(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173880
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/20 20060101AFI20231130BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20231130BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20231130BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60C9/20 E
B60C9/00 B
B60C9/18 K
B60C9/00 L
B60C9/22 C
B60C9/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086407
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭平
(72)【発明者】
【氏名】呉 倩
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA39
3D131AA45
3D131AA49
3D131BA02
3D131BA07
3D131BA08
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC25
3D131BC31
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA44
3D131DA54
3D131DA56
(57)【要約】
【課題】軽量化しつつも、プランジャー耐久性を維持でき、更には、操縦安定性を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部30に配置した少なくとも二枚のベルト層60A,60Bからなるベルト60と、該ベルト60のタイヤ径方向外側に配置したベルト補強層70A,70Bと、を具えるタイヤ100において、前記ベルト層60A,60B及び前記ベルト補強層70A,70Bは、補強材をエラストマーで被覆してなり、前記ベルト層60A,60Bの補強材は、フィラメント径dが0.30mm未満の金属モノフィラメントであり、前記ベルト補強層70A,70Bの補強材は、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上の有機繊維コードであることを特徴とする、タイヤで100ある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に配置した少なくとも二枚のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に配置したベルト補強層と、を具えるタイヤにおいて、
前記ベルト層及び前記ベルト補強層は、補強材をエラストマーで被覆してなり、
前記ベルト層の補強材は、フィラメント径dが0.30mm未満の金属モノフィラメントであり、
前記ベルト補強層の補強材は、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上の有機繊維コードであることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記ベルト層の補強材としての金属モノフィラメントは、フィラメント径dが0.15mm以上である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ベルト層は、複数本の金属モノフィラメントが撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コードをエラストマーで被覆してなる、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1が、0.01mm以上0.24mm未満である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記金属モノフィラメントのフィラメント径d(mm)と、前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1(mm)と、前記金属コードを構成する金属モノフィラメントの本数n(本)とが、下記式(1):
0.45≦[(d/2)2×π×n]/{d×[d×n+w1×(n-1)]}≦0.77 ・・・ (1)
[式中、dは、金属モノフィラメントのフィラメント径(mm)であり、w1は、金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔(mm)であり、nは、金属コードを構成する金属モノフィラメントの本数(本)であり、但し、d>0であり、w1>0であり、nは整数である]の関係を満たす、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ベルト内で隣接する二枚のベルト層にそれぞれ埋設された前記金属モノフィラメントの表面間の距離Gと、前記金属コード同士の間隔w2との比率G/w2が、1.6以下であり、
前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1と、前記金属コードの幅Wとの比率w1/Wが、0.07以上であり、
前記金属モノフィラメントのフィラメント径dと、前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1との比率d/w1が、1.2以上2未満である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ベルト層の厚さtが、0.8mm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ベルト補強層の補強材としての有機繊維コードは、ポリエチレンテレフタレートからなるコードである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ベルトは、第1ベルト層と、該第1ベルト層のタイヤ径方向外側に積層された第2ベルト層と、を含み、
タイヤセンター部における前記第2ベルト層の金属モノフィラメントと前記第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離aと、前記第2ベルト層の端部の金属モノフィラメントと前記第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離bとが、下記式(2):
1.8≦b/a≦4.0 ・・・ (2)
[式中、aは、タイヤセンター部における第2ベルト層の金属モノフィラメントと第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離であり、bは、第2ベルト層の端部の金属モノフィラメントと第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離である]の関係を満たす、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、強度が必要とされるタイヤの内部には、リング状のタイヤ本体の子午線方向に沿って埋設された補強コードを含むカーカスが配置されており、該カーカスのタイヤ径方向外側には、ベルト層が配置されている。該ベルト層は、通常、スチールコード等の金属コードをエラストマーで被覆してなる金属コード-エラストマー複合体を用いて形成され、タイヤに耐荷重性、耐牽引性等を付与している。
【0003】
近年、自動車の燃費を向上させるために、タイヤを軽量化する要求が高まっている。タイヤの軽量化の手段として、ベルト層用の金属コードが注目されており、金属フィラメントを撚らずにベルト層用のコードとして使用する技術が多数公開されている。
例えば、下記特許文献1には、単一のモノフィラメントからなるスチールコード本体の周囲に熱可塑性樹脂中にエラストマーを分散させた熱可塑性エラストマー組成物を被覆したタイヤ補強用スチールコード、及びこれを使用したタイヤが開示されている。
また、下記特許文献2には、同一の径の2~6本の主フィラメントを、撚り合わせることなく単一の層をなすように並列させて主フィラメント束とし、主フィラメントより小径で真直の1本のスチールフィラメントをラッピングフィラメントとして主フィラメント束の周囲に巻き付けてなるスチールコードを、タイヤのベルト層に用いた空気入りラジアルタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-053495号公報
【特許文献2】特開2012-106570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1や特許文献2で提案されているような、金属のモノフィラメントをエラストマーで被覆してベルト層を形成することで、ベルト層の薄ゲージ化によりタイヤを軽量化することができる。しかしながら、本発明者らが検討したところ、金属モノフィラメントをエラストマーで被覆してなるベルト層を用いたタイヤは、プランジャー耐久性(突起入力に対する耐久性)が低下してしまい、また、操縦安定性が十分とは言えず、改善の余地があることが分かった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、軽量化しつつも、プランジャー耐久性を維持でき、更には、操縦安定性を向上させたタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
【0008】
[1] トレッド部に配置した少なくとも二枚のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に配置したベルト補強層と、を具えるタイヤにおいて、
前記ベルト層及び前記ベルト補強層は、補強材をエラストマーで被覆してなり、
前記ベルト層の補強材は、フィラメント径dが0.30mm未満の金属モノフィラメントであり、
前記ベルト補強層の補強材は、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上の有機繊維コードであることを特徴とする、タイヤ。
