(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173851
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086367
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 大介
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707BS15
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707HS27
3C707JU03
3C707KS21
3C707KS35
3C707KV01
3C707KW05
3C707KX10
3C707LS20
3C707LU05
3C707MS03
3C707MS10
3C707MS16
(57)【要約】
【課題】最大トルク及び最大力の少なくとも一方を増加させた場合であっても、ロボットが人や周辺設備に損害を与えることを抑制する。
【解決手段】ロボット制御システムであって、表示部(41)と、ロボット(10)の動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定する設定部(43)と、ロボットに適用するシーンを切り替える切替部(32)と、ロボットに適用されたシーンで設定された制限パラメータにより制限した状態でロボットを動作させる動作部(33)と、を備える。制限パラメータは、最大トルク及び最大力の少なくとも一方と、最大速度及び可動範囲の少なくとも一方とを含む。設定部は、ユーザが登録された最大トルク及び最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を表示部により行わせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを制御するロボット制御システムであって、
前記ロボットに関する表示を行う表示部と、
前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定する設定部と、
前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える切替部と、
前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる動作部と、
を備え、
前記制限パラメータは、最大トルク及び最大力の少なくとも一方と、最大速度及び可動範囲の少なくとも一方とを含み、
前記設定部は、前記ユーザにより入力された前記の名前であるシーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録し、前記ユーザが登録された前記最大トルク及び前記最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を前記表示部により行わせる、ロボット制御システム。
【請求項2】
前記設定部は、前記ユーザが登録された前記最大トルク及び前記最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す文章を前記表示部に表示させる、請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記ユーザが登録された前記最大トルク及び前記最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させた推奨値を前記表示部に表示させる、請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
ロボットを制御するロボット制御システムであって、
前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定する設定部と、
前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える切替部と、
前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる動作部と、
を備え、
前記設定部は、前記ユーザにより入力された前記の名前であるシーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録し、
登録された前記シーン名が前記ユーザにより入力されて前記設定部により前記シーンが設定された場合に、前記制限パラメータの値を、入力された前記シーン名に関連付けられた前記制限パラメータの値に設定する、ロボット制御システム。
【請求項5】
前記設定部は、複数のメインシーン及び前記メインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、前記メインシーンを構成する前記制限パラメータと前記サブシーンを構成する前記制限パラメータとの組み合わせにより前記シーンを設定する、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを制御するロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドにより把持されたワークの種類及び数に応じてロボットの速度上限値及び加速度上限値の少なくとも一方を変更する上限値変更部と、上限値変更部により変更された速度上限値及び加速度上限値を超えないように、ロボットの動作を制御する動作制御部と、を備えるロボット制御装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、速度上限値(最大速度)、トルク上限値(最大トルク)、可動範囲等の安全に関わるパラメータ(制限パラメータ)をシーンとしてまとめ、シーンを切り替えることにより制限パラメータをまとめて切り替える(設定する)ことが考えられる。