IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 黒崎播磨株式会社の特許一覧 ▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コークス炉用潤滑材 図1
  • 特開-コークス炉用潤滑材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173841
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】コークス炉用潤滑材
(51)【国際特許分類】
   C10B 27/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C10B27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086352
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 寛直
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛人
(72)【発明者】
【氏名】境田 道隆
(72)【発明者】
【氏名】石井 賢生
(57)【要約】
【課題】燃焼室を溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室をそれぞれ珪石れんがで構築したコークス炉において、溶融シリカ質プレキャストブロックや珪石れんがの損傷を抑制できるコークス炉用潤滑材を提供する。
【解決手段】球形状のアルミナ粒子を91質量以上95質量%以下、有機糊材を5質量%以上9質量%以下含み、前記アルミナ粒子の粒度構成は、粒径0.5mm以上1mm未満の粗粒が70質量%以上80質量%以下、粒径0.3mm以上0.5mm未満の中粗粒が10質量%以上20質量%以下、粒径0.070mm未満の微粒が10質量%以上20質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を、溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室を、それぞれ珪石れんがで構築しているコークス炉において、前記溶融シリカ質プレキャストブロックと前記珪石れんがとの接合部に施工するコークス炉用潤滑材であって、
球形状のアルミナ粒子を91質量以上95質量%以下、有機糊材を5質量%以上9質量%以下含み、
前記アルミナ粒子の粒度構成は、粒径0.5mm以上1mm未満の粗粒が70質量%以上80質量%以下、粒径0.3mm以上0.5mm未満の中粗粒が10質量%以上20質量%以下、粒径0.070mm未満の微粒が10質量%以上20質量%以下である、コークス炉用潤滑材。
【請求項2】
前記有機糊材は澱粉である、請求項1に記載のコークス炉用潤滑材。
【請求項3】
前記アルミナ粒子の純度は99.9%以上である、請求項1又は2に記載のコークス炉用潤滑材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉に用いられるコークス炉用潤滑材に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は、蓄熱室と、蓄熱室の上側に設けられる燃焼室及び炭化室とを有しており、石炭をコークス化する炭化室と、炭化室に熱を供給する燃焼室とが交互に配置される構成を有する。コークス炉は、燃焼室からの熱をれんがの伝熱を用いて炭化室に供給し、炭化室内の石炭を乾留してコークスを製造する設備である。なお、以下本明細書では「燃焼室及び炭化室」を総称して単に「燃焼室」という。特許請求の範囲においても同様である。また、本発明において「蓄熱室」は「蛇腹部」を含むものとする。
【0003】
近年、コークス炉の築炉を簡易にするために、大型のプレキャストブロックで燃焼室を構築する施工方法が採られることがある(例えば特許文献1)。この場合、コークス炉の施工現場では、まず珪石れんがで蓄熱室を構築し、その上に大型の溶融シリカ質プレキャストブロックで燃焼室を構築し、さらにその上に珪石れんがで炉頂部を構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-222758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、燃焼室を溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室をそれぞれ珪石れんがで構築したコークス炉の操業状態を詳しく観察した結果、次のような問題現象に気が付いた。すなわち、燃焼室を溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室をそれぞれ珪石れんがで構築したコークス炉の場合、溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがの熱膨張の挙動が異なるため、珪石れんがの膨張に溶融シリカ質プレキャストブロックが追従し溶融シリカ質プレキャストブロックが動くことにより摩擦が発生し、珪石れんがと溶融シリカ質プレキャストブロックに負荷がかかり、珪石れんがや溶融シリカブロックが損傷する可能性があることがわかった。