かかる本発明のタイヤは、プランジャー耐久性を維持しつつ、軽量である上、操縦安定性が向上している。
【0009】
[2] 前記ベルト層の補強材としての金属モノフィラメントは、フィラメント径dが0.15mm以上である、[1]に記載のタイヤ。
この場合、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性が更に向上する。
【0010】
[3] 前記ベルト層は、複数本の金属モノフィラメントが撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コードをエラストマーで被覆してなる、[1]又は[2]に記載のタイヤ。
この場合、タイヤを更に軽量化できる。
【0011】
[4] 前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1が、0.01mm以上0.24mm未満である、[3]に記載のタイヤ。
この場合、金属コード内の金属モノフィラメント間にエラストマーが十分に浸透し、また、金属コード内の金属モノフィラメント間のセパレーションを抑制できる。
【0012】
[5] 前記金属モノフィラメントのフィラメント径d(mm)と、前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1(mm)と、前記金属コードを構成する金属モノフィラメントの本数n(本)とが、下記式(1):
0.45≦[(d/2)2×π×n]/{d×[d×n+w1×(n-1)]}≦0.77 ・・・ (1)
[式中、dは、金属モノフィラメントのフィラメント径(mm)であり、w1は、金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔(mm)であり、nは、金属コードを構成する金属モノフィラメントの本数(本)であり、但し、d>0であり、w1>0であり、nは整数である]の関係を満たす、[3]又は[4]に記載のタイヤ。
この場合、タイヤの軽量性、プランジャー耐久性、操縦安定性、耐腐食進展性、ベルト層の耐セパレーション性等についてバランスよく向上させることができる。
【0013】
[6] 前記ベルト内で隣接する二枚のベルト層にそれぞれ埋設された前記金属モノフィラメントの表面間の距離Gと、前記金属コード同士の間隔w2との比率G/w2が、1.6以下であり、
前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1と、前記金属コードの幅Wとの比率w1/Wが、0.07以上であり、
前記金属モノフィラメントのフィラメント径dと、前記金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔w1との比率d/w1が、1.2以上2未満である、[3]~[5]のいずれか一つに記載のタイヤ。
この場合、タイヤを更に軽量化し、また、低転がり抵抗化することが可能となる。
【0014】
[7] 前記ベルト層の厚さtが、0.8mm以下である、[1]~[6]のいずれか一つに記載のタイヤ。
この場合、タイヤを更に軽量化できる。
【0015】
[8] 前記ベルト補強層の補強材としての有機繊維コードは、ポリエチレンテレフタレートからなるコードである、[1]~[7]のいずれか一つに記載のタイヤ。
この場合、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性が更に向上する。
【0016】
[9] 前記ベルトは、第1ベルト層と、該第1ベルト層のタイヤ径方向外側に積層された第2ベルト層と、を含み、
タイヤセンター部における前記第2ベルト層の金属モノフィラメントと前記第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離aと、前記第2ベルト層の端部の金属モノフィラメントと前記第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離bとが、下記式(2):
1.8≦b/a≦4.0 ・・・ (2)
[式中、aは、タイヤセンター部における第2ベルト層の金属モノフィラメントと第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離であり、bは、第2ベルト層の端部の金属モノフィラメントと第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離である]の関係を満たす、[1]~[8]のいずれか一つに記載のタイヤ。
この場合、タイヤのベルト端部の耐久性を十分に向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軽量化しつつも、プランジャー耐久性を維持でき、更には、操縦安定性を向上させたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のタイヤの一実施態様の断面図である。
【
図3】本発明のタイヤの一実施形態に係るベルト層の幅方向における部分断面図である。
【
図4】本発明のタイヤの一実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図である。
【
図5】金属コードの断面内に含まれる金属モノフィラメントの断面積の比率の規定に係る説明図である。
【
図6】本発明のタイヤの一実施形態に係るベルトの拡大部分断面図である。
【
図7】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図である。
【
図8】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【
図9】金属モノフィラメントの型付け量及び型付けピッチの定義を示す金属モノフィラメントの説明図である。
【
図10】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【
図11】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図である。
【
図12】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【
図13】金属モノフィラメントの型付け量及び型付けピッチの定義を示す金属モノフィラメントの説明図である。
【
図14】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【
図15】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【
図16】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図である。
【
図17】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【
図18】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルトの端部の概略断面図である。
【
図19】本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルトのセンター部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明のタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0020】
本実施形態のタイヤは、トレッド部に配置した少なくとも二枚のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に配置したベルト補強層と、を具える。そして、本実施形態のタイヤにおいて、前記ベルト層及び前記ベルト補強層は、補強材をエラストマーで被覆してなり、前記ベルト層の補強材は、フィラメント径dが0.30mm未満の金属モノフィラメントであり、前記ベルト補強層の補強材は、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上の有機繊維コードであることを特徴とする。
【0021】
本実施形態のタイヤは、フィラメント径dが0.30mm未満の金属モノフィラメントをエラストマーで被覆してなるベルト層を具え、該ベルト層の厚みが薄いため、軽量である。
なお、タイヤが金属モノフィラメントを含むベルト層を具えるだけでは、通常のベルト層に比べて、ベルト層の面内剛性が低下して、プランジャー耐久性(突起入力に対する耐久性)が低下してしまい、また、操縦安定性が十分ではないが、本実施形態のタイヤは、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上の有機繊維コードをエラストマーで被覆してなるベルト補強層を具え、該ベルト補強層がベルト層の剛性を補うことで、プランジャー耐久性の低下を抑制し、更には、操縦安定性を向上させることができる。
従って、本実施形態のタイヤは、プランジャー耐久性を維持しつつ、軽量である上、操縦安定性が向上している。
【0022】
次に、本発明のタイヤの一実施形態を、図面を参照しながら詳細に例示説明する。
図1は、本発明のタイヤの一実施態様の断面図である。
図1に示すタイヤ100は、一対のビード部10と、一対のサイドウォール部20と、トレッド部30と、ビード部10に埋設されたビードコア40間にトロイド状に延在させたカーカス50と、トレッド部30に配置した(より詳しくは、カーカス50のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置した)二枚のベルト層60A,60Bからなるベルト60と、該ベルト60のタイヤ径方向外側でベルト60の全体を覆うように配置したベルト補強層(「キャップ層」とも呼ばれる。)70Aと、該ベルト補強層70Aの両端部のみを覆うように配置した一対のベルト補強層(「レイヤー層」とも呼ばれる。)70Bと、を具える。
【0023】