この場合、ロボットが実行する作業内容に応じてシーンを設定し、作業内容に応じてシーンを切り替えると便利である。ワークの組付作業では、ワークに力を作用させる必要があるため、許容する最大トルクを増加させる必要がある。最大トルクを増加させた場合は、ロボットが人や周辺設備に接触した際に与える損害が大きくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、シーン切替を行うロボット制御システムにおいて、最大トルク及び最大力の少なくとも一方を増加させた場合であっても、ロボットが人や周辺設備に損害を与えることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
ロボットを制御するロボット制御システムであって、
前記ロボットに関する表示を行う表示部と、
前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定する設定部と、
前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える切替部と、
前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる動作部と、
を備え、
前記制限パラメータは、最大トルク及び最大力の少なくとも一方と、最大速度及び可動範囲の少なくとも一方とを含み、
前記設定部は、前記ユーザにより入力された前記の名前であるシーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録し、前記ユーザが登録された前記最大トルク及び前記最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を前記表示部により行わせる。
【0007】
上記構成によれば、設定部は、前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定する。このため、ユーザは、シーンの構成要素である複数の制限パラメータを入力することにより、複数の制限パラメータをシーン単位でまとめて設定することができる。切替部は、前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える。このため、ロボットに適用するシーンを切り替えることにより、複数の制限パラメータを一度に適用することができ、複数の制限パラメータの変更が容易となる。そして、動作部は、前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる。したがって、設定された制限パラメータに基づいて、ロボットを適切に動作させることができる。
【0008】
前記設定部は、前記ユーザにより入力された前記シーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録する。このため、ユーザは、シーンを設定する時に制限パラメータを直接設定するだけでなく、前記シーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録しておくことができる。
【0009】
ここで、前記制限パラメータは、最大トルク及び最大力の少なくとも一方と、最大速度及び可動範囲の少なくとも一方とを含んでいる。例えば、ワークの組付作業に対応するシーンにおいて、ユーザが最大トルク及び最大力の少なくとも一方を増加させた場合は、ロボットが人や周辺設備に接触した際に与える損害が大きくなるおそれがある。この点、設定部は、前記ユーザが登録された前記最大トルク及び前記最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を前記表示部により行わせる。そして、登録された最大速度がユーザにより減少させられた場合は、ロボットが人や周辺設備に接触した際に与える衝撃を減少させることができる。また、登録された可動範囲が減少させられた場合は、ロボットが人や周辺設備に接触することを抑制することができる。したがって、最大トルク及び最大力の少なくとも一方を増加させた場合であっても、ロボットが人や周辺設備に損害を与えることを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記設定部は、前記ユーザが登録された前記最大トルク及び前記最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す文章を前記表示部に表示させる。こうした構成によれば、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させるべきことを、ユーザに明確に伝えることができる。
【0011】
第3の手段では、前記設定部は、前記ユーザが登録された前記最大トルク及び前記最大力の少なくとも一方を増加させた場合に、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させた推奨値を前記表示部に表示させる。こうした構成によれば、登録された前記最大速度及び前記可動範囲の少なくとも一方を減少させる際に、それらの推奨値をユーザが知ることができ、ユーザがそれらの値を設定する作業の負荷を軽減することができる。
【0012】
第4の手段は、
