ軸方向に沿って直線状に形成されているが、タイヤ軸方向に延びる直線に対して傾斜するように形成されてもよく、またタイヤ軸方向に沿ってタイヤ周方向にジグザグ状に形成されてもよい。
【0049】
踏面サイプ40は、それぞれ、ショルダーブロック30のタイヤ周方向に隣り合う一対の軸方向溝26の間において、タイヤ周方向に間隔をあけて配置されている。本実施形態では、35mmの周長のショルダーブロック30に対して4本の踏面サイプ40が形成されている。
【0050】
タイヤ周方向に隣り合う踏面サイプ40の間隔は、5mm以上8mm以下であることが好ましい。踏面サイプ40の間隔を5mm未満にすると、踏面20の剛性が過度に低下する一方、踏面サイプ40の間隔を8mmより大きくすると、適切なグリップ力を得ることが困難になる。したがって、隣り合う踏面サイプ40の間隔は、5mm以上8mm以下であることが好ましい。
【0051】
4本の踏面サイプ40のうち、外側ショルダーブロック30aに配置されている踏面サイプ40をそれぞれ外側踏面サイプ40aと呼称して、内側ショルダーブロック30bに配置されている踏面サイプ40をそれぞれ内側踏面サイプ40bと呼称する。
【0052】
外側踏面サイプ40aのタイヤ軸方向の内端は、それぞれ、周方向溝24に対して間隔をあけた位置で終端している。外側踏面サイプ40aのタイヤ軸方向の外端は、それぞれ、側面21に対して間隔をあけた位置で終端している。
【0053】
内側踏面サイプ40bのタイヤ軸方向の内端は、それぞれ、外側主溝22bに対して間隔をあけた位置で終端している。内側踏面サイプ40bのタイヤ軸方向の外端は、それぞれ、周方向溝24に対して間隔をあけた位置で終端している。
【0054】
図4に示すように、踏面サイプ40の深さD4は、外側主溝22bの深さD1、周方向溝24の深さD2、軸方向溝26の深さD3のいずれよりも小さい。本実施形態では、踏面サイプ40の深さD4はすべて同一であるが、外側踏面サイプ40aの深さが内側踏面サイプ40bの深さと異なっていてもよい。
【0055】
[側面]
図1図4に示すように、側面21は、外側ショルダーブロック30aの踏面20のタイヤ軸方向の外端から、タイヤ軸方向の外側に向けてタイヤ径方向の内側へ傾斜した方向に延びている面取り51と、面取り51のタイヤ軸方向の外端から、タイヤ軸方向の外側に向けてタイヤ径方向の内側へさらに傾斜した方向に延びている主部52と、主部52のタイヤ軸方向の外端から、タイヤ径方向の内側に延びてサイドウォール12のタイヤ径方向の外端に繋がる連続部53とを有する。
【0056】
タイヤ径方向に延びる基準線54に対する面取り51の傾斜角度A1は、基準線54に対する主部52の傾斜角度A2よりも大きい。
【0057】
面取り51のタイヤ径方向の長さD5は、外側主溝22bの深さD1、周方向溝24の深さD2、軸方向溝26の深さD3、踏面サイプ40の深さD4のいずれよりも小さい。
【0058】
タイヤ軸方向において、外側踏面サイプ40aのタイヤ軸方向の外端から主部52のタイヤ軸方向の内端までの間隔L1は、面取り51のタイヤ軸方向の長さL2の1.5倍以上である。外側踏面サイプ40aと主部52との間の間隔L1が面取り51の長さL2の1.5倍未満である場合、外側踏面サイプ40aのタイヤ軸方向の外端を起点とするクラックが発生するおそれがある。したがって、外側踏面サイプ40aと主部52との間の間隔L1は、面取り51の長さL2の1.5倍以上であることが好ましい。
【0059】
図5は、外側ショルダーブロック30aと側面21をタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に展開した展開図である。外側ショルダーブロック30aにおける複数の外側踏面サイプ40aのうち、タイヤ周方向の内側に配置されている一対の外側踏面サイプ40aを第1外側踏面サイプ40cと呼称して、タイヤ周方向の外側に配置されている一対の外側踏面サイプ40aを第2外側踏面サイプ40dと呼称する。
【0060】
外側ショルダーブロック30aの踏面20は、一対の第1外側踏面サイプ40cの間に位置する中央領域41、第1外側踏面サイプ40cと第2外側踏面サイプ40dとの間に位置する中間領域42、及び第2外側踏面サイプ40dのタイヤ周方向の外側に位置する外側領域43に分けられる。
【0061】
[側面サイプ]
図3に示すように、側面21の面取り51と主部52には、複数の側面サイプ60が形成されている。この複数の側面サイプ60は、外側踏面サイプ40aに対してタイヤ周方向の異なる位置に設けられており、タイヤ軸方向の内側に窪んでおり、タイヤ径方向に延びている。本実施形態では、外側ショルダーブロック30aに対して4本の側面サイプ60が形成されている。
