(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173861
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】軟包装用印刷インキ組成物、印刷方法、印刷物及びラミネート積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20231130BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20231130BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20231130BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C09D11/102
B41M1/30 D
B41M1/10
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086379
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】梅林 尚史
(72)【発明者】
【氏名】川田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 健太
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【テーマコード(参考)】
2H113
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA03
2H113BB07
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2H113EA10
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2H113FA04
2H113FA09
2H113FA32
4F100AK01B
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4J039FA02
4J039GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地球温暖化防止や環境負荷低減に貢献でき、軟包装に用いられる場合であっても優れた階調再現性、印刷適性などの諸物性を示す軟包装用印刷インキ組成物を提供する。
【解決手段】A.顔料
B.末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂
C.有機溶剤及び水
のA~Cを含有し、
B.のポリウレタン樹脂は、特定の重合成分を含有し、さらに、ポリウレタン樹脂の10~100質量%がバイオマスポリウレタン樹脂であり、前記バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む炭素数が2~10の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールを含む、
軟包装用印刷インキ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.顔料
B.末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂
C.有機溶剤及び水
のA~Cを含有し、
B.のポリウレタン樹脂は、重合成分として、ポリオール成分と、イソシアネート成分と、モノアミノアルコール成分と、さらにジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分を含有し、さらに、ポリウレタン樹脂の10~100質量%がバイオマスポリウレタン樹脂であり、
前記バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、
前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む炭素数が2~10の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールを含む、
軟包装用印刷インキ組成物。
【請求項2】
前記バイオマスポリウレタン樹脂のアミン価が、1.00~13.00mgKOH/g、水酸基価が0.50~13.00mgKOH/gである請求項1に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
【請求項3】
前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分と、植物由来のカルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールを含む請求項1又は2に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
【請求項4】
前記植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分は、ジエチレングリコールと1,3―プロパンジオールとを含み、
ジエチレングリコールとジエチレングリコール以外の短鎖ジオールの質量比は、ジエチレングリコール/ジエチレングリコール以外の短鎖ジオール=10.0/90.0~90.0/10.0である請求項3に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
【請求項5】
植物由来のカルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸及びダイマー酸からなる群から選択された1種以上を含む請求項3に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
【請求項6】
植物由来のカルボン酸成分は、セバシン酸及びコハク酸を含み、
セバシン酸とコハク酸の質量比は、セバシン酸/コハク酸=10.0/90.0~90.0/10.0である、請求項5に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
【請求項7】
水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体、及びセルロースアセテートプロピオネート樹脂からなる群から選択された1種以上の化合物を含む、請求項1又は2に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
【請求項8】
樹脂フィルムに、請求項1又は2に記載の軟包装用印刷インキ組成物を用いて、グラビア印刷機により印刷する印刷方法。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷方法で得られた印刷物。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷物と、基材とを、ラミネート接着剤を介して、ラミネートしてなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装用印刷インキ組成物に関する。より詳細には、本発明は、階調再現性、耐ブロッキング性、ラミネート適性などの諸物性の優れた軟包装用印刷インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、枯渇性資源でない産業資源として「バイオマス」が注目されている。「バイオマス」は、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」である。また、環境保全を目的に、1980年代から、バイオマスを原材料とする、バイオマスポリマーが開発されている。バイオマスポリマーは、地球環境温暖化防止策として有用と考えられており、成形加工、繊維、不織布、包装、トナー、インキ、塗料、フィルム・シート、フォーム、コーティング、接着剤など、多種多様な製品の素材として期待されている。特許文献1には、植物由来の原料利用率の高いバイオポリウレタン樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバイオポリウレタン樹脂をインキ組成物として用いられた場合は、軟包装(フレキシブルパッケージ)に用いられる場合において、階調再現性、印刷適性が充分でない。
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、地球温暖化防止や環境負荷低減に貢献でき、軟包装に用いられる場合であっても優れた階調再現性、印刷適性などの諸物性を示す軟包装用印刷インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、A.顔料、B.末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂、C.有機溶剤及び水のA~Cを含有し、
B.のポリウレタン樹脂は、重合成分として、ポリオール成分と、イソシアネート成分と、モノアミノアルコール成分と、さらにジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分を含有し、さらに、ポリウレタン樹脂の10~100質量%がバイオマスポリウレタン樹脂であり、
