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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173847
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086363
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 紀貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707BS15
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707HS27
3C707JU02
3C707KS21
3C707KS35
3C707KV01
3C707KW05
3C707KX10
3C707LS20
3C707LU05
3C707MS03
3C707MS10
3C707MS16
(57)【要約】
【課題】ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを多くの状況に応じて設定する際に、誤った設定をすることを抑制することができるロボット制御システムを提供する。
【解決手段】ロボット(10)を制御するロボット制御システム(30、40)であって、ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定し、複数のメインシーン及びメインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、メインシーンを構成する制限パラメータとサブシーンを構成する制限パラメータとの組み合わせによりシーンを設定する設定部(43)と、設定された複数のシーンのうちロボットに適用するシーンを切り替える切替部(32)と、ロボットに適用されたシーンで設定された制限パラメータにより制限した状態でロボットを動作させる動作部(33)と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを制御するロボット制御システムであって、
前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定し、複数のメインシーン及び前記メインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、前記メインシーンを構成する前記制限パラメータと前記サブシーンを構成する前記制限パラメータとの組み合わせにより前記シーンを設定する設定部と、
設定された複数の前記シーンのうち前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える切替部と、
前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる動作部と、
を備えるロボット制御システム。
【請求項2】
前記設定部は、第1の前記メインシーンに従属する前記サブシーンを、前記第1の前記メインシーンと別の第2の前記メインシーンに従属させることを禁止する、請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記複数のメインシーンに、共通の前記サブシーンを従属させることを禁止する、請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記設定部は、従属する前記サブシーンを有していない前記メインシーンの設定を禁止する、請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項5】
共通の前記メインシーンに従属する前記複数のサブシーンには、前記共通の前記メインシーンを構成する前記制限パラメータが共通して適用される、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【請求項6】
前記メインシーンは、前記ロボットの可動領域を制限する前記制限パラメータを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【請求項7】
前記メインシーンは、自身に従属する前記サブシーンの前記制限パラメータを有効及び無効にするパラメータを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【請求項8】
前記サブシーンは、自身への切替を許可する条件を設定するパラメータを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【請求項9】