ロボットを制御するロボット制御システムであって、
前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定する設定部と、
前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える切替部と、
前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる動作部と、
を備え、
前記設定部は、前記ユーザにより入力された前記の名前であるシーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録し、
登録された前記シーン名が前記ユーザにより入力されて前記設定部により前記シーンが設定された場合に、前記制限パラメータの値を、入力された前記シーン名に関連付けられた前記制限パラメータの値に設定する。
【0013】
上記構成によれば、設定部は、前記ロボットの動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された前記制限パラメータに基づいて設定する。このため、ユーザは、複数の制限パラメータを、シーン単位でまとめて設定することができる。切替部は、前記ロボットに適用する前記シーンを切り替える。このため、ロボットに適用するシーンを切り替えることにより、複数の制限パラメータを一度に適用することができ、複数の制限パラメータの変更が容易となる。そして、動作部は、前記ロボットに適用された前記シーンで設定された前記制限パラメータにより制限した状態で前記ロボットを動作させる。したがって、設定された制限パラメータに基づいて、ロボットを適切に動作させることができる。
【0014】
前記設定部は、前記ユーザにより入力された前記シーンの名前であるシーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録する。このため、ユーザは、シーンを設定する時に制限パラメータを直接設定するだけでなく、前記シーン名と前記制限パラメータとを関連付けて予め登録しておくことができる。そして、登録された前記シーン名が前記ユーザにより入力されて前記設定部により前記シーンが設定された場合に、前記制限パラメータの値を、入力された前記シーン名に関連付けられた前記制限パラメータの値に設定する。したがって、ユーザは、登録した前記シーン名を入力して前記シーンを設定することにより、予め登録した制限パラメータの値に容易に設定することができる。
【0015】
第5の手段では、前記設定部は、複数のメインシーン及び前記メインシーンに従属する複数のサブシーンを備え、前記メインシーンを構成する前記制限パラメータと前記サブシーンを構成する前記制限パラメータとの組み合わせにより前記シーンを設定する。こうした構成によれば、ユーザは各状況に応じた各シーンを、複数のメインシーンとメインシーンに従属する複数のサブシーンとの組み合わせに整理して設定することができ、複数の制限パラメータを多くの状況に応じて設定する際に、誤った設定をすることを抑制することができる。ここで、ロボット制御システムでは、制限パラメータに誤った設定をするとロボットが周辺環境や人に危害を与えるおそれがあるため、制限パラメータの誤った設定を抑制することができることは極めて重要な意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ロボット、ロボット制御装置、及びティーチングペンダントを示す模式図。
【
図3】シーン2の最大トルクを増加させた状態を示す表。
【
図5】メインシーン及びサブシーンで設定するパラメータを示す図。
【
図6】メインシーンとサブシーンとの関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、人との協働作業を行うロボット、及びそのロボットを制御するロボット制御システムに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、ロボット10は、例えば垂直多関節型ロボットであり、アーム11を備えている。アーム11の隣り合うリンクは、関節を介して相対回転可能に連結されている。各関節(各軸)は、各関節に対応する各モータにより駆動される。ロボット10の各関節には、各関節の回転角度を検出するエンコーダ(図示略)、各関節のトルクを検出するトルクセンサ(図示略)等がそれぞれ設けられている。なお、ロボット10は、垂直多関節型ロボットに限らず、水平多関節型ロボット等であってもよい。
【0019】
アーム11の先端には、ハンド20が取り付けられている。ハンド20(ツール)は、例えば一対の爪を備えており、一対の爪の間隔を拡大及び縮小する開閉動作を行う。ハンド20の一対の爪が開閉動作を行うことにより、ワーク等が把持される。
【0020】
ロボット制御装置30は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータとして構成されている。ロボット制御装置30は、ロボット10に接続されている。ロボット制御装置30は、切替部32及び動作部33を備えている。ロボット制御装置30は、ロボット10を動作させる動作プログラムを実行することにより、切替部32及び動作部33の機能を実現してロボット10の動作を制御する。なお、ロボット制御装置30は、ロボット10に内蔵されていてもよい。
【0021】
ティーチングペンダント40(操作器)は、表示部41、操作部42、及び設定部43を備えている。表示部41は、液晶パネル等により構成され、ロボット10に関する表示を行う。操作部42は、ユーザにより操作されるキー、ボタン、ダイヤル等を備えている。設定部43は、ロボット10の動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定する。
