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特開2023-17386成形条件調整方法、コンピュータプログラム、成形条件調整装置及び射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017386
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】成形条件調整方法、コンピュータプログラム、成形条件調整装置及び射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20230131BHJP
   B29C 45/28 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121633
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】赤木 誉志
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 明彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 峻之
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AP02
4F202AP10
4F202AR11
4F202CA11
4F202CK07
4F206AP022
4F206AP10
4F206AR11
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4F206JN15
4F206JP12
4F206JP13
4F206JP18
4F206JQ81
4F206JT01
4F206JT02
(57)【要約】
【課題】いわゆるバルブゲートを有する金型を用いる射出成形機において、開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を自動で調整することができる成形条件調整方法を提供する。
【解決手段】キャビティに通じる溶融成形材料の流路を開閉する開閉バルブを備えた金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する成形条件調整方法であって、射出圧力の時間変化を示す射出圧波形データを取得し、取得した射出圧波形データに基づいて、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティに通じる溶融成形材料の流路を開閉する開閉バルブを備えた金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する成形条件調整方法であって、
射出圧力の時間変化を示す射出圧波形データを取得し、
取得した射出圧波形データに基づいて、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する
成形条件調整方法。
【請求項2】
成形工程サイクルにおける所定基準時点又は型閉の開始時点から、前記開閉バルブの開駆動開始時点までの開待機時間を変更することによって、前記開閉バルブの開タイミングと、射出タイミングとを合致させる
請求項1に記載の成形条件調整方法。
【請求項3】
成形工程サイクルにおける所定基準時点又は型閉の開始時点から所定時間後に設定された前記開閉バルブの開工程の終了時点から、溶融成形材料の射出が開始される時点までの射出待機時間を変更することによって、前記開閉バルブの開タイミングと、射出タイミングとを合致させる
請求項1に記載の成形条件調整方法。
【請求項4】
取得した射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分を示す差分情報を算出し、
前記差分情報と、前記開待機時間の変更量とを対応付けたテーブルを参照することによって、算出した前記差分情報に対応する前記開待機時間の変更量を特定し、
特定した変更量を用いて前記開待機時間を変更する
請求項2に記載の成形条件調整方法。
【請求項5】
取得した射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分を示す差分情報を算出し、
前記差分情報と、前記射出待機時間の変更量とを対応付けたテーブルを参照することによって、算出した前記差分情報に対応する前記射出待機時間の変更量を特定し、
特定した変更量を用いて前記射出待機時間を変更する
請求項3に記載の成形条件調整方法。
【請求項6】
前記差分情報は、
取得した射出圧波形データが示す波形と、前記所定の射出圧波形データが示す波形とで囲まれる面積である
請求項4又は請求項5に記載の成形条件調整方法。
【請求項7】
前記差分情報は、
取得した射出圧波形データが示す波形の近似曲線を定める係数と、前記所定の射出圧波形データが示す波形の近似曲線を定める係数との差分である
請求項4又は請求項5に記載の成形条件調整方法。
【請求項8】
射出圧波形データが入力された場合、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとを合致させるための、前記開閉バルブの開駆動又は溶融成形材料の射出に係る成形条件の変更量を出力する学習器を用いて、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する
請求項1又は請求項2に記載の成形条件調整方法。
【請求項9】