前記メインシーン及び前記サブシーンは、前記ロボットの共通の動作特性を制限する前記制限パラメータを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを制御するロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドにより把持されたワークの種類及び数に応じてロボットの速度上限値及び加速度上限値の少なくとも一方を変更する上限値変更部と、上限値変更部により変更された速度上限値及び加速度上限値を超えないように、ロボットの動作を制御する動作制御部と、を備えるロボット制御装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-24095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークの種類及び数が共通であっても、人との協働の有無や、ロボットの周辺環境等に応じて、適切な速度上限値等(制限パラメータの値)は変化する。特許文献1に記載のロボット制御装置は、ワークの種類および数が共通である場合に、人との協働の有無や、ロボットの周辺環境等に応じて速度上限値等を変更することができない。一方、ワークの種類や数、人との協働の有無、及びロボットの周辺環境等の全ての組み合わせに対して速度上限値等を個々に設定すると、設定が膨大で複雑となり、誤った設定をするおそれがある。ロボット制御システムでは、速度上限値等に誤った設定をするとロボットが周辺環境や人に危害を与えるおそれがあるため、速度上限値等の誤った設定を抑制することは極めて重要である。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを多くの状況に応じて設定する際に、誤った設定をすることを抑制することができるロボット制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
ロボットを制御するロボット制御システムであって、
前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定し、複数のメインシーン及び前記メインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、前記メインシーンを構成する前記制限パラメータと前記サブシーンを構成する前記制限パラメータとの組み合わせにより前記シーンを設定する設定部と、
設定された複数の前記シーンのうち前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える切替部と、
前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる動作部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、設定部は、前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定する。このため、ユーザは、シーンの構成要素である複数の制限パラメータを入力することにより、複数の制限パラメータをシーン単位でまとめて設定することができる。切替部は、設定された複数の前記シーンのうち前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える。このため、ロボットに適用するシーンを切り替えることにより、複数の制限パラメータを一度に適用することができ、複数の制限パラメータの変更が容易となる。そして、動作部は、前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる。したがって、設定された制限パラメータに基づいて、ロボットを適切に動作させることができる。
【0008】
さらに、設定部は、複数のメインシーン及び前記メインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、前記メインシーンを構成する前記制限パラメータと前記サブシーンを構成する前記制限パラメータとの組み合わせにより前記シーンを設定する。このため、ユーザは各状況に応じた各シーンを、複数のメインシーンとメインシーンに従属する複数のサブシーンとの組み合わせに整理して設定することができ、複数の制限パラメータを多くの状況に応じて設定する際に、誤った設定をすることを抑制することができる。ここで、ロボット制御システムでは、制限パラメータに誤った設定をするとロボットが周辺環境や人に危害を与えるおそれがあるため、制限パラメータの誤った設定を抑制することができることは極めて重要な意義を有する。
【0009】
第2の手段では、前記設定部は、第1の前記メインシーンに従属する前記サブシーンを、前記第1の前記メインシーンと別の第2の前記メインシーンに従属させることを禁止する。こうした構成によれば、第1のメインシーンに従属するサブシーンが、第1のメインシーンと別の第2のメインシーンに流用されることを抑制することができる。したがって、第2のメインシーンに適していないサブシーンがロボットに適用されることを抑制することができる。
【0010】
第3の手段では、前記設定部は、前記複数のメインシーンに、共通の前記サブシーンを従属させることを禁止する。こうした構成によれば、メインシーンが変更されてもサブシーンが変更されないことを抑制することができ、ユーザがサブシーンの変更を忘れることを抑制することができる。したがって、変更後のメインシーンに適していないサブシーンがロボットに適用されることを抑制することができる。
【0011】
第4の手段では、前記設定部は、従属する前記サブシーンを有していない前記メインシーンの設定を禁止する。こうした構成によれば、メインシーンのみ設定されてサブシーンの設定が省略された場合に、意図しないサブシーンがメインシーンに適用されることを抑制することができる。したがって、メインシーンに対応していないサブシーンがロボットに適用されることを抑制することができる。