【0062】
4本の側面サイプ60のうち、タイヤ周方向の内側に配置されている一対の側面サイプ60を内側側面サイプ60aと呼称して、タイヤ周方向の外側に配置されている一対の側面サイプ60を外側側面サイプ60bと呼称する。
【0063】
内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の外端は、それぞれ、面取り51におけるタイヤ径方向の同じ位置で開口しており、タイヤ径方向の外側へ開放されている。
【0064】
内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の内端は、それぞれ、側面21の連続部53に対して間隔をあけた位置で終端している。
【0065】
図5に示すように、内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bは、いずれも外側踏面サイプ40aに対してタイヤ周方向の異なる位置に設けられている。具体的には、内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の外端は、外側ショルダーブロック30aの中間領域42に対応するタイヤ周方向の領域に配置される。外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の外端は、外側ショルダーブロック30aの外側領域43に対応するタイヤ周方向の領域に配置される。
【0066】
内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の長さL3は、外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の長さL4よりも短い。したがって、外側ショルダーブロック30aは、内側側面サイプ60aの長さL3と外側側面サイプ60bの長さL4の寸法差によって、外側ショルダーブロック30aの中央領域41から外側領域43に向けて剛性が漸減するように構成されている。
【0067】
内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の長さL3は、外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の長さL4の0.25倍以上0.45倍以下である。内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の長さL3が外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の長さL4の0.25倍未満である場合、中間領域42の剛性低減が不足するため、外側領域43に偏摩耗が生じるおそれがある。一方、内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の長さL3が外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の長さL4の0.45倍より大きい場合、中間領域42の剛性低減が過度になるため、中央領域41に偏摩耗が生じるおそれがある。したがって、内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の長さL3は、外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の長さL4の0.25倍以上0.45倍以下であることが好ましい。
【0068】
本実施形態において、内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bはそれぞれ、タイヤ径方向の内側に向けて、一対の外側軸方向溝26aの間のタイヤ周方向の中央側、すなわち外側ショルダーブロック30aの中心線61側に傾斜している。本実施形態では、内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bはそれぞれ、タイヤ径方向の外端から内端まで、タイヤ径方向に直線状に延びているが、タイヤ径方向の内側に向けて中心線61に近づくように湾曲してもよい。
【0069】
