(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173884
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】孔への栓の圧入方法、圧入装置、及び液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B21D39/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086413
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 紫織
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 健太
(57)【要約】
【課題】一例として、パンチの進行方向と斜めに交差する孔に栓を圧入することができる圧入方法を得る。
【解決手段】実施形態に係る圧入方法は、第1の方向へ移動するパンチによる、部材の外面に開口するとともに前記第1の方向と直交する第2の方向と前記第1の方向との間の方向であって前記第1の方向と斜めに交差する第3の方向に少なくとも部分的に延びる孔への栓の圧入方法であって、前記部材に設けられた支持面により、前記パンチが前記第2の方向の反対の第4の方向へ移動することを制限するように当該パンチを支持することと、前記パンチの端部に設けられるとともに、前記第3の方向側に向く第5の方向又は前記第3の方向に向く押圧面を、前記パンチが前記支持面に支持された状態で前記栓に当接させることと、前記パンチを前記第1の方向へ移動させ、前記押圧面により前記栓を前記孔の前記第3の方向に延びる部分に圧入することと、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向へ移動するパンチによる、部材の外面に開口するとともに前記第1の方向と直交する第2の方向と前記第1の方向との間の方向であって前記第1の方向と斜めに交差する第3の方向に少なくとも部分的に延びる孔への栓の圧入方法であって、
前記部材に設けられた支持面により、前記パンチが前記第2の方向の反対の第4の方向へ移動することを制限するように当該パンチを支持することと、
前記第1の方向における前記パンチの端部に設けられるとともに、前記第1の方向と前記第2の方向との間の方向であって前記第1の方向よりも前記第3の方向側に向く第5の方向又は前記第3の方向に向く押圧面を、前記パンチが前記支持面に支持された状態で前記栓に当接させることと、
前記パンチを前記第1の方向へ移動させ、前記押圧面により前記栓を前記孔の前記第3の方向に延びる部分に圧入することと、
を具備する圧入方法。
【請求項2】
前記栓から離間するとともに前記部材に当接した前記パンチを前記第1の方向へ移動させ、前記パンチにより前記部材に前記支持面を形成すること、
をさらに具備する請求項1の圧入方法。
【請求項3】
前記押圧面は、前記第3の方向に向く、
請求項1又は請求項2の圧入方法。
【請求項4】
前記押圧面は、前記第3の方向又は前記第5の方向に向く平面である、
請求項1又は請求項2の圧入方法。
【請求項5】
前記第1の方向における前記パンチの端面の全体が前記押圧面である、
請求項4の圧入方法。
【請求項6】
第1の方向へ移動し、前記第1の方向と斜めに交差する方向に向く平坦な押圧面を有するパンチ、
を具備する圧入装置。
【請求項7】
外面を有し、前記外面に開口する孔が設けられた、部材と、
前記孔を塞ぐ栓と、
前記孔の少なくとも一部を含む流路に設けられ、前記流路における液体の流れを制御するよう構成された、液体制御部と、
を具備し、
前記孔は、第1の方向に延びる第1の孔と、前記第1の孔の底面から前記第1の方向と直交する第2の方向と前記第1の方向との間の方向であって前記第1の方向と斜めに交差する第3の方向に延びるとともに前記第1の孔よりも断面が小さい第2の孔と、を有し、
前記部材は、前記第1の孔の底面に接続されるとともに少なくとも部分的に前記第2の方向に向く支持面を有し、
前記栓は前記第2の孔の内部に配置されて前記孔を塞ぐ、
液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、孔への栓の圧入方法、圧入装置、及び液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材の外面に開口する孔に、ボール状の栓を圧入する方法及び装置が知られている(特許文献1)。例えば、パンチが栓を孔に圧入するとともに部材を凹ませるように加締める。これにより、部材が栓に係合し、孔が密に閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、孔が延びる方向が、パンチのストローク方向に対して斜めに傾いていることがある。この場合、栓が孔に圧入される方向と、パンチが栓を押す方向とが異なるため、従来の構成ではスムーズに栓を孔に圧入することが難しい。