【0012】
第5の手段では、共通の前記メインシーンに従属する前記複数のサブシーンには、前記共通の前記メインシーンを構成する前記制限パラメータが共通して適用される。こうした構成によれば、ユーザは、共通の制限パラメータを適用したい複数のサブシーンを、共通のメインシーンにまとめて従属させることにより、複数のサブシーンに共通の制限パラメータをまとめて適用することができる。さらに、共通の制限パラメータを複数のサブシーンに個々に設定する手間を省くことができる。
【0013】
第6の手段では、前記メインシーンは、前記ロボットの可動領域を制限する前記制限パラメータを含む。こうした構成によれば、前記ロボットの各可動領域に対応させて各メインシーンを設定することができ、メインシーンに従属するサブシーンを各可動領域でまとめて設定することができる。
【0014】
第7の手段では、前記メインシーンは、自身に従属する前記サブシーンの前記制限パラメータを有効及び無効にするパラメータを含む。こうした構成によれば、メインシーンに従属するサブシーンの制限パラメータの有効及び無効を、メインシーンのパラメータでまとめて設定することができ、状況に応じた制限パラメータの設定が容易となる。
【0015】
第8の手段では、前記サブシーンは、自身への切替を許可する条件を設定するパラメータを含む。こうした構成によれば、サブシーンにおいて条件を満たさない場合に自身への切替を禁止することができ、条件を満たさない状態でロボットが動作することを抑制することができる。
【0016】
第9の手段では、前記メインシーン及び前記サブシーンは、前記ロボットの共通の動作特性を制限する前記制限パラメータを含む。こうした構成によれば、前記ロボットの共通の動作特性を、メインシーンとサブシーンとで柔軟に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ロボット及びロボット制御システムを示す模式図。
図2】メインシーンで設定するパラメータを示す図。
図3】サブシーンで設定するパラメータを示す図。
図4】メインシーンとサブシーンとの関係を示す模式図。
図5】メインシーンとサブシーンとの禁止された設定態様を示す模式図。
図6】メインシーンとサブシーンとの他の禁止された設定態様を示す模式図。
図7】メインシーンとサブシーンとの他の禁止された設定態様を示す模式図。
図8】メインシーンの禁止された設定態様を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、人との協働作業を行うロボット、及びそのロボットを制御するロボット制御システムに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1に示すように、ロボット10は、例えば垂直多関節型ロボットであり、アーム11を備えている。アーム11の隣り合うリンクは、関節を介して相対回転可能に連結されている。各関節(各軸)は、各関節に対応する各モータにより駆動される。ロボット10の各関節には、各関節の回転角度を検出するエンコーダ(図示略)、各関節のトルクを検出するトルクセンサ(図示略)等がそれぞれ設けられている。なお、ロボット10は、垂直多関節型ロボットに限らず、水平多関節型ロボット等であってもよい。
【0020】
アーム11の先端には、ハンド20が取り付けられている。ハンド20(ツール)は、例えば一対の爪を備えており、一対の爪の間隔を拡大及び縮小する開閉動作を行う。ハンド20の一対の爪が開閉動作を行うことにより、ワーク等が把持される。
【0021】
ロボット制御装置30は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータとして構成されている。ロボット制御装置30は、ロボット10に接続されている。ロボット制御装置30は、切替部32及び動作部33を備えている。ロボット制御装置30は、ロボット10を動作させる動作プログラムを実行することにより、切替部32及び動作部33の機能を実現してロボット10の動作を制御する。なお、ロボット制御装置30は、ロボット10に内蔵されていてもよい。
【0022】
ティーチングペンダント40(操作器)は、表示部41、操作部42、及び設定部43を備えている。表示部41は、液晶パネル等により構成され、ロボット10に関する表示を行う。操作部42は、ユーザにより操作されるキー、ボタン、ダイヤル等を備えている。設定部43は、ロボット10の動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定する。
【0023】