図1に示すタイヤ100において、カーカス50は、一枚のカーカスプライから構成されており、また、ビード部10内に夫々埋設した一対のビードコア40間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア40の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス50のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。ここで、カーカス50を構成するカーカスプライは、タイヤ周方向に対してほぼ直交する方向に延びる(例えば、70~90°の角度で延びる)複数の補強コードをエラストマーで被覆してなることが好ましく、即ち、カーカス50は、ラジアルカーカスであることが好ましい。カーカス50の補強コードとしては、ポリエチレンテレフタレートコード、ナイロンコード、レーヨンコード等の有機繊維コードの他、スチールコードを用いてもよい。
【0024】
また、
図1に示すタイヤ100のベルト60は、二枚のベルト層60A,60Bから構成されており、各ベルト層60A,60Bは、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜(例えば、15~40°の角度で傾斜)して延びる金属モノフィラメント(補強材)をエラストマ
ーで被覆してなり、好ましくは、スチールモノフィラメントをエラストマーで被覆してなり、更に、二枚のベルト層60A,60Bが、該ベルト層60A,60Bを構成する金属モノフィラメントが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト60を構成している。
なお、図中のベルト60は、二枚のベルト層60A,60Bからなるが(以下、ベルト層60Aを「第1ベルト層」、ベルト層60Bを「第2ベルト層」と呼ぶことがある。)、本発明のタイヤにおいて、ベルトを構成するベルト層の枚数は、二枚以上であればよく、これに限られるものではない。
ベルト層60A,60Bの補強材である金属モノフィラメントは、フィラメント径dが0.30mm未満であるため、当該ベルト層60A,60Bの厚みを薄くすることができ、タイヤの軽量化に寄与する。ここで、ベルト層の補強材としての金属モノフィラメントのフィラメント径dは、0.15mm以上であることが好ましく、0.28mm以下であることが好ましい。金属モノフィラメントのフィラメント径dが0.15mm以上であると、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性が更に向上し、また、0.28mm以下であると、タイヤが更に軽量となる。
【0025】
前記金属モノフィラメント(「単線ワイヤ」とも呼ばれる。)は、上述のフィラメント径dを満たしていればよく、具体的な構造は特に限定されない。例えば、金属モノフィラメントとしては、真直の金属モノフィラメント、軸廻りに捩じりを加えた金属モノフィラメント、断面偏平形状の金属モノフィラメント、螺旋状に型付けした金属モノフィラメント、平面波形状に型付けした金属モノフィラメント等を使用することができる。
【0026】
また、
図1に示すタイヤ100において、ベルト補強層70A,70Bは、タイヤ周方向に対し実質的に平行(例えば、タイヤ周方向に対する角度が0~5°)に配列した有機繊維コード(補強材)をエラストマーで被覆してなる。該ベルト補強層70A,70Bは、有機繊維コードをエラストマーで被覆して準備した幅狭のストリップをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回して形成されている。この場合、タイヤ周方向にジョイント部がないため、タイヤのユニフォミティーが良好となり、また、ジョイント部がないため、ジョイント部への歪集中も防止できる。
なお、
図1に示すタイヤ100は、ベルト補強層70A及びベルト補強層70Bを具えるが、ベルト補強層70A及びベルト補強層70Bのいずれか一方が省略されたタイヤも、本発明のタイヤの一実施態様である。また、
図1に示すタイヤ100においては、ベルト補強層70A,70Bはそれぞれ一層であるが、二層以上であってもよい。
ベルト補強層70A,70Bの補強材である有機繊維コードは、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上であるため、剛性が高く、ベルト60(ベルト層60A,60B)を補強する効果が高く、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性の向上に寄与する。
【0027】
カーカス50、ベルト60(ベルト層60A,60B)、ベルト補強層70A,70Bにおいて、補強材(補強コード)を被覆するエラストマーは、特に限定されず、種々のエラストマーを適用することができる。
前記エラストマーは、JIS K 6251(2010年)に準拠して測定した50%モジュラス値が、1.5MPa以上であることが好ましく、より好ましくは1.8MPa以上、より一層好ましくは2.0MPa以上である。このようなエラストマーを補強材(補強コード)の被覆に用いると、補強材(補強コード)が長手方向に伸張した場合であっても、カーカス50、ベルト60、ベルト補強層70A,70B内部のエラストマーが高剛性であるため、補強材(補強コード)の長手方向への伸張を阻害し、タイヤの操縦安定性をより向上させることができる。
【0028】
前記エラストマーの主成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エ
ポキシ化天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等のジエン系ゴム及びその水添物、エチレン-プロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム(M-EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等のオレフィン系ゴム、Br-IIR、Cl-IIR、イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br-IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M-CM)等の含ハロゲンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等のシリコーンゴム、ポリスルフィドゴム等の含硫黄ゴム、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等のフッ素ゴム等のゴムや、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。なお、エラストマー(被覆ゴム)の50%モジュラス値は、各サンプルのゴム組成物を、145℃で40分間加硫して加硫ゴムとした後、JIS K 6251(2010年)に準拠して測定した値である。
【0029】
また、前記エラストマーには、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラックの他に、タイヤ等のゴム製品で通常使用される老化防止剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸等を適宜配合することができる。
【0030】
前記ベルト補強層70A,70Bに適用する有機繊維コードは、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上である。ここで、有機繊維コードの切断強度、切断伸度、7%伸長時の弾性率は、室温(23℃)で測定した値である。また、有機繊維コードの諸物性は、JIS
L 1013「化学繊維フィラメント糸試験方法」に従って測定できる。
7%伸長時の弾性率は、コードの荷重-伸び曲線の伸び7%に対応する点における接線の傾き(N/%)を、1dtex当りの値に換算することで算出される。荷重-伸び曲線の伸び7%に対応する点における接線の傾きとは、
図2に示すようなコードの荷重-伸び曲線Cの伸び7%に相当する点における接線Sの傾きを意味する。
切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上の有機繊維コードは、切断時の強度が高く、切断時の伸びが大きく、7%伸長時の弾性率も高いため、かかる物性の有機繊維コードをベルト補強層に適用して、ベルト層の剛性を補うことで、金属モノフィラメントを含むベルト層の適用によるプランジャー耐久性の低下を抑制しつつ、タイヤの操縦安定性を向上させることができる。
【0031】
前記有機繊維コードの材質としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、6-ナイロン、6,6-ナイロン、4,6-ナイロン等のナイロン、レーヨン、リヨセル等のセルロースが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、即ち、ベルト補強層70A,70Bの補強材としての有機繊維コードは、ポリエチレンテレフタレートからなるコード(以下、単に「ポリエチレンテレフタレートコード」と呼ぶことがある。)であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートコードは、一般的に用いられているナイロンコード等に比べて剛性が高く、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性の向上効果に優れる。
【0032】
前記有機繊維コードは、160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率が2.5mN/
(dtex・%)以上であることが好ましい。ここで、160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率は、160℃で測定したコードの荷重-伸び曲線の荷重29.4Nに対応する点における接線の傾き(N/%)を、1dtex当りの値に換算することで算出される。
なお、弾性率を160℃で測定するのは、タイヤ内部の温度は高速走行するに従って上昇し、高速走行でタイヤ故障が起こる時点では、ベルト補強層の温度が160℃に達しているからである。特に、ポリエチレンテレフタレートコードは、常温時に比べ高温時での弾性率の低下が大きく、常温で高弾性なコードであっても、高温時に高い弾性率を維持できなければ、十分なベルトの補強効果(突起入力に対する耐久性の向上効果及びベルトの迫り出し抑制効果)を発現できないため、高温時の弾性率が重要な意義を持つ。160℃で測定した29.4N荷重時のコードの弾性率を2.5mN/(dtex・%)以上にすることで、タイヤのプランジャー耐久性を向上させることができ、また、高速走行時のベルトの迫り出し量を抑制でき、タイヤの踏み込み・踏み出し時の応力を低減して、高速走行時のタイヤの操縦安定性が向上する。
