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特開2023-173855印刷システム及び印刷システムにおけるヒータ能力判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173855
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】印刷システム及び印刷システムにおけるヒータ能力判定方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231130BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086373
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 巧
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA28
2C056EB07
2C056EB11
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB59
2C056HA05
2C056HA15
2C056HA37
2C057AF21
2C057AG14
2C057AL25
2C057AL26
2C057AM24
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】複数のプリンタに搭載されたヒータの能力をそれぞれ客観的に把握することが可能な印刷システム及びヒータ能力判定方法を提供する。
【解決手段】ヒータ34による加熱対象物又は該ヒータの温度を測定する温度センサ36を備えた複数のプリンタ30と、これらと通信可能な情報処理手段20と、を備えた印刷システム10。前記プリンタは、初期温度Tと加熱開始から目標温度に達するまでの準備時間tとを計測する計測部42と、前記初期温度及び前記準備時間を前記情報処理手段に送信する送信部31Aと、を備え、前記情報処理手段は、受信したデータに基づいて、初期温度及び標準準備時間に関するテーブルを算出する算出部を備え、前記プリンタ又は前記情報処理手段が、前記テーブルと新たに取得された前記初期温度及び前記準備時間とに基づいて、前記準備時間と前記標準準備時間との差分が、所定値よりも大きいか否かを判定する判定部44を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータと、該ヒータによる加熱対象物の温度又は該ヒータの温度を測定する温度センサとを備えた複数のプリンタと、
前記複数のプリンタと通信可能な情報処理手段と、
を備えた印刷システムにおいて、
前記プリンタは、
前記ヒータにより加熱を開始する際の前記加熱対象物又は該ヒータの温度である初期温度と、前記ヒータによる加熱開始から前記温度センサの測定温度が予め設定された目標温度に達するまでの準備時間と、を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記初期温度及び前記準備時間を前記情報処理手段に送信する送信部と、を備え、
前記情報処理手段は、
前記複数のプリンタから受信した前記初期温度及び前記準備時間のデータに基づいて、初期温度毎に標準的な準備時間を算出した、初期温度及び標準準備時間に関するテーブルを算出する算出部を備え、
前記プリンタ又は前記情報処理手段が、前記テーブルのデータと前記プリンタから新たに取得された前記初期温度及び前記準備時間とに基づいて、取得された前記初期温度における前記準備時間と前記標準準備時間との差分が、所定値よりも大きいか否かを判定する判定部を備えたことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記プリンタは、前記情報処理手段から前記テーブルのデータを取得して、前記判定部により、新たに取得された前記初期温度における前記準備時間と前記標準準備時間との差分が、所定値よりも大きいか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記プリンタは、前記加熱対象物の周辺の温度を測定可能な周辺温度センサを備え、
前記計測部は、前記ヒータにより加熱を開始する際に、前記初期温度と前記周辺温度センサが測定した周辺温度との差分が所定の範囲内にある場合に、前記準備時間を計測することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記情報処理手段は、前記プリンタの最初の使用開始からの経過期間が、所定の期間内であるプリンタから受信した前記初期温度及び前記準備時間のデータに基づいて、前記テーブルを算出することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記標準準備時間は、前記初期温度毎の前記準備時間の平均値であることを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記プリンタは、前記標準準備時間と新たに取得された前記準備時間との差分が前記所定値よりも大きい場合に、当該差分が前記所定値以下となるように前記ヒータの出力値を調整する出力調整部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記プリンタは、前記出力調整部によって調整された前記ヒータの出力値の履歴に基づいて、当該ヒータの故障時期を予測する故障時期予測部を備えたことを特徴とする請求項6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記プリンタは、