前記バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、
前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む炭素数が2~10の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールを含む、
軟包装用印刷インキ組成物、
を使用することにより、地球温暖化防止や環境負荷低減に貢献でき、階調再現性、印刷適性などの諸物性が良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.A.顔料
B.末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂
C.有機溶剤及び水
のA~Cを含有し、
B.のポリウレタン樹脂は、重合成分として、ポリオール成分と、イソシアネート成分と、モノアミノアルコール成分と、さらにジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分を含有し、さらに、ポリウレタン樹脂の10~100質量%がバイオマスポリウレタン樹脂であり、
前記バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、
前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む炭素数が2~10の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールを含む、
軟包装用印刷インキ組成物。
2.前記バイオマスポリウレタン樹脂のアミン価が1.00~13.00mgKOH/g、水酸基価が0.50~13.00mgKOH/gである1に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
3.前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分と、植物由来のカルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールを含む1又は2に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
4.前記植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分は、ジエチレングリコールと1,3―プロパンジオールとを含み、
ジエチレングリコールとジエチレングリコール以外の短鎖ジオールの質量比は、ジエチレングリコール/ジエチレングリコール以外の短鎖ジオール=10.0/90.0~90.0/10.0である1~3のいずれかに記載の軟包装用印刷インキ組成物。
5.前記植物由来のカルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸及びダイマー酸からなる群から選択された1種以上を含む3又は4に記載の軟包装用印刷インキ組成物。
6.植物由来のカルボン酸成分は、セバシン酸及びコハク酸を含み、
セバシン酸とコハク酸の質量比は、セバシン酸/コハク酸=10.0/90.0~90.0/10.0である、3~5のいずれかに記載の軟包装用印刷インキ組成物。
7.水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体、及びセルロースアセテートプロピオネート樹脂からなる群から選択された1種以上の化合物をさらに含む、1~6のいずれかに記載の軟包装用印刷インキ組成物。
8.樹脂フィルムに、1~7のいずれかに記載の軟包装用印刷インキ組成物を用いて、グラビア印刷機により印刷する印刷方法。
9.8に記載の印刷方法で得られた印刷物。
10.9に記載の印刷物と、基材とを、ラミネート接着剤を介して、ラミネートしてなる積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の軟包装用印刷インキ組成物によれば、地球温暖化防止や環境負荷低減に貢献でき、軟包装に用いられる場合であっても優れた階調再現性、印刷適性などの諸物性を良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<軟包装用印刷インキ組成物>
本発明の軟包装用印刷インキ組成物(以下、場合により「インキ組成物」ともいう)は、
A.顔料
B.末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂
C.有機溶剤及び水
のA~Cを含有し、
B.ポリウレタン樹脂は、重合成分として、ポリオール成分と、イソシアネート成分と、モノアミノアルコール成分と、さらにジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分を含有し、さらに、ポリウレタン樹脂の10~100質量%がバイオマスポリウレタン樹脂であり、
前記バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、
前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む炭素数が2~10の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールを含む、
軟包装用印刷インキ組成物である。
以下、それぞれについて説明する。
【0008】
<顔料>
顔料は、一般に有機溶剤を含有するインキ組成物で使用され得る無機、有機及び体質顔料が例示される。無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が例示される。有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が例示される。体質顔料としては、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等が例示される。
顔料の含有量は、特に限定されず、インキ組成物により着色された印刷を行うことができる含有量であれば良い。インキ組成物中に顔料を0.5~50.0質量%となるよう含有され得る。顔料の含有量が0.5質量%未満である場合、印刷部の着色が不充分となる傾向がある。一方、顔料の含有量が50.0質量%を超える場合、印刷適性が不充分となる傾向がある。
【0009】
<末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂>
本発明におけるポリウレタン樹脂としては、重合成分として、ポリオール成分と、イソシアネート成分と、モノアミノアルコール成分と、さらにジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分、を含有する。つまり、このポリウレタン樹脂は、分子の末端に、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基と、水酸基を有する。言い換えれば、このポリウレタン樹脂は、ポリオール成分と、イソシアネート成分と、モノアミノアルコール成分と、さらにジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分を、含む成分を反応してなる。
さらに、好ましくは、重合成分として、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、モノアミノアルコール成分と、さらに水酸基を有さないジアミン成分及び水酸基を有するジアミン成分を含有するジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分、を含有する。つまり、このポリウレタン樹脂は、分子の末端に、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基と、分子内及び分子の末端に水酸基を有する。言い換えれば、このポリウレタン樹脂は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、モノモノアミノアルコール成分と、さらに水酸基を有さないジアミン成分及び水酸基を有するジアミン成分を含有するジアミン成分とポリアルキレンポリアミン成分とを含有するポリアミン成分を、含む成分を反応してなる。
そして、ポリウレタン樹脂は、バイオマスポリウレタン樹脂を10.0~100質量%を含有し、前記バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、前記バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む炭素数が2~10の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールがバイオマスポリウレタン樹脂であってよく、このバイオマスポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、ポリイソシアネート成分を反応させた構造の樹脂を含むものである。
【0010】
(バイオマスポリウレタン樹脂(末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂のうちのバイオマスポリウレタン樹脂))