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、燃焼室を溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室をそれぞれ珪石れんがで構築したコークス炉において、溶融シリカ質プレキャストブロックや珪石れんがの損傷を抑制するコークス炉用潤滑材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、燃焼室を溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室をそれぞれ珪石れんがで構築したコークス炉の操業状態を詳しく観察したところ、当該コークス炉の操業中、溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがとの接合部は1000℃程度の高温になることがわかった。そこで、本発明者らは1000℃程度の高温状態において溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんが間の摩擦を低減するために、溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがとの接合部に、球形状のアルミナ粒子を主体とする潤滑材を施工するという発想を得た。そして本発明者らは、コークス炉における溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがとの接合部という特有の事情、すなわち、接合部の温度条件、荷重条件、厚み条件等、さらに溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがの材質等の事情を総合的に検討し、溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんが間の摩擦を低減すると共に施工時の作業性と施工後の耐熱変形性を確保するために、球形状のアルミナ粒子の粒度構成を特定し、かつ球形状のアルミナ粒子と合せて使用するバインダーの種類と使用量を特定することで、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一観点によれば、次のコークス炉用潤滑材が提供される。
燃焼室を、溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室を、それぞれ珪石れんがで構築しているコークス炉において、前記溶融シリカ質プレキャストブロックと前記珪石れんがとの接合部に施工するコークス炉用潤滑材であって、
球形状のアルミナ粒子を91質量以上95質量%以下、有機糊材を5質量%以上9質量%以下含み、
前記アルミナ粒子の粒度構成は、粒径0.5mm以上1mm未満の粗粒が70質量%以上80質量%以下、粒径0.3mm以上0.5mm未満の中粗粒が10質量%以上20質量%以下、粒径0.070mm未満の微粒が10質量%以上20質量%以下である、コークス炉用潤滑材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃焼室を溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室をそれぞれ珪石れんがで構築したコークス炉において、溶融シリカ質プレキャストブロックや珪石れんがの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】潤滑性の評価に用いる評価サンプルの概念図。
図2】潤滑性の評価方法を示すに概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコークス炉用潤滑材(以下、単に「潤滑材」という。)は、燃焼室を、溶融シリカ質プレキャストブロックで構築し、燃焼室上側の炉頂部及び燃焼室下側の蓄熱室を、それぞれ珪石れんがで構築しているコークス炉において、プレキャストブロック構造体と珪石れんがとの接合部に施工するものである。
【0012】
溶融シリカ質プレキャストブロックは、原料配合において主原料として溶融シリカを配合して得られるプレキャストブロックである。具体的に原料配合において溶融シリカの配合量は、概ね65質量%以上とすることができる。溶融シリカは、粉砕した原料珪石を高温の火炎中で溶融し、表面張力により球形状化させた白色粉体である。このように溶融シリカが主成分である溶融シリカ質プレキャストブロックの200~800℃の間での熱膨張率は0.1%以下となる。
一方、珪石れんがは、岩石状の珪石を骨材としたれんがである。このように珪石が主成分である珪石れんがの200~800℃の間での熱膨張率は1.2%程度となる。
【0013】
従来、コークス炉において材質の違うれんが間でスライドし、れんが材質の違いに起因する熱膨張差による珪石れんがや粘土れんがの損傷を抑制できる構造が知られていた。しかし、この技術は珪石れんがと粘土れんがの間において適用され、概ね600℃程度にて機能させるため、グラファイトの固体潤滑性を主として利用し、このグラファイトに有機ペースト等を加えることで施工性を調整した潤滑材が用いられていた。