射出圧波形データが入力された場合、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとを合致させるための、前記開閉バルブの開駆動又は溶融成形材料の射出に係る成形条件の変更量を出力するエージェントを備えた強化学習器を用いて、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する
請求項1又は請求項2に記載の成形条件調整方法。
【請求項10】
取得した射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分に基づいて報酬データを算出し、
取得した射出圧波形データと、算出された前記報酬データとに基づいて、前記エージェントを強化学習させる
請求項9に記載の成形条件調整方法。
【請求項11】
キャビティに通じる溶融成形材料の流路を開閉する開閉バルブを備えた金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
射出圧力の時間変化を示す射出圧波形データを取得し、
取得した射出圧波形データに基づいて、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
キャビティに通じる溶融成形材料の流路を開閉する開閉バルブを備えた金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する成形条件調整装置であって、
射出圧力の時間変化を示す射出圧波形データを取得する取得部と、
取得した射出圧波形データに基づいて、前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する制御部と
を備える成形条件調整装置。
【請求項13】
キャビティに通じる溶融成形材料の流路を開閉する開閉バルブを備えた金型を用いる射出成形機であって、
請求項12に記載の成形条件調整装置を備え、
前記成形条件調整装置にて前記開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整するように構成された
射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形条件調整方法、コンピュータプログラム(プログラム製品)、成形条件調整装置及び射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
強化学習により、射出成形機の成形条件を適切に調整することができる射出成形機システムがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-166702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、いわゆるバルブゲートを有する金型、すなわち、キャビティに通じる溶融成形材料の流路を開閉する開閉バルブを備えた金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する具体的技術は開示されていない。
【0005】
バルブゲートを有する金型では、バルブゲートの摺動部の汚れなどで動作の遅れが大きくなると、バルブゲートの開閉バルブが開き切っていないタイミングで射出が行われ、成形不良が発生する。このため、オペレータは、定期的に開閉バルブの開き状況を確認し、必要に応じて手動で開閉バルブの開きタイミングを調整し、又は、将来摺動部の汚れなどで動作が遅れることを考慮してマージンを取った設定をする必要があるという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、いわゆるバルブゲートを有する金型を用いる射出成形機において、開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を自動で調整することができる成形条件調整方法、コンピュータプログラム、成形条件調整装置及び射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る成形条件調整方法は、バルブゲートを有する金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する成形条件調整方法であって、射出圧力の時間変化を示す射出圧波形データを取得し、取得した射出圧波形データに基づいて、開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する。
【0008】
本態様に係るコンピュータプログラム(プログラム製品)は、バルブゲートを有する金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、射出圧力の時間変化を示す射出圧波形データを取得し、取得した射出圧波形データに基づいて、開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する処理をコンピュータに実行させる。
【0009】
本態様に係る成形条件調整装置は、バルブゲートを有する金型を用いる射出成形機の成形条件を調整する成形条件調整装置であって、射出圧力の時間変化を示す射出圧波形データを取得し、取得した射出圧波形データに基づいて、開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する。
【0010】
本態様に係る射出成形機は、バルブゲートを有する金型を用いる射出成形機であって、上記成形条件調整装置を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、いわゆるバルブゲートを有する金型を用いる射出成形機において、開閉バルブの開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を自動で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る射出成形機の構成例を説明する模式図である。