ユーザによる入力は、例えばロボット制御装置30に接続されたティーチングペンダント40を用いて行われる。制限パラメータは、例えばロボット10の可動範囲(対象関節の可動角度)、ロボット10の監視部位の最大速度、ロボット10の対象関節の最大トルク等を含む。シーンは、複数の制限パラメータの組み合わせにより構成されており、詳しくはメインシーンを構成する制限パラメータとサブシーンを構成する制限パラメータとの組み合わせにより構成されている。さらに、設定部43は、複数のメインシーン及びメインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、メインシーンを構成する制限パラメータとサブシーンを構成する制限パラメータとの組み合わせによりシーンを設定する。切替部32は、動作プログラム中で後述する「ChangeScene」のコマンドを実行することにより、設定された複数のシーンのうちロボット10に適用するシーンを切り替える。動作部33は、ロボット10に適用されたシーンで設定された制限パラメータにより制限した状態で、ロボット10を動作させる。
【0024】
シーン名及び制限パラメータは、ロボット10の動作プログラムとは別のアプリケーション等において、例えばティーチングペンダント40の操作部42を用いてユーザにより入力され、設定部43により関連付けられて登録(設定)される。すなわち、設定部43は、ユーザにより入力されたシーン名と制限パラメータとを関連付けて予め登録(設定)する。ロボット10の動作プログラムとは別のアプリケーション等においてユーザによりシーン名及び制限パラメータが入力され、設定部43がシーン名と制限パラメータとを関連付けて登録(記憶)することは、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定部43がシーンを設定することに相当する。
【0025】
ユーザは、例えばティーチングペンダント40を用いて入力操作することにより、動作プログラムを作成(編集)する。「ChangeScene」は、切替部32によりロボット10の動作プログラム中で実行されるコマンドであり、シーンの設定及び切替を実行するコマンドである。具体的には、ChangeSceneは、制限パラメータの値を適用することによりシーンを切り替えること、切り替えるシーン名を指定することによりシーンを切り替えること、シーン名を指定するとともに制限パラメータの値を適用することによりシーンを切り替えること等を実行する。設定部43は、動作プログラムが作成された場合に、動作プログラム中のChangeSceneのコマンドを認識し、ChangeSceneのコマンドを含む動作プログラムを実行可能な状態にする。動作プログラム中でユーザによりChangeSceneのコマンドが規定(入力)され、設定部43がChangeSceneのコマンドを認識すること(あるいは設定部43がChangeSceneのコマンドを含む動作プログラムを実行可能な状態にすること)は、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定部43がシーンを設定することに相当する。なお、動作プログラムを実行可能な状態とは、例えばコンパイル前の完成した動作プログラムを記憶した状態や、動作プログラムをコンパイルした状態等である。
【0026】
図2は、メインシーンで設定するパラメータを示す図である。メインシーンでは、ロボット10の使用条件を設定する。メインシーンで設定するパラメータは、各安全監視の有効設定、最大負荷質量、ツール番号、ワーク番号、可動範囲、監視部位等を含む。なお、メインシーンで設定するパラメータは、制限パラメータと制限パラメータ以外のパラメータとを含み、図2に示したパラメータ以外のパラメータを採用することもできる。
【0027】
各安全監視の有効設定は、安全監視で設定される最大速度、最大トルク等(各パラメータ)の有効又は無効を設定する。各安全監視の有効設定は、メインシーンに従属するサブシーンの各パラメータに対して行う。各安全監視の有効設定は、最大速度、最大トルク等を個別に有効又は無効に設定してもよいし、最大速度、最大トルク等をまとめて有効又は無効に設定してよい。例えば、最大速度が有効に設定された場合は、ロボット10の監視部位の速度を最大速度以下に制限する。最大速度が無効に設定された場合は、ロボット10の監視部位の速度を制限しない。
【0028】
最大負荷質量(制限パラメータ)は、ロボット10に取り付けるハンド20と、ロボット10が移動させるワーク(ワークW1~W3のいずれか)とを合計した最大質量を設定する。例えば、最大負荷質量が100に設定された場合は、ロボット10が移動可能な質量を100以下に制限する。なお、最大負荷質量の値は、その傾向を抽象的に表したものであり(数値が大きいほど大きい)、具体的な規定方法は任意である。
【0029】
ツール番号は、ロボット10が使用するツールの種類を設定する。ツールは、把持ハンド20、吸着ハンド、溶接工具、研削工具等である。各ツールには、種類に応じた固有のツール番号が付けられている。
【0030】
ワーク番号は、ロボット10が作業をする対象であるワークW1~W3の種類を設定する。各ワークW1~W3には、種類に応じた固有のワーク番号が付けられている。
【0031】
可動範囲(制限パラメータ)は、ロボット10が動作可能な範囲を設定する。可動範囲(可動領域)は、例えばロボット10の原点を基準とした空間の座標により設定してもよいし、ロボット10の各関節(対象関節)の可動角度により設定してもよい。
【0032】
監視部位は、ロボット10のうち速度等を監視する部位を設定する。監視部位として、例えばロボット10のアーム11の先端、アーム11における所定関節、アーム11における所定部位等を設定することができる。
【0033】