本発明では、溶融シリカ質プレキャストブロックの特性を発揮させるコークス炉を安価に構築するため、溶融シリカ質プレキャストブロックの適用範囲を最小限に抑えようと考えた場合には、コークス炉の燃焼室のみを溶融シリカ質プレキャストブロックにて構築し、それ以外の範囲、すなわちソールフリュー、蓄熱室、蛇腹部、炉頂は珪石れんが及び粘土れんがにて構築するコークス炉において、溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがの境界面は蛇腹部最上部となり、この部位の操業中の温度は1000℃に達することが問題となる。このような温度では従来技術であるグラファイトを主とした潤滑材では、その主たる成分であるグラファイトが酸化消失してしまい、潤滑材としての機能を消失する問題があった。
このような問題に対して、本発明では、従来のグラファイトを主とした潤滑材に代えて球形状のアルミナ粒子を主とした潤滑材を施工する。その施工厚みは、従来と同様に2~4mm程度とする。また、溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがとの接合部には、通常0.1MPa程度の垂直荷重が作用する。さらに上述の通りコークス炉の操業中、溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがとの接合部は1000℃程度の高温になる。本発明では、このようなコークス炉における溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがとの接合部という特有の事情、すなわち、接合部の温度条件、荷重条件、厚み条件等、さらに溶融シリカ質プレキャストブロックと珪石れんがの材質等の事情を総合的に検討して、潤滑材の構成を特定した。以下、具体的に説明する。
【0014】
本発明の潤滑材は、球形状のアルミナ粒子を91質量以上95質量%以下、有機糊材を5質量%以上9質量%以下含む。このように本発明の潤滑材は、典型的には球形状のアルミナ粒子と有機糊材のみからなり、施工時に適量の水を添加する。水の添加量は、潤滑材100質量%に対して外掛けで7~12質量%程度とすることができる。
【0015】
本発明の課題は上述の通り、溶融シリカ質プレキャストブロックや珪石れんがの損傷を抑制することにありこの課題を解決するため本発明の潤滑材に求められる機能は、第一に、溶融シリカブロックと珪石れんがとの間の摩擦を低減することにある。また、この摩擦低減の機能(以下「潤滑性」という。)をコークス炉の操業中にいかんなく発揮できるように、1000℃の温度で変性せず、しかも溶融シリカ質プレキャストブロック又は珪石れんがと反応して低融点物質等の他の物質を生成しにくいこと(以下「熱安定性」という。)も求められる。そして、潤滑材を施工する際の作業性としてコテ塗りが行いやすいこと(以下「作業性」という。)も求められる。さらに、施工後に加熱により変形しにくく潤滑材の厚みが保てること(以下「耐熱変形性」という。)も求められる。
【0016】
本発明では、潤滑性を確保するために球形状粒子を使用することとし、さらに熱安定性を確保するために球形状粒子の材質をアルミナとし、しかも粒径0.5mm以上1mm未満の粗粒を主として使用し、これに粒径0.3mm以上0.5mm未満の中粗粒及び粒径0.070mm未満の微粒を適量組み合わせることとした。すなわち、アルミナは1000℃の温度で変性せず、溶融シリカ質プレキャストブロック又は珪石れんがと反応して低融点物質等の他の物質を生成しにくい。したがって、潤滑材の化学変化や形状変形による潤滑機能の低下が生じない。そして、粗粒を主として使用することにより粒子間で焼結が起きることもなく、さらに中粗粒及び微粒を適量組み合わせることにより、潤滑材全体としてベアリング効果が発揮され潤滑性を安定的に確保することができる。
【0017】
また、微粒は作業性及び耐熱変形性の向上にも寄与する。すなわち、微粒が適量含まれていると潤滑材が滑らかになり、コテ塗りが行いやすくなる。また、粗粒や中粗粒の間の隙間に微粒が充填されるので、施工後の形状を保ちやすくなる。
【0018】
以上の観点から、本発明の潤滑材は、球形状のアルミナ粒子を91質量以上95質量%以下含むものとし、この球形状のアルミナ粒子の粒度構成を、粒径0.5mm以上1mm未満の粗粒が70質量%以上80質量%以下、粒径0.3mm以上0.5mm未満の中粗粒が10質量%以上20質量%以下、粒径0.070mm未満の微粒が10質量%以上20質量%以下とした。言い換えれば本発明の潤滑材は、球形状のアルミナ粒子を91質量以上95質量%以下含み、球形状のアルミナ粒子は、当該球形状のアルミナ粒子100質量%に占める割合で、粒径0.5mm以上1mm未満の粗粒を70質量%以上80質量%以下、粒径0.3mm以上0.5mm未満の中粗粒を10質量%以上20質量%以下、粒径0.070mm未満の微粒を10質量%以上20質量%以下含む。
【0019】
ここで、本発明において「球形状のアルミナ粒子」とは、真球度が1.0~1.5の中実のアルミナ粒子のことをいい、例えば、市販されている球状アルミナ、アルミナボール等が挙げられる。また、「真球度」とは、走査式電子顕微鏡(SEM)による画像解析法による二値化測定法で測定した任意の10個のアルミナ粒子について、それぞれの最大径と最小径との比を求め、算術平均値(n=10)したものとする。なお、以下の説明では「球形状のアルミナ粒子」を単に「アルミナ粒子」という。
【0020】
