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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173859
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】レール踏面測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20231130BHJP
   G01B 21/30 20060101ALI20231130BHJP
   E01B 35/08 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01B21/00 R
G01B21/30 101Z
E01B35/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086377
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】相澤 宏行
(72)【発明者】
【氏名】寺下 善弘
(72)【発明者】
【氏名】細田 充
【テーマコード(参考)】
2D057
2F069
【Fターム(参考)】
2D057AB02
2F069AA01
2F069AA42
2F069AA60
2F069AA61
2F069BB25
2F069GG01
2F069GG62
2F069NN08
2F069NN16
2F069QQ01
(57)【要約】
【課題】 可搬性に優れ、レール凹凸の位置や形状を数値化したデジタルデータを与えるレール踏面測定装置の提供。
【解決手段】 鉄道のレール凹凸の位置及び形状を数値化したデジタルデータを与えるレール踏面測定装置である。レールに沿った測定区間の起点及び終点を結ぶ直線を基準に、測定区間におけるレール表面の高さ位置を連続して表した波形データについて、直線に沿って所定間隔でサンプリングし各位置での直線に対する高さ位置の変位の数値データを取得する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール凹凸の位置及び形状を数値化したデジタルデータを与えるレール踏面測定装置であって、
レールに沿った測定区間の起点及び終点を結ぶ直線を基準に、前記測定区間におけるレール表面の高さ位置を連続して表した波形データについて、前記直線に沿って所定間隔でサンプリングし各位置での前記直線に対する前記高さ位置の変位の数値データを取得する解析部を含むことを特徴とするレール踏面測定装置。
【請求項2】
前記波形データは、前記変位の大きさに対応した関数で表される前記位置のずれを含むことを特徴とする請求項1記載のレール踏面測定装置。
【請求項3】
前記解析部は前記関数の逆関数を用いて前記ずれを補正する補正処理部を含むことを特徴とする請求項2記載のレール踏面測定装置。
【請求項4】
前記波形データはレールに沿ったレール凹凸の断面形状に対応する実測線を含む入力画像として与えられることを特徴とする請求項3記載のレール踏面測定装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記入力画像の画像解析により、前記起点及び前記終点に対応する画像を抽出し、前記実測線に対応する実測線画像を抽出する抽出部を含むことを特徴とする請求項4記載のレール踏面測定装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記実測線画像から前記波形データを取得するデータ取得部を含むことを特徴とする請求項5記載のレール踏面測定装置。
【請求項7】
前記抽出部は、前記入力画像を二値化処理して画像解析することを特徴とする請求項6記載のレール踏面測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール凹凸の位置及び形状を数値化したデジタルデータを与えるレール踏面測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールの踏面に生じる凹凸(以下、「レール凹凸」と称する。)は、この上を走行する鉄道車両の車輪の転動による騒音や、発生する衝撃力を介して軌道損傷を与える原因ともなり得るため、鉄道現場ではこのレール凹凸の位置や形状を測定し大きさ変化などを管理しておく必要がある。