図2】実施形態1に係る成形条件調整装置の構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態1に係るテーブルの構成を示す概念図である。
図4】射出圧波形及び差分情報の一例を示す説明図である。
図5】実施形態1に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態1に係る成形条件調整方法を示す説明図である。
図7】実施形態2に係るテーブルの構成を示す概念図である。
図8】実施形態2に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
図9】実施形態2に係る成形条件調整方法を示す説明図である。
図10】実施形態3に係る成形条件調整装置の構成例を示すブロック図である。
図11】実施形態3に係る射出成形機の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る成形条件調整方法、コンピュータプログラム(プログラム製品)、成形条件調整装置及び射出成形機の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
図1は実施形態1に係る射出成形機1の構成例を説明する模式図である。本実施形態1に係る射出成形機1は、金型21を型締めする型締装置2と、成形材料を溶融して射出する射出装置3と、成形条件調整装置101を有する制御装置4とを備える。中央の図は、破線の楕円で囲んだ金型21部分の拡大図である。
【0015】
型締装置2はベッド20上に固定された固定盤22と、ベッド20上をスライド可能に設けられた型締ハウジング23と、ベッド20上を同様にスライドする可動盤24とを備える。固定盤22と型締ハウジング23は複数本、例えば4本のタイバー25、25、…によって連結されている。可動盤24は、固定盤22と型締ハウジング23の間でスライド自在に構成されている。型締ハウジング23と可動盤24の間には型締機構26が設けられている。型締機構26は、例えばトグル機構から構成されている。なお、型締機構26は、直圧式の型締機構、つまり型締シリンダによって構成してもよい。固定盤22と可動盤24にはそれぞれ固定金型27と、可動金型28が設けられ、型締機構26を駆動すると金型21が型開閉されるようになっている。
【0016】
金型21は、固定金型27と、固定金型27に対向する可動金型28とを備える。
固定金型27は、固定側型板27aと、固定側取付板27bとを備え、固定側取付板27bが固定盤22に固定されている。固定側型板27a及び固定側取付板27bには、スプルーを区画するスプルーブッシュ27cが形成されている。
一方、可動金型28は、固定金型27と型締めされてキャビティ27dを画成するものであり、可動側型板28aと、可動側取付板28bと、受け板28cと、スペーサブロック28dと、エジェクタプレート28eと、エジェクタピン28fとを備える。
【0017】
固定盤22は、固定側取付板27bが固定される一面側から、反対側の他面側へ通ずる流路22aを有し、流路22aの一端側の開口部(バルブゲート)はスプルーブッシュ27cに接続され、他端側の開口部が他面側に形成されている。当該他面側に形成された開口部の周囲には、射出装置3のノズル31aが密着する環状の密着部22bが設けられている。射出装置3のノズル31aから射出された溶融成形材料は、流路22a及びスプルーを通じて、金型21のキャビティ27dに供給される。なお、流路22aの周辺には、流路22aを流れる溶融成形材料を保温するための加熱装置22cが設けられている。
【0018】
また、固定盤22は、流路22aを開閉する開閉バルブ29を備える。開閉バルブ29としては、バルブゲートと一般に称される周知の構造のものを適宜に採用するとよい。例えば、開閉バルブ29は、機械式のニードルバルブシステムであり、流路22aに対して進退可能に設けられ、流路22aを開閉するニードル29aと、ニードル29aを駆動させるエアシリンダ29bとを備える。エアシリンダ29bは流路22aに対してニードル29aを進退させることにより、流路22aを開閉させることができる。開閉バルブ29の動作は、制御装置4によって制御される。
【0019】
射出装置3は、基台30上に設けられている。射出装置3は、先端部にノズル31aを有する加熱シリンダ31と、当該加熱シリンダ31内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュ32とを備える。スクリュ32は駆動機構33によって回転方向と軸方向とに駆動する。駆動機構33は、スクリュ32を回転方向に駆動する回転モータと、スクリュ32を軸方向に駆動するモータ等から構成されている。なお、図1に示す駆動機構33は、カバーにより覆われているため内部構成が図示されていない。
【0020】
駆動機構33の内部には、射出圧力を検出するロードセル33aが設けられており、ロードセル33aにて検出された射出圧力の検出値データは制御装置4へ出力される。なお、ロードセル33aは射出圧力を検出するセンサの一例である。加熱シリンダ31に設けられた圧力センサによって、射出圧を直接的に検出するように構成してもよい。
【0021】