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、パンチの進行方向と斜めに交差する方向に延びる孔に栓を圧入することができる圧入方法、圧入装置、及び液圧制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る圧入方法は、一例として、第1の方向へ移動するパンチによる、部材の外面に開口するとともに前記第1の方向と直交する第2の方向と前記第1の方向との間の方向であって前記第1の方向と斜めに交差する第3の方向に少なくとも部分的に延びる孔への栓の圧入方法であって、前記部材に設けられた支持面により、前記パンチが前記第2の方向の反対の第4の方向へ移動することを制限するように当該パンチを支持することと、前記第1の方向における前記パンチの端部に設けられるとともに、前記第1の方向と前記第2の方向との間の方向であって前記第1の方向よりも前記第3の方向側に向く第5の方向又は前記第3の方向に向く押圧面を、前記パンチが前記支持面に支持された状態で前記栓に当接させることと、前記パンチを前記第1の方向へ移動させ、前記押圧面により前記栓を前記孔の前記第3の方向に延びる部分に圧入することと、を備える。よって、一例としては、押圧面が第3の方向又は第5の方向に向くため、押圧面は、当該押圧面で栓を滑らせながら、栓を第3の方向へ押すことができる。従って、栓から孔の内面に作用する荷重が低減され、孔の周方向における部材の変形の分布が均等に近づき、ひいては部材の偏った変形による不都合、例えば、栓の固定に係る耐久性の低下や異物の発生など、の回避を図ることができる。また、栓が孔の第3の方向に延びる部分に圧入されるとき、栓を押すパンチは、第4の方向へ移動するように栓から反力を受ける。しかし、パンチは、支持面によって第4の方向へ移動することを制限するように支持されるため、第4の方向への移動することを抑制でき、ひいては折れてしまうことを抑制できる。以上のように、上記圧入方法は、パンチの進行方向と斜めに交差する方向に延びる孔に栓を圧入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係る液圧制御装置を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態の液圧制御装置の一部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態の圧入前のハウジングブロック及びボールを示す断面図である。
【
図4】
図4は、上記実施形態のハウジングブロックとボールに当接したパンチとを示す断面図である。
【
図5】
図5は、上記実施形態のハウジングブロックとボールを傾斜孔に圧入するパンチとを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、一つの実施形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0009】
図1は、一つの実施形態に係る液圧制御装置10を概略的に示す断面図である。液圧制御装置10は、例えば、自動車のような車両1に搭載される。液圧制御装置10は、車両1のブレーキ装置の液路における圧力(液圧)を調整する。なお、液圧制御装置10は、この例に限られない。
【0010】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、液圧制御装置10の幅に沿って設けられる。Y軸は、液圧制御装置10の厚さに沿って設けられる。Z軸は、液圧制御装置10の高さに沿って設けられる。
【0011】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向とを含む。
【0012】
液圧制御装置10は、筐体11と、ポンプ12と、複数のバルブ13とを有する。バルブ13は、液圧制御部の一例である。液圧制御装置10は、例えば、モータ、エレクトロニックコントロールユニット(ECU)、リザーバ、及び他の種々の部品をさらに有する。
【0013】
筐体11は、ハウジングブロック20と、複数のボール21,22,23とを有する。ハウジングブロック20は、部材の一例である。ボール23は、栓の一例である。なお、栓は、ボールに限られない。
【0014】
ハウジングブロック20は、例えば、金属によって作られた、略直方体状のブロックである。なお、ハウジングブロック20は、この例に限られない。ハウジングブロック20に、ポンプ12と複数のバルブ13とが取り付けられる。
【0015】
ハウジングブロック20は、上面31と、下面32と、二つの側面33,34とを有する。側面33は、外面の一例である。上面31、下面32、及び側面33,34は、ハウジングブロック20の外面である。
【0016】
上面31は、略平坦に形成され、+Z方向に向く。下面32は、上面31の反対側に位置する。側面33は、+X方向における上面31の端と+X方向における下面32の端とに接続される。側面33は、略平坦に形成され、+X方向に向く。側面34は、-X方向における上面31の端と-X方向における下面32の端とに接続される。側面34は、略平坦に形成され、-X方向に向く。なお、上面31、下面32、及び側面33,34は、他の方向に向いても良いし、曲面を有しても良い。
【0017】
ハウジングブロック20に、流路35が設けられる。流路35は、上面31及び側面33,34に開口し、ブレーキ装置の液路に接続される。このため、液路の作動油(ブレーキフルード)は、流路35を流れる。作動油は、液体の一例である。流路35は、
図1に示された部分に限られず、
図1に示された部分に直接的又は間接的に連通する種々の部分を有する。
【0018】