【0033】
前記有機繊維コードの160℃での弾性率を向上させるためには、高張力下でディップ処理を行うことが好ましい。本発明者らは、ディップ処理時のコードにかかる張力を調整し、種々の弾性率の有機繊維コードを作製し、得られたディップコードをエラストマーで被覆し、ベルト補強層に適用して、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性を検討した結果、コードの160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率が2.5mN/(dtex・%)以上の範囲で、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性の向上が顕著になることを見出した。
【0034】
ここで、コードを十分に高弾性化するためには、接着剤処理を行う際の張力を6.9×10-2N/tex以上にすることが好ましい。但し、コードの高弾性化方法は、これに限られるものではなく、コードの低撚り化等、他の方法であってもよい。前記接着剤処理は、ドライ処理、ホット処理、ノルマライズ処理等から構成され、張力以外に温度及び時間を適宜調節して行う。本発明においては、1浴処理、2浴処理のいずれで接着剤処理を行ってもよいが、2浴処理で行うことが好ましく、6.9×10-2N/tex以上の張力を2浴のホット処理時にコードにかけることが好ましい。
【0035】
前記有機繊維コードは、下記式(3):
α=T×D1/2 ・・・ (3)
[式中、αは撚り係数で、Tは撚り数(回/100mm)、Dはコードの総繊度(dtex)を示す]で表される撚り係数αが500~2500であることが好ましい。該コードの撚り係数αが500以上であると、フィラメントの拘束力が強くなり、接着が十分となり、2500以下であると、突起入力に対する耐久性の向上効果及びベルトの迫り出し抑制効果を得るのに十分な弾性率が発揮できる。
【0036】
また、前記有機繊維コードは、総繊度が1000~3500dtexであることが好ましい。該コードの総繊度が1000dtex以上であると、突起入力に対する耐久性の向上効果及びベルトの迫り出し抑制効果を得るのに十分な弾性率が発揮でき、3500dtex以下であると、打ち込みを密にでき、単位幅当りの剛性を十分に確保できる。
【0037】
なお、生タイヤは、加硫時にタイヤ径方向に数%拡張するため、ベルト補強層に用いるコードの弾性率が高いと、加硫成形時にタイヤの拡張に追随できず、ベルト補強層中の有機繊維コードとベルト層中の金属モノフィラメントとがエラストマー(被覆ゴム)を介さずに直接接触してしまう可能性がある。そのため、予め生タイヤの径をある程度の大きさに設計すると共に、エラストマーで被覆したコードを巻回してベルト補強層を形成する際の張力を適宜調節して、ベルトとベルト補強層のコード間のゲージを十分に確保すること
が好ましい。そこで、前記有機繊維コードは、加硫前のコード原長に対する加硫後のタイヤ中でのコードの伸び率が2%以下であることが好ましい。2%以下のコード伸び率でタイヤを成形した場合、有機繊維コードとベルトとの接触を抑制して、走行中にベルト端でセパレーションが起こることを抑制できる。
【0038】
前記有機繊維コードの原材料は、特に限定されず、合成品由来でもよいし、生物由来でもよいし、ペットボトル等のPET製品を粉砕、溶融、再紡糸してなるメカニカルリサイクル由来でもよいし、ペットボトル等のPET製品を解重合し、再重合してなるケミカルリサイクル由来でもよい。
【0039】
また、前記有機繊維コードの形態は、特に限定されず、片撚り構造でもよいし、撚り合わせ構造(双撚り構造等)でもよい。片撚り構造である場合、例えば、原糸を引き揃えて、一方の方向に撚りをかけることで、撚糸コードとして得ることができる。また、双撚り構造である場合、例えば、原糸に下撚りをかけ、次いでこれを複数合わせて、逆方向に上撚りをかけることで、撚糸コードとして得ることができる。
【0040】
前記有機繊維コード(特には、ポリエチレンテレフタレートコード)には、熱可塑性重合体(A)、熱反応型水性ウレタン樹脂(B)及びエポキシ化合物(C)を含む接着剤組成物、又はこれら(A)~(C)に加えゴムラテックス(D)を含む接着剤組成物であって、前記熱可塑性重合体(A)の主鎖が付加反応性のある炭素-炭素二重結合を実質的に有せず、ペンダント基として架橋性を有する官能基を少なくとも1つ有することを特徴とする接着剤組成物で接着剤処理することが好ましい。該接着剤組成物で接着剤処理することで、コードの高温下でのエラストマー(被覆ゴム)との接着性を向上させることができる。
【0041】
従来、有機繊維コード(特には、ポリエチレンテレフタレートコード)の接着剤処理としては、エポキシ又はイソシアネートをコード表面に塗布し、その上にレゾルシンとホルムアルデヒドとラテックスとを混合してなる樹脂(以下、RFL樹脂と称す)で処理する、所謂2浴処理が行われている。しかしながら、このような手段では1浴に用いる樹脂が非常に固くなり、コードヘの歪み入力が増大し、コード疲労性が低下することがある。また、このような樹脂は、常温では充分なコード-エラストマー間接着力を発現させることができるが、130℃以上の高温下では極端に接着力が低下することがある。これに対し、ペンダント基として架橋性を有する官能基を少なくとも1つ有し、付加反応性のある炭素-炭素二重結合を主鎖構造に実質的に含有しない熱可塑性重合体(A)と熱反応型水性ウレタン樹脂(B)とエポキシ化合物(C)の混在した1浴混合液を用いることで、コードを硬化させることなく且つ180℃以上の高温下でもエラストマー(被覆ゴム)との接着を充分に確保することができる。
【0042】
前記熱可塑性重合体(A)の主鎖は、直鎖状構造を主体とし、該主鎖としては、例えば、アクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、酢酸ビニル・エチレン系重合体等のエチレン性付加重合体、又はウレタン系高分子重合体が好ましい。但し、熱可塑性重合体(A)は、ペンダント基の官能基が架橋することにより、高温下での樹脂流動性を抑制し、樹脂の破壊強力を確保するという機能を有していればよく、エチレン性付加重合体及びウレタン系高分子重合体に限定されるものではない。
【0043】
また、前記熱可塑性重合体(A)のペンダント基の官能基としてはオキソザリン基、ビスマレイミド基、(ブロックド)イソシアネート基、アジリジン基、カルボジイミド基、ヒドラジノ基、エポキシ基、エピチオ基等が好ましい。
【0044】
前記エチレン性付加重合体を構成する単量体としては、炭素-炭素二重結合を1つ有す
るエチレン性不飽和単量体、炭素-炭素二重結合を2つ以上含有する単量体が挙げられる。ここで、炭素-炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のα-オレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β-不飽和芳香族単量体類;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性カルボン酸類及びその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル等の不飽和カルボン酸のエステル類;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル等のエチレン性ジカルボン酸のモノエステル類;イタコン酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステル等のエチレン性ジカルボン酸のジエステル類;アクリルアミド、マレイン酸アミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のα,β-エチレン性不飽和酸のアミド類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルケトン;ビニルアミド;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和単量体類;酢酸ビニル、吉草酸ビニル、カプリル酸ビニル、ビニルピリジン等のビニル化合物;2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリン類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;ビニルエトキシシラン、α-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これら単量体のラジカル付加重合により重合体(A)を得ることが好ましい。また、主鎖骨格を構成する単量体で、炭素-炭素二重結合を2つ以上含有する単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、クロロプレン等のハロゲン置換ブタジエン等の共役ジエン系単量体等が挙げられ、また、非共役ジエン系単量体としては、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエン系単量体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記エチレン性付加重合体は、炭素-炭素二重結合1つ有するエチレン性不飽和単量体及び炭素-炭素二重結合を2つ以上含有する単量体由来の単位からなり、全単量体の仕込み量を基準として硫黄反応性のある炭素-炭素二重結合が、単量体組成比で10mol%以下であることが好ましく、0mol%であることが更に好ましい。
【0046】
前記エチレン性付加重合体に、架橋性を有する官能基を導入して、前記熱可塑性重合体(A)とする方法は、特に限定されない。例えば、オキサゾリンを有する付加重合性単量体、エポキシ基を有する付加重合性単量体、マレイミドを有する付加重合性単量体、ブロックドイソシアネート基を有する付加重合性単量体、エピチオ基を有する付加重合性単量体等を、前記エチレン性付加重合体を重合する際に共重合させる方法等を採用することができる。