加熱シリンダ31の後端部近傍には、成形材料が投入されるホッパ34が設けられている。また、射出成形機1は、射出装置3を前後方向(図1中左右方向)に移動させるノズルタッチ装置35を備える。ノズルタッチ装置35を駆動すると、射出装置3が前進して加熱シリンダ31のノズル31aが密着部22bにタッチするように構成されている。
【0022】
制御装置4は、射出装置3、開閉バルブ29、型締装置2の動作を制御する。本実施形態1に係る制御装置4は、成形条件調整装置101を備える。成形条件調整装置101は、射出成形機1の成形条件に係るパラメータを調整する装置である。特に本実施形態1に係る成形条件調整装置101は、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとを合致させるために必要なパラメータを調整する。実施形態1に係る成形条件調整装置101は、成形工程サイクルの開始時点又は型閉の開始時点から、開閉バルブ29の開駆動開始時点までの開待機時間を調整することによって、開閉バルブ29の開タイミングと、射出タイミングとを合致させる制御を行う。
【0023】
なお、合致とは、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが完全に一致することを必ずしも意味するものでは無く、射出成形に異常が生じない程度にタイミングが合っていることを意味する。
【0024】
射出成形機1には、上記した開待機時間の他、射出開始時点、金型内樹脂温度、ノズル温度、シリンダ温度、ホッパ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力、射出ストローク等の成形条件を定めるパラメータが設定される。また射出成形機1には、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧切替圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、計量背圧、計量トルク等の成形条件を定めるパラメータが設定される。更に射出成形機1には、計量完了位置、スクリュ後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間等の成形条件を定めるパラメータが設定される。そして、これらのパラメータが設定された射出成形機1は、当該パラメータに従って動作する。最適なパラメータは射出成形機1の環境、成形品によって異なる。
【0025】
図2は実施形態1に係る成形条件調整装置101の構成例を示すブロック図である。成形条件調整装置101は、コンピュータであり、ハードウェア構成としてプロセッサ111、記憶部112及び操作部113等を備える。
なお、成形条件調整装置101は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、成形条件調整装置101は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0026】
プロセッサ111は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。プロセッサ111は、後述の記憶部112が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)12aを実行することにより、取得部114、制御部115として機能する。なお、成形条件調整装置101の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0027】
記憶部112は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部112は、開待機時間の調整処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム112aを記憶している。また、記憶部112は、開待機時間を調整するためのテーブル112bを記憶している。
【0028】
図3は実施形態1に係るテーブル112bの構成を示す概念図である。テーブル112bは、射出圧波形の差分情報と、開待機時間の変更量とを対応付けた情報である。差分情報は、取得部114によって取得され得る射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分を示す差分情報である。取得される射出圧波形データは、射出圧力の時間変化を示すデータである。所定の射出圧波形データは、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致しているときの理想的な状態で成形を行ったときに得られる射出圧波形データである。
【0029】
図4は射出圧波形及び差分情報の一例を示す説明図である。図4に示すグラフの横軸は、射出装置3のスクリュのストロークを示し、縦軸は射出圧力を示している。成形工程においてスクリュは軸方向に移動しており、当該ストロークは成形工程における時間に相当する。破線で示す曲線は上記した所定の射出圧波形であり、実線で示す曲線は取得部114によって取得され得る射出圧波形である。図4に示す実線は、溶融成形材料の射出タイミングに遅れて開閉バルブ29が開いた場合に得られる射出圧波形である。射出が開始された時点で開閉バルブ29が開いていないため、射出圧力が増大し、射出圧波形にピークが生じるようになる。取得した現在の射出圧波形と、理想的な状態での射出圧波形との差分から、開閉バルブ29の状態を推定することが可能である。
【0030】