【0022】
ユーザによる入力は、例えばロボット制御装置30に接続されたティーチングペンダント40を用いて行われる。制限パラメータは、例えばロボット10の監視部位の最大速度、ロボット10の対象関節の最大トルク、ロボット10の可動範囲(対象関節の可動角度)等を含む。シーンは、複数の制限パラメータの組み合わせにより構成されている。
【0023】
切替部32は、ロボット10に適用するシーンを切り替える。動作部33は、ロボット10に適用されたシーンで設定された制限パラメータにより制限した状態で、ロボット10を動作させる。
【0024】
ティーチングペンダント40は、ロボット10の動作をシミュレーションする機能を備えている。シミュレーション時において、ティーチングペンダント40は、ロボット10の動作プログラムを実行することにより、切替部32及び動作部33の機能を実現する。表示部41は、ロボット10のシミュレーション画像や動作プログラムを表示する。ユーザは、ティーチングペンダント40を操作して、ロボット10の動作プログラムを作成(編集)することができる。
【0025】
なお、ロボット制御装置30及びティーチングペンダント40により、ロボット制御システムが構成されている。
【0026】
図2は、各シーンの名前であるシーン名、及び各シーンの制限パラメータを示す表である。ここでは、最大速度、最大トルク、及び可動範囲により各シーンが構成されている例を示している。なお、各シーンは、図示した以外の制限パラメータを含んでいてもよいし、また制限パラメータ以外のパラメータを含んでいてもよい。
【0027】
DefaultSceneは、ロボット制御装置30において初期設定されているシーンであり、ユーザによる設定を必要とせず、ユーザが変更することはできない。DefaultSceneでは、最大速度、最大トルク、及び可動範囲の各値を、ロボット10を安全に動作させることができる初期設定値に設定している。ここでは、ロボット10の監視部位の速度を最大速度20以下に制限し、ロボット10の対象関節が発生するトルクを最大トルク20以下に制限し、ロボット10の可動範囲を範囲20以内に制限する例を示している。なお、最大速度、最大トルク、及び可動範囲の各値は、それぞれの傾向を抽象的に表したものであり(数値が大きいほど大きく、広くなる)、具体的な規定方法は任意である。ロボット制御装置30(ロボット制御システム)の起動時に、切替部32はDefaultSceneをロボット10に適用する(ロボット10に適用するシーンをDefaultSceneに切り替える)。すなわち、ロボット制御装置30の起動時に、ロボット10に現在適用されている全ての制限パラメータの値は、ロボット10を安全に動作させることができる初期設定値に設定される。そして、動作部33は、DefaultSceneで設定された制限パラメータにより制限した状態でロボット10を動作させる。
【0028】
Scene1,2は、ロボット10の動作プログラムを実行する前に、予め登録(設定)されたシーンである。Scene1,2のシーン名及び制限パラメータは、ロボット10の動作プログラムとは別のアプリケーション等において、例えばティーチングペンダント40の操作部42を用いてユーザにより入力され、設定部43により関連付けられて登録(設定)される。すなわち、設定部43は、ユーザにより入力されたシーン名と制限パラメータとを関連付けて予め登録(設定)する。ロボット10の動作プログラムとは別のアプリケーション等においてユーザによりシーン名及び制限パラメータが入力され、設定部43がシーン名と制限パラメータとを関連付けて登録(記憶)することは、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定部43がシーンを設定することに相当する。Scene1では、例えば最大速度の値が60、最大トルクの値が60、可動範囲の値が60に設定されている。Scene2では、例えば最大速度の値が50、最大トルクの値が50に設定され、可動範囲の値は設定されていない。なお、ロボット10の動作プログラムとは別のアプリケーション等においてScene1,2の制限パラメータが登録された段階では、切替部32はロボット10に適用するシーンをScene1,2に切り替えず、例えばロボット10にDefaultSceneが適用された状態が維持される。
【0029】
ここで、制限パラメータは、最大トルク、最大速度、及び可動範囲を含んでいる。各シーンは、例えばロボット10が実行する作業内容に応じて設定され、作業内容に応じて切り替えられる。ロボット10が実行する作業内容は、ワークを搬送する搬送工程、ワークを組み付ける組付工程、ワークを加工する加工工程等を含む。ワークの組付作業に対応するシーンにおいて、ユーザが最大トルクを増加させた場合は、ロボット10が人や周辺設備に接触した際に与える損害が大きくなるおそれがある。これに対して、ユーザによる動作プログラムの作成(編集)時や各シーンの制限パラメータの登録(編集)時に、例えば
図3に示すように、ユーザが登録された最大トルクの値を60から70に増加させた場合に、ティーチングペンダント40は、以下の制御を実行する。この場合は、設定部43、表示部41、及び操作部42の機能がティーチングペンダント40により実現される。
【0030】
設定部43は、ユーザが登録された最大トルクを増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す文章を表示部41に表示させる。このため、