流路35は、ハウジングブロック20に設けられた複数の垂直孔41,42、及び複数の傾斜孔43のそれぞれの一部を含む。傾斜孔43は、孔の一例である。本実施形態における垂直孔41,42、及び傾斜孔43は、底を有する孔(窪み)である。なお、垂直孔41,42、及び傾斜孔43は、ハウジングブロック20を貫通する孔であっても良い。
【0019】
複数の垂直孔41のそれぞれは、上面31に開口し、上面31から略-Z方向に延びている。複数の垂直孔41のそれぞれは、例えば、対応する垂直孔42及び傾斜孔43に連通している。
【0020】
複数の垂直孔42のそれぞれは、側面33又は側面34に開口する。側面33に開口する少なくとも一つの垂直孔42は、側面33から略-X方向に延びている。側面34に開口する少なくとも一つの垂直孔42は、側面34から略+X方向に延びている。
【0021】
複数の傾斜孔43のそれぞれは、側面33又は側面34に開口する。側面33に開口する少なくとも一つの傾斜孔43は、例えば、-X方向と+Z方向との間の方向であって、-X方向と斜めに交差する方向に、側面33から延びている。側面34に開口する少なくとも一つの傾斜孔43は、例えば、+X方向と+Z方向との間の方向であって、+X方向と斜めに交差する方向に、側面34から延びている。なお、複数の傾斜孔43は、他の方向に延びていても良い。
【0022】
複数のボール21,22,23は、例えば金属によって作られる。ボール21,22,23のそれぞれの剛性は、ハウジングブロック20の剛性よりも高い。なお、ボール21,22,23及びハウジングブロック20の剛性は、この例に限られない。
【0023】
複数のボール21のそれぞれは、対応する垂直孔41に圧入され、当該垂直孔41を塞ぐ。複数のボール22のそれぞれは、対応する垂直孔42に圧入され、当該垂直孔42を塞ぐ。複数のボール23のそれぞれは、対応する傾斜孔43に圧入され、当該傾斜孔43を塞ぐ。ボール21,22,23は、流路35の端部を塞ぎ、流路35をハウジングブロック20の外部から隔てている。
【0024】
ポンプ12は、例えばギヤポンプである。なお、ポンプ12は、他の種類のポンプであっても良い。ポンプ12の少なくとも一部が、流路35に設けられる。ポンプ12は、流路35において、作動油を送ることができる。言い換えると、ポンプ12は、流路35における作動油の流れを制御することができる。
【0025】
バルブ13は、例えばソレノイドアクチュエータを有する電磁弁である。なお、バルブ13は、他の種類のバルブであっても良い。バルブ13の少なくとも一部が、流路35に設けられる。バルブ13は、例えば、流路35の一部を開閉し、又は流路35の一部の内径を変化させる。このため、バルブ13は、流路35において、作動油の流れを制御することができる。
【0026】
図2は、本実施形態の液圧制御装置10の一部を示す断面図である。以下、側面33に開口する一つの傾斜孔43について、
図2を参照して詳細に説明する。なお、側面34に開口する傾斜孔43は、以下で特に言及する場合を除き、側面33に開口する一つの傾斜孔43に実質的に等しい。
【0027】
傾斜孔43は、導入孔51、形成孔52、圧入孔53、及び流路孔54を有する。なお、傾斜孔43は、この例に限られない。形成孔52は、第1の孔の一例である。圧入孔53は、第2の孔の一例である。
【0028】
導入孔51、圧入孔53、及び流路孔54は、
図2に示す中心軸Axに沿って延びる略円形の孔である。なお、導入孔51、圧入孔53、及び流路孔54の断面は、円形に限られず、他の形状であっても良い。
【0029】
中心軸Axは、導入孔51、圧入孔53、及び流路孔54の中心線である。なお、導入孔51の中心線と、圧入孔53の中心線と、流路孔54の中心線とは、互いに異なっても良い。
【0030】
本明細書において、便宜上、中心軸Axに沿って延びる方向が軸方向、中心軸Axと直交する方向が径方向、中心軸Axまわりに回転する方向が周方向と定義される。軸方向は、第1の軸方向Dx1と、第2の軸方向Dx2とを含む。第1の軸方向Dx1は、第3の方向の一例である。
【0031】
第1の軸方向Dx1は、-X方向と+Z方向との間の方向であって、-X方向と斜めに交差する方向である。-X方向は、第1の方向の一例である。+Z方向は、-X方向と直交する方向であり、第2の方向の一例である。なお、側面34に開口する傾斜孔43については、第1の軸方向Dx1は、+X方向と+Z方向との間の方向であって、+X方向と斜めに交差する方向である。第2の軸方向Dx2は、第1の軸方向Dx1の反対方向である。
【0032】
導入孔51、圧入孔53、及び流路孔54は、軸方向(第1の軸方向Dx1及び第2の軸方向Dx2)に延びている。すなわち、傾斜孔43は、少なくとも部分的に第1の軸方向Dx1に延びている。
【0033】
導入孔51は、側面33に開口している。ハウジングブロック20は、導入孔51の底面51a及び内面51bを有する。底面51aは、略平坦に形成され、第2の軸方向Dx2に向く。内面51bは、底面51aと側面33との間で軸方向に延びる略円筒状の曲面であり、径方向の内側に向く。
【0034】
形成孔52は、側面33及び導入孔51の底面51aから-X方向に延びる略円形の孔である。形成孔52は、側面33から離間していても良い。形成孔52の直径は、導入孔51の直径よりも短い。なお、形成孔52の断面は、円形に限られず、他の形状であっても良い。ハウジングブロック20は、形成孔52の底面52a及び内面52bを有する。内面52bは、支持面の一例である。
【0035】