かかる測定では、作業員が現場に赴いて、ストレッチゲージと呼ばれる1m程度の真直な棒(ガイドバー)をレールの上に配置しこの棒に沿ってレール頭頂面との間の相対変位を測定していく測定装置が広く用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、上記したようなストレッチゲージを用いてレール踏面のうちのレール頭頂面及びレール頭側面の2箇所のレール凹凸の位置及び形状を長尺の記録紙に波形として記録するレール踏面測定器を開示している。ここでは、レール踏面にローラーを押しつけつつガイドバーに沿って移動させ、一軸回転支持させたアームをローラー及びガイドバーの相対変位に対応させた角度だけ回動させる。一方、移動距離に対応して記録紙を送りつつこれにアームの回動先端に取り付けた記録ペンで波形を記録するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-153424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなレール踏面測定器は、可搬性に優れ、レール凹凸の位置や形状を波形のアナログデータとして得られこれを測定現場にて直ちに確認できる。一方、波状摩耗の把握やレール応力の算出には、レール凹凸を数値化したデジタルデータが必要となり、かかるデジタルデータを測定現場にて得られることも望まれる。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、可搬性に優れ、レール凹凸の位置や形状を数値化したデジタルデータを与えるレール踏面測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による装置は、レール凹凸の位置及び形状を数値化したデジタルデータを与えるレール踏面測定装置であって、レールに沿った測定区間の起点及び終点を結ぶ直線を基準に、前記測定区間におけるレール表面の高さ位置を連続して表した波形データについて、前記直線に沿って所定間隔でサンプリングし各位置での前記直線に対する前記高さ位置の変位の数値データを取得する解析部を含むことを特徴とする。
【0008】
かかる特徴によれば、レール凹凸の位置や形状を波形のアナログデータを解析処理するだけでデジタルデータを得られるから、可搬性に優れる装置とし得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】レール踏面測定装置のブロック図である。
図2】画像読取部と画像解析部のブロック図である。
図3】レール上に設置された測定機器の状態を示す写真である。
図4】測定機器に含まれる記録機構の主要部の斜視図である。
図5】本実施例におけるデータ処理のフロー図である。
図6】波形データを記載された記録紙の一例を示す写真である。
図7】波形データの補正についての原理図である。
図8】最終的に得られたレール凹凸のデジタルデータのグラフである。
図9】トンネル漏水箇所で測定して得たレール凹凸のデジタルデータのグラフである。
図10】レール継目部で測定して得たレール凹凸のデジタルデータのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるレール凹凸の位置及び形状を数値化したデジタルデータを与えるレール踏面測定装置の1つの実施例について、図1乃至図10を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、レール踏面測定装置1は、レール凹凸の波形データを記載された記録紙30を画像データとして取得する画像読取部40と、当該画像データを画像解析してレール凹凸の位置及び形状を数値化したデジタルデータを与える画像解析部50と、を含む。また、波形データを記録紙30に記載する測定機器20は、レール踏面測定装置1の付属装置として含まれ、又は、レール踏面測定装置1とは別個に与えられる。
【0012】
記録紙30は、レールに沿った測定区間におけるレール表面の高さ位置を連続して表した波形データの記載されたアナログデータシートである。波形データは、レールの長手方向に沿ってレール凹凸の上をなぞってこれを機械的に記録紙に写し取ったものであり、レール凹凸の長手断面形状を表している。ここで、測定機器20の構造上、レール凹凸の大きさに倍率を与えて表すにあたって、レール凹凸の大きさに依存して長手方向に所定のゆがみを生じた波形データとなり得る。この詳細については後述する。なお、レール表面としては、主として頭頂面(踏面)を指すが、レール側面側の表面も含み得る。
【0013】