図4に示すように、設定部43は、「シーン1の最大速度を下げることを推奨します。」という推奨文を表示部41に表示させる。あるいは、設定部43は、「シーン1の可動範囲を縮小することを推奨します。」という推奨文を表示部41に表示させる。あるいは、設定部43は、「シーン1の最大速度を下げるか、シーン1の可動範囲を縮小することを推奨します。」という推奨文を表示部41に表示させる。なお、ユーザがシーン3の登録された最大トルクを50から60に増加させた場合には、設定部43は、「シーン3の最大速度を下げることを推奨します。」という推奨文を表示部41に表示させればよい。
【0031】
又は、設定部43は、ユーザが登録された最大トルクを増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させた推奨値を表示部41に表示させる。
【0032】
このため、設定部43は、「シーン1の最大速度を50にすることを推奨します。」という推奨文を表示部41に表示させる。最大速度の推奨値は、例えばユーザが登録された最大トルクを増加させた増加量に比例させた減少量を、登録された最大速度から減少させることにより算出することができる。すなわち、ユーザが登録された最大トルクを増加させた増加量が大きいほど、登録された最大速度を減少させる減少量を大きくすることにより、最大速度の推奨値を算出することができる。なお、このとき、
図2の各シーンのパラメータ登録画面を表示部41に表示して、シーン1の最大速度に「50」を表示してもよい。また、ユーザがシーン3の登録された最大トルクを50から60に増加させた場合には、設定部43は、「シーン3の最大速度を40にすることを推奨します。」という推奨文を表示部41に表示させればよい。
【0033】
あるいは、設定部43は、「シーン1の可動範囲を50にすることを推奨します。」という推奨文を表示部41に表示させる。可動範囲の推奨値についても、最大速度の推奨値と同様に算出することができる。なお、このとき、
図2の各シーンのパラメータ登録画面を表示部41に表示して、シーン1の可動範囲に「50」を表示してもよい。
【0034】
要するに、設定部43は、ユーザが登録された最大トルクを増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を表示部41により行わせる。
【0035】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0036】
・設定部43は、ロボット10の動作を制限する複数の制限パラメータを構成要素として含むシーンを、ユーザにより入力された制限パラメータに基づいて設定する。このため、ユーザは、シーンの構成要素である複数の制限パラメータを入力することにより、複数の制限パラメータをシーン単位でまとめて設定することができる。切替部32は、ロボット10に適用するシーンを切り替える。このため、ロボット10に適用するシーンを切り替えることにより、複数の制限パラメータを一度に適用することができ、複数の制限パラメータの変更が容易となる。そして、動作部33は、ロボット10に適用されたシーンで設定された制限パラメータにより制限した状態でロボット10を動作させる。したがって、設定された制限パラメータに基づいて、ロボット10を適切に動作させることができる。
【0037】
・設定部43は、ユーザにより入力されたシーン名と制限パラメータとを関連付けて予め登録する。このため、ユーザは、シーンを設定する時に制限パラメータを直接設定するだけでなく、シーン名と制限パラメータとを関連付けて予め登録しておくことができる。そして、登録されたシーン名(例えば「Scene1」)がユーザにより入力されて設定部43によりシーンが設定された場合に、
図2に示すように、制限パラメータの値を、入力されたシーン名「Scene1」に関連付けられた制限パラメータの値(60,60,60)に設定する。したがって、ユーザは、登録したシーン名「Scene1」を入力してシーンを設定することにより、予め登録した制限パラメータの値(60,60,60)に容易に設定することができる。
【0038】
・設定部43は、ユーザが登録された最大トルクを増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を表示部41により行わせる。そして、登録された最大速度がユーザにより減少させられた場合は、ロボット10が人や周辺設備に接触した際に与える衝撃を減少させることができる。また、登録された可動範囲が減少させられた場合は、ロボット10が人や周辺設備に接触することを抑制することができる。したがって、最大トルクを増加させた場合であっても、ロボット10が人や周辺設備に損害を与えることを抑制することができる。
【0039】
・設定部43は、ユーザが登録された最大トルクを増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す文章(例えば「シーン1の最大速度を下げることを推奨します。」)を表示部41に表示させる。こうした構成によれば、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させるべきことを、ユーザに明確に伝えることができる。
【0040】
・設定部43は、ユーザが登録された最大トルクを増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させた推奨値(例えば可動範囲の推奨値としての「50」)を表示部41に表示させる。こうした構成によれば、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させる際に、それらの推奨値「50」をユーザが知ることができ、ユーザがそれらの値を設定する作業の負荷を軽減することができる。