本発明における上記のポリウレタン樹脂の10.0~100質量%はバイオマスポリウレタン樹脂である。そして残りの0~90.0質量%は石油由来のポリウレタン樹脂である。なお、バイオマスポリウレタン樹脂は、環境面から、バインダー樹脂中、固形分換算で、10.0質量%以上含まれることが好ましく、40.0質量%以上含まれることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
以下に本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂について説明する。
本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂は、重合成分として、バイオポリエステルポリオール成分と、イソシアネート成分と、下記のポリアミン成分と、モノアミノアルコール成分とを、反応させた樹脂である。
【0011】
本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂は、上記各成分を反応させ、保存安定性(顔料分散性)、印刷適性の点から、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有することが好ましい。さらなる良好な接着性を示すために、アミン価は、1.00mgKOH/g以上が好ましく、1.50mgKOH/g以上がより好ましく、3.00mgKOH/g以上がさらに好ましい、また13.00mgKOH/g以下が好ましく、10.00mgKOH/g以下がより好ましい。加えて、さらなる良好な接着性を示すために、水酸基価が0.50mgKOH/g以上が好ましく、3.00mgKOH/g以上がより好ましい。また13.00mgKOH/g以下が好ましく、10.00mgKOH/g以下がより好ましい。
【0012】
(バイオポリエステルポリオール成分)
バイオポリエステルポリオール成分は、植物由来のジエチレングリコールを含む、炭素数が2~10の短鎖ジオール成分と、植物由来又は石油由来のカルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールであることが好ましい。なお、植物由来の短鎖ジオールは専ら炭素数が2~4である。
植物由来のジエチレングリコールを含む、炭素数が2~4の短鎖ジオール成分中に、植物由来のジエチレングリコールを10.0質量%以上含有させると、優れた階調再現性を得ることが容易になり好ましい。
植物由来のジエチレングリコール以外の炭素数が2~10の短鎖ジオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールペンチルグリコール等が例示できる。
好ましくは、植物由来のジエチレングリコール以外の炭素数が2~4の短鎖ジオールとしては、環境面から、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等の植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオールの1種以上である。
中でも、植物由来のジエチレングリコールと植物由来の1,3-プロパンジオールを含有する植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオールを採用することがさらに好ましい。
【0013】
植物由来のジエチレングリコールと植物由来の1,3-プロパンジオールを採用する場合には、植物由来のジエチレングリコールと植物由来の1,3-プロパンジオールの合計の質量に対して、植物由来のジエチレングリコールは5.0質量%以上が好ましく、20.0質量%以上がより好ましく、35.0質量%以上がさらに好ましい。また、90.0質量%以下が好ましく、70.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以下がさらに好ましく、55.0質量%以下が最も好ましい。
これらの含有比率は、植物由来のジエチレングリコールと植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオールを2種以上使用したときも同様である。
【0014】
上記カルボン酸成分としては、特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、タプシン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸等であり、これらは併用されてもよい。好ましくは、環境面から、植物由来のセバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸、アゼライン酸等から選択される1種以上、更に好ましくは、植物由来のセバシン酸、コハク酸、ダイマー酸から選択される1種以上を含有することが好ましい。
より好ましくは、植物由来のセバシン酸と植物由来の他のカルボン酸を含む。
なお、さらなる良好な接着性を発揮させるために、植物由来のセバシン酸と植物由来のコハク酸を併用することが好ましい。
そのときには、セバシン酸とコハク酸の合計の質量に対して、セバシン酸は10.0質量%以上が好ましく、35.0質量%以上がより好ましい。また、90.0質量%以下が好ましく、65.0質量%以下がより好ましい。
【0015】
・ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート成分としては特に限定されない。一例を挙げると、ポリイソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物を混合して得られたものである。また、バイオマス由来のポリイソシアネート成分も使用することができる。
また、上記ポリイソシアネート成分と上記ポリオール成分の使用比率は、イソシアネート基/水酸基の当量比率(イソシアネートインデックス(I.I.))が、1.2以上が好ましい。また2.20以下が好ましい。
【0016】
・モノアミノアルコール成分
モノアミノアルコール成分は反応停止剤として機能し、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及び1-アミノ-2,3-プロパンジオール等が例示できる。これによりバイオマスポリウレタン樹脂の分子末端に水酸基を有することになる。
【0017】
・ポリアミン成分
ポリアミン成分としては、鎖伸長剤、反応停止剤として機能するものであり、ジアミン成分とポリアルキレンポリアミン成分を含有する。
より好ましくは、水酸基を有さないジアミン成分及び水酸基を有するジアミン成分を含有するジアミン成分とポリアルキレンポリアミン成分を含有するポリアミン成分を含有する。
ジアミン成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類等の水酸基を有さないジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等のジアミン成分が例示できる。水酸基を有するジアミン類によりバイオマスポリウレタン樹脂の分子内に水酸基を導入することにより、再溶解性が向上する。水酸基を有さないジアミン類としては、脂環構造を有する水酸基を有さないジアミン類が好ましい。
本発明では、バイオマスポリウレタン樹脂の凝集力、保存安定性(顔料分散性)を向上させるために、ポリアルキレンポリアミン成分を併用する。ポリアルキレンポリアミン成分としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が例示できる。
本発明では、上記モノエタノールアミンと共に、ポリアルキレンポリアミン、水酸基を有するジアミン類、及び、水酸基を有さない脂環式ジアミン類を併用することがより好ましい。
【0018】
(バイオマスポリウレタン樹脂の合成時に必要に応じて添加することができる成分)
本発明中のバイオマスポリウレタン樹脂の合成時に、必要に応じて、鎖伸長剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物、グリセリン等のトリオール化合物、反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン類等を使用できる。グリセリン等のトリオール化合物を使用することにより側鎖に水酸基を有するバイオマスポリウレタン樹脂を得ることもできる。
【0019】
バイオマスポリウレタン樹脂の製造方法としては、例えば、下記(1)~(5)のいずれかを採用できる。
(1)バイオポリエステルポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤としてポリアミン成分を加え、鎖伸長を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、反応停止剤としてモノアミノアルコール成分を反応させ、次いで、ポリアミン成分である反応停止剤を反応させ、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するバイオマスポリウレタン樹脂を得る方法。
(2)バイオポリエステルポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤としてポリアミン成分を加え、鎖伸長を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、反応停止剤として、モノアミノアルコール成分と、ポリアミン成分を同時に加えて反応させ、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するバイオマスポリウレタン樹脂を得る方法。