画像読取部40は、記録紙30を画像データ化する光学スキャナであり、読み取りデータを有線又は無線にて画像解析部50に送信可能である。光学スキャナは、フラットベットタイプでも良いが、ハンディタイプのものが好ましい。
【0014】
画像解析部50は、ソフトウェアを動作させ得る汎用コンピュータであり、可搬のタブレット型PCであることが好ましい。画像読取部40及び画像解析部50を小型にすることで、レール踏面測定装置1を容易に持ち運びできて、測定区間でのレール10の表面の高さ位置測定と同時に、その場で、デジタルデータの取得をできるようになる。また、画像解析部50に含まれるカメラを画像読取部40として用いることも、レール踏面測定装置1を小型化することに資するため、上記の目的において好ましい。
【0015】
図2に示すように、画像解析部50は、外部とのデータの授受を行う通信部51及び解析結果を表示するディスプレイの如き出力部52、ハードディスクや固体メモリなどの記憶装置53などを備える。画像読取部40で取得され送信された画像データは、通信部51を介して受信され、適宜、解析が行われて、出力部52に結果が出力されるとともに、該結果は記憶装置53に記憶されるのである。記憶装置53は適宜、外部ストレージにデータを蓄積するように構成され得る。
【0016】
更に、画像解析部50は、受信した画像データを加工し画像解析して測定機器20による実測線を含む実測線画像を抽出する抽出部55と、同様に、画像解析で実測線画像から実測線の波形データを取得するデータ取得部56と、波形データとしての実測線を所定間隔でサンプリングし各位置でのレール表面の高さ位置の変位の数値データを取得する解析部57と、を含む。また、上記したように、測定機器20の構造上、レール凹凸の大きさに倍率を与えて記録紙30に波形データを記載するが、レール凹凸の大きさに依存して実際の断面形状とはゆがみを生じた波形データとなるが、解析部57には、必要に応じてこのゆがみを補正する補正処理部57aが更に含まれる。
【0017】
抽出部55は、レールに沿ったレール凹凸の断面形状に対応する実測線を含む入力画像としての画像データから、画像解析により、実測線の起点及び終点に対応する画像を抽出し、実測線に対応する実測線画像を抽出する。ここで、画像解析にあたっては、入力画像を二値化処理してもよく、さらには白黒反転処理しても良い。
【0018】
データ取得部56は、実測線画像から、画像解析により、レールに沿った測定区間におけるレール表面の高さ位置を連続して表した実測線の波形データを取得する。ここで、波形データはピクセル座標として取得しても良い。
【0019】
解析部57は、波形データについて座標の変換を行い、レールに沿った測定区間の起点及び終点を結ぶ直線に沿って所定間隔でサンプリングし各位置での直線に対する高さ位置の変位の数値データを取得する。ここで、測定機器20の構造上、波形データが変位の大きさに対応した関数で表される位置のずれを含む場合は、補正処理部57aによりそのずれを補正しても良い。
【0020】
補正処理部57aは、波形データについて、直線に対する高さ位置の変位の大きさに対応した関数の逆関数を用いてずれを補正する。
【0021】
ここで、波形データを記録紙30に記載する測定機器20は、これに限定されるものではないが、レールに沿った測定区間の起点及び終点を結ぶ直線を基準に、この測定区間におけるレール表面の高さ位置を連続して表した波形データを与えるものである。
【0022】
図3に示すように、測定機器20は、略長方形断面の真直な棒状体からなるガイドバー13と、ガイドバー13に沿ってスライド移動の可能な記録機構14を含む。ガイドバー13は、レール10の長手方向に沿って配置されるとともに、レール10の表面(踏面)に載置された保持部材12によって両端支持される。つまり、記録機構14は、保持部材12の載置されたレール10の上部の2点間を結んだ直線上を移動できる。
【0023】
図4に示すように、記録機構14は、その内部において下端部にレール10の表面と接触するローラー21を備える柱状部材22を含む。柱状部材22は、記録機構14の筐体に対して上下にスライド可能に保持されている。また、ローラー21は、水平面内でガイドバー13の延びる方向と垂直な方向に延びる回転軸を有する。つまり、記録機構14をガイドバー13に沿ってスライドさせると、レール表面の高さ位置の変動にローラー21が追従し、柱状部材22の高さを変動させる。他方、柱状部材22の側面には上下方向に延びるラックギア23が設けられており、ラックギア23に平歯車によるギア24が噛合する。