そして、ロボット10が用いるツールや、作業対象であるワークを変更する場合は、それに対応して設定したメインシーンに切り替える。これにより、ロボット10、ツール、及びワークを含む全体の質量の変化に応じて、最大速度や最大トルクを制限することができる。
【0034】
図3は、サブシーンで設定するパラメータを示す図である。サブシーンでは、安全監視を設定する。サブンシーンで設定するパラメータは、シーン切替条件、最大速度、最大トルク、最大力等を含む。なお、サブシーンで設定するパラメータは、制限パラメータと制限パラメータ以外のパラメータとを含み、図3に示したパラメータ以外のパラメータを採用することもできる。
【0035】
同図では、各メインシーンで設定した各可動範囲を破線の直方体で示している。ここでは、各メインシーンの適用される領域が、各可動範囲(各直方体)に対応している。このため、各メインシーンで設定された各可動範囲に対して、複数のサブシーンが設定される。具体的には、サブシーンは、メインシーンの下の階層に設定され、メインシーンに従属する。メインシーンに含まれる(従属する)複数のサブシーンには、上の階層であるメインシーンで設定されたパラメータが共通して適用される。
【0036】
シーン切替条件は、サブシーン(シーン)の切り替えを許可するロボット10の位置等を設定する。例えば、ロボット10の位置が、サブシーンで設定された所定位置であるとみなせる場合にそのサブシーンへの切替を許可し、サブシーンで設定された所定位置であるとみなせない場合にそのサブシーンへの切替を禁止する。
【0037】
最大速度(制限パラメータ)は、ロボット10の監視部位の速度の最大値を設定する。監視部位は、サブシーンが従属するメインシーンにおいて設定される。例えば、最大速度が60に設定されている場合は、動作部33はロボット10の監視部位の速度を最大速度60以下に制限する。なお、最大速度の値は、その傾向を抽象的に表したものであり(数値が大きいほど大きい)、具体的な規定方法は任意である。以下のパラメータにおいても同様である。
【0038】
最大トルク(制限パラメータ)は、ロボット10の対象関節が発生するトルクの最大値を設定する。対象関節は、例えばサブシーンが従属するメインシーンにおいて設定される。例えば、最大トルクが60に設定されている場合は、動作部33はロボット10の対象関節が発生するトルクを最大トルク60以下に制限する。
【0039】
最大力(制限パラメータ)は、ロボット10がワーク(あるいは人や設備)に作用させる力の最大値を設定する。例えば、最大力が60に設定されている場合は、動作部33はロボット10がワークに作用させる力を最大力60以下に制限する。
【0040】
そして、人との協働作業を行わない可動範囲に対応するメインシーンに従属する複数のサブシーンでは、共通して最大速度や最大トルクを大きく設定することができる。一方、人との協働作業を行う可動範囲に対応するメインシーンに従属する複数のサブシーンでは、共通して最大速度や最大トルクを小さく設定することができる。また、質量の大きいワークW1を作業対象とするメインシーンに従属する複数のサブシーンでは、共通して最大トルクを大きく設定し且つ最大速度を小さく設定することができる。一方、質量の小さいワークW3を作業対象とするメインシーンに従属する複数のサブシーンでは、共通して最大トルクを小さく設定し且つ最大速度を大きく設定することができる。
【0041】
図4は、メインシーンMSnとサブシーンSnとの関係を示す模式図である。nは自然数である。
【0042】
各サブシーンSnは、いずれかのメインシーンMSnに従属している。MS1S1は、メインシーンMS1の中の(下の階層の)サブシーンS1を表している。MS1S1、MS1S2、及びMS1S3は、いずれもメインシーンMS1に従属しており、メインシーンMS1で設定したパラメータが共通して適用されている。MS2S1、MS2S2、及びMS2S3は、いずれもメインシーンMS2に従属しており、メインシーンMS2で設定したパラメータが共通して適用されている。同様に、MSnSnは、メインシーンMSnの中のサブシーンSnを表している。
【0043】
図5に示すように、設定部43は、第1メインシーンMS1に従属するサブシーンMS1S3を、第2メインシーンMS2(第1メインシーンMS1と別のメインシーン)に従属させることを禁止する。換言すれば、設定部43は、第1メインシーンMS1において設定したサブシーンMS1S3を、第2メインシーンMS2に流用することを禁止する。すなわち、設定部43は、各サブシーンSnをいずれか1つのメインシーンMSnにのみ従属させる。これにより、例えば質量の大きいワークW1に対応するメインシーンMS1で設定したサブシーンMS1S3が、質量が中程度のワークW2(質量が小さいワークW3)に対応するメインシーンMS2(メインシーンMS3)のサブシーンとして用いられることを防ぐことができる。
【0044】
図6に示すように、設定部43は、第1メインシーンMS1に、第2メインシーンMS2(第1メインシーンMS1と別のメインシーン)に対応するサブシーンMS2S1を従属させることを禁止する。すなわち、設定部43は、第1メインシーンMS1に、第1メインシーンMS1に対応していないサブシーンMS2S1を従属させることを禁止する。これにより、例えば質量が中程度のワークW2(質量が小さいワークW3)に対応するメインシーンMS2(メインシーンMS3)に設定すべきサブシーンMS2S1(サブシーンMS3Sn)が、質量が大きいワークW1に対応するメインシーンMS1のサブシーンとして用いられることを防ぐことができる。