(3)バイオポリエステルポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤と反応停止剤としてはたらくポリアミン化合物と反応停止剤であるモノアミノアルコール成分とを同時に加えて反応させ、鎖伸長と反応停止を同時に行い、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するバイオマスポリウレタン樹脂を得る方法。
(4)バイオポリエステルポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、反応停止剤であるモノアミノアルコール成分を加え反応させ、次いで、ポリアミン化合物を加え、鎖伸長と反応停止を同時に行い、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するバイオマスポリウレタン樹脂を得る方法。
(5)バイオポリエステルポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、一部のポリアミン化合物を加え、鎖伸長を行い、次いで、反応停止剤であるモノアミノアルコール成分を加え反応させ、その後、残りのポリアミン化合物を加え、鎖伸長と反応停止を同時に行い、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するバイオマスポリウレタン樹脂を得る方法。
上記(1)~(5)バイオマスポリウレタン樹脂を得る方法において、ポリアミン成分として水酸基を有するジアミン類を使用することにより分子内に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0020】
バイオマスポリウレタン樹脂以外の併用可能な石油由来のポリウレタン樹脂について説明する。
石油由来のポリウレタン樹脂としては、重合成分として、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、ジアミン成分とポリアルキレンポリアミンとを含有するポリアミン成分と、モノアミノアルコール成分を含有する。言い換えれば、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、下記条件のポリアミン成分と、モノアミノアルコール成分を含有する成分を反応してなる。その石油由来のポリウレタン樹脂として、下記(1)、(2)を満たし、任意に下記(3)を満たす石油由来のポリウレタン樹脂が例示できる。
(1)末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有する。
(2)アミン価が1.00~13.00mgKOH/g、水酸基価が0.50~13.00mgKOH/gである。
(3)石油由来のポリウレタン樹脂は、重合成分として、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートとイソホロンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分、ポリオール成分と、ポリアミン成分と、モノアミノアルコール成分を含むことが好ましく、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール成分とポリエステルポリオール成分を含有することがより好ましい。
【0021】
・ポリオール成分
ポリオール化合物成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等アルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物と、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等のポリエステルジオール化合物が例示できる。より好ましくは、印刷適性から併用して使用する。
さらに、上記高分子ジオール化合物成分に加えて、性能が低下しない範囲で、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物成分の単独又は2種以上を併用して使用することができる。
【0022】
・ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物を、1種又は2種以上混合して使用できる。
ポリイソシアネート成分としては、高温多湿時のロール汚染、圧胴汚れ、重ね刷り時のインキ溶け出し耐性の点からジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートとイソホロンジイソシアネートとを併用使用する。ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートとイソホロンジイソシアネートの質量比率が、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート/イソホロンジイソシアネート=95/5~10/90となる範囲が好ましい。
また、上記ポリイソシアネート成分と上記ポリオール成分の使用比率は、イソシアネート基/水酸基の当量比率(イソシアネートインデックス(I.I.))が、1.2~2.3となる範囲である。
【0023】
・ポリアミン成分
ポリアミン成分としては、ジアミン成分とポリアルキレンポリアミン成分とを含有し、鎖伸長剤、反応停止剤として機能する。
ジアミン成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類等の水酸基を有さないジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、アミノエチルエタノールアミン等のジアミン成分が例示できる。
水酸基を有するジアミン類により石油由来のポリウレタン樹脂の分子内に水酸基を導入することにより、再溶解性が向上する。水酸基を有さないジアミン類としては、脂環構造を有する水酸基を有さないジアミン類が好ましい。
本発明では、石油由来のポリウレタン樹脂の凝集力、保存安定性(顔料分散性)を向上させるために、ポリアルキレンポリアミン成分を併用使用する。ポリアルキレンポリアミン成分としては、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン等が例示できる。
【0024】
・モノアミノアルコール成分
モノアミノアルコール成分としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及び1-アミノ-2,3-プロパンジオール等が例示でき、反応停止剤として使用される。
これにより石油由来のポリウレタン樹脂の分子末端に水酸基を有することになる。
【0025】
<必要に応じて添加することができる成分>
必要に応じて、鎖伸長剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物、グリセリン等のトリオール化合物、反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン類を使用できる。グリセリン等のトリオール化合物を使用することにより側鎖に水酸基を有する石油由来のポリウレタン樹脂を得ることもできる。
【0026】
石油由来のポリウレタン樹脂の製造方法としては、例えば、下記(1)~(5)のいずれかを採用できる。
(1)ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤としてポリアミン成分を加え、鎖伸長を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、反応停止剤としてモノアミノアルコール成分を反応させ、次いで、ポリアミン成分を反応させ、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(2)ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤としてポリアミン成分を加え、鎖伸長を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、反応停止剤であるモノアミノアルコール成分と、ポリアミン成分を同時に加えて反応させ、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(3)ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤と反応停止剤としてはたらくポリアミン化合物と反応停止剤であるモノアミノアルコール成分とを反応させ、鎖伸長と反応停止を同時に行い、両末端が第1級アミノ基又は第2級アミノ基であるポリアミン成分である反応停止剤を同時に加えて反応させ、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(4)ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、反応停止剤であるモノアミノアルコール成分を反応させ、次いで、ポリアミン化合物を加え、鎖伸長と反応停止を同時に行い、両末端が第1級アミノ基又は第2級アミノ基であるポリアミン成分である反応停止剤を同時に加えて反応させ、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(5)ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、一部のポリアミン化合物を加え、鎖伸長を行い、次いで、反応停止剤であるモノアミノアルコール成分を加え反応させ、その後、残りのポリアミン化合物を加え、鎖伸長と反応停止を同時に行い、末端に第1級アミノ基又は第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を含み、且つ末端に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(1)~(5)ポリウレタン樹脂を得る方法において、ポリアミン成分として水酸基を有するジアミン類を使用することにより分子内に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0027】