底面52aは、略平坦に形成され、第2の軸方向Dx2に向く。なお、底面52aは、第2の軸方向Dx2と斜めに交差する方向に向いても良い。この場合、底面52aが向く方向は、+X方向よりも第2の軸方向Dx2に近い。言い換えると、底面52aが向く方向と+X方向との差は、底面52aが向く方向と第2の軸方向Dx2との差よりも大きい。
【0036】
内面52bは、形成孔52の底面52aと、導入孔51の底面51aとの間で軸方向に延びる略円筒状の曲面である。言い換えると、内面52bは、形成孔52の底面52aに接続される。内面52bの一部は、+Z方向に向く。形成孔52の底面52aは、形成孔52及びその内面52bの中心線が延びる方向(X方向)と斜めに交差する方向に向く。
【0037】
圧入孔53は、形成孔52の底面52aから第1の軸方向Dx1に延びている。圧入孔53の直径は、形成孔52の直径よりも短い。言い換えると、圧入孔53は、形成孔52よりも断面が小さい。
【0038】
ハウジングブロック20は、圧入孔53の内面53aを有する。内面53aは、軸方向に延びる略円筒状の曲面であり、径方向の内側に向く。ボール23は、圧入孔53に圧入されている。言い換えると、ボール23は、圧入孔53の内部に配置されて、傾斜孔43を塞いでいる。
【0039】
流路孔54は、第1の軸方向Dx1における圧入孔53の端から、第1の軸方向Dx1に延びている。流路孔54と、圧入孔53の一部とは、流路35に含まれる。一方で、圧入孔53の他の一部と、導入孔51と、形成孔52とは、流路35の外に設けられる。
【0040】
ハウジングブロック20は、シール部61をさらに有する。シール部61は、形成孔52とボール23との間で、圧入孔53の内面53aから突出している。シール部61は、ボール23に接触し、ボール23を覆っている。
【0041】
シール部61は、周方向における全周に亘って圧入孔53の内面53aに設けられる。なお、シール部61は、この例に限られない。圧入孔53のうちシール部61が設けられた部分の直径は、圧入孔53の他の部分の直径よりも短い。
【0042】
以下、
図3乃至
図5を参考に、液圧制御装置10の製造方法の一部である傾斜孔43へのボール23の圧入方法について例示する。なお、傾斜孔43へのボール23の圧入方法は以下の方法に限らず、他の方法が用いられても良い。
【0043】
図3は、本実施形態の圧入前のハウジングブロック20及びボール23を示す断面図である。圧入が行われる前において、傾斜孔43は、形成孔52の代わりに収容孔72を有するとともに、圧入孔53の代わりに圧入孔73を有する。
【0044】
収容孔72及び圧入孔73は、軸方向(第1の軸方向Dx1及び第2の軸方向Dx2)に延びている。収容孔72及び圧入孔73の中心線は、中心軸Axと略一致している。このため、導入孔51、収容孔72、圧入孔73、及び流路孔54のうち少なくとも二つは、一度の加工で形成されることができる。なお、収容孔72の中心線は、中心軸Axと異なっても良い。
【0045】
収容孔72は、導入孔51の底面51aから第1の軸方向Dx1に延びる略円形の孔である。収容孔72の直径は、導入孔51の直径よりも短く、且つ形成孔52の直径よりも短い。なお、収容孔72の断面は、円形に限られず、他の形状であっても良い。ハウジングブロック20は、収容孔72の底面72a及び内面72bを有する。
【0046】
底面72aは、略平坦に形成され、第2の軸方向Dx2に向く。なお、底面72aは、第2の軸方向Dx2と斜めに交差する方向に向いても良い。内面52bは、収容孔72の底面72aと、導入孔51の底面51aとの間で軸方向に延びる略円筒状の曲面である。言い換えると、内面72bは、収容孔72の底面72aに接続される。
【0047】
圧入孔73は、収容孔72の底面72aから第1の軸方向Dx1に延びている。圧入孔73の直径は、圧入孔53の直径と略等しく、収容孔72の直径よりも短い。言い換えると、圧入孔73は、収容孔72よりも断面が小さい。傾斜孔43は、導入孔51、収容孔72、圧入孔73、及び流路孔54を有することで、側面33に向かって段階的に直径が大きくなる。
【0048】
ハウジングブロック20は、圧入孔73の内面73aを有する。内面73aは、収容孔72の底面72aから第1の軸方向Dx1に延びる略円筒状の曲面であり、径方向の内側に向く。圧入前の圧入孔73の内面73aには、シール部61が設けられていない。
【0049】
ボール23の直径は、収容孔72の直径よりも短く、且つ圧入孔73の直径よりも僅かに長い。ボール23は、収容孔72に収容され、収容孔72の底面72aと圧入孔73の内面73aとの角である底面72aの内縁に支持される。
【0050】
ボール23の一部は、圧入孔73の内部に位置している。一方、ボール23は、導入孔51には位置しておらず、導入孔51の底面51aよりも傾斜孔43の内側に位置している。言い換えると、導入孔51の底面51aよりも、第2の軸方向Dx2におけるボール23の端は、圧入孔73に近い。
【0051】
ボール23の圧入に、圧入装置80が用いられる。圧入装置80は、パンチ81を有する。パンチ81は、治具とも称され得る。圧入装置80は、例えば油圧により、パンチ81をX方向(+X方向及び-X方向)に移動させることができる。X方向は、パンチ81のストローク方向又は進退方向とも称され得る。圧入装置80は、パンチ81を-X方向に移動させ、パンチ81によりボール23を傾斜孔43に圧入する。