内側側面サイプ60aの傾斜角度A3と外側側面サイプ60bの傾斜角度A4は、中心線61に対して5度以上15度以下である。内側側面サイプ60aの傾斜角度A3と外側側面サイプ60bの傾斜角度A4が中心線61に対して5度未満である場合、内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bが中心線61に沿って延びることになるため、外側ショルダーブロック30aの中央領域41から外側領域43に向けて剛性が漸減することが難しくなる。内側側面サイプ60aの傾斜角度A3と外側側面サイプ60bの傾斜角度A4が中心線61に対して15度より大きい場合、タイヤ径方向の外側から見て、短尺な内側側面サイプ60aと長尺な外側側面サイプ60bとに重なる部分が生じるため、中間領域42の剛性低減が過度になる。したがって、内側側面サイプ60aの傾斜角度A3と外側側面サイプ60bの傾斜角度A4は、中心線61に対して5度以上15度以下であることが好ましい。本実施形態では、内側側面サイプ60aの傾斜角度A3と外側側面サイプ60bの傾斜角度A4は、同一であるが、上記の範囲内であれば、異なっていてもよい。
【0070】
内側側面サイプ60aのタイヤ周方向の幅W4と外側側面サイプ60bのタイヤ周方向の幅W5は、互いに同じ寸法であると共に、1.5mm以下である。ここで、タイヤ周方向の幅W4,W5とは、厳密にタイヤ周方向に沿った方向の側面サイプ60の側壁の間の間隔ではなく、内側側面サイプ60aの傾斜角度A3と外側側面サイプ60bの傾斜角度A4に対して直交する方向の側面サイプ60の側壁の間の間隔を意味する。内側側面サイプ60aのタイヤ周方向の幅W4と外側側面サイプ60bのタイヤ周方向の幅W5が1.5mmより大きい場合、外側ショルダーブロック30aの剛性低減が過度になるため、外側ショルダーブロック30a全体の摩耗が著しく進行するおそれがある。したがって、内側側面サイプ60aのタイヤ周方向の幅W4と外側側面サイプ60bのタイヤ周方向の幅W5は、1.5mm以下、特に0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましい。例えば、内側側面サイプ60aのタイヤ周方向の幅W4と外側側面サイプ60bのタイヤ周方向の幅W5は、0.6mm、0.8mmであってもよい。
【0071】
図4に示すように、外側側面サイプ60bは、タイヤ径方向の内端からタイヤ軸方向の内端にかけて延びている内壁62を有する。この内壁62は、タイヤ径方向の内端からタイヤ軸方向の内端に向けて、ベルト端19のタイヤ径方向の外端を中心として、タイヤ軸方向の内側に向けてタイヤ径方向の外側へ延びている円弧部分63を有する。この円弧部分63のベルト端19を中心とした曲率半径は、8mm以上の第1距離X1である。
【0072】
第1距離X1が8mm以上であることによって、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が適切に設定されて、ベルト端19近傍の剛性が確保される。
【0073】
図6は、第1距離X1に対するひずみエネルギー密度の関係を示すグラフである。横軸は第1距離X1を示しており、縦軸はひずみエネルギー密度を示す。図6のグラフは、タイヤ1の構造に生じるひずみエネルギー密度を算出する有限要素法による静的構造解析(FEM解析)の結果を示す。具体的には、外側側面サイプ60bを有していないタイヤモデルと、第1距離X1が2mm,3mm~11mmである外側側面サイプ60bを有するタイヤモデルを合計11種類用意して、同一の空気圧を与えると共に、同一の荷重を与える条件における、それぞれのタイヤモデルを静止した状態で接地させたときのベルト端19にかかるひずみエネルギー密度を計算した。
【0074】
本願発明の出願人の研究により、ひずみ密度エネルギーが130%を超えるとき、ベルト端19のセパレーション故障が増える傾向にあることが分かっている。図示するように、第1距離X1が7mm以下の場合、ひずみ密度エネルギーが130%を超えるため、ベルト端19のセパレーション故障が増える。したがって、ひずみ密度エネルギーが130%未満となるように、第1距離X1は8mm以上であることが好ましい。
【0075】
図4に示すように、第1距離X1は、ベルト端19から踏面20までのタイヤ径方向の第2距離X2の30%以上80%以下である。第1距離X1が第2距離X2の30%以上80%以下であるので、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が適切に設定されて、ベルト端19近傍の剛性が確保されると共に、外側側面サイプ60bの放熱性が確保される。第1距離X1が第2距離X2の30%未満である場合、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が過度に小さくなるため、ベルト端19近傍の剛性が著しく低下して、ひずみエネルギー密度が著しく大きくなる。また、外側側面サイプ60bのタイヤ軸方向の深さが大きくなるため、砂や塵埃などが外側側面サイプ60b内に詰まり易くなる。第1距離X1が第2距離X2の80%より大きい場合、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が過度に大きくなるため、外側側面サイプ60bの放熱性が著しく低下する。したがって、第1距離X1は第2距離X2の30%以上80%以下であることが好ましい。