本発明の軟包装用印刷インキ組成物は、表刷り用印刷インキ組成物、ラミネート用印刷インキ組成物、シュリンク用印刷インキ組成物等に使用される。使用される用途に応じて、それぞれの成分の分子量や化学構造、また当量比は、所望されるバイオマスポリウレタン樹脂の硬さ等に基づいて適宜調整されればよい。
【0028】
ポリウレタン樹脂以外の併用使用できるバインダー樹脂としては、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、セルロース誘導体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ダイマー酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、コーパル樹脂、酸化ポリプロピレン等の樹脂が挙げられ、上記インキ組成物の用途に応じて適宜選択することができる。
【0029】
・有機溶剤
インキ組成物に使用される有機溶剤としては、トルエン、ケトン系有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系有機溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなど)、アルコール系有機溶剤(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、炭化水素系溶剤(トルエン、メチルシクロヘキサンなど)が利用できる。
なお、環境問題への対応と、インキの印刷適性や乾燥性などを考慮して、中でも印刷時のインキ組成物の有機溶剤として、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合溶剤を、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50~95/5の範囲、好ましくはエステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=60/40~85/15の範囲となるように使用することが好ましい。
さらに、インキの印刷適性の点から、印刷時のインキ組成物中に酢酸プロピルを5質量%以上、好ましくは15質量%以上含有させることが好ましい。
【0030】
・水
水は、本発明のインキ組成物の流動性を付与するために、インキ組成物中に0.1~10.0質量%配合される。
水の含有量は、インキ組成物中、0.1質量%以上であればよく、1.0質量%以上であることが好ましい。また、水の含有量は、インキ組成物中、9.0質量%以下であることが好ましい。水の含有量が0.1質量%未満である場合、インキ組成物は、粘度が高くなる傾向がある。一方、水の含有量が10.0質量%を超える場合、インキ組成物は、インキ組成物のバランスが崩れる傾向がある。
【0031】
必要に応じて添加される添加剤としては、ロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂等の密着性向上剤、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のブロックキング防止剤、顔料分散剤、架橋剤、滑剤、レベリング剤、界面活性剤、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂等の密着性向上剤、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、ポリアミド樹脂等のブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、キレート架橋剤、pH調整剤、表面調整剤、老化防止剤、可塑剤及び加湿剤等が挙げられ、上記インキ組成物の用途に応じて適宜選択することができる。
【0032】
<本発明の軟包装用印刷インキ組成物を軟包装ラミネート用印刷インキ組成物とする場合>
本発明の軟包装用印刷インキ組成物を軟包装ラミネート用印刷インキ組成物とする場合には、下記の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、他のバインダー樹脂等、さらに、上記の塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂等の密着性向上剤、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のブロックキング防止剤、帯電防止剤、消泡剤等を含有できる。
【0033】
(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体)
ポリウレタン樹脂を含むだけでは、顔料が充分に分散されない場合や、金属蒸着フィルム等の接着性やラミネート適性を向上させる場合には、軟包装ラミネート用印刷インキ組成物は、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体が併用されることが好ましい。塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、従来、グラビア印刷インキ組成物に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーの共重合体であってもよい。中でも、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーの共重合体は、環境に配慮したインキの有機溶剤系においては、水酸基を有する、好ましくは、50~200の水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体が好適である。このような水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られ得る。
酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体の場合では、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、及び酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。すなわち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮したインキの有機溶剤系への良好な溶解性を付与する。
式1 -CH2-CHCl-
式2 -CH2-CH(OCOCH3)-
式3 -CH2-CH(OH)-
このような水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体の具体例としては、日信化学工業(株)製のソルバインA、AL、TA5R、TA2、TA3、TAO、TAOL、C、CH、CN、CNL等を挙げることができる。
末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体との合計の含有量は、軟包装用ラミネート用印刷インキ組成物中に、5~20質量%であることが好ましい。
【0034】
(塩化ビニル/アクリル共重合体)
塩化ビニルとアクリルモノマーの共重合体を主成分とするものである。共重合体の形態は特に限定されず、例えば、アクリルモノマーはポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト共重合されていても良い。
アクリルモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有するアクリルモノマー等を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。
水酸基を有するアクリルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
また、アクリルモノマーとして、水酸基以外の官能基を有するアクリルモノマーを用いることもできる。水酸基以外の官能基の例としてはカルボキシル基、アミド結合基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
上記塩化ビニル/アクリル共重合体は、質量平均分子量が1万~7万であることが好ましい。
また、上記環境に配慮した有機溶剤への溶解性、基材に対する接着性の点から、上記塩化ビニル/アクリル共重合体は、50~200の水酸基価を有していることが好ましい。