【0052】
パンチ81は、金属によって作られ、略円柱状に形成される。パンチ81の剛性は、ハウジングブロック20の剛性よりも高い。なお、パンチ81の形状及び剛性は、この例に限られない。パンチ81は、外面81aと、端面81bとを有する。
【0053】
外面81aは、X方向に延びる略円筒状の曲面である。言い換えると、外面81aは、パンチ81の進行方向(-X方向)に延びている。外面81aの直径は、導入孔51の直径よりも短く、収容孔72の直径よりも長い。外面81aの直径は、形成孔52の直径と略等しい。
【0054】
端面81bは、-X方向におけるパンチ81の端部に設けられる。端面81bは、押圧面81cを有する。本実施形態において、端面81bの全体が押圧面81cである。なお、押圧面81cは、端面81bの一部であっても良い。
【0055】
押圧面81cは、第1の軸方向Dx1に向く平面である。なお、押圧面81cは、第1の軸方向Dx1と斜めに交差する方向に向いても良い。この場合、押圧面81cが向く方向は、-X方向よりも第1の軸方向Dx1に近い。押圧面81cが向く当該方向は、第5の方向の一例である。-X方向における外面81aの端部と端面81bの端部との角であるパンチ81の先端81dは、鋭角となっている。
【0056】
圧入装置80は、まず、パンチ81を、ハウジングブロック20に当接させる。本実施形態において、パンチ81は、押圧面81cにおいて、導入孔51の底面51aに当接する。このとき、パンチ81は、収容孔72に収容されたボール23から離間している。パンチ81は、導入孔51の内面51bからも離間している。なお、パンチ81は、内面51bに当接しても良い。
【0057】
図4は、本実施形態のハウジングブロック20とボール23に当接したパンチ81とを示す断面図である。
図4に示すように、次に、圧入装置80は、パンチ81を-X方向に移動させる。これにより、パンチ81が導入孔51の底面51aに食い込む(めり込む)。パンチ81の先端81dが鋭角であるため、先端81dは、容易に導入孔51の底面51aに食い込むことができる。
【0058】
導入孔51の底面51aに食い込むパンチ81により、ハウジングブロック20に、形成孔52の一部が形成される。言い換えると、-X方向に移動するパンチ81により、ハウジングブロック20に形成孔52の内面52bが形成される。形成孔52が形成されることで、収容孔72は、導入孔51の底面51aではなく、形成孔52の底面52aから第1の軸方向Dx1に延びる。言い換えると、収容孔72は、圧入孔73と形成孔52との間に位置する。
【0059】
形成孔52の内面52bは、少なくとも、-Z方向におけるパンチ81の外面81aの端に接触する。ハウジングブロック20に設けられた形成孔52の内面52bは、パンチ81が-Z方向へ移動することを制限するように、当該パンチ81を支持する。-Z方向は、第4の方向の一例である。
【0060】
パンチ81が導入孔51の底面51aに食い込むことで、ハウジングブロック20は、当該ハウジングブロック20の一部20aが収容孔72の内面72bから突出するように変形する。パンチ81は、軸方向と略直交する押圧面81cが底面51aに当接した状態で、ハウジングブロック20に食い込む。このため、ハウジングブロック20の一部20aは、周方向における全周に亘って収容孔72の内面72bから突出する。
【0061】
パンチ81は、ハウジングブロック20に形成孔52を形成しながら-X方向に移動することで、押圧面81cにおいて、第2の軸方向Dx2におけるボール23の端に当接する。言い換えると、押圧面81cは、パンチ81が形成孔52の内面52bに支持された状態で、ボール23に当接する。
【0062】
図5は、本実施形態のハウジングブロック20とボール23を傾斜孔43に圧入するパンチ81とを示す断面図である。
図5に示すように、圧入装置80は、ボール23に当接したパンチ81をさらに-X方向に移動させる。-X方向に移動するパンチ81の押圧面81cにより、ボール23は、圧入孔73に圧入される。圧入孔73は、孔の第3の方向に延びる部分の一例である。
【0063】
パンチ81は、例えば、押圧面81cが収容孔72の底面72aに到達するまで、-X方向に移動する。これにより、収容孔72が消失し、ハウジングブロック20に
図2に示された形成孔52の全体が形成される。なお、パンチ81が収容孔72の底面72aを通過するまで-X方向に移動しても良いし、ハウジングブロック20に収容孔72の一部が残っても良い。
【0064】
さらに、パンチ81が-X方向に移動することで、収容孔72の内面72bから突出するハウジングブロック20の一部20aは、-X方向に移動するとともに拡大する。パンチ81の押圧面81cが収容孔72の底面72aに近づくと、ハウジングブロック20の一部20aは、圧入孔73の内面73aに到達し、内面73aから突出する。
【0065】
パンチ81の押圧面81cが収容孔72の底面72aに到達したとき、ハウジングブロック20の一部20aは、圧入孔73の内面73aから突出するとともにボール23に接触している。すなわち、ハウジングブロック20の一部20aは、シール部61となる。このように、シール部61は、ボール23を加締めるように変形させられたハウジングブロック20の一部20aである。また、圧入孔73は、ボール23が圧入されるとともに内面73a(53a)からシール部61が突出する、
図2に示された圧入孔53となる。