【0076】
本実施形態では、第1距離X1は第2距離X2の30%以上80%以下であるが、好ましくは、40%以上60%以下であってもよい。この場合、ベルト端19近傍の剛性と、外側側面サイプ60bの放熱性がさらに改善される。
【0077】
本実施形態では、円弧部分63は、タイヤ軸方向の外側に向けて、ベルト端19を中心として、基準線54に対して基準線54からタイヤ軸方向の外側へ10度以上60度以下の範囲で延びているが、好ましくは、基準線54に対して基準線54からタイヤ軸方向の外側へ10度以上30度以下の範囲で延びていてもよい。また、側面21の連続部53は、タイヤ径方向の内端から外端に向けて、ベルト端19を中心として、タイヤ軸方向の内側に向けてタイヤ径方向の外側へ延びている円弧部分64を有する。この円弧部分64のベルト端19を中心とした曲率半径は、10mm以上20mm以下の第3距離X3である。
【0078】
上述の第1距離X1は第3距離X3以下である。第3距離X3以下の第1距離X1を曲率半径とする円弧部分63が、基準線54に対して基準線54からタイヤ軸方向の外側へ10度以上60度以下の範囲で延びていることによって、曲率半径が第3距離X3より小さい円弧部分63の長さが適切に設定されて、外側側面サイプ60bの放熱性が確保される。第1距離X1の寸法が第3距離X3の寸法より大きい場合、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が過度に大きくなるため、外側側面サイプ60bの放熱性が著しく低下する。したがって、第1距離X1は第3距離X3以下であることが好ましい。
【0079】
本実施形態において、内側側面サイプ60aの溝底と外側側面サイプ60bの溝底はそれぞれ、タイヤ径方向の内側に向けてタイヤ軸方向の外側に傾斜している。
【0080】
内側側面サイプ60aの溝底の基準線54に対する傾斜角度A5は、側面21の主部52の基準線54に対する傾斜角度と同じである。一方、外側側面サイプ60bの溝底の基準線54に対する傾斜角度A6は、0度以上15度以下である。外側側面サイプ60bの溝底の基準線54に対する傾斜角度A6が0度以上15度以下であることによって、円弧部分63の長さが適切に設定されて、ショルダー陸23bの剛性が確保されると共に、外側側面サイプ60bの放熱性が確保される。外側側面サイプ60bの溝底の基準線54に対する傾斜角度A6が0度未満である場合、外側側面サイプ60bから外側踏面サイプ40aまでの肉厚が過度に小さくなるため、ショルダー陸23bの剛性が著しく低下して、外側踏面サイプ40a及び外側側面サイプ60bを起点とするクラックが発生するおそれがある。外側側面サイプ60bの溝底の基準線54に対する傾斜角度A6が15度より大きい場合、外側側面サイプ60bの円弧部分63の長さが過度に小さくなるため、外側側面サイプ60bの放熱性が著しく低下する。したがって、外側側面サイプ60bの溝底の基準線54に対する傾斜角度A6は、0度以上15度以下であることが好ましい。
【0081】
本実施形態において、内側側面サイプ60aの幅W4は、内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6の0.5倍以上1.0倍以下である。内側側面サイプ60aの幅W4が、内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6の0.5倍未満である場合、外側ショルダーブロック30aの剛性低減が不足する。内側側面サイプ60aの幅W4が、内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6の1.0倍より大きい場合、タイヤ周方向に隣り合う内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bが干渉するうえ、外側ショルダーブロック30aの剛性低減が過度になる。したがって、内側側面サイプ60aの幅W4は、内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6の0.5倍以上1.0倍以下であることが好ましい。
【0082】