【0047】
また、前記ウレタン系高分子重合体は、主に、ポリイソシアネートと、2個以上の活性水素を有する化合物とを重付加反応させて得られるウレタン結合や、ウレア結合等のイソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合を、多数分子内に有する高分子重合体である。なお、イソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合のみならず、活性水素化合
物分子内に含まれるエステル結合、エーテル結合、アミド結合、及び、イソシアネート基同士の反応で生成するウレトジオン、カルボジイミド等をも含む重合体であってもよい。
【0048】
前記熱反応型水性ウレタン樹脂(B)としては、一分子中に、2個以上の熱解離性のブロックされたイソシアネート基を有する樹脂が好ましい。例えば、下記一般式(4):
【化1】
[式中、Aは官能基数3~5の有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート残基を示し、Yは熱処理によりイソシアネート基を遊離するブロック剤化合物の活性水素残基を示し、Zは分子中、少なくとも1個の活性水素原子および少なくとも1個のアニオン形成性基を有する化合物の活性水素残基を示し、Xは2~4個の水酸基を有し平均分子量が5000以下のポリオール化合物の活性水素残基であり、nは2~4の整数であり、p+mは2~4の整数(m≧0.25)である]で表される熱反応型水性ポリウレタン化合物等が特に好ましい。
【0049】
前記エポキシ化合物(C)は、1分子中に2個以上、好ましくは4個以上のエポキシ基を含む化合物であればよく、エポキシ基を含む化合物、多価アルコール類とエピクロロヒドリンとの反応生成物が好ましい。エポキシ化合物の具体例としては、ジエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレン・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル等の多価アルコール類とエピクロロヒドリンとの反応生成物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
また、前記ゴムラテックス(D)としては、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合ラテックス等が好ましいが、特に限定されるものではない。
【0051】
前記有機繊維コード(特には、ポリエチレンテレフタレートコード)は、前記(A)、(B)、(C)の3種を1浴処理液として用い、2浴処理液としては通常のRFL液を用いるのが好ましい。また、前記(A)、(B)、(C)、(D)の混合液を1浴のみで処理することも可能である。なお、これら各成分は乾燥重量比率で(A)が接着剤組成物の乾燥重量の2~75%、(B)が15~87%、(C)が11~70%、(D)が20%以下であることが好ましい。
【0052】
前記ベルト補強層は、前記有機繊維コードを接着剤処理した後、エラストマーで被覆して幅狭のストリップとした後、タイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回して形成することが好ましい。
【0053】
次に、本発明のタイヤのベルト層の実施形態を例示説明する。
図3は、本発明のタイヤの一実施形態に係るベルト層の幅方向における部分断面図であり、
図4は、本発明のタイヤの一実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図である。
【0054】
図3に示すベルト層60A(60B)は、複数本の金属モノフィラメント1が撚り合わされずに一列に引き揃えられた束からなる金属コード2が、エラストマー3により被覆されたものである。複数本の金属モノフィラメント1を撚り合わせることなく一列に引き揃えて束とした金属コード2をエラストマー3で被覆してベルト層60A(60B)に適用することで、ベルト層60A(60B)の厚みが薄くなり、タイヤを更に軽量化できる。
【0055】
ここで、金属モノフィラメント1は、好ましくは2本以上、より好ましくは5本以上であって、好ましくは20本以下、より好ましくは12本以下、更に好ましくは10本以下、特に好ましくは9本以下の束で金属コード2を構成する。
図3に示すベルト層60A(60B)においては、5本の金属モノフィラメント1が、撚り合わされずに引き揃えられて、金属コード2を形成している。このような構成とすることで、ベルト層60A(60B)の厚みを薄くすることができ、タイヤの軽量化を図ることができる。
【0056】
前記金属コード2を構成する隣り合う金属モノフィラメント1同士の間隔w1は、0.01mm以上0.24mm未満であることが好ましい。このように、隣り合う金属モノフィラメント1同士に上記範囲の隙間w1を設けることで、エラストマー3を十分に浸透させることが可能となり、その結果、圧縮入力時に、金属コード2が面外変形でき、金属コードの折れを抑制できる。また、金属モノフィラメント1同士の間隔w1を0.24m未満とすることで、金属コード2内の金属モノフィラメント1間のセパレーションを抑制できる。一方、金属モノフィラメント1同士の間隔w1を0.01mm以上とすると、金属コード2内の金属モノフィラメント1間にエラストマー3が十分に浸透する。金属モノフィラメント1同士の間隔w1は、より好ましくは0.03mm以上0.20mm以下、より一層好ましくは0.03mm以上0.18mm以下である。
【0057】
金属モノフィラメント1の束は、密接に隣接するモノフィラメント間ではエラストマーが浸透し難く、エラストマーによって被覆されていない非エラストマー被覆領域が発生し、該非エラストマー被覆領域において、タイヤ転動時に金属モノフィラメントが相互にずれて、ベルトの面内剛性が低下することがある。しかしながら、
図3に示すベルト層60A(60B)は、隣り合う金属モノフィラメント1間にエラストマー3が十分に浸透するため、非エラストマー被覆領域が発生し難く、ベルトの面内剛性を十分に向上させて、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性を更に改善することができる。
【0058】
ベルト層60A(60B)において、隣り合う金属モノフィラメント間における連続する非エラストマー被覆領域の存在を解消して、耐腐食進展性を確保するとともに、ベルトの面内剛性を向上させ、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性を改善する効果を良好に得るためには、隣り合う金属モノフィラメント1の、金属コード2の幅方向側面におけるエラストマー被覆率は、単位長さ当たり10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上であり、更に好ましくは50%以上であり、より一層好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
ここで、エラストマー被覆率とは、例えば、エラストマーとしてゴムを用い、金属モノフィラメントをゴム被覆し、加硫した後、得られたゴム-金属モノフィラメント複合体から金属モノフィラメントを引き抜き、金属モノフィラメント同士の間隙に浸透したゴムにより被覆されている、金属モノフィラメントの幅方向側面の長さを測定し、下記式:
エラストマー被覆率=(ゴム被覆長/試料長)×100(%)
に基づいて算出した値の平均をいう。
なお、エラストマーとして、ゴム以外のエラストマーを用いた場合も、同様に算出することができる。
【0059】
ベルト層60A(60B)においては、金属モノフィラメント1のフィラメント径(「
素線径」、「線径」、或いは、単に「径」とも呼ぶ。)dは、0.30mm未満であり、また、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.18mm以上、更に好ましくは0.20mm以上である。金属モノフィラメント1のフィラメント径dを0.30mm未満とすることで、タイヤの軽量効果が十分に得られる。また、金属モノフィラメント1のフィラメント径dを0.15mm以上とすることで、ベルト層の強度が向上し、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性が更に向上する。
【0060】
図3に示すベルト層60A(60B)においては、金属コード2の延在方向に直交する方向に測った、金属コード2同士の間隔w
2が、0.25mm以上2.0mm以下であることが好ましい。金属コード2同士の間隔w
2を0.25mm以上とすることで、ベルト幅方向端部のコード端を起点としたエラストマー剥離が隣り合う金属コード間に伝播するベルトエッジセパレーションを抑制することができる。また、金属コード2同士の間隔w
2を2.0mm以下とすることで、ベルトの剛性を維持することができる。金属コード2同士の間隔w
2は、より好ましくは0.3mm以上1.8mm以下であり、更に好ましくは0.35mm以上1.5mm以下である。
【0061】
ベルト層60A(60B)の厚さtは、0.8mm以下であることが好ましく、また、0.30mm超が好ましい。ベルト層の厚さtを0.8mm以下とすることで、タイヤを更に軽量化することができる。また、ベルト層の厚さtを0.30mm超とすることで、ベルトの強度を向上させて、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性を更に向上させることができる。
【0062】
ベルト層60A(60B)においては、金属モノフィラメント1は、好ましくは鋼、即ち、鉄を主成分(金属モノフィラメントの全質量に対する鉄の質量が50質量%を超える)とする線状の金属であり、鉄のみで構成されていてもよいし、鉄以外の、例えば、亜鉛、銅、アルミニウム、スズ等の金属を含んでいてもよい。
【0063】