【0035】
(硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート樹脂)
本発明の軟包装用ラミネート用印刷インキ組成物は、耐ブロッキング性を向上させるために、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が併用されてもよい。
硝化綿は、軟包装用ラミネート用印刷インキ組成中に、0.1~2.0質量%含有されることが好ましい。セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、軟包装用ラミネート用印刷インキ組成中に、0.1~3.0質量含有されることが好ましい。
【0036】
(硝化綿)
硝化綿は、従来、グラビア印刷インキ組成物に使用されている硝化綿が使用され得る。硝化綿は、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明において使用され得る硝化綿は、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましい。具体例としては、硝化綿は、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NC RS-2、(KCNC、KOREA CNC LTD社)等である。
【0037】
(セルロースアセテートプロピオネート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、従来、グラビア印刷インキ組成物に使用されているセルロースアセテートプロピオネート樹脂が使用され得る。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化は0.6~2.5重量%、プロピオネート化は42.0~46.0重量%、水酸基は1.8~5.0%の樹脂が市販されている。セルロースアセテートプロピオネート樹脂の具体例は、関東化学(株)製のセルロースアセテートプロピオネート等である。
【0038】
(他のバインダー樹脂)
さらに、本発明のインキ組成物は、その他のバインダー樹脂として、性能が低下しない範囲、さらにコストを考慮して、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン、ロジン誘導体や粘着性樹脂等が補助的に添加されてもよい。
【0039】
(密着性向上剤)
(塩素化ポリプロピレン)
塩素化ポリプロピレンとしては、塩素化度が20~50%のものが好適に使用される。塩素化度が上記範囲内であることにより、塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤との相溶性が優れ、かつ、フィルムに対する接着性が優れる。なお、本発明において、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。また、塩素化ポリプロピレンは、質量平均分子量が5000~200000の変性された、又は未変性の塩素化ポリプロピレンであることが好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であることにより、塩素化ポリプロピレンは、接着性が優れ、かつ、有機溶剤への溶解性が優れる。また、塩素化ポリプロピレンを使用する場合は、インキ組成物の固形分質量%で、3.0質量%以下で使用することが好ましい。
【0040】
(ダンマル樹脂)
ダンマル樹脂は、ダマール、ダンマーとも表記され、植物由来の天然樹脂の一種である。詳細には、マレーシア、インドネシアなど東南アジアに生育するフタバガキ科又はカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種である。ダンマル樹脂は、使用する際には適当な有機溶剤に溶解させてワニスとする。ダンマル樹脂は塩素を含有しないため、印刷インキ組成物に塩素化ポリオレフィン樹脂を使用する場合に比べ、塩素を排除・低減することができる。また、ダンマル樹脂を使用する場合は、インキ組成物の固形分質量%で、3.0質量%以下で使用することが好ましい。
【0041】
(ブロッキング防止剤)
(シリカ粒子)
シリカ粒子は、天然産、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のものなどが挙げられる。シリカ粒子は、平均粒子径が1.0~5.0μmのものが好ましい(なおシリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる)。シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでも良いし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでも良い。これらの中でも、シリカ粒子は、親水性のものが好ましい。親水性シリカ粒子を含むインキ組成物は、重ね印刷時のインキの濡れ・広がりを促し、重ね印刷効果(以下「トラッピング性」と記載する場合がある)を向上させる効果も有する。シリカ粒子を使用する場合は、インキ組成物中に3.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下で使用する。
【0042】
(ポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックスとしては、平均粒子径が1.0~3.0μmの範囲のもの(なお、平均粒子径は、#1:Honeywell社 Microtrac UPAにて測定した粒径を意味する)を使用する。ポリエチレンワックスの粒子径が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、すべり性、ブロッキング性、トラッピング性が優れる。また、ポリエチレンワックスを使用する場合は、インキ組成物中の含有量は、1.5質量%以下が好ましい。
【0043】
(脂肪酸アミド)
脂肪酸アミドとしては、脂肪酸から酸基を除いた残基とアミド基を有するものであれば特に限定されない。脂肪酸アミドとしては、たとえば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、及びエステルアミド等が挙げられ、耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、及びビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。脂肪酸アミドの使用量は、インキ組成物中に、1.0質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0044】
・モノアミド:モノアミドは下記一般式(1)で表される。
一般式(1) R1-CONH2
(式中、R1は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
・置換アミド:置換アミドは下記一般式(2)で表される。
一般式(2) R2-CONH-R3
(式中、R2及びR3は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
【0045】
置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0046】
・ビスアミド:ビスアミドは下記一般式(3)あるいは一般式(4)で表される。
一般式(3) R4-CONH-R5-HNCO-R6
一般式(4) R7-NHCO-R8-CONH-R9
(式中、R4、R6、R7、及びR9は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R5及びR8は炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0047】
・メチロールアミド:メチロールアミドは下記一般式(5)で表される。
一般式(5) R10-CONHCH2OH
(式中、R10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
メチロールアミドの具体例としては、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0048】
・エステルアミド:エステルアミドは、下記一般式(6)で表される。
一般式(6) R11-CONH-R12-OCO-R13
(式中、R11及びR13は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R12は炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
エステルアミドの具体例としては、ステアリルアミドエチルステアレート、オレイルアミドエチルステアレート等が挙げられる。
【0049】
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
また、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び/又は炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸としてさらに好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、不飽和脂肪酸としてさらに好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