本実施形態において、内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6は、面取り51のタイヤ軸方向の長さL2の0.25倍以上0.75倍以下である。内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6が、面取り51のタイヤ軸方向の長さL2の0.25倍未満である場合、外側ショルダーブロック30aの剛性低減が不足する。内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6が、面取り51のタイヤ軸方向の長さL2の0.75倍より大きい場合、縁石や段差等に対する内側側面サイプ60aの耐外傷性が低下する。したがって、内側側面サイプ60aのタイヤ軸方向の深さD6は、面取り51のタイヤ軸方向の長さL2の0.25倍以上0.75倍以下であることが好ましい。
【0083】
以上のように、本実施形態では、複数の外側踏面サイプ40aを備える外側ショルダーブロック30aの側面21に、タイヤ径方向の長さL3,L4が異なる内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bが配置されている。これらの内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bがない場合、複数の外側踏面サイプ40aによって、外側ショルダーブロック30aの側面21における剛性はタイヤ周方向の中央が最も低くなり、踏面20に作用した力による変位量が最も大きくなるため、偏摩耗が生じ易い。これに対して、本実施形態では、内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bが配置されていることによって、外側ショルダーブロック30aの側面21における剛性を外側ショルダーブロック30aの中心線61側からタイヤ周方向の外側に向けて漸減できるため、外側ショルダーブロック30aのタイヤ周方向の剛性バランスを最適化できる。その結果、外側ショルダーブロック30aの中央領域41における偏摩耗が抑制される。また、摩耗初期から摩耗中期にかけて、外側ショルダーブロック30aの中央領域41における剛性低下も防止できる。
【0084】
このように構成した空気入りタイヤ1は、以下の特徴を有する。
【0085】
外側踏面サイプ40aに対してタイヤ周方向の異なる位置に内側側面サイプ60aと外側側面サイプ60bが設けられているため、タイヤ周方向の同じ位置に外側踏面サイプ40aと側面サイプ60が設けられている場合と比較して、ショルダー陸23bの過度な剛性低下が抑制される。よって、外側踏面サイプ40a及び側面サイプ60を起点とするクラックの発生が抑制される。
【0086】
また、内側側面サイプ60aのタイヤ径方向の長さL3が、外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の長さL4よりも短いため、ショルダー陸23bの一対の外側軸方向溝26aの間の間隔のうち、タイヤ周方向の外側に位置する外側領域43における剛性をタイヤ周方向の中央部分に位置する中央領域41の剛性よりも低くできる。これにより、一対の外側軸方向溝26aの間において、タイヤ周方向の剛性バランスを最適化できる。よって、踏面20に力が作用した際のタイヤ周方向の変位量を平均化でき、タイヤ周方向の中央部分における偏摩耗が効果的に抑制される。
【0087】
さらに、外側側面サイプ60bからベルト端19までの第1距離X1が8mm以上であるため、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が適切に設定されて、ベルト端19近傍の剛性が確保される。よって、ベルト端19のセパレーション故障が抑制される。
【0088】
第1距離X1は、ベルト端19から踏面20までの第2距離X2の30%以上80%以下であるため、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が適切に設定される。よって、ベルト端19近傍の剛性が確保されて、ベルト端19のセパレーション故障が抑制されると共に、側面21の放熱性を向上できる。例えば、第1距離X1が第2距離X2の30%未満である場合と比較して、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が大きくなるため、ベルト端19近傍の剛性が確保される。よって、ベルト端19のセパレーション故障が抑制される。また、第1距離X1が第2距離X2の30%未満である場合と比較して、外側側面サイプ60bのタイヤ軸方向の深さが小さくなるため、砂や塵埃などが外側側面サイプ60b内に詰まり難い。よって、外側側面サイプ60bが開口している状態が保たれるため、側面サイプ60によるタイヤ周方向の剛性バランスを最適化する効果を確実にもたらすことができる。さらに、第1距離X1が第2距離X2の80%より大きい場合と比較して、外側側面サイプ60bからベルト端19までの肉厚が小さくなるため、外側側面サイプ60bの放熱性が確保される。よって、側面21の放熱性を向上できる。