ベルト層60A(60B)において、金属モノフィラメント1の表面状態については特に制限されないが、例えば、下記の形態をとることができる。即ち、金属モノフィラメント1としては、表面のN原子が2原子%以上60原子%以下であって、かつ、表面のCu/Zn比が1以上4以下であることが好ましい。また、金属モノフィラメント1としては、金属モノフィラメント表面からフィラメント半径方向内方に5nmまでの金属モノフィラメント最表層に酸化物として含まれるリンの量が、C量を除いた全体量の割合で、7.0原子%以下であることが好ましい。
【0064】
ベルト層60A(60B)において、金属モノフィラメント1の表面には、メッキが施されていてもよい。メッキの種類としては、特に制限されず、例えば、亜鉛(Zn)メッキ、銅(Cu)メッキ、スズ(Sn)メッキ、ブラス(銅-亜鉛(Cu-Zn))メッキ、ブロンズ(銅-スズ(Cu-Sn))メッキ等の他、銅-亜鉛-スズ(Cu-Zn-Sn)メッキや銅-亜鉛-コバルト(Cu-Zn-Co)メッキ等の三元メッキ等が挙げられる。これらの中でも、ブラスメッキや銅-亜鉛-コバルトメッキが好ましい。ブラスメッキを有する金属モノフィラメントは、エラストマー(被覆ゴム)との接着性が優れているからである。なお、ブラスメッキは、通常、銅と亜鉛との割合(銅:亜鉛)が、質量基準で60~70:30~40、銅-亜鉛-コバルトメッキは、通常、銅が60~75質量%、コバルトが0.5~10質量%である。また、メッキ層の厚さは、100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0065】
ベルト層60A(60B)においては、金属モノフィラメント1の抗張力や断面形状については、特に制限はない。例えば、金属モノフィラメント1としては、抗張力が2500MPa(250kg/mm
2)以上のものを用いることができる。さらに、金属モノフ
ィラメント1の幅方向の断面形状も特に制限されず、円状、楕円状、矩形状、三角形状、多角形状等であってもよい。また、金属モノフィラメント1は、
図4に示すように、実質的に真直の金属モノフィラメントであることが好ましい。ここで、真直の金属モノフィラメントとは、意図的に型付けをしておらず、実質的に型がついていない状態の金属モノフィラメントを指す。なお、
図3に示すベルト層60A(60B)においては、金属コード2を構成する金属モノフィラメント1の束を拘束する必要がある場合には、ラッピングフィラメント(スパイラルフィラメント)を使用してもよい。
【0066】
ベルト層60A(60B)は、既知の方法にて製造することができる。例えば、複数本の金属モノフィラメントを撚り合わせずに引き揃えた束からなる金属コードとしてのスチールコードを、所定の間隔で平行に並べてエラストマー(被覆ゴム)で被覆して製造することができ、評価用サンプルは、その後、一般的な条件で加硫することにより、製造することができる。また、金属モノフィラメントの型付けについても、通常の型付け機を用いて、従来の手法に従い、行うことができる。
【0067】
前記金属モノフィラメント1のフィラメント径d(mm)と、前記金属コード2を構成する隣り合う金属モノフィラメント1同士の間隔w1(mm)と、前記金属コード2を構成する金属モノフィラメント1の本数n(本)とは、下記式(1):
0.45≦[(d/2)2×π×n]/{d×[d×n+w1×(n-1)]}≦0.77 (1)
の関係を満たすことが好ましい。
式(1)中、dは、金属モノフィラメント1のフィラメント径(mm)であり、w1は、金属コード2の延在方向に直交する方向に測った、隣り合う金属モノフィラメント1同士の間隔(「表面間の距離」、「隙間量」とも呼ぶ。)(mm)であり、nは、金属コード2を構成する金属モノフィラメント1の本数(本)であり、但し、d>0であり、w1>0であり、nは整数である。
【0068】
w1>0、即ち、隣り合う金属モノフィラメント1同士の間に隙間が設けられていることにより、該隙間にエラストマー3が入り込むことになり、金属モノフィラメント1間における連続した非エラストマー被覆領域が解消されるので、隣り合う金属モノフィラメント1間にエラストマーを十分に浸透させることが可能となる。その結果、圧縮入力時に金属コードが面外変形でき、金属コードの折れを抑制できる。また、タイヤに損傷が生じた際の浸水時における水分の通水経路が無くなるので、耐腐食進展性が大幅に改善される。さらに、隣り合う金属モノフィラメント1同士がエラストマー3により拘束されるので、タイヤ転動時においても隣り合う金属モノフィラメントが相互にずれることがなく、結果として、ベルトの面内剛性を向上させることができ、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性を更に向上させることができる。
【0069】
図5に、金属コードの断面内に含まれる金属モノフィラメントの断面積の比率の規定に係る説明図を示す。
図5においては、7本の金属モノフィラメント1が撚り合わされずに引き揃えられて金属コード2を形成しており、具体的には、7本の型付けされていない真直な金属モノフィラメント1が等間隔の隙間をあけて並行に配置されて、エラストマー3により被覆されている。ここで、等間隔の隙間とは、製造上の誤差を含む範囲を意味する。
上記式(1)は、図中の点線部分の断面積を金属コード2の断面積として、金属コード2の1本あたりに占める金属モノフィラメント1の断面積の比率を規定したものである。即ち、図中の点線部分の断面積(金属モノフィラメント1の断面積+エラストマー3の断面積)は、上記式(1)における分母の{d×[d×n+w
1×(n-1)]}により表され、図中の点線部分に含まれる金属モノフィラメント1の断面積は、上記式(1)における分子の[(d/2)
2×π×n]により表される。
【0070】
上記所定量の隙間をあけて引き揃えられた金属モノフィラメント1の束からなる金属コード2を用いると共に、金属コード2の断面内に含まれる金属モノフィラメント1の断面積の比率を所定の範囲に規定することにより、軽量性、プランジャー耐久性、操縦安定性、耐腐食進展性及びベルト層の耐セパレーション性等についてバランスよく向上させることができる。
【0071】
各性能をバランス良く得る観点から、下記式(1’):
0.48≦[(d/2)2×π×n]/{d×[d×n+w1×(n-1)]}≦0.77 (1’)
の関係を満たすことが更に好ましく、下記式(1”):
0.50≦[(d/2)2×π×n]/{d×[d×n+w1×(n-1)]}≦0.77 (1”)
の関係を満たすことがより一層好ましい。
【0072】
図6に、本発明のタイヤの一実施形態に係るベルトの拡大部分断面図を示す。
図6において、ベルト60内で隣接する二枚のベルト層60A,60Bにそれぞれ埋設された金属モノフィラメント1の表面間の距離(「層間ゲージ」とも呼ぶ。)Gと、金属コード2同士の間隔w
2との比率G/w
2は、1.6以下であることが好ましい。また、
図6において、金属コード2を構成する隣り合う金属モノフィラメント1同士の間隔w
1と、金属コード2の幅Wとの比率w
1/Wは、0.07以上であることが好ましい。更に、
図6において、金属モノフィラメント1のフィラメント径dと、金属コード2を構成する隣り合う金属モノフィラメント1同士の間隔w
1との比率d/w
1は、1.2以上2未満であることが好ましい。
【0073】
隣接するベルト層60A,60B間における金属モノフィラメント1の表面間の距離Gと、金属コード2同士の間の間隔w2との比率G/w2、金属コード2を構成する金属モノフィラメント1同士の間隔w1と、金属コードの幅Wとの比率w1/W、並びに、金属モノフィラメント1のフィラメント径dと、金属コード2を構成する隣り合う金属モノフィラメント1同士の間隔w1との比率d/w1が、上記範囲を満足するものとすることで、ベルト層間における歪、並びに、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性を悪化させることなく、軽量化及び低転がり抵抗化を図ることが可能となる。前記比率G/w2は、より好ましくは0.2以上1.6以下であり、より一層好ましくは0.4以上1.4以下である。また、前記比率w1/Wは、より好ましくは0.07以上0.18以下であり、より一層好ましくは0.07以上0.15以下である。更に、前記比率d/w1は、より好ましくは1.3以上2未満であり、より一層好ましくは1.4以上2未満である。
【0074】
ベルト内で隣接する二枚のベルト層にそれぞれ埋設された金属モノフィラメント1の表面間の距離(「層間ゲージ」とも呼ぶ。)Gは、好ましくは0.10mm以上0.60mm以下であり、より好ましくは0.35mm以上0.45mm以下である。層間ゲージGを0.10mm以上0.60mm以下とすることで、ベルト層間の歪の抑制と、軽量性及び低転がり抵抗の効果とを、バランス良く得ることができる。層間ゲージGが小さくなると、ベルト層が薄くなるため、軽量化及び低転がり抵抗化の面では有利になるが、層間歪が悪化する。
【0075】
上述の
図3及び
図4において、金属モノフィラメント1は、実質的に真直の金属モノフィラメントであるが、本発明のタイヤにおいて、金属モノフィラメントの形状は、真直以外であってもよい。
【0076】
図7は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図であ
り、
図8は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【0077】
図7及び
図8に示す金属コード2は、金属コード2中に、金属モノフィラメント1の延在方向に対して垂直な方向における型付け量及び型付けピッチの少なくとも一方が異なっている、隣り合う金属モノフィラメント1同士の対が少なくとも1つ存在する。好ましくは対の50%以上において、隣り合う金属モノフィラメント1同士の、金属モノフィラメント1の延在方向に対して垂直な方向における型付け量及び型付けピッチの少なくとも一方が異なっている。
ここで、
図9は、金属モノフィラメントの型付け量h及び型付けピッチpの定義を示す金属モノフィラメントの説明図であり、型付け量hとは金属モノフィラメント1のフィラメント径を含まない変動の幅をいう。なお、金属モノフィラメント1の型付け量hは、型付け後の金属モノフィラメント1を投影機にて投影し、金属モノフィラメントの投影像をスクリーン等に映して計測する。
【0078】
図7及び