差分情報は、例えば、実線で示す射出圧波形と、破線で示す所定の射出圧波形とで囲まれる面積である。言い換えると実線で示す射出圧波形のストロークでの積分値と、所定の射出圧波形のストロークでの積分値との差分の絶対値とも言える。なお、取得した射出圧波形データに係る波形の積分値から、所定の射出圧波形に係る波形の積分値を減算して得られる面積を差分情報としてもよい。当該面積は負の値も取り得る。この場合、取得した射出圧波形が、所定射出圧波形よりも高い場合の不具合のみならず、取得した射出圧波形が、所定射出圧波形よりも低い場合の不具合にも対応することができる。
【0031】
また、面積の差分は差分情報の一例であり、各射出圧波形の差を表現する情報であれば、特に限定されるものでは無い。例えば、取得した射出圧波形データが示す波形の近似曲線を定める係数と、所定の射出圧波形データが示す波形の近似曲線を定める係数との差分を差分情報として求めてもよい。射出圧波形は、三角関数、指数関数、対数関数、多項式等を用いて近似するとよい。
【0032】
本実施形態1に係るコンピュータプログラム112aは、記録媒体5にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部112は、読出装置によって記録媒体5から読み出されたコンピュータプログラム112aを記憶する。記録媒体5はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体5はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでも良い。更に、記録媒体5は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であっても良い。更にまた、通信網に接続されている外部サーバから本実施形態1に係るコンピュータプログラム112aをダウンロードし、記憶部112に記憶させても良い。
【0033】
操作部113は、タッチパネル、ソフトキー、ハードキー、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0034】
取得部114は、射出成形機1による成形が実行されたときにロードセル33aにて測定され、出力された時系列の検出データを、射出圧波形データとして取得する。取得部114は、取得した射出圧波形データを制御部115へ出力する。
【0035】
制御部115は、取得部114にて取得した射出圧波形データに基づいて、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を調整する。
【0036】
成形工程サイクルの概要は以下の通りであり、成形条件調整装置101は、繰り返される成形工程サイクルにおいて、開閉バルブ29の開待機時間の調整を行う。射出成形に際しては、周知の型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、射出工程、計量工程、射出ユニット後退工程、型開工程、エジェクト工程及び中間工程が順次に行われる。
【0037】
先ず、可動金型28を固定金型27に密着させた状態で射出装置3の前進工程を行って射出装置3のノズル31aを密着部22bに密着させた後、射出工程に移行する。
【0038】
射出装置3では、樹脂又は低融点金属からなる溶融成形材料が、加熱シリンダ31内にて予め溶融混練され、所定量が計量されて加熱シリンダ31の前端部に貯蔵されている。その際、開閉バルブ29によって流路22aを開くと同時に、ノズル31aから溶融成形材料を射出する。すなわち、加熱シリンダ31内のスクリュに前進移動を与え、計量された溶融成形材料をノズル31aから射出すれば、溶融成形材料がキャビティ27dに流入する。流路22a内の溶融成形材料は、加熱装置22cによって所定温度に加熱されて流動性が維持されているため、流路22a内の溶融成形材料もノズル31aからの溶融成形材料と共に固定金型27の中央部に形成したキャビティ27d内に充填される。
【0039】
図5は実施形態1に係るプロセッサ111の処理手順を示すフローチャートである。成形条件調整装置101の取得部114は、ロードセル33aから出力される検出値データを射出圧波形データとして取得する(ステップS111)。射出圧波形データは、射出圧力の時系列データである。
【0040】
次いで、制御部115は、取得した射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分を示す差分情報を算出する(ステップS112)。差分情報は、開閉バルブ29の開タイミングと、射出タイミングとのずれ量に相当する。差分情報は例えば開閉バルブ29の開動作の遅れを示す情報とも言える。
【0041】
そして、制御部115は、算出した差分情報をキーにしてテーブル112bを参照し、当該差分情報に対応付けられた開待機時間の変更量を特定する(ステップS113)。
【0042】
そして、制御部115は、特定した変更量に基づいて、成形条件に含まれる開待機時間を変更する(ステップS114)。
【0043】
図6は実施形態1に係る成形条件調整方法を示す説明図である。図6は成形サイクル工程の一部を示したものである。図6Aは開待機時間の調整前の状態を示し、図6Bは開待機時間の調整後の状態を示している。
【0044】
「開待機時間」ブロックは、成形工程サイクルにおける開始時点(所定基準時点)又は型閉の開始時点から、開閉バルブ29の開駆動が開始される時点までの待機時間を示している。開待機時間が経過した時点で、制御装置4は、開閉バルブ29へ駆動信号を出力し、開駆動を開始させる。「ゲート開き時間」ブロックは、開閉バルブ29へ駆動信号を出力した後、開閉バルブ29が動作し、開閉バルブ29が開状態になるまでに必要な所要時間である。「バルブ開時間」ブロックの横幅は、開閉バルブ29が実際に動作し、開状態になるまでの時間を示している。「射出」ブロックは、射出装置3による射出が行われる工程を示している。