本発明において、アルミナ粒子の粒度構成として粒径0.070mm以上0.3mm未満の中粒の割合は特に規定していないが、本発明の潤滑材は、中粒のアルミナ粒子を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本発明においてアルミナ粒子の純度は、特に熱安定性を確保する観点から99.9%以上であることが好ましい。
【0021】
なお、本発明でいう粒径とは、粒子を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒径0.5mm未満のアルミナ粒子とは、篩い目が0.5mmの篩いを通過するアルミナ粒子のことで、粒径0.5mm以上のアルミナ粒子とは、篩い目が0.5mmの篩い目を通過しないアルミナ粒子のことである。
【0022】
本発明の潤滑材は、バインダーとして有機糊材を5質量%以上9質量%以下含む。有機糊材の含有率が5質量%未満であると施工時に十分な作業性を確保することができない。一方、有機糊材の含有率が9質量%を超えると施工後の耐熱変形性が低下する。有機糊材としては、溶融シリカ質プレキャストブロック又は珪石れんがと反応して低融点物質を生成するCaO成分、MgO成分あるいはアルカリ成分を含有しないか、含有するとしてもその含有率の低いものを使用することが好ましい。典型的には、デキストリン、コーンスターチ、片栗粉、タピオカに代表される澱粉を使用することができる。
【0023】
本発明の潤滑材は上述の通り、典型的にはアルミナ粒子と有機糊材のみからなるが、アルミナ粒子と有機糊材以外の物質を含むことを排除するものではない。例えば、シリカ粒子等のアルミナ粒子以外の酸化物粒子や、有機糊材以外のバインダーを含むことができる。アルミナ粒子以外の酸化物粒子を使用する場合、真球度が1.0~1.5でかつ中実である球形状の酸化物粒子を使用することが好ましい。
【実施例0024】
表1に、本発明の実施例及び比較例に係る潤滑材の構成と、その評価結果を示している。
【0025】
【表1】
【0026】
評価項目は、潤滑性、作業性及び耐熱変形性の3項目であり、それぞれ以下の要領で評価した。
【0027】
<潤滑性>
各例の潤滑材100質量%に水を外掛けで12質量%添加し、潤滑材ペーストを得る。そして、図1に示すように、100×100×厚み50mmの溶融シリカ質プレキャストブロックの上下面に厚み3mmで潤滑材ペーストを塗布し、十分に硬化させる。潤滑材ペーストが硬化後、溶融シリカ質プレキャストブロックの上下面を100×100×厚み50mmの珪石れんがで挟み込み、これを評価サンプルとする。
評価サンプルを電気炉内にセットし1000℃まで5℃/minで昇温し、1000℃到達後72時間保持する。72時間経過後に1000℃の電気炉より評価サンプルを取り出し、図2に概念的に示すように上下を耐火れんがで挟み込むようにして評価装置に評価サンプルを設置する。評価サンプルを設置後、下側の耐火れんがの下に取り付けた油圧シリンダー(図示省略)を用いて評価サンプルを押し上げ、評価サンプルの上面が上側の耐火れんがに当たり、垂直荷重0.1MPaを示すまで荷重を加え固定する。固定後、評価サンプルの溶融シリカ質プレキャストブロック部分に水平荷重を加えて摩擦係数を測定する。
潤滑性の評価は、摩擦係数が0.4未満の場合を良好、0.4以上の場合を不良とした。
【0028】
<作業性>
作業性は、上述の要領で得た潤滑材ペーストのフリーフロー値により評価した。フリーフロー値とは、JIS R 2521に規定するフローコーンに潤滑材ペーストを流し込んで満たし、フローコーンを上方に抜き取って60秒静置したときの潤滑材ペーストの広がり直径をいう。作業性の評価は、フリーフロー値が110~130mmの場合を良好、110mm未満又は130mm超の場合を不良とした。
【0029】
<耐熱変形性>
耐熱変形性の評価は、上述の要領で得た潤滑材ペーストをφ30mm×10mmのペレット形状にし、300℃まで直径(φ30)に変形がない場合を良好、変形がある場合を不良とした。
【0030】
実施例1~7はいずれも本発明の範囲内にある潤滑材であり、潤滑性、作業性及び耐熱変形性のいずれの評価においても良好であった。
【0031】
比較例1はアルミナ粒子の粒度構成が粗粒のみからなる例、比較例2はアルミナ粒子の粒度構成が中粗粒のみからなる例、比較例3はアルミナ粒子の粒度構成が微粒のみからなる例であり、いずれも潤滑性の評価が不良になると共に作業性の評価が不良になった。
【0032】
比較例4は微粒のアルミナ粒子を含まないが、アルミナ粒子の粒度構成において粗粒と中粗粒の割合が本発明の範囲内にある例である。潤滑性の評価はかろうじて良好であったが、作業性の評価が不良になった。
比較例5は微粒のアルミナ粒子を含まず、かつアルミナ粒子の粒度構成において粗粒と中粗粒の割合が本発明の範囲外である例である。潤滑性の評価が不良になると共に作業性の評価が不良になった。
比較例6は中粗粒のアルミナ粒子を含まないが、アルミナ粒子の粒度構成において粗粒と微粒の割合が本発明の範囲内にある例である。作業性の評価は良好であったが、潤滑性の評価が不良になった。
比較例7は中粗粒のアルミナ粒子を含まず、かつアルミナ粒子の粒度構成において粗粒と微粒の割合が本発明の範囲外である例である。潤滑性の評価が不良になると共に作業性の評価が不良になった。
【0033】
比較例8は有機糊材の含有率が高すぎる例である。耐熱変形性の評価が不良となり、それに伴い潤滑性の評価も不良になった。
比較例9は有機糊材の含有率が低すぎる例である。作業性の評価が不良となり、それに伴い潤滑性の評価も不良になった。
図1
図2