図8においては、型付けされた金属モノフィラメント1aと、型付けされていない金属モノフィラメント1b(型付け量0mm、型付けピッチ∞mm)とが交互に配置されているが、異なる型付け量の金属モノフィラメントを交互に配置してもよいし、異なる型付けピッチの金属モノフィラメントを交互に配置してもよい。好適には、束を構成する金属モノフィラメントの配置は、両側部は型付けがされていない真直な金属モノフィラメントであることが好ましい。このように、型付け量又は型付けピッチが異なる金属モノフィラメント1を隣接させることで、両者の位相が合致することを避けている。このような構成とすることで、隣り合う金属モノフィラメント1間にエラストマーを十分に浸透させることが可能となり、その結果、圧縮入力時に、金属コードが面外変形でき、金属コートの折れを抑制できる。
【0079】
ベルト層においては、金属モノフィラメント1の型付け量hが大きすぎると、ベルト層中の金属コード2間の距離w2が短くなり、ベルトの強度低下の原因となる。そのため、金属モノフィラメント1の型付け量hは、0.03~0.30mm程度が好ましい。型付け量hが0.30mm以下であれば、ベルト層の強力の低下を十分に抑制できる。特に、金属コード2間の距離w2及び金属モノフィラメント1の強力の観点から、金属モノフィラメント1に型付けを施すにあたっては、型付け量hは0.03~0.30mmが好適であり、より好ましくは0.03~0.25mmであり、より一層好ましくは0.03~0.20mmである。また、金属モノフィラメント1の型付けピッチpは、2~30mmであることが好ましく、より好ましくは2~20mmであり、より一層好ましくは3~15mmである。
【0080】
なお、
図7及び
図8に示す金属コード2においては、型付けされている金属モノフィラメント1aは、金属コード2の幅方向に型付けされているが、ベルト層中の金属モノフィラメント1の型付け方向は、金属コード2の幅方向に対して傾いていてもよい。
図10は、本発明のタイヤの他の実施形態のベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。このような構造であっても、隣り合う金属モノフィラメント1間にエラストマーを十分に浸透させることが可能である。但し、軽量性の観点からは、隣り合う金属モノフィラメント1同士の型付け方向が金属コード2の幅方向であるほうが、ベルト層を薄くできるため好ましい。
【0081】
また、ベルト層においては、金属コード2中の金属モノフィラメント1のうち少なくとも1本が、実質的に真直の金属モノフィラメントであることが好ましい。
図7及び
図8に示すように、型付けされていない真直な金属モノフィラメント1bと、型付けされた金属モノフィラメント1aとが隣接する場合、両金属モノフィラメント1間に浸入するエラス
トマーの量が多くなるため、隣り合う金属モノフィラメント1の、金属コード2の幅方向側面におけるエラストマー被覆率が高くなる。更に、金属コード2の両端に配置された金属モノフィラメント1を、真直の金属フィラメントとすることで、エラストマー中で隣り合う金属コード2間の距離w
2を広くすることができるため、耐久性を向上させることができる。また、
図7に示すように、型付けされていない真直の金属モノフィラメント1bと、型付けされた金属モノフィラメント1aとが交互に配置されていることが更に好ましい。
【0082】
図11は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図であり、
図12は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【0083】
図11及び
図12に示す金属コード2は、全ての金属モノフィラメント1が、同一型付け量及び同一ピッチで型付けされており、金属コード2中に、隣り合う金属モノフィラメント同士の位相が異なる金属モノフィラメントの対が少なくとも1つ存在する。
ここで、
図13は、金属モノフィラメントの型付け量h及び型付けピッチpの定義を示す金属モノフィラメントの説明図であり、型付け量hとは金属モノフィラメント1のフィラメント径を含まない変動の幅をいう。なお、金属モノフィラメント1の型付け量hは、型付け後の金属モノフィラメント1を投影機にて投影し、金属モノフィラメントの投影像をスクリーン等に映して計測する。
【0084】
図11及び
図12に示す金属コード2のように、型付け量h及び型付けピッチpが同一の金属モノフィラメント1の位相を異ならせることで、両者の位相が合致することを避けている。このような構成とすることで、隣り合う金属モノフィラメント1間にエラストマーを十分に浸透させることが可能となり、その結果、圧縮入力時に金属コードが面内への変形することができ、金属コードの疲労性の悪化を防ぐことができる。
【0085】
図11及び
図12においては、金属コード2中の少なくとも一か所において、隣り合う金属モノフィラメント同士の位相が異なっているが、位相差は、π/4~7π/4が好ましい。位相差をかかる範囲とすることで、隣り合う金属モノフィラメント1間にエラストマーを更に十分に浸透させることが可能となる。より好ましくは、位相差がπ/2~3π/2、特に好ましくは、位相差がπの場合である。
【0086】
ベルト層においては、金属モノフィラメント1の型付け量hが大きすぎると、金属コード2間の距離w2が短くなり、ベルトの強度低下の原因となる。そのため、金属モノフィラメント1の型付け量hは、0.03~0.30mm程度が好ましい。型付け量hが0.30mm以下であると、ベルト層の強力の低下を十分に抑制できる。特に、金属コード2間の距離w2及び金属モノフィラメント1の強力の観点から、金属モノフィラメント1に型付けを施すにあたっては、型付け量hは0.03~0.30mmが好適であり、より好ましくは0.03~0.25mmであり、より一層好ましくは0.03~0.20mmである。また、金属モノフィラメント1の型付けピッチpは2~30mmであることが好ましく、より好ましくは2~20mmであり、より一層好ましくは3~15mmである。
【0087】
なお、
図11及び
図12に示す金属コード2においては、型付けされている金属モノフィラメント1は、金属コード2の幅方向に型付けされているが、金属モノフィラメント1の型付け方向は金属コード2の幅方向に対して傾いていてもよい。
図14は、本発明のタイヤの他の実施形態のベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。このような構造であっても、隣り合う金属モノフィラメント1間にゴムを十分に浸透させることが可能である。但し、軽量性の観点からは、隣り合う金属モノフィラメント1同士の型付け方向が金属コード2の幅方向であるほうが、ベルト層を薄くできるため好ましい。
【0088】
また、ベルト層においては、型付けは2次元型付けのみに限らず、3次元型付けであってもよい。
図15は、本発明のタイヤのさらに他の実施形態のベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。図示例においては、金属モノフィラメント1は螺旋型付けが施されており、螺旋型付けが施された5本の金属モノフィラメント1が撚り合わされずに一列に引き揃えられて金属コード2を形成している。
【0089】
図16は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの概略平面図であり、
図17は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルト層の金属コードの幅方向概略断面図である。
【0090】
図16及び
図17に示す金属コード2は、金属コード2中に、3次元型付けの型付け量及び型付けピッチの少なくとも一方が異なる、隣り合う金属モノフィラメント1同士の対が少なくとも1つ存在する。好ましくは対の50%以上において、隣り合う金属モノフィラメント1同士の、3次元型付けの型付け量及び型付けピッチの少なくとも一方が異なっている。
ここで、金属モノフィラメントの型付け量h及び型付けピッチpは、
図13に示す通りであり、型付け量hとは金属モノフィラメント1のフィラメント径を含まない変動の幅をいう。なお、金属モノフィラメント1の型付け量hは、型付け後の金属モノフィラメント1を投影機にて投影し、金属モノフィラメントの投影像をスクリーン等に映して計測する。
【0091】
図16及び
図17においては、螺旋型付けされた金属モノフィラメント1aと、型付けされていない金属モノフィラメント1b(型付け量0mm、型付けピッチ∞mm)とが交互に配置されている。このように、型付け量又は型付けピッチが異なる金属モノフィラメント1を隣接させることで、両者の位相が合致することを避けている。このような構成とすることで、隣り合う金属モノフィラメント1間にエラストマーを十分に浸透させることが可能となり、その結果、圧縮入力時に、金属コードが面外変形でき、金属コードの折れを抑制できる。
【0092】
ベルト層においては、金属モノフィラメント1の型付け量hが大きすぎると、金属コード2間の距離w2が短くなり、ベルトの強度低下の原因となる。そのため、金属モノフィラメント1の型付け量hは、0.10~0.50mm程度が好ましい。特に、金属コード2間の距離w2及び金属モノフィラメントの強力の観点から、型付け量hは0.2~0.3mmが好適である。また、金属モノフィラメント1の型付けピッチpは5mm以上が好ましく、より好ましくは8~20mmである。
【0093】
また、ベルト層においては、金属コード2中の金属モノフィラメント1のうち少なくとも1本が、実質的に真直の金属モノフィラメントであることが好ましい。
図16及び
図17に示すように、型付けされていない真直な金属モノフィラメント1bと型付けされた金属モノフィラメント1aとが隣接する場合、両金属モノフィラメント1間に浸入するエラストマーの量が多くなるため、隣り合う金属モノフィラメント1の、金属コード2の幅方向側面におけるエラストマー被覆率が高くなる。更に、金属コード2の両端に配置された金属モノフィラメント1を、真直の金属モノフィラメントとすることで、エラストマー中で隣り合う金属コード2間の距離w
2を広くすることができるため、ベルトの耐久性を向上させることができる。また、
図16及び
図17に示すように、型付けされていない真直の金属モノフィラメント1bと、型付け金属モノフィラメント1aが交互に配置されていることがより好ましい。
【0094】