印刷対象物に対してインクを吐出するインクヘッドを備え、
前記ヒータ及び前記温度センサは、前記インクヘッドに搭載されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記プリンタは、
プリンタ本体に対して移動可能に構成されたキャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、印刷対象物に対してインクを吐出するインクヘッドと、を備え、
前記ヒータ及び前記温度センサは、前記インクヘッドに搭載され、
前記周辺温度センサは、前記キャリッジに搭載され、前記インクヘッドの外部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の印刷システム。
【請求項10】
ヒータと、該ヒータによる加熱対象物の温度又は該ヒータの温度を測定する温度センサとを備えた複数のプリンタと、
前記複数のプリンタと通信可能な情報処理手段と、
を備えた印刷システムにおけるヒータ能力判定方法であって、
前記プリンタが、前記ヒータにより加熱を開始する際の前記加熱対象物又は該ヒータの温度である初期温度と、前記ヒータによる加熱開始から前記温度センサの測定温度が予め設定された目標温度に達するまでの準備時間と、を計測する計測工程と、
前記初期温度及び前記準備時間を前記情報処理手段に送信する送信工程と、
前記情報処理手段が、前記複数のプリンタから受信した前記初期温度及び前記準備時間のデータに基づいて、初期温度毎に標準的な準備時間を算出した、初期温度及び標準準備時間に関するテーブルを算出する算出工程と、
前記プリンタ又は前記情報処理手段が、前記テーブルのデータと前記プリンタから新たに取得された前記初期温度及び前記準備時間とに基づいて、取得された前記初期温度における前記準備時間と前記標準準備時間との差分が、所定値よりも大きいか否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする印刷システムにおけるヒータ能力判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム及び印刷システムの制御方法に関し、特に、ヒータを搭載した複数のプリンタを備えた印刷システム及び該印刷システムにおけるヒータ能力判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクをインクヘッドから吐出して媒体に印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクや印刷対象物であるメディアを加熱するためのヒータを備えたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクを吐出するインクヘッドの内部にインクを温めるヒータを備えたインクジェットプリンタが記載されている。このインクジェットプリンタでは、ヒータによってインクを温めてインク粘度を低下させることにより、インクがインクヘッドのノズルから適切に吐出されるようにしている。インクヘッドの内部には、インクの温度を検知するための温度センサが設けられており、ヒータは、温度センサで検知された温度に基づいて、出力が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-168243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒータを搭載したプリンタでは、外気温度や湿度など使用環境によりヒータ能力にばらつきが生じる。また、ヒータの経年使用によりヒータ能力は低下する。従来のプリンタでは、プリンタの操作者が印刷された画像からヒータによる加熱能力を判断し、例えば加熱能力が低下している場合にはヒータの出力を上げる等、ヒータの能力調整を操作者の主観的判断で行っていた。
【0006】
しかしながら、操作者の主観的判断では、操作者ごとに判断にばらつきが生じることから、ヒータ能力を客観的に把握することができていなかった。特に、使用環境が異なる複数のプリンタにおいて、プリンタ毎にヒータ能力にばらつきを客観的に把握することは困難であり、プリンタ毎に印刷品質にばらつきが生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ヒータを搭載した複数のプリンタを備えた印刷システムにおいて、各プリンタに搭載されたヒータの能力をそれぞれ客観的に把握することが可能な印刷システム及び印刷システムにおけるヒータ能力判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る印刷システムは、ヒータと、該ヒータによる加熱対象物の温度又は該ヒータの温度を測定する温度センサとを備えた複数のプリンタと、前記複数のプリンタと通信可能な情報処理手段と、を備えた印刷システムにおいて、前記プリンタは、前記ヒータにより加熱を開始する際の前記加熱対象物又は該ヒータの温度である初期温度と、前記ヒータによる加熱開始から前記温度センサの測定温度が予め設定された目標温度に達するまでの準備時間と、を計測する計測部と、前記計測部により計測された前記初期温度及び前記準備時間を前記情報処理手段に送信する送信部と、を備え、前記情