【0045】
開閉バルブ29に問題が無ければ、「ゲート開き時間」で開閉バルブ29が開状態になるため、「ゲート開き時間」と、「バルブ開時間」とが一致するはずである。しかし、開閉バルブ29の摺動部の汚れ等で開動作に要する時間が長くなることがある。図6A中、「バルブ開時間」の破線のブロック部分は、開動作が遅れていることを示している。溶融成形材料の射出は、開待機時間及びゲート開き時間経過後に開始されるため、開閉バルブ29の開動作が遅れると、開閉バルブ29が開き切っていない状態で射出が開始されることになり、成形不良が発生し得る状態になる。
【0046】
そこで、成形条件調整装置101は、図5に示した処理を実行することにより、開閉バルブ29の開動作の遅れを検出し、開待機時間を自動で調整する。上記した差分情報は、開閉バルブ29の開動作の遅れに対応している。開閉バルブ29の開タイミングが遅れている場合、図4に示すような射出圧波形が得られ、この場合、ステップS113で開待機時間を減少させる変更量が特定され、成形条件調整装置101は開待機時間を減少させる調整を行う。つまり、開待機時間を短くする。
【0047】
バルブ開時間の長さに応じて開待機時間が短くなり、最終的には図6Bに示すように、開閉バルブ29が実際に開状態になる時点と、溶融成形材料の射出が開始される時点とが一致するように開待機時間が調整される。言い換えると、開待機時間と、実際のバルブ開時間との和が常に一定になるように、開待機時間の長さが調整される。
【0048】
実施形態1に係る射出成形機1によれば、いわゆるバルブゲートを有する金型21を用いる射出成形機1において、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件を自動で調整することができる。具体的には開閉バルブ29の開待機時間を自動で調整することができる。
【0049】
また、本実施形態1によれば、開待機時間を調整する構成であるため、成形工程のサイクルタイムに影響を与えること無く、開閉バルブ29の開タイミングと、射出タイミングとを合致させることができる。つまり、図6に示す開待機時間と、ゲート開き時間との和を一定に保ちつつ、開閉バルブ29の開タイミングと、射出タイミングとを合致させることができる。また、開閉バルブ29の開動作の遅れを想定してマージンを持たせる必要は無く、最短サイクルで射出成形機1を稼働させることができる。
【0050】
(実施形態2)
実施形態2に係る射出成形機は、調整する成形条件のパラメータが実施形態1と異なる。射出成形機のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
図7は実施形態2に係るテーブル112bの構成を示す概念図である。実施形態2に係るテーブル112bは、射出圧波形の差分情報と、射出待機時間の変更量とを対応付けた情報である。射出待機時間は、開閉バルブ29の開工程の終了時点から、溶融成形材料の射出が開始される時点までの時間である(図9参照)。実施形態2における開待機時間及びゲート開き時間は一定の所定時間である。
【0052】
図8は実施形態2に係るプロセッサ111の処理手順を示すフローチャートである。成形条件調整装置101の取得部114は、射出圧波形データを取得する(ステップS211)。次いで、制御部115は、取得した射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分を示す差分情報を算出する(ステップS212)。
【0053】
そして、制御部115は、算出した差分情報をキーにしてテーブル112bを参照し、当該差分情報に対応付けられた射出待機時間の変更量を特定する(ステップS213)。そして、制御部115は、特定した変更量に基づいて、成形条件に含まれる射出待機時間を変更する(ステップS214)。
【0054】
図9は実施形態2に係る成形条件調整方法を示す説明図である。図9は成形サイクル工程の一部を示したものである。図9Aは射出待機時間の調整前の状態を示し、図9Bは射出待機時間の調整後の状態を示している。「開待機時間」及び「ゲート開き時間」は実施形態1と同様である。ただし、実施形態2においては「開待機時間」は調整対象では無く、一定である。
【0055】
図9A中、「バルブ開時間」の破線のブロック部分は、開動作が遅れていることを示している。溶融成形材料の射出は、開待機時間及びゲート開き時間経過後に開始されるため、開閉バルブ29の開動作が遅れると、開閉バルブ29が開き切っていない状態で射出が開始されることになり、成形不良が発生し得る状態になる。
【0056】
そこで、成形条件調整装置101は、図8に示した処理を実行することにより、開閉バルブ29の開動作の遅れを検出し、射出待機時間を自動で調整する。開閉バルブ29の開タイミングが遅れている場合、ステップS213で射出待機時間を増加させる変更量が特定され、成形条件調整装置101は射出待機時間を増加させる調整を行う。
【0057】
バルブ開時間の長さに応じて射出待機時間が長くなり、最終的には図9Bに示すように、開閉バルブ29が実際に開状態になる時点と、溶融成形材料の射出が開始される時点とが一致するように開待機時間が調整される。
なお、図9Aにおいて、開閉バルブ29が実際に開状態になる時点が、射出待機時間内に収まっており、成形品の品質に影響が無い場合、必ずしも射出待機時間を増加させる必要は無い。
【0058】
このように構成された実施形態2に係る射出成形機1によれば、実施形態1と同様、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように成形条件、具体的には開閉バルブ29の開待機時間を自動で調整することができる。