【0066】
図4及び
図5に示すように、圧入装置80は、パンチ81がボール23を圧入孔73に圧入するとき、押圧面81cでボール23に接触しているパンチ81を、力Fで-X方向に押す。力Fは、第1の軸方向Dx1の分力(成分)Fxと、
図4及び
図5に示す第1の径方向Dr1の分力(成分)Frとに分けられ得る。第1の径方向Dr1は、径方向のうち、-X方向と-Z方向との間の方向である。
【0067】
パンチ81は、分力Fxにより、ボール23を第1の軸方向Dx1に押す。第1の軸方向Dx1は、圧入孔73が延びる方向と一致する。このため、パンチ81は、ボール23をスムーズに圧入孔73に圧入する。
【0068】
分力Frは、パンチ81がボール23の表面及び形成孔52の底面52aを第1の径方向Dr1に滑るように、パンチ81に作用する。分力Frは、Z方向においては、パンチ81を-Z方向に移動させるように、パンチ81に作用する。一方、上述のように、形成孔52の内面52bは、パンチ81が-Z方向へ移動することを制限するように、当該パンチ81を支持する。このため、内面52bは、分力Frが作用するパンチ81を支持することで、パンチ81が-Z方向へ移動することを抑制し、ひいてはパンチ81が折れることを抑制する。
【0069】
さらに、圧入孔73に圧入されることで、ボール23は、Z方向においては、+Z方向に移動する。このため、ボール23は、パンチ81の押圧面81cを、
図4及び
図5に示す第2の径方向Dr2に滑る。第2の径方向Dr2は、第1の径方向Dr1の反対方向である。すなわち、第2の径方向Dr2は、径方向のうち、+X方向と+Z方向との間の方向である。
【0070】
ボール23が押圧面81cを第2の径方向Dr2に滑ることで、ボール23を第1の径方向Dr1における圧入孔73の内面73aの端部に押し付ける力が増大することが抑制される。このため、周方向における、ボール23から圧入孔73の内面73aに作用する力の分布(以下、力の分布と称する)が均等に近づく。
【0071】
力の分布が偏ると、周方向におけるハウジングブロック20の変形が不均等になる。不均等な変形は、例えば、ハウジングブロック20の一部を圧入孔73から大きく突出させ、当該一部を流路35へ脱落させる虞がある。しかし、力の分布が均等に近づけられることで、周方向におけるハウジングブロック20の変形の分布が均等に近づき、ハウジングブロック20の大きい変形が抑制される。
【0072】
以上説明された方法により、-X方向に移動するパンチ81が、ボール23を傾斜孔43に圧入することができる。一方、例えばボール22は、-X方向に移動するとともに-X方向に向く略平坦な端面を有するパンチにより、垂直孔42に圧入される。すなわち、圧入装置80は、ボール22を垂直孔42に圧入するパンチの進行方向と、ボール23を傾斜孔43に圧入するパンチ81の進行方向とを、略同一にすることができる。従って、液圧制御装置10の組み立てが容易となる。
【0073】
以上説明された実施形態において、-X方向へ移動するパンチ81により、ボール23が傾斜孔43へ圧入される。傾斜孔43は、ハウジングブロック20の側面33に開口するとともに、-X方向と直交する+Z方向と-X方向との間の方向であって-X方向と斜めに交差する第1の軸方向Dx1に少なくとも部分的に延びる。ハウジングブロック20に設けられた内面52bは、パンチ81が+Z方向の反対の-Z方向へ移動することを制限するように、当該パンチ81を支持する。パンチ81の押圧面81cは、-X方向における当該パンチ81の端部に設けられるとともに、-X方向と+Z方向との間の方向であって-X方向よりも第1の軸方向Dx1側に向く方向又は第1の軸方向Dx1に向き、パンチ81が内面52bに支持された状態でボール23に当接する。-X方向に移動するパンチ81が、押圧面81cによりボール23を傾斜孔43の第1の軸方向Dx1に延びる部分に圧入する。押圧面81cが第1の軸方向Dx1又はそれに近い方向に向くため、押圧面81cは、当該押圧面81cでボール23を滑らせながら、ボール23を第1の軸方向Dx1へ押すことができる。従って、ボール23から傾斜孔43の内面73aに作用する荷重が低減され、傾斜孔43の周方向におけるハウジングブロック20の変形の分布が均等に近づき、ひいてはハウジングブロック20の偏った変形による不都合、例えば、栓の固定に係る耐久性の低下や異物の発生など、の回避を図ることができる。また、ボール23が傾斜孔43の圧入孔73に圧入されるとき、ボール23を押すパンチ81は、-Z方向へ移動するようにボール23から反力を受ける。しかし、パンチ81は、内面52bによって-Z方向へ移動することを制限するように支持されるため、-Z方向への移動することを抑制でき、ひいては折れてしまうことを抑制できる。以上のように、本実施形態の圧入方法は、パンチ81の進行方向(-X方向)と斜めに交差する方向に延びる傾斜孔43にボール23を圧入することができる。また、上記圧入方法は、圧入の不具合による液圧制御装置10の歩留まりの低下を抑制できる。
【0074】
また、パンチ81は、ハウジングブロック20に食い込むことで、ハウジングブロック20の一部20aを変形させる。当該一部20aを含むシール部61が、ボール23に接触するとともに、ボール23を覆う。上述のように、傾斜孔43の周方向におけるハウジングブロック20の変形の分布が均等に近づくため、シール部61が周方向においてより均一にボール23に接触し、ボール23を覆う。従って、ハウジングブロック20とボール23との間の隙間に例えば水が溜まることが抑制され、当該水により液圧制御装置10に腐食が生じることを抑制できる。