【0041】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0042】
・制限パラメータとして、最大トルクに代えて最大力を採用することもできる。最大力は、例えばロボット10がワークに作用させる力の最大値を設定する。そして、設定部43は、ユーザが登録された最大力を増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を表示部41により行わせてもよい。
【0043】
・制限パラメータとして、最大トルクに代えて最大電流を採用することもできる。最大電流は、例えばロボット10の対象関節に設けられたモータに流す電流の最大値を設定する。そして、設定部43は、ユーザが登録された最大電流を増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を表示部41により行わせてもよい。
【0044】
・シーンが予め登録されていない場合、及びシーン名と制限パラメータとを関連付けて予め登録しておくことを設定部43が実行しない場合に、例えば「ChangeScene 60, 60,60」というコマンドにより、切替部32がシーン(最大速度,最大トルク,可動範囲)を直接設定することもできる。
【0045】
・設定部43によりシーンが設定された場合に、制限パラメータの値を、入力されたシーン名に関連付けられた制限パラメータの値に設定することを、切替部32に代わって動作部33が実行することもできる。具体的には、動作部33は、ロボット10に適用されたシーンで設定された制限パラメータにより制限した状態でロボット10を動作させる際に、制限パラメータの値を、入力されたシーン名に関連付けられた制限パラメータの値に設定して、制限パラメータにより制限した状態でロボット10を動作させることができる。
【0046】
・設定部43は、複数のメインシーン及びメインシーンMSnに従属する複数のサブシーンSnを備え、メインシーンMSnを構成する制限パラメータとサブシーンSnを構成する制限パラメータとの組み合わせによりシーンを設定することもできる。nは自然数である。
図5はメインシーンMSn及びサブシーンSnで設定するパラメータを示す図であり、
図6はメインシーンMSnとサブシーンSnとの関係を示す模式図である。
【0047】
例えば、メインシーンMSnではロボット10の使用条件を設定し、サブシーンSnでは安全監視を設定する。サブシーンSnで設定するパラメータは、シーン切替条件(例えば「切替位置」)、最大速度、最大トルク、最大力等である。最大速度、最大トルク、及び最大力は、上記実施形態及び変更例と同様である。シーン切替条件は、シーンの切り替えを許可するロボット10の位置等を設定する。メインシーンMSnで設定するパラメータは、各安全監視の有効設定、最大負荷質量、ツール番号、ワーク番号、可動範囲、監視部位等である。各安全監視の有効設定は、安全監視の最大速度等(各パラメータ)の有効又は無効を設定する。最大負荷質量は、ロボット10が移動させるワーク等の最大質量を設定する。ツール番号は、ツールの種類を表す番号である。ワーク番号は、ワークの種類を表す番号である。可動範囲は、上記実施形態と同様である。監視部位は、ロボット10のうち速度等を監視する部位を設定する。
【0048】
各サブシーンSnは、いずれかのメインシーンMSnに従属している。MS1S1は、メインシーンMS1の中の(下の階層の)サブシーンS1を表している。MS1S1、MS1S2、及びMS1S3は、いずれもメインシーンMS1に従属しており、メインシーンMS1で設定したパラメータが共通して適用されている。同様に、MSnSnは、メインシーンMSnの中のサブシーンSnを表している。
【0049】
こうした構成によれば、ユーザは各状況に応じた各シーンを、複数のメインシーンMSnとメインシーンMSnに従属する複数のサブシーンSnとの組み合わせに整理して設定することができ、複数の制限パラメータを多くの状況に応じて設定する際に、誤った設定をすることを抑制することができる。ここで、ロボット制御装置30では、制限パラメータに誤った設定をするとロボット10が周辺環境や人に危害を与えるおそれがあるため、制限パラメータの誤った設定を抑制することができることは極めて重要な意義を有する。
【0050】
・ティーチングペンダント40に代えて、ロボット制御装置30に接続されたPC(コンピュータ)、モニタ、キーボード、マウス等により、ティーチングペンダント40の機能(シミュレーション時における切替部32及び動作部33の機能を含む)を実現することもできる。
【0051】
・動作プログラムの作成(編集)時や各シーンの制限パラメータの登録(編集)時において、ユーザが登録された最大トルクを増加させた場合に、登録された最大速度及び可動範囲の少なくとも一方を減少させることを促す表示を表示部41により行わせることを、ロボット制御装置30により実現することもできる。
【0052】
・ロボット10の動作プログラムを、ビジュアルプログラミング言語により記述することもできる。この場合、ChangeScene等の各コマンドを、対応する各ブロック等に置き換えればよい。
【符号の説明】
【0053】
10…ロボット、30…ロボット制御装置、32…切替部、33…動作部、40…ティーチングペンダント、41…表示部、42…操作部、43…設定部。