【0059】
なお、実施形態2では射出待機時間のみを調整する例を説明したが、実施形態1及び2を組みあわせ、差分情報に応じて、開閉バルブ29の開待機時間及び射出待機時間のいずれか一方又は双方を調整するように構成してもよい。
【0060】
(実施形態3)
実施形態3に係る射出成形機は、強化学習にて成形条件を調整する点が実施形態1と異なる。射出成形機のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0061】
図10は、実施形態3に係る成形条件調整装置101の構成例を示すブロック図である。実施形態3に係る成形条件調整装置101のプロセッサ111は、機能部として、取得部114、制御部115及び強化学習器116を備える。なお、成形条件調整装置101の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0062】
図11は、実施形態3に係る射出成形機1の機能ブロック図である。制御部115は、図11に示すように、観測部115a及び報酬算出部115bを有する。観測部115aには、取得部114が取得した射出圧波形データが入力される。
【0063】
観測部115aは、取得部114が取得した射出圧波形データと、制御装置4に設定された成形条件とを、強化学習における観測データとして、強化学習器116のエージェント116aへ出力する。
【0064】
報酬算出部115bは、取得した射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分から報酬データを算出し、算出して得た報酬データを強化学習器116のエージェント116aへ出力する。報酬データは差分情報と同様のデータであり、開閉バルブ29の開タイミングと、射出タイミングとのずれ量が小さい程、報酬の値が大きく、ずれ量が大きいほど報酬の値が小さく又は負の値となる。
【0065】
強化学習器116は、図11に示すように、エージェント116aと、調整部116bとを備える。エージェント116aは、例えば、DQN、A3C、D4PG等の深層ニューラルネットワークを有する強化学習モデル、PlaNet、SLAC等のモデルベースの強化学習モデル等である。
【0066】
深層ニューラルネットワークを有する強化学習モデルの場合、エージェント116aは、DQN(Deep Q-Network)を備え、観測データが示す射出成形機1の状態sに基づいて、当該状態sに応じた行動aを決定する。
【0067】
本実施形態3における状態sは、少なくとも取得した射出圧波形データに係る情報を含む。状態sは、射出圧波形データに係る情報及び成形条件を含んでもよい。状態sは、例えば、取得した射出圧波形データで表される画像データであってもよいし、取得した射出圧波形データと、所定の射出圧波形データとの差分を示す差分情報であってもよい。差分情報は、実施形態1で説明したように、取得した射出圧波形データが示す波形の近似曲線を定める係数と、所定の射出圧波形データが示す波形の近似曲線を定める係数との差分を示す数値であってもよい。また、差分情報は、射出圧波形と、所定の射出圧波形とで囲まれる面積を示す数値であってもよい。本実施形態3における行動aは、開閉バルブ29の開待機時間の変更量を示す変更量パラメータであるものとする。
【0068】
DQNは、観測データ示す状態sが入力された場合、複数の行動aそれぞれの価値を出力するニューラルネットワークモデルである。複数の行動aは、開待機時間の複数の変更量に対応する。価値の高い行動aは、開待機時間の適切な変更量を表している。行動aにより射出成形機1は他の状態へ遷移する。状態遷移後、エージェント116aは、報酬算出部115bで算出された報酬を受け取り、収益、つまり報酬の累積が最大になるようにエージェント116aを学習させる。
【0069】
より具体的には、DQNは、入力層、中間層及び出力層を有する。入力層は、状態s、つまり観測データが入力される複数のノードを備える。出力層は、複数の行動aにそれぞれ対応し、入力された状態sにおける当該行動aの価値Q(s,a)を出力する複数のノードを備える。
【0070】
状態s、行動aと、当該行動により得られた報酬rに基づいて、下記式(1)で表される価値Qを教師データとして、DQNを特徴付ける各種重み係数を調整することにより、エージェント116aのDQNを強化学習させることができる。
Q(s,a)←Q(s,a)+α(r+γmaxQ(snext,anext)-Q(s,a))・・・(1)
但し、
s:状態
a:行動
α:学習係数
r:報酬
γ:割引率
maxQ(snext,anext):次に取り得る行動に対するQ値のうち最大値
【0071】
調整部116bは、強化学習中のエージェント116aが探索した開待機時間の変更量(行動a)に基づいて、制御装置4に設定されている開調整時間を変更し、変更後の変更量(行動a)を射出装置3、開閉バルブ29等へ出力する。
【0072】
以下、本実施形態1に係る強化学習方法の詳細を説明する。
[強化学習処理]
射出成形機1には開待機時間の初期値、その他の成形条件が設定され、成形工程サイクルが繰り返されているものとする。制御部115は、ロードセル33aから出力された射出圧波形データを取得し、取得した射出波形データと、制御装置4に設定された成形条件とを含む観測データを強化学習器116のエージェント116aへ出力する。
【0073】