【0075】
ボール23から離間するとともにハウジングブロック20に当接したパンチ81は、-X方向へ移動することで、ハウジングブロック20に内面52bを形成する。すなわち、パンチ81は、ハウジングブロック20に食い込んで当該ハウジングブロック20を変形させることで、ハウジングブロック20に内面52bを形成する。これにより、ハウジングブロック20に予め内面52bを形成する必要が無い。例えば、-Z方向へのパンチ81の移動を制限するために、内面52bは、-X方向に延びるよう形成される。当該内面52bを形成する加工は、第1の軸方向Dx1に延びる傾斜孔43の一部を形成する加工と同時には行うことが難しい。内面52bを形成する加工と、第1の軸方向Dx1に延びる傾斜孔43の一部を形成する加工と、ボール23の圧入と、が別々に行われると、ハウジングブロック20のコストが増大する。しかし、本実施形態では、内面52bの形成とボール23の圧入とが同時に行われるため、ハウジングブロック20のコストが増大することが抑制される。
【0076】
押圧面81cは、第1の軸方向Dx1に向く。このため、傾斜孔43の周方向において、ボール23から傾斜孔43の内面73aに作用する荷重の分布がより均等に近づく。従って、傾斜孔43の周方向におけるハウジングブロック20の変形の分布が均等に近づき、ひいてはハウジングブロック20の偏った変形による不都合、例えば、栓の固定に係る耐久性の低下や異物の発生など、の回避を図ることができる。
【0077】
押圧面81cは、第1の軸方向Dx1又はそれに近い方向に向く平面である。これにより、ボール23が押圧面81cに対して-X方向及び+Z方向と直交する方向(Y方向)に移動したとしても、押圧面81cからボール23に作用する荷重の方向が一定に保たれる。従って、ボール23から傾斜孔43の内面73aに作用する荷重が変化することが抑制され、ひいては傾斜孔43の周方向におけるハウジングブロック20の変形の分布が偏ることが抑制される。
【0078】
-X方向におけるパンチ81の端面81bの全体が押圧面81cである。これにより、パンチ81の構成が簡易化され得る。また、押圧面81cがハウジングブロック20に当接してからパンチ81が内面52bを形成する場合、-X方向におけるパンチ81の先端81dが鋭くなる。従って、パンチ81が容易にハウジングブロック20に食い込んで内面52bを形成することができる。
【0079】
パンチ81は、-X方向へ移動し、当該-X方向と斜めに交差する方向に向く平坦な押圧面81cを有する。これにより、パンチ81は、当該パンチ81が移動する-X方向と斜めに交差する方向に延びる傾斜孔43に、ボール23を圧入することができる。
【0080】
傾斜孔43は、形成孔52と、圧入孔53とを有する。形成孔52は、-X方向に延びる。圧入孔53は、形成孔52の底面52aから-X方向と直交する+Z方向と-X方向との間の方向であって-X方向と斜めに交差する第1の軸方向Dx1に延びるとともに、形成孔52よりも断面が小さい。ハウジングブロック20は、形成孔52の底面52aに接続されるとともに少なくとも部分的に+Z方向に向く内面52bを有する。ボール23は、圧入孔53の内部に配置されて傾斜孔43を塞ぐ。当該傾斜孔43の形状によれば、-X方向に移動するパンチ81により、当該パンチ81を内面52bに支持された状態で、ボール23を圧入孔53に圧入することができる。
【0081】
なお、以上の実施形態においては、導入孔51の底面51aとして、略平坦に形成され、第2の軸方向Dx2に向くものが例示された。これに代えて、例えば、形成孔52を形成すべく底面51aに向けてパンチ81を第1の方向(
図3では-X方向)に向けて移動させた際にパンチ81の先端81d(押圧面81cの最も第1の方向側の端部)が当接する底面51aの一部を、第2の軸方向Dx2よりも第2の径方向Dr2側を向くよう(望ましくは、第1の方向と反対側(
図3では+X方向)、或いはこれよりもさらに第2の径方向Dr2側を向くよう)形成しても良い。これによれば、上述の底面51aの一部にパンチ81の先端81dが食い込み始める際にパンチ81が第4の方向(
図3では-Z方向)へ移動するように底面51aから受ける反力をより小さくできる。なお、このような底面51aを形成する方法としては、例えば、先端角度が180°未満のドリル等を用いて導入孔51を加工する方法がある。このように、底面51aは、例えば円錐の内周面状を呈していても良い。
【0082】
以上の実施形態において、パンチ81が形成孔52を形成する。しかし、この例に限られず、
図4に示す形成孔52の一部が、鋳造、射出成型、又は他の方法により予め形成されていても良い。