【0050】
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、グラビア印刷インキにしようできる公知のものが使用できる。具体的な例としては、硝酸ヤシアルキルビス(ヒドロキシエチル)メチルとヤシアルキルビス(ヒドロキシエチル)メチルクロライド、4級アンモニウム塩化合物(硫酸塩)、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、塩化モノアルキルベンジルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩(塩酸塩)、チオシアン酸塩、アルキルイミダゾリン、アルキルイミダゾリウム等が例示できる。帯電防止剤を使用する場合は、帯電防止剤の含有量は、インキ組成物中に、3.0質量%以下となるように使用することが好ましい。
【0051】
<本発明のインキ組成物の製造方法>
本発明のインキ組成物は、A.顔料、B.末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂、好ましくは、末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつ分子内及び末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂、C.有機溶剤及び水、必要に応じてその他のバインダー樹脂等の成分を、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等の公知の各種の分散・混練装置を使用し分散・練肉した後、水及び各種任意成分を添加し、撹拌混合することにより製造することができる。そして、各成分の含有量や、バインダー樹脂と有機溶剤との組み合わせなどを調整して、粘度を10~1000mPa・sとする。グラビア印刷時に使用する場合は、印刷時の雰囲気温度において、印刷条件に応じて適切な粘度となるように、具体的にはザーンカップ3号の流出秒数が12~23秒/25℃、高速印刷では14~16秒/25℃程度となるまでエステル系溶剤及びアルコール溶剤等の有機溶剤で希釈することが好ましい。
このとき、本発明のポリウレタン樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ポリウレタン樹脂の含有量は、軟包装ラミネート用印刷インキ組成物中、1.5質量%以上であることが好ましく、6.0質量%以上がより好ましい。また、17.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましい。ポリウレタン樹脂の含有量が1.5質量%未満である場合、保存安定性が低下する傾向がある。一方、ポリウレタン樹脂の含有量が17.0質量%を超える場合、インキ組成物の粘度が高くなる傾向がある。
【0052】
<本発明のインキ組成物を用いた印刷方法、印刷物>
次に、本発明のインキ組成物を用いた印刷方法を説明する。印刷方法は、少なくとも下記印刷方法を含む。例えば、公知の基材である樹脂フィルムに、少なくとも、インキ組成物をグラビア印刷方式で1回以上印刷を行う。次いで、これらの印刷により形成した印刷インキ層の表面側の任意の個所に、他のインキ組成物をグラビア印刷方式で印刷を行い、ドライヤーにより乾燥させる方法が例示できる。またこの方法で得られた印刷物も本発明に含まれる。
このとき使用される基材の樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸及び無延伸ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ビニロン、スチレン等を挙げることができる。さらにこれら樹脂フィルムについては、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなどの加工をして得られるフィルムも使用することが可能である。
また、それら樹脂フィルムとして、各種印刷用プラスチックフィルムに金属蒸着、バリア性樹脂をコーティングしたバリア層を積層したフィルム等を使用することができる。
【0053】
<積層体>
上記の方法で得られた印刷物のインキ組成物による層の側に、樹脂フィルム等を各種方法によりラミネート加工を施して、包装袋等用の積層体を得ることができる。このラミネート加工としては、印刷物の表面にアンカーコート剤を塗工した後、又は塗工せずに、溶融ポリマーを積層させる押し出しラミネート法、印刷物の表面にラミネート接着剤を塗工した後、フィルム状ポリマーを貼合させるドライラミネート法を利用できる。
【0054】
(軟包装用ラミネート用印刷インキ組成物を用いてラミネート加工物を得る方法)
次に、本発明のインキ組成物を用いてラミネート加工物を得る方法について説明する。
本発明におけるラミネート加工物は、たとえば、樹脂フィルムに、まず、白色以外の軟包装用ラミネート用インキ組成物をグラビア印刷方式で1回以上印刷を行う。次いで、これらの印刷により形成した軟包装用ラミネート用着色インキ層の表面側(最終ラミネート後において、表層からみてより下層側)に、任意に白色の軟包装用ラミネート用インキ組成物をグラビア印刷方式で印刷を行い、ドライヤーにより乾燥させる。
【0055】
得られた印刷物の軟包装用ラミネート用白色インキ組成物による層の側に、樹脂フィルム等を各種ラミネート加工法によるラミネート加工を施して、包装袋等用のラミネート加工物を得ることができる。
このラミネート加工物を得る方法としては、印刷物の表面に、必要に応じてチタン系、ウレタン系、イミン系、ポリブタジエン系等のアンカーコート剤を塗工した後、溶融ポリマーを積層させる押し出しラミネート法、印刷物の表面に有機溶剤で適当な粘度に希釈した接着剤を塗工した後、フィルム状ポリマーを貼合させるドライラミネート法、印刷物の表面に無溶剤の接着剤を塗工した後、フィルム状ポリマーを貼合させるノンソルラミネート法が利用できる。上記押し出しラミネート法は、印刷物の表面に必要に応じて、チタン系、ウレタン系、イミン系、ポリブタジエン等のアンカーコート剤を塗工した後、既知の押し出しラミネート機によって、溶融ポリマーを積層させる方法であり、さらに溶融樹脂を中間層として、他の材料とサンドイッチ状に積層することもできる。
【0056】
上記押し出しラミネート法で使用する溶融ポリマーとしては、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等、従来使用されていた樹脂が使用できる。その中でも溶融の際に酸化されてカルボニル基の発生し易い低密度ポリエチレンとの構成において本発明の効果が高くなる。
また、上記ドライラミネート法は、印刷物の表面に有機溶剤で適当な粘度に希釈したウレタン系、イソシアネート系等の接着剤を塗工し、乾燥後、既知のドライラミネート機によってフィルム状のポリマーを貼合する方法である。また、上記ノンソルラミネート法は、印刷物の表面にウレタン系、イソシアネート系等の接着剤を塗工した後、既知のドライラミネート機によってフィルム状のポリマーを貼合する方法である。ドライラミネート法、ノンソルラミネート法で使用するフィルム用の樹脂としては、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が使用できる。特にレトルト用途で使用される包装材料では、基材と貼合される樹脂フィルムの間にアルミ箔をはさんでラミネートすることもできる。このようなラミネート加工物は、製袋して内容物を詰めた後、ボイル・レトルト用途に利用することもできる。
このとき使用される上記樹脂フィルムとしては、特に限定されない。樹脂フィルムは、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等のポリエステルフィルム、ナイロン、ビニロンといった各種印刷用プラスチックフィルムや、それら各種印刷用プラスチックフィルムに金属蒸着、バリア性樹脂をコーティングしたバリア層を積層したフィルム等を使用することができる。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0058】
<バイオマスポリウレタン樹脂ワニス>
(バイオマスポリウレタン樹脂ワニス1)
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ジオール成分としてジエチレングリコール(植物由来):1,3-プロパンジオール(植物由来)の重量比が50:50、酸成分としてセバシン酸(ひまし油由来):コハク酸(植物由来)の重量比が40:60である数平均分子量2000のバイオマスポリエステルポリオールを200.00質量部と、イソホロンジイソシアネート33.30質量部を仕込み、窒素気流下、105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル393.50質量部とイソプロピルアルコール168.60質量部を加えた後、モノエタノールアミン0.31質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン4.85質量部、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン1.98質量部、ジエチレントリアミン0.49質量部を加え反応させてバイオマスポリウレタン樹脂ワニス1(固形分30質量%、アミン価3.32mgKOH/g、水酸基価5.59mgKOH/g)を得た。