次に、本発明のタイヤに係るベルトの他の実施形態を例示説明する。
図18は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルトの端部の概略断面図である。
図18に示すベルト60は、第1ベルト層60Aと、該第1ベルト層60Aのタイヤ径方向外側に積層された第2ベルト層60Bと、を含む。なお、図示例においては、ベルトは二枚のベルト層からなるが、ベルトは三枚以上のベルト層からなるものであってもよい。
【0095】
また、
図18に示すベルト60においては、タイヤセンター部における第2ベルト層60Bの金属モノフィラメント1Bと、第1ベルト層60Aの金属モノフィラメント1Aとの最短距離aと、第2ベルト層60Bの端部の金属モノフィラメント1Bと第1ベルト層60Aの金属モノフィラメント1Aとの最短距離bとが、下記式(2):
1.8≦b/a≦4.0
の関係を満たすことが好ましい。
式(2)中、aは、タイヤセンター部における第2ベルト層の金属モノフィラメントと第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離であり、bは、第2ベルト層の端部の金属モノフィラメントと第1ベルト層の金属モノフィラメントとの最短距離である。
【0096】
このように、ベルトエッヂセパレーションの起点となるベルト端部において、第1ベルト層60Aと第2ベルト層60Bのそれぞれの金属モノフィラメント同士の間隔を広げることで、ベルト端における歪を抑制して、耐ベルトエッヂセパレーション性を向上させることができる。そして、前記b/aを1.8以上とすることで、ベルト端部の耐久性(特には、ベルトエッヂセパレーション耐久性)を十分に向上させることができる。また、前記b/aを4.0以下とすることで、十分な低転がり抵抗を確保することができる。より好ましくは、下記式(2’):
1.8≦b/a≦3.8
の関係を満たす。
【0097】
なお、ベルト端部において、第1ベルト層60Aと第2ベルト層60Bのそれぞれの金属モノフィラメント同士の間隔を広げるためには、図示例では、第1ベルト層60Aと第2ベルト層60Bとの間に、ベルト層間ゴム4を配置しているが、ベルト層60A,60Bの端部におけるエラストマー(被覆ゴム)3の厚さを厚くしてもよいし、ベルト層60A,60Bの端部を別のゴムシートで包んでもよい。なお、ベルト層間ゴム4、ベルト層60A,60Bの端部を包むゴムシートには、第1ベルト層60A、第2ベルト層60Bのエラストマー(被覆ゴム)3と同じ材料を用いることができる。
【0098】
図19は、本発明のタイヤの他の実施形態に係るベルトのセンター部の概略断面図であり、
図18において、破線で囲んだ部分である。
図19においては、タイヤセンター部における第1ベルト層60Aの上下両面から金属モノフィラメント1Aまでの距離c1,c2が、いずれも0.14mm以下であり、且つ、タイヤセンター部における第2ベルト層60Bの上下両面から金属モノフィラメント1Bまでの距離c3,c4が、いずれも0.14mm以下であることが好ましい。このような構成とすることで、タイヤの低転がり抵抗性を十分に向上させることができる。
【0099】
本発明のタイヤは、適用するタイヤの種類に応じ、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、又は予備加硫工程等を経た半加硫ゴムを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。なお、本発明のタイヤのベルト(ベルト層)及びベルト補強層以外の部材は、特に限定されず、公知の部材を使用することができる。
また、本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、該空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例0100】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0101】
(ゴム-スチールコード複合体の作製)
表1の比較例1~4及び参考例1に示す仕様のスチールコード(スチールモノフィラメント)を、上下両側から、ゴム組成物(エラストマー)よりなる厚さ0.5mm程度のシートにより被覆して、スチールコード-ゴム複合体を作製した。
コーティング用のゴム組成物は、常法に従い、天然ゴム100質量部に対して、カーボンブラック(N326、DPB吸油量=72mL/100g、N2SA=78m2/g)61質量部と、亜鉛華5質量部と、老化防止剤(N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」)1質量部と、加硫促進剤(N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDZ」)1質量部と、硫黄(不溶性硫黄、フレキシス社製、商品名「クリステックスHS OT-20」)5質量部と、を配合・混練することで調製した。
得られたスチールコード-ゴム複合体を160℃、20分にて加硫して、以下の評価を行った。
【0102】
ここで、比較例3の金属コードは、撚り合わせずに一列に引き揃えられたフィラメント径0.35mmのスチールモノフィラメントを均等に配置したものである。また、参考例1の金属コードは、撚り合わせずに一列に引き揃えられた5本のフィラメント径0.26mmのスチールモノフィラメントの束よりなるコードである。また、比較例4の金属コードは、撚り合わせずに一列に引き揃えられた3本のフィラメント径0.3mmのスチールモノフィラメントの束よりなるコードである。
【0103】
<ベルト重量>
得られたスチールコード-ゴム複合体を用いてベルト層サンプルを作製し、その重量を計測して、比較例1のベルト重量を100とする指数にて示した。数値が小さい程、軽量であって好ましい。
【0104】
(タイヤによる評価)
ベルト補強層を有しない以外は
図1に示す構造で、タイヤサイズ195/65R15の乗用車用タイヤを、各スチールコード-ゴム複合体を二枚のベルト層に適用して作製した。ベルト角度は、タイヤ周方向に対して±28°とした。
【0105】
<転がり抵抗>
各供試タイヤにつき、SAE J 1269に準拠して、転がり抵抗を、転動抵抗試験機を用いて測定した。結果は、比較例1を100とする指数で示した。数値が小さい程、結果は良好である。
【0106】
<層間歪>
各供試タイヤにつき、二枚のベルト層間における歪の大きさを、有限要素法(FEM)により算出して求めた。結果は、比較例1を100とする指数で示した。数値が小さい程、結果は良好である。但し、95~105の範囲内であれば、同等レベルと評価する。
【0107】
<操縦安定性>
比較例1~4及び参考例1の各スチールコード-ゴム複合体を用いて作製した交錯ベルト層サンプルを用いて、慣用の方法により面内剛性の評価を行い、操縦安定性の指標とした。結果は、比較例1の面内剛性の値を100として指数化し、この指数値に基づき、90未満である場合を×、90以上100未満である場合を△、100以上110未満であ
る場合を〇、110以上である場合を◎として評価した。
【0108】
次に、表1の参考例2~7について、上記と同様の条件でベルト重量、転がり抵抗、及び操縦安定性を評価した場合の評価結果を、予測値として求めた。また、表1に示す参考例2~7について、上記と同様にして、層間歪を、有限要素法(FEM)を用いて評価した。
これらの結果を下記の表1中に示す。
【0109】
【0110】
*1 比較例1及び2のコードは、断面楕円形のコードであり、比較例1及び2における金属フィラメントのフィラメント径は、平均コード径[(長径0.64mm+短径0.53mm)/2]を意味する。
*2 比較例1及び2のコードは、断面楕円形のコードであり、金属モノフィラメント間の間隔(コード間間隔)は、コードの打込みの向きにより変動する。
【0111】
表1の結果より、フィラメント径dが0.30mm未満の金属モノフィラメントをエラストマーにより被覆してなるベルト層をタイヤに適用することで、タイヤを軽量化できることが分かる。
【0112】
<ベルト補強層の効果>
表1の参考例1~7に示すタイヤにおいて、ベルトのタイヤ径方向外側に、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上のポリエチレンテレフタレートからなるコードをエラストマーで被覆してなるベルト補強層を配設することで、ベルト補強層がベルトの剛性を補い、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性が向上することを確認できる。
【0113】
<ベルト層間ゴムの効果>
表1の参考例1~7に示すタイヤにおいて、ベルトのタイヤ径方向外側に、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上のポリエチレンテレフタレートからなるコードをエラストマーで被覆してなるベルト補強層を配設し、更に、ベルトの端部(第1ベルト層の端部と第2ベルト層の端部の間)にベルト層間ゴムを配設して、上記式(2)中のb/aを1.8~4.0とすることで、ベルト端における歪が抑制され、タイヤのベルト端部の耐久性が向上することを確認できる。
100:タイヤ、 10:ビード部、 20:サイドウォール部、 30:トレッド部、 40:ビードコア、 50:カーカス、 60:ベルト、 60A:ベルト層(第1ベルト層)、 60B:ベルト層(第2ベルト層)、 70A:ベルト補強層(キャップ層)、 70B:ベルト補強層(レイヤー層)、 C:コードの荷重-伸び曲線、 S:コードの荷重-伸び曲線の伸び7%に対応する点における接線、 1,1A,1B:金属モノフィラメント、 2:金属コード、 3:エラストマー(被覆ゴム)、 w1:金属コードを構成する隣り合う金属モノフィラメント同士の間隔、 w2:金属コード同士の間隔、 t:ベルト層の厚さ、 d:金属モノフィラメントのフィラメント径(素線径、線径、径)、 G:ベルト内で隣接する二枚のベルト層にそれぞれ埋設された金属モノフィラメントの表面間の距離(層間ゲージ)、 h:金属モノフィラメントの型付け量、 p:金属モノフィラメントの型付けピッチ、 1a:型付けされた金属モノフィラメント、 1b:型付けされていない金属モノフィラメント、 4:ベルト層間ゴム