【0083】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る圧入方法は、一例として、第1の方向へ移動するパンチによる、部材の外面に開口するとともに前記第1の方向と直交する第2の方向と前記第1の方向との間の方向であって前記第1の方向と斜めに交差する第3の方向に少なくとも部分的に延びる孔への栓の圧入方法であって、前記部材に設けられた支持面により、前記パンチが前記第2の方向の反対の第4の方向へ移動することを制限するように当該パンチを支持することと、前記第1の方向における前記パンチの端部に設けられるとともに、前記第1の方向と前記第2の方向との間の方向であって前記第1の方向よりも前記第3の方向側に向く第5の方向又は前記第3の方向に向く押圧面を、前記パンチが前記支持面に支持された状態で前記栓に当接させることと、前記パンチを前記第1の方向へ移動させ、前記押圧面により前記栓を前記孔の前記第3の方向に延びる部分に圧入することと、を備える。よって、一例としては、押圧面が第3の方向又は第5の方向に向くため、押圧面は、当該押圧面で栓を滑らせながら、栓を第3の方向へ押すことができる。従って、栓から孔の内面に作用する荷重が低減され、孔の周方向における部材の変形の分布が均等に近づき、ひいては部材の偏った変形による不都合、例えば、栓の固定に係る耐久性の低下や異物の発生など、の回避を図ることができる。また、栓が孔の第3の方向に延びる部分に圧入されるとき、栓を押すパンチは、第4の方向へ移動するように栓から反力を受ける。しかし、パンチは、支持面によって第4の方向へ移動することを制限するように支持されるため、第4の方向への移動することを抑制でき、ひいては折れてしまうことを抑制できる。以上のように、上記圧入方法は、パンチの進行方向と斜めに交差する方向に延びる孔に栓を圧入することができる。
【0084】
上記圧入方法は、一例として、前記栓から離間するとともに前記部材に当接した前記パンチを前記第1の方向へ移動させ、前記パンチにより前記部材に前記支持面を形成すること、をさらに備える。よって、一例としては、パンチは、部材に食い込んで当該部材を変形させることで、部材に支持面を形成する。これにより、部材に予め支持面を形成する必要が無い。例えば、第4の方向へのパンチの移動を制限するために、支持面は、第1の方向に延びるよう形成される。当該支持面を形成する加工は、第3の方向に延びる孔を形成する加工と同時には行うことが難しい。支持面を形成する加工と、第3の方向に延びる孔を形成する加工と、栓の圧入と、が別々に行われると、部材のコストが増大する。しかし、上記圧入方法では、支持面の形成と栓の圧入とが同時に行われるため、部材のコストが増大することが抑制される。
【0085】
上記圧入方法では、一例として、前記押圧面は、前記第3の方向に向く。よって、一例としては、孔の周方向において、栓から孔の内面に作用する荷重の分布がより均等に近づく。従って、孔の周方向における部材の変形の分布が均等に近づき、ひいては部材の偏った変形による不都合、例えば、栓の固定に係る耐久性の低下や異物の発生など、の回避を図ることができる。
【0086】
上記圧入方法では、一例として、前記押圧面は、前記第3の方向又は前記第5の方向に向く平面である。よって、一例としては、栓が押圧面に対して第1の方向及び第2の方向と直交する方向(横方向)に移動したとしても、押圧面から栓に作用する荷重の方向が一定に保たれる。従って、栓から孔の内面に作用する荷重が変化することが抑制され、ひいては孔の周方向における部材の変形の分布が偏ることが抑制される。
【0087】
上記圧入方法では、一例として、前記第1の方向における前記パンチの端面の全体が前記押圧面である。よって、一例としては、パンチの構成が簡易化され得る。また、押圧面が部材に当接してからパンチが支持面を形成する場合、第1の方向におけるパンチの端部が鋭くなる。従って、パンチが容易に部材に食い込んで支持面を形成することができる。
【0088】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る圧入装置は、一例として、第1の方向へ移動し、前記第1の方向と斜めに交差する方向に向く平坦な押圧面を有するパンチ、を備える。よって、一例としては、パンチは、当該パンチが移動する第1の方向と斜めに交差する方向に延びる孔に、栓を圧入することができる。
【0089】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る液圧制御装置は、一例として、外面を有し、前記外面に開口する孔が設けられた、部材と、前記孔を塞ぐ栓と、前記孔の少なくとも一部を含む流路に設けられ、前記流路における液体の流れを制御するよう構成された、液体制御部と、を備え、前記孔は、第1の方向に延びる第1の孔と、前記第1の孔の底面から前記第1の方向と直交する第2の方向と前記第1の方向との間の方向であって前記第1の方向と斜めに交差する第3の方向に延びるとともに前記第1の孔よりも断面が小さい第2の孔と、を有し、前記部材は、前記第1の孔の底面に接続されるとともに少なくとも部分的に前記第2の方向に向く支持面を有し、前記栓は前記第2の孔の内部に配置されて前記孔を塞ぐ。よって、一例としては、第1の方向に移動するパンチにより、当該パンチを支持面に支持された状態で、栓を第2の孔に圧入することができる。
【0090】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0091】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…液圧制御装置、13…バルブ(液体制御部)、20…ハウジングブロック(部材)、23…ボール(栓)、33…側面(外面)、35…流路、43…傾斜孔(孔)、52…形成孔(第1の孔)、52a…底面、52b…内面(支持面)、53…圧入孔、80…圧入装置、81…パンチ、81b…端面、81c…押圧面、Dx1…第1の軸方向(第3の方向)。