ギア24は、筐体の側面に挿通されたギア軸25の一端に固定されており、他端には筐体の外側の面に沿って延びるアーム26が取り付けられている。また、アーム26の先端にはペン先27が設けられている。よって、記録機構14をガイドバー13に沿ってスライドさせると、レール10の表面の高さ位置をローラー21で検出し、柱状部材22、ギア24、ギア軸25を介してアーム26を回動させ、ペン先27を上下に回動させることになる。つまり、ペン先27に当接するよう記録紙30を設置することで、レール10の表面の高さ位置を連続して表した波形データを記録紙30上に記載することができる。なお、このようにアーム26の先端にペン先27を設けたことで、レール凹凸の大きさに所定の倍率を与えた波形データを記録紙30に記録することになる。
【0024】
図5に示したフロー図を用いて、本実施の形態のレール踏面測定装置1におけるデータ処理ついて説明する。
【0025】
まず、測定機器20を用いてレール10の測定区間における波形データを記録する(S1)。測定機器20をレール10上に設置し、記録機構14をガイドバー13に沿ってスライド移動させて測定区間におけるレール10の表面の凹凸の位置及び形状に対応した実測線を波形データとして記録紙30に記載させる。ここでは、レール溶接部に測定機器20をセットし、得られたレール凹凸のデータについて述べる。
【0026】
図6を併せて参照すると、記録紙30上にはその長手方向に沿って実測線L3が記録されており、実測線L3の両端には、測定区間の起点を明示する線L1及び終点を明示する線L2が記録されている。なお、線L1及び線L2は測定機器20を作業員が操作して手動で記録したものである。
【0027】
次いで、記録紙30の波形データを含む画像を画像読取部40によって読み取り画像データを作成する(S2)。さらに、得られた画像データは画像解析部50に送信される。
【0028】
画像解析部50では、まず、受信した画像データから余白部分を削除し、抽出部55によって実測線を含む実測線画像を抽出する(S3)。例えば、画像解析により、実測線L3の起点P1及び終点P2に対応する画像を抽出し、これらを含むように画像の範囲を定めて実測線に対応する実測線画像を抽出する。その他の方法として、画像解析によらず、同一の装置を用いた場合の過去の経験に基づいて所定の範囲を実測線画像として指定するなどしてもよい。
【0029】
次いで、データ取得部56によって、実測線画像から実測線のみによる波形データを取得する(S4)。波形データの取得については、例えば、以下のような手順で行う。
【0030】
まず、実測線画像をグレースケール化した上で、二値化し、実測線L3と推測される部分を抽出する。グレースケール化は公知の方法で行い、別途定めた閾値にて二値化を行うことで、汚れ等を除去して実測線L3のみを残存させるようにする。なお、上記したように、実測線L3の両端には測定区間の起点及び終点を明示する線L1及び線L2が記録されている。これらの線L1及び線L2は、実測線L3とは上下方向の座標が離れている。これを利用することでそれぞれの線を区別可能であり、測定区間に対応した実測線L3の起点P1と終点P2の座標も定められる。
【0031】
また、記録紙30には、中心線L4や上下方向を示す記号や文字など、一般的な方法で実測線の記録を数値化する際の補助等に用いられる印刷を例えば赤色系のインクで施されている。本実施例の画像解析においては、このような印刷は不要であり、中心線L4などは実測線3と混在すると二値化した画像で区別を困難とする場合がある。そこで、上記した白黒二値化した画像とは別に、グレースケール化する前のカラーの実測線画像から赤色の値の大きなピクセルを抽出できるような赤色二値化画像を別途作成し、白黒二値化した実測線画像との差分を得る。すると実測線L3を識別でき、これをピクセル座標のデータとして抽出する。これにて、実測線L3の波形データを取得できる。なお、二値化した画像は白黒反転処理をすることも好ましい。
【0032】
得られた波形データについて、解析部57によってピクセル座標を物理座標に変換し、レール凹凸について高さ位置の変位の数値データを取得する(S5)。ここでは、上記した起点P1及び終点P2を結ぶ直線を基準線L0として、波形データの各点から基準線L0へ下した垂線の長さを高さ位置の変位として算出し数値データとする。ここでは、基準線L0に沿って所定間隔でサンプリングし、各位置での高さ変位を数値データとして求めることになる。例えば、上記した波形データはピクセル座標のデータであるから、最多数の点でサンプリングして高さ位置を求めた場合は、所定間隔は1ピクセル間隔に対応する間隔となる。なお、各位置とそれぞれの位置に対応する高さ変位の数値データは、測定機器20の構造や、測定機器20の移動速度に対する記録紙30の送り速度などによって所定の倍率が与えられていることを考慮して算出される。