【0045】
図7に示すように、設定部43は、第1メインシーンMS1及び第2メインシーンMS2に、共通のサブシーンMS1S3を従属させることを禁止する。換言すれば、設定部43は、複数のメインシーンMS1,MS2を跨いでサブシーンMS1S3を設定することを禁止する。すなわち、設定部43は、各サブシーンSnをいずれか1つのメインシーンMSnにのみ従属させる。これにより、例えば質量の大きいワークW1に対応するメインシーンMS1で設定したサブシーンMS1S3が、質量が中程度のワークW2(質量が小さいワークW3)に対応するメインシーンMS2(メインシーンMS3)のサブシーンとして用いられることを防ぐことができる。
【0046】
図8に示すように、設定部43は、従属するサブシーンMS2Snを有していない第2メインシーンMS2の設定を禁止する。これにより、サブシーンMS2Snの設定が省略された場合に、意図しないサブシーンがメインシーンMS2に適用されることを抑制することができる。また、メインシーンMS2の下の階層にユーザによりサブシーンMS2Snを必ず設定させることができ、メインシーンMS2にメインシーンMS1等(別のメインシーン)のサブシーンが流用されることを未然に抑制することができる。
【0047】
そして、切替部32は、例えば「ChangeScene MS1S1」というコマンドにより、ロボット10に適用するシーンを、第1メインシーンMS1とサブシーンMS1S1とを組み合わせたシーンに切り替える。この場合、ロボット10には、第1メインシーンMS1で設定された(MS1を構成する)制限パラメータとサブシーンMS1S1で設定された(MS1S1を構成する)制限パラメータとが適用される。
【0048】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0049】
・設定部43は、ロボット10の動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定する。このため、ユーザは、シーンの構成要素である複数の制限パラメータを入力することにより、複数の制限パラメータをシーン単位でまとめて設定することができる。切替部32は、設定された複数のシーンのうちロボット10に適用するシーンを切り替える。このため、ロボット10に適用するシーンを切り替えることにより、複数の制限パラメータを一度に適用することができ、複数の制限パラメータの変更が容易となる。そして、動作部33は、ロボット10に適用されたシーンで設定された制限パラメータにより制限した状態でロボット10を動作させる。したがって、設定された制限パラメータに基づいて、ロボット10を適切に動作させることができる。
【0050】
・設定部43は、複数のメインシーン及びメインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、メインシーンを構成する制限パラメータとサブシーンを構成する制限パラメータとの組み合わせによりシーンを設定する。このため、ユーザは各状況に応じた各シーンを、複数のメインシーンMSnとメインシーンMSnに従属する複数のサブシーンMSnSnとの組み合わせに整理して設定することができ、複数の制限パラメータを多くの状況に応じて設定する際に、誤った設定をすることを抑制することができる。ここで、ロボット制御装置30(ロボット制御システム)では、制限パラメータに誤った設定をするとロボット10が周辺環境や人に危害を与えるおそれがあるため、制限パラメータの誤った設定を抑制することができることは極めて重要な意義を有する。
【0051】
・設定部43は、第1メインシーンMS1に従属するサブシーンMS1S3を、第1メインシーンMS1と別の第2メインシーンMS2に従属させることを禁止する。こうした構成によれば、第1メインシーンMS1に従属するサブシーンMS1S3が、第1メインシーンMS1と別の第2メインシーンMS2に流用されることを抑制することができる。したがって、第2メインシーンMS2に適していないサブシーンMS1S3がロボット10に適用されることを抑制することができる。
【0052】
・設定部43は、複数のメインシーンにMS1,MS2に、共通のサブシーンMS1S3を従属させることを禁止する。こうした構成によれば、メインシーンMS1,MS2が変更されてもサブシーンMS1S3が変更されないことを抑制することができ、ユーザがサブシーンの変更を忘れることを抑制することができる。したがって、変更後のメインシーンに適していないサブシーンがロボット10に適用されることを抑制することができる。
【0053】
・設定部43は、従属するサブシーンMS2Snを有していない第2メインシーンMS2の設定を禁止する。こうした構成によれば、第2メインシーンMS2のみ設定されてサブシーンMS2Snの設定が省略された場合に、意図しないサブシーンが第2メインシーンMS2に適用されることを抑制することができる。したがって、第2メインシーンMS2に対応していないサブシーンがロボット10に適用されることを、抑制することができる。