【0089】
外側側面サイプ60bのタイヤ径方向の内端からタイヤ軸方向の内端にかけて形成されている内壁62は、ベルト端19を中心とした曲率半径が第1距離X1である円弧部分63を有するため、外側側面サイプ60bからベルト端19までの距離が第1距離X1である部分の長さを広く確保できる。よって、ベルト端19近傍の剛性が確保されて、ベルト端19のセパレーション故障が抑制される。
【0090】
ベルト端19から側面21までの第3距離X3以下の第1距離X1を曲率半径とする円弧部分63が、タイヤ径方向に延びる基準線54に対して基準線54からタイヤ軸方向の外側へ10度以上60度以下の範囲で延びているため、曲率半径が第3距離X3より小さい円弧部分63の長さが適切に設定されて、外側側面サイプ60bの放熱性が確保される。よって、上述の外側側面サイプ60bを、第3距離X3が大きい空気入りタイヤ1に適用したとしても、側面21の放熱性を向上できる。例えば、円弧部分63が、タイヤ径方向に延びる基準線54に対して基準線54からタイヤ軸方向の外側へ60度を超える範囲で延びる場合と比較して、ベルト端近傍の剛性が確保される。よって、ベルト端19のセパレーション故障が抑制される。
【0091】
外側側面サイプ60bのタイヤ軸方向の内端の傾斜角度A6は、タイヤ径方向に延びる基準線54に対してタイヤ軸方向の外側に向けて0度以上15度以下であるため、円弧部分63の長さが適切に設定される。よって、ショルダー陸23bの剛性が確保されて、外側踏面サイプ40a及び外側側面サイプ60bを起点とするクラックの発生が抑制されると共に、側面21の放熱性を向上できる。例えば、傾斜角度A6が0度より小さい場合と比較して、外側側面サイプ60bから外側踏面サイプ40aまでの肉厚が大きくなるため、ショルダー陸23bの剛性が確保される。よって、外側踏面サイプ40a及び外側側面サイプ60bを起点とするクラックの発生が抑制される。また、傾斜角度A6が15度より大きい場合と比較して、円弧部分63の長さが大きくなるため、外側側面サイプ60bの放熱性が確保される。よって、側面21の放熱性を向上できる。
【0092】
側面サイプ60のタイヤ周方向の幅は、1.5mm以下であるため、側面サイプ60のタイヤ周方向の幅が1.5mmより大きい場合と比較して、ショルダー陸23bの過度な剛性低下が抑制される。よって、側面サイプ60を起点とするクラックの発生が抑制される。
【0093】
なお、本発明は、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0094】
例えば、上述の実施形態では、ベルト層18は、2つのベルトプライ、第1ベルトプライ18aと第2ベルトプライ18bを有するが、異なる数のベルトプライを有してもよい。
【0095】
図7は、他の実施形態に係るタイヤ101の子午線断面図である。タイヤ101のベルト層118は、4つのベルトプライ、すなわち、最もタイヤ径方向の内側に配置されている第1ベルトプライ118a、及び第1ベルトプライ118aよりもタイヤ径方向の外側に配置されている第2ベルトプライ118b、第2ベルトプライ118bよりもタイヤ径方向の外側に配置されている第3ベルトプライ118c、及び第3ベルトプライ118cよりもタイヤ径方向の外側に配置されている第4ベルトプライ118dを有する。図示するように、第2ベルトプライ118bのタイヤ軸方向の長さは、他の第1ベルトプライ118a、第3ベルトプライ118c、及び第4ベルトプライ118dよりも長い。したがって、第1ベルトプライ1118aのタイヤ軸方向の外端は、ベルト層118の最もタイヤ軸方向の外側に位置するベルト端119である。
【0096】
また、空気入りタイヤ1は、側面21が面取り51を備えるテーパーショルダータイプに限定されず、面取りがないボックスショルダータイプであってもよい。
【0097】
本発明の第1の態様は、タイヤ径方向の外端に位置しており、タイヤ周方向に延びている、トレッドと、
前記トレッドよりもタイヤ径方向の内側に位置しており、タイヤ周方向に延びている、複数のベルトであって、タイヤ軸方向の外端に位置しているベルト端を有している、前記ベルトと、