【0033】
以上のように、レール踏面測定装置1によれば、レール10の表面の形状についての波形データを含む画像データを解析処理することで、レール凹凸の位置及び形状を数値化した数値データからなるデジタルデータを得られる。
【0034】
ところで、上記したように、レール凹凸の大きさに倍率を与えて波形データを記載する測定機器20の構造上、記載された波形データはレール凹凸の変位の大きさに依存して長手方向に所定のゆがみを生じ得る。例えば、記録機構14において、回動するアーム26の先端のペン先27はギア軸25を回転中心とする円弧上を動き、実測線L3には単なる上下動とは異なるゆがみを生じる。かかるゆがみによる高さ位置のずれは、測定機器20の構造に依存し、レール凹凸の変位の大きさに対応した関数で表されるが、その場合、この関数の逆関数を用いることで高さ位置のずれを補正することができる。このような補正を行うことも好ましい。
【0035】
補正においては、補正処理部57aによって、記録機構14のペン先27の移動する円弧の半径に基づき、得られた波形データの各座標を、円弧に沿って移動する代わりに上下に移動した場合の真の座標に変換する。
【0036】
詳細には、図7に示すように、実測線L3上のある記録点Pの座標を(x,y)、この点に対応する真の点Pの座標を(xt,yt)とする。また、測定機器20のペン先27の回転中心Cの通過する直線は基準線L0’と平行であり、かかる直線を座標基準線L0’とする。このとき、ペン先27の回転中心Cの座標を(a,0)、ペン先27の回転半径をr、点Pと回転中心Cを結ぶ直線が座標基準線L0’となす角をθとする。記録点Pが回転中心Cを中心とする円弧上にあることから、以下の式(1)が成り立つ。また、幾何学的な関係により式(2)が成り立つ。真の点Pのx座標は、記録点Pをペン先27が描く円弧に沿って座標基準線L0’上に移動した場所のx座標と等しいから式(3)と表せる。また、真の点Pのy座標はペン先27が座標基準線L0’から記録点Pまで描く円弧の長さに相当するから式(4)と表せる。
【0037】
【数1】
【0038】
以上のように、補正処理部57aによって、実測線L3により得られた波形データの高さ位置のずれを補正できる。なお、このような高さ位置の補正を行った結果として、起点P1や終点P2のy座標が0でなくなり、起点P1及び終点P2を結ぶ直線が元の基準線L0に対して傾いてしまう場合がある。このような場合、この傾きをさらに補正するようにすることも好ましい。
【0039】
図8には、高さ変位の数値データをさらに上記したように補正して最終的に得られたレール凹凸のデジタルデータを可視化して出力部52に表示させたグラフの例を示す。ここでは、上記したように、レール溶接部について得られたレール凹凸のデータを用いたが、レール溶接部が凸形状になるように研磨されていることが分かる。
【0040】
更に、図9には、他の例として、レール踏面測定装置1を用いて取得されたトンネル漏水箇所のレール凹凸のデジタルデータを可視化したグラフ示す。このグラフより、レール長手方向距離870mm付近にレール頭頂面の顕著な落ち込みが確認できる。この箇所には漏水による水の滴下が確認されており、レール・車輪との接触によりレール頭頂面の特異な摩耗が発生したことを反映している。
【0041】
図10には、更に他の例として、レール踏面測定装置1を用いて取得されたレール継目部レール凹凸のデジタルデータを可視化したグラフ示す。このグラフより、レール継目部においては全体として1.6mm程度のレール頭頂面の落ち込みに加え上手側と下手側のレールの境目に約0.8mmの段違いが確認できる。このようにレール凹凸の値だけでなく連続的なデータが得られることで、レール凹凸の管理、経時変化の把握及びシミュレーションへの応用等が期待できる。
【0042】
以上、本発明の代表的な実施例及びこれに伴う変形例について述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0043】
1 レール踏面測定装置
10 レール
20 測定機器
30 記録紙
40 画像読取部
50 画像解析部
55 抽出部
56 データ取得部
57 解析部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10