強化学習器116のエージェント116aは、観測部115aから出力された観測データを取得する。エージェント116aは、観測データに基づいて、射出成形機1の開待機時間を調整するための変更量パラメータ(行動a)を算出し、算出された変更量パラメータ(行動a)を調整部116bへ出力する。エージェント116aは、運用時(推論時)には、最適な行動aを選択し、学習時には、エージェント116aを強化学習するため、探索的な行動aを決定するとよい。また、エージェント116aは、行動価値が高い程、又は未探索の行動aである程、値が小さく、現在の成形条件からの変更量が大きい程、値が大きくなるような目的関数を用いて、当該目的関数の値が小さい行動aを選択するようにしてもよい。
【0074】
強化学習器116の調整部116bは、エージェント116aから出力された変更量パラメータに基づいて、開待機時間を変更し、変更後の開待機時間を射出装置3等へ出力する。
【0075】
射出成形機1は、調整後の開待機時間及び成形条件に従って成形を行う。ロードセル33aは、射出成形機1が成形を実行したときの当該射出成形機1における射出圧力を測定し、測定して得た射出圧波形データは取得部114を介して制御部115の観測部115aに入力される。
【0076】
制御部115の観測部115aは、射出圧波形データを取得し、取得した射出圧波形データと、制御装置4から読み出される成形条件とを含む観測データを強化学習器116のエージェント116aへ出力する。また、報酬算出部115bは、射出圧波形データに基づいて報酬データを算出し、算出した報酬データを強化学習器116へ出力する。
【0077】
エージェント116aは、観測部115aから出力された観測データと、報酬算出部115bから出力された報酬データとに基づいて、学習モデルを更新する。エージェント116aがDQNの場合、上記式(1)で表される価値を教師データとして、DQNを学習させる。
【0078】
実施形態3に係る射出成形機1によれば、強化学習により、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとが合致するように開閉バルブ29の開待機時間の変更量を学習し、自動で調整することができる。
【0079】
なお、本実施形態3では、エージェント116aは、開閉バルブ29の開待機時間の変更量パラメータを出力する例を説明したが、開閉バルブ29の開待機時間のパラメータを出力するように構成してもよい。
【0080】
また、本実施形態3では開待機時間を強化学習により調整する方法を説明したが、実施形態2と同様、射出待機時間を強化学習により調整するように構成してもよい。
【0081】
更に、開閉バルブ29の開待機時間又は射出待機時間を強化学習により調整する例を説明したが、成形条件調整装置101は、教師あり学習により学習された学習器を備えてもよい。
【0082】
学習器は、成形条件と、射出圧波形データ又は差分情報とが入力された場合、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとを合致させるための情報を出路するモデルである。具体的には、学習器は、開閉バルブ29の開タイミングと、溶融成形材料の射出タイミングとを合致させるための開待機時間若しくは射出待機時間、又は開待機時間若しくは射出待機時間の変更量を出力する。
【0083】
学習器は、射出圧波形を認識するResNet、DenseNet等のCNN(Convolution Neural Network)を有するモデルであってもよいし、射出圧力の時系列的変換を認識する再帰型ニューラルネットワーク(RNN: Recurrent Neural Network)、LSTM、Vision Transformer等を有するモデルであってもよい。
【0084】
また、学習器は、上記したCNN、RNN等以外のニューラルネットワーク、Vision Transformer、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は、XGBoost等の決定木、等の構成の学習モデルを用いて構成してもよい。
【0085】
更にまた、成形条件調整装置は、第1学習器及び第2学習器を備えてもよい。第1学習器は、取得した射出圧波形データに係る波形の積分値から、所定の射出圧波形に係る波形の積分値を減算して得られる値が正の場合における開待機時間又は射出待機時間を調整する。第2学習器は、取得した射出圧波形データに係る波形の積分値から、所定の射出圧波形に係る波形の積分値を減算して得られる値が負の場合における開待機時間又は射出待機時間を調整する。成形条件調整装置は、上記減算して得られる値が正の場合、射出圧波形データを第1学習器に入力する。成形条件調整装置は、上記減算して得られる値が負の場合、射出圧波形データを第2学習器に入力する。成形条件調整装置は、第1学習器及び第2学習器の出力情報に基づいて、開待機時間又は射出待機時間の変更量を特定し、調整する。
【符号の説明】
【0086】
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
4 制御装置
5 記録媒体
21 金型
22 固定盤
24 可動盤
26 型締機構
27 固定金型
27d キャビティ
28 可動金型
29 開閉バルブ
29a ニードル
29b エアシリンダ
31 加熱シリンダ
31a ノズル
32 スクリュ
33 駆動機構
33a ロードセル
101 成形条件調整装置
111 プロセッサ
112 記憶部
112a コンピュータプログラム
112b テーブル
113 操作部
114 取得部
115 制御部
115a 観測部
115b 報酬算出部
116 強化学習器
116a エージェント
116b 調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11