前記トレッドのタイヤ軸方向の外端に位置している、ショルダー陸であって、前記トレッドのタイヤ径方向の外端に位置している踏面、及び前記踏面よりもタイヤ軸方向の外側に位置している側面を有している、前記ショルダー陸と、
前記ショルダー陸にタイヤ周方向へ間隔をあけて設けられており、前記踏面からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて前記側面で開口している、複数の軸方向溝と、
前記ショルダー陸のタイヤ周方向に隣り合う一対の前記軸方向溝間にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられており、前記踏面からタイヤ径方向の内側に窪んでおり、タイヤ軸方向に延びて前記側面に対して間隔をあけた位置で終端している、複数の踏面サイプと、
前記側面において、前記踏面サイプに対してタイヤ周方向の異なる位置に設けられており、タイヤ軸方向の内側に窪んでおり、タイヤ径方向に延びている、複数の側面サイプであって、前記一対の軸方向溝間の間隔のうち、タイヤ周方向の中央側に位置する内側側面サイプ、及び前記内側側面サイプよりも前記軸方向溝側に位置する外側側面サイプを含んでおり、前記内側側面サイプのタイヤ径方向の長さが前記外側側面サイプのタイヤ径方向の長さよりも短くなると共に、前記外側側面サイプから前記ベルト端までの第1距離が8mm以上であるように構成されている、前記複数の側面サイプと
を備えている、空気入りタイヤを提供する。
【0098】
本発明の第2の態様は、前記第1距離は、前記ベルト端から前記踏面までの第2距離の30%以上80%以下である、第1の態様に記載の空気入りタイヤを提供する。
【0099】
本発明の第3の態様は、前記外側側面サイプは、タイヤ径方向の内端からタイヤ軸方向の内端にかけて延びている内壁を有しており、
前記内壁は、前記ベルト端を中心とした曲率半径が前記第1距離である円弧部分を有する、第1の態様又は第2の態様に記載の空気入りタイヤを提供する。
【0100】
本発明の第4の態様は、前記円弧部分は、タイヤ径方向に延びる基準線に対して前記基準線からタイヤ軸方向の外側へ10度以上60度以下の範囲で延びており、
前記第1距離は、前記ベルト端から前記側面までの第3距離以下である、第3の態様に記載の空気入りタイヤを提供する。
【0101】
本発明の第5の態様は、前記外側側面サイプのタイヤ軸方向の内端の傾斜角度は、タイヤ径方向に延びる基準線に対してタイヤ軸方向の外側に向けて0度以上15度以下である、第1の態様から第4の態様のいずれかに記載の空気入りタイヤを提供する。
【0102】
本発明の第6の態様は、前記側面サイプのタイヤ周方向の幅は、1.5mm以下である、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載の空気入りタイヤを提供する。
【符号の説明】
【0103】
1 空気入りタイヤ
11 トレッド
12 サイドウォール
13 ビード
14 ビードコア
15 ビードフィラー
16 インナーライナ
17 カーカス
18 ベルト層
18a 第1ベルトプライ
18b 第2ベルトプライ
19 ベルト端
20 踏面
21 側面
22 主溝
22a 中央主溝
22b 外側主溝
23 陸
23a センター陸
23b ショルダー陸
24 周方向溝
25a ショルダー陸外側列
25b ショルダー陸内側列
26 軸方向溝
26a 外側軸方向溝
26b 内側軸方向溝
27 センターリブ
28 センターブロック
29 ショルダーリブ
30 ショルダーブロック
30a 外側ショルダーブロック
30b 内側ショルダーブロック
40 踏面サイプ
40a 外側踏面サイプ
40b 内側踏面サイプ
40c 第1外側踏面サイプ
40d 第2外側踏面サイプ40d
41 中央領域
42 中間領域
43 外側領域
51 面取り
52 主部
53 連続部
54 基準線
60 側面サイプ
60a 内側側面サイプ
60b 外側側面サイプ
61 中心線
62 内壁
63 円弧部分
64 円弧部分
W1 溝幅
W2 溝幅
W3 溝幅
W4 幅
W5 幅
D1 深さ
D2 深さ
D3 深さ
D4 深さ
D5 長さ
D6 深さ
A1 傾斜角度
A2 傾斜角度
A3 傾斜角度
A4 傾斜角度
A5 傾斜角度
A6 傾斜角度
L1 間隔
L2 長さ
L3 長さ
L4 長さ
X1 第1距離
X2 第2距離
X3 第3距離
101 タイヤ
118 ベルト層
118a 第1ベルトプライ
118b 第2ベルトプライ
118c 第3ベルトプライ
118d 第4ベルトプライ
119 ベルト端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7