【0059】
(バイオマスポリウレタン樹脂ワニス2~16)
上記バイオマスポリウレタン樹脂ワニス1の製造において、各成分を下記表のバイオマスポリウレタン樹脂ワニス2~16のものに変更した以外は、バイオマスポリウレタン樹脂ワニス1と同じ方法によりバイオマスポリウレタン樹脂ワニス2~16を得た。
【0060】
【0061】
<バイオマスポリウレタン樹脂でないポリウレタン樹脂ワニス(バイオマスでないポリウレタン、アミン価4.51mgKOH/g、水酸基価5.24mgKOH/g)の製造例>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールを100.00質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコールを100.00質量部、イソホロンジイソシアネートを16.67質量部、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートを19.67質量部仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチルを404.80質量部、イソプロピルアルコールを173.49質量部加えた後、イソホロンジアミンを6.45質量部、モノエタノールアミンを0.61質量部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンを1.31質量部、ジエチレントリアミンを0.29質量部加えて、反応させてポリウレタン樹脂ワニス(固形分30質量%)を得た。
【0062】
<比較例のポリウレタンの製造例>
比較例1(比較バイオマスポリウレタン樹脂ワニス、アミン価4.40mgKOH/g、OH価6.10mgKOH/g、ポリアルキレンポリアミンなしの合成)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=40/60(質量比)とジエチレングリコール(植物由来)/1,3-プロパンジオール(植物由来)=50/50(質量比)から得られる平均分子量2000のポリエステルジオールを200.00質量部、イソホロンジイソシアネートを33.30質量部仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチルを394.10質量部、イソプロピルアルコールを168.90質量部加えた後、イソホロンジアミンを5.81質量部、モノエタノールアミンを0.92質量部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンを1.18質量部加えて反応させて比較例1のバイオマスポリウレタン樹脂ワニス1(固形分30質量%)を得た。
【0063】
比較例2(石油由来のポリウレタン樹脂ワニス、アミン価0.9mgKOH/gの合成)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、石油由来のジエチレングリコール/石油由来のネオペンチルグリコール=50/50(重量比)のアジペートである数平均分子量4000のポリエステルポリオールを400.00部と、イソホロンジイソシアネート44.4部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル760部を加えた後、イソホロンジアミン19.2部、鎖伸長停止剤としてイソプロピルアルコール325部加え、60℃で3時間反応させたて比較例2の石油由来のウレタン樹脂ワニス2(固形分30質量%)を得た。
【0064】
<軟包装用ラミネート用インキ組成物の製造例>
顔料(フタロシアニンブルーC.I.Pigment Blue 15:4)、上記バイオマスポリウレタン樹脂ワニス1~19、比較例1及び2のワニス、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂(ソルバインTA-3、日信化学工業(株)製)を、レッドデビル社のペイントコンディショナーを用いて混練し、さらに溶媒(該ペイントコンディショナーと溶媒を合わせて混合液とした。)を加えて、表1に示した実施例の軟包装用ラミネート用インキ組成物を得た。
【0065】
(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体)
ソルバインTA-3、日信化学工業社
(重合ロジン)
重合ロジン:酸価160mgKOH/g
(塩素化ポリプロピレン)
塩素化度40%、数平均分子量100000の塩素化ポリプロピレン(固形分50%)40質量部とメチルシクロヘキサン60質量部を混合撹拌し、固形分20%の塩素化ポリ プロピレンワニスを得た。
(シリカ粒子)
平均粒子径:4.5μm
(ポリエチレンワックス)
平均粒子径:2.11μm
(混合溶剤)
酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロピルアルコール=50/30/20
【0066】
(評価)
上記で得られた実施例1~19、比較例1~2の軟包装用ラミネート用インキ組成物の性能評価を下記方法にて行い、評価結果を表2に示す。
<インキ組成物の性能評価>
(保存安定性)
上記で得られた実施例1~19、比較例1~2の軟包装用ラミネート用インキ組成物の各々をガラス瓶に採取し、60℃の雰囲気温度で14日間保存した時の顔料の沈降の有無から、インキの保存安定性を評価した。
A:沈降が見られず、インキの保存安定性は良好である
C:沈降が見られ、インキの保存安定性が不良である
【0067】
(印刷評価)
実施例1~19、比較例1~2の軟包装用ラミネート用インキ組成物の各々100質量部に対し、さらに表2の配合にしたがって混合液の50質量部で希釈し、粘度を(株)離合社ザーンカップ3号で15秒に調整した後、彫刻版(印刷刷版、ヘリオ175線/inch)を備えたグラビア印刷機にて、OPP、PET、NYの処理面に印刷速度60m/分で印刷を行った。
【0068】
(フィルムについて)
PET:片面にコロナ放電処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡績(株)製、E-5102、厚さ12μm
OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム、東洋紡績(株)製、P-2161、厚さ30μm
NY:ナイロンフィルム、東洋紡績(株)製、N-1102、厚さ15μm
【0069】
(接着性)
得られた各印刷物の印刷面にセロファンテープを貼り付けて、剥がしたときにインキ被膜が被着体から剥がれる面積の比率から、接着性を評価した。
A:全く剥がれない
B:剥がれる面積が20%未満である
C:剥がれる面積が20%以上である
【0070】
(印刷適性(カスレ))
印刷適性については、印刷終了時の印刷部分における、版にインキが詰まったことに起因するカスレの面積の割合から印刷適性を評価した。
A:カスレが全くみられない
B:カスレが少しみられる
C:カスレが多くみられる
【0071】
(耐ブロッキング性)
各印刷物の印刷面と、各フィルムのコロナ放電処理面とを重ね合わせ、3kg/cm2の荷重をかけて、温度45℃で1日放置した。その後、インキ面とフィルム面を剥がし、インキ被膜のフィルム面への移行を評価した。
A:抵抗なく剥がれてインキ被膜の移行が全くないもの
B:抵抗はあるがインキ被膜の移行が全くないもの
C:50%未満のインキ被膜の移行が認められたもの
D:50~100%のインキ被膜の移行が認められたもの
【0072】
(耐レトルト性)
ポリエチレンテレフタレート(PET)及びナイロン(NY)に印刷後1日経過した各印刷物に、固形分で2.0g/m2となる量のウレタン系接着剤(タケラックA-616/タケネートA-65、三井化学SKCポリウレタン社)を塗布した後、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルム(RXC-22、厚さ60μm、三井化学東セロ社)を貼り合わせ、40℃で3日放置してドライラミネート物を得た。このドライラミ ネート物を製袋し、中に水90重量%、サラダ油10重量%の混合物を詰めて溶封後、PETに印刷したものは135℃の加圧熱水中に60分間浸漬した時のラミ浮きの有無からレトルト適性を評価した。NYに印刷したものは120℃で同様の試験評価を行った。この評価によって、ラミネート適性を確認できる。
A:全くラミ浮きが見られないもの
B:ピンホール状もしくは一部に細くて短いラミ浮きがみられるもの
C:長い筋状のラミ浮きが全面にみられるもの
【0073】
【0074】
本発明に沿った実施例のバイオマスポリウレタン樹脂ワニスを使用したインキ組成物によれば、保存安定性、接着性、印刷適性、耐ブロッキング性及び耐レトルト性のいずれの結果も良好であった。
それに対して、合成時にポリアルキレンポリアミン成分を使用しないバイオマスポリウレタン樹脂ワニスを用いた比較例1によれば、保存安定性が不十分でありその他の評価を行える程度の印刷を行うことができなかった。
また、合成時にモノアミノアルコール成分及びポリアルキレンポリアミン成分を使用せず、バイオマスポリウレタン樹脂でもないワニスを使用した比較例2によれば、保存安定性が不十分でありその他の評価を行える程度の印刷を行うことができなかった。