【0054】
・以上のように、メインシーンMSn及びサブシーンSnの設定態様に条件を設けることにより、ユーザにより安全が確認された設定をロボット10に適用することができる。ひいては、ユーザにより安全が確認された設定でロボット10を動作させることができ、ロボット10が意図せず危険な状態で動作することを抑制することができる。
【0055】
・共通のメインシーン(例えばMS1)に従属する複数のサブシーン(MS1S1、MS1S2、MS1S3)には、共通のメインシーンMS1を構成する制限パラメータが共通して適用される。こうした構成によれば、ユーザは、共通の制限パラメータを適用したい複数のサブシーン(MS1S1、MS1S2、MS1S3)を、共通のメインシーン(MS1)にまとめて従属させることにより、複数のサブシーン(MS1S1、MS1S2、MS1S3)に共通の制限パラメータをまとめて適用することができる。さらに、共通の制限パラメータを複数のサブシーン(MS1S1、MS1S2、MS1S3)に個々に設定する手間を省くことができる。
【0056】
・メインシーンは、ロボット10の可動範囲(可動領域)を制限する制限パラメータを含む。こうした構成によれば、ロボット10の各可動範囲に対応させて各メインシーンを設定することができ、メインシーンに従属するサブシーンを各可動範囲でまとめて設定することができる。
【0057】
・メインシーンは、自身に従属するサブシーンの制限パラメータを有効及び無効にするパラメータ(各安全監視の有効設定)を含む。こうした構成によれば、メインシーンに従属するサブシーンの制限パラメータの有効及び無効を、メインシーンのパラメータでまとめて設定することができ、状況に応じた制限パラメータの設定が容易となる。
【0058】
・サブシーンは、自身への切替を許可する条件を設定するパラメータ(シーン切替条件)を含む。こうした構成によれば、サブシーンにおいて条件を満たさない場合に自身への切替を禁止することができ、条件を満たさない状態でロボット10が動作することを抑制することができる。
【0059】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0060】
・メインシーン及びサブシーンは、ロボット10の共通の動作特性を制限する制限パラメータを含んでいてもよい。例えば、メインシーンが最大速度(共通の動作特性)を制限する制限パラメータを含み、サブシーンがメインシーンで設定した最大速度に対して許可する速度の割合(最大速度の30[%]等)を設定するパラメータを含んでいてもよい。また、メインシーンが、従属するサブシーンの最大トルク(共通の動作特性)を共通に制限する制限パラメータを含み、サブシーンがメインシーンで設定した最大トルクを変更するパラメータを含んでいてもよい。これらの構成によれば、ロボット10の共通の動作特性を、メインシーンとサブシーンとで柔軟に設定することができる。
【0061】
・ロボット制御装置30において初期設定されているシーンとして、DefaultSceneを設けてもよい。DefaultSceneは、ユーザによる設定を必要とせず、ユーザが変更することはできない。DefaultSceneでは、メインシーンMSn及びサブシーンSnで設定される各パラメータの値を、ロボット10を安全に動作させることができる初期設定値に設定している。そして、ロボット制御装置30(ロボット制御システム)の起動時に、切替部32はDefaultSceneをロボット10に適用する(ロボット10に適用するシーンをDefaultSceneに切り替える)。こうした構成によれば、各パラメータの値を、ロボット制御装置30の起動時から安全な値に設定することができる。
【0062】
・ロボット10がロボットのシミュレーション画像であり、ロボット制御装置30がロボットのシミュレーション画像を制御するシミュレーション装置であってもよい。シミュレーション装置は、例えばティーチングペンダント40により構成することができる。この場合、ティーチングペンダント40は、ロボット10の動作をシミュレーションする機能を備えている。ティーチングペンダント40は、表示部41、操作部42、及び設定部43の機能を実現し、シミュレーション時において、ロボット10の動作プログラムを実行することにより、切替部32及び動作部33の機能を実現する。例えば、表示部41は、ロボット10のシミュレーション画像や動作プログラムを表示する。この場合であっても、シミュレーション装置によりユーザが動作プログラムの実行態様を確認した後、動作プログラムにより実物のロボット10が動作させられる。したがって、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0063】
・ティーチングペンダント40に代えて、ロボット制御装置30に接続されたPC(コンピュータ)、モニタ、キーボード、マウス等により、ティーチングペンダント40の機能(シミュレーション時における切替部32及び動作部33の機能を含む)を実現することもできる。
【符号の説明】
【0064】
10…ロボット、30…ロボット制御装置、32…切替部、33…動作部、43…設定部。
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