報処理手段は、前記複数のプリンタから受信した前記初期温度及び前記準備時間のデータに基づいて、初期温度毎に標準的な準備時間を算出した、初期温度及び標準準備時間に関するテーブルを算出する算出部を備え、前記プリンタ又は前記情報処理手段が、前記テーブルのデータと前記プリンタから新たに取得された前記初期温度及び前記準備時間とに基づいて、取得された前記初期温度における前記準備時間と前記標準準備時間との差分が、所定値よりも大きいか否かを判定する判定部を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るヒータ能力判定方法は、ヒータと、該ヒータによる加熱対象物の温度又は該ヒータの温度を測定する温度センサとを備えた複数のプリンタと、前記複数のプリンタと通信可能な情報処理手段と、を備えた印刷システムにおけるヒータ能力判定方法であって、前記プリンタが、前記ヒータにより加熱を開始する際の前記加熱対象物又は該ヒータの温度である初期温度と、前記ヒータによる加熱開始から前記温度センサの測定温度が予め設定された目標温度に達するまでの準備時間と、を計測する計測工程と、前記初期温度及び前記準備時間を前記情報処理手段に送信する送信工程と、前記情報処理手段が、前記複数のプリンタから受信した前記初期温度及び前記準備時間のデータに基づいて、初期温度毎に標準的な準備時間を算出した、初期温度及び標準準備時間に関するテーブルを算出する算出工程と、前記プリンタ又は前記情報処理手段が、前記テーブルのデータと前記プリンタから新たに取得された前記初期温度及び前記準備時間とに基づいて、取得された前記初期温度における前記準備時間と前記標準準備時間との差分が、所定値よりも大きいか否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記印刷システム及び印刷システムにおけるヒータ能力判定方法によれば、複数のプリンタから、初期温度及び準備時間のデータを情報処理手段に集めて、情報処理手段にて、初期温度毎に標準的な準備時間を算出した、初期温度及び標準準備時間に関するテーブルを算出することができ、この算出された標準準備時間と、プリンタで新たに取得された準備時間との差分から、ヒータの能力が標準的な能力の範囲内にあるか否かを把握することができる。これにより、使用環境が異なる複数のプリンタにおいて、ヒータ能力のばらつきを客観的に把握することが可能となり、プリンタ毎に印刷品質にばらつきが生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る印刷システム及び印刷システムにおけるヒータの能力判定方法によれば、ヒータを搭載した複数のプリンタを備えた印刷システムにおいて、各プリンタに搭載されたヒータの能力をそれぞれ客観的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である印刷システムの概略説明図である。
図2】印刷システムのブロック図である。
図3】印刷システムを構成するプリンタの正面図である。
図4】プリンタに設けられたキャリッジの下面の構造を示す模式図である。
図5図4に示すキャリッジを矢印Aの方向から見た一部断面図である。
図6図4に示すキャリッジを矢印Bの方向から見た一部断面図である。
図7】インクヘッドの内部構造を説明する模式図である。
図8】第1の温度センサで測定される温度と時間との関係を示すグラフである。
図9】テーブルの一例を示す図である。
図10A】ヒータの出力値を調整する前の印加電圧と時間との関係を示すグラフである。
図10B】ヒータの出力値を調整した後の印加電圧と時間との関係を示すグラフである。
図11】ヒータの故障予測方法を説明するグラフである。
図12】印刷システムが実施するテーブルデータ作成処理の手順を示すフローチャートである。
図13】印刷システムが実施するヒータ能力判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る印刷システム10及び印刷システム10におけるヒータ能力判定方法の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である印刷システムの概略説明図である。印刷システム10は、複数のプリンタ30-1~30-n(nは整数)と、各プリンタ30-1~30-nとネットワーク12を介して通信可能な情報処理手段であるサーバ装置20と、を備える。各プリンタ30とサーバ装置20とを接続するネットワーク12の通信態様は、有線であっても無線であってもよい。
【0014】
図2は、印刷システム10のブロック図であり、サーバ装置20と1つのプリンタ30-1の構成要素を示している。なお、印刷システム10を構成しているサーバ装置20と通信可能な他のプリンタ30-2~30-nは、図2に示すプリンタ30-1と同様の構成要素を備えているため、以下の説明では、1つのプリンタ30について詳説する。プリンタ30の一例として、本実施形態では、インクヘッド52からインクを吐出するインクジェットプリンタを記載している。
【0015】
図2に示すように、サーバ装置20は、通信部22と、記憶部24と、算出部26と、を備えている。プリンタ30は、通信部31と、操作パネル32と、ヒータ34と、ヒータ駆動部35と、ヒータ34による加熱対象物の温度を測定する第1の温度センサ36と、周辺温度を測定可能な第2の温度センサ38と、制御装置40と、を備えている。操作パネル32及びヒータ駆動部35は、制御装置40と電気的に接続されている。サーバ装置20及びプリンタ30の通信部22,31は、それぞれ、ネットワーク12に接続されており、外部へデータを送信可能な送信部22A,31Aと、外部からデータを受信可能な受信部22B,31Bと、を備えている。ヒータ34及び第1の温度センサ36は、プリンタ30のインクヘッド52に搭載されており、第2の温度センサ38は、インクヘッド52を搬送するキャリッジ50に設けられている。以下、図2及び図3を用いてプリンタ30について詳説する。
【0016】
図3は、プリンタ30の一例を示す図であって、プリンタ30の正面図を示している。図3において、符号U及びDは上方及び下方、符号L及びRは左方及び右方を示しており、図3の紙面手前側及び紙面奥行側は、前方及び後方を示している。ここで、前方及び後方とは、プリンタ30の正面にいる作業者から見て作業者に向かう方向及び作業者から遠ざかる方向をそれぞれ意味し、左方及び右方とは、プリンタ30の正面にいる作業者から見た左方向及び右方向をそれぞれ意味する。本実施形態では、プリンタ30のインクヘッド52の移動方向を主走査方向Yといい、主走査方向Yと平面視で直交する方向を副走査方向という。本実施形態において、主走査方向Yは左右方向と一致し、副走査方向は前後方向と一致している。
【0017】
プリンタ30は、プリンタ本体30Aと、プリンタ本体30Aを支持する脚部30Bと、を備える。プリンタ本体30Aは、左右方向に長く延びており、プリンタ本体30Aの前面には、作業者がプリンタ30の操作するための操作パネル32が設けられている。操作パネル32は、印刷状況やインク残量等を表示可能な表示部32Aを有している。制御装置40は、プリンタ本体30Aに内蔵されている。プリンタ本体30Aは、主走査方向Yに延びるガイドレール70と、ガイドレール70に係合したキャリッジ50と、印刷対象物であるメディア5を載置する載置台78とを備えている。インクヘッド52は、キャリッジ50に搭載されている。
【0018】
ガイドレール70は、キャリッジ50の主走査方向Yへの移動をガイドする。キャリッジ50は、無端状のベルト72に固定されており、ベルト72は、ガイドレール70の左側に設けられたプーリ73Aおよび右側に設けられたプーリ73Bに巻き掛けられている。右側のプーリ73Bにはキャリッジ用モータ74が接続されている。キャリッジ用モータ74は、制御装置40と電気的に接続されており、制御装置40によって駆動が制御される。キャリッジ用モータ74が駆動するとプーリ73Bが回転し、ベルト72が走行する。これにより、キャリッジ50及びこれに搭載されたインクヘッド52が、ガイドレール70に沿って主走査方向Yに移動する。
【0019】
載置台78は、キャリッジ50の下方に配置されており、左右方向に長く延びている。載置台78には、メディア5が載置される。メディア5は、例えば、記録紙等の紙類、樹脂製のシート等とすることができる。載置台78の上方には、メディア5を上から押下するピンチローラ76が設けられている。ピンチローラ76は、キャリッジ50よりも後方側に配置されている。載置台78には、グリットローラ77が設けられている。グリットローラ77及びピンチローラ76は対向して配置され、グリッドローラ77はピンチローラ76の下方に位置している。グリッドローラ77は、図示していないローラ用モータに接続されており、このローラ用モータは制御装置40によって駆動が制御される。メディア5がピンチローラ76とグリットローラ77に挟まれた状態で、ローラ用モータが駆動してグリッドローラ77が回転すると、メディア5は載置台78の前方に搬送される。
【0020】
次に、キャリッジ50及びインクヘッド52について説明する。図4は、キャリッジ50の下面の構造を示す模式図、図5は、キャリッジ50を図4の矢印Aの方向から見た模式図、図6は、キャリッジ50を図4の矢印Bの方向から見た模式図、図7は、インクヘッド52の内部構造を説明する模式図である。キャリッジ50は、キャリッジ50の下面を形成するキャリッジプレート51を備えている。インクヘッド52は、キャリッジプレート51に固定されている。なお、インクヘッド52とキャリッジプレート51が一体となって形成されていてもよい。
【0021】
図4に示すように、インクヘッド52は、下面に多数のノズル孔55が形成されたノズル面56を有している。インクヘッド52は、このノズル面56がキャリッジプレート51に形成された開口部51aから露出した状態で、キャリッジプレート51に固定されている。図4では、縦方向に8つ並ぶノズル孔55が、横方向に4列形成されているが、ノズル孔55の数や配置はこれに限られず、適宜設定することができる。図5及び図6では、インクヘッド52におけるノズル面56の範囲を太破線で示している。
【0022】
図7に示すように、インクヘッド52には、インクを貯留するインクカートリッジ60からインク供給路62を介してインクが供給される。インクカートリッジ60は、プリンタ本体30Aに着脱可能に装着される。インクヘッド52は、中空のケース本体52Aと、インク供給路62と連通されたインク流入口53と、インク流路54aと、インク流路54aの下流側に位置する所定量のインクが貯留される圧力室54bと、圧力素子を備えたアクチュエータ54cと、振動板54dと、ノズル孔55とを有している。なお、インク流路54aは、ノズル孔55毎に設けられているが、図7では、理解しやすいように1つのインク流路54aと1つのノズル孔55を記載している。図7において白抜き矢印はインクの流れ方向を示している。圧力室54bは、インク流路54aの下流側に設けられ、振動板54dは、圧力室54bの一部を形成しており、アクチュエータ54cは、振動板54dと連結されている。アクチュエータ54cは、図3に示す制御装置40と電気的に接続されており、制御装置40から駆動信号を受けて膨張又は収縮し、振動板54dを変形させる。このインクヘッド52は、振動板54dの変形によって圧力室54bが膨張又は収縮することにより、圧力室54b内のインクがノズル孔55から吐出される。
【0023】
図7に示すように、ヒータ34は、インクヘッド52の内部においてインク流路54aの上方に設けられており、インク流路54aを加熱することで、インク流路54a内を通るインクを加熱する。第1の温度センサ36は、ヒータ34により加熱されるインクの温度を測定可能となるようにインクヘッド52内に配置されており、本実施形態では、ヒータ34の下方且つノズル孔55の近傍に配置されている。なお、第1の温度センサは、ヒータ34の温度を直接測定可能となるような位置に配置されていてもよい。
【0024】
図4図6に示すように、第2の温度センサ38は、加熱されるインクの周辺の温度を測定可能となるように、インクヘッド52の外部であって、キャリッジ50の内部に搭載されている。本実施形態では、第2の温度センサ38が、キャリッジプレート51に固定設置されている。なお、第2の温度センサ38は、キャリッジ50の外周に固定されていてもよい。また、第2の温度センサ38は、プリンタ本体30Aの内部のキャリッジ50以外の部材に固定されていてもよい。本実施形態では、第1の温度センサ36及び第2の温度センサ38の一例として、サーミスタを用いている。
【0025】
次に、プリンタ30の制御装置40について説明する。制御装置40は、例えばCPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部等を有して構成されている。図2に示すように、制御装置40は、記憶部41と、計測部42と、判定部44と、出力調整部46と、故障時期予測部48と、を備えている。記憶部41は、後述する初期温度T及び準備時間tを算出するためのプログラム、ヒータ34による加熱対象物の目標温度Ttgt、判定部44が行う判定の基準となる所定値pt、ヒータ34の故障時期予測のための出力値の情報などを記憶している。
【0026】
計測部42は、第1の温度センサ36の測定結果に基づき、ヒータ34により加熱を開始する際のインク(加熱対象物)の温度である初期温度Tを計測する。ここで「加熱を開始する際」とは、ヒータ34による加熱開始時、及び、加熱開始前の時間を含む概念である。本実施形態では、図8に示すように、ヒータ34による加熱開始時tよりも少し前の時間t(例えば、加熱開始時tよりも数秒前の時)に第1の温度センサ36が測定したインクの温度を初期温度Tとして計測している。また、計測部42は、ヒータ34による加熱開始から第1の温度センサ36の測定温度が予め設定された目標温度Ttgtに達するまでの準備時間tを計測する。
【0027】
本実施形態では、第1の温度センサ36により初期温度Tを計測する際、同時に、第2の温度センサ38によって周辺温度ATを測定しており、計測部42により、初期温度Tと周辺温度ATとの差分を算出している。計測部42は、初期温度Tと周辺温度ATとの差分が、所定の範囲内である場合に、準備時間tを計測するようにしている。本実施形態では、基準となる温度の差分値Tを設けており、|T-AT|≦Tである場合に、準備時間tを計測する。温度差分値Tは、例えば1℃とすることができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、計測部42が、プリンタ30の最初の使用開始からの経過期間を計測している。プリンタ30は、計測した経過期間が、所定の期間内である場合に、送信部31Aによって、計測された初期温度T及び準備時間tをサーバ装置20に送信するようにしている。一例として、所定の期間を100日と設定した場合、計測部42は、プリンタ30の最初の使用開始からの経過期間を計測し、経過期間が100日以内である場合に、制御装置40は、送信部31Aを介して初期温度T及び準備時間tのデータをサーバ装置20に送信する。
【0029】
判定部44は、サーバ装置20から取得した後述する初期温度T及び標準準備時間tstdに関するテーブルのデータ(図9を参照)と、プリンタ30から新たに取得された初期温度T及び準備時間tとに基づいて、新たに取得された初期温度Tにおける準備時間tと、この初期時間Tにおけるテーブルの標準準備時間tstdとの差分が、予め設定された所定値よりも大きいか否かを判定する。本実施形態では、判定の基準となる所定値ptを設けており、判定部44は、|t-tstd|>ptであるか否かを判定する。
【0030】
出力調整部46は、上述した判定部44の判定結果により、標準準備時間tstdと新たに取得された準備時間tとの差分が所定値ptよりも大きい場合に、当該差分が所定値pt以下となるようにヒータ34の出力値を調整する。例えば、出力調整部46は、差分が所定値ptよりも大きく、標準準備時間tstdよりも準備時間tの値が大きい場合に、ヒータ34の出力が高くなるように調整し、差分が所定値ptよりも大きく、標準準備時間tstdよりも準備時間tの値が小さい場合に、ヒータ34の出力が低くなるように調整する。図10Aに示すように、本実施形態では、一定周期でパルス幅のデューティ比を変更するPWM制御によってヒータ34の出力を調整しており、図10Bに示すようにデューティ比を大きくすることで、出力値を高くすることができる。
【0031】
故障時期予測部48は、出力調整部46によって調整されたヒータ34の出力値の履歴に基づいて、ヒータ34の故障時期を予測する。例えば、図11に示すように、ヒータ34のPWM制御において、出力調整部46による出力値の履歴が、プリンタ30の使用開始時にはデューティ比20%、使用開始から半年後にはデューティ比40%、使用開始から一年後にはデューティ比60%となっている場合、経過期間における平均的な出力上昇値を算出して、一年半後には、デューティ比80%になると予測することができる。このように、故障時期予測部48は、出力値の履歴情報から今後の出力値を予測することで、ヒータ34に故障が生じると予測される、予め設定された出力値(デューティ比)に、いつ達するかを予測することができる。さらに、故障時期予測部48は、この予測結果を図3に示すプリンタ30の操作パネル32の表示部32Aに、表示させることができる。一例として、故障時期予測部48により、現時点から予測された故障時期までの期間が、予め設定された期間内となった場合に、予測された故障時期までの期間を表示部32Aに表示させることができる。例えば、予め設定された期間が2ヶ月である場合、故障時期予測部48により予測された現時点からヒータ34の故障時期までの期間が2ヶ月を切った場合に、ヒータ34の交換を促す情報を表示部32Aに表示させることができる。なお、本実施形態のように、ヒータ34がインクヘッド52に内蔵されている場合には、インクヘッド52の交換時期として、表示部32Aに表示させることができる。
【0032】
次に、サーバ装置20について説明する。サーバ装置20は、例えばCPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス等を有して構成されている。図1及び図2に示すように、サーバ装置20は、ネットワーク12に接続された通信部22を備え、通信部22は、プリンタ30に対してデータを送信する送信部22Aと、プリンタ30からデータを受信する受信部22Bとを備える。サーバ装置20は、さらに、記憶部24と、算出部26と、を備える。記憶部24は、後述する標準準備時間tstdを算出するためのプログラム等の情報を記憶している。
【0033】
算出部26は、各プリンタ30-1~30-nから受信した初期温度T及び準備時間tに基づいて、初期温度T毎に標準的な準備時間を算出した、初期温度T及び標準準備時間tstdに関するテーブルを算出する。図9は、算出部26が算出するテーブルの一例である。算出部26は、予め設定された初期温度Tの区分毎に、標準準備時間tstdを算出することができ、図9では、5℃毎に温度の範囲を区分して、各温度区分で、複数のプリンタ30-1~30-nから取得された準備時間tの平均値を算出して標準準備時間tstdとしている。例えば、図9に示すテーブルにおいて、初期温度Tが10℃の場合、標準準備時間tstdはt(S)である。
【0034】
次に、図12及び図13を用いて、上述した印刷システム10におけるヒータ能力判定方法について説明する。印刷システム10は、まず、各プリンタ30から初期温度T及び準備時間tに基づいて、テーブルのデータを作成する。その後、印刷システム10は、作成されたテーブルデータに基づいて、ヒータ34の能力の判定や、判定結果に基づくヒータ34の出力調整を行うことができる。
【0035】
図12は、印刷システム10が実施するテーブルデータ作成処理を示すフローチャートである。テーブルデータ作成処理では、まず、プリンタ30の第1の温度センサ36及び第2の温度センサ38により、初期温度Tと周辺温度ATとを取得する(ステップS11)。次に、プリンタ30の制御装置40は、初期温度Tと周辺温度ATの差分の絶対値が、基準となる温度差分値T以下であるか否かを判断し(ステップS12)、温度差分値T以下である場合には、計測部42により、初期温度T及び準備時間tを計測する(ステップS13)。温度差分値Tを超える場合には(ステップS12:No)、処理を終了する。
【0036】
次に、計測部42は、プリンタ30の最初の使用開始からの経過期間を計測し、使用経過期間が所定の期間内であるか否かを判断する(ステップS14)。プリンタ30の使用経過期間が所定の期間を超えている場合には(ステップS14:No)、処理を終了する。使用経過期間が所定の期間内である場合、プリンタ30の送信部31Aにより、初期温度T及び準備時間tのデータをサーバ装置20に送信する(ステップS15)。
【0037】
上述したステップS11~ステップS15の処理は、ネットワーク12に接続された各プリンタ30で行われる。
【0038】
サーバ装置20は、受信部22Bを介して各プリンタ30から初期温度T及び準備時間tのデータを受信すると、これらのデータに基づいて、算出部22が、初期温度T及び標準準備時間tstdに関するテーブルを算出する(ステップS16)。算出部22により算出されたテーブルデータは、サーバ装置20の送信部22Aによって各プリンタ30へ送信される(ステップS17)。算出部22は、プリンタ30から初期温度T及び準備時間tのデータが受信される度にテーブルデータを更新し、サーバ装置20は、更新されたテーブルデータを各プリンタ30へ送信する。なお、サーバ装置20からのテーブルデータの送信は、プリンタ30からテーブルデータの要求の信号を受信した際に、要求のあったプリンタ30にのみ送信するようにしてもよい。プリンタ30は、例えば起動時にテーブルデータの要求信号をサーバ装置20に送信するようにすることができる。
【0039】
次に、サーバ装置20が作成したテーブルデータに基づいて、ヒータ能力を判定する手順について説明する。図13は、印刷システム10が実施するヒータ能力判定処理の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、各プリンタ30の制御装置40が、搭載されたヒータ34の能力の判定を行っており、図13は、各プリンタ30で実施される処理の手順を示している。
【0040】
まず、プリンタ30は、サーバ装置20から初期温度T及び標準準備時間tstdに関するテーブルのデータを受信する(ステップS21)。その後、プリンタ30は、ヒータ34によりインクの加熱を開始する際に、第1の温度センサ36及び第2の温度センサ38により、初期温度Tと周辺温度ATとを取得する(ステップS22)。次に、制御装置40の計測部42は、初期温度Tと周辺温度ATの差分の絶対値が、予め設定された基準となる温度差分値T以下であるか否かを判断し(ステップS23)、温度差分値T以下である場合には、初期温度T及び準備時間tを計測する(ステップS24)。差分が温度差分値Tを超える場合には(ステップS23:No)、処理を終了する。
【0041】
ステップS24において初期温度T及び準備時間tが新たに計測されると、制御装置40の判定部44は、ステップS21で取得されたテーブルデータに基づいて、計測された初期温度Tにおける準備時間tと、この初期温度Tにおけるテーブルの標準準備時間tstdとの差分が、予め設定された所定値ptよりも大きいか否かを判定する(ステップS25)。差分が所定値ptよりも大きい場合(ステップS25:Yes)、制御装置40は、出力調整部46により、差分が所定値pt以下となるようにヒータ34の出力値を調整し(ステップS26)、調整されたヒータ34の出力値を履歴情報として記憶部41に記憶する(ステップS27)。差分が所定値pt以下の場合には(ステップS25:No)、制御装置40は、出力調整を行わずに、ヒータ34の出力値を履歴情報として記憶部41に記憶する(ステップS27)。
【0042】
次に、制御装置40は、記憶部41に記憶された出力値の履歴情報に基づいて、故障時期予測部48によりヒータ34の故障時期を予測する(ステップS28)。その後、予測された故障期間が、予め設定された所定の期間以内であるか否かを判断し(ステップS29)、所定の期間以内である場合には、故障時期の予測結果をプリンタ30の表示部32Aに表示させる(ステップS30)。ステップS29において、所定の期間以内ではないと判断された場合には、表示を行わずに処理を終了する。
【0043】
上述したように、本実施形態の印刷システム10では、複数のプリンタ30から、初期温度T及び準備時間tのデータをサーバ装置20に集めて、サーバ装置20にて、初期温度T及び標準準備時間tstdに関するテーブルを算出することができ、この算出された標準準備時間tstdと、プリンタ30で新たに取得された準備時間tとの差分から、プリンタ30に搭載されたヒータ34の能力が標準的な能力の範囲内にあるか否かを把握することができる。これにより、使用環境が異なる複数のプリンタ30において、ヒータ34の能力のばらつきや、ヒータ34の能力の低下を客観的に把握することができる。
【0044】
また、本実施形態の印刷システム10では、判定部44により、差分が所定値よりも大きいと判定された場合、例えば、準備時間tが標準準備時間tstdよりも長く、ヒータ34の能力が低下している状況や、準備時間tが標準準備時間tstdよりも短く、ヒータ34の出力が必要以上に高くなっている場合に、プリンタ30の出力調整部46によりヒータ34の出力を標準的な出力となるように調整することで、各プリンタ30におけるヒータ34の能力のばらつきを抑制することができる。これにより、プリンタ30毎に印刷品質にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態の印刷システム10では、故障時期予測部48によりヒータ34の故障時期を予測することで、ヒータ34の寿命によるインクヘッド52交換時期を予測することができる。また、この予測結果を表示部32Aに表示させることで、ヒータ34やインクヘッド52の交換時期をユーザに知らせることができる。
【0046】
また、本実施形態の印刷システム10では、第1の温度センサ36及び第2の温度センサ38による測定温度を用いて、初期温度Tと周辺温度ATの差分が、所定の範囲内にある場合に、初期温度T及び準備時間tを計測するようにしているので、ヒータ34の能力の判定精度を高めることができる。具体的には、例えば、プリンタ30において、ヒータ34の使用停止直後に、再びヒータ34の使用を開始した場合、インクの温度は、前回のヒータ34の使用による余熱によって、初期温度Tが周辺温度ATよりも高い状態、すなわち差分が大きい状態にある。そのため、この様な状況を除き、インクの初期温度Tと周辺温度ATとの差分が所定の範囲内にあり、初期温度Tが周辺温度ATとほぼ等しい場合にのみ、初期温度T及び準備温度tを計測して、これらのデータに基づいて標準準備時間tstdを算出したり、ヒータ34の能力の判定を行ったりしている。これにより、インクの初期温度Tが余熱の影響を受けている状況を排除して、ヒータ34の能力の判定精度を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態の印刷システム10では、テーブルデータを作成する際に、プリンタ30の最初の使用開始からの経過期間が、所定の期間内にあり、ヒータ34の劣化や故障の可能性が低いプリンタ30からのデータに基づいて、テーブルを算出しているので、ヒータ34の能力の判定精度をより高めることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、ヒータ34によりインクヘッド52内のインクを加熱し、第1の温度センサ36及び第2の温度センサ38により、インクヘッド52内のインク温度と、インクヘッド52の周辺温度を測定しているが、ヒータ34によりインクカートリッジ60からインクヘッド52に連通するインク供給路62内のインクを加熱し、第1の温度センサ36及び第2の温度センサ38により、インク供給路62内のインク温度と、インク供給路62の周辺温度を測定してもよい。また、ヒータ34による加熱対象物は、インクに限られない。例えば、ヒータ34による加熱対象物は、メディア5であってもよく、かかる場合には、第1の温度センサ36は、メディア5の温度を測定可能な位置(例えば、メディア5が載置される載置台78)に配置され、第2の温度センサ38は、プリンタ本体30Aにおいてメディア5の周辺温度を測定可能な位置に配置される。なお、上述したインクヘッド52内のインクやインク供給路62内のインク、メディア5をそれぞれ加熱するヒータ34を組み合わせてプリンタ30に搭載してもよい。同様にインクヘッド52内のインクやインク供給路62内のインク、メディア5のそれぞれの温度及び周辺温度をそれぞれ測定する第1の温度センサ36及び第2の温度センサ38を組み合わせてプリンタ30に搭載してもよい。本実施形態のように、印刷システム10をインクヘッド52に搭載されるインク用のヒータ34に適用した場合には、インクの吐出精度に影響を与えるヒータ34の能力を把握することにより、プリンタ30の印刷品質を向上させることができる。例えば、ヒータ能力を把握して、ヒータ34の出力調整を行うことで、各プリンタ30において、インクヘッド52から吐出されるインクの温度をほぼ均一に保つことができ、プリンタ30毎の印刷品質のばらつきを抑えることが可能である。
【0049】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、判定部44は、プリンタ30ではなく、サーバ装置20に設けられ、サーバ装置20が各プリンタ30から初期温度T及び準備時間tを受信した際に、既に算出されている初期温度T及び標準準備時間tstdに関するテーブルのデータに基づいて、準備時間tと標準準備時間tstdとの差分を求め、判定を行う構成であってもよい。かかる場合、判定結果は、通信部22,31を介してプリンタ30に送信することができる。
【0051】
また、ヒータ34の出力値の履歴をサーバ装置20の記憶部24に記憶させ、故障時期予測部48が、プリンタ30ではなく、サーバ装置20に設けられる構成であってもよい。かかる場合、ヒータ34の出力値の情報は、通信部22、31を介してプリンタ30からサーバ装置20に送信され、故障時期の予測結果が通信部22、31を介してサーバ装置20からプリンタ30に送信される。
【0052】
また、例えば、上述した実施形態では、各プリンタ30が、最初の使用開始からの経過期間が所定の期間内であるか否かを判断し、所定の期間内である場合に、テーブル作成のための初期温度T及び準備時間tのデータをサーバ装置20に送信しているが、サーバ装置20が、各プリンタ30から送信されるデータに基づいて、プリンタ30の使用経過期間が所定の期間内であるか否かを判断してもよい。例えば、各プリンタ30が、初期温度T及び準備時間tとともに、最初の使用開始からの経過期間に関するデータをサーバ装置20に送信し、サーバ装置20が、プリンタ30の使用経過期間が所定の期間内であると判断した場合に、同時に受信された初期温度T及び準備時間tのデータに基づいてテーブルを算出してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態のプリンタ30は、載置台78に載置されたメディア5をピンチローラ76とグリッドローラ77で挟んだ状態で、メディア5を搬送する構成である、いわゆるロールトゥロールタイプのプリンタであったが、これに限定されない。例えば、メディア5が載置された載置部78をインクヘッド52に対して副走査方向に移動させる構成である、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。また、メディア5が載置された載置部78を移動させず、キャリッジ50をメディアに対して主走査方向Y及び副走査方向に移動させる構成である、いわゆるガントリータイプのプリンタであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 印刷システム
12 ネットワーク
20 サーバ装置(情報処理手段)
22A 送信部
22B 受信部
26 算出部
30 プリンタ
31A 送信部
31B 受信部
32 操作パネル
35 ヒータ駆動部
36 第1の温度センサ
38 第2の温度センサ(周辺温度センサ)
40 制御装置
42 計測部
44 判定部
46 出力調整部
48 故障時期予測部
50 